JPH0584569A - 中・高炭素鋼の下盛溶接方法 - Google Patents
中・高炭素鋼の下盛溶接方法Info
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- JPH0584569A JPH0584569A JP27665091A JP27665091A JPH0584569A JP H0584569 A JPH0584569 A JP H0584569A JP 27665091 A JP27665091 A JP 27665091A JP 27665091 A JP27665091 A JP 27665091A JP H0584569 A JPH0584569 A JP H0584569A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 高温割れを防止し、健全な溶接金属を形成で
きる中・高炭素鋼の下盛溶接方法を提供する。 【構成】 中・高炭素鋼の肉盛溶接方法において、ワイ
ヤとして、ワイヤ全重量に対する重量%で、C≦0.0
7%、Si:0.2〜1.5%、Mn:0.2〜2.5%及びN
b:0.8〜5%を含有するFe基フラックス入りワイヤを
用いて、サブマージアーク溶接法にて下盛溶接すること
を特徴としている。ワイヤ全重量に対してP≦0.02
5%を含有するフラックス入りワイヤを用いること、或
いは組合せフラックスとして、フラックス全重量に対
し、P≦0.025%を含有するフラックスを用いるこ
とが好ましい。特にクレーン走行車輪や鉄道用車輪など
の中・高炭素鋼を肉盛溶接するのに適している。
きる中・高炭素鋼の下盛溶接方法を提供する。 【構成】 中・高炭素鋼の肉盛溶接方法において、ワイ
ヤとして、ワイヤ全重量に対する重量%で、C≦0.0
7%、Si:0.2〜1.5%、Mn:0.2〜2.5%及びN
b:0.8〜5%を含有するFe基フラックス入りワイヤを
用いて、サブマージアーク溶接法にて下盛溶接すること
を特徴としている。ワイヤ全重量に対してP≦0.02
5%を含有するフラックス入りワイヤを用いること、或
いは組合せフラックスとして、フラックス全重量に対
し、P≦0.025%を含有するフラックスを用いるこ
とが好ましい。特にクレーン走行車輪や鉄道用車輪など
の中・高炭素鋼を肉盛溶接するのに適している。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、肉盛溶接方法に係り、
特にクレーン走行車輪や鉄道用車輪などの中・高炭素鋼
を肉盛溶接するのに適したサブマージアーク溶接による
下盛溶接に関するものである。
特にクレーン走行車輪や鉄道用車輪などの中・高炭素鋼
を肉盛溶接するのに適したサブマージアーク溶接による
下盛溶接に関するものである。
【0002】
【従来の技術】クレーン走行車輪や鉄道用車輪などは、
ある期間使用すると踏面部及びつば部が摩耗により減肉
するため、肉盛溶接によって補修再生し使用されてい
る。これらの車輪としては、主にJIS G 5111
(SCMn2)やJIS E 5401などに規格化されて
いるような0.3〜0.8%程度のCを含む中・高炭素鋼
が使用されている。
ある期間使用すると踏面部及びつば部が摩耗により減肉
するため、肉盛溶接によって補修再生し使用されてい
る。これらの車輪としては、主にJIS G 5111
(SCMn2)やJIS E 5401などに規格化されて
いるような0.3〜0.8%程度のCを含む中・高炭素鋼
が使用されている。
【0003】そして、補修に当たっては、母材車輪踏面
とほぼ同様の硬さとなるようにHv250〜400程度
の硬さが得られる硬化肉盛溶接用ワイヤと組合せフラッ
クスからなるサブマージアーク溶接材料を直接車輪に肉
盛する方法と、まず、軟鋼系又は低合金系サブマージア
