JPH0594914A - 希土類鉄系永久磁石の皮膜形成法及び希土類鉄系永久磁石 - Google Patents

希土類鉄系永久磁石の皮膜形成法及び希土類鉄系永久磁石

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JPH0594914A
JPH0594914A JP3133410A JP13341091A JPH0594914A JP H0594914 A JPH0594914 A JP H0594914A JP 3133410 A JP3133410 A JP 3133410A JP 13341091 A JP13341091 A JP 13341091A JP H0594914 A JPH0594914 A JP H0594914A
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rare earth
plating
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iron
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JP3133410A
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Atsushi Tagaya
敦 多賀谷
Motoharu Shimizu
元治 清水
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Hitachi Metals Ltd
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F41/00Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties
    • H01F41/02Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets
    • H01F41/0253Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing permanent magnets
    • H01F41/026Apparatus or processes specially adapted for manufacturing or assembling magnets, inductances or transformers; Apparatus or processes specially adapted for manufacturing materials characterised by their magnetic properties for manufacturing cores, coils, or magnets for manufacturing permanent magnets protecting methods against environmental influences, e.g. oxygen, by surface treatment

Abstract

(57)【要約】 【目的】 希土類鉄系永久磁石の表面を付着強度及び耐
久性に優れた耐食性皮膜、耐薬品性皮膜で被覆する希土
類鉄系永久磁石の皮膜形成法及び希土類鉄系永久磁石を
提供する。 【構成】 Cuメッキ等による下地皮膜の上に電解メッ
キによりNi・P合金皮膜を形成する。このように、N
i-P合金皮膜を形成するために電解Ni−Pメッキを
行うことにより、メッキ液のpHを低くしても素材上に
粒子を析出させることができ、メッキ皮膜を形成させる
ことができる。またpHが低いことから得られたメッキ
層はPを充分に含んでおり、そのためメッキ層の結晶構
造は図1のX線回折結果に示されるように非晶質と微細
結晶質との混相となり、その結果高い耐食性が与えられ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は希土類鉄系永久磁石に
