JPH0583626B2 - - Google Patents

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JPH0583626B2
JPH0583626B2 JP62191758A JP19175887A JPH0583626B2 JP H0583626 B2 JPH0583626 B2 JP H0583626B2 JP 62191758 A JP62191758 A JP 62191758A JP 19175887 A JP19175887 A JP 19175887A JP H0583626 B2 JPH0583626 B2 JP H0583626B2
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less
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welding
steel
toughness
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Masahiro Obara
Hiroyuki Pponma
Hiroshi Iwami
Hisashi Inoe
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Nippon Steel Corp
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Nippon Steel Corp
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Description

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野] 本発明は原子力プラントや化学プラント等の圧
力容器に使用される圧力容器用鋼に関わり、特に
電子ビームによつて溶接された部分の溶接金属が
高靱性を示す鋼に関するものである。 [従来の技術] 電子ビーム溶接法は、従来のアーク溶接法に比
較して狭いビード幅で深い溶け込みが得られる高
能率な溶接法であることから、近年原子力プラン
トや化学プラント等の圧力容器や反応容器等の引
張り強さが40〜60Kg/mm2クラスの鋼材を用いた大
型鋼構造物の溶接に適用が進められようとしてい
る。 しかし、電子ビーム溶接法は原則的には溶接ワ
イヤ、フラツクス等の溶接材料を用いず、被溶接
物である鋼材が電子ビームによつて溶融された部
分がそのまま溶接金属になるという特徴があり、
種々な熱処理を経て作り上げられた鋼材の靱性に
比較して一般的には溶接金属の靱性は遥かに劣
る。 したがつて、電子ビーム溶接を適用するにあた
つて溶接金属の靱性確保が重要な課題となつてい
る。 一般に、良好な靱性の溶接金属を得るには次に
示すように2通りの方法がある。 第一の方法は溶接金属部にマルテンサイト主体
の組織を形成し、応力除去焼鈍等の溶接後熱処理
による焼き戻しによつて良好な靱性を得る方法で
ある。 50mm以下の比較的薄い鋼板の電子ビーム溶接で
は、従来のアーク溶接に比較して入熱を低く出来
ることから、40〜60キロ級鋼の電子ビーム溶接金
属部でもマルテンサイト主体のミクロ組織を得る
ことが可能であり、したがつて溶接後熱処理によ
つて良好な靱性の溶接金属を得ることが可能であ
る。 しかるに本発明が対象としているような50mmを
超える厚鋼板の電子ビーム溶接においては、電子
ビームのとけ込み特性、実施工時の継手精度等の
制約から溶接入熱を大きくせざるをえない。 このような入熱条件においては、40〜60キロ級
鋼の成分からなる電子ビーム溶接金属では焼入性
が不足し、マルテンサイト組織が形成されず上部
ベイナイト主体の組織が形成される。したがつ
て、溶接後熱処理によつても大きな靱性の改善が
