JPH0570104A - 酸化物超電導膜の製造方法 - Google Patents

酸化物超電導膜の製造方法

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JPH0570104A
JPH0570104A JP3252509A JP25250991A JPH0570104A JP H0570104 A JPH0570104 A JP H0570104A JP 3252509 A JP3252509 A JP 3252509A JP 25250991 A JP25250991 A JP 25250991A JP H0570104 A JPH0570104 A JP H0570104A
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superconducting
fine powder
oxide
conductive
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JP3252509A
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Hidetaka Shintaku
英隆 新宅
Hideo Nojima
秀雄 野島
Masayoshi Koba
正義 木場
Masaya Osada
昌也 長田
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Original Assignee
Sharp Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電気泳動法により、安価な銅電極上に、大面
積で、かつ複雑な形状の超電導膜を作製する。 【構成】 アセトン液にY−Ba−Cu−O系の酸化物超
電導微粉末を分散させた溶液中に銅の基板を浸漬して電
界を印加し、銅の基板上に電気泳動で堆積した膜を、先
ず、真空または不活性ガス雰囲気中で高温にした焼結を
行い、次に、500℃以下の酸素または空気の雰囲気に
よる酸素組成比制御の熱処理をする。従来Y−Ba−Cu
−O膜とCu基板の介面に形成して問題になったCuO層
の発生を防ぎ、特性の良い超電導膜の作製を可能にし
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、超電導膜の製造方法
に関し、より詳しくは、電気泳動法により、粒界に弱結
合の特性を有する酸化物超電導膜を加工精度良く、高密
度に製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、酸化物超電導体で臨界温度(Tc)
が液体窒素温度77K以上のものが発見された。酸化物
超電導体は、キャリアのコヒーレンス長が短く、かつキ
ャリア濃度が低いので、結晶粒子の粒界を弱結合の状態
にするのが容易であり、この弱結合のジョセフソン効果
を利用して、弱いエネルギを検出できる磁気センサや光
センサ、または小さい入力で制御可能な論理素子やトラ
ンジスタ等に応用される。このような酸化物超電導体の
応用開発を進めるためには、超電導特性を損なうことな
く、超電導膜を任意の形状に形成または加工する技術を
確立しなければならない。
【0003】酸化物超電導膜を形成すること自体は、ス
パッタ法はじめ、真空蒸着法(反応性蒸着、分子線エピ
タキシ(MBE)、イオン・クラスタ・ビーム(ICB)、
レーザ蒸着)、化学気相成長法(RF、プラズマ、光CV
D、有機金属化学気相成長法(MO−CVD))などの薄
膜作製技術や、スプレーパイロリシス、スクリーン印刷
法、ゾルーゲル法などの厚膜作製技術によって、比較的
容易に行うことができる。しかしながら、スパッタ法、
真空蒸着法、MO−CVD法は、高品質の薄膜作製が可
能であるが、作製された膜の面積は小さく、また作製に
真空装置を必要とし設備も大掛かりなものとなる。一
方、スプレーパイロリシス法、スクリーン印刷法、ゾル
ーゲル法等は単結晶薄膜を作製するためには適当でない
が、多結晶材料を用いる応用、例えば、磁気シールド、
線材、センサ等幅広く使用される。特に、高温超電導体
は、コヒーレンス長が短く、キャリア濃度が低いため、
多結晶膜を作製すると結晶粒界が容易にジョセフソン接
合的な弱結合状態になる特徴があり、この効果を利用し
て、例えば磁気センサ、光センサ、論理素子等が実現可
能となり、広い応用展開が期待されている。しかしなが
ら、これらのスプレーパイロリシス法、スクリーン印刷
法、ゾルーゲル法等の従来の方法は、膜作製が複雑な化
学プロセスからなっており、膜特性の再現性、信頼性の
