JPH06130442A - 光情報処理素子におけるメモリーの消去方法 - Google Patents

光情報処理素子におけるメモリーの消去方法

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JPH06130442A
JPH06130442A JP4284674A JP28467492A JPH06130442A JP H06130442 A JPH06130442 A JP H06130442A JP 4284674 A JP4284674 A JP 4284674A JP 28467492 A JP28467492 A JP 28467492A JP H06130442 A JPH06130442 A JP H06130442A
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JP4284674A
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Akiteru Fujii
章照 藤井
Mitsuru Yoneyama
満 米山
Tetsuo Murayama
徹郎 村山
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Mitsubishi Kasei Corp
Original Assignee
Mitsubishi Kasei Corp
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  • Thermal Transfer Or Thermal Recording In General (AREA)
  • Non-Silver Salt Photosensitive Materials And Non-Silver Salt Photography (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【構成】 少なくとも一方の電極が光透過性を有する電
極間に光電変換層と一定の波長の光により変化した導電
性を光遮断後も持続させる機能を有するメモリー層とを
有する光情報処理素子において、メモリー層の導電性を
変化させる波長の光の照射によって該光情報処理素子の
受光感度を変化させたメモリー状態を消去するにあた
り、該光情報処理素子を加熱することを特徴とする光情
報処理素子におけるメモリーの消去方法。 【効果】 演算処理、視覚情報処理、ニューロコンピュ
ーター、センサー等各種用途に応用することが期待され
る光情報処理素子に対して効果的なメモリーの消去方法
を提供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光信号に対する応答感
度を制御光により変化させることが可能で、変化した応
答感度を素子の内部に長時間記憶させておくことができ
る、パターン認識等の視覚情報処理、ニューロコンピュ
ーターに適した新規な光情報処理素子におけるメモリー
の消去方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、ニューラルネットワークによる情
報処理によって、従来困難であった連想記憶や学習等
の、本来、脳、神経系特有のものと考えられてきた情報
処理が可能になると考えられるようになってきた。ま
た、ニューラルネットワークをハードウエアとして実現
しようとする試みも多数なされるようになってきた。
【0003】また、光の持つ並列性、すなわち多くの情
報を同時に伝送したり処理したりする能力、そして配
線、クロストーク等における優位性、アナログ性、画像
の直接処理能力等の利点から、光ニューラルネットワー
ク、光ニューロコンピューターに対する期待が高まって
いる。その際、ニューラルネットワークの構成単位であ
るニューロ素子においては、入力情報に応じて、その1
つ1つの入力情報に対して重みづけする、生体の神経細
胞のシナプスに相当する部分が必要となる。更に、この
重みづけの度合いがアナログ的に変更可能で、変更後は
長時間記憶、保持される特性を有することがより望まし
い。
【0004】そのようなシナプス相当部を備えたニュー
ロ素子のモデルとして提唱されたものとしては、図2に
挙げるマッカロー・ピッツのモデルがある。このモデル
においては、i番目の入力信号ui がシナプス相当部で
重み係数wi と積算され、この重みづけされた信号はす
べて加算されて、出力部において非線形的な関数g
(x)(デルタ関数、シグモイド型関数)に従って出力
vががなされる。 v = g (Σwi ・ui ) …<1> この際、重み係数wi がアナログ的に可変であり、入力
信号に対する荷重の度合いが変化、保持されることが学
習、記憶、認識等の情報処理を実現するために不可欠で
あると考えられている。
【0005】このようなモデルに従ったニューロ素子の
開発においては、上記の生体のシナプス相当部をいかに
実現するかが鍵になっており、その一例としては特開平
4−5636号に見られるように、空間光変調器によっ
て光の透過率を制御する方法がある。この方法によれ
