JPH059725A - 硬質炭素膜の被覆方法 - Google Patents
硬質炭素膜の被覆方法Info
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- JPH059725A JPH059725A JP3190987A JP19098791A JPH059725A JP H059725 A JPH059725 A JP H059725A JP 3190987 A JP3190987 A JP 3190987A JP 19098791 A JP19098791 A JP 19098791A JP H059725 A JPH059725 A JP H059725A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 硬質炭素膜を基板上に被覆する場合、付着強
度が小さいので、Si、Ge、Siなどの中間層を基板上に形
成して硬質炭素膜の被覆をその上に施しているが、この
場合依然として中間層と基板との付着強度が問題とな
り、また光学材料としてのZnS やZnSeの場合前記のよう
な中間層の介在しないことが好都合の場合もある。 【構成】 不活性イオンガスまたは水素イオンを基板上
に照射して、基板上に直接硬質炭素膜を形成する。
度が小さいので、Si、Ge、Siなどの中間層を基板上に形
成して硬質炭素膜の被覆をその上に施しているが、この
場合依然として中間層と基板との付着強度が問題とな
り、また光学材料としてのZnS やZnSeの場合前記のよう
な中間層の介在しないことが好都合の場合もある。 【構成】 不活性イオンガスまたは水素イオンを基板上
に照射して、基板上に直接硬質炭素膜を形成する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、硬質の炭素膜を付着性
良く被覆する方法に関するものであり、表面保護膜や、
保護膜を兼ねた光学膜、絶縁膜形成に有効である。
良く被覆する方法に関するものであり、表面保護膜や、
保護膜を兼ねた光学膜、絶縁膜形成に有効である。
【0002】
【従来の技術】硬質炭素膜は、ダイヤモンド状炭素、ア
モルファスカーボン、i−Cなどとも呼ばれている。そ
の特性は、ヌープ硬度が2000から 10000kg/mm2 と非常
に硬く、電気絶縁性があり、赤外光に対して透明である
など、ダイヤモンドに類似した点が多く、種々の応用が
期待されている材料である。しかし、SiやGeなどIV属の
材料に対しての場合を除くと、一般に基板に対する付着
性がさほど強くなく、厳しい環境下では剥離が起こり易
い。たとえば透光性材料であるZnS やZnSeなどの場合は
特に付着性が弱く、形成された硬質炭素膜は柔らかい布
で触れるだけで容易に剥離することもしばしばである。
これを解決するためにSiやGe、あるいはSiC などからな
る中間層を介して硬質炭素膜を形成する方法が用いられ
てきた。
モルファスカーボン、i−Cなどとも呼ばれている。そ
の特性は、ヌープ硬度が2000から 10000kg/mm2 と非常
に硬く、電気絶縁性があり、赤外光に対して透明である
など、ダイヤモンドに類似した点が多く、種々の応用が
期待されている材料である。しかし、SiやGeなどIV属の
材料に対しての場合を除くと、一般に基板に対する付着
性がさほど強くなく、厳しい環境下では剥離が起こり易
い。たとえば透光性材料であるZnS やZnSeなどの場合は
特に付着性が弱く、形成された硬質炭素膜は柔らかい布
で触れるだけで容易に剥離することもしばしばである。
これを解決するためにSiやGe、あるいはSiC などからな
る中間層を介して硬質炭素膜を形成する方法が用いられ
てきた。
【0003】Si、Ge、SiC などを中間層に用いること
で、付着性良く硬質炭素膜を被覆することは可能となっ
た。しかし、中間層を用いるということでプロセスが余
分になるという行程上のマイナス要因が生ずる結果とな
った。また、硬質炭素膜の付着強度の向上はみられた
が、今度は中間層の下で剥離が生ずるという新たな問題
が加わることとなった。さらに光学材料としてのZnS や
ZnSeの場合、光学的な理由で中間層を導入しない方が好
都合な場合もあり、中間層無しでも付着性よく硬質炭素
膜が被覆できる方法を開発する必要があった。
で、付着性良く硬質炭素膜を被覆することは可能となっ
た。しかし、中間層を用いるということでプロセスが余
分になるという行程上のマイナス要因が生ずる結果とな
った。また、硬質炭素膜の付着強度の向上はみられた
が、今度は中間層の下で剥離が生ずるという新たな問題
が加わることとなった。さらに光学材料としてのZnS や
