JPH06114549A - 板状体のろう接方法 - Google Patents

板状体のろう接方法

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JPH06114549A
JPH06114549A JP25891892A JP25891892A JPH06114549A JP H06114549 A JPH06114549 A JP H06114549A JP 25891892 A JP25891892 A JP 25891892A JP 25891892 A JP25891892 A JP 25891892A JP H06114549 A JPH06114549 A JP H06114549A
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易之 谷口
Ryoji Kobayashi
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 2枚の板状体を接合するろう材層内に酸化物
や気泡を含有することなくろう接し、ろう接強度を大き
くする。 【構成】 2枚の板状体3、8にそれぞれ溶融ろう材被
覆9A、9Aを形成し、両板状体を互いにずれた位置で
向い合せ、両溶融ろう材被覆を端縁側から接触させ、両
者を摺り合わせながら相対的に移動させて重ね合せ、こ
れにより、被覆表面に生じている酸化物をしごき出し、
酸化物や気泡を噛み込まない状態でろう材被覆を合体さ
せ、その後、ろう材を冷却、凝固させてろう接を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、2枚の板状体の広い面
積をろう材によって接合する板状体のろう接方法に関
し、特に、スパッタリング用ターゲット部材などのろう
接積層体を、ろう接欠陥少なく且つ高能率に製造するの
に好適なろう接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】板状体を縦横に広い面積を以て欠陥少な
くろう接することが求められる代表的な物件は、スパッ
タリングを利用した気相薄膜形成に用いられるターゲッ
ト部材である。以下、本発明方法の説明をスパッタリン
グ用ターゲット部材を例にとって行うが、これは本発明
方法の適用対象を限定するものではない。
【0003】スパッタリングを利用した薄膜形成技術の
代表的なものであるイオンスパッタリング法は、図3に
示した装置において、グロー放電により発生したアルゴ
ンなどのイオン1がターゲット部材2のターゲット板3
に照射され、これによってターゲット板3から原子又は
分子或いはこれらのクラスター4がイオン化されて飛び
出し、これが電源5により形成された電場の支援を受け
て対象物6に到達し、目的とする薄膜7を対象物6の表
面に形成するものである。
【0004】上記スパッタリングに用いられるターゲッ
ト部材2は、図4に示すように、2枚の板状体即ち薄膜
形成材料源となるターゲット板3と、このターゲット板
3を支持し冷却するための裏打ち板8とを、ろう材層9
によって接合したものである。それぞれの板状体、特に
ターゲット板については、ろう材に対する濡れを確保す
るためのプライマー層としてニッケルなどの薄膜を介在
させる場合もある。ターゲット板は、スパッタリングで
形成させようとする薄膜の種類に応じて、アルミニウ
ム、ニッケルなどの純金属、コバルト−ニッケル、各種
シリサイドなどの合金、或いはアルミナや高温超電導材
料のようなセラミックスが充てられる。裏打ち板として
は、ろう接性、熱伝導性共に優れた汎用金属である銅が
標準的に使用されているが、他材料の適用も可能であ
り、本発明方法適用上の必要条件となるものではない。
【0005】ろう材としてはインジウム又はこれを主体
とする合金が多用されている。これは、一つは、セラミ
ックスを含めた殆どの物質に対して大なり小なり付着力
を発現することによっており、もう一つは、160°C
以下でもろう接が可能であり、加熱履歴に敏感な材料も