ば、光の透過率の大小で上記式1における重み係数wi
に相当する重みづけを行うことができる。しかし、光の
透過率の制御に当っては外部からの制御が必要であり、
制御した透過率の値は外部演算装置等によらなけば記憶
することはできず、また、空間光変調器で実現できる学
習前後でのコントラストには限界がある。
【0006】また、特開平4−90015号に見られる
ように、フォトダイオードからなる受光素子に対して外
部から制御電圧を加えて受光感度、すなわち光信号に対
する電気応答の度合いを変調することによって重みづけ
を実現する試みも行われているが、この素子においても
記憶機能を有していないため外部演算装置の併用が不可
欠である。
【0007】この素子に記憶機能を付与したものとして
は、電子技術誌、1992年、1月号、25頁〜27頁
に示された記憶機能内蔵型の素子が挙げられる。この素
子においては金属−ガリウムひ素接合により形成された
接合部に制御光を照射することによって形成される空間
電荷の影響により信号光に対する検出感度が増大、保持
されると考えられており、この検出感度の変化を利用し
て重みづけを行っている。しかし、検出感度の増加はせ
いぜい数倍程度であり、増大した検出感度は約20分程
度でなくなるため、記憶機能として十分であるとは言い
がたい。
【0008】一方、材料については、ニューロ素子とし
てはSi、GaAs等の無機半導体材料を用いた既存の
無機半導体素子の延長上のものがほとんどであった。事
実、一般にエレクトロニクス用に使用されている素子に
は、一部の補助的な部品等を除いては無機材料の有する
機能を用いたものがほとんどであった。しかし、近年有
機材料の持つ機能をエレクトロニクス分野に応用する研
究が活発に行われている。実用化した例としては、液晶
ディスプレイ、光プリンタ用感光体、コンデンサー等が
挙げられ、従来有機材料の欠点とされていた耐久性が、
材料や使用条件の最適化により、無機材料と比べ遜色な
く、場合によっては無機材料よりも優れていることが明
らかにされ、エレクトロニクスの基本部品である素子に
有機材料を用いる研究も更に盛んに行われるようになっ
てきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記のような良好なメ
モリー機能を有する光情報処理素子の実用化に当たって
は、当該光情報処理素子に付与されたメモリーの効果的
な消去方法が必要である。本発明は上記実情に鑑みなさ
れたものであり、その目的は、前記の光情報処理素子に
おけるメモリーの消去方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、少なく
とも一方が光透過性を有する電極間に、入力された光情
報に応答する光電変換層と、光照射によって変化した導
電性を光遮断後も持続させる機能を有するメモリー層を
設けることで形成された光情報処理素子に光を照射する
ことによって付与したメモリー状態を消去するにあたり
当該光情報処理素子を加熱することを特徴とする光情報
処理素子におけるメモリーの消去方法に存する。
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。まず、本
発明の対象となる光情報処理素子について説明する。上
記の光情報処理素子は、少なくとも一方の電極が光透過
性を有する電極間に光電変換層と一定の波長の光により
変化した導電性を光遮断後も持続させる機能を有するメ
モリー層を有する。
【0012】電極について説明する。電極は、支持体上
に導電性薄膜層として形成される。支持体としては、石
英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィル
ムやシート等が用いられるが、ガラス板、透明なプラス
チック(ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカー
ボネート)の板等が好ましい。電極として用いることの
できる金属板等は支持体を兼ねることができる。
【0013】電極形成材料は、通常、アルミニウム、
金、銀、白金、カドミウム、ニッケル、インジウム、パ
ラジウム、テルル等の金属、インジウム及び/又はスズ
等の金属の酸化物、ヨウ化銅、カーボンブラック、ポリ
(3ーメチルチオフェン)やポリピロール等の導電性樹
脂が用いられる。導電性薄膜層は、電極形成材料が金属
や金属酸化物の場合は、通常は、スパッタリング法、真
空蒸着法等により形成されるが、電極形成材料の種類に
よっては他の方法により形成されてもよい。例えば、銀
等の金属微粒子、ヨウ化銅、カーボンブラック、導電性
の金属酸化物微粒子、導電性樹脂粉末等の場合には、適
当なバインダー樹脂溶液に電極形成材料を分散させた
後、支持体上に塗布する方法により形成することができ
る。更に、導電性樹脂の場合は、電解重合により、直接
支持体上に形成することもできる。導電性薄膜層は、異
なる物質で積層することも可能である。
【0014】導電性薄膜層の厚さは、特に制約はない
が、均一な導電性発現のためには少なくとも50Å以上
とするのが好ましい。一方、光透過性が必要な場合は、
透過率を満足する膜厚以上にならないようにする必要が
