JPH06114513A - 連続鋳造用金属添加剤入りワイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 連続鋳造のときに鋳型内に金属添加剤を添加
するための内容物を封入したワイヤであって、狙い位置
を正確にでき、所定の深さで溶解することによりコア部
のみに成分を添加することができる。 【構成】 継目のない金属管であって、外径が４ないし
１０ｍｍ、肉厚が０．３ないし１．６ｍｍであるものの
中に金属添加剤が充填されている連続鋳造用金属添加剤
入りワイヤ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は金属の連続鋳造工程にお
いて、金属浴中に合金成分を入れるための金属添加剤を
芯に入れたワイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】取鍋において鋼などに金属添加剤を入れ
る方法として、金属被覆の中に添加剤粉末を入れたいわ
ゆるインジェクションワイヤを用いることが行なわれて
いる。これは金属浴の表面で酸化したり、表面に浮上し
ているスラグと反応したり、また比重が著しく小さいた
め浴中で溶解する前に浮上してしまうおそれがあるもの
などに有効な方法となっている。たとえば鋼へのＣａ添
加はこの方法により塊を投入する方法に比し大幅な歩留
り向上を達成している。

【０００３】ところで上記のインジェクションワイヤに
よる合金成分の添加方法を鋼の連続鋳造に適用する場合
がある。鋼を製造する場合合金元素の大部分は出鋼時に
取鍋で添加するのが原則であるが、成分の微調整のため
やチタンのように溶鋼中に存在すると耐火物の侵食が激
しくなる成分を添加するため、連続鋳造時に鋳型内の溶
鋼にワイヤを突込んで添加している。さらに進んで材料
の表面部と中心部とで成分を変える目的で連続鋳造時に
インジェクションワイヤで合金元素を添加することが特
開昭６２−１４２０５３号公報において開示されてい
る。すなわち硫黄快削鋼においてナットの製造用の場
合、表面部はきびしい冷間加工を受けるため割れの原因
となったり、溶接する場合に欠陥を生じるので硫黄を下
げ、中心部はねじ切削のため硫黄を高くするといった用
途である。このようなものは在来はリムド鋼のインゴッ
ト造塊で、シェル部が凝固したところでコア部に成分を
追加する、いわゆるコアキルド法で作られていたが、コ
スト低減のため連続鋳造で製造しようとするものであ
る。

【０００４】図１はこのような連続鋳造においてインジ
ェクションワイヤを使用する方法を示す図である。連続
鋳造用の鋳型４の中に浸漬ノズル５より溶融金属２が注
入される。そこへインジェクションワイヤ１により金属
添加剤が添加される。挿入されたインジェクションワイ
ヤ１が溶融金属２に入ってすぐ溶けてしまえば、鋳片の
断面はほぼ均一に添加剤成分が入ることになるが、図１
に示すように深い部分で溶けるとすでに凝固シェル３が
形成されているからコア部のみに添加されることにな
る。図２はこのような鋳片の断面を示す図で、（ａ）は
ビレット、（ｂ）はスラブを示している。この場合シェ
ル部６はインジェクションワイヤ１からの合金成分がな
く、コア部７のみに添加されている。（ａ）のビレット
は前述の中心部のみに硫黄を添加した快削鋼などの素材
の場合であり、（ｂ）のスラブは複層鋼板すなわちクラ
ッド材の素材とすることができる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところがインジェクシ
ョンワイヤを連続鋳造に用いるに当って、取鍋における
合金材の添加用に従来から作られているものを用いたの
では所要の性能を発揮できない場合があることがわかっ
てきた。すなわち鍋の中の溶融金属に対して用いる場合
には、ワイヤにくせがついたりして蛇行しながら挿入さ
れても特に問題はないが、連続鋳造の場合、短辺が百数
十ｍｍのスラブや一辺が百数十ｍｍのビレットといった
ものもあり、ワイヤが蛇行しつつ送り出されたりすると
鋳型の所定の場所にワイヤが送られず鋳造不良の原因と
なることがある。しかしながら、従来のインジェクショ
ンワイヤは帯状の金属板をＵ型に曲げつつ添加剤粉末を
入れ、さらに丸く成型したもので継ぎ目を有するので曲
げ剛性が曲げ方向によって同じではなく、どうしても曲
がりやすかった。