あるターゲット板に対する熱影響が比較的小であること
による。但し、インジウムは高価であるため、錫系ろう
材の使用も望まれているが、ろう接作業温度がインジウ
ム系よりも50°C以上高いため、長時間を要する従来
のろう接技術においては熱影響の懸念が大きく、また、
接合が困難な場合も生じるなどから、本格的な利用には
至っていない。
【0006】ターゲット部材を得るための従来のろう接
方法の例を挙げれば、先ずターゲット板及び裏打ち板を
ホットプレート等によってろう材の融点以上に加熱し、
必要に応じてフラックス及び/又は超音波振動を援用し
て、それぞれの片面にろう材をこすりつけるなどして溶
融ろう材によって片面被覆された状態とし、次いで、両
者の溶融ろう材被覆面同志を対面させる形で突き合わせ
て溶融ろう材被覆層を合体させ、その後、錘を載せるな
どして加圧しながら自然冷却凝固させるというものであ
る。上記ろう接作業は、ろう接層に気泡を巻き込み易い
ものであるため、要所或いは全部の操作を真空ないしは
減圧下で実施し、或いは、気泡を追い出すために、接合
部のろう材が溶融している間に超音波振動を適用するこ
とが多い。この結果、従来のろう接作業は、加熱時間短
縮のために高周波誘導加熱を利用したとしても、ろう材
が溶融状態でターゲット板等に接している時間が長くな
り、これは生産性の低さばかりでなく、ろう材選定上の
制約となり、更には、合金層の発達につながるなど接合
品位にも悪影響を及ぼしていた。
【0007】スパッタリング利用の薄膜形成技術はIC
やメモリーディスクなどの高度用途に重用されるもので
あり、このためターゲット部材の品質は種々な点で重要
なものとなる。第一は純度である。これは主として、供
されるターゲット板の品位に支配されるが、ろう接作業
時間の長さも、不可避的水分存在下でのターゲット板へ
の水素侵入の増大につながり、用途によっては問題とな
る場合もある。
【0008】第二は、ろう接の強度的な信頼性である。
従来方法において、溶融ろう材被覆同志を合体させる
際、表面のろう材酸化物層が発達していると、ろう材層
同志が隔離されて合体が阻害されるので、このような領
域の分率に応じて接合強度が減殺される。インジウム及
び錫は共に溶融状態での蒸発速度が小さいため、酸化物
層を生じ易く、又、これらの酸化物は極めて安定であ
る。よって、上記合体迄の加熱を真空下で行う程度の処
置や経過時間の短縮によって上記問題を回避するのは実
質的に困難である。ろう接強度は、更に、ろう材のター
ゲット板等との合金層の発達によっても質的に損なわれ
る。これは合金層の発達がろう接層を脆弱なものにする
ためであって、上記の不健全領域の存在に起因する応力
集中と相まって、小さな衝撃でもろう接層が破壊され、
ターゲット板が脱落して当該ロットに大きな損害をもた
らす事態も起こり得る。
【0009】第三はろう接層への気泡の巻き込みであ
る。ターゲット板の厚さに比して有意な大きさの気泡な
いしは小気泡集落の存在は、ターゲット部材貫通方向の
熱伝導にむらを生じるため、形成された薄膜の品質むら
ないしは品質不良の危険性につながるものである。
【0010】以上に述べたターゲット材品質諸項目の
内、第一の問題は端材の分析検定によって最も保証し易
く、又、当然のこととして分析結果が報告される。更に
言えば、ターゲット板は製造工程が極めて厳格に管理さ
れたものであることから、検査を省略しても実質上影響
の少ない項目である。
【0011】第二の問題は現行上市品において最も未熟
な項目であると見なされる。現行上市品の多くは、ろう
材と板材との濡れ、或いは酸化物層の介在によるろう材
層の2層分離などの点で十分に健全とみなされるろう接
領域の分率は10%にも達していない。このため、のみ
と金槌により打撃する程度でも、ターゲット板と裏打ち
板を変形させることなく容易に分離してしまう。現状で
は、このように接合強度が極めて低いが、ターゲット部
材に特に力がかからないために支障を免れている状況に
ある。
【0012】第三の問題は、裏打ち板が厚いなどによっ