ある。膜厚が厚くなる塗布法による場合でも、膜厚は通
常100μm以下である。本発明においては、電極の少
なくとも一方が光透過性電極であることが必要である。
光透過性は、必ずしも全波長領域にわたる必要はない
が、少なくともメモリー層、光電変換層が吸収する光の
波長領域での光透過性が要求される。光の透過率は、高
いほど照射光の効率上好ましい。透過率としては少なく
とも10%以上、実用上は30%以上、好ましくは60
%以上が必要である。
【0015】次に、電極間に形成される光電変換層及び
メモリー層について説明する。光電変換層は、光を吸収
して正負の電荷分離により電荷キャリアーを発生させる
光導電性材料からなり、必要により、バインダー樹脂、
長鎖アルキル脂肪酸等の絶縁性材料、芳香族アミン、ヒ
ドラゾン化合物等のキャリアー輸送材料その他の添加物
と共に形成される。
【0016】光導電性材料としては電子写真や太陽電池
等に用いられている光導電性材料が用いられる。無機系
の光導電性材料としては無定形セレンやセレン−テル
ル、セレン−ヒ素等のセレン合金、無定形シリコン、硫
化カドミウム、酸化亜鉛等が挙げられる。有機系の光導
電性材料としては、各種の色素や顔料が挙げられる。こ
のような例としては公知の文献で光電変換色素、電荷キ
ャリアー生成材料等として知られている化合物が挙げら
れる。
【0017】文献例としては「電子写真技術の基礎と応
用」437頁−448頁(電子写真学会編、コロナ社、
1988年)、色材協会誌 47巻 594頁−604
頁(丸山勝次、1974年)、「LB膜とエレクトロニ
クス」193頁−204頁(シーエムシー、1986
年)、「有機電子材料」94頁−101頁(応用物理学
会編、オーム社、1990年)等がある。
【0018】このような化合物の例としては、ポルフィ
リン系、シアニン系、メロシアニン系、ピリリウム系、
チアピリリウム系、トリアリールメタン系、スクアリリ
ウム系、アズレニウム系等の色素、ペリレン系、多環キ
ノン系、ピロロピロール系等の縮合環系色素、フタロシ
アニン系色素、アゾ系色素等が挙げられる。フタロシア
ニン系色素としては、無金属フタロシアニン系色素と共
に銅、バナジウム、インジウム、チタン、アルミニウ
ム、スズ、マグネシウム等の金属配位フタロシアニンの
各種結晶型色素を用いてもよい。アゾ系色素としては、
主にジスアゾ系、ビスアゾ系、トリスアゾ系色素が顔料
粒子の形で用いられる。
【0019】メモリー層は、分子内に1個以上の窒素原
子を有する正孔輸送性の低分子化合物や、光の照射によ
り変化した導電性を光遮断後も持続させるメモリー性付
与機能を有する化合物等をバインダーポリマー中に分散
して構成される。まず、正孔輸送性の低分子化合物につ
いて説明する。正孔輸送性の低分子化合物は、メモリー
層の電荷キャリアーである正孔の輸送担体として作用す
る。正孔輸送現象は分子間の電子移動あるいは酸化還元
反応と見なすことができ、効果的な正孔輸送のために
は、イオン化ポテンシャルが小さい電子供与性化合物が
適している。
【0020】本発明においては、上記の主旨から、正孔
輸送性の低分子化合物として、好ましくは分子内に1個
以上の窒素原子を有する化合物を用いる。特に、窒素原
子がπ電子共役系に結合し、分子間の配向配列性が良好
な化合物が好適である。また、窒素原子の形態として
は、ジエチルアミノ基のようなジアルキルアミノ基、ジ
フェニルアミノ基のようなジアリールアミン基等により
芳香族炭化水素や芳香族複素環に直接結合したアミノ
基、同様に、芳香族炭化水素や芳香族複素環に結合した
ヒドラゾ基、ヒドラゾノ基が挙げられ、その他には複素
環を構成する窒素原子が挙げられる。そして、複素環の
例としては、カルバゾール、インドール、ピラゾール、
ピラゾリン、オキサゾール等が挙げられる。
【0021】上記のような正孔輸送性の低分子化合物
は、高分子化合物に比べて製造が容易であり、また、精
製による不純物の除去も容易なため、不純物に由来する
トラップ形成等によるメモリー特性の低下が少ない。更
に、低分子化合物は、一般的にバインダーポリマーとの
相溶性に優れているため、メモリー層中の含有量を増や
すことにより正孔の移動度を高めることも容易である。
【0022】本発明においては、正孔輸送性の低分子化
合物として、ヒドラゾン化合物、特に、下記の化学式
[化1]で表されるヒドラゾン化合物が好適に用いられ
る。
【0023】
【化1】
【0024】上記の化学式[化1]中、Aは少なくとも
一個の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を含む1価又
は2価の有機基を表し、そして、これらの環は置換基を
有していてもよい。具体的には次の(a)〜(d)に記
載の有機基が挙げられる。 (a)ベンゼン、ナフタリン、アントラセン、ピレン、
ペリレン、フェナントレン、フルオランテン、アセナフ
テン、アセナフチレン、アズレン、フルオレン、インデ
ン、テトラリン、ナフタセン等から誘導される1価又は
2価の有機基。当該有機基は、少なくとも1個の芳香族
炭化水素環を含む例である。
【0025】(b)ピロール、チオフェン、フラン、イ