面で難点があった。また、これらの方法では、大面積で
複雑な形状の基板に成膜することが困難であった。
【0004】そこで、最近、電気泳動法によって超電導
膜を形成する基礎技術が報告されている(例えば、App
l.Phys.Lett.55(1989)492)。この方法
は、有機溶媒中に分散した超電導微粉末を、負電位もし
くは正電位にバイアスした基板上に堆積し、その後、熱
処理を行うことにより焼結して超電導膜を形成するもの
である。この方法は、大面積の複雑な形状の基板上に超
電導膜が形成できるので、広い応用展開が期待されてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これまで、基
板として、高温酸化物超電導体と反応の少ない貴金属
(金、銀等)を用いており、それ以外の基板材料では超電
導特性を得ることは難しかった。このように基板の材料
に制限があったため、この方法は高価なものとなり、実
際の応用に適用することが困難であった。また、作製の
メカニズムに不明の点が多く、特性を制御する指針も不
足していた。
【0006】なお、本発明者は、先に、基板として銅を
用いて焼結における雰囲気以外の条件を制御することに
より、従来は不可能とされていた銅基板上に零抵抗とな
る超電導膜を形成できる方法を提案した(特願平2−3
191号)。しかし、作製した膜は、超電導状態にはな
るが、零抵抗温度はY−Ba−Cu−O超電導膜で60−
80K程度であり、その膜特性はかならずしも優れたも
のではなかった。
【0007】そこで、本発明は、電気泳動による超電導
膜の作製に関する課題を大幅に解消し、超電導膜を所望
の特性で精度良く、かつ、所望の形状に容易に作製でき
る方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段および作用】上記の目的を
達成するため、本発明の超電導膜の作製方法は、有機溶
媒に酸化物超電導微粉末を分散させた溶液中に、銅の電
極を形成した基板を浸漬して、該電極上に電気泳動法に
より形成した前記酸化物超電導微粉末の堆積膜の焼結
を、真空または不活性ガス雰囲気で行い、続いて、酸素
または空気等の酸素を含む雰囲気中で、酸素組成比制御
の熱処理を行うことを特徴とする。すなわち、有機溶媒
に分散した超電導材料の微粉末を負電位にバイアスした
導電性基板に堆積させる超電導膜作製技術において、導
電性の基板として銅を用い、電着した超電導材料の微粉
末を銅基板に固定する熱処理をその超電導材料の微粉末
が結合し、かつ、基板との界面に形成されるCuO層に
よる悪影響が生じないように、超電導膜が結晶化する温
度では雰囲気を真空、もしくは、不活性ガスとして、超
電導膜に酸素を取り込む温度において雰囲気を酸素、も
しくは、空気とするものである。
【0009】酸化物高温超電導体が固相反応によって結
晶化する温度は900℃前後であるが、この温度では基
板の銅の表面は酸化して酸化銅CuO層を形成する。一
旦形成されたCuOは酸化物高温超電導体のフラックス
となり融点を降下させる働きがある。そのため、酸化物
高温超電導体が基板界面で融解し、Cuと反応するのが
この効果の主原因となって超電導特性が劣化すると考え
られている(Jpn.J.Appl.Phys.29(1990)
L1655)。しかし、ここで、酸化物高温超電導体が
熱処理時に酸素を取り込む温度450℃前後であるか
ら、例えば、500℃以上の温度での処理をすべて真空
中または不活性ガス中で行って、500℃以下の温度で
酸素または空気を導入すれば、CuO層の形成が減少
し、超電導特性の劣化を防いで、銅基板の上に特性の優
れた酸化物高温超電導膜を形成することができる。この
結果、基板材料として高価な金や銀を使用することな
く、所望の特性を持った超電導膜を、精度よく、所望の
形状で作製することが可能になる。
【0010】すなわち、任意の形状に選択的に超電導膜
を形成することが出来るが、特性の制御が容易でなく、
また基板に高価な金または銀を用いていた電気泳動によ
る成膜において、基板材料として銅を用い、熱処理の雰
囲気を制御して界面に形成されるCuO層の影響を避け
ることにより特性の制御を可能にし、特性のよい超電導
膜を作製するものである。
【0011】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、酸化物超電導微粉末を分散させた有機溶媒中に、
所定のパターンの導電膜を表面に形成した絶縁基板を浸
漬し、負電位に保持した前記導電膜上に前記酸化物超電
導微粉末を堆積させた後、熱処理を行う酸化物超電導膜
の製造方法において、前記絶縁基板上の導電膜に銀の薄
膜を用いる。すなわち、負電位にバイアスした導電薄膜