ZnSeの場合、光学的な理由で中間層を導入しない方が好
都合な場合もあり、中間層無しでも付着性よく硬質炭素
膜が被覆できる方法を開発する必要があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】前述の問題点を解決する
ため、種々の検討を行った結果、硬質カーボン膜の形成
中あるいはその前後に、イオンを照射する方法が有効で
あることが判った。その方法の概要につき以下に説明す
る。図1は本発明を適用する装置の一例である。この例
では炭素膜の成膜に電子ビーム蒸着法を使用している。
基板1を基板ホルダー2にセットしたのち、真空槽3の
排気を行なう。真空排気系4は高真空対応のものを用い
る。次に基板をヒーター5により所定の温度まで上げ
る。基板の表面洗浄にはイオンビーム照射を使用する。
このときのイオン種は不活性ガスイオン、加速エネルギ
ーは1〜10keV程度が好ましい。なおイオン源6は効率
の点から大口径のものがよい。表面洗浄を施したのち、
イオンビームの加速エネルギーを所定の値に設定する。
イオンビームの照射を継続した状態で電子ビーム蒸発源
9よりグラファイト8を蒸発源として炭素膜の成膜を開
始する。この図の方法では蒸着される炭素膜が硬質炭素
膜となるのにイオンビームの照射効果が必要なため、成
膜終了までイオンビーム照射が継続される。しかし、成
膜方法や目的によっては、イオンビーム照射を成膜初期
に限定することもある。以上が本発明の方法の概略を示
すものである。
ため、種々の検討を行った結果、硬質カーボン膜の形成
中あるいはその前後に、イオンを照射する方法が有効で
あることが判った。その方法の概要につき以下に説明す
る。図1は本発明を適用する装置の一例である。この例
では炭素膜の成膜に電子ビーム蒸着法を使用している。
基板1を基板ホルダー2にセットしたのち、真空槽3の
排気を行なう。真空排気系4は高真空対応のものを用い
る。次に基板をヒーター5により所定の温度まで上げ
る。基板の表面洗浄にはイオンビーム照射を使用する。
このときのイオン種は不活性ガスイオン、加速エネルギ
ーは1〜10keV程度が好ましい。なおイオン源6は効率
の点から大口径のものがよい。表面洗浄を施したのち、
イオンビームの加速エネルギーを所定の値に設定する。
イオンビームの照射を継続した状態で電子ビーム蒸発源
9よりグラファイト8を蒸発源として炭素膜の成膜を開
始する。この図の方法では蒸着される炭素膜が硬質炭素
膜となるのにイオンビームの照射効果が必要なため、成
膜終了までイオンビーム照射が継続される。しかし、成
膜方法や目的によっては、イオンビーム照射を成膜初期
に限定することもある。以上が本発明の方法の概略を示
すものである。
【0005】
【作用】イオンの照射時期は、成膜の前、成膜と同時、
成膜後の3種類に分けられる。成膜前のイオン照射は、
基板表面の清浄化に効果がある。表面の吸着ガスや析出
物、酸化層の除去を行うことで、これらの存在が原因と
なる付着性低下を抑えることが出来る。成膜中のイオン
照射は、基板とのミキシング層形成による付着性向上
と、表面での反応性向上の2つの効果がある。成膜後の
イオン照射は、成膜中の照射ほど効果的ではないが、同
様のミキシング効果による付着性向上が挙げられる。基
板とのミキシングはあくまで成膜初期の問題である。よ
って、イオンビーム照射は成膜の最後まで必ずしも続け
る必要は無い。ただし膜質の連続性を特に要求する場合
や、イオンビーム照射がミキシング効果のみならず硬質
炭素膜の形成そのものに寄与する場合には、成膜全過程
を通じてイオンビーム照射を行なう必要がある。
成膜後の3種類に分けられる。成膜前のイオン照射は、
基板表面の清浄化に効果がある。表面の吸着ガスや析出
物、酸化層の除去を行うことで、これらの存在が原因と
なる付着性低下を抑えることが出来る。成膜中のイオン
照射は、基板とのミキシング層形成による付着性向上
と、表面での反応性向上の2つの効果がある。成膜後の
イオン照射は、成膜中の照射ほど効果的ではないが、同
様のミキシング効果による付着性向上が挙げられる。基
板とのミキシングはあくまで成膜初期の問題である。よ
って、イオンビーム照射は成膜の最後まで必ずしも続け
る必要は無い。ただし膜質の連続性を特に要求する場合
や、イオンビーム照射がミキシング効果のみならず硬質
炭素膜の形成そのものに寄与する場合には、成膜全過程
を通じてイオンビーム照射を行なう必要がある。
【0006】照射されるイオン種は、不活性ガスである
He、Ne、Ar、Kr、Xeイオンが効果的である。これらの元
素は反応性に乏しいために、炭素膜や基板材料との化合
