JPH0611769Y2 - 輪転印刷機における版胴装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案は輪転印刷機の版胴装置に関し、特に刷版を別
個に装着した版胴を軸方向左右に振り分け、停止中にも
運転中にもそれぞれ別個に天地方向および軸方向に見当
合わせのための微動調整が可能となつている版胴装置の
改良に関する。

従来の技術 本出願人は先に実願昭５９−124876号により両側機枠に
回転自在に軸支された芯筒部材の外周面に軸方向左右に
振り分けて２個の版筒を相対移動自在に嵌合させ、それ
ぞれの版筒を別個に天地方向および軸方向に見当調整す
る輪転印刷機の版胴装置を提案し、この提案の版胴装置
は見当調整の際、重量の大きな芯胴部材を移動すること
なく薄肉軽量の版筒のみを相対的に微動調整できる利点
がある。

考案が解決しようとする問題点 しかしながら前記の装置は、芯胴部材と両版筒の回転駆
動力は、ブランケツト胴の両軸端部からそれぞれ噛合す
る一対宛のヘリカル歯車により伝導されるので、本来は
駆動側機枠近傍にのみ設けられていた噛合ヘリカル歯車
等よりなる駆動部材および天地方向調整部材並びに軸方
向調整部材を操作側機枠にも設けることになり、その保
守、潤滑部材も追加するなど、その機構が複雑になると
いう不便があつた。

そこでこの考案は、前記のような既提案の考案がもたら
す不便を排除し、機構を簡素化すると共に強化し、製作
並びに保守、調整を容易にすることができる輪転印刷機
の版胴装置を提供することを目的とする。

問題点を解決するための手段 この考案は前記の目的を達成するために、駆動側に版胴
のほぼ半分の長さの小径部を設けて両側機枠に回転およ
び軸方向移動自在に軸支される版胴本体の小径部に、版
筒を相対的に回転および軸方向移動自在に嵌合し、この
版筒の一端に駆動側機枠に向かって延びる軸を版胴本体
の軸に滑動自在に設け、駆動側機枠の外側にあって、版
胴本体の軸に駆動用ヘリカル歯車を軸方向に移動可能に
嵌合し、このヘリカル歯車をブランケット胴の軸端部に
装着されたヘリカル歯車に噛合し、また駆動側機枠の内
側にあって、版筒の軸に平歯車を固着し、この平歯車に
ヘリカル歯車からの回転駆動を伝導する伝導部材を駆動
側機枠の内外にわたり回転及び移動自在に設け、ヘリカ
ル歯車を軸方向に移動して回転させる版胴本体用天地方
向調整部材及び版胴本体の軸を軸方向に移動させる版胴
本体用軸方向調整部材を駆動側機枠の外側に設け、さら
に伝導部材を軸方向に移動して回転させる版筒用天地方
向調整部材を駆動側機枠の外側に設けるとともに、版筒
の軸を軸方向に移動させる版筒用軸方向調整部材を駆動
側機枠の内側に設けたことを特徴とするものである。

このような構成により、版胴及び版筒がそれぞれ駆動側
機枠の外側に配置された駆動用ヘリカル歯車を経て駆動
されるとともに、同様に駆動側機枠の外側に配置された
版胴本体用天地方向調整部材及び版胴本体用軸方向調整
部材並びに駆動側機枠の外側及び内側に配置された版筒
用天地方向調整部材及び版筒用軸方向調整部材によって
別個に両方向における見当合わせが行なわれることとな
る。

実施例 以下この考案を図面に示す実施例に基いて詳細に説明す
る。

１は版胴装置で、通常の版胴の胴長のほぼ半分の長さに
小径部６をその駆動側に設けた版胴本体５は、図示の左
右の軸７，９に装架した軸受１０により両側の機枠、即
ち駆動側機枠３および操作側機枠２に支持されて、半巾
分の刷版１１を２枚その大径部６′に装着して回転する
と共に軸方向にも移動できるようになつている。