に近接した周囲に並行した正電位にバイアス電極を設け
るものであるが、このとき少なくとも負電位にバイアス
する導電薄膜は銀(Ag)からなるサブミクロン程度に薄
くした膜を用いるものである。
【0012】従来の銅などの耐熱金属を導電薄膜にした
電気泳動法による超電導膜は、使用した導電薄膜が並列
になって残ることになり、銅の導電膜は、堆積した超電
導膜を焼成するとき、その表面に酸化銅の層が形成さ
れ、その酸化銅が超電導体のフラックスの作用をして形
成した超電導膜の特性を低下させていた。
【0013】上記で説明した本発明の薄い銀の導電膜で
は、銀が高温にしても超電導体を劣化させることなく、
かつ、一定以上の温度の熱処理によってその銀薄膜は凝
集して微小な粒になり、超電導膜の下部層に導電経路は
形成されず超電導膜に電気的な影響を与えない構成にな
るものである。
【0014】また、本発明の成膜法であるパターニング
した銀の導電性膜を負電位にバイアスして、超電導材料
の微粒子を分散した有機溶媒中に浸漬させる超電導膜の
堆積において、正電位にバイアスする電極もパターニン
グした銀あるいは他の金属による導電薄膜にして、その
負電位にバイアスした電極の周囲に近接した一定間隔に
して設けることにより、正と負の電極間で電界が回り込
むこともなく集中した電界を形成するので、精度のよい
超電導微粉末を堆積できる。
【0015】さらに、その後の焼成温度を880℃から
935℃で行うことにより、導電性薄膜は凝集して、分
離した微小球状になるので、形成した超電導膜には並列
な常電導回路ができず、かつ超電導膜は微粒子よりなる
セラミック構造を呈しているため、結晶粒界に起因する
磁気抵抗効果および光応答等の特性がよいものになる。
【0016】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、1枚の絶縁性基板上に負電位にバイアスして超電
導膜を堆積させる導体薄膜に近接させた一定間隔のとこ
ろに正電位にバイアスする導電性薄膜を設け、上記のバ
イアス電位の極性を反転させることにより、正電位にバ
イアスされていた導電性薄膜上にも超電導膜を堆積させ
るものである。
【0017】これにより、絶縁性基板上に効率よく超電
導膜を形成することができる。さらに、上記の導電性薄
膜を形成した絶縁性基板による電気泳動の電着の電界
は、近接した導電性薄膜の間に集中して強い電位勾配を
形成する。電界のまわり込みは発生しないので、負電位
にバイアスした導電性薄膜のパターンに一致した超電導
微粉末の堆積を行うことができる。
【0018】すなわち、本発明は、絶縁性基板上に、近
接して、かつ、一定間隔に並行に形成した2つのパター
ニングした導電性薄膜を電極とし、超電導微粉末を分散
させた有機溶媒中に浸漬して負電位にバイアスした方の
電極に超電導微粉末を電気泳動の電着によって堆積させ
る超電導膜の形成において、その2つの電極にバイアス
する電圧の極性を切替えることで、2つの電極上に超電
導膜を形成するものである。2つの近接した導電性薄膜
を用いるので、その薄膜間にバイアスした電界は強い電
界勾配を形成して電界のまわり込みができないので精度
のよい超電導パターンが得られるとともに、絶縁性基板
上を有効に利用して高密度に超電導膜を形成できるもの
である。
【0019】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、互いに離間して並ぶ一対の導電膜を被着した基板
を、超電導物質の材料を分散した溶媒中に浸漬した状態
で、上記一対の導電膜のうちの一方を負電位、他方を正
電位に保持して、電気泳動法により、上記負電位側の導
電膜上に上記超電導物質を堆積させる超電導膜の製造方
法において、上記負電位側の導電膜は銀からなる一方、
上記正電位側の導電膜は銅、金、または白金からなるも
のである。
【0020】負電位側の導電膜が銀からなるので、この
負電位側の導電膜上に形成した超電導またはの超電導特
性、すなわち臨界温度や臨界電流密度が低くなることが
ない。したがって、形成した超電導膜の動作温度および
動作電流を従来に比して高く設定でき、外部磁界による
磁気抵抗効果を効率良く取り出せるようになる。また、
正電位側の導電膜が銅、金または白金からなるので、正
電位側から負電位側へのマイグレーション(正電位側の
導電膜が銀からなるとき起こる)が起こらなくなる。し
たがって、加工精度良く、かつ高密度の超電導膜が形成
される。
【0021】なお、上記超電導膜堆積後に焼成を行った
場合、上記銀の導電膜は凝集して、導電経路を形成しな
くなる。この場合、上記超電導膜は微粒子よりなるセラ