て実際には不具合につながりにくい項目であるが、現実
にはこの項目がターゲット部材の品質競争のポイントと
なっている。このため、ろう接後の気泡の面積率を極力
小とすることに留意が集中し、この結果、超音波などに
よる脱泡工程を加えるところとなり、これがろう材が溶
融状態にある時間を引き延ばし、合金層の発達などの逆
効果にもつながっていた。
【0013】上述の通り、ターゲット部材の健全なろう
接を阻害している最大の要因は酸化物薄層の介在であ
る。従来技術においては、この問題が解決されておら
ず、又、このように材料間の濡れが劣る系であるが故に
気泡の巻き込みも大であり、更には、気泡追い出し操作
が新たな問題点を派生していたという事情にある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】ターゲット部材のろう
接に際し、溶融ろう材被覆層合体過程においては、フラ
ックスは通常使用されない。これは、酸化物薄層や気泡
と同様、フラックスもろう接層に閉じ込められて残留す
る事態が避けられず、ろう接層の腐食を引き起こし、不
具合につながると考えられるためである。しかし、酸化
物薄層の排除なしに健全なろう接を行うことは不可能と
判断されるため、本発明者らは、フラックスを用いるこ
となく酸化物薄層を排除することを課題とし、又、該薄
層が排除されて材料間の濡れが良好となった系にあって
は気泡の巻き込みも避け易く、従って、気泡の追い出し
操作も省略し得るとの狙いを以て鋭意検討を重ねた結
果、本発明を達成するに至ったものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、2枚の板状体
のそれぞれの片面のろう接すべき領域全体に溶融ろう材
被覆を形成し、次いで、該溶融ろう材被覆同志を接触合
体させて冷却し、ろう材を凝固させることにより板状体
同志をろう接する方法において、2枚の板状体に形成し
た溶融ろう材被覆同志の接触合体を、それぞれの被覆の
端縁同志の接触に発して、被覆同志を摺り合わせる形で
行うことを特徴とする板状体のろう接方法、を基本要旨
とする。
【0016】以下、本発明方法をスパッタリング用のタ
ーゲット部材の製作に適用する状況を概念的に示す図1
を参照して、本発明を更に詳細に説明する。図1におい
て、3はターゲット板、8は裏打ち板であり、ろう接す
べき2枚の板状体を示す。本発明の実施に当たっては、
先ず、図1(a)に示すように、2枚の板状体3、8の
片面にそれぞれ、溶融状態のろう材被覆9Aを形成し、
次いで、その板状体3、8を相互にずれた位置において
ろう材被覆9Aが向かい合うように配置し、図1(b)
に示すように、板状体3、8の面間距離(d)を両ろう
材被覆9Aの厚さの合計(t1 +t2 )よりも小さい値
に保った状態で、両板状体3、8の一方若しくは双方を
矢印で示す方向に移動させることにより、両板状体を相
対的に移動させて重ね合わせる。これにより、両溶融ろ
う材被覆9A、9Aが、それぞれの端縁側から接触を開
始し、摺り合わされる形で重なってゆく。
【0017】この際、各板状体に被覆された溶融ろう材
表面を覆っていた酸化物薄層は、摺り合わせ合体操作に
よって、図1(b)に符号11で示す除去物として、し
ごき出されて行き、これによって健全な溶融ろう材同志
が即時的に合体して行く。ここで、摺り合わせ合体操作
によって酸化物薄層がしごき出されてゆく理由は、その
酸化物薄層を押してゆく溶融ろう材被覆による機械的な
しごき出しというよりは、溶融ろう材の表面張力による
ためと思われる。すなわち、図2に拡大して示すよう
に、溶融ろう材被覆9A、9Aを接触させた際、溶融ろ
う材同志は酸化物層9bを押しのけ、清浄なろう材9
a、9a同志でつながり、一体化した清浄なろう材は表
面張力により縮まろうとするため、板状体3、8の相対
的な移動に伴って酸化物層9bを押し退けながら合体範
囲を拡張する。かくして、酸化物層9bが図1(b)に
示すように除去物11としてしごき出され、清浄なろう
材同志が合体し、合体は酸化物を噛み込まない完全な融
