JPH06101662A - スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】一番内周の圧縮室のシールをラップ巻き始めの
円弧部で行なう間、体積のアンバランスとなる二つの圧
縮室間を連通する連通路１４を設け、円弧部の最接近時
の両円弧間の隙間が各インボリュート部の径方向隙間よ
り小さく、かつ接しないように組み立てるか、少なくと
も一方の円弧部表面に軟質材料のコーティングを行な
い、わずかに接するように組み立てる。 【効果】渦巻数を増加させないので、径が小さく、加工
精度が向上し、しゅう動部の荷重や軸受けの荷重が低減
できて機械損失が低減し、圧力のアンバランスが無く、
漏れも少ない、小型高性能の圧縮機を実現することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はスクロール圧縮機に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】旋回スクロールをクランク軸が貫通して
いる構造の圧縮機（軸貫通スクロール圧縮機）の従来例
は特開昭57−131896号公報に見られるが、この構造のス
クロール圧縮機では、旋回スクロールに作用するガス荷
重の高さ位置と軸受中心の高さ位置が等しくなるので、
旋回スクロールを傾かせようとするモーメントすなわち
転覆モーメントが発生しないという、利点がある。圧縮
室を形成する渦巻曲線は一般にインボリュート曲線を使
い、インボリュート曲線によって決まる圧縮開始時の圧
縮室容積と吐出開始時の圧縮室の容積の比が固有圧縮比
となっていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】このような従来の軸貫
通スクロール圧縮機では、渦巻状ラップの中央部分に軸
があるためにラップをその外側から巻き始める必要があ
る。インボリュートあるいはその他の曲線からなるラッ
プにより形成される最小閉じ込み室が外周になればなる
ほどその容積が増大するので、本構造のスクロール圧縮
機において、一定の固有圧縮比を確保するには、ラップ
の巻数を外側へ増やさなければならない。したがって、
スクロールの外径が大きくなるばかりでなく、ラップの
全長も長くなるので、加工時間が長くなり、精度も落ち
るという欠点があった。この欠点をなくして巻数の少な
いラップとするために、固定スクロールおよび旋回スク
ロールそれぞれのラップ内線と外線のインボリュート巻
き始めを円弧で結び、圧縮室が内周へ移行してインボリ
ュート部の接点が巻き始めを過ぎた後も円弧部に接点が
でき、シールを継続する構造にして、最小密閉圧縮室の
体積をできるだけ小さくし、巻き数が少なくても所定の
固有圧縮比が得られるようにする。

【０００４】しかし、円弧部でシールする行程では固定
スクロールラップの外線側にできる圧縮室と内線側にで
きる圧縮室の形状が異なり、体積に違いが生じる。その
ため、外周のインボリュート形状のラップを対称形にし
ておくと、吐出ポートに通じる直前の二つの圧縮室の圧
力がアンバランスとなり、過圧縮や圧縮不足などの損失
を生じる原因になっていた。

【０００５】また、円弧部に接点が生じるのは１／２周
の間だけなので、接点隙間を小さくし過ぎると一回転毎
に衝突が発生し、騒音の原因となったり、ラップの異常
摩耗の原因になったりする。また接点隙間を大きくし過
ぎると漏れが増大して性能低下の原因になる。したがっ
て、これらの問題を発生させない構造とすることが課題
である。

【０００６】

【課題を解決するための手段】円弧部でシールする期
間、固定スクロールの外線側の圧縮室と内線側の圧縮室
が連通するような連通通路を設ける。

【０００７】前記両円弧部の中点が最接近したとき、自
転防止機構のがたによって変化しうる隙間の最小値がイ
ンボリュートラップ部の半径方向隙間より小さくかつ０
よりも大きくなるように固定スクロールと旋回スクロー
ルを組み合わせる。または円弧部の少なくとも一方に、
スクロール部材よりも軟質で容易に摩耗または塑性変形
する材料のコーティング処理を行ない、最小隙間がほぼ
０になるように組み合わせ、なじみ運転を行なう。

