JPH06105647A - 殻付卵の鮮度低下防止方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 殻付卵を収容できる略密封した包装容器の内
部に炭酸塩と酸性物質を組合せた炭酸ガス発生剤を収容
し、該炭酸ガス発生剤に直接的または間接的に接触して
殻付卵を収容して殻付卵の鮮度低下を防止する方法。 【効果】 本発明によれば、卵から発散した水分によっ
て炭酸ガス発生剤が反応して炭酸ガスが発生し、その発
生された炭酸ガスによって包装容器が満たされるので、
濃厚卵白の水溶化が防止され、殻付卵の鮮度を維持する
ことができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は鶏卵等の殻付卵の保存中
における鮮度低下を防止する方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、流通過程の改善により、産卵日か
ら消費者の手にわたるまでの日数が短くなってきたが、
それでも長い場合には約１週間を超えることがある。従
って、その間の卵の鮮度低下を極力防止することが望ま
れる。

【０００３】卵の鮮度における最大の問題は濃厚卵白の
維持であり、濃厚卵白の水溶化によって鮮度が低下す
る。濃厚卵白の水溶化とは、卵白中に保存している炭酸
ガスが散逸して卵白のpHが上昇し、濃厚卵白の構造変化
を惹起し、水溶性卵白が網目より流出してしまう現象で
ある。

【０００４】斯かる濃厚卵白の水溶化を防止する方法と
しては、冷蔵保存する方法、卵殻に皮膜をコーティング
する方法、炭酸ガスの環境下に保存する方法等が報告さ
れている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】上記方法の中でも、炭
酸ガスの環境下に保存する方法が最も効果的であり、こ
れについてのいくつかの方法が提案されているが、実用
的に満足できるものは未だ報告されていない。

【０００６】

【課題を解決するための手段】斯かる実情において、本
発明者は鋭意研究を行った結果、本発明を完成した。

【０００７】すなわち、本発明は、殻付卵を収容できる
略密封した包装容器の内部に炭酸塩と酸性物質を組合せ
た炭酸ガス発生剤を収容し、該炭酸ガス発生剤に直接的
または間接的に接触して殻付卵を収容することを特徴と
する殻付卵の鮮度低下防止方法を提供するものである。

【０００８】本発明において、殻付卵とは鶏卵、うずら
卵、あひる卵等の食用卵を意味する。包装容器としては
塩化ビニル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピ
レン、セロファン、加工紙等で形成した容器、例えば底
部に卵収容用の凹部を設けた市販の容器を挙げることが
できる。

【０００９】本発明の炭酸ガス発生剤を構成する炭酸塩
及び酸性物質は固体であることが必要であり、炭酸塩と
しては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水
素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、セス
キ炭酸ナトリウム等が、また酸性物質としてはクエン
酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、粉
末酢酸、ホウ酸、リン酸等が挙げられる。

【００１０】これらの炭酸塩及び酸性物質は混合して炭
酸ガス発生剤とする。混合割合は炭酸塩に対し酸性物質
が重量比で０．１〜１００程度、特に０．１〜１０程度
になるようにするのが好ましい。この炭酸ガス発生剤は
粉末でも、また顆粒、錠剤等に成形してもよい。

【００１１】この炭酸ガス発生剤は包装容器内、例えば
上記の容器底部に設けた凹部に収容し、この炭酸ガス発
生剤に直接的または間接的に接触するように殻付卵を収
容する。この場合、殻付卵の２０％以上が炭酸ガス発生
剤と直接的または間接的に接触するようにするのが好ま
しいが、全部の卵が必ずしも接触する必要は無く包装容
器中の数個でも良い。

【００１２】本発明における炭酸ガス発生剤は水の存在
によって、反応して炭酸ガスを発生するものであり、ま
た殻付卵はその保存中に殻外に水分を発散する。従っ
て、殻付卵を炭酸ガス発生剤に直接的または間接的に接
触させておけば、殻外に発散された水分によって炭酸ガ
ス発生剤が濡れ、炭酸塩と酸性物質が反応して炭酸ガス
が発生する。殻付卵の炭酸ガス発生剤との接触率が２０
％未満の場合には発散される水分による濡れが不充分で
あり、充分な炭酸ガスの発生が得られない。間接的に接
続させる方法としては、殻付卵と炭酸ガス発生剤との間
に紙等の通気性の良好なシートを存在させるか、または
炭酸ガス発生剤を通気性の良好な袋等に包装する。間接
的に接触させる方法の方が、炭酸ガス発生剤の卵への付
着の防止や散逸の防止といった点から好ましい。

【００１３】以上のようにして炭酸ガス発生剤と殻付卵
を収容した後の密封方法は収容容器と蓋体をヒートシー
ルするかセロハンテープで止めるかまたはホチキスで止
めてこれをビニール袋に入れる程度の略密封状態が望ま
しい。

【００１４】

【発明の効果】本発明によれば、卵から発散した水分に
よって炭酸ガス発生剤が反応して炭酸ガスが発生し、そ
の発生された炭酸ガスによって包装容器が満たされるの
で、濃厚卵白の水溶化が防止され、殻付卵の鮮度を維持
することができる。

【００１５】

【実施例】次に実施例を挙げて説明するが、本発明はこ
れに限定されるものではない。

【００１６】実施例１ 産卵直後の鶏卵１０個を、炭酸水素ナトリウム５３重量
部とクエン酸４７重量部からなる炭酸ガス発生剤５０ｇ
を入れた市販のスチロール樹脂卵用パックに、鶏卵の約
３０％が該炭酸ガス発生剤に紙を介在させて間接的に１
０個全てが接触するように収容し、ヒートシールで略密
閉した。これを室温に放置し、３日及び７日後の包装容
器内の炭酸ガス濃度及びハウユニットを測定した。ま
た、炭酸ガス発生剤を入れないパック中で保存したもの
を対照とした。

【００１７】尚ハウユニットは濃厚卵白の劣化度を表わ
すもので、次式で計算されるものである。

【００１８】

【数１】

【００１９】その結果は表１に示すとおりである。尚ハ
ウユニットは１０個の平均値で示した。

【００２０】

【表１】

【００２１】実施例２ 産卵直後の鶏卵１０個を、そのうち２個だけをそれぞれ
実施例１と同じ配合の炭酸ガス発生剤各３ｇに接触さ
せ、市販のスチロール樹脂卵用パックに収容しホチキス
で止めた後ビニール袋に入れ密閉した。これを室温に放
置し、３日及び７日後のビニール袋内の炭酸ガス濃度及
びハウユニットを測定した。また、炭酸ガス発生剤を入
れない以外は同一の条件で保存したものを対照とした。
その結果は表２に示すとおりである。

【００２２】

【表２】

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 殻付卵を収容できる略密封した包装容器
   の内部に炭酸塩と酸性物質を組合せた炭酸ガス発生剤を
   収容し、該炭酸ガス発生剤に直接的または間接的に接触
   して殻付卵を収容することを特徴とする殻付卵の鮮度低
   下防止方法。