合の形で進行する。上記合体操作は、幾何学的に見て本
来気泡を巻き込みにくい形であるが、合体の前線が清浄
化されていることから、上記幾何学的好条件を乱す要因
も加わらず、気泡の巻き込みは僅少となる。この結果、
気泡追い出し操作を加える必要も全く生じない。両板状
体の相対移動軌跡は任意であるが、直線状又は円弧状が
装置化に適している。
【0018】本発明方法における溶融ろう材被覆同志の
摺り合わせ合体操作は、溶融ろう材被覆同志がそれぞれ
の表層を以て干渉し合うよう、それぞれの板状体に施す
溶融ろう材被覆の合計目付量(t1 +t2 )を、摺り合
わせの際の両板状体の面間距離(d)よりも大きくして
おく必要がある。この過剰量は、確実な干渉とろう材回
収量低減指向との兼ね合いから0.02〜0.5mmが
目安となる。両板状体には合計量が上記量目となるよ
う、例えば半量ずつの溶融ろう材被覆を施す。
【0019】板状体表面の溶融ろう材被覆は、清浄にし
た板状体の表面に固体又は溶融状態のろう材を接触させ
てろう材の融点以上に昇温することにより形成すること
ができる。この際、フラックスを用いると良好な被覆を
得やすい。但し、ろう接層へのフラックス残留を皆無と
する観点から、系を一旦冷却し、ろう材を凝固させた上
でフラックスを洗浄除去し、しかる後、ろう材層を再度
加熱溶融させて摺り合わせ合体操作に供することが望ま
しい。溶融ろう材被覆は、又、フラックスを用いずに或
いはフラックス併用下で系に超音波振動を作用させる構
成にて行ってもよい。
【0020】上記被覆操作における加熱は急速である程
良い。これは、ろう材が融点以上の温度で板状体に接し
ている時間が長いと脆弱な合金層が発達するためであ
る。この観点から、ろう材が融点以上の温度で板状体に
接している合計時間を30分以下に抑えることが望まし
い。急速加熱手段としては、電磁誘導加熱法は最も好適
なものと言える。また、スパッタリング用ターゲット部
材の裏打ち板のように、裏側表面品位が重要でない大熱
容量材に対しては、ガストーチが有利な急速加熱手段と
なる。清浄さが要求されるが熱容量の小さいターゲット
板には、赤外線やニクロム線電熱器による加熱も好適で
ある。
【0021】本発明方法は、大気中での操作によって十
分にろう接品位を確保し得るものであるが、板状体の加
熱及び摺り合わせ合体操作を真空中ないしは減圧下或い
は不活性ガス雰囲気中で行うことは、ターゲット板表側
表面の酸化防止並びにろう接層への気泡巻き込みを極少
化するのに有用であり、好ましいものと言える。
【0022】ろう材としては、インジウム、錫或いはこ
れらを主体とした合金が好適であるが、板状体との付着
性が確保されるものであれば種類は限定されない。板状
体へのろう材の付着性を確保するために、片方又は双方
の板状体にろう材の付着し易い薄膜被覆を施しておくの
も良い。このような被覆として、PVDや溶射などのド
ライプロセス或いは湿式メッキによるニッケルや銅の薄
膜を例示することができる。
【0023】両板状体3、8の摺り合わせ移動により、
図1(c)に示すように、ろう接すべき位置関係にもた
らされた、溶融ろう材被覆9Aを挟む2枚の板状体3、
8は、自然冷却によるろう材の凝固を経てろう接が完了
するものである。自然冷却は板状体のセットに特に荷重
を加えることなく行ってもよいが、錘を載せるなどして
荷重を加えながら行った方が、ろう接完了後の形状にお
いて優れたものとなる。
【0024】
【作用】上記したように本発明方法では、両板状体の溶
融ろう材被覆を摺り合わせて接触合体させるため、各板
状体に被覆された溶融ろう材表面に生じていた酸化物薄
層は、摺り合わせ合体操作時にしごき出されて行き、こ
れによって新生する溶融ろう材の清浄な前線同志が即時
的に合体して行く。かくして、合体は酸化物を噛み込ま
ない完全な融合の形で進行する。また、上記合体操作
は、幾何学的に見て本来気泡を巻き込みにくい形である
が、合体の前線が清浄化されていることから、上記幾何
学的好条件を乱す要因も加わらず、気泡の巻き込みは僅
少となる。この結果、合体した溶融ろう材被覆を凝固さ