【０００８】

【作用】二つの圧縮室が吐出ポートに連通する以前の１
／２回転の間にこれらを連通する連通通路を設けること
により、圧縮室間の圧力のアンバランスは生じなくな
り、トルク変動や圧縮損失が小さくなる。

【０００９】円弧部の最接近時の最小隙間がインボリュ
ート部の径方向隙間より小さく、０より大きくしたもの
は、漏れ量が比較的少なく、当たりが生じない。

【００１０】円弧部に軟質材のコーティング処理を行な
い、最小隙間をほぼ０にしたものは、初期のなじみ運転
により、接触部が摩耗あるいは塑性変形して当たりが無
くなり、隙間も０になるので漏れが極小になる。

【００１１】

【実施例】以下、ラップ構造に関する実施例を図１〜図
７により説明する。

【００１２】図１は本発明の密閉型スクロール圧縮機の
断面図を示している。密閉容器１内に固定スクロール２
及び旋回スクロール３からなる圧縮部と旋回スクロール
３を駆動するクランク軸４，固定スクロール２と一体に
固定されるフレーム５，駆動用の電動機回転子７ｂ，電
動機固定子７ａが一体となって収納されている。クラン
ク軸４は固定スクロール２の端板を貫通し、偏心軸４ａ
は旋回スクロール３を貫通し、上支持軸４ｂが固定軸受
２ｂに、下支持軸４ｃがフレーム軸受５ａにそれぞれ支
持されている。旋回スクロール３はオルダム継ぎ手６に
より自転を拘束され、クランク軸４の回転により偏心軸
４ａによって旋回駆動される。旋回スクロール３の背面
には背圧室１７が設けられ、背圧孔１８で吸入圧力と吐
出圧力の中間的な圧力の圧縮室１１に連通している。背
圧室１７の圧力により、旋回スクロール３は固定スクロ
ール２に適度な力で押しつけられ、ラップ先端がシール
される。背圧室１７は一方を旋回スクロール３と固定ス
クロール２の外周密着部でシールされ、他方をシールリ
ング５ｂによりシールされている。クランク軸４には旋
回スクロール３の遠心力を打ち消して振動の発生を防止
するために、上バランスウェイト８及び下バランスウェ
イト９が取り付けられている。ガスは吸入管１０から吸
入され、圧縮室１１で圧縮されて吐出孔１２から吐出室
１３へ吐出され、連通路１４，容器下部室１５経て吐出
管１６から密閉容器外へ吐出される。軸受や摺動部へは
油２０が主軸下方から給油される。

【００１３】固定スクロール２の上面には内周の二つの
圧縮室を連通する圧縮室連通管２５が設けられている。
連通管と圧縮室の連結には、二つの圧縮室が吐出ポート
に開通する以前の１／２回転の間連通するような位置に
各ポートが設けられている。

【００１４】図２は図１の固定スクロール２を上面から
見た構造を示している。一番内周の圧縮室が吐出口２ｃ
に連通する直前のクランク軸が１／２周する期間、すな
わち巻き始め円弧部２ｄと３ｄによりシールされている
期間、それぞれの圧縮室に開通する位置に連通ポート２
３と２４が設けられ、それぞれのポートが圧縮室連通管
２５により連通されている。

【００１５】図３は本発明の固定スクロール及び旋回ス
クロールのラップ形状を示している。固定スクロールラ
ップ２ａの外線巻き始め２ｂのインボリュート角をλsf
o 、同内線巻き始め２ｃのインボリュート角をλsfi 、
旋回スクロールラップ３ａの外線巻き始め３ｂのインボ
リュート角をλsmo 、同内線巻き始め３ｃのインボリュ
ート角をλsmi とすると、これらのインボリュート角の
間には次の関係がある。

【００１６】 λsfo＝λsfi＝λsmo＋π＝λsmi−π …（数２） 巻き始め２ａと２ｃは円弧２ｄで接続され、巻き始め３
ａと３ｃは円弧３ｄで接続されている。円弧２ｄと円弧
３ｄは圧縮過程において、旋回スクロールが半周する期
間接してシール作用をなす。