ミック構造を呈しているため、結晶粒界に起因する磁気
抵抗効果および光応答等が効率良く得られる。
【0022】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、超電導微粉末を分散した有機溶媒中に絶縁性基板
上に所定のパターンを形成した導電性膜を浸漬して負電
位に保持し、前記導電性膜上に前記超電導微粉末を堆積
させる超電導膜の製造方法において、前記超電導微粉末
を分散させた有機溶媒中に酸化銀の微粉末を添加するも
のである。
【0023】パターニングした導電性薄膜、例えば銅薄
膜を負電位にバイアスして、超電導材料の微粒子を分散
した有機溶媒中に浸漬して、上記導電性薄膜上に超電導
膜を堆積する。このとき、上記有機溶媒中に酸化銀の微
粉末を添加しておくことにより、銀が添加された超電導
膜を形成することができる。銀が添加された超電導薄膜
は微粒子よりなるセラミック構造を呈するので、結晶粒
界に起因する磁気抵抗効果および光応答等が効率良く得
られる。なお、正電位にバイアスする電極もパターニン
グした上記導電性薄膜のまわりに近接した一定間隔に設
けることにより、正と負の電極間で電界がまわり込むこ
となく集中するので、精度良く超電導微粉末と酸化銀微
粉末を堆積できる。その後に焼成を行うことにより、導
電性薄膜は酸化あるいは凝集して、導電経路を形成しな
くなる。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細
に説明する。
【0025】(第1実施例)本発明の第1実施例では、原
料となるY1Ba2Cu37-x超電導微粉末を固体反応法に
よって作製した。先ず、Y23、BaCO3、CuOの粉
末原料(純度99.99%)をY、Ba、Cuの元素比が
1:2:3となるように秤量し、混合、粉砕、分散を行
った後、900℃で5時間空気中で熱処理し施した。そ
の後、さらに粉砕、混合、分散を行った後、1500kg
/cm2の圧力でペレット(直径9mm、厚さ1mm)に成型し
た。このペレットを950℃で5時間空気中で熱処理
し、その後、再び、粉砕、混合、分散して、粉末とし
た。作製した粉末をさらに950℃で3時間熱処理し
た。最後に、粉末をメッシュに通して膜作製のための原
料とした。作製したY1Ba2Cu37-x微粉末の粒径(直
径)は平均約1μmであった。
【0026】作製したY1Ba2Cu37-x微粉末を、アセ
トンに分散させて溶液2(図2に示す)を作製した。粉末
の濃度はアセトン25mlに対し、粉末2.5gとした。
【0027】作製に用いた装置の概略図を図2に示す。
この図に示すように、溶液2に導電性の電極3を浸漬し
電極3間に定電圧源4により電界を加えた。正電位側に
銅の電極3を用い、負の電位側に基板1として銅板を設
置した。図2の電極間の印加電界は200V/cmとし、
この状態で約10分間保持することにより、銅基板1上
に膜が堆積した。膜堆積中は溶液2に分散させた超電導
微粉末が沈澱しないよう磁気スターラ5で撹拌を続け
た。
【0028】膜が堆積した銅基板を、図1に示した温度
プロセスで熱処理を施した。室温から200℃まで温度
を上げて、アセトンを完全に蒸発させるために、一旦1
0分間保持した後、真空ポンプにて反応炉内を真空状態
にし、そのまま900℃まで温度を上昇させ、900℃
で3時間保持した。その後、温度を下降させて500℃
で反応炉内に酸素を導入し、一旦450℃で3時間保持
してその後室温まで冷却した。作製した膜の厚さは約5
0μmであった。この膜の電気抵抗の温度依存性を測定
した。電気抵抗の測定は、通常の4端子法を用い、電流
・電圧電極としてTiを真空蒸着により形成し、リード
線を銀ペーストで結線して行った。試料に流す電流値は
0.1mAとした。この結果を図3に示す。作製した膜の
電気抵抗は96Kで急速に減少し始め(以下同じ)、93
Kで零となることを確認した。
【0029】(第2実施例)第1実施例と同様にして、銅
基板上に膜堆積を行った。熱処理は200℃で真空にし
た後、雰囲気をアルゴンガスに置換して第1実施例と同
様の焼結の熱処理を行い、500℃で一旦アルゴンガス
を真空ポンプを用いて反応炉から引き出した後、反応炉
内に酸素を導入して第1実施例と同様の熱処理を継続し
た。その結果、電気抵抗が96Kで減少し始め92Kで
零となる超電導膜が得られた。
【0030】(第3実施例)第2実施例で雰囲気をアルゴ
ンガスとしたところを、窒素ガス置き換えて前記の例と
同様の実験を行った。その結果、第2実施例と同様に、
電気抵抗が、96Kで減少し始め92Kで零となる超電
導膜が得られた。
【0031】(第4実施例)第1、2、3実施例におい
て、500℃で酸素を導入するかわりに空気を導入して