物を作らないためである。また水素イオンも照射により
問題となる化合物を作ることが無いので照射に使用して
よい。ミキシング効果が大きくなるためには、質量数が
大きい方がよく、また安価であるという点からArが優れ
ている。これら不活性ガスの他にも目的に応じて他のガ
スを単独で使用、または不活性ガスと併用してもよい。
併用する場合は別のイオン源を独立に使用してもよい。
He、Ne、Ar、Kr、Xeイオンが効果的である。これらの元
素は反応性に乏しいために、炭素膜や基板材料との化合
物を作らないためである。また水素イオンも照射により
問題となる化合物を作ることが無いので照射に使用して
よい。ミキシング効果が大きくなるためには、質量数が
大きい方がよく、また安価であるという点からArが優れ
ている。これら不活性ガスの他にも目的に応じて他のガ
スを単独で使用、または不活性ガスと併用してもよい。
併用する場合は別のイオン源を独立に使用してもよい。
【0007】イオンのエネルギーは1keV 以上100keV以
下が望ましい。イオンのエネルギーは浸入深さと変位さ
せる原子の平均個数を決める。このエネルギー領域は効
果的にミキシングが行われる領域を示す。イオンのビー
ム強度は炭素膜の成膜速度と炭素膜の構造などの特性、
それにイオンのエネルギーにより変わるものである。本
発明における炭素膜成膜は、同時にイオンビームを使用
するため、10-3Torr以上の低真空条件での成膜は適切で
ない。これはイオンビームの平均自由行程が短くなり、
雰囲気のガス分子により散乱を受けてしまうからであ
る。また、イオンビームの軌道をそらすような強い電場
や時間的に変動のある電場を必要とする成膜も困難であ
る。そこで、硬質炭素膜の炭素の供給方法としては、次
に示すような方法が適切である。 グラファイトなどの炭素供給源を蒸着により基板上
に堆積させる。このとき同時に照射されるイオンビーム
により、蒸着される炭素膜にエネルギーが供給され硬質
炭素となるものと考えられる。従って本方法は成膜全過
程を通じてイオン照射を行う必要がある。 メタンやベンゼンなどの炭化水素ガスを基板表面に
導入しながら、イオンビームを照射し、基板表面におい
て反応せしめ、硬質炭素膜を形成する。このとき硬質炭
素膜が形成されうるものであるならば、炭化水素以外で
炭素を含む任意のガスに置き換えてもよく、またこれら
炭素系のガスに別のガス(例えば水素ガスなど)を添架
してもよい。なおガス圧は10-4Torr台より高真空に保つ
必要がある。本方法も成膜全過程を通じてイオン照射を
行う必要がある。 炭素イオンまたは炭化水素イオンを基板に照射して
炭素を供給する。このイオンは本発明の不活性ガスまた
は水素イオンビームと同じイオン源から供給されても良
いし、これとは独立した別のイオン源を使用してもよ
い。前述の真空度の問題や電場の問題を解決するために
以上のような方法を示したが、ここに示した以外にも、
イオンビーム照射が可能であれば本発明による方法は有
効である。また、真空度や電場の条件がイオンビームの
適用を困難にする場合でも、成膜とイオンビーム照射を
時間的に分離して行なうことで可能である。例えばプラ
ズマCVD法や熱CVD法、タングステンフィラメント
CVD法、イオンブレーティング法などの適用がそれで
ある。これらの方法は以下のようにして行うのが好まし
い。 一定時間の成膜を行なったのち、成膜を中断して排
気、高真空になった時点でイオンビーム照射を一定時間
行う。このサイクルを所定の膜厚になるまで継続する。
成膜及びイオンビーム照射時間は、1サイクル当りの膜
厚dcとイオンのエネルギー、照射量との関係で決まる。
膜厚dcが厚くなりすぎてからイオン照射を行なうとイオ
ンが界面まで到達しないため、ミキシング効果が期待で
きない。よって膜厚dcはイオンの浸入深さ以下が適当で
ある。イオンの浸入深さはイオンのエネルギーで決ま
る。またイオン照射が長すぎると成膜した炭素層がすべ
てスパッタリングされてしまう。そこで炭素膜がスパッ
タリングされてしまわない照射量となるようにイオンビ
ーム強度と照射時間を決める必要がある。 基板との付着性はあくまで界面の問題である。そこ
で成膜の初期のみイオンビーム照射を用いる〜及び
の方法を適用し、その後はイオンビームを必要としな
い任意の方法で硬質炭素膜形成を行う。ただしこの方法
はイオンビームを使用している界面付近と使用していな
い部分とで膜質が異なる場合があり、この不連続性が問
題とならない用途に適用するのが好ましい。本発明は、
通常いかなる基板に対しても有効であるが、従来法でと
くに付着性の弱かった基板材料に対しては、その効果の
大きさがきわだっている。ZnS やZnSeなどは付着性のよ