ーク溶接用ワイヤを用いて下盛溶接し、その上に目的と
する硬さを有する溶接材料を用いて上盛溶接する方法の
いずれかが用いられている。
とほぼ同様の硬さとなるようにHv250〜400程度
の硬さが得られる硬化肉盛溶接用ワイヤと組合せフラッ
クスからなるサブマージアーク溶接材料を直接車輪に肉
盛する方法と、まず、軟鋼系又は低合金系サブマージア
ーク溶接用ワイヤを用いて下盛溶接し、その上に目的と
する硬さを有する溶接材料を用いて上盛溶接する方法の
いずれかが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
ような中・高炭素鋼をサブマージアーク溶接によって肉
盛溶接した場合、母材のC量が高いことから、希釈によ
って肉盛溶接金属のC量も高いものとなり、肉盛溶接金
属に高温割れが発生し易い問題があつた。特にこの傾向
は、母材希釈の影響が最も大きい初層肉盛溶接金属(下
盛溶接金属)で強く、中・高炭素鋼への肉盛溶接の適用
を著しく狭める要因となっていた。中でも、JIS E
5401相当のCが0.7%程度の高炭素鋼からなる両
つばタイプの車輪では、初層溶接金属の高温割れを完全
に防止できるサブマージアーク溶接用ワイヤが見当ら
ず、肉盛補修に対する信頼性は十分とは言えないもので
あった。なお、従来の方法によって肉盛補修した車輪
で、使用中に肉盛部が剥離し、車輪の使用が不能になる
ことがあるが、この原因としては、初層肉盛溶接金属に
おける高温割れの存在が大きな原因と推察される。
ような中・高炭素鋼をサブマージアーク溶接によって肉
盛溶接した場合、母材のC量が高いことから、希釈によ
って肉盛溶接金属のC量も高いものとなり、肉盛溶接金
属に高温割れが発生し易い問題があつた。特にこの傾向
は、母材希釈の影響が最も大きい初層肉盛溶接金属(下
盛溶接金属)で強く、中・高炭素鋼への肉盛溶接の適用
を著しく狭める要因となっていた。中でも、JIS E
5401相当のCが0.7%程度の高炭素鋼からなる両
つばタイプの車輪では、初層溶接金属の高温割れを完全
に防止できるサブマージアーク溶接用ワイヤが見当ら
ず、肉盛補修に対する信頼性は十分とは言えないもので
あった。なお、従来の方法によって肉盛補修した車輪
で、使用中に肉盛部が剥離し、車輪の使用が不能になる
ことがあるが、この原因としては、初層肉盛溶接金属に
おける高温割れの存在が大きな原因と推察される。
【0005】本発明は、上記従来技術の問題点を解決
し、高温割れを防止し、健全な溶接金属を形成できる中
・高炭素鋼の下盛溶接方法を提供することを目的とする
ものである。
し、高温割れを防止し、健全な溶接金属を形成できる中
・高炭素鋼の下盛溶接方法を提供することを目的とする
ものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するた
め、本発明者等は、まず中・高炭素鋼からなる両つばタ
イプの車輪における高温割れの発生傾向について鋭意検
討を重ねた結果、以下のことが確認できた。
め、本発明者等は、まず中・高炭素鋼からなる両つばタ
イプの車輪における高温割れの発生傾向について鋭意検
討を重ねた結果、以下のことが確認できた。
【0007】両つばタイプの車輪に対し、サブマージア
ーク溶接にて肉盛溶接する場合、初層溶接金属の積層法
としては、図1又は図2に示す方法が用いられている。
図1に示した積層法は、つば/踏面コーナー部から溶接
を開始し、周方向に溶接しながら、順次反対側のつば/
コーナー部に向かって溶接を行うものであり、車輪の肉
盛溶接において最も一般的である。また、図2の積層法
は、まず踏面で溶接を開始し、やはり周方向に溶接しな
がら一方のつば/踏面コーナー部まで溶接し、その後、
残りの部分を溶接する方法である。そして、従来の市販
溶接材料を用いてサブマージアーク溶接を行った場合、