みられず溶接金属の靱性は低い。 第二の方法はサブマージアーク溶接、MAG溶
接、被覆電極溶接において一般に用いられる方法
であるが、溶接金属に含まれる酸素含有量を適度
にコントロールすることによつて、微細な針状フ
エライト主体のミクロ組織を形成し、靱性の優れ
た溶接金属を得る方法である。 これは溶接後の冷却過程に於て多数形成される
微細な酸化物系非金属介在物を、オーステナイト
からフエライトへの変態に際しその変態の核とし
て有効に利用し、幅が2〜10μ、長さが幅の数倍
程度の微細な針状フエライトを多く含むミクロン
組織を形成させることによつて達成される。この
ためには、一般的に100〜400ppmの酸素含有量が
必要とされている。 ところが、真空中で溶接される電子ビーム溶接
においては、溶接される鋼材中にこの程度の酸素
量が含まれると、溶接金属に含まれている酸素と
炭素が激しく反応する結果、ガスが発生し溶接部
に割れ、ブローホール等の溶接欠陥発生の原因に
なる。 50mm以下の厚さの鋼材の電子ビーム溶接の場合
には、溶接中に形成されるビーム孔からガスの排
出が比較的容易であることから、比較的広い酸素
含有量範囲に於て溶接欠陥なく溶接が可能である
が、50mmを超える厚鋼板においては溶接欠陥の発
生から鋼材に許容される酸素含有量には厳しい制
約があり、その値は35ppm程度以下である。 この酸素含有量は上述したサブマージアーク溶
接、MAG溶接、被覆電極溶接により溶接金属に
於て、良好な靱性を示す微細な針状フエライトを
多く含むミクロ組織を得るに必要とされている
100〜400ppm程度の酸素含有量に比べてはるかに
少ない。 したがつて、電子ビーム溶接においては先に述
べた酸化物系の非金属介在物数に不足をきたし、
その溶接金属では粗大な上部ベイナイト主体の組
織しか得られず、溶接金属の靱性は良好ではな
い。 以上、述べてきたように特に50mmを超える板厚
の40〜60キロ級鋼の電子ビーム溶接金属の靱性は
必ずしも良好ではなく、電子ビーム溶接の適用に
あたつて重大な問題となつている。 そこで、従来から溶接金属の靱性改善方法が検
討されている。特開昭56−50793号公報には溶接
のままの状態で靱性を向上させるために、電子ビ
ーム溶接時に溶融される鋼材の部分に、あらかじ
め100〜300ppmの酸素量を含むアーク溶接あるい
はスラグ溶接によつて得られる低合金鋼成分相当
の物質を供給する方法を提案している。 これにより、溶接金属のミクロ組織が微細な針
状フエライト主体の組織になるので靱性が向上す
るとしているが、先に述べたように溶接金属中に
過剰な酸素があると溶接欠陥が生じ易くなるた
め、実際には50mmを超えるような厚鋼板の溶接施
工に於ては技術上の問題点があると考えられる。 [発明が解決しようとする問題点] 本発明は以上のような事情を背景としてなされ
たもので、電子ビーム溶接施工に適するものとす
べく低酸素含有量にすると同時に、低酸素含有量
の電子ビーム溶接金属においても、優れた低温靱
性が得られる鋼材の提供を目的とする。 [問題点を解決するための手段] 本発明者らの一部は上記の現状を踏まえて、電
子ビーム溶接の際の高温に於ても溶接金属内にて
溶解したり、粗大化することのない微細なTi酸
化物を均一に分散含有する鋼を用い、この微細な
Ti酸化物を針状フエライトの変態核として、そ
のまま溶接金属中に導入することによつて組織の
微細化を計り、低酸素含有量の溶接金属に於ても
その靱性を優れたものとする技術を特開昭62−
64486号公報に於て示した。 しかし、その後、本発明者らが電子ビーム溶接
法による溶接金属の変態挙動を詳細に検討した結
果、溶接金属中に含まれるsol.Al量が非常に少な
い場合には、従来溶接金属で微細な針状フエライ
ト主体の組織を得るために必要と考えられてきた
非金属介在物数よりもはるかに少ない介在物数で
あつても、すなわち酸素含有量が35ppm以下の鋼
