JPH07124722A - 連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 溶融金属への挿入時の直進性が良好で、溶解
位置および成分調整の容易な連続鋳造用添加剤入り複合
ワイヤを提供する。 【構成】 金属外皮の厚さが０．３〜１．６ｍｍであっ
て、該金属外皮が添加剤入りワイヤまたは線状体を封入
後シーム部を溶接した後減面加工が施されないか、封入
されたワイヤが伸びない限度で減面加工をするものであ
り、添加剤入りワイヤは粉粒体を充填した複合ワイヤで
ある連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤ。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、金属の連続鋳造工程に
おいて金属浴中に合金を添加するための添加剤入りワイ
ヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】取鍋において鋼などに添加剤を入れる方
法として、金属被覆の中に添加剤粉末を入れた添加剤入
りワイヤを用いることが行なわれている。これは金属浴
の表面で酸化したり、表面に浮上しているスラグと反応
したり、また比重が著しく小さいため浴中で溶解する前
に浮上してしまうものなどに有効な方法となっている。
たとえば鋼へのＣａ添加はこの方法によって塊状Ｃａを
投入する方法に比して大幅な歩留り向上を達成してい
る。

【０００３】また最近では、生産性およびコスト低減か
ら連続鋳造工程の適用が増えており、この連続鋳造の成
分調整にも前記添加剤入りワイヤが適用される。たとえ
ば、Ｔｉのように溶鋼中に存在すると耐火物の浸食が激
しくなる成分を添加するため連続鋳造時に鋳型内の溶鋼
に添加剤入りワイヤを挿入して添加している。さらに進
んでは、添加する成分を鋳型表面に析出させず、コア部
となるような方法が快削鋼や複層鋼等に適用されてい
る。

【０００４】図２はこのような連続鋳造において添加剤
入りワイヤを使用する方法を示す図である。連続鋳造用
の鋳型４の中に浸漬ノズル５より溶融金属２が注入され
る。挿入された添加剤入りワイヤ１により添加剤が添加
される。挿入された添加剤入りワイヤ１が溶融金属２に
入ってすぐ溶けてしまえば、鋳片はほぼ均一に添加剤成
分が含まれることになるが、図２のように深い部分で溶
けるとすでに凝固シェル３が形成されているからコア部
のみに添加されることになる。

【０００５】図３はこのような鋳片の断面を示す図で、
（ａ）はビレット、（ｂ）はスラブを示している。この
場合シェル部６は添加剤入りワイヤ１からの合金成分が
なく、コア部７のみに添加されている。（ａ）のビレッ
トは前述の中心部のみに硫黄を添加した快削鋼などの素
材の場合であり、（ｂ）のスラブは複層鋼板すなわちク
ラッド材の素材とすることができる。

【０００６】ところが添加剤入りワイヤを連続鋳造に用
いるに当って、取鍋における合金剤の添加用に従来の添
加剤入りワイヤを用いたのでは所要の性能を発揮できな
い場合がある。すなわち、取鍋中の溶融金属に対して用
いる場合は、添加剤入りワイヤに癖がついたり蛇行しな
がら挿入されても特に問題はないが、連続鋳造の場合、
短辺が百数十ｍｍのスラブや一辺が百数十ｍｍのビレッ
トといったものもあり、添加剤入りワイヤが蛇行しつつ
送り出されたりすると鋳型の所定の位置に添加剤入りワ
イヤが送られず鋳造不良の原因となることがある。しか
しながら、従来の添加剤入りワイヤは帯状の金属板をＵ
型に曲げつつ添加剤粉末を封入し、さらに丸く成型した
もので継ぎ目を有しており、曲げ剛性が曲げ方向によっ
て同じではなく、どうしても蛇行しやすかった。

【０００７】また前記の中心部のみ成分を変える目的で
添加剤入りワイヤを挿入する場合にはシェル部が適当な
ところまで凝固した時にワイヤが溶解する必要がある。
すなわちある深さまで溶けないだけの外皮の厚みが必要
となる。しかしながら従来の添加剤入りワイヤの外皮は
いわば包装以上のものではなく、特にその厚みを変える
ということは行なわれていなかった。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】このため外皮厚さを限
定した継ぎ目のない添加剤入りワイヤが必要となるが、
帯鋼をＵ型に曲げて添加剤粉末を入れ、開口の相対する
エッジ面を溶接して得られた添加剤ワイヤは、内部の添
加剤粉末が溶接熱により変質してしまう。また、特開昭
５９−３５８９８号公報にあるような方法で、管内に添
加剤粉末を振動充填した添加剤入りワイヤの使用が試み
られているが、製造時の添加剤粉末の充填に時間がかか
りコスト高となるとともに充填後減面加工が必要であり
金属外皮の厚さが安定せず連鋳でのスラブやビレットの
成分調整が容易ではない。