【００１７】図４は本発明の第一の実施例の圧縮部を構
成する固定スクロール２及び旋回スクロール３を組み合
わせて運転した場合の９０度毎の圧縮行程を示してい
る。

【００１８】（１）は吐出ポートに連通しない一番内周
側の二つの圧縮室のうち、旋回スクロール内線側にでき
る圧縮室１１ａｉの内側のシール部が円弧部にさしかか
ったところである。このときまでは二つの圧縮室１１ａ
ｉと１１ａｏは同じ形状であり、容積も等しい。連通ポ
ート２３および２４はこの時それぞれの圧縮室に開口し
ようとしている。

【００１９】（２）は軸が９０度回転し、シール部が円
弧部の中ほどへ移っている。この時は圧縮室１１ａｉと
１１ａｏの形状が異なっており、それぞれの圧縮室容積
も異なっている。したがって二つの圧縮室の圧縮開始時
の容積が等しく、両圧縮室が分離されたままならば、両
圧縮室の圧力はずれを生じる。しかし、この時点では連
通ポート２４と２５がそれぞれの圧縮室に開通してお
り、連通ポートは圧縮室連通管２５により連通されてい
る。したがって圧力の高い方の圧縮室から圧力の引く違
法の圧縮室へガスが流れ、両圧縮室の圧力がバランスす
る。

【００２０】（３）はシール部が円弧の最終位置に達
し、圧縮室１１ａｉと１１ａｏは互いに、また吐出口２
ｃに連通しようとしている。連通ポート２３と２４はそ
れぞれ圧縮室に連通したままなので、両圧縮室の圧力バ
ランスは続いている。

【００２１】（４）はシール部が離れ、（３）の圧縮室
１１ａｉと１１ａｏは合流して中央圧縮室１１ａ一つに
なっている。圧縮室は吐出口２ｃに連通し、ガスが吐出
される。この後さらに９０度回転すると、（１）の状態
に戻り、中央圧縮室１１と連通ポート２３および２４と
の連絡は断たれる。

【００２２】図５は本発明のラップ形状における二つの
圧縮室の容積変化と圧力の変化を示している。円弧部で
シールする行程では固定スクロールラップ２ａの外線側
にできる圧縮室と内線側にできる圧縮室の形状が異な
り、図の実線と破線で示すように体積に違いが生じる。
そのため、外周のインボリュート形状のラップを対称形
にしておくと、吐出ポートに通じる直前の二つの圧縮室
の圧力が図の実線と破線で示されるようにアンバランス
となり、過圧縮や圧縮不足などの損失を生じる原因にな
っていた。本実施例では、少なくとも一番内周の圧縮室
の径方向シール部が円弧部にさしかかってから、圧縮室
が吐出ポートに通じるまでの間、二つの圧縮室間を連通
する圧縮室連通管２５が設けられているので、図の点線
で示されるように両圧縮室の圧力は均圧化され、圧力の
アンバランスは解消する。

【００２３】図６は本発明の第二の実施例を示す組立図
である。図の行程は、固定スクロール巻き始めの円弧部
２ａｃが旋回スクロール巻き始めの円弧部３ａｃの中央
付近に達した状態であり、一番内側の圧縮室と吐出室は
両円弧の接点部でシールされている。旋回スクロール３
は自転防止機構により自転が規制されているが、たとえ
ばオルダムキーの隙間などの自転防止機構のかたなどに
より、ごくわずかだけ回転変位をすることができる。図
６は、前記円弧２ｄと３ｄ間の隙間が最小になるように
自転防止機構のがたを一方向へ寄せた状態を示す。この
ときの円弧の最接近部の隙間δaが、インボリュート部
の半径方向隙間δiに等しいかそれよりも小さく、かつ
互いに接触しないように組み付ける。

【００２４】このような構成とする事により、第一の実
施例の特徴に加えて、圧縮室のガスの漏れが少なく、か
つ接触による騒音や振動の発生もない高性能で高信頼性
の圧縮機を実現することができる。