実験を行った。その結果、複数個(10個以上)の試料を
作製していずれも90K以上で抵抗が零となる超電導膜
が得られた。
【0032】(第5実施例)第1実施例と同様の膜作製に
おいて、酸素を導入する温度を600℃にして実験を行
った。その結果、作製した膜は、電気抵抗が減少し始め
る温度は96Kであったが、抵抗が零になる温度は82
Kとなった。
【0033】(第6実施例)第1実施例と同様の膜作製に
おいて、酸素を導入する温度を700℃にして実験を行
った。その結果、作製した膜は、電気抵抗が減少し始め
る温度94Kとなり抵抗が零になる温度は76Kとなっ
た。
【0034】(第7実施例)第1実施例と同様の膜作製に
おいて、酸素を導入する温度を800℃にして実験を行
った。その結果、作製した膜は、電気抵抗が減少し始め
る温度は94Kとなり抵抗が零になる温度は68Kとな
った。
【0035】(第8実施例)第1実施例と同様の膜作製に
おいて、酸素を導入する温度を400℃にして実験を行
った。この場合、450℃での3時間保持は行わず、酸
素を導入した直後400℃で3時間保持し、その後、冷
却した。その結果、作製した膜は、電気抵抗が減少し始
める温度は96Kとなり抵抗が零になる温度は88Kと
なった。
【0036】(第9実施例)第1実施例と同様の膜作製に
おいて、酸素を導入する温度を300℃にして実験を行
った。この場合、450℃での3時間保持は行わず、酸
素を導入した直後300℃で3時間保持し、その後、冷
却した。その結果、作製した膜は、電気抵抗が減少し始
める温度は96Kとなり抵抗が零になる温度は86Kと
なった。
【0037】(第10実施例)第1実施例と同様の膜作
製において、酸素を導入する温度を200℃にして実験
を行った。この場合、450℃での3時間保持は行わ
ず、酸素を導入した直後200℃で3時間保持し、その
後冷却した。その結果、作製した膜は、電気抵抗が減少
し始める温度は96Kであったが抵抗が零になる温度は
50K以下になった。
【0038】以上説明した10種の実施例から、銅基板
上に電気泳動で堆積した酸化物超電導膜は、その熱処理
工程における雰囲気と温度によって、その超電導膜の特
性が大幅に変わることが分かった。
【0039】(第11実施例: 比較例)熱処理の雰囲気
を全て空気中で行ったこと以外は第1実施例と同じ工程
にした超電導膜を作製した。作製した膜の電気抵抗は9
4Kから減少し、66Kになって零になった。
【0040】以上の実施例では、本発明による酸化物超
電導膜の製造方法を説明したが、本発明は実施例によっ
て限定されるものでなく、電気泳動の膜堆積において電
極間に印加する電圧、溶液への分散濃度、堆積時間等は
目的によって適宜調整しても本発明の効果を得ることが
できる。
【0041】また、以上の実施例に用いた超電導微粉末
は固体反応法で作製したY1Ba2Cu37-xで作製した
が、超電導微粉末の作製はこの固体反応法に限定される
ものではなく、他の方法、例えば共沈法によるY1Ba2
Cu37-x微粉末を用いても、本発明の効果を得ること
が出来る。さらに、本発明の実施例では、銅板を基板と
して用いたが、銅の薄膜を蒸着またはメッキ等により形
成した任意の基板を用いても本発明の効果を得ることが
出来る。
【0042】このように、上記各実施例は、銅電極上に
堆積させた酸化物超電導微粉末膜の、焼結と酸素組成比
調整の熱処理における雰囲気と温度等を制御して、特性
の良い超電導膜の作製を可能にしたものである。したが
って、安価な銅基板上に、簡単な装置で大型、または、
複雑な形状が可能な、電気泳動による超電導膜を作製す
ることが可能になった。
【0043】次に、第12実施例の電気泳動の電着法に
使用した超電導微粉末について説明する。この超電導微
粉末はY系高温酸化物超電動材料といわれるY1Ba2Cu
37-xの組成であり、次のような方法で作製した。純度
のよい粉末原料(純度99.99%以上)のY23、BaC
3およびCuOを、それぞれに含まれるY、Baおよび
Cu元素組成比が1:2:3になるように秤量し、充分
に混合した後、空気中で900℃で5時間の熱処理を行
って酸化物を合成した。合成した酸化物は続いて粉砕お
よび混合を行った後、その粉末をプレス機で1500kg
/cm2の圧力をかけペレット(直径9mm、厚さ1mm)に成
型した。成型したペレットは、空気中で950℃で5時
間の熱処理を行った上、再度粉砕して微粉末にした後、
空気中で950℃で3時間の熱処理を行った。以上のよ
うに作製した微粉末は、ふるいのメッシュを通して粒径
の選別を行い、この実施例に使用する酸化物超電導微粉
末にしたが、この微粉末の平均粒径は約1μmになるよ