せて得たろう接層は、酸化物や気泡を含まない高品質の
ものであり、強い接着強度を発現できる。また、溶融ろ
う材被覆を合体させた際に気泡追い出し操作を加える必
要は全くない。
【0025】
【実施例】
〔実施例1〕130mmφ×3mmtの純ニッケルター
ゲット板及び190mmφ×8mmtの純銅裏打ち板の
中心部130mmφの部分を、60%錫−40%鉛ろう
材を用いて本発明方法により下記のようにろう接した。
先ず、両板状体それぞれの片面を研摩紙と溶剤にて清浄
にし、裏打ち板外周の非ろう接部をマスキングした後、
ターゲット板はニクロム線電熱器で、裏打ち板はプロパ
ンガストーチにて約5分間でそれぞれ200°Cに加熱
し、それぞれの片面に塩化物系フラックスを手早く塗布
し、この上に被覆厚さ0.1mm相当量のろう材切片を
フラックスで濡らして乗せたところ、ろう材は溶融して
板面を濡らしながら拡張し、ろう接対象領域全体に行き
渡った。続いて、これらを冷却してろう材を凝固させた
後、ろう材表面のフラックスを蒸留水、有機溶剤とブラ
ッシングにより取り除いた。
【0026】次に、ニッケル板はろう材被覆面を下に向
け、裏打ち板はろう材被覆面を上向きとして、前者はろ
う材被覆面をニクロム線電熱器で、後者はろう材を被覆
しない側の面の中央部をプロパンガストーチにて、約5
分間加熱し、それぞれを約200°Cに昇温してろう材
を溶融させた上で、図1に示した要領で、両板状体の面
間間隔を0.15mmに保ちながら、相互に離れた位置
からニッケル板を裏打ち板に近づけて行き、先ず両者の
被覆端縁を接触させ、この後両者が同心となる位置ま
で、約30秒かけて摺り合わせ移動させた。上記系のニ
ッケル板上に0.5kgの錘を載せて自然放冷し、ろう
材の凝固により所望の純ニッケル−銅ターゲット部材が
得られた。
【0027】上記製品のろう接面を超音波探傷器で観察
したところ、1mmφ程度の気泡が3個認められるのみ
であった。また、この製品の4分割体をのみと金槌で剥
離しようとしたところ、脆性的には分離せず、プライヤ
ーにてニッケル板を端部から順に曲げながら引っ張る操
作により、ようやく引き剥がすことができた。剥離面は
金属光沢を有するろう材の凝集破壊面であり、高品位の
ろう接が確認された。これに対して、純インジウムろう
で接合した市販の同仕様製品を4分割したものは、のみ
と金槌の一撃によって両板状体が脆性的に剥離し、剥離
面は一様でなく、2層分離した光沢のないろう材面が大
半を占めていた。
【0028】〔実施例2〕ターゲット板を高純度のアル
ミニウムに代え、アルミニウムのろう接面にはイオンス
パッタリング法によるニッケルの薄被覆を施し、ろう材
を純インジウムに代え、ろう材被覆厚さ及び板状体面間
間隔を共に0.05mmとし、加熱温度を180°Cと
した他は、実施例1と同じ条件でアルミニウム−銅ター
ゲット部材を製作した。
【0029】上記製品は、実施例1と同様に、プライヤ
ーを用いてアルミニウム板を引き剥がさねばならず、
又、剥離はアルミニウム板とこの上に施したニッケル薄
被覆の間の界面剥離であった。即ち、ろう接層は強度を
支配しておらず、高い品位にあることが立証された。因
に、同じ仕様の市販品の剥離試験結果は、実施例1にお
けるそれと大差のないものであった。
【0030】
【発明の効果】本発明は、溶融ろう材合体時のろう材表
面の酸化膜の除去を、溶融ろう材層同志を摺り合わせる
合体操作によってフラックスを用いることなく実現し、
これにより、酸化膜による2層分離や気泡の巻き込みの
ない、又、合金層の発達していない高品位のろう接を可
能としたものである。
【0031】ろう接は、本来は溶接に準ずる信頼性を低
い作業温度で得られる接合法でありながら、広い面間の
接合については、方法ないしは条件を最適化できないま
ま低品位或いは用途限定を余儀なくされていた。本発明
のように上記隘路の突破は、ろう接技術の信頼性並びに
適用性を本来あるべき姿に向上させたものであり、いわ
ゆるハイテク技術をはじめとして諸産業界に対する貢献
