JPH0599095A - 電磁式燃料噴射弁 - Google Patents

電磁式燃料噴射弁

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JPH0599095A
JPH0599095A JP3253877A JP25387791A JPH0599095A JP H0599095 A JPH0599095 A JP H0599095A JP 3253877 A JP3253877 A JP 3253877A JP 25387791 A JP25387791 A JP 25387791A JP H0599095 A JPH0599095 A JP H0599095A
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一佳 寺門
Shin Onose
伸 小野瀬
Yusaku Nakagawa
雄策 中川
Masahiro Soma
正浩 相馬
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Abstract

(57)【要約】 【目的】アルコール燃料等の腐蝕性成分を含むか、或い
は燃焼により腐食性成分が発生する燃料中で使用しても
弁体及び弁座の腐食を生じない電磁式燃料噴射弁を提供
する。 【構成】弁体1と弁座2の表面部分を耐摩耗性と耐食性
とを有する非導電性材料、例えばセラミックスの1種で
ある窒化ケイ素(Si3 4 )で形成する。これによ
り、メタノール燃料中の蟻酸等の腐食性成分による腐食
や、これに燃料の高流速やガルバニック(電気的)な要
因が複合して生じるキャビテーション、エロージョン、
コロージョンの発生を防止し、信頼性のある噴射特性を
得ることができる。また、エンジン停止時の漏れをなく
し、再始動も適切に行なわれ、火災発生の危険性もなく
すことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電磁式燃料噴射弁に係わ
り、特に、アルコール燃料等の耐食性成分を有する燃料
又は燃焼により耐食性成分を生じる燃料用の自動車用燃
料供給装置に用いて好適な電磁式燃料噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】電磁式燃料噴射弁は、例えば特開平1−
310165号に開示されているような可動子の先端が
球形状のボールタイプと、同先端が三角状のピントロタ
イプに大略二分されるが、その構造及び機能はほぼ同じ
である。即ち、電磁式燃料噴射弁は、固定子鉄心、この
固定子鉄心と同心状の電磁コイル、磁性材料で作られか
つ固定子鉄心と電磁コイルを内部に収容したケーシン
グ、先端に弁体を備えた可動子、この可動子用のストッ
パ、可動子を挾んでストッパと対抗した弁座、及び可動
子の一端に係合して可動子を弁座に対して押圧するばね
から構成され、電磁コイルに電流を流すと磁気回路が形
成され、生じた電磁力が可動子を押圧しているばね力に
打ち勝つと可動子先端の弁体が弁座から離れて開とな
り、電流を切ると弁体が弁座方向に移動して開となる。
【0003】上記噴射弁において、可動子先端の弁体及
び弁座は、燃料中で衝突するので耐磨耗性と耐食性を必
要とするため、通常はマルテンサイト系ステンレス鋼の
高カーボン(C)、高スローム(Cr)であるJIS−
SUS440Cや前記公知例に示す様なJIS−SUS
420J2の材料を焼入れ、焼戻しの硬加熱処理を施し
て用いている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のガソリン燃料に
おいては、燃料に含まれる水分や、燃焼により発生する
亜硫酸ガス(SO3 )などの腐食性排ガスに対して上記
のマルテンサイト系ステンレス鋼で対応可能であった。
しかしながら、近年、アルコール系成分を含む燃料が検
討されており、このような燃料に対して、上記従来のガ
ソリン燃料用の電磁式燃料噴射弁では、弁体及び弁座が
腐食する問題が生じた。弁体と弁座の両方または一方に
腐食が生じると、燃料の噴射特性に変化を生じるのみで
なく、特にシート部に腐食が発生した場合はシート性が
悪くなり、エンジン停止時に燃料が噴射され、次期始動
時に始動しないことや、火災の原因につながる問題とな
る。
【0005】本発明の目的は、上記従来技術の問題点を
解決し、アルコール燃料等の腐蝕性成分を含むか、或い
は燃焼により腐食性成分が発生する燃料中で使用しても
弁体及び弁座の腐食を生じない電磁式燃料噴射弁を提供
することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、電磁式燃料噴射弁において、可動子の先
端の弁体と弁座の少なくとも一方の少なくとも表面部分
を耐摩耗性と耐食性とを有する非導電性材料で形成した