【００２５】図７は本発明の第三の実施例を示す組立図
である。図の行程も、固定スクロール巻き始めの円弧部
２ｄが旋回スクロール巻き始めの円弧部３ｄの中央付近
に達した状態であり、一番内側の圧縮室と吐出室は両円
弧の接点部でシールされている。該円弧２ｄおよび３ｄ
の表面には軟質の材料２６がコーティングされている。
旋回スクロール３は自転防止機構により自転が規制され
ているが、たとえばオルダムキーの隙間などの自転防止
機構により、ごくわずかだけ回転変位をすることができ
る。図７は、円弧２ｄと３ｄ間の隙間が最小になるよう
に自転防止機構のがたを一方向へ寄せた状態を示す。こ
のときの円弧の最接近部の隙間が、わずかに接するよう
に組み付ける。

【００２６】このような表面処理と組立を行なった圧縮
機を運転すると、コーティングされた軟質材が初期のな
じみ運転中に摩耗し、自転防止機構のがたが０になると
それ以上摩耗は進まなくなると共に当たる部分も無くな
る。本実施例でも、第一の実施例の特徴に加えて、圧縮
室のガスの漏れが少なく、かつ接触による騒音や振動の
発生もない高性能で高信頼性の圧縮機を実現することが
できる。

【００２７】軟質材料は四フッ化エチレン樹脂または四
フッ化エチレン樹脂の微粒子を混入したＮｉ−Ｐ（ニッ
ケル−リン）化合物などの金属鍍金，鉛あるいは鉛を主
成分とする合金、あるいは黒鉛または黒鉛を混入した合
金あるいは樹脂などが好適である。

【００２８】

【発明の効果】本発明によれば、旋回スクロールをクラ
ンク軸が貫通している軸貫通スクロール圧縮機の欠点で
あった渦巻数の増加、すなわち、径の増大がなくなり、
径が小さく、加工精度の高いスクロールラップを提供す
ることができるので、転覆モーメントがなく、軸受荷重
や摺動部面圧が小さくなることによる機械損失の低減効
果に加えて、圧縮室間の圧力のアンバランスが無く、漏
れが少なく、小型で高性能のスクロール圧縮機を実現す
ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の密閉型スクロール圧縮機の断面図。

【図２】本発明の固定スクロールの上面図。

【図３】本発明の固定スクロール及び旋回スクロールの
ラップ形状の正面図。

【図４】第一の実施例の圧縮行程の説明図。

【図５】従来および本発明の圧縮室体積および圧力の変
化の特性図。

【図６】第二の実施例を示す部分説明図。

【図７】第三の実施例を示す部分説明図。

【符号の説明】

２…固定スクロール、２ｃ…吐出口、１４…連通路、２
３…連通ポート、２４…連通ポート。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】端板に渦巻状のラップを直立させた固定ス
   クロール部材と、旋回スクロール部材を互いにラップを
   向き合わせ、偏心させて組み合わせ、前記旋回スクロー
   ル及び前記固定スクロールを貫通して設けられたクラン
   ク軸が前記旋回スクロール部材を自転することなく旋回
   運動させてガスを圧縮するようにしたスクロール圧縮機
   において、スクロールラップの、圧縮作用をなす部分が
   インボリュート曲線で構成されており、 旋回スクロールラップ外線の巻き始め点Ｐsmoのインボ
   リュート角をλsmo，旋回スクロールラップ内線の巻き
   始め点Ｐsmiのインボリュート角をλsmi，固定スクロー
   ルラップ外線の巻き始め点Ｐsfoのインボリュート角を
   λsfo，固定スクロールラップ内線の巻き始め点Ｐsfiの
   インボリュート角をλsfi，とするとき、前記インボリ
   ュート曲線の巻き始め角の相対的な位置が、 λsfo＝λsfi＝λsmo＋π＝λsmi−π …（数１） の関係にあり、前記ＰsfoとＰsfiは半径がラップ厚さの
   １／２にほぼ等しい半円弧で連結され、前記ＰsmoとＰs
   miは半径が前記半径よりほぼ旋回半径分だけ大きい半円
   弧で連結されており、固定スクロール外線側の圧縮室と
   内線側の圧縮室が吐出ポートに通じる以前の、駆動軸が
   １／２回転する期間に、両圧縮室を互いに連通させるよ
   うな連通通路を設けたことを特徴とするスクロール圧縮
   機。