ンドール、カルバゾール、ピラゾール、ピリジン、アク
リジン、フェナジン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン
等から誘導される1価又は2価の有機基。当該有機基
は、少なくとも1個の芳香族複素環を含む例である。 (c)上記の各有機基が直接結合した化合物から誘導さ
れる1価又は2価の有機基。
【0026】上記の化合物としては、ビフェニル、ター
フェニル、フェニルアントラセン、ビチオフェン、ター
チオフェン、ビフラン、チエニルベンゼン、チエニルナ
フタリン、ピロリルチイオフェン、N−フェニルカルバ
ゾール等が挙げられる。 (d)上記の各有機基が結合基を介して結合した化合物
から誘導される1価又は2価の有機基。
【0027】上記の結合基としては、下記の化学式[化
2]で表されるような置換基を有していてもよいアルキ
レン基又は下記の化学式[化3]で表されるような2価
の有機基が挙げられる。また、斯かるアルキレン基及び
2価の有機基を組合わせた結合基が挙げられる。
【0028】
【化2】
【0029】
【化3】
【0030】そして、(d)に該当する化合物の具体例
としては、結合基により前記の芳香環や複素環が縮合環
を形成した、例えば、キサンテン、チオキサンテン、イ
ンドリン、フェノチアジン、下記の化学式[化4]で表
される化合物が挙げられる。
【0031】
【化4】
【0032】また、上記の他に、(d)に該当する化合
物の具体例としては、ジフェニルメタン、スチルベン、
トラン、1,4−ジフェニルフタジエン、ジフェニルエ
ーテル、ジフェニルスルフィド、N−メチルジフェニル
アミン、トリフェニルアミン、アゾベンゼン等が挙げら
れる。更にまた、これらの化合物のベンゼン環の代わり
に、他の芳香環や複素環を結合基を用いて組合わせた化
合物等が挙げられる。
【0033】前記の(a)〜(d)における芳香族炭化
水素環及び/又は芳香族複素環が有していてもよい置換
基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、ヘキシル基等の低級アルキル基、メトキ
シ基、エトキシ基、ブトキシ基等の低級アルコキシ基、
アリル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル
基等のアラルキル基、フェノキシ基、トリオキシ基等の
アリールオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキ
シ基等のアリールアルコキシ基、フェニル基、ナフチル
基等のアリール基、スチリル基、ナフチルビニル基等の
アリールビニル基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ
基等のジアルキルアミノ基が挙げられる。そして、これ
らの置換基中のアルキル成分には、エーテル基、エステ
ル基、シアノ基、スルフィド基等が含有されていてもよ
い。
【0034】前記の化学式[化1]中、R1 、R2 、R
3 、R4 及びR5 は、水素原子又は置換基を有していて
もよいアルキル基、アラルキル基、芳香族炭化水素基、
複素環基を表す。R1 〜R5 の具体例としては、メチル
基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の
低級アルキル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラル
キル基、フェニル基、ナフチル基、アセナフチル基、ア
ントリル基、ピレニル基等のAにおけるのと同様の芳香
族炭化水素基、チエニル基、ビチエニル基、カルバゾル
基、インドリル基、フリル基、インドリン基等のAにお
けるのと同様の複素環基が挙げられる。
【0035】そして、上記のR1 〜R5 の各有機基が有
していてもよい置換基としては、メチル基、エチル基、
プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等の低級アルキル
基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の低級アル
コキシ基、フェノキシ基、トリオキシ基等のアリールオ
キシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等のア
リールアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリ
ール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、フェニ
ルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の置換アミノ
基等が挙げられる。
【0036】但し、R1 はAと一体となって環を形成し
てもよい。このような例としては、下記の化学式[化
5]で表される有機基が挙げられる。
【0037】
【化5】
【0038】前記の化学式[化1]中、R6 及びR
7 は、置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキ
ル基、アリル基、芳香族炭化水素基又は複素環基を表
す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブ
チン基等の低級アルキル基、ベンジル基、フェネチル
基、ナフチルメチル基等のアラルキル基、アリル基、フ
ェニル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基、ピリジル
基、チエニル基、フリル基、ピロリル基等の複素環基を
表す。これらが有していてもよい置換基としては、前記
1 、R2 、R3 、R4 及びR5 におけるのと同様の置
換基が挙げられる。
【0039】但し、R6 とR7 は一体となって環を形成
してもよく、。このような例としては、下記の化学式
[化6]で表される有機基が挙げられる。
【0040】
【化6】
【0041】前記の化学式[化1]中、lは0又は1、
mは0,1又は2、nは1又は2の整数を表す。尚、n
はAが1価の基の場合には1を、2価の基の場合は2で
ある。前記の化学式[化1]で表されるヒドラゾン化合
物の中では、特に、Aがカルバゾール環であるヒドラゾ
ン化合物が好ましい。下記の化学式[化7]は、斯かる
ヒドラゾン化合物の幾つかを例示したものである。
【0042】
【化7】
【0043】次に、メモリー性付与機能を有する化合物
について説明する。メモリー性は数多くの化合物により
達成することができる。代表的な化合物としては、例え
ば、クロロ酢酸、オルソベンゾイル安息香酸等のプロト
ン酸、芳香族ジアゾニウム塩、ロイコクリスタルバイオ
レット、ロイコマラカイトグリーン等のトリアリールメ
タン類、ヨウ化メチレン、ヘキサクロロエタン等のハロ
ゲン化炭化水素、1,3,5−トリブロモベンゼン、
9,10−ジクロロアントラセン、9,10−ジブロモ
アントラセン等の芳香族ハロゲン化合物、ベンズアミ
ド、ニトロフェノール、ニトロアニリン、ヘキサクロロ
アセトン、ブロモアセトフェノン等のハロゲン化ケトン
化合物、塩化アセチル、臭化アセチル、クロロベンゾイ
ルクロリド等のハロゲン化アシル化合物、無水フタル酸
等の酸無水物、チオミヒェラーズケトン等のチオケトン
が挙げられる。
【0044】特に、塩素原子及び/又は臭素原子が2つ
以上置換した芳香族ハロゲン化合物又は下記の化学式
[化8]で表されるチオケトンが好ましい。
【0045】
【化8】
【0046】上記の化学式[化8]中、Ar1 及びAr
2 は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は芳香
族複素環基を表し、具体的には、前記の化学式[化1]
中のAにおけるのと同様の芳香族炭化水素基又は芳香族
複素環基が挙げられる。下記の化学式[化9]は、好ま
しいチオケトン類を例示したものである。
【0047】
【化9】
【0048】次に、バインダーポリマーについて説明す
る。バインダーポリマーとしては、前記の各化合物との
相溶性が良好であり、更に、電荷キャリアーの層内移動
に対して悪影響を及ぼさないポリマーが好ましい。例え
ば、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エ
ステル、メタクリル酸エステル、ブタジエン等のビニル
化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルアセタール、
ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリ
フェニレンオキシド、ポリウレタン、セルロースエステ
ル、セルロースエーテル、アルキド樹脂、フェノキシ樹
脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。これらの
中では、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メ
タクリル樹脂、アクリル樹脂及びフェノキシ樹脂が好ま
しく、特に、ポリカーボネート樹脂及びメタクリル樹脂
が好ましい。
【0049】バインダーポリマーの使用量は通常、正孔
輸送性低分子化合物に対し、0.1〜30重量倍、好ま
しくは0.3〜10重量倍の範囲である。本発明の光情
報処理素子におけるメモリー層は前述の正孔輸送性の低
分子化合物、メモリー性付与機能を有する化合物をバイ
ンダー中に分散して構成されるが、更に、必要に応じて
可塑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、電子
吸引性化合物等の添加物を含有させることができる。
【0050】次に本発明の光情報処理素子の製造方法に
ついて説明する。本発明の光情報処理素子はまず上記の
メモリー層の各成分及び必要に応じて使用される各種の
添加物成分を溶剤に溶解して塗布液を調製し、当該塗布
液を電極上に塗布した後乾燥してメモリー層を形成す
る。メモリー層の膜厚は、光情報処理素子の動作に必要
な電界強度、電源電圧の範囲により決定されるが通常は
100μm以下、好ましくは30μm以下とされる。そ
して、膜厚の下限は、塗布膜の均一性の確保及びピンホ
ールの防止の観点から、0.01μm、好ましくは0.
