JPH0587042B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

産業上の利用分野 この発明はトリクロルイソシアヌル酸を有効成
分とする殺菌消毒錠剤に関するものであり、特に
浄化槽、便槽、浴場等における薬筒ないし薬剤容
器を用いて薬剤を投与する装置に好適な殺菌消毒
剤を提供するものである。 従来の技術 複数個の殺菌消毒錠剤を薬筒あるいは薬剤容器
に充填し、錠剤を局部的に汚水と接触させる方法
は古くから知られている。（特公昭42−23504号、
同43−28587号及び同45−29788号公報） 従来このような殺菌消毒装置においては、トリ
クロルイソシアヌル酸に賦形剤として硼酸を加
え、これを打錠したものが使用されて来た。 トリクロルイソシアヌル酸に相当量の硼酸を配
合した錠剤は、水中において薬効を長時間持続さ
せることができるが、反面溶解速度が遅いので処
理水中に所期の有効塩素濃度を生起し難い欠陥が
あり、また処理液中に残存する硼酸による水質汚
染が概念される。 このような事情に鑑み本発明者等は、既に適宜
な溶解性を有し且つ賦形剤として硼酸を用いない
クロルイソシアヌル酸含有殺菌消毒錠剤について
検討し、トリクロルイソシアヌル酸にジクロロイ
ソシアヌル酸アルカリ金属塩及び硫酸ナトリウム
を所定量混ぜ合わせて加圧成形したものを提案し
た。（特公昭60−21967号公報） しかしながら、前記の殺菌消毒錠剤によれば吸
水性に富むため、複数個の錠剤を薬筒に充填して
使用する際に、汚水と接触した錠剤から水が逐次
相接触する錠剤に浸み込み、薬筒内の錠剤が膨潤
あるいは崩壊し、時として薬筒内で棚吊り現象を
起こし、汚水に対する持続的な殺菌消毒剤の供給
が阻害されるものであつた。 発明が解決しようとする問題点 この発明はトリクロルイソシアヌル酸を有効成
分とする殺菌消毒剤を形成するに当り、賦形剤と
して硼酸を用いずあるいは低減させた状態で容易
に加圧成形することができ、且つ薬剤容器に複数
個の錠剤を充填し、これを汚水と局部的に接触し
て使用する際に、錠剤が薬筒等の内部で膨潤ある
いは崩壊して棚吊り現象を来すことを未然に防
ぎ、且つ汚水と接触した錠剤が適度に溶解するよ
うに改善したものである。 問題点を解決するための手段 本発明者等はこのような問題点を解決すべく数
多くの試験研究を繰り返した結果、トリクロルイ
ソシアヌル酸と疎水性を有するアジピン酸、安息
香酸またはそれらの混合物及び親水性を有する硫
酸カリウム、コハク酸またはそれらの混合物を主
成分とし、且つトリクロルイソシアヌル酸と疎水
性を有する化合物及び親水性を有する化合物の配
合比（重量）を90〜60：５〜20：５〜20の範囲と
し、これらを均一に混合して加圧成形することに
より、所期の目的を達成したものである。 トリクロルイソシアヌル酸含有殺菌消毒用錠剤
は、加圧形成性が良く且つ適度な溶解性を有し優
れた貯蔵及び湿潤安定性を有することが必要条件
である。 トリクロルイソシアヌル酸の打錠に当つて、一
般的な滑沢剤であるステアリン酸金属塩を加える
と、滑沢剤が水に不溶性であるため、得られた錠
剤の溶解性が著しく低下し好ましくない。 そこで本発明者等が、打錠時における滑沢作用
と錠剤の湿潤安定性は、配合成分のHLBに関連
していることに着目し、疎水性でなお且つ水溶性
を有する化合物を探究した結果、アジピン酸及び
安息香酸が最も適した化合物であることを見い出
した。 アジピン酸及び安息香酸を配合した錠剤は、疎
水的となり親水性が制限されるので、錠剤の非浸
水部の溶解を防ぎ、軟化、崩壊を防止することが
できる。 アジピン酸及び安息香酸以外の有機酸類、例え
ばステアリン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸は疎
水性に富むが、錠剤の溶解性を著しく低下する。 また洒石酸、クエン酸の疎水性を持たない有機
酸は、打錠時の滑沢性がなく、成形された錠剤は
浸水により軟化、崩壊を引き起こす。 さらにフマル酸等の不飽和有機酸は、トリクロ
ルイソシアヌル酸と分解反応を引き起こし、刺激
性の強いガスを発生する。 ところでアジピン酸及び安息香酸は本来水溶性
ではあるが、溶解度が小さいため、これらを配合
して得られる錠剤は、所期の溶解速度より、若干
低いものとなる。 それ故本発明者等は、トリクロルイソシアヌル
酸とアジピン酸または安息香酸の配合物の優れた