図1のような積層法では斜線で示したつば/踏面コーナ
ー部の溶接金属に特に高温割れが発生し易く、一方、図
2のような積層法では、これらの溶接金属箇所以外に踏
面の第1ビードにも高温割れが発生し易いことが確認で
きた。
ーク溶接にて肉盛溶接する場合、初層溶接金属の積層法
としては、図1又は図2に示す方法が用いられている。
図1に示した積層法は、つば/踏面コーナー部から溶接
を開始し、周方向に溶接しながら、順次反対側のつば/
コーナー部に向かって溶接を行うものであり、車輪の肉
盛溶接において最も一般的である。また、図2の積層法
は、まず踏面で溶接を開始し、やはり周方向に溶接しな
がら一方のつば/踏面コーナー部まで溶接し、その後、
残りの部分を溶接する方法である。そして、従来の市販
溶接材料を用いてサブマージアーク溶接を行った場合、
図1のような積層法では斜線で示したつば/踏面コーナ
ー部の溶接金属に特に高温割れが発生し易く、一方、図
2のような積層法では、これらの溶接金属箇所以外に踏
面の第1ビードにも高温割れが発生し易いことが確認で
きた。
【0008】この原因としては、つば/踏面コーナー部
では、母材希釈率が高いために溶接金属のC量が高くな
ることと併せて、つば部にその一部がかかるために溶接
金属に対する拘束力が高くなり、場合によってはビード
形状が凹状になるためと推察される。また、踏面に形成
した第1ビードは、つば/踏面コーナー部の溶接金属の
ようにつばの拘束はないものの、やはり母材希釈率が高
くなるためである。なお、高温割れは溶接金属断面にお
いて、柱状晶境界に発生する凝固割れが主体となったも
のである。この柱状晶境界にはPの偏析が生じており、
C量が高いことと併せて、高温割れの主要な発生原因と
なっている。
では、母材希釈率が高いために溶接金属のC量が高くな
ることと併せて、つば部にその一部がかかるために溶接
金属に対する拘束力が高くなり、場合によってはビード
形状が凹状になるためと推察される。また、踏面に形成
した第1ビードは、つば/踏面コーナー部の溶接金属の
ようにつばの拘束はないものの、やはり母材希釈率が高
くなるためである。なお、高温割れは溶接金属断面にお
いて、柱状晶境界に発生する凝固割れが主体となったも
のである。この柱状晶境界にはPの偏析が生じており、
C量が高いことと併せて、高温割れの主要な発生原因と
なっている。
【0009】踏面に形成した第1ビードに高温割れが発
生し易いことは、単に第1ビードに限らず、それ以外の
下盛溶接金属でも母材希釈率によっては高温割れが発生
する可能性があり、更には、車輪のみならず、S58C
などの炭素鋼を肉盛する場合の高温割れの危険性をも示
唆している。
生し易いことは、単に第1ビードに限らず、それ以外の
下盛溶接金属でも母材希釈率によっては高温割れが発生
する可能性があり、更には、車輪のみならず、S58C
などの炭素鋼を肉盛する場合の高温割れの危険性をも示
唆している。
【0010】初層溶接金属の高温割れ発生傾向が、初層
溶接金属のCやP量に影響されるのは、前にも述べた通
りである。サブマージアーク溶接によって中・高炭素鋼
を肉盛溶接した場合、溶接条件にもよるが、初層溶接金
属は40〜60%程度の母材希釈を受けるため、0.8
%程度のCを含む母材に対しては、初層溶接金属のC量
は少なくとも0.3%程度となる。したがって、この程
度のCを含み、場合によっては両つば車輪のつば/踏面
コーナー部のようにつば部に一部拘束された溶接金属を
形成しても高温割れが発生しない技術を確立すること
で、中・高炭素鋼をサブマージアーク溶接によって肉盛
溶接する際に生じ易い初層溶接金属の高温割れの問題を
根本的に解決できるとの知見を得た。
溶接金属のCやP量に影響されるのは、前にも述べた通
りである。サブマージアーク溶接によって中・高炭素鋼
を肉盛溶接した場合、溶接条件にもよるが、初層溶接金