関するものであり、特に優れた耐食性、耐薬品性を備え
た希土類鉄系永久磁石の皮膜形成法及び希土類鉄系永久
磁石に関するものである。
【0002】
【従来の技術】良く知られるように、希土類鉄系永久磁
石(例えば、RE−Fe−B系磁石。ここでREはN
d、Prを主成分とし、Dy、Ce等で一部置換された
希土類。Fe以外にCo等の遷移元素、Al等他の添加
元素で一部置換される場合もある)は優れた磁気特性を
有し、かかる優れた磁気特性に着目して、通常のOA機
器、MRI装置以外にも自動車の内燃機関部品や化学プ
ラントにおけるガスの磁場処理装置等、極めて広範囲な
用途についてその適用の可能性が検討されている。しか
し、この希土類鉄系磁石は活性の高く酸化され易いFe
や希土類元素を含むことから極めて腐食され易く、耐食
性及び耐薬品性に難点があり、その点がかかる希土類鉄
系磁石を内燃機関部品等に適用するにあたっての障害と
なっている。すなわち、この希土類鉄系永久磁石は大気
中で極めて容易に酸化されて錆を生じ、長期間使用する
場合には、その酸化の程度が著しいものとなり、磁気特
性のみならず耐摩耗性のような機械的性質等も含めた全
体的な機能の低下を生ずる欠点がある。特に、希土類鉄
系永久磁石の極めて良好な磁気特性は、磁石自体を小型
化することを可能とし、その結果希土類鉄系永久磁石に
ついては精密機械部品としての広範な適用の可能性があ
るにも拘らず、大気中でも発錆し易く磁気特性や機械的
性質が劣化することがそのように広範に適用するにあた
っての障害ともなっている。
【0003】そこでメッキ法、アルミニウムコーティン
グ法或いは樹脂コーティング法などの表面処理法により
磁石表面を皮膜により保護して耐食性の向上を図ること
が例えば特開昭61-168221号、特開昭60-63901号、特開
昭63-9108号、特開昭63-110708号等に提案されている。
しかし、これらに示された内容は、希土類鉄系永久磁石
の耐食性、特に耐薬品性を向上するという目的について
は、未だこれを充分に達成しているというものではなか
った。一般に希土類永久鉄磁石を各種用途に用いる場合
には、その表面皮膜に次のような特性が求められる。 付着性が良好で膜厚が薄く、磁気特性に対する皮膜に
よる悪影響がないこと。 皮膜にピンホールがなく自動車用モーター等の刻々と
環境が変化する過酷な使用条件下でも皮膜からの水分、
塩分の浸透により磁石表面に錆によるふくらみ等を生じ
ることがないこと。 このような希土類鉄系永久磁石の表面皮膜に求められる
特性を満足することを目的として、特開平2-216802号に
は、希土類鉄系永久磁石の表面にNiメッキの下地皮膜
を介して、「無電解」メッキによりNiPメッキ皮膜を
具備するようにした希土類鉄系永久鉄磁石が示されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし前記の特開平2-
216802号に示された希土類鉄系永久磁石については次の
ような問題があった。すなわち、特開平2-216802号に示
されたNi-Pメッキ皮膜はNi皮膜中にPを含有させ
て皮膜の結晶粒を微細化することにより、耐薬品性の向
上を図ろうとするものであり、このNi皮膜中にPが固
溶して皮膜の結晶粒が充分に微細化するのはPの含有量
が6〜8%以上となったときである。ところで、一般に
「無電解」メッキは、メッキ液中に含まれている還元剤
の活性化によりメッキの対象となる素材の表面に化学的
に粒子を析出させ皮膜を形成するものであり、かかる還
元剤としては通常亜リン酸、次亜リン酸、次亜リン酸ソ
ーダ等のリン酸が使用され、その結果、得られる析出皮
膜には不可避的にPが5%程度含有されることとなる。
このPの含有率はメッキ液のpHに強く依存し、pHが
低くなるほど、言い換えれば酸性度が高くなるほどP含
有率が大きく、耐薬品性の優れた皮膜を得ることができ
る。一方、「無電解」メッキ液のpHはメッキによる成
膜性を大きく支配しており素材表面への粒子の析出速度
はpHが高くなるほど、言い換えれば酸性度が低くなる