は測り知れない。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)、(c)は、本発明方法によ
り、ターゲット板と裏打ち板とをろう接する状態を説明
する概略側面図
【図2】溶融ろう材被覆同志を合体させる状態を誇張し
て説明する概略断面図
【図3】スパッタリング法を実施する装置を概略的に示
す断面図
【図4】その装置に使用するターゲット部材の構成を示
す概略側面図
【符号の説明】
2 ターゲット部材 3 ターゲット板(板状体) 8 裏打ち板(板状体) 9 ろう材層 9A 溶融ろう材被覆 11 除去物

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2枚の板状体のそれぞれの片面のろう接
    すべき領域全体に溶融ろう材被覆を形成し、次いで、該
    溶融ろう材被覆同志を接触合体させて冷却し、ろう材を
    凝固させることにより板状体同志をろう接する方法にお
    いて、2枚の板状体に形成した溶融ろう材被覆同志の接
    触合体を、それぞれの被覆の端縁同志の接触に発して、
    被覆同志を摺り合わせる形で行うことを特徴とする板状
    体のろう接方法。
  2. 【請求項2】 2枚の板状体の相対的軌跡が直線状又は
    円弧状である請求項1記載の板状体のろう接方法。
  3. 【請求項3】 摺り合わせ操作によって溶融ろう材被覆
    層表面の酸化物薄層をしごき出して行き、これによって
    新生する清浄な溶融ろう材同志が合体する、請求項1又
    は2に記載の板状体のろう接方法。
  4. 【請求項4】 2枚の板状体に施す溶融ろう材被覆の合
    計量を、摺り合わせの際の板状体面間間隔よりも0.0
    2〜0.5mm厚さ相当分過剰としておくことにより、
    摺り合わせの際に溶融ろう材被覆同志の干渉が行われる
    ようにする、請求項1から3のいずれか1項に記載の板
    状体のろう接方法。
  5. 【請求項5】 フラックスを用いて板状体にろう材被覆
    を施し、冷却凝固後、このフラックスを取り除き、しか
    る後再加熱溶融して形成した溶融ろう材被覆を用いてろ
    う接を行う、請求項1から4のいずれか1項に記載の板
    状体のろう接方法。
  6. 【請求項6】 超音波振動を援用して施した溶融ろう材
    被覆を用いてろう接を行う、請求項1から5のいずれか
    1項に記載の板状体のろう接方法。
  7. 【請求項7】 加熱を急速に行うことにより、ろう材が
    融点以上の温度で板状体に接している合計時間を30分
    以下に抑える、請求項1から5のいずれか1項に記載の
    板状体のろう接方法。
  8. 【請求項8】 急速加熱手段が電磁誘導加熱法、ガスト
    ーチ、赤外線或いはニクロム線電熱器である、請求項7
    に記載の板状体のろう接方法。
  9. 【請求項9】 板状体の加熱及び摺り合せ合体操作を真
    空中ないしは減圧下又は不活性ガス雰囲気中で行う、請
    求項1から8のいずれか1項に記載の板状体のろう接方
    法。
  10. 【請求項10】 ろう材として、インジウム、錫或いは
    これらを主体とする合金を用いる、請求項1から9のい
    ずれか1項に記載の板状体のろう接方法。
  11. 【請求項11】 片方又は双方の板状体のろう接すべき
    面に、ろう材の付着し易い薄膜被覆を施しておく、請求
    項1から10のいずれか1項に記載の板状体のろう接方
    法。
  12. 【請求項12】 薄膜被覆の種類が、ニッケル又は銅で
    ある、請求項11に記載の板状体のろう接方法。
  13. 【請求項13】 板状体の一方がスパッタリング用ター
    ゲット部材のターゲット板であり、もう一方が同部材の
    裏打ち板である、請求項1から12のいずれか1項に記
    載の板状体のろう接方法。
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