うに調整した。以上で作製したY系酸化物超電導微粉末
を有機溶媒として用いたアセトンに分散させた。この分
散液102(図5に示す)は、アセトン40mlに対し、そ
の超電導微粉末を0.5g分散させた。
【0044】次に、第12実施例に用いた基板101の
説明を行う。この基板101は図5で平面図を示したよ
うに、イットリウム(Y)で安定化したジルコニア(ZrO
2)であるYSZ絶縁基板107の表面上に形成すべき超
電導膜のパターンにした銀(Ag)の導電性薄膜106a
と、これと一定間隔をおいて同じ材料の導電性薄膜電極
106bを有している。それぞれの電極106a,106b
には導電性薄膜電極パッド部103a,103bが設けら
れている。以上の薄膜電極106a,106bおよびパッ
ド部103a,103bは、電子ビーム加熱により真空蒸
着した膜厚200nmのAg薄膜を、リフトオフ法を用い
て同時にパターニングして形成した。なお、以上で説明
した薄膜電極106a,106bの電極線幅、および、そ
れらの電極間の間隔は、共に50μmという微細なパタ
ーンとした。
【0045】以上のようにして作製した分散液102と
基板101を用いた電気泳動による超電導微粉末の電着
装置の概要を示したのが図6である。図6では前記の分
散液102を、磁気スターラ105に設置した槽120
に注入する。次に、導電性薄膜パターン103a,103
bにリード線を接続した(細かい電極106a,106bの
表示を省略して示した)基板101を槽120中の分散
液102に浸漬する。前記パターン103a,103bに
接続したリード線は直流定電圧源104の電極ターミナ
ルに接続されている。以上のように電気泳動装置の準備
をした後、磁気スターラ105を作動させ、分散液10
2中の超電導微粉末を均一に分散させた状態にした。こ
の上で、先ず、パッド部103aが負電位、パッド部1
03bが正電位になるように電圧を100Vにした定電
圧電源104に接続して20秒間保持し、導電性薄膜の
電極106aとパッド部103a上に、アセトン中に分散
させた超電導微粉末を電気泳動により堆積させた。以上
のように導電性薄膜上に超電導微粉末を堆積させた基板
101を空気中で920℃で3時間の熱処理を行うこと
で超電導微粉末の焼結を行い、続いて450℃で3時間
保持することによる酸素組成比の制御を行った後、室温
まで徐冷する工程からなる熱処理により酸化物超電導膜
の作製を行った。以上の条件で形成した酸化物超電導膜
の膜厚は50μmであった。また、微細なパターンの導
電性薄膜電極106a,106bのパターン通りの精度の
よい超電導膜が形成できていた。
【0046】以上のように作製した超電導膜には、図7
に示したように、パッド部103a上に電流電極109
a,109bおよび電圧電極110a,110bと超電導膜の
接続部111をメタルマスクを用いたTiの真空蒸着法
で形成した。このTi薄膜のリード線接続用電極109,
110にはそれぞれAgペーストによる測定用リード線
を接続した。その4本のリード線を用いた通常の4端子
法により作製した酸化物超電導膜の電気抵抗値の温度依
存性を測定し、その結果を示したのが図8である。図8
の横軸は温度(K)で、縦軸が電気抵抗を示している。こ
の図8から分かるように、本実施例で作製した超電導膜
は電気抵抗がゼロになる臨界温度は85Kであった。
【0047】さらに、作製した超電導膜は基板上に形成
した導電薄膜の形状通りに精密な形状であり、さらに詳
細な測定を行った結果、負電位としたため超電導膜が形
成された銀薄膜においては導電経路は残っていないこと
が分かった。この結果、超電導膜磁気抵抗効果による抵
抗変化を効率良く検出できた。また、正電位とした導電
性薄膜の銀は数十μm程度の大きさに凝集していた。こ
のように作製した超電導膜の磁気抵抗素子について、バ
イアス電流を変化したときの感度曲線を示したのが図9
である。図9に示されたように、本実施例で作製した精
密なパターンの酸化物超電導磁気抵抗素子は、極めて高
感度の特性をもつと共に、バイアス電流の大きさの変化
に対する感度(印加磁界の変化に対する素子抵抗の変化
の比)特性の変化は、大きくなかった。以上は本実施例
の酸化物超電導膜を形成する粒子の粒界の多数の弱結合
の間に、大きい特性の分布があると考えられると共に、
広い範囲の磁界強度の測定が可能な磁気抵抗素子の作製
が可能なことを示している。
【0048】以上と同様の条件で焼成温度のみを880
℃、900℃、935℃に変えて作製した超電導膜につ
いて測定をした。その結果を図4にまとめて示す。各場
合においても導電性電極としての銀薄膜は凝集し導電経
路は残っておらず、抵抗変化を効率良く取り出すことが