ほど大きくなる。逆にメッキ液のpHが低くなる、言い
換えれば酸性度が高くなると析出反応はなくなり、具体
的にはpHが5以下になると素材上への粒子の析出はま
ったく生じなくなる。したがって、「無電解」メッキを
行う場合には、メッキによる成膜性を維持し、素材上へ
粒子を析出させようとすれば、pHを5以上にする必要
があり、反面そのようにpHを5以上にする場合には、
皮膜に充分にPを含有させることはできず、具体的には
皮膜中のP含有量を6%以上にして皮膜の結晶粒を充分
に微細化することはできなくなる。すなわち、P含有量
の高い皮膜を得る手法としては「無電解」メッキは成膜
性の点で適さないものであるということができる。
【0005】以上のことから、前述した特開平2-216802
号に示された希土類鉄系永久磁石では、素材上に充分に
メッキを析出させるためにはpHを大きくする必要があ
り、そのようにpHを大きくすると素材上に析出するN
i-P合金皮膜中のPが少なくなりNi-P合金皮膜の結
晶粒が充分に微細化せず、皮膜が得られてもその皮膜
に、例えば硫酸または亜硫酸ガス中における高い耐薬品
性を与えることができず、逆に、Ni-P合金皮膜中の
Pを多くするためにpHを低くすると、素材上への粒子
の析出がなくなり、メッキ皮膜自体が得られなくなって
しまうという問題があった。さらにこの点を詳しく説明
すれば、特開平2-216802号に示された希土類永久磁石で
は、素材上に析出する合金皮膜は非晶質相であり、かか
る合金皮膜に対してさらに熱処理を施すことにより、非
晶質相を結晶質に変化させる必要があり、結晶質に変化
させたとしてもかかる結晶組織はPを充分に含有してい
ないことから、結晶粒が充分に微細化されないものと思
われる。さらに工業的な観点からいえば、特開平2-2168
02号に示された希土類永久磁石のように「無電解」メッ
キにより表面皮膜形成後にさらに熱処理を施す必要があ
るということは時間・労力共に多大なロスとなるという
問題があった。従って、この発明は以上の従来の希土類
鉄系永久磁石の皮膜形成法及び希土類永久磁石における
問題を解消し、耐食性及び硫酸または亜硫酸ガス等の中
における耐薬品性の優れた希土類鉄系永久磁石の皮膜形
成法及び希土類鉄系永久磁石を提供することにあり、特
に焼結或いは鋳造磁石の表面を付着強度及び耐久性に優
れた耐食性皮膜、耐薬品性皮膜で被覆し、例えば自動車
部品や精密機械部品等として使用しても長時間に亘って
実用上何等不都合を生じない希土類鉄系永久磁石の皮膜
形成法及び希土類鉄系永久磁石を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】以上説明したようにこの
発明の発明者は、希土類鉄系永久磁石表面にNiメッキ
等の下地皮膜を形成した上に、更にNi−P合金皮膜を
電解メッキによって形成することによって、Ni皮膜中
に充分にPが固溶して皮膜の結晶粒が充分に微細化する
ことにより極めて耐食性・耐薬品性の高い保護皮膜が得
られることを知見し、かかる知見に基づきこの発明をな
すに至った。すなわちこの発明によれば、希土類鉄系永
久磁石表面に下地皮膜を形成し、次いでその下地皮膜の
上にニッケル(Ni)・リン(P)合金皮膜を形成する
希土類鉄系永久磁石の皮膜形成法において、前記Ni・
P合金皮膜を電解メッキにより形成する希土類鉄系永久
磁石の皮膜形成法が提供される。またこの発明によれ
ば、下地皮膜を介してNi・P合金皮膜を有する希土類
鉄系永久磁石において、前記Ni・P合金皮膜は非晶質
と微細結晶質との混成組織を有する希土類鉄系永久磁石
が提供される。さらにこの発明によれば前記電解メッキ
を行うにあたって、メッキ液を2≦pH≦4となるよう
に調整する希土類永久磁石の皮膜形成法が提供される。
【0007】
【作用】次にこの発明の内容につきその作用と共にさら
に詳細に説明する。表面に皮膜を形成する対象となる希
土類鉄系永久磁石としては公知の全てのものが対象とな
り、その成分としては例えば次のものがある。・鉄を主
成分とする遷移元素−希土類系、例えば鉄−ネオジム