い被覆がほとんど不可能であったが、本発明により格段
に付着性が上がり、耐久性が大きく向上した。
下が望ましい。イオンのエネルギーは浸入深さと変位さ
せる原子の平均個数を決める。このエネルギー領域は効
果的にミキシングが行われる領域を示す。イオンのビー
ム強度は炭素膜の成膜速度と炭素膜の構造などの特性、
それにイオンのエネルギーにより変わるものである。本
発明における炭素膜成膜は、同時にイオンビームを使用
するため、10-3Torr以上の低真空条件での成膜は適切で
ない。これはイオンビームの平均自由行程が短くなり、
雰囲気のガス分子により散乱を受けてしまうからであ
る。また、イオンビームの軌道をそらすような強い電場
や時間的に変動のある電場を必要とする成膜も困難であ
る。そこで、硬質炭素膜の炭素の供給方法としては、次
に示すような方法が適切である。 グラファイトなどの炭素供給源を蒸着により基板上
に堆積させる。このとき同時に照射されるイオンビーム
により、蒸着される炭素膜にエネルギーが供給され硬質
炭素となるものと考えられる。従って本方法は成膜全過
程を通じてイオン照射を行う必要がある。 メタンやベンゼンなどの炭化水素ガスを基板表面に
導入しながら、イオンビームを照射し、基板表面におい
て反応せしめ、硬質炭素膜を形成する。このとき硬質炭
素膜が形成されうるものであるならば、炭化水素以外で
炭素を含む任意のガスに置き換えてもよく、またこれら
炭素系のガスに別のガス(例えば水素ガスなど)を添架
してもよい。なおガス圧は10-4Torr台より高真空に保つ
必要がある。本方法も成膜全過程を通じてイオン照射を
行う必要がある。 炭素イオンまたは炭化水素イオンを基板に照射して
炭素を供給する。このイオンは本発明の不活性ガスまた
は水素イオンビームと同じイオン源から供給されても良
いし、これとは独立した別のイオン源を使用してもよ
い。前述の真空度の問題や電場の問題を解決するために
以上のような方法を示したが、ここに示した以外にも、
イオンビーム照射が可能であれば本発明による方法は有
効である。また、真空度や電場の条件がイオンビームの
適用を困難にする場合でも、成膜とイオンビーム照射を
時間的に分離して行なうことで可能である。例えばプラ
ズマCVD法や熱CVD法、タングステンフィラメント
CVD法、イオンブレーティング法などの適用がそれで
ある。これらの方法は以下のようにして行うのが好まし
い。 一定時間の成膜を行なったのち、成膜を中断して排
気、高真空になった時点でイオンビーム照射を一定時間
行う。このサイクルを所定の膜厚になるまで継続する。
成膜及びイオンビーム照射時間は、1サイクル当りの膜
厚dcとイオンのエネルギー、照射量との関係で決まる。
膜厚dcが厚くなりすぎてからイオン照射を行なうとイオ
ンが界面まで到達しないため、ミキシング効果が期待で
きない。よって膜厚dcはイオンの浸入深さ以下が適当で
ある。イオンの浸入深さはイオンのエネルギーで決ま
る。またイオン照射が長すぎると成膜した炭素層がすべ
てスパッタリングされてしまう。そこで炭素膜がスパッ
タリングされてしまわない照射量となるようにイオンビ
ーム強度と照射時間を決める必要がある。 基板との付着性はあくまで界面の問題である。そこ
で成膜の初期のみイオンビーム照射を用いる〜及び
の方法を適用し、その後はイオンビームを必要としな
い任意の方法で硬質炭素膜形成を行う。ただしこの方法
はイオンビームを使用している界面付近と使用していな
い部分とで膜質が異なる場合があり、この不連続性が問
題とならない用途に適用するのが好ましい。本発明は、
通常いかなる基板に対しても有効であるが、従来法でと
くに付着性の弱かった基板材料に対しては、その効果の
大きさがきわだっている。ZnS やZnSeなどは付着性のよ
い被覆がほとんど不可能であったが、本発明により格段
に付着性が上がり、耐久性が大きく向上した。
【0008】
【実施例】本発明を適用したいくつかの例を以下に示
す。また、表1にそれぞれの方法でZnS 基板上に被覆し
た硬質炭素膜の付着強度をスクラッチテストで評価した
結果を示す。 (実施例1) 図1に示した装置でZnS 基板上に成膜を
行った。以下その実施例を示す。ZnS 製の基板1を基板
ホルダー2にセットし、排気系4により10-7Torrまで真
空槽3の排気を行った。基板はヒーター5により 400℃
に設定した。イオン源6を動作させ、まず3keVのArイオ
ンを基板表面に照射した。これは基板表面を清浄化する
ための処理である。このとき絶縁体である基板表面が帯
電するのを防ぐため、基板表面近くに配置したタングス
テンフィラメント7に電流を流し、熱電子により基板表