材の電子ビーム溶接金属において不可避的に形成
される介在物数で、高酸素含有量のアーク溶接金
属と同等の微細なミクロ組織が電子ビーム溶接金
属で得られることが判つた。 そこで本発明者らは以上の検討結果に基づき、
電子ビーム溶接法に於て、使用される鋼材に含ま
れるAl量を適切な範囲に調整し、鋼材の溶融部
からなる溶接金属のsol.Al量を低く抑えれば低酸
素含有量の溶接金属でも、しかも意識的に非金属
介在物を導入することなくミクロ組織を微細化
し、溶接ままおよび応力除去焼鈍等の後熱処理の
状態で優れた靱性を持つ溶接金属を得ることがで
きるとの結論に達し、本発明を成したものであ
る。 すなわち本発明の要旨は、重量%でC:0.08〜
0.30%、Si:0.5%以下、Mn:0.4〜1.6%、P:
0.020%以下、S:0.010%以下、N:0.005%以下
を基本成分とし、Alを0.005%未満かつOを
0.0035%以下に制限され、又はこれにさらに、
Ni:1.0%以下、Cr:0.5%以下、Mo:0.8%以
下、Nb:0.05%以下、V:0.1%以下、Cu:0.5%
以下、B:0.002%以下の1種または2種以上を
含有し、残部鉄および不可避不純物元素よりな
り、電子ビームによつて溶接された部分の溶接金
属が微細な針状フエライト組織を形成することを
特徴とする引張り強さが40〜60キロ級の圧力容器
用鋼にある。 [作用] 最初に本発明に言うsol.Alとは次式で示すAl量
とする。 sol.Al=(全Al量)−(insol.Al)−(AlNとしての
Al量) 次に、本発明の対象とする鋼の成分を上記の如
く限定した理由は次の通りである。 まず、Cは溶接金属の強度を向上させる有効な
成分として添加するものであるが、0.3%を超え
る過剰な添加は靱性を劣化させ、さらに電子ビー
ム溶接においては溶接割れを生じ易くするので上
限を0.30%とした。また、0.08%より低くなると
溶接金属としての必要な強度を確保することが困
難となるために下限を0.08%とした。 Siは、主として強度確保のために添加するが、
0.5%を超える過剰な添加は溶接性および靱性が
低下するために上限を0.5%とした。 またMnは、溶接金属の強度、靱性の確保に重
要なものであるが、0.4%未満の添加ではこれ等
の効果が十分ではなく、また1.6%を超えると靱
性にむしろ悪影響を与えるので0.4〜1.6%の範囲
とした。 一方、PおよびSは、特に電子ビーム溶接に於
ては溶接割れの原因となることから、それぞれ上
限を0.020%および0.010%とした。 次にAlは0.005%未満としたが、これは次に示
す理由による。すなわち、鋼が溶接されたのちの
冷却過程に於てオーステナイトからフエライトが
生成する時に、オーステナイト粒界と同様に溶接
金属中の非金属介在物の存在は、フエライトの核
生成に対してエネルギー的に有利な箇所であり、
まずこれらの箇所から変態が開始する。 溶接金属中の固溶したAlはCとの間に排斥作
用が働くことからsol.Alが多く存在するときに
は、変態中のフエライトから未変態のオーステナ
イトへのCの排斥が促進され、sol.Alが少ない場
合に比較してオーステナイト中のCの濃化はより
著しくなる。 その結果、未変態オーステナイトの変態温度は
低下し、微細な針状フエライトが変態し得なくな
り、さらに変態温度の低いベイナイトが生成され
る様になる。 従つて一般鋼材の溶接金属の様にsol.Alが多量
に存在する場合には、微細な針状フエライト主体
のミクロ組織を得るためには溶接金属中に多数の
非金属介在物が存在し、その介在物から未変態オ
ーステナイト中にC濃化が生じフエライト核生成
が困難になる以前に、ほぼ同時にフエライト核生
成が始まることが必須の条件となる。 従来、微細な組織を得るために溶接金属中に
100〜400ppmの酸素含有量に相当する多量の介在
物数が必要とされていたのは以上の様な理由によ