(Fe−Nd)、鉄−プラセオジム(Fe−Pr)、鉄
−コバルト−ネオジム(Fe−Co−Nd)、鉄−コバ
ルト−プラセオジウム(Fe−Co−Pr)等、・鉄を
主成分とする遷移元素−希土類系に、ボロン(B)を添
加した系、例えば鉄−ネオジム−ボロン(Fe−Nd−
B)、鉄−プラセオジム−ボロン(Fe−Pr−B)、
鉄−コバルト−ネオジム−ボロン(Fe−Co−Nd−
B)、鉄−コバルト−プラセオジウム−ボロン(Fe−
Co−Pr−B)等、が挙げられる。尚、前記ネオジム
或いはプラセオジムは、必ずしもそれぞれ単独の元素と
して用いられる場合に限られず、ネオジム或いはプラセ
オジムの一部がLa、Ce、Pa、Gd、Tb、Dy、
Ho等の他の希土類元素で置換されている場合も含まれ
る。また、これらの希土類鉄系永久磁石は、O2、C等
の不可避的に混入する不純物、及び添加元素として加え
るGa、Mn、Cr、Ni、Ti、V、Bi、Nb、T
a、Zr、Mo、W、Al、Sn、Sb、Ge、Hf等
の従来公知の1種または2種以上の他の成分を含有する
ものであっても良い。
【0008】以上に説明した希土類鉄系永久磁石は鉄を
ベースとするのみならず活性の大きな希土類を含有する
ことから極めて腐食性が強く、メッキ等の表面処理によ
る防食処理をしない場合には大気中で容易に酸化し、長
期の使用に耐えないということができる。次にこの発明
の方法で表面が被覆され耐食性、耐薬品性を与えられる
対象となる希土類鉄系永久磁石は次の様にして表面処理
の素材に供される。すなわち、素材は成形・焼結・研磨
されたものでもよく、また鋳造・圧延等により磁気硬化
された後切断・研磨されたもの等でもよく、この発明の
対象となる素材は特にその製造方法が特定の手段に限ら
れるものではない。さらに素材はショットブラスト、有
機溶剤またはアルカリによる脱脂等適当な物理的・化学
的洗浄処理法を用いて表面を清浄化されて、この発明の
方法により表面被覆が形成されるが、その表面清浄法も
特に特定の方法に限定されるものではなく公知の清浄法
が適用される。次に、以上のようにして表面を清浄にし
た希土類・鉄系永久磁石素材に下地皮膜を形成する。下
地皮膜はAlイオンコーティング、Niメッキ、導電性
樹脂コーティング等公知の手段により形成することがで
きるが、この発明の方法は下地皮膜上に電解Ni・Pメ
ッキを形成するので、これを容易にするために下地皮膜
はNi、Cu等のNi-Pとの関係で電気化学的に貴な
金属とするのが良い。ただし、磁石としての用途によっ
ては例えばポリパラフェニレン樹脂等の導電性高分子の
コーティングやカーボンを練り込む等の手段により導電
性を持つようにされた樹脂コーティング等により下地皮
膜を形成することも検討され得る。下地皮膜としてメッ
キ層を形成する場合には電解または無電解法いずれを適
用しても良い。Cu、Niメッキ等は金属表面との接着
性が良好なため、メッキ条件を適当に整えることによ
り、強固なメッキ層を形成することができる。膜厚は1
0μm〜30μm、好ましくは15μm〜25μm程度とす
るのが良い。膜厚が30μmを越えると磁気特性に悪影
響がでると共に、製造コスト上の負担が大きくなり、ま
た25μmを越えると小型化して精密機械部品等に使用
する場合に、充分な磁束密度を得るだけの容量を磁石自
体に確保することが困難となる。また、膜厚が10μm
未満では耐食性能に不足が生じ、特に15μm未満では
自動車内燃機関部品等として使用する場合の過酷な使用
条件下での耐食性、耐薬品性の保障が困難となる。
【0009】以上のように下地皮膜として例えばCuメ
ッキ層を形成することにより、磁石表面と下地皮膜上に
形成する耐食性・耐薬品性合金皮膜との結合が一層強固
となる。次に、以上のようにして得られたCuメッキ等
による下地皮膜の上にNi・P合金皮膜を形成する。こ
のNi-P合金皮膜は電解メッキにより形成する。この
ようにこの発明ではNi-P合金皮膜を電解メッキを用
いて形成するので、得られる合金皮膜は、熱処理を加え
なくても、電流の作用によって生成した微細結晶質と非
