JPH0581934A - ケーブルの防蟻方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】ケーブルが白蟻の食害を受けないように防蟻す
る。 【構成】樹脂バインダーにジエチルトルアミドを含有さ
せ溶剤に溶解させ塗料を作成する。ジエチルトルアミド
は防蟻効果に徐放性をもたせるように多孔質壁剤のマイ
クロカプセル化して含有させてもよく、また白蟻に齧ら
れて初めて防蟻効果を発生するように密封壁剤のマイク
ロカプセルにすることもできる。このような防蟻塗料を
ケーブルの最外層のシース５に塗布する。 【効果】ジエチルトルアミドは耐候性であり、防蟻塗料
はどのような場所であっても簡単に塗布して防蟻効果を
得る。また耐熱性であり、ヒートサイクル後においても
熱分解せず、防蟻効果を低下させない。また、人体に安
全でありマイクロカプセル化して含有させれば殺虫効果
を長時間持続させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は白蟻に対して殺虫効果が
ありしかも安全性の高い防蟻方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】セルロース分を食する白蟻は、その行動
範囲内で進路妨害となるものは全てかじるという習性か
ら、ＰＶＣ、ポリエチレン等のプラスチック被覆したケ
ーブル等も食害を受け、ケーブルの絶縁破壊や通信途絶
等社会的な被害を被っている。このような白蟻のうちイ
エシロアリは一カ月の平均気温が４℃以上の地域に棲息
しており、ヤマトシロアリは日本全土に棲息し、特にイ
エシロアリの被害は甚大となっている。

【０００３】従来から行われている防蟻対策として、長
期間安定して優れた効果を有しているドリン系薬剤が使
用されていたが、生体系で蓄積する可能性があり難解性
で環境汚染の問題があった。

【０００４】

【発明が解決すべき課題】そのため、有機リン系薬剤が
使用されているが、安定性の問題に加えてプラスチック
加工時に、例えば２００℃前後の加圧温度で分解を生じ
るものが多く、製造時に臭気が発生することに加えて、
防蟻効果が低下してしまった。環境汚染問題にならない
低毒性の安定かつ防蟻効果の高い薬剤は未だなかった。
このため、非薬剤的手段としてケーブルの最外層に、ナ
イロンに高密度ポリエチレン等の硬くて強靱な樹脂の被
覆を設け、白蟻の歯から機械的に保護する方法が採用さ
れている。

【０００５】しかしながら、ケーブルの可撓性が損われ
る上に、これらの被覆にケーブルの布設時に傷がつく
と、かえってその部分から白蟻の被害を受けやすくしな
ってしまった。また、可燃性であるため火災等の被害か
ら防ぐことができなかった。更に、ケーブルや家屋等長
期間に亘って使用されるものの場合、現時点では白蟻の
コロニーが付近になくても、将来コロニーが発生する場
合もあり、その時点でコロニーのような白蟻の大群に対
して防蟻効果を発揮するような防蟻剤、及び防蟻方法は
未だなかった。

【０００６】上記のような欠点を解消するため、本発明
は安全性が高く、白蟻に対して殺虫効果があり、加工時
に加熱されても分解しない耐熱性のジエチルトルアミド
を含有したケーブルの防蟻方法を提供し、さらに防蟻効
果が長期間保持され、しかも将来白蟻の大群に対しても
防蟻効果を備えるケーブルの防蟻方法を提供することを
目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明のケーブルの防蟻方法は、ジエチルトルアミ
ドを含有する防蟻塗料をケーブルの最外層の表面に塗布
するものである。更に、ジエチルトルアミドは徐放性マ
イクロカプセル化されたものであっても、密封性マイク
ロカプセル化されものであってもよい。

【０００８】

【作用】ジエチルトルアミドを含有した塗料は優れた防
蟻効果を有する。しかも、耐熱性であり、安全性が高
く、耐候性のある防蟻塗料をケーブルに塗布して優れた
防蟻効果が得られる。更に、ジエチルトルアミドを徐放
性のマイクロカプセルとして塗料に含有させることで防
蟻効果を長期に亘って維持できる。また、ジエチルトル
アミドを密封性のマイクロカプセルとして塗料に含有さ
せれば、白蟻の食害が発生した時点で防蟻効果を発揮さ
せることができる。

【０００９】以下、本発明のケーブルの防蟻方法に係わ
る防蟻塗料を説明する。防蟻塗料は、樹脂バインダーに
ジエチルトルアミドを混入し溶剤で適宜希釈して形成さ
れる。樹脂バインダーはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、
エポキシ樹脂等、一般に用いられているものは何れのも
のでも適用できる。