る。 一方、sol.Alが非常に少ない場合には、溶接金
属中の非金属介在物からフエライト核生成した後
も、未変態オーステナイト中へのCの濃化は顕著
ではない。 したがつて、溶接金属の酸素含有量が非常に少
なく非金属介在物数が少ない場合であつても、あ
る程度の非金属介在が存在すれば、その後の冷却
過程に於て過冷が進んだ未変態オーステナイト
が、介在物を核にして変態したフエライトの刺激
によつて、たとえばフエライトとオーステナイト
の界面の様な介在物以外の場所からもフエライト
の核生成が始まる。 その結果、低酸素含有量の電子ビーム溶接金属
に於ても形成される程度の量の酸化物系、硫化物
系等の非金属介在物から波及的にフエライト核生
成が起こり、微細な針状フエライト主体のミクロ
組織が形成されるのである。 この様な溶接金属のミクロ組織に及ぼす低Al
化の効果を得るには、鋼材中に含まれるAlを
0.005%未満とする必要がある。ここで鋼中に含
まれるAl量の制限をsol.Al量ではなく全Al量とし
たのは次の理由による。 すなわち、鋼中においては一部のAlは酸化物
もしくは窒化物として存在しているが、両者とも
電子ビーム溶接時の高温で分解された後、酸化物
は溶接中に起こる酸素の減少によつて、また窒化
物は一般的な電子ビーム溶接時の急速な冷却速度
によつて、すべてのAlが再び酸化物、窒化物と
なるわけではなく、大部分がsol.Alとして溶接金
属中に残るようになるからである。 次にOは先に説明した様に、50mmを超える厚鋼
板の電子ビーム溶接に於ては溶接割れ、ブローホ
ール等の溶接欠陥の発生につながる元素であるた
め、その上限を0.0035%とした。また、この酸素
レベルを達成する脱酸方法としてはAl,Ti,Si,
Zr,Ca,Ce等の脱酸元素を1種または2種以上
用いて脱酸する方法、RH設備等を用いた真空脱
酸による方法、もしくはこれらの組合せによる方
法のいずれかによつても良い。ただし、Alを用
いる場合にはAl含有量が本発明範囲内になるよ
うに留意する必要があることは言うまでもない。 また、Nは電子ビーム溶接金属の冷却速度にお
いては先にも述べたように窒化物を形成しないた
め、固溶窒素となり靱性を劣化させるため、その
上限を0.05%とした。 また板厚は50mmを超える範囲と限定したが、こ
れは次に示すような理由になる。 すなわち、すべてに述べたように50mm以下の鋼
板の電子ビーム溶接では、従来技術の延長である
方法によつて、すなわち、マルテンサイト主体の
ミクロ組織を得た後、溶接後熱処理を施す方法、
もしくは例えば特開昭56−50793号公報に見られ
るような酸素富化により、微細なフエライト主体
のミクロ組織を得ることによつて、良好な靱性の
電子ビーム溶接金属を得ることが可能である。 しかしながら、50mmを超える鋼板の電子ビーム
溶接においては適用可能な溶接条件、溶接欠陥の
発生等による制約から従来技術の適用は不可能で
あつて、本発明の効果が特に顕著に得られること
から、50mmを超える板厚範囲と限定した。 以上が本発明で用いる鋼の基本成分および板厚
範囲であるが、またこれにさらにNi:1.0%以下、
Cr:0.5%以下、Mo:0.8%以下、Nb:0.05%以
下、V:0.1%以下、Cu:0.5%以下、B:0.002
%以下の1種または2種以上を含有した鋼であつ
ても、鋼の低Al化によつて得られる効果は有効
である。 まずNiは溶接金属の強度と靱性を同
時に高める元素であるが、1.0%を超える濃度で
はその効果が少なくなり、また強度も過大となる
ことがあるので上限を1.0%とした。 次にCrは溶接金属の焼入性を高める元素であ
るが、0.5%を超える濃度ではSR割れ感受性が高
くなるため上限を0.5%とした。 MoもCrと同様に焼入性を高める元素である
が、0.8%を超えると溶接金属の強度が過大とな
るので上限を0.8%とした。 Nb,Vは焼入性を高めたり炭化物を形成する