属は40〜60%程度の母材希釈を受けるため、0.8
%程度のCを含む母材に対しては、初層溶接金属のC量
は少なくとも0.3%程度となる。したがって、この程
度のCを含み、場合によっては両つば車輪のつば/踏面
コーナー部のようにつば部に一部拘束された溶接金属を
形成しても高温割れが発生しない技術を確立すること
で、中・高炭素鋼をサブマージアーク溶接によって肉盛
溶接する際に生じ易い初層溶接金属の高温割れの問題を
根本的に解決できるとの知見を得た。
【0011】本発明は、以上のような知見に基づいて完
成されたものである。すなわち、本発明は、中・高炭素
鋼の肉盛溶接方法において、ワイヤとして、ワイヤ全重
量に対し、C≦0.07%、Si:0.2〜1.5%、Mn:
0.2〜2.5%及びNb:0.8〜5%を含有するFe基フ
ラックス入りワイヤを用いて、サブマージアーク溶接法
にて下盛溶接することを特徴とするものである。
成されたものである。すなわち、本発明は、中・高炭素
鋼の肉盛溶接方法において、ワイヤとして、ワイヤ全重
量に対し、C≦0.07%、Si:0.2〜1.5%、Mn:
0.2〜2.5%及びNb:0.8〜5%を含有するFe基フ
ラックス入りワイヤを用いて、サブマージアーク溶接法
にて下盛溶接することを特徴とするものである。
【0012】
【作用】以下に、本発明におけるフラックス入りワイヤ
の成分限定理由について説明する。
の成分限定理由について説明する。
【0013】(C≦0.07%)中・高炭素鋼を溶接す
る場合、ワイヤ中のC量が高いと初層溶接金属のC量が
高くなり、高温割れ発生傾向が著しく増大する。したが
って、C量は0.07%以下とする。
る場合、ワイヤ中のC量が高いと初層溶接金属のC量が
高くなり、高温割れ発生傾向が著しく増大する。したが
って、C量は0.07%以下とする。
【0014】(Si:0.2〜1.5%)Siは脱酸作用が
あるが、その効果を得るには0.2%以上が必要であ
る。一方、1.5%を超えるとその効果は飽和すると共
に高温割れに対してかえって悪影響を及ぼすため、Si
量は0.2〜1.5%とする。
あるが、その効果を得るには0.2%以上が必要であ
る。一方、1.5%を超えるとその効果は飽和すると共
に高温割れに対してかえって悪影響を及ぼすため、Si
量は0.2〜1.5%とする。
【0015】(Mn:0.2〜2.5%)MnはSiと同様
に脱酸作用があるが、0.2%未満ではその効果が小さ
く、また2.5%を超えてもそれ以上の効果は得られに
くくなり、かえってスラグ剥離性を阻害するなど、肉盛
作業に支障を来たすことになる。よって、Mn量は0.2
〜2.5%とする。
に脱酸作用があるが、0.2%未満ではその効果が小さ
く、また2.5%を超えてもそれ以上の効果は得られに
くくなり、かえってスラグ剥離性を阻害するなど、肉盛
作業に支障を来たすことになる。よって、Mn量は0.2
〜2.5%とする。
【0016】(Nb:0.8〜5%)Nbは本発明の根幹
をなす成分であり、溶接金属の凝固時にニオブカーバイ
ドを形成して高温割れに及ぼすCの悪影響を軽減すると
共に、ニオブカーバイドが凝固時の核となって柱状晶を
微細にし、相対的に柱状晶(Nb量が多くなるとセル状と
なる)境界を増加させ、この部分に偏析するPの悪影響
も著しく緩和する効果がある。このような効果を得るに
は、最低0.8%以上が必要である。しかし、5%を超
えてもその効果は飽和し、スラグ剥離性が劣化するなど
の弊害が生じる。よって、Nb量は0.8〜5%とする。
をなす成分であり、溶接金属の凝固時にニオブカーバイ
ドを形成して高温割れに及ぼすCの悪影響を軽減すると
共に、ニオブカーバイドが凝固時の核となって柱状晶を
微細にし、相対的に柱状晶(Nb量が多くなるとセル状と
なる)境界を増加させ、この部分に偏析するPの悪影響