【００１０】また、溶剤も水、有機溶剤何れのものも用
いられる。ジエチルトルアミドは以下に示す構造を有
し、白蟻に対して殺虫効果を有し、

【００１１】

【化１】

【００１２】しかも人体に対しては安全性の高いもので
ある。さらに、加熱に対して安定であって、例えば２０
０℃でも分解することがない。ジエチルトルアミドは樹
脂バインダーに対して０．０１〜３０重量パーセント添
加させる。ジエチルトルアミドの含有量が０．０１重量
パーセント以下であると充分な防蟻効果が得られず、３
０重量パーセント以上であると塗膜の機械的強度、耐寒
性が低下すると伴に、塗布作業が困難になってしまう。

【００１３】ジエチルトルアミドは塗料にそのまま混入
してもよいが、徐放性を有するように徐放性マイクロカ
プセルにして混入するようにしてもよい。ジエチルトル
アミドを徐放性マイクロカプセル化するには、無機質多
孔質マイクロカプセル壁材、例えば酸化ケイ素を基体と
した界面反応法による多孔質カプセルを形成したり、あ
るいはメラミン壁マイクロカプセル壁材等にジエチルト
ルアミドを添加し、減圧後徐々に常圧に戻すことにより
マイクロカプセル化する等、通常の方法で行うことがで
きる。マイクロカプセルの壁材物量を調整することによ
り、ジエチルトルアミドの徐放性を調整、制御できる。
マイクロカプセル中のジエチルトルアミド内包量は、３
０重量パーセント以上であることが好ましく、マイクロ
カプセル化をしても実質的に塗膜中に、ジエチルトルア
ミドが０．０１〜３０重量パーセント含有すれば、好適
な防蟻効果が得られる。

【００１４】また、マイクロカプセルの粒径は１〜５０
μｍ以下が好ましい。一次平均粒径が小さすぎると凝集
しやすく、大きすぎると添加した材料の機械的強度や耐
寒性が低下してしまう。一方、遠い将来に白蟻が発生し
て食害を受けた時点で白蟻の被害を防止できるように、
ジエチルトルアミドを密封性のマイクロカプセルにして
塗料に含有させることもできる。密封性のマイクロカプ
セル化する壁材として、ポリ塩化ビニリデン樹脂等を用
い、ジエチルトルアミドを内包させる。マイクロカプセ
ル化する方法は徐放性マイクロカプセルと同様の方法で
行なえる。密封性のマイクロカプセルは壁材が白蟻に齧
られて破壊した時初めて防蟻効果を発揮する。そのため
遠い将来に白蟻の食害を受けた時に、非常に有効に防蟻
して食害を最小に留めることができる。

【００１５】また、難燃性を付与するため塩素系、臭素
系、りん系、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム
等無機金属水和物等の種々の難燃剤を添加することがで
きる。さらに着色剤等他の添加剤を適宜配合できること
は言うまでもない。このような塗料を用いた本発明のケ
ーブルの防蟻方法を電力ケーブルに適用した一実施例に
ついて説明する。

【００１６】図１に示す電力ケーブル１は、ポリ塩化ビ
ニル、架橋ポリエチレン等から成る絶縁体２に被覆され
た３芯の導体３を介在（紙またはジュート）４を介して
被覆するシース５を備え、シース５の表面に、ジエチル
トルアミドを含有する防蟻塗料を塗布した防蟻膜６を設
けたものである。シース５は、一般にケーブル被覆材料
として用いられる軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、
架橋ポリエチレン、クロロプレンゴム、クロロスルホン
化ポリエチレン等から形成される。

【００１７】防蟻膜６は、前述の防蟻塗料を電力ケーブ
ルのシース５表面にスプレー塗布、ハケ塗り等の方法で
塗布して形成する。膜厚は１０μm〜1mmが好ましい。塗
料を簡単に塗布して防蟻膜６を形成できるため、既存の
ケーブルにも塗布して白蟻の食害を被らないようにでき
る。また長期間経過後、防蟻効果が失効しても、再度塗
布すれば防蟻効果を取戻すことができる。塗料はジエチ
ルトルアミドを徐放性のマイクロカプセルとしてあるい
は、密封性マイクロカプセルとして含有するものを適宜
用いることができる。