ことにより、鋼材の強度、靱性を向上させるため
に添加されるが、溶接金属でそれぞれ0.05%、
0.1%を超えると焼入性が過大となつたり、SR脆
化により靱性が低下するためその上限はそれぞれ
0.5%、0.1%とした。 CuはNiと同様に溶接金属の強度と靱性を高め
る元素であるが、0.5%を超えると強度が過大と
なつたり、表面肉盛り溶接に於て割れ感受性が高
くなるため上限を0.5%とした。 Bは溶接金属中ではオーステナイト粒界に偏折
し、粒界フエライトの析出を抑制することにより
靱性の向上に寄与するが、0.002%を超えた過剰
な添加は、逆に靱性を劣化させるためその上限を
0.002%とした。 [実施例 1] 第1表は試作鋼の化学組成および熱処理条件を
示す表であり、板厚60mmの40キロから60キロ級鋼
まで試作した。これらの鋼板にI開先加工を施
し、同鋼種同士に対にして突き合わせ溶接を第2
表に示す電子ビーム溶接条件を用いて行つた。 同表に示すa/b値とは、電子ビームの収束レ
ンズ中央から電子ビームの焦点位置までの距離に
対する収束レンズ中央から非溶接物表面までの距
離の比を意味し、ビーム振動のx,y方向とはそ
れぞれ溶接進行方向およびそれに直交する方向を
意味する。 溶接後、溶接ままの各溶接部から第1図に示す
要領で、板厚中央部からシヤルピー衝撃試験片を
採取し、同温度での繰り返し数を3として20〜−
60℃の範囲で衝撃試験を行なつた。 その結果を第3表に示す。 本発明例1は40キロ鋼の例であるが、鋼材の
Al量が本発明範囲で十分少なくその電子ビーム
溶接金属のミクロ組織は微細な針状フエライト組
織が得られ、第3表に示すごとく溶接ままでも十
分に良好な靱性が得られている。 本発明例2および3は基本成分に合金元素が添
加された50キロおよび60キロ級鋼の例である。本
発明例1と同様、鋼材の電子ビーム溶接金属では
微細な針状フエライト組織が形成され溶接ままで
も優れた靱性が得られている。 一方、比較例4および5は本発明例2および3
とほぼ同一成分であるがAlが本発明範囲を超え
て多く含まれており、その電子ビーム溶接金属の
ミクロ組織は本発明例と全く異なり、粗い上部ベ
イナイト組織となつて、溶接ままの靱性は非常に
悪い。
【表】
【表】
【表】
【表】 [実施例 2] 第4表は試作鋼の化学成分および熱処理条件を
示す表であり、板厚90mmの40キロから60キロ級鋼
まで試作した。これらの鋼板にI開先加工を施
し、同鋼種同士を対にして突き合わせ溶接を第5
表に示す電子ビーム溶接条件を用いて行つた。 応力除去焼鈍後、各溶接部から実施例1と同一
要領でシヤルピー衝撃試験を行つた。 その結果を第6表に示す。 応力除去焼鈍条件は保持温度を600℃、保持時
間を4時間とした。 本発明例6および7は40キロ級鋼の例であり、
本発明例8は基本成分Ni,Nb,Cu,Bを含む50
キロ級鋼材の例である。いずれの鋼材もAlの量
は十分に低く、抑えられているため、電子ビーム
溶接金属のミクロ組織は微細な針状フエライトが
主体の組織となり優れた靱性値を示している。 本発明例9は本発明範囲の上限にちかい量の
Alを含んだ鋼材を用いた電子ビーム溶接金属の
例である。溶接金属のsol.Al量が高目になるた
め、微細な針状フエライトに一部上部ベイナイト
が混合したミクロ組織となり、本発明例6から8
に比較して靱性値はいくぶん低下しているもの
の、この程度の上部ベイナイトの生成量であれ
ば、溶接金属の靱性値はまだ十分に良好な値を示
す。 それに対して比較例15および16は、本発明例6
および8と化学組成がほぼ同じであるが、本発明
の範囲を超えてAlを多く含有している鋼である
ため、溶接金属中に含まれるsol.Al量が過剰にな
つた結果、前記の本発明例6および8のミクロ組
織と大きく異なり、粗い上部ベイナイト主体の組
織となつた。 この様なミクロ組織が形成されると、応力除去
焼鈍によつてもその靱性は余り改善されず、従来