ものである。
【0007】好ましくは、耐摩耗性と耐食性とを有する
非導電性材料はセラミックスであり、更に好ましくは窒
化ケイ素である。
【0008】
【作用】アルコール燃料中で使用される電磁式燃料噴射
弁おいて、弁体及び弁座の腐食が発生、進展する要因は
次のようなことが考えられる。
【0009】(1)アルコール系燃料、例えばメタノー
ル燃料の場合、メタノール成分中の蟻酸、酢酸ホルムア
ルデヒト等の腐食性成分や、吸水性が高いため水分を多
く含むことによる腐食。
【0010】(2)弁体と弁座の隙間腐食。
【0011】(3)燃焼ガスには蟻酸などの酸が増加し
ているため、排気ガスをエンジンヘリターンする場合に
はより腐食が進行する。
【0012】(4)電磁コイル等により弁体と弁座間に
電位が生じ、電食により腐食が促進される。
【0013】(5)弁体と弁座の衝突や応力腐食等。
【0014】即ち、弁体及び弁座の腐食が発生、進展す
る要因は、メタノール燃料中の蟻酸等の腐食性成分によ
る腐食や、これに燃料の高流速やガルバニック(電気
的)な要因が複合して生じるキャビテーション、エロー
ジョン、コロージョンであると推定される。これらは従
来のマルテンサイト系ステンレス鋼では解決できず、ま
た、鋼鉄材料のみでは耐摩耗と耐食性を必要とする弁体
と弁座に対して完全な対策にならない。
【0015】本発明では、弁体及び弁座の少なくとも一
方の少なくとも表面部分を耐摩耗性と耐食性を有する非
電導性材料で形成することにより、上記の腐食の発生、
進展のいずれの要因に対してもそれを抑制し、アルコー
ル系燃料中で使用しても弁体及び弁座の腐食を生じない
電磁式燃料噴射弁を提供できる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面により説明す
る。図1において、本実施例の電磁式燃料噴射弁は、固
定子鉄心7、この固定子鉄心7と同心状の電磁コイル
9、磁性材料で作られかつ固定子鉄心7と電磁コイル9
を内部に収容したケーシング8、先端に球状の弁体1を
備え、上端に接極子4を備えた可動子3、この可動子3
用のストッパ5、可動子3を挾んでストッパ5と対抗し
た弁座2、及び可動子3の一端に係合して可動子を弁座
2に対して押圧するばね6から構成され、電磁コイル9
に電流を流すと磁気回路が形成され、生じた電磁力が可
動子3を押圧しているばね6の力に打ち勝つと可動子先
端の弁体1が上方に移動して開となり、電流を切ると弁
体1が下方に押されて閉となる。
【0017】弁体1と弁座2の部分の拡大図を図2に、
弁座2の表面部分の断面組織を図3に示す。本発明の特
徴は弁体1と弁座2の材質の選定にあり、本実施例で
は、弁体1と弁座2の表面にセラミックスの1種である
窒化ケイ素(Si3 4 )をそれぞれ1.5μmの膜圧
で形成した。
【0018】成膜方法は、弁体1と弁座2の基材がJI
SのSUS440Cを焼入れ後、低温焼戻しによりHR
C60を有しているため、成膜時に基材温度が焼戻し温
度以上に上がり、母材硬さが低下しないこと、及び母材
との密着性が良いことを考慮して、物理的蒸着法(P.
V.D)の中から活性化反応性蒸法(ARE)により行
なった。成膜物質はセラミックスの中から、優れた耐食
性と非導電性を有し、かつ高硬度で耐摩耗性を有する点
を検討し、Si3 4 を選んだ。成膜条件としては、反
応ガス:N2 、蒸発物質:Si、ガス圧力:〜0.13
Pa、電子ビーム電力:5KW,140mA、基板印加
電圧:D.C.−400V、基板温度:〜150℃であ
る。
【0019】膜厚は、あまり厚いと基材との密着性が低
下することや、寸法精度が確保し難いことから、また、
あまり薄い場合は、耐摩耗性や耐食性の信頼性が低下す
ることなどを考慮して、1.5μmとした。成膜は、弁
体1及び弁座2とも各々のシート部10を最適条件の中
心としてセッティングし、膜厚の均一性等を考慮して、
自公転させながら行なった。
【0020】図3は、弁座シート部10のSi3 4
と基材との状況を把握するため、断面をSEM観察した
ものである。Si3 4 は柱状にSUS440Cの基材
上に密着性良く成長しており、膜厚もほぼ1.5μmで
あることが分かった。
【0021】以上のSi3 4 膜を表面に形成した弁体
1と弁座2を用いて電磁式燃料噴射弁とし、アルコール
燃料としてメタノール85%+ガソリン15%を用い、
200時間のエンジン耐久試験(4気筒エンジン8時間
ON→2時間OFFを20回繰返し試験)を行なった。
試験後の燃料の漏れ量を測定した結果を図4に示す。試
験前漏れ量はいずれもゼロである。また、従来の無処理
の弁体、弁座を用いた場合と比較して示しているが、従
来品は弁体と弁座のシート部から漏れ量が16〜252
mm3 /minあるが、本発明品はいずれもゼロであ
る。従来品の耐久試験後の弁座シート部のSEM像を図