【０００９】そこでこの発明は、溶融金属への挿入時の
直進性が良好で、溶解位置および成分調整の容易な連続
鋳造用添加剤入りワイヤを提供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】この発明は、連続鋳造用
添加剤入り複合ワイヤにおいて、金属外皮の厚さが０．
３〜１．６ｍｍであって、該金属外皮が１または２以上
の添加剤入りワイヤまたは添加剤である１または２以上
の線状体の少なくとも一方を封入後シーム部を溶接した
ものであり、前記添加剤入りワイヤは粉粒体を充填した
複合ワイヤであることを特徴とする連続鋳造用添加剤入
り複合ワイヤである。またここにおいて、金属外皮は溶
接した後さらに添加剤入りワイヤまたは線状体が長さの
伸びの変形をしない範囲で減面加工されたものであるこ
とも特徴とする。

【００１１】

【作用】図１（ａ）〜（ｄ）は本発明の連続鋳造用添加
剤入り複合ワイヤの断面の例を示すものである。図中１
０は金属外皮、１１は添加剤入りワイヤ、１２は添加剤
である線状体、たとえばＡｌ線などを示す。この添加剤
入りワイヤ１１は添加剤が粉粒体の場合に用いられる。
図１の（ａ）は金属外皮の中に１本の添加剤入りワイヤ
を封入したもの、（ｂ）は添加剤入りワイヤと線状体を
各１本封入したもの、（ｃ）、（ｄ）は金属外皮が四角
であると共に、（ｃ）は２本の添加剤入りワイヤを、
（ｄ）は１本の断面が四角の添加剤入りワイヤを封入し
たものである。本発明はこの例に限らず金属外皮に１ま
たは２以上の添加剤入りワイヤまたは１または２以上の
線状体の少なくとも一方が封入されていればよい。なお
本発明の連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤの形状は連続
鋳造時に挿入する際、直進性を維持できる形状であれば
図１に示すように丸あるいは四角などどのような形状で
も良い。

【００１２】この発明の連続鋳造用添加剤入り複合ワイ
ヤは、金属外皮がシーム溶接され継ぎ目がない。従って
直進性が良好で連続鋳造時の中心部に添加できる。ま
た、外皮の肉厚を所定の厚さとすることにより、目的と
する位置で溶融させることができる。さらに、金属外皮
中に添加剤入りワイヤを封入した後減面加工が施されて
いないか、減面加工をする場合でも封入した添加剤入り
ワイヤまたは線状体が長さの伸びの変形をしない範囲の
止める。この長さの伸びの変形をしない範囲とはたとえ
ば図１の（ｂ）の例において封入された添加剤入りワイ
ヤや線状体が少しつぶされて円形から楕円形になる程度
は許容するが、内部に隙間が少なくなり封入された線状
体等に長さの伸びが生ずるような減面加工は許さないと
いうことである。これにより必要な添加剤を必要な量添
加することが容易になると共に外皮の肉厚が予測外の変
化をすることなく、また連続鋳造時の添加量も狙った量
にできる。

【００１３】外皮の肉厚は金属浴の浴面からどの位置で
溶けるようにすべきかで定まり、０．３〜１．６ｍｍの
間が適当である。外皮が０．３ｍｍ未満では、金属浴表
面付近で早期に溶解し内容物が露出すること、また剛性
が小さくなり過ぎ、挿入時の直進性が悪くなる。また
１．６ｍｍを超えると連続鋳造時金属浴で溶解する位置
が深くなり過ぎる。また、金属外皮の大きさは連続鋳造
時の添加剤入りワイヤ供給性と、封入する粉粒体入りの
添加剤入りワイヤまたは線状体の径、量および製造コス
ト等から一辺５〜１５ｍｍの四角または多角形、あるい
は直径５〜１５ｍｍの丸または楕円であることが好まし
い。

【００１４】金属外皮に封入した粉粒体充填ワイヤは継
ぎ目の有無を問わないが、粉粒体充填ワイヤまたは線状
体の単位長さ当たりに必要とする成分量を十分調整した
ものを封入する。

【００１５】本発明の連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤ
は、ワイヤ挿入の狙い位置のずれが少ないことから連続
鋳造全般への使用に適しているが、外皮の肉厚精度が非
常に高くできるので金属浴内でのワイヤの溶け落ち深さ
を正確に制御でき複層金属材料の鋳造用に特に適してい
る。たとえば薄鋼板に含有させるチタン、アルミニウム
などは深絞り性など材質特性向上に有効であるが、同時
に非金属介在物を増加させ表面疵の原因になると共にメ
ッキ性、ホーロー性を害するおそれがある。しかし添加
剤としてＦｅ−Ｔｉを帯鋼をＵ型に曲げつつこれに充填
成形した複合ワイヤと、アルミニウムの線状体とを鋼製
外皮に封入させた本発明の添加剤入り複合ワイヤを、連
続鋳造時に鋳型表面層が凝固したときに中心部の未凝固
部に挿入すればこの問題を解消できる。