加圧成形性及び湿潤安定性を損なわずに溶解性を
改善することができる化合物を調べた結果、適度
な親水性を有する硫酸カリウム及びコハク酸が望
ましいことを見い出し、本発明を完成させた。 すなわち、トリクロルイソシアヌル酸に疎水性
を有するアジピン酸または安息香酸と親水性を有
する硫酸カリウムまたはコハク酸を配合して加圧
成形した錠剤は、打錠の加圧成形性、湿潤状態に
おける貯蔵安定性及び水と接触した際の溶解性の
いずれにも優れている。 特にアジピン酸、安息香酸、硫酸カリウム及び
コハク酸は、トリクロルイソシアヌル酸に対して
乾燥状態及び湿潤状態のいずれにおいても不活性
なものであつて、極めて配合性に富むものであ
り、トリクロルイソシアヌル酸とこれら化合物を
混合して面圧約250〜1000Kg／cm²の負荷を加えて
打錠する際に臼や杵に付着したり、キヤツピング
現象等のトラブルは全く認められない。 硫酸カリウム以外の水溶性無機塩類、例えば硫
酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等の結晶水を含
有し得る化合物、塩化ナトリウム、塩化カリウム
等の塩化物、硫酸アンモニウム等のアンモニウム
塩、その他リン酸塩及び炭酸塩等を用いた場合湿
潤時において錠剤が膨張、崩壊したり、トリクロ
ルイソシアヌル酸の分解を促進するもので、いず
れも使用に適さないものであつた。 本発明においては、トリクロルイソシアヌル酸
と疎水性を有する化合物及び親水性を有する化合
物の配合比（重量）を90〜60：５〜20：５〜20の
範囲とすべきであり、トリクロルイソシアヌル酸
に対して疎水性のアジピン酸または安息香酸の添
加が所定量より少ない場合は加圧成形性及び湿潤
時の貯蔵安定性が悪化し、また逆に所定量を超え
ると錠剤の水中における溶解性が低下して好まし
い結果を与えない。 またトリクロルイソシアヌル酸に対する親水性
の硫酸カリウムまたはコハク酸の添加量が所定量
を下廻る場合には、錠剤の溶解速度が不充分であ
り、汚水に必要量の活性塩素を放出し難くなり、
また逆にその添加量が所定量を上廻る場合は、錠
剤の溶解が速くなり過ぎ、また錠剤が水と接触し
た際に崩壊するなどのトラブルを発生する。本発
明の実施においては、親水性を有する化合物の粒
度を20メツシユ篩を通過するものが99％以上であ
り、且つ60メツシユ篩を通過するものが15％以下
の範囲となるように調整して、打錠性を高めるべ
きである。 また本発明殺菌消毒錠剤は、その加圧成形に際
して硼酸その他の化合物を何等添加することなく
打錠しうるものであるが、必要に応じて硼酸その
他の化合物を少量配合しても差し支えない。 以下、本発明を実施例及び比較例によつて具体
的に説明する。 なお、これらの試験において、打錠性試験は打
錠時における臼、杵に対する配合物の付着及びキ
ヤツピング等の状況を観察し、これらの発生が全
く認められない場合は、良好、杵に配合物が若干
付着するが連続的な操作に支障がない場合は可
能、臼または杵に配合物が著しく付着する場合は
不能と判定したものであり、貯蔵安定性試験は厚
さ80μmのポリエチレンチユーブに錠剤20ケを詰
めてヒートシールをし、温度40℃、相対湿度85％
の恒温恒湿槽に静置して錠剤中の活性塩素量の経
時変化をヨード適定法によつて測定したものであ
り、溶解性試験は幅10cm、長さ50cmの塩化ビニル
製トレイを2/100の勾配につけて設け、トレイの
中央に直径40mmの市販の浄化槽用約筒を置き、薬
筒内に錠剤20ケを整列して入れ、これに所定温度
に調節した水を毎分10の割合で１分間流し、こ
のような流水作業を１時間に２回の割合で合計
200回行い、錠剤の重量変化を測定して、各流水
毎の平均溶解量を算出した。 湿潤安定性試験は250mlの蓋付ガラスビンに錠
剤５ケを上下に重ね合わせて置き、水を最下部の
錠剤が半分浸る高さまで加え、ビンに蓋をして室
温で静置し、錠剤の形状変化、分解ガスの発生状
況等を観察して判定したものである。 実施例 顆粒状トリクロルイソシアヌル酸に粉末状のア
ジピン酸、安息香酸、硫酸カリウム及びコハク酸
を夫々所定の割合に混ぜ合わせ、その配合物を直
径30mmの臼に15ｇを入れ、杵に面圧400Kg／cm²の
負荷を加えて打錠成形し、夫々の打錠性及び製造
された錠剤の貯蔵安定性、溶解性及び湿潤安定性
を調べた。 これらの試験条件及び試験結果は、表１に示し
たとおりであつた。