5に、その断面組織を図6に示す。従来品では、深さが
10〜30μmで広範囲に著しく腐食していることが分
かる。これは、メタノール燃料中の蟻酸等の腐食性成分
による腐食や、これに燃料の高流速やガルバニック(電
気的)な要因が複合して生じるキャビテーション、エロ
ージョン、コロージョンであると推定される。これに対
し、本発明品では、図4の表からも分る通り、このよう
な腐食は起こらず、したがって、安定した信頼性ある噴
射特性を与えることができると共に、エンジン停止時の
燃料モレをゼロにし、始動性に優れかつ安全な構造を提
供できる。
【0022】なお、以上の実施例では、耐摩耗性と耐食
性とを有する非導電性材料としてセラミックスの1種で
ある窒化ケイ素(Si3 4 )を用いたが、他の材料で
あっても良く、例えばふっ素樹脂等の合成樹脂であって
も良い。また、上記実施例では、弁体と弁座の両方に耐
摩耗性と耐食性とを有する非導電性材料(窒化ケイ素)
を使用したが、一方のみに使用しても良く、この場合で
もある程度の効果は得られる。また、弁体1と弁座2の
表面部分のみを成膜処理したが、特に上記ふっ素樹脂糖
を使用する場合のように可能であれば、母材から当該材
料で構成してもよい。
【0023】また、上記実施例ではアルコール燃料を使
用する燃料噴射弁について説明したが、腐蝕性成分を含
めば他の燃料であっても効果があり、また燃焼により腐
食性成分が発生する燃料を使用するもにに対しても効果
がある。
【0024】
【発明の効果】アルコール燃料等の腐蝕性成分を含む
か、或いは燃焼により腐食性成分が発生する燃料を使用
する電磁式燃料噴射弁において、これら腐食性成分に対
して弁体と弁座のシート部の腐食をなくし、安定した信
頼性ある噴射特性を与えることができると共に、エンジ
ン停止時の燃料モレをゼロにし、始動性に優れかつ安全
な構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による電磁式燃料噴射弁の断
面図である。
【図2】図1に示す電磁式燃料噴射弁の要部拡大図であ
る。
【図3】図1に示す電磁式燃料噴射弁の弁座セラミック
スコーティング層の断面SEM像である。
【図4】図1に示す電磁式燃料噴射弁の耐久試験結果を
示す図である。
【図5】従来品電磁式燃料噴射弁の耐久試験後の弁座シ
ート部の外観SEM像を示す図である。
【図6】従来品電磁式燃料噴射弁の耐久試験後の弁座シ
ート部の断面組織SEM像を示す図である。
【符号の説明】 1 弁体 2 弁座 3 可動子 5 ストッパ 6 ばね 7 固定子 鉄心 8 ケーシング 9 電磁コイル 10 シート部
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16K 31/06 385 A 9064−3H (72)発明者 小野瀬 伸 茨城県勝田市大字高場2520番地 株式会社 日立製作所自動車機器事業部内 (72)発明者 中川 雄策 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内 (72)発明者 相馬 正浩 茨城県勝田市大字高場字鹿島谷津2477番地 3 日立オートモテイブエンジニアリング 株式会社内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 固定子鉄心、この固定子鉄心と同心状の
    電磁コイル、磁性材料で作られかつ前記固定子鉄心と電
    磁コイルを内部に収容したケーシング、先端に弁体を備
    えた可動子、この可動子用のストッパ、前記可動子を挾
    んで前記ストッパと対抗した弁座、及び前記可動子の一
    端に係合して前記可動子を前記弁座に対して押圧するば
    ねから構成され、前記可動子が前記電磁コイルが生じる
    電磁力と前記ばねの力により前記弁座と前記固定子鉄心
    との間で往復運動する電磁式燃料噴射弁において、 前記可動子の先端の弁体と前記弁座の少なくとも一方の
    少なくとも表面部分を耐摩耗性と耐食性とを有する非導
    電性材料で形成したことを特徴とする電磁式燃料噴射
    弁。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電磁式燃料噴射弁におい
    て、前記耐摩耗性と耐食性とを有する非導電性材料がセ
    ラミックスであることを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の電磁式燃料噴射弁におい
    て、前記耐摩耗性と耐食性とを有する非導電性材料が窒
    化ケイ素であることを特徴とする電磁式燃料噴射弁。
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