１３は版胴本体５の小径部６に回転方向にも軸方向にも
相対的に移動できるように嵌合している薄肉の版筒で、
その外径は隣接している版胴本体５の大径部６′と等し
く、図示しない版締装置を備えていて、半巾分の刷版１
２を２枚その外周面に装着している。この版筒１３の左
端部には駆動側機枠３に向つて延びる軸１４がボルト１
５により一体的に固着しており、軸１４の外周部には版
筒１３を回転駆動する平歯車１６が固着され、また機枠
３に近接した軸端部には軸受１７が装着されており、更
に版胴本体５の軸７がこの軸１４の同芯穴を貫通して軸
１４を滑動自在に支持している。

４は版胴装置１と共に回転しながら刷版１１．１２から
インキの転写像を受けるブランケツト胴で、軸支される
両機枠のうち駆動側機枠３の外側に延びる軸端部２１に
固着され、図示しない印刷機駆動源に連なるヘリカル歯
車２２を備えている。

２３はヘリカル歯車２２と噛合する版胴本体５の駆動用
ヘリカル歯車で、軸７から更に延長して設けたスプライ
ン軸８上に軸方向に移動可能に嵌合しており、その左端
部に軸受３１を装着する。２４はヘリカル歯車２３と同
一の捩れ角を備えて一体的に設けたヘリカル歯車で、こ
のヘリカル歯車２４と噛合する中間伝導用のヘリカル歯
車２５を一端に固着し、駆動側機枠３の内側に延びる中
間軸２７の他端に版筒１３の駆動用平歯車１６と噛合す
る平歯車２６を固着した伝導部材を設けている。中間軸
２７は軸受２８を備えたスリーブ２９に軸支され、スリ
ーブ２９はキー３０により回転は拘束されているが軸方
向には移動可能に駆動側機枠３に設けた穴に嵌着してお
り、この伝導部材全体が軸方向に移動するようになつて
いる。

３５は複数の支柱３６により駆動側機枠３に固着した補
助枠で、外周に雄ねじを設けたフランジ３３を版胴本体
５と同芯にこの補助枠３５に固着する。３２は左側内周
面にフランジ３３の雄ねじと螺合する雌ねじを設けた調
整歯車で、右側内周面には軸受３１の外輪を収納してヘ
リカル歯車２３を軸方向に拘束する。３４は調整歯車３
２と噛合して図示しない版胴本体５の天地方向の自動又
は手動調整操作源に至る連結部材である。

３８はねじ軸でフランジ３３の中心穴に設けた雌ねじと
螺合しており、その右端部は軸受３７により回転自在で
はあるが軸方向には相互に一体的に移動するようにスプ
ライン軸８と係合し、その左端部には調整歯車３９を固
着して、これと噛合する歯車等の連結部材４０により図
示しない版胴本体５の軸方向の自動又は手動調整操作源
に連結されている。

４２は右端部に装着した軸受４１を介して中間伝導用ヘ
リカル歯車２５と共に軸方向に連動するねじ軸で、補助
枠３５に中間軸２７と同芯に固着した雌ねじ４５と螺合
しており、更に調整歯車４３を固着する。４４はこの調
整歯車４３と噛合する連結部材で、図示しないが、版筒
１３の天地方向の自動又は手動調整操作源に連結されて
いる。

１９は外周に雄ねじを設けたフランジで駆動側機枠３の
内側面に版筒１３と同芯に固着され、調整歯車１８の左
側内周面に設けた雌ねじと螺合している。調整歯車１８
はその右側内周面に軸受１７の外輪を収納して軸１４と
一体的に連結している版筒１３を軸方向に拘束する。２
０はこの調整歯車１８と噛合する連結部材で、図示しな
いが版筒１３の軸方向の自動又は手動調整操作源に連結
されている。

なお、４６は駆動側機枠３の内側に設けた版筒１３に連
結される歯車、ねじ、軸受等からなる駆動部材および天
地並びに軸方向調整部材を印刷中に発生する紙粉、イン
キミスト等の異物から保護すると共に、これらの伝導要
素に供給する潤滑油の飛散から走行紙を保護するカバー
である。また、上述の自動調整操作源としては押釦又は
ダイアル操作により可逆微動運転制御可能なモータであ
ればよく、また手動操作源としては操作側機枠の操作面
にハンドル車および指針等慣用の操作機器を使用すれば
よい。