1μm以上とするのがよい。
【0051】メモリー層上に光電変換層を形成する方法
としては、塗布法、真空蒸着法、CVD法の他に、ラン
グミュアー・ブロジェット(LB)法(LB膜とエレク
トロニクス、1頁〜15頁、33頁〜46頁、シーエム
シー、1986年を参照)等によって単分子層を積層す
る方法等が挙げられる。光導電性材料の形状も上記製法
により様々である。セレンやシリコンの様に、無定形の
薄層の場合のほか、微粒子からなる薄層や、バインダー
樹脂中に粒子が分散した形、溶解した形等があり、さら
にLB法により単分子層が数層積層したLB膜の形状も
ある。LB膜の場合には光導電性色素単独の他、アラキ
ン酸等の絶縁性の長鎖脂肪酸あるいは異なる色素との混
合膜や、混合比の異なる単分子膜を積層することもでき
る。
【0052】光導電性材料が微粒子としてバインダー樹
脂中に分散した形の光電変換層ではバインダー樹脂とし
ては、微粒子の分散性の良好な水酸基を有するバインダ
ー樹脂であるブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、フェノ
ール樹脂等のほか、ポリエステル、ポリカーボネート、
メタクリル系樹脂等が用いられる。蒸着等によって光電
変換層を形成する場合には必要に応じて、より変換効率
を高めるために溶媒蒸気にさらして結晶型を変える操作
等も行われる。
【0053】また、光電変換層には塗布性、分散安定
性、保存安定性の向上のための添加剤を加えることがで
きる。さらに、キャリアー輸送能のある光導電性材料を
加えることもできる。光電変換層の厚さは、製法によっ
ても異なるが、数十Åから数μmであり、一般には1μ
m以下の厚さが望ましい。メモリー層、光電変換層の積
層に際しては必ずしも上記の順序である必要はなく、光
電変換層上にメモリー層を上記の方法で形成してもよ
い。また、メモリー層、光電変換層を別々の電極上に形
成した後に圧着等により一体化させる製造法も採用する
ことができる。電極の積層は、スパッタリングや蒸着法
等のほか、圧着法によってもよい。
【0054】本発明の光情報処理素子は電極間に電圧を
印加して使用される。その際に、光を照射しない暗状態
では絶縁性で、暗電流は非常に小さい値であるが、光電
変換層の吸収波長領域の光(入力光)を照射中には、導
電性が増大し明電流が観測される。そして、メモリー層
の吸収波長領域の光(制御光)を一定時間照射したのち
に観測すると、暗電流値はほとんど変化しないが、入力
光を照射すると、制御光を一定時間照射する前に観測さ
れた明電流値と比べて増大あるいは減少する。すなわち
制御光照射によって入力光に対する素子の応答感度が変
化し、この変化した受光感度は電圧が印加された状態に
おいて安定に保持されるから、この素子は受光感度の変
化という形態で情報を記憶していることになる。素子の
受光感度は光照射量、照射回数、印加電圧等によってア
ナログ的に制御が可能である。
【0055】ここで入力光は光電変換層に吸収されて、
メモリー層にできるだけ影響を及ぼさないことが必要で
あり、制御光は入力層とメモリー層の界面近傍にに吸収
されることが必要で、その場合には制御光を情報の書き
込みに、入力光を情報の読みだしに使用することが可能
となる。その際に入力光と制御光は同一波長であっても
異なる波長であってもよく、光の強度も同一でも異なっ
ていてもよい。光は単色光であっても一定の波長幅を持
った光であってもよい。光の入射方向もメモリー層側か
らでも光電変換層側からでもよい。
【0056】また、入力光と制御光を区別しない使用法
も可能で、メモリー層と光電変換層との接合界面近傍に
まで到達する光を用いれば、光照射毎に明電流値が変化
する。上記の現象のメカニズムは現時点では十分明らか
ではないが、次のように仮説することができる。すなわ
ち、メモリー層中の正孔輸送性の低分子化合物、メモリ