から電子ビーム溶接金属部で観察されていた程度
の極めて低い靱性値を示している。 また、比較例17は本発明例6と化学組成がほぼ
同じであるが、本発明の範囲を超えて酸素含有量
が多いため、電子ビーム溶接金属部に多数のブロ
ーホール状の溶接欠陥が発生した。 本発明例10および11は、それぞれ基本成分系に
Cu,Ni,Cr,MoおよびCu,Vを含有した60キ
ロ級鋼の例である。用いた鋼のAlの量は適正で
あり、電子ビーム溶接金属のミクロ組織は微細な
針状フエライト主体となり、これらの靱性は良好
である。 それに対して比較例18は本発明14と化学組成が
ほぼ同じであるにもかかわらず、Alが本発明範
囲を超えて高く含まれているので、その電子ビー
ム溶接金属では微細な針状フエライト主体の本発
明例14のミクロ組織とは一変した粗いベイナイト
組織となりその靱性値は低い。
【表】
【表】
【表】
【表】
【表】 [発明の効果] 以上の実施例からも明らかなごとく、本発明に
よれば従来から課題とされてきた電子ビーム溶接
金属の大幅な靱性向上が、酸素を付加することな
く計れることから、溶接欠陥の発生がなく、しか
もミクロ組織の微細化によつて極めて優れた靱性
の溶接金属を得ることが可能となるものであつ
て、原子プラントや化学プラント等における圧力
容器や、反応容器等の溶接分野において産業上の
効果は極めて顕著である。
【図面の簡単な説明】
第1図は溶接部からのシヤルピー衝撃試験片の
採取要領を示す説明図である。 1……溶接金属、2……シヤルピー衝撃試験
片、3……切り欠き位置、4,5……接合部材。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 重量%で C:0.08〜0.30%、 Si:0.5以下、 Mn:0.8〜1.6%、 P:0.020%以下、 S:0.010%以下、 N:0.005%以下、 を基本成分とし、Alを0.005%未満かつOを
    0.0035%以下に制限され、残部がFeおよび不可避
    不純物元素よりなり、電子ビームによつて溶接さ
    れた部分が微細な針状フエライト組織を形成する
    ことを特徴とする引張り強さが40〜60キロ級の圧
    力容器用鋼。 2 重量%で C:0.08〜0.30%、 Si:0.5%以下、 Mn:0.8〜1.6%、 P:0.020%以下、 S:0.010%以下、 N:0.005%以下、 を基本成分とし、Alを0.005%未満かつOを
    0.0035%以下に制限され、さらに Ni:1.5%以下、 Cr:0.5%以下、 Mo:0.3%以下、 Nb:0.05%以下、 V:0.1%以下、 Cu:1.0%以下、 B:0.002%以下 の一種または2種以上を含有し、残部がFeおよ
    び不可避不純物元素よりなり、電子ビームによつ
    て溶接された部分が微細な針状フエライト組織を
    形成することを特徴とする引張り強さが40〜60キ
    ロ級の圧力容器用鋼。 3 板厚が50mmを超える特許請求の範囲第1項ま
    たは第2項記載の引張り強さが40〜60キロ級の圧
    力容器用鋼。
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JPS60162758A (ja) * 1984-02-01 1985-08-24 Kawasaki Steel Corp 極厚溶接構造用高靭性鋼
JPS6264486A (ja) * 1985-08-22 1987-03-23 Nippon Steel Corp 溶接金属の靭性に優れた低合金高張力鋼の溶接法

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JPS6434599A (en) 1989-02-06

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