前記のものの作用について説明する。

版胴装置１において、版胴本体５の刷版１１を天地方向
に見当調整するときは、連結部材３４により調整歯車３
２を回転すると固着したフランジ３３の外周雄ねじと螺
合している調整歯車３２が回転方向に応じて軸方向に左
右に移動し、この移動に従つて軸受３１を介してヘリカ
ル歯車２３は、ブランケツト胴４の駆動用ヘリカル歯車
２２と噛合して回転力を受けながらスプライン軸８上を
移動するので、歯の捩れ角と軸方向の移動量C₁に対応し
た量だけブランケツト胴４に対する版胴本体５の角度位
相が進退し、刷版１１は天地方向にC₁だけ見当調整され
る。

このときヘリカル歯車２３と一体のヘリカル歯車２４も
スプライン軸８上を軸方向に移動するが、回転方向にも
同じ角度位相の変位を自ら行なうので、ヘリカル歯車２
４と噛合する中間伝導用のヘリカル歯車２５はブランケ
ツト胴４のヘリカル歯車２２に対しては何等位相を変更
すべき力の作用を受けることなく、ヘリカル歯車２４か
ら回転力を伝達され続ける。

版胴本体５の刷版１１を軸方向に見当調整するときは、
連結部材４０を操作して調整歯車３９を回転するとフラ
ンジ３３の雌ねじと螺合しているねじ軸３８が回転方向
と回転角度に応じてピツチに従つて軸方向にS₁だけ移動
し、その推力が軸受３７を介してスプライン軸８に働き
版胴本体５を刷版１１と共に軸方向に微動して見当調整
S₁が行なわれる。

次に、版筒１３の刷版１２を天地方向に調整するとき
は、連結部材４４を操作して調整歯車４３を回転すると
補助枠３５に固定した雌ねじ４５と螺合しているねじ軸
４２が回転に応じて軸方向に左右に移動し、右端部の軸
受４１を介してヘリカル歯車２５を軸方向にC₂だけ押動
する。ヘリカル歯車２５は中間軸２７に固着された右端
部の平歯車２６およびこれらの中間伝導部材を軸支する
軸受２８、スリーブ２９と共に軸方向に移動するとき、
噛合しているヘリカル歯車２４から回転力を受けなが
ら、歯の捩れ角と軸方向の移動量C₂に対応した量だけ角
度位相が進退し、ヘリカル歯車２５のこの角度位相の変
化量は平歯車２６と噛合する平歯車１６を介して軸１４
から版筒１３に伝達されて刷版１２が刷版１１とは独立
して天地方向にC₁だけ見当調整される。

刷版１２を軸方向に見当調整するには連結部材２０より
調整歯車１８を回転すると固着したフランジ１９の外周
雄ねじと螺合している調整歯車１８は回転方向と回転角
度に応じて軸方向にS₂だけ移動し、その推力が軸受１７
を介して軸１４を同じ量だけ軸方向に移動する。このと
き伝導平歯車２６と噛合して回転力を受けている版筒１
３の駆動用平歯車１６も回転しながら軸方向に移動する
が平歯車による回転力伝導であるので相互の角度位相の
変化は生じない。軸１４の軸方向移動により版筒１３お
よび装着された刷版１２は版胴本体５とは無関係に軸方
向にS₁だけ見当調整される。

なお上述の説明の実施例では駆動用ヘリカル歯車２３と
２４とを分けて一体的に結合した態様で説明したが、ヘ
リカル歯車２４を除いて、中間伝導用のヘリカル歯車２
５をヘリカル歯車２３と噛合させ、その歯数比と同一歯
数比になるように平歯車１６の歯数を定めて伝導しても
よい。