も著しく緩和する効果がある。このような効果を得るに
は、最低0.8%以上が必要である。しかし、5%を超
えてもその効果は飽和し、スラグ剥離性が劣化するなど
の弊害が生じる。よって、Nb量は0.8〜5%とする。
【0017】本発明に用いるフラックス入りワイヤはF
e基フラックス入りワイヤであり、以上の合金成分は、
金属外皮又は該金属外皮に充填されるフラックスのいず
れに添加してもよい。このフラックス入りワイヤを用い
ることにより、中・高炭素鋼をサブマージアーク溶接に
て下盛溶接した場合に発生し易い高温割れを完全に防止
できる。
e基フラックス入りワイヤであり、以上の合金成分は、
金属外皮又は該金属外皮に充填されるフラックスのいず
れに添加してもよい。このフラックス入りワイヤを用い
ることにより、中・高炭素鋼をサブマージアーク溶接に
て下盛溶接した場合に発生し易い高温割れを完全に防止
できる。
【0018】なお、フラックス入りワイヤ、或いは組合
せフラックスの条件については、以下の点を配慮するの
が好ましい。
せフラックスの条件については、以下の点を配慮するの
が好ましい。
【0019】(P量)JIS E 5401のような高炭
素鋼車輪の規格では、他の溶接用鋼材に比べてPの範囲
が非常に広い特徴があり、市販車輪の中には、P量が
0.035%を超えるものも見受けられる。このような
P量の高い母材車輪を肉盛溶接した溶接条件にもよる
が、母材希釈によって高温割れの大きな要因となる溶接
金属中のP量がある程度高くなることは避けられない。
しかしながら、溶接金属のP量の増加は高温割れ感受性
を著しく高めるため、P量を低くすることが必要とな
る。溶接金属のP量には、母材希釈の他に、サブマージ
アーク溶接に用いるフラックス入りワイヤのP量及び組
合せフラックスのP量が影響を及ぼす。そして、母材希
釈による溶接金属のP量の増加が避けられない場合に
は、これらの溶接材料のうち、低いP量のものを使用す
ることが高温割れの防止に有効となる。
素鋼車輪の規格では、他の溶接用鋼材に比べてPの範囲
が非常に広い特徴があり、市販車輪の中には、P量が
0.035%を超えるものも見受けられる。このような
P量の高い母材車輪を肉盛溶接した溶接条件にもよる
が、母材希釈によって高温割れの大きな要因となる溶接
金属中のP量がある程度高くなることは避けられない。
しかしながら、溶接金属のP量の増加は高温割れ感受性
を著しく高めるため、P量を低くすることが必要とな
る。溶接金属のP量には、母材希釈の他に、サブマージ
アーク溶接に用いるフラックス入りワイヤのP量及び組
合せフラックスのP量が影響を及ぼす。そして、母材希
釈による溶接金属のP量の増加が避けられない場合に
は、これらの溶接材料のうち、低いP量のものを使用す
ることが高温割れの防止に有効となる。
【0020】後述の実施例1に示すように、最も高温割
れが発生し易い高炭素鋼車輪のつば/踏面コーナー部を
想定した割れ試験において、母材のP量が0.038%
と高い場合でフラックス入りワイヤ並びに組合せフラッ
クスのP量が0.025%以上の場合には、クレータに
微小な割れが発生していた。したがって、高P量の母材
に対するものとして、フラックス入りワイヤ並びに組合
せフラックスのそれぞれのP量を0.025%以下に規
制するのが好ましい。
れが発生し易い高炭素鋼車輪のつば/踏面コーナー部を
想定した割れ試験において、母材のP量が0.038%
と高い場合でフラックス入りワイヤ並びに組合せフラッ
クスのP量が0.025%以上の場合には、クレータに
微小な割れが発生していた。したがって、高P量の母材
に対するものとして、フラックス入りワイヤ並びに組合
せフラックスのそれぞれのP量を0.025%以下に規
制するのが好ましい。
【0021】なお、フラックス入りワイヤには、必要に
応じてCr、Mo、W、V等の合金成分を添加することは