【００１６】図４に本発明の連続鋳造用添加剤入り複合
ワイヤの製造方法例を示す。図に示すように帯鋼１３の
送り方向に沿って成形ロール群１４〜１８が配置されて
いる。成形ロール１８において帯鋼１３はＵ字状とな
り、添加剤入りワイヤまたは線状体１９が挿入される。
添加剤入りワイヤまたは線状体１９が供給されたＵ字状
の帯鋼１３はフインパスロール２０、シームガイドロー
ル２１を通過し、高周波溶接あるいはアーク溶接などの
溶接機２２でシーム溶接され、スクイズロール２３を通
って巻き取り機２４に巻き取って製造される。なお図４
において上記製造工程の各位置における材料の断面の状
況を矢印で引き出して示してある。

【００１７】

【実施例】まず、表１に示す各種添加剤入りワイヤに封
入する粉粒体入りワイヤおよび線状体を製作した。次
に、図４の製造方法で表１の封入用ワイヤを鋼製外皮に
内包し、各種連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤを製造し
た。なお、鋼製外皮は高周波誘導溶接機で継ぎ目をシー
ム溶接した。製造した連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤ
を表２に示す。

【００１８】

【表１】

【００１９】

【表２】

【００２０】連続鋳造による鋼の製造に前記連続鋳造用
添加剤入り複合ワイヤを用いた。なお、比較のために従
来の添加剤入りワイヤも製造して同様に用いた（表２の
Ｎｏ．６および７）。ＲＨ真空脱ガス装置で酸素を０．
０１０％まで脱ガスした溶鋼を、断面２７２×２７２ｍ
ｍ、長さ８００ｍｍのビレット用鋳型に表２の連続鋳造
用添加剤入り複合ワイヤを１２〜１８ｍ／分で挿入し連
続鋳造した。鋳片の引抜き速度は８００ｍｍ／分で実施
した。鋳造後シエル部の厚さとコア部添加剤の成分を調
べた。それらの結果を同じく表２のまとめて示す。

【００２１】本発明例であるＮｏ．１〜Ｎｏ．５は連鋳
時にワイヤ狙い位置がずれることなく、シェル部厚さお
よびコア部成分ともに安定しており非常に良好な結果で
あった。なおＮｏ．３のワイヤはＮｏ．２のワイヤの外
皮内面と封入された複合ワイヤ（５ｍｍ径）との隙間が
ほぼなくなる限度で減面加工をしたものである。

【００２２】比較例中Ｎｏ．６は金属外皮肉厚が薄いの
で溶融金属の表層部で添加剤入りワイヤが溶けたので、
コア部が生成しなかった。Ｎｏ．７およびＮｏ．１０
は、添加剤入りワイヤに継ぎ目があるのでワイヤが蛇行
して狙い位置が定まらず、シェル部厚さおよびコア部成
分が安定しない。Ｎｏ．８は金属外皮肉厚が厚いのでコ
ア部に添加剤入りワイヤの未溶融部分が残存した。Ｎ
ｏ．９は封入ワイヤが減面加工を受けているので、コア
部の成分調整ができず、また外皮肉厚に変動があり溶融
金属内で片溶けをした。

【００２３】

【発明の効果】本発明の連続鋳造用添加剤入り複合ワイ
ヤを用いると、外皮に継ぎ目がないので直進性が良好で
連続鋳造時の中心部に添加できる。また、金属外皮の肉
厚を所定の厚さとすることにより、目的とする位置で溶
融させることができる。さらに、金属外皮に粉粒体入り
ワイヤまたは線状体を封入した後、これの長さが伸びる
ような減面加工を受けていないので必要な添加剤を必要
な量を添加することが容易となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（ａ）〜（ｄ）はそれぞれ本発明の連続鋳造用
添加剤入り複合ワイヤにおける断面形状例を示す図

【図２】連続鋳造における添加剤入りワイヤの使用方法
を示す図

【図３】連続鋳造鋳片の断面図で（ａ）はビレット、
（ｂ）はスラブ

【図４】本発明の連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤを製
造する装置例を示す図

【符号の説明】

１ 添加剤入りワイヤ ２ 溶融金属 ３ 凝固シェル ４ 鋳型 ５ 浸漬ノズル ６ シェル部 ７ コア部 １０ 金属外皮 １１ 添加剤入りワイヤ １２ 線状体 １３ 帯鋼 １４、１５、１６、１７、１８ 成形ロール １９ 添加剤入りワイヤまたは線状体 ２０ フインパスロール ２１ シームガイドロール ２２ 溶接機 ２３ スクイズロール ２４ 巻取機

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤにおい
   て、金属外皮の厚さが０．３〜１．６ｍｍであって、該
   金属外皮が１または２以上の添加剤入りワイヤまたは添
   加剤である１または２以上の線状体の少なくとも一方を
   封入後シーム部を溶接したものであり、前記添加剤入り
   ワイヤは粉粒体を充填した複合ワイヤであることを特徴
   とする連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤ。
2. 【請求項２】 金属外皮は溶接した後さらに添加剤入り
   ワイヤまたは線状体が長さの伸びの変形をしない範囲で
   減面加工されたものであることを特徴とする請求項１記
   載の連続鋳造用添加剤入り複合ワイヤ。