晶質との混在組織となり極めて耐食性、耐薬品性の高い
ものとなる。さらに具体的には、Ni-P合金皮膜を形
成するために電解Ni−Pメッキを行うことにより、メ
ッキ液のpHを低くしても素材上に粒子を析出させるこ
とができ、メッキ皮膜を形成させることができる。また
pHが低いことから得られたメッキ層はPを充分に含ん
でおり、そのためメッキ層の結晶構造は非晶質と微細結
晶質との混相となり、その結果高い耐食性が与えられ
る。又Ni−P皮膜はNiよりも硬く強固であるという
特性も有する。この点を図1に示す電解Ni-Pメッキ
合金皮膜のX線回折結果(Target Co、加速電圧 4
0kV、電流 120mA)に基づき説明すれば、図に
示すように電解NiーP合金皮膜では結晶方位を示すピ
ーク(111方向)が現れ、微細な結晶組織が存在する
ことがわかる。これに対して「無電解」Ni-Pメッキ
合金皮膜ではX線回折を行っても結晶方位を示すピーク
は現れず、結晶組織を有しないということが明らかであ
る。以上の電解Ni-Pメッキの浴組成としては、浴と
して硫酸ニッケル溶液を用い、還元剤として亜リン酸、
次亜リン酸、次亜リン酸ソーダ、pH調整のための安定
剤としてクエン酸ソーダ、クエン酸、ほう酸等を用いる
ことができる。メッキ浴のpHは1.5以上4.5以下と
するのが良く、好ましくは2以上4以下、さらに好まし
くは2.5以上3.5以下とするのが良い。pHが1.5
未満ではメッキによる粒子の析出反応が過度に鈍く、メ
ッキ処理時間が長くなり実用的でないという問題があ
る。逆にpHが4.5を越える場合には得られるメッキ
皮膜のP含有量が不足し、皮膜に耐薬品性を与えること
ができなくなる。また、pHが2未満では粒子の析出が
遅く工業的実施が困難となる。逆にpHが4を越える場
合には得られるメッキ皮膜のP含有量が充分でなく、皮
膜に充分な耐薬品性を与えることができなくなる。さら
に、pHが2.5未満では、電解メッキにあたって比較
的長時間通電が必要となり、製品の製造原価の観点から
不利となる。逆にpHが3.5を越える場合には酸化性
雰囲気等の過酷な使用条件下での長期にわたる使用が困
難となる。さらに以上のようにして析出するメッキ層は
Niマトリックス中に6〜20%のPを含む様にするの
が良く、好ましくは7.5%〜15%、さらに好ましく
は8.5〜12%とするのが好ましい。P濃度が6%に
至らない場合はメッキ層の結晶構造は非晶質化せず、若
しくは結晶粒が微細化せず、良好な耐食性が得られなく
なる。逆にP濃度が20%を越えると靱性等の皮膜の機
械的性質が不足するようになり実用的ではなくなる。ま
たP濃度が7.5%未満ではメッキ層の結晶構造の非晶
質化が不十分であり、若しくは結晶粒の微細化が不十分
となり、耐食性、特に充分な耐薬品性が得られなくな
る。一方P濃度が15%を越える場合には例えば他の部
材と接触する等の部品に永久磁石を用いる必要がある場
合の機械的性質に不足が生じる。さらにP濃度が8.5
%未満では例えば酸化性雰囲気等の過酷な使用条件下で
の長期にわたる使用が可能な程度の耐薬品性を与えるこ
とが困難となる。逆にP濃度が12%を越える場合に
は、靱性等の機械的性質が不十分となる。
【0010】以上の結果得られるNi-P皮膜の膜厚は
5μm以上15μmμ以下とするのがよく、特に8μm〜
12μmとするのが好ましい。膜厚が5μm未満では耐食
性、耐薬品性につき長期的な信頼性がなくなる。逆に1
5μmを越える場合には全体としての皮膜の厚さが過剰
となると共に、電解メッキ処理時間が長くなり工業的な
実施が困難となる。さらに、膜厚が8μm未満では自動
車内燃機関等の過酷な使用条件下での耐食性等について
長期間保障できなくなり、逆に12μmを越える場合に
は工業的な生産性が悪化しコストパフオーマンスの観点
から過剰品質となる。 さらに以上の電解Ni−Pメッ
キ皮膜の上にNi−W−P合金皮膜を形成する様にして
も良い。Ni−W−P合金皮膜はWを含むため、優れた
潤滑性と耐摩性を得ることができる。このため磁石使用
中に着脱を繰り返しても、あるいは場合によっては、他