差し支えないが、割れに及ぼす影響や溶接金属の硬度上
昇などを考慮すると、それぞれ1%以下に抑えることが
好ましい。また、アーク安定性やスラグ剥離性などの作
業性を向上させるために、各種の弗化物(例、NaF、C
aF、CaF2、SiF6等)や酸化物(Na2O、K2O、Ca
O、SiO2等)などを適宜添加しても差し支えない。ま
た、組合せフラックスとしては、溶融型、ボンドタイ
プ、焼結タイプのいずれかを適宜使用できる。
応じてCr、Mo、W、V等の合金成分を添加することは
差し支えないが、割れに及ぼす影響や溶接金属の硬度上
昇などを考慮すると、それぞれ1%以下に抑えることが
好ましい。また、アーク安定性やスラグ剥離性などの作
業性を向上させるために、各種の弗化物(例、NaF、C
aF、CaF2、SiF6等)や酸化物(Na2O、K2O、Ca
O、SiO2等)などを適宜添加しても差し支えない。ま
た、組合せフラックスとしては、溶融型、ボンドタイ
プ、焼結タイプのいずれかを適宜使用できる。
【0022】本発明においてフラックス入りワイヤを用
いるのは、ソリッドワイヤに比べ、溶け込みが浅く、母
材希釈率を低く抑えることができ、溶接金属のC量を低
減することで、耐高温割れ性を向上させることができる
ためである。
いるのは、ソリッドワイヤに比べ、溶け込みが浅く、母
材希釈率を低く抑えることができ、溶接金属のC量を低
減することで、耐高温割れ性を向上させることができる
ためである。
【0023】次に本発明の実施例を示す。
【0024】
【実施例1】本例は高炭素鋼材の肉盛溶接の例である。
【表1】 に示す化学成分(wt%)を有し、車輪のつば/踏面コーナ
ー部を想定した図3のような形状寸法の2種類の高炭素
鋼材(長さ400mm)を、図4のように拘束板(32mmt
×150mmw×500mml)上に拘束して、サブマージ
アーク溶接にて、1層1パス溶接を行った。
ー部を想定した図3のような形状寸法の2種類の高炭素
鋼材(長さ400mm)を、図4のように拘束板(32mmt
×150mmw×500mml)上に拘束して、サブマージ
アーク溶接にて、1層1パス溶接を行った。
【表2】 に溶接条件、
【表3】 に組合せフラックスの化学成分(wt%)、
【表4】 にFe基フラックス入りワイヤの化学成分(wt%)、予熱
・パス間温度を示す。本実施例で使用したフラックス入
りワイヤは、軟鋼系外皮中に所定成分に調整したFe−
Si、Fe−Nbなどの合金や酸化物等の粉末を充填した
ものである。図5にワイヤ狙い位置を示す。
・パス間温度を示す。本実施例で使用したフラックス入
りワイヤは、軟鋼系外皮中に所定成分に調整したFe−
Si、Fe−Nbなどの合金や酸化物等の粉末を充填した
ものである。図5にワイヤ狙い位置を示す。
【0025】溶接後、母材表面から1mmのみ余盛を残し
て溶接金属表面を機械加工し、液体浸透探傷試験にて割
れの有無を調査した。その結果を表4に示す。
て溶接金属表面を機械加工し、液体浸透探傷試験にて割
れの有無を調査した。その結果を表4に示す。
【0026】表4より明らかなように、本発明例では、
母材のP量が高く、フラックス入りワイヤ及び組合せフ
ラックス中のP量も高い場合(本発明例No.6)に、クレ
ータに微小な高温割れが発生していた他は、いずれも、
高温割れは発生しなかった。一方、Nbを含まない場合
(比較例No.8)場合や、Nb量が少ない場合(比較例No.
10)、更にはNbを適量含んでもC量が高い場合(比較
例No.9)など、全ての比較例で高温割れが発生した。
母材のP量が高く、フラックス入りワイヤ及び組合せフ
ラックス中のP量も高い場合(本発明例No.6)に、クレ
ータに微小な高温割れが発生していた他は、いずれも、
高温割れは発生しなかった。一方、Nbを含まない場合
(比較例No.8)場合や、Nb量が少ない場合(比較例No.