面の電荷を中和した。3分のイオン照射の後、グラファ
イト8を蒸発源に、電子ビーム蒸着源9により炭素の蒸
着を開始した。30分この状態を保った後、成膜及びイオ
ンビーム照射を終了した。 (実施例2) 図2のような装置でZnS 基板上に硬質炭
素膜の成膜を行った。基板11をホルダー12上にセット
し、真空槽内13を排気系14により10-7Torrまで排気を行
った。ヒーター15により基板温度は 400℃とした。実施
例1と同様に、タングステンフィラメント17による電気
的な中和を行いながら、イオン源16からのArイオンによ
る表面洗浄を施した。このあとイオンエネルギーを10ke
V として照射を続けながら、ガス導入部18によりメタン
ガスを導入した。このときの真空度は5×10-4Torrであ
る。1時間この状態を維持した後イオン照射とガスの導
入を終了した。 (実施例3) 実施例2と同様の装置、方法で表面処理
を行った。硬質炭素膜の成膜も初期の5分間は実施例2
と同様の条件で行った。そのあと、高周波プラズマCV
Dに切り替えるべく、イオン照射のみを中断し、基板ホ
ルダーに300Wの高周波を印加した。ガス条件はそのま
まである。この状態を30分間維持し、硬質炭素膜を成膜
した。 (比較例1) 図2の装置において、イオン照射をまっ
たく使用せずに、硬質炭素膜の形成を行った。基板温度
は 400℃で、メタンガスを5×10-4Torrまで導入し、高
周波は基板ホルダーに印加した。高周波電力は 300Wと
し、成膜時間は30分であった。表1に示したように、成
膜に際してのイオンビーム照射は付着性を格段に向上さ
せるものであることがわかる。
す。また、表1にそれぞれの方法でZnS 基板上に被覆し
た硬質炭素膜の付着強度をスクラッチテストで評価した
結果を示す。 (実施例1) 図1に示した装置でZnS 基板上に成膜を
行った。以下その実施例を示す。ZnS 製の基板1を基板
ホルダー2にセットし、排気系4により10-7Torrまで真
空槽3の排気を行った。基板はヒーター5により 400℃
に設定した。イオン源6を動作させ、まず3keVのArイオ
ンを基板表面に照射した。これは基板表面を清浄化する
ための処理である。このとき絶縁体である基板表面が帯
電するのを防ぐため、基板表面近くに配置したタングス
テンフィラメント7に電流を流し、熱電子により基板表
面の電荷を中和した。3分のイオン照射の後、グラファ
イト8を蒸発源に、電子ビーム蒸着源9により炭素の蒸
着を開始した。30分この状態を保った後、成膜及びイオ
ンビーム照射を終了した。 (実施例2) 図2のような装置でZnS 基板上に硬質炭
素膜の成膜を行った。基板11をホルダー12上にセット
し、真空槽内13を排気系14により10-7Torrまで排気を行
った。ヒーター15により基板温度は 400℃とした。実施
例1と同様に、タングステンフィラメント17による電気
的な中和を行いながら、イオン源16からのArイオンによ
る表面洗浄を施した。このあとイオンエネルギーを10ke
V として照射を続けながら、ガス導入部18によりメタン
ガスを導入した。このときの真空度は5×10-4Torrであ
る。1時間この状態を維持した後イオン照射とガスの導
入を終了した。 (実施例3) 実施例2と同様の装置、方法で表面処理
を行った。硬質炭素膜の成膜も初期の5分間は実施例2
と同様の条件で行った。そのあと、高周波プラズマCV
Dに切り替えるべく、イオン照射のみを中断し、基板ホ
ルダーに300Wの高周波を印加した。ガス条件はそのま
まである。この状態を30分間維持し、硬質炭素膜を成膜
した。 (比較例1) 図2の装置において、イオン照射をまっ
たく使用せずに、硬質炭素膜の形成を行った。基板温度
は 400℃で、メタンガスを5×10-4Torrまで導入し、高
周波は基板ホルダーに印加した。高周波電力は 300Wと
し、成膜時間は30分であった。表1に示したように、成
膜に際してのイオンビーム照射は付着性を格段に向上さ
せるものであることがわかる。
【0009】
【表1】
【0010】
【発明の効果】本発明により、基板との付着性が高い硬
質炭素膜を被覆することが可能となった。とくにZnS や
ZnSeなど従来中間層無しではほとんど不可能であった基
板材料に対しても、非常に高い付着力で硬質炭素膜が被
覆でき、耐久性向上に大きく寄与するものとなった。
質炭素膜を被覆することが可能となった。とくにZnS や
ZnSeなど従来中間層無しではほとんど不可能であった基
板材料に対しても、非常に高い付着力で硬質炭素膜が被
覆でき、耐久性向上に大きく寄与するものとなった。
【図1】本発明を実施する装置の一例を示す。