【表】

【表】 実施例 10〜14 前記実施例１，２，４，６及び７において得た
直径30mm、重さ15ｇの錠剤を、直径40mmの浄化槽
用薬筒に20ケ整列して入れ、家庭用浄化槽に置い
て60日間フイールド試験を行い、その間の排水中
に含まれる活性塩素濃度を測定したところ、表２
に示したとおりの結果であつた。

【表】 (2) 活性塩素濃度は比色法により測定
比較例 １〜８ 顆粒状トリクロルイソシアヌル酸にアジピン
酸、安息香酸、コハク酸以外の有機酸類及び硫酸
カリウム以外の無機塩類を表３に示した比率で混
合し、これを前記実施例１と同様に加圧成形し
て、打錠性及び錠剤の物性を調べたところ、同表
に示した通りの結果であつた。

【表】 比較例 ９〜10 前記比較例１及び２において得た直径30mm、重
さ15ｇの錠剤を直径40mmの浄化槽用約筒に20ケ整
列して入れ、家庭用浄化槽においてフイールド試
験を行い、排水中に含まれる活性塩素濃度を測定
したところ、表４に示した通りの結果であつた。

【表】 発明の効果 本発明のトリクロルイソシアヌル酸含有殺菌消
毒錠剤は、賦形剤として排水を汚染する惧れがあ
る硼酸の使用量を皆無あるいは著しく低減した状
態で円滑に加圧成形することができ、得られた錠
剤は水と接触させると表面から溶解して膨潤ある
いは崩壊がほとんどないので、薬筒等に充填して
使用する際に錠剤の棚吊り現象は全く起こらず、
且つその溶解性は低温の水に対しても良好である
ため、冬期の浄化槽において、排水量に比例した
錠剤の溶解性を来すなど浄化槽等の維持管理に顕
著な効果を発揮しうるものである。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ トリクロルイソシアヌル酸と疎水性を有する
   アジピン酸、安息香酸またはそれらの混合物及び
   親水性を有する硫酸カリウム、コハク酸またはそ
   れらの混合物を主成分とし、且つトリクロルイソ
   シアヌル酸と疎水性を有する化合物及び親水性を
   有する化合物の配合比（重量）を90〜60：５〜
   20：５〜20の範囲とし、これらを均一に混合して
   加圧成形したことを特徴とするクロルイソシアヌ
   ル酸含有殺菌消毒錠剤。