10)、更にはNbを適量含んでもC量が高い場合(比較
例No.9)など、全ての比較例で高温割れが発生した。
【0027】
【実施例2】本例は車輪の肉盛溶接の例である。製鉄所
で使用される両つばタイプの高炭素鋼車輪の肉盛補修を
実施した。
で使用される両つばタイプの高炭素鋼車輪の肉盛補修を
実施した。
【表5】 に示す化学成分(wt%)の母材からなる図6の形状寸法の
車輪について、
車輪について、
【表6】 に示す化学成分(wt%)のフラックス入りワイヤを用いた
サブマージアーク溶接にて下盛溶接を行い、更に上盛溶
接を行って補修肉盛した。
サブマージアーク溶接にて下盛溶接を行い、更に上盛溶
接を行って補修肉盛した。
【表7】 に溶接条件を示す。
【0028】溶接後、外周面を段階的に切削しながら液
体浸透探傷試験により割れの有無を調査した。その結果
は
体浸透探傷試験により割れの有無を調査した。その結果
は
【表8】 に示すとおり、本発明例では上盛及び下盛部のいずれに
も割れは認められなかった。一方、比較例では下盛部に
連続的な高温割れが発生していた。
も割れは認められなかった。一方、比較例では下盛部に
連続的な高温割れが発生していた。
【0029】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
中・高炭素鋼、中でも両つばタイプの車輪の肉盛溶接に
おいて、従来の技術では防止できなかった下盛溶接金属
の高温割れを完全に防止することができる。その結果、
経済的で、しかも緊急の要求に応えられる中・高炭素鋼
の補修肉盛溶接への信頼性が飛躍的に向上し、更に補修
肉盛溶接の適用範囲を著しく拡大することができる。
中・高炭素鋼、中でも両つばタイプの車輪の肉盛溶接に
おいて、従来の技術では防止できなかった下盛溶接金属
の高温割れを完全に防止することができる。その結果、
経済的で、しかも緊急の要求に応えられる中・高炭素鋼
の補修肉盛溶接への信頼性が飛躍的に向上し、更に補修
肉盛溶接の適用範囲を著しく拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】両つばタイプの車輪における初層溶接金属の積
層法を説明する図である。
層法を説明する図である。
【図2】両つばタイプの車輪における初層溶接金属の積
層法を説明する図である。
層法を説明する図である。
【図3】高炭素鋼母材の形状寸法(mm)を示す図である。
【図4】高炭素鋼母材の拘束状況を示す図である。
【図5】ワイヤ狙い位置を示す図である。
【図6】母材車輪の形状寸法(mm)を示す図である。
a 試験板 b 拘束ビード c 拘束板
Claims (3)
- 【請求項1】 中・高炭素鋼の肉盛溶接方法において、
ワイヤとして、ワイヤ全重量に対し、重量%で(以下、
同じ)、C≦0.07%、Si:0.2〜1.5%、Mn:0.
2〜2.5%及びNb:0.8〜5%を含有するFe基フラ
ックス入りワイヤを用いて、サブマージアーク溶接法に
て下盛溶接することを特徴とする中・高炭素鋼の肉盛溶
接方法。 - 【請求項2】 ワイヤ全重量に対し、P≦0.025%
を含有するフラックス入りワイヤを用いる請求項1に記
載の方法。 - 【請求項3】 組合せフラックスとして、フラックス全
重量に対し、P≦0.025%を含有するフラックスを
用いる請求項1又は2に記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27665091A JPH0584569A (ja) | 1991-09-27 | 1991-09-27 | 中・高炭素鋼の下盛溶接方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27665091A JPH0584569A (ja) | 1991-09-27 | 1991-09-27 | 中・高炭素鋼の下盛溶接方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0584569A true JPH0584569A (ja) | 1993-04-06 |
Family
ID=17572413
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP27665091A Pending JPH0584569A (ja) | 1991-09-27 | 1991-09-27 | 中・高炭素鋼の下盛溶接方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0584569A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2004025235A (ja) * | 2002-06-25 | 2004-01-29 | Daio Paper Corp | 塔槽体の底部内面の肉盛溶接作業装置及び該装置を用いた肉盛溶接作業方法 |
KR101501284B1 (ko) * | 2013-09-24 | 2015-03-09 | 이영진 | 철도 차륜 재생용 용접부재 및 이를 이용한 철도 차륜의 재생방법 |
WO2021107295A1 (ko) * | 2019-11-26 | 2021-06-03 | 주식회사 아세아테크 | 철도 차륜 재생용 용접부재 및 이를 이용한 철도 차륜의 재생방법 |
-
1991
- 1991-09-27 JP JP27665091A patent/JPH0584569A/ja active Pending
Cited By (6)
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