【図2】本発明を実施する装置の他の一例を示す。
【符号の説明】
1,11 基板
2,12 基板ホルダー
3,13 真空槽
4,14 排気系
5,15 ヒーター
6,16 イオン源
7,17 タングステンフィラメント
8 グラファイト
9 電子ビーム蒸発源
18 ガス導入部
Claims (4)
- 【請求項1】 基板上に硬質炭素膜を被覆する方法にお
いて、炭素膜形成中、あるいはその前後に不活性ガスイ
オンまたは水素イオンを照射することを特徴とする硬質
炭素膜の被覆方法。 - 【請求項2】 請求項1において、照射するイオンのエ
ネルギーを1keV以上100keV以下とする硬質炭素膜の被覆
方法。 - 【請求項3】 請求項1において、炭素膜形成方法が、 真空蒸着法 炭化物ガスを単独または他のガスとの混合ガスとし
て基板に吹き付ける方法 炭素イオンまたは炭化水素イオンを基板に照射する
方法 硬質炭素膜形成方法をイオンビーム照射と時間的に
分離して行なう方法 成膜初期のみ〜のいずれかの方法で成膜を行
い、途中から任意の硬質炭素膜形成方法を適用する方法 のいずれかである事を特徴とする硬質炭素膜の被覆方
法。 - 【請求項4】 請求項1〜3において、基板材質がZnS
またはZnSeであることを特徴とする硬質炭素膜の被覆方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3190987A JPH059725A (ja) | 1991-07-04 | 1991-07-04 | 硬質炭素膜の被覆方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP3190987A JPH059725A (ja) | 1991-07-04 | 1991-07-04 | 硬質炭素膜の被覆方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH059725A true JPH059725A (ja) | 1993-01-19 |
Family
ID=16266982
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP3190987A Pending JPH059725A (ja) | 1991-07-04 | 1991-07-04 | 硬質炭素膜の被覆方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH059725A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2007081298A1 (fr) * | 2006-01-13 | 2007-07-19 | State Enterprise 'international Center For Electron Beam Technologies Of E.O. Paton Electric Welding Institute Of National Academy Of Sciences Of Ukraine' | Procédé de production de matériau contenant du carbone par évaporation sous vide par bombardement électronique de carbone puis par condensation sur un substrat et dispositif de mise en oeuvre de ce procédé |
CN113355644A (zh) * | 2020-03-05 | 2021-09-07 | 四川大学 | 一种浸没注入原位表面梯度重构耐磨类金刚石涂层改性工艺方法 |
US11884307B2 (en) | 2015-10-26 | 2024-01-30 | Eaglerail Container Logistics Inc. | Overhead transport and route management system |
US11981544B2 (en) | 2015-10-26 | 2024-05-14 | Eaglerail Container Logistics Inc. | Carrier configured to transport various sized objects |
-
1991
- 1991-07-04 JP JP3190987A patent/JPH059725A/ja active Pending
Cited By (5)
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