ー性を付与する機能を有する化合物あるいはバインダー
ポリマー等が制御光照射により単独あるいは分子間でプ
ロトトロピー、異性化、配向変化等の状態変化を引き起
こし、例えば、光電変換層界面近傍での分極を変化させ
ることにより光電変換層からの正孔注入のエネルギー障
壁を低下させ、光電変換層に入力光を照射する際にでき
る正孔の流入を容易にさせる等の変化を生じさせ、入力
光照射時の明電流が増加する。そして、このように変化
した状態が安定に持続することにより、記憶(メモリ
ー)機能が発現される。
【0057】本発明の光情報処理素子は、電極間に電圧
を印加して使用される。制御光照射時に電極間にかかる
電界強度の大小によって受光感度の変化の度合いを制御
することができる。この際、電界強度が大きいほど素子
の受光感度の変化の割合は大きくなる。電界強度として
は絶縁破壊を起こさないことが必要で、一般的には10
7 V/cm以下とされ、通常は106 V/cm以下、好
ましくは5×105 V/cm以下である。
【0058】次に、本発明のメモリーの消去方法につい
て説明する。光情報処理素子は、その少なくとも一部に
前記のメモリー性を付与させ得る波長範囲の光を照射さ
せられてメモリー状態となっている。そして、かかるメ
モリーは、室温下では安定で長時間保持されている。本
発明のメモリー消去方法は上記のメモリー状態の光情報
処理素子を加熱することにより素子内の分子の配向状態
等を熱的に緩和して可逆的に元の状態に復帰させること
によりメモリーの消去を図るものである。また、光情報
処理素子の加熱は全体または一部のみについて行うこと
もできる。一部加熱の場合は、メモリーの消去は部分的
に行われる。
【0059】加熱手段としては特に制限はないが、光情
報処理素子の全体を恒温雰囲気に置く方法、熱ローラ
ー、ホットプレート、加熱ヘッド等の加熱物体と接触さ
せる方法、ペルティエ素子の通電加熱による方法、レー
ザー等を吸収して発熱する層を積層する方法等を適宜採
用することができる。特に、加熱ヘッド、ペルティエ素
子、レーザー吸収層を利用する方法は光情報処理素子の
一部のみの加熱が可能であることから部分的消去を容易
に行うことができる。
【0060】加熱温度はメモリー層のガラス転移温度
(Tg)+10℃以上の温度が良く、メモリーの消去は
速やかに行われる。加熱温度は光情報処理素子の保護の
観点から200℃以下とするのがよく、加熱時間は適用
する加熱温度との関係で決定される。なお、メモリー層
のガラス転移温度は示差走査熱量測定により測定した値
を意味する。
【0061】
【実施例】
実施例1 <光情報処理素子の作製>9−エチルカルバゾール−3
−カルバルデヒドジフェニルヒドラゾン1.0g、4,
4’−ビス(ジメチルアミノ)チオベンゾフェノン1
2.5mg、ポリカーボネート1.25gをジオキサン
14gに溶解して塗布液を調整した。
【0062】ガラス基板上に形成したITO電極層の上
に上記の塗布液を乾燥後の膜厚が3μmになるように塗
布して乾燥し、メモリー層を形成した。次いで、チタニ
ルフタロシアニン2重量部、ポリビニルブチラール1重
量部をn−プロピルアルコールおよびメタノールを重量
比60:40で混合した溶剤に固形分比率が3.4%に
なるように混合して分散液を調整した。この分散液を上
記のメモリー層上に、乾燥後の膜厚が約0.1μmにな
るように塗布して乾燥し、光電変換層を形成した。光電
変換層表面にアルミニウムを素子の電極面積が1cm2
となるように真空蒸着して対向電極を形成し、光情報処
理素子を作製した。 <メモリーの消去試験>上記の光情報処理素子にアルミ
ニウム電極側を正極として直流電圧30Vを印加した
後、透明電極(ITO電極)側から出力100μW/c
2 で波長700nmの単色光を1分間照射したとこ
ろ、1×10ー8A/cm2 の明電流が観測された。次に
445nmの単色光を透明電極側から5分間照射した。