できた。また、臨界温度Tc,endも90Kレベルと高
く、酸化物超電導で作製したデバイスの使用温度範囲も
広くとれ、また、臨界電流密度も適当な大きさであるた
め、超電導磁気抵抗効果による磁気抵抗の変化をより大
きな電圧変化として取り出すことができる。
【0049】図4は、以上のすべての場合についての超
電導特性および磁気特性をまとめた結果を示したもので
ある。臨界温度Tc,endは上記の焼成温度が900℃か
ら935℃で90Kレベルとなり920℃で最も高い値
となる。また、臨界電流密度においても920℃で最も
高い値8.3A/cm2を示した。さらに、磁気抵抗効果に
よる感度を超電導体の形状で規格化した値である磁気抵
抗率で比較した結果、920℃あるいは880℃で高い
値を示した。しかし、両者の超電導特性は違い、880
℃で焼成したものは超電導特性がゼロ磁界においても抵
抗が高く、大きな出力をもっているため検出回路が前者
に比べ少し難しくなる。
【0050】以上は、本発明の酸化物超電導膜の作製条
件を第12実施例によって説明したが、本発明は結晶粒
界に起因した磁気抵抗効果を大きく取り出すため、超電
導微粉末を堆積する導電薄膜材料を銀に、さらに銀薄膜
が凝集し、かつ磁気抵抗効果の大きな超電導膜が形成さ
れる温度を焼成温度にしたものである。以上で説明した
実施例によって本発明が限定されるものではなく、作製
した酸化物超電導膜を目的の用途に合う特性にするた
め、電極パターン、超電導微粉末の製造方法や、その超
電導微粉末の電気泳動による堆積条件である電極間に印
加する電界強度、分散液中のその微粉末の濃度および堆
積時間などの条件を、適当に調整することが可能であ
る。また、使用する超電導微粉末も実施例の固体反応法
で作製したY1Ba2Cu37-xの組成の微粉末に限定せ
ず、例えば共沈法やスプレー法などにより作製した微粉
末を用いることができる。その他絶縁性基板の材料もY
SZのみでなく、MgO、SrTiO3等を用いることがで
きる。以上のように本発明の効果が得られる範囲で変更
した実施が本発明の範囲に含まれるものとする。
【0051】本発明の第12実施例による電気泳動法に
より、セラミック高温超電導体による結晶微粒子の粒界
における弱結合の効果が大きく、かつ、精度よく所定の
形状にした超電導膜を作製することができる。
【0052】以上で作製した超電導膜は、電気泳動にお
ける電界バイアスに用いた銀の薄膜を、その焼成温度で
凝集して微小な粒子にするので、超電導特性が向上して
おり、磁気センサをはじめ光センサ、または、スイッチ
ングデバイス等の作製に利用することで、特性のよい超
電導エレクトロニクスデバイスを得ることができるもの
である。
【0053】次に、本発明の第13実施例の電気泳動の
電着法に使用した超電導微粉末について説明する。この
超電導微粉末はY系高温酸化物超電導材料といわれるY
1Ba 2Cu37-xの組成であり、次のような方法で作製し
た。
【0054】純度のよい粉末原料(純度99.99%以
上)のY23、BaCO3およびCuOをそれに含まれた
Y、Ba、およびCu元素組成比が1、2、3になるよう
に秤量し、充分に混合した後、空気中で900℃で5時
間の熱処理を行って酸化物を合成した。合成した酸化物
は続いて粉砕および混合を行った後、その粉末をプレス
機で1500kg/cm2の圧力をかけペレット(直径9mm、
厚さ1mm)に成型した。成型したペレットは、空気中で
950℃で5時間の熱処理を行った上、再度粉砕して微
粉末にした後、空気中で950℃で3時間の熱処理を行
った。以上のように作製した微粉末は、ふるいのメッシ
ュを通して粒径の選別を行い、実施例に使用する酸化物
超電導微粉末にしたが、この微粉末の平均粒径は約1μ
mになるよう調整した。
【0055】以上で作製したY系酸化物超電導微粉末を
有機溶媒として用いたアセトンに分散させた。この分散
液202(図10に示す)は、アセトン2.5mlに対し、
その超電導微粉末を1.0g分散させた。
【0056】次に、第13実施例に用いた基板201の
説明を行う。この基板201は図11で平面図を示した
ように、イットリウム(Y)で安定化したジルコニア(Zr
2)であるYSZの絶縁基板207の表面上に形成すべ
き超電導膜のパターンにした銀(Ag)の導電性薄膜電極
206aと、これと一定間隔をおいて同じ材料の導電性
薄膜電極206bを有している。それぞれの電極206
a,206bには導電性薄膜電極パッド部203a,203b
が設けられている。以上の薄膜電極206a,206bお
よびパッド部203a,203bは、電子ビーム加熱によ
り真空蒸着したAg薄膜を、リフトオフ法を用いて同時