考案の効果 この考案は前記のようであって、駆動部材、版胴本体用
天地方向調整部材、版胴本体用軸方向調整部材、版筒用
天地方向調整部材及び版筒用軸方向調整部材をすべて駆
動側機枠のある側に設け、従来のもののようにこれらの
部材の一部を操作側機枠の外側にも設ける必要がなくな
ったので、版胴装置の機構を簡素化し、強化できるとと
もに、これらの部材に対する潤滑油用配管や操作源に対
する配線、配管をスペースのできた操作側機枠のある側
に集中することができ、製作も保守、調整も極めて容易
に行なうことができるとともに、コストも安価に抑える
ことができる。また、駆動側機枠のある側に設けられた
前記各部材のうち、版筒用軸方向調整部材や伝導部材の
一部を駆動側機枠の内側に配置して駆動側機枠の外側の
他の部材とそれぞれ内外に分散させることにより、版胴
本体をその左右の軸に装架した軸受により直接、駆動側
機枠および操作側機枠に支持し、かつ薄肉軽量の版筒を
版胴本体の小径部の軸を短くすることができるので、た
わみなどを最小にして安定した構造とすることができ
る。さらに、駆動側機枠の外側に設けられる前記各部材
の該機枠からの高さ（長さ）を全体的に可及的に低くす
ることが可能なので、駆動側機枠の外側にすべてを配置
することによって前記各部材の該機枠からの高さが高く
なることによるデメリット、すなわち通常、駆動側機枠
の外側に隣接して設けられる作業者用通路に前記各部材
がはみ出す高さが高くなり、通路が狭くなってしまうこ
と、高さが高くなると必然的に両機枠間に配置される版
胴等の軸方向長さが長くなり、コスト高となること、版
胴等の長さが長くなると長くなったぶんだけその強度も
弱くなること、等を解消することができるという優れた
効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の実施例の一部縦断正面図である。 １……版胴装置、２……操作側機枠 ３……駆動側機枠、４……ブランケツト胴 ５……版胴本体、６……小径部 11,12……刷版、13……版筒 16,22,23……駆動部材（歯車） 25,26……伝導部材（歯車）、35……補助枠

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】版胴の左右にそれぞれ別個に刷版を装着
   し、運転中にもそれぞれ別個に天地方向および軸方向の
   見当調整が可能な輪転印刷機における版胴装置におい
   て、 駆動側に版胴のほぼ半分の長さの小径部(6)を設けて両
   側機枠(2,3)に回転および軸方向移動自在に軸支される
   版胴本体(5)の小径部(6)に、版筒(13)を相対的に回転お
   よび軸方向移動自在に嵌合し、この版筒(13)の一端に駆
   動側機枠(3)に向かって延びる軸(14)を版胴本体(5)の軸
   (7)に滑動自在に設け、駆動側機枠(3)の外側にあって、
   版胴本体(5)の軸(7)に駆動用ヘリカル歯車(23)を軸方向
   に移動可能に嵌合し、このヘリカル歯車(23)をブランケ
   ット胴(4)の軸端部(21)に装着されたヘリカル歯車(22)
   に噛合し、また駆動側機枠(3)の内側にあって、版筒(1
   3)の軸(14)に平歯車(16)を固着し、この平歯車(16)にヘ
   リカル歯車(23)からの回転駆動を伝導する伝導部材(2
   5),(26)を駆動側機枠(3)の内外にわたり回転及び移動自
   在に設け、ヘリカル歯車(23)を軸方向に移動して回転さ
   せる版胴本体用天地方向調整部材(32)及び版胴本体(5)
   の軸(7)を軸方向に移動させる版胴本体用軸方向調整部
   材(39)を駆動側機枠(3)の外側に設け、さらに伝導部材
   (25),(26)を軸方向に移動して回転させる版筒用天地方
   向調整部材(43)を駆動側機枠(3)の外側に設けるととも
   に、版筒(13)の軸(14)を軸方向に移動させる版筒用軸方
   向調整部材(18)を駆動側機枠(3)の内側に設けたことを
   特徴とする輪転印刷機における版胴装置。