20分後、再び700nmの単色光を透明電極側から照
射したところ、今度は5×10ー7A/cm2 の明電流が
再現性良く観測された。即ち、445nmの光照射によ
って700nmの光に対する明電流の応答感度が約50
倍に増大することを確認した。この増大した応答感度は
室温下で経時的に安定で、3時間後に96%、5時間後
に91%、7時間後に91%保持された。
【0063】ついで、上記の光情報処理素子を恒温室中
に5分間収容して加熱し、放冷後に再び700nmの単
色光を照射して明電流値を測定した。ここで、加熱放冷
後の明電流値の、加熱前の明電流値に対する比から下記
式<2>に示す、メモリーの復帰率を算出した。図1
は、加熱温度に対するメモリーの復帰率の関係を示した
ものである。なお、この素子のメモリー層のTgは約8
0℃であった。 メモリー復帰率={(1−明電流(加熱後)/明電流
(加熱前)}×100…<2> 図1の結果から、光情報処理素子のメモリーは加熱によ
り消去され、特に、メモリー層のガラス転移温度(T
g)以上の温度で消去効果が高いことがわかる。
【0064】なお、メモリーを熱消去した光情報処理素
子は、繰り返しメモリー及び熱消去が可能であることを
確認した。また、100℃以上の加熱温度の場合は、加
熱ヘッドの使用により、メモリーの消去は数秒で可能で
あった。 実施例2 実施例1と同様にして、光情報処理素子を作製した。 <メモリーの消去試験>上記の光情報処理素子にアルミ
ニウム電極側を正極として直流電圧30Vを印加した
後、透明電極(ITO電極)側から出力100μW/c
2 で波長445nmの単色光を20秒間照射したとこ
ろ3×10ー8A/cm2 の明電流が観測された。光遮断
後は速やかに元の暗電流値に復帰した。波長445nm
の光を繰り返し10回照射後には1×10ー7A/cm2
に増大した。即ち、445nmの光に対する応答感度が
光照射を繰り返す度に連続的に増加して、メモリーされ
ていることをを確認した。
【0065】次に、上記のメモリーされた素子をペルテ
ィエ素子を用いて約80℃に加熱した後に、再度445
nmの単色光を20秒間照射したところ3×10ー8A/
cm 2 の明電流が観測され、メモリーされる以前の元の
状態に復帰していることを確認した。かかるメモリー操
作とその消去の操作とを繰り返し行った結果、上記の光
情報処理素子は可逆的にメモリー、消去を繰り返し行う
ことができた。
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、演算処理、視覚情報処
理、ニューロコンピューター、センサー等各種用途に応
用することが期待される光情報処理素子に対して効果的
なメモリーの消去方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】光情報処理素子におけるメモリーの復帰率と加
熱温度との関係を示すグラフ。
【図2】マッカロー・ピッツによるニューロンモデルを
表した図。
【符号の説明】
1 〜un :入力信号 w1 〜wn :シナプスの結合荷重 v :出力信号 g(x) :出力関数

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一方の電極が光透過性を有す
    る電極間に光電変換層と一定の波長の光により変化した
    導電性を光遮断後も持続させる機能を有するメモリー層
    とを有する光情報処理素子において、メモリー層の導電
    性を変化させる波長の光の照射によって該光情報処理素
    子の受光感度を変化させたメモリー状態を消去するにあ
    たり、該光情報処理素子を加熱することを特徴とする光
    情報処理素子におけるメモリーの消去方法。
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