【０００６】またさらに前記の中心部のみ成分を変える
目的でインジェクションワイヤを挿入する場合にはシェ
ル部が適当なところまで凝固した時にワイヤが溶解する
必要がある。すなわちある深さまで溶けないだけの外被
の厚みが必要となる。しかしながら従来の考え方ではイ
ンジェクションワイヤの外被はいわば包装以上のもので
はなく、特にその厚みを変えるということは行なわれて
いなかった。また帯状の金属板を曲げて製造する場合、
装置の能力上金属板の厚みはあまり厚いものは製造でき
なかった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するものであって、継目のない金属管であって、外径が
４ないし１０ｍｍ、肉厚が０．３ないし１．６ｍｍであ
るものの中に金属添加剤が充填されていることを特徴と
する連続鋳造用金属添加剤入りワイヤである。また、金
属添加剤が硫黄であって、充填率が１０ないし３０％で
あることも特徴とする。

【０００８】

【作用】本発明においては継目のない金属管に金属添加
剤が充填されている。従来の金属添加剤入りワイヤはす
べて帯状の金属板を出発材料として、これを丸く成型し
て外被としていたため重なり部分や折り込み部分があ
り、これがため曲げくせが生じやすかったが継目のない
金属管であれば断面の対称性がよいのでこれが防げる。
また外被の金属板を丸く成型加工しつつ充填剤を入れた
ものでは肉厚ｔに制限がある他、ワイヤの外径Ｄとの比
ｔ／Ｄが加工上の制約から大きくできず０．１未満であ
ったが、継目のない金属管によるものでは肉厚を大にで
きる。

【０００９】外被の肉厚は金属浴の浴面からどの位置で
溶けるようにすべきかで定まる。継目のなしの金属管の
場合厚い方の制限がなく製造できるが、０．５ｍｍから
１．６ｍｍの間が適当である。０．５ｍｍ未満では金属
浴表面付近で早期に溶解し内容物が露出すること、また
剛性が小さくなり過ぎワイヤインジェクターでワイヤを
供給するときの狙い位置の安定性が悪くなるおそれがあ
る。また１．６ｍｍを越えると連続鋳造時鋼浴で溶解す
る位置が深くなり過ぎ、また外被の材料の使用量が増大
して不経済となる。また外径は５ｍｍから８ｍｍの範囲
が適当である。５ｍｍ未満では添加剤の分量が相対的に
少なくなり、全体にコスト高となって不利であり、また
８ｍｍを越えると、使用時のワイヤの送給速度が遅くな
り過ぎ作業条件の調節範囲が狭くなり使用しにくくな
る。またワイヤインジェクターでのワイヤ供給も困難に
なる。

【００１０】本発明の金属添加剤入りワイヤはワイヤ挿
入の狙い位置のずれが少ないことから連続鋳造全般への
使用に適しているが、外被の肉厚精度が非常に高くでき
るので金属浴内でのワイヤの溶け落ちる深さを正確に制
御でき複層金属材料の鋳造用に特に適している。たとえ
ば薄鋼板に入れるチタン、アルミニウムなどは深絞り性
など材質特性向上に有効であるが、同時に非金属介在物
を増加させ表面疵の原因になると共にメッキ性、ホーロ
ー性を害するおそれがある。しかし連続鋳造において鋳
型に注入後表面層が凝固したときに中心部の未凝固部に
これらの元素を添加すればこの問題を解消できる。

【００１１】また前記した中心部のみ硫黄含有量を高く
した快削鋼の製造にも本発明の金属添加剤入りワイヤは
特に適している。この場合、添加剤としては硫黄粉末を
用いるとよい。外径は４ないし１０ｍｍ、外被の肉厚は
０．３ないし１．６ｍｍの条件で、充填率は１０から３
０％が適当である。この場合、管内硫黄密度が１．５〜
２．０ｇ／ｃｍ³ でワイヤ１ｍ当りの硫黄量は１０〜５
０ｇになる。充填率が１０％未満では必要な長さ当りの
硫黄量を確保するのに径が大きくなり過ぎ不適当であ
り、３０％を越えると、外被の肉厚が薄くなり過ぎ所期
の性能が得られない。