の部材と定期的に摩擦接触を繰り返す部品として使用す
る場合であってもメッキ皮膜が破損することはなく、長
期間耐食性が維持されるという利点がある。Ni−W−
P合金皮膜の形成方法としては、無電解メッキまたは電
解メッキ、さらにはCVD法、スパッタリング、真空蒸
着等を用いることができその形成方法は特に制限される
ものではない。さらに、以上のNi−W−P合金皮膜の
上に酸化クロム(Cr23)皮膜等の化成皮膜を形成す
るようにしても良い。酸化クロム皮膜は化学的にも安定
であり、変色防止や耐食性の一層の向上に効果がある。
Niを含むメッキ皮膜は使用するにつれて変色し、黒味
を帯びてくるが、Ni合金皮膜の上に酸化クロム皮膜を
つけると、長期間使用しても変色することはない。耐食
性にも優れているため、塩水噴霧試験のような過酷な条
件下でも腐食の発生時間が数倍に飛躍的に伸びる結果を
もたらす。このことは自動車のエンジンルームに実装さ
れるような塩分を含む雰囲気にさらされ、高温加熱が繰
り返されるような環境にも充分耐えるものである。クロ
ム酸皮膜の形成にはクロメート処理方法を利用すれば良
い。Ni−W−Pの上にCr23を形成したものは一層
強固な防食皮膜となり、長期間使用しても変色すること
もなく、永久磁石の性能が劣化することもない。
【0011】
【実施例】次にこの発明の一実施例を説明する。皮膜を
形成する対象となる希土類永久磁石素材としては、偏平
リング形状で各部の寸法が、外径23mm、内径11mm、
厚み1.5mmのFe-Nd-B焼結磁石(Fe66.7
%、Nd32.0%、B0.9%)を用いた。先ず下地皮膜
として表1に示す条件で電解メッキにより素材上にNi
皮膜を形成した。
【0012】
【表1】
【0013】以上の表1に示す条件で得られたNiメッ
キ皮膜の膜厚は20μmであった。次に、前記Niメッ
キ皮膜の上に表2に示す条件で電解メッキによりNi-
P皮膜を形成した。
【0014】
【表2】
【0015】表2に示す条件で得られたNi-P皮膜の
膜厚は10μmであった。なお、バレルメッキを行うこ
とから制御電圧を5Vに設定した。この場合、電圧制御
を行うため電流密度は制御していない。以上のようにし
て、Ni下地皮膜の上にNi-P電気メッキ皮膜を形成
して得られた希土類鉄系永久磁石について、機械的性質
及び耐食性、密着性のテストを行った。また、比較例と
してNiメッキによる下地皮膜の上にNi-P「無電
解」メッキにより皮膜を形成したものにつき同様のテス
トを行った。Ni−P「無電解」メッキによる皮膜形成
条件を表3に示す。
【0016】
【表3】
【0017】皮膜の機械的性質の評価は皮膜に関するヌ
ープ硬度を測定し、かつ接着強度を測定することにより
行った。ヌープ硬度に関しては電解メッキ、「無電解」
メッキ各試験片につき5回測定し、その平均値を評価数
値とした。結果を表4に示す。接着強度は電解メッキ、
「無電解」メッキ各々につき2個の試験片を用いて保持
板に変性エポキシ樹脂の接着剤で接着した後、試験片に
アムスラー試験機により剪断力を加えて単位面積当たり
の接着強度を測定した。結果を表5に示す。
【0018】
【表4】
【0019】
【表5】
【0020】表4に示されるように、ヌープ強度は「無
電解」メッキによるものがであるのに対して電解メッキ
によるものは395(HK)であり、無電解メッキの3
88(HK)に比べて遜色ない。また表5に示されるよ
うに、接着強度は「無電解」メッキによるものが501
(Kgf/cm2)であるのに対して、電解メッキによ
るものは510(Kgf/cm2)であり、これも遜色
ないことがわかる。以上のヌープ硬度、接着強度試験結
果からわかるように機械的特性については電解メッキに
よるNi-P合金皮膜は「無電解」メッキによるNi-P
合金皮膜に対し遜色ないことがわかる。次に、皮膜の耐
食性・耐薬品性についての評価は、皮膜溶解試験と塩水
噴霧試験により行った。皮膜溶解試験は、電解Ni-P
メッキ皮膜試験片と「無電解」Ni-Pメッキ試験片と
を剥離剤としての濃硫酸溶液中に浸漬し、皮膜の溶解状