【００１８】また、ケーブルの難燃性を図るために、塗
料に添加される難燃剤としては、上述の難燃剤を添加で
きるが、酸素指数は２５以上が好ましい。以上の説明は
本発明を電力ケーブルに適用した一実施例の説明であっ
て、本発明はこれに限定されず、種々のケーブルに適用
できる。 ［実施例１〜６］以下実施例を説明する。

【００１９】樹脂固形分に対して種々の重量のジエチル
トルアミドをそのまま、徐放性マイクロカプセルあるい
は密封性マイクロカプセルにして含有するアクリル系水
性塗料（塗料１）またはアクリル樹脂と、Ｓｂ₂Ｏ₃と、
ＤＢＶＰＥとから成る塗料（塗料２）を作成した。これ
らを１mm厚、３０mm角のポリ塩化ビニルシート表面に、
５０μm厚程度に塗布し固化させて試験体を作成した。
試験体そのままのもの、１００℃で５日ヒートサイクル
を行ったもの、７０℃で５日間耐候試験を行ったものそ
れぞれを、図２に示すように１５０mm径のシャーレ中に
黒松角材１２と共に試験体１１を配し、イエシロアリの
職蟻５０匹を入れ、２８±２℃で３週間試験を行った。
表２に示す評価により結果を表１に示す。

【００２０】同様に、比較例１〜５としてジエチルトル
アミドを含有しない塗料を塗布したもの、ジエチルトル
アミドの含有量の少ないもの、防蟻剤として有機リン系
またはクロルデンを用い、実施例と同様に試験した。結
果を表１に示す。

【００２１】

【表１】

【００２２】

【表２】

【００２３】［実施例７〜１３］図３に示す２mm²の１
芯の導体３に、０．８mm厚の架橋ポリエチレン絶縁体２
を設け、１．５mm厚のシース５の表面にジエチルトルア
ミド含有のアクリル系水性塗料を塗布して種々の厚さの
防蟻膜６を形成した防蟻ケーブル１１を作成した。防蟻
ケーブル１１の両端部はエポキシ樹脂でモールドし、そ
のままのもの、１００℃で５日ヒートサイクルを行った
もの、５００時間耐候試験を行ったものそれぞれを、図
３に示すように１５０mm径のシャーレ中に黒松角材１２
と共に配し、イエシロアリの職蟻５０匹を入れ、２８±
２℃で３週間試験を行った。表４に示す評価により結果
を表３に示す。

【００２４】同様に、比較例６〜１０として防蟻膜のな
いもの、ジエチルトルアミドを含有しない塗膜を形成し
たもの、ジエチルトルアミドの含有量の少ないもの、防
蟻剤として有機リン系またはナフテン酸銅を用いたもの
を試験した。結果を表３に示す。

【００２５】

【表３】

【００２６】

【表４】

【００２７】

【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明のケーブルの防蟻方法によればジエチルトルアミド含
有させた防蟻塗料をケーブルの最外層のシースにに塗布
したため、優れた防蟻効果を有し、耐熱性であり、安全
性が高く、耐候性であって、どのような場所であっても
塗布できる。しかもヒートサイクルを行なっても白蟻の
殺虫効果が低下することがなく、ケーブルは食害を受け
ない。既存のケーブルにも簡単に塗布して防蟻できる。
また、経時後防蟻効果が失効しても再度塗布すれば簡単
に防蟻効果を取戻すことができる。

【００２８】さらに、ジエチルトルアミドを徐放性のマ
イクロカプセルとして塗料に含有させれば、防蟻効果を
長期に亘って維持できる。更に、ジエチルトルアミドを
密封性のマイクロカプセルとして塗料に含有させれば、
白蟻の食害が発生した時点で防蟻効果を発揮させること
ができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のケーブルの防蟻方法を適用した一実施
例の断面図。

【図２】本発明のケーブルの防蟻試験を示す図。

【符号の説明】

１、１１………防蟻ケーブル ５………シース ６………防蟻膜（防蟻塗料）

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ジエチルトルアミドを含有する防蟻塗料を
   ケーブルの最外層の表面に塗布することを特徴とするケ
   ーブルの防蟻方法。
2. 【請求項２】ジエチルトルアミドは徐放性マイクロカプ
   セル化されたことを特徴とする請求項１記載のケーブル
   の防蟻方法。
3. 【請求項３】ジエチルトルアミドは密封性マイクロカプ
   セル化されたことを特徴とする請求項１記載のケーブル
   の防蟻方法。