【００１２】本発明の金属添加剤入りワイヤの製造方法
として特に適しているのは、特開昭５９−３５８９８号
公報にある、最終製品よりも太径のパイプを巻いたもの
を振動台に載せ、その一端から内容物とする粉末を供給
して充填する方法である。充填が終了したワイヤに引抜
きを行なって所定の寸法に仕上げるが、これにより抜け
落ちることのないように内容物の充填密度も上げること
ができる。

【００１３】図３はその製造装置の一例を示すもので、
鋼パイプＰの巻装体Ｒが振動テーブル１２に固定されて
いる。振動テーブルには一対の振動モータ２２、２２′
が設けられており、スプリング２３を介して架台２８に
取り付けられている。パイプに充填すべき金属添加剤は
ホッパー１３に入れられ、電磁フィーダー１６、ホッパ
ー１５を経てパイプ始端２０に導入される。なお２１は
パイプ終端、２０′は空気抜きである。これによりパイ
プの巻装体Ｒはその軸Ｃを中心とする旋回振動をしてパ
イプ内に充填剤を速やかに送り込むことができる。

【００１４】なお本発明でいうところの継目なし金属管
というのは製品としての金属添加剤入りワイヤに重ね合
わせや折り込みなどの継目がないことをいう。したがっ
て上記製造装置において原材料として使用する鋼パイプ
がビレットの穿孔で製造された継目なし鋼管でなく、帯
鋼の溶接により製造された溶接鋼管であっても何らさし
つかえない。

【００１５】

【実施例】硫黄快削鋼の連続鋳造による製造に本発明の
金属添加剤入りワイヤを用いた。ＲＨ真空脱ガス装置で
酸素を０．０２０％まで脱ガスしたうえＡｌを０．０２
５％まで添加した溶鋼を断面２７２ｍｍ×２７２ｍｍ、
長さ８００ｍｍのビレット用鋳型で連続鋳造した。鋳片
の引抜き速度は０．８ｍ／分で硫黄粉末を充填したワイ
ヤを鋳型中央部に送り込んだ。ワイヤは図３に示した方
法で硫黄粉末を内部に充填した後、ダイスで引抜きして
製造したものである。

【００１６】

【表１】

【００１７】その結果を表１に示す。外径、肉厚、充填
率が適正条件の番号１および２は良好な結果を得られた
が、肉厚が厚過ぎる番号３は所定のシェル部厚みが得ら
れずまた中心部にワイヤの未溶解部分が残存した。また
肉厚が薄い番号４はシェル部の厚さがほとんど無く目的
とする用途には不適当である。ワイヤ径が太すぎる番号
５はワイヤ送給速度を小さくせざるを得ず、ワイヤの溶
け落ちる位置が不安定になりシェル部厚さに変動が多く
なった。またワイヤ径が細すぎる番号６はワイヤ送給速
度が非常に早くなり、すなわちワイヤの使用長さが増大
しコスト的に不利である。

【００１８】

【発明の効果】本発明の連続鋳造用添加剤入りワイヤを
用いると継目がないためワイヤの剛性が均等であって曲
げぐせがなく鋳型内の狙い位置を正確にできる。またワ
イヤインジェクターで送給する途中に外被が開いて添加
剤が漏れたり、ワイヤの保管中に添加剤が吸湿したり、
酸化変質することがない。また肉厚が厚いものを作ると
きの加工上の制約がないから、溶融金属内に送り込んだ
とき所定の深さで溶け落ちる材料を作ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】連続鋳造における金属添加剤入りワイヤの使用
方法を示す図

【図２】連続鋳造鋳片の断面図で（ａ）はビレット、
（ｂ）はスラブ

【図３】本発明のワイヤの製造工程であるパイプ内に添
加剤を充填する装置を示す図

【符号の説明】

１ インジェクションワイヤ ２ 溶融金属 ３ 凝固シェル ４ 鋳型 ５ 浸漬ノズル

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 継目のない金属管であって、外径が４な
   いし１０ｍｍ、肉厚が０．３ないし１．６ｍｍであるも
   のの中に金属添加剤が充填されていることを特徴とする
   連続鋳造用金属添加剤入りワイヤ。
2. 【請求項２】 金属添加剤が硫黄であって、充填率が１
   ０ないし３０％であることを特徴とする請求項１記載の
   連続鋳造用金属添加剤入りワイヤ。