況を調べることにより行った。試験結果を表6に示す。
また、塩水噴霧試験は35゜Cの5wt%NaCl溶液
を用いて噴霧量を1〜2ml/80cm2/hrとし
て、塩水噴霧時間を50時間、100時間、150時間
に設定し、各噴霧時間につき電解・「無電解」それぞれ
5個の試験片を使用して行った。試験結果の評価は、全
く錆の発生が認められなかったものと、点錆、フクレ等
の欠陥が発生したものそれぞれの個数を数えることによ
り行った。試験結果を表7に示す。
【0021】
【表6】
【0022】
【表7】
【0023】表6に明らかなように、皮膜溶解試験では
電解Ni−Pメッキ皮膜試験片が2時間浸漬しても皮膜
に変化が見られなかったのに対し、「無電解」Ni-P
皮膜試験片では皮膜全面が溶解した。また、表7から明
らかなように塩水噴霧試験では電解Ni-Pメッキ皮膜
試験片が50時間噴霧で不良(×)が1個、100時間
噴霧で不良が4個、150時間噴霧で不良が5個であっ
たのに対し、「無電解」Ni-Pメッキ皮膜試験片では
50時間噴霧で不良(×)が4個、100時間噴霧で不
良が5個、150時間噴霧で不良が5個であった。以上
の皮膜溶解試験及び塩水噴霧試験の結果からもわかるよ
うに「無電解」Ni-Pメッキ皮膜よりも電解Ni-Pメ
ッキ皮膜の方が耐食性及び耐薬品性が優れていることが
明らかである。
【0024】
【発明の効果】以上のようにこの発明の希土類鉄系永久
磁石の皮膜形成法によれば、希土類鉄系永久磁石表面に
下地皮膜を形成し、次いでその下地皮膜の上にニッケル
(Ni)・リン(P)合金皮膜を形成する希土類鉄系永
久磁石の皮膜形成法において、前記Ni・P合金皮膜を
電解メッキにより形成するしたので、皮膜中に充分にP
を含有させることができ、その結果皮膜の結晶粒が微細
化して、耐食性及び硫酸または亜硫酸ガス等の中におけ
る耐薬品性の優れた希土類鉄系永久磁石得ることができ
るという優れた効果が奏される。特にこの発明によれば
希土類鉄系永久磁石の表面を耐食性及び耐薬品性に優れ
た耐食性皮膜、耐薬品性皮膜で被覆することができ、例
えば自動車部品や精密機械部品等として使用しても長時
間に亘って実用上何等不都合を生じない希土類永久磁石
を得ることができるという効果が奏される。加えてこの
発明によれば、下地皮膜上に得られるNi-P合金皮膜
に対して熱処理を施す必要はなくかかる点で従来の「無
電解」Ni-P合金皮膜を形成する場合に比べ、時間・
労力共に節約することができ工業上有利であるという利
点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】電解Ni-P合金メッキ皮膜のX線回折結果を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01F 41/02 G 8019−5E

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 希土類鉄系永久磁石表面に下地皮膜を
    形成し、次いでその下地皮膜の上にニッケル(Ni)・
    リン(P)合金皮膜を形成する希土類鉄系永久磁石の皮
    膜形成法において、前記Ni・P合金皮膜を電解メッキ
    により形成することを特徴とする希土類鉄系永久磁石の
    皮膜形成法。
  2. 【請求項2】 下地皮膜を介してNi・P合金皮膜を有
    する希土類鉄系永久磁石において、前記Ni・P合金皮
    膜は非晶質と微細結晶質との混成組織を有することを特
    徴とする希土類鉄系永久磁石。
  3. 【請求項3】 前記電解メッキを行うにあたって、メ
    ッキ液を2≦pH≦4となるように調整する請求項1に
    記載した希土類鉄系永久磁石の皮膜形成法。
JP3133410A 1991-05-09 1991-05-09 希土類鉄系永久磁石の皮膜形成法及び希土類鉄系永久磁石 Pending JPH0594914A (ja)

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