にパターニングして形成した。
【0057】なお、以上で説明した薄膜電極206a,2
06bの電極線幅、およびそれらの電極間の間隔は、共
に50μmという酸化物超電導体としては微細なパター
ンとした。
【0058】以上のようにして作製した分散液202と
基板201を用いた電気泳動による超電導微粉末の電着
装置の概要を示したのが図10である。図10では前記
の分散液202を、磁気スターラ205に設置した槽2
20に注入する。次に、導電性薄膜パッド部203a,2
03bにリード線を接続した基板201を槽220中の
分散液202に浸漬する。前記パッド部203a,203
bに接続したリード線は槽220外の極性切替のスイッ
チ208を介して直流定電圧電源8の電極ターミナルに
接続されている。
【0059】以上のように電気泳動装置の準備をした
後、磁気スターラ205を作動させ、分散液202中の
超電導微粉末を均一に分散させた状態にした上で、先
ず、パッド部203aが負電位、パッド部203bが正電
位になるように電圧を100Vにした電源204に接続
して5分間保持することで、導電性薄膜の電極206a
とパッド部203a上に、アセトン中に分散させた超電
導微粉末を電気泳動により堆積させた。続いて、スイッ
チ208を切替えて電源204のターミナルへのリード
線の接続を変えて、パッド部203aが正電位、パッド
部203bが負電位に接続して前と同じように100V
の電圧を印加して、5分間保持し、導電性薄膜の電極2
06bとパッド部203b上に、前記と同じように、超電
導微粉末を堆積させた。
【0060】以上のように導電性薄膜上に超電導微粉末
を堆積させた基板201を空気中で900℃で3時間の
熱処理を行う超電導微粉末の焼結と、続いて450℃で
3時間保持することによる酸素組成比の制御を行った
後、室温まで徐冷する工程からなる熱処理により酸化物
超電導膜の作製を行った。
【0061】以上の条件で形成した酸化物超電導膜の膜
厚は10μmであった。また、微細なパターンの導電性
薄膜電極206a,206bのパターン通りの精度のよい
超電導膜が形成できていた。
【0062】以上のように作製した超電導膜には、図1
2に示したように、パターン203a,203b上に電流
電極209a,209bおよび電圧電極210a,210bと
超電導膜の接続部211をメタルマスクを用いたTiの
真空蒸着法で形成した。このTi薄膜のリード線接続用
電極209,210にはそれぞれAgペーストによる測定
用のリード線を接続し、その4本のリード線を用いた通
常の4端子法により作製した酸化物超電導膜の電気抵抗
値の温度依存性を測定し、その結果を示したのが図13
である。図13の横軸は温度(K)で、縦軸が電気抵抗を
300Kの値との比率で示している。この図13から分
かるように、本実施例で作製した超電導膜は電気抵抗が
零になる臨界温度は80Kであった。
【0063】さらに、作製した超電導膜は基板上に形成
した導電薄膜の形状通りに精密な形状であることが分か
った。これにより本発明による超電導膜の製造方法は、
その製造条件により目的の粒界をもつ酸化物超電導材料
の精密なパターン膜の作製に適していることが確認でき
た。
【0064】なお、上記の第13実施例で用いた絶縁性
基板207上の導電性薄膜203a,206aと、これに
対向させた正電位の導電電極を設ける従来の電気泳動法
にした以外は、第13実施例と同じにした比較例の超電
導膜は、薄膜203aのパターン通りにならないで、薄
膜203aの近くで印加電界にまわり込みで生じたと考
えられる乱れができ、パターン形状に精度の低下がみら
れた。
【0065】以上の比較例では、基板上と対向して設け
た電極の間にかなりの高電圧を印加しても、その電極間
の間隔は、第13実施例と比較すれば大きくなり、か
つ、その間の電圧の勾配が小さくなるので導電性薄膜の
近くにまわり込み電界ができ、それに沿う微粉末の堆積
が生じたと考えられる。
【0066】以上の比較例に対しての前記の第13実施
例で説明した本発明の方法は、近接して設けた導電性薄
膜の間に電気泳動の電圧を印加するので、その印加電圧
は薄膜の周辺に集中し電界の勾配が大きくなるので、電
界が拡がることもなくなり、精密なパターンの超電導膜
を高密度に形成するのに適していることを確認した。
【0067】さらに、本発明による前記第13実施例の
導電性薄膜を電極にした交流の印加でも電気泳動に電着
が可能なことを確認した。この第13実施例では、直流
電源を用いてスイッチにより切り換える方法であった
が、交流電源によって0.1Hzで実効電圧2.0Vの正
弦波の交流を印加する方法においても両方の導電性薄膜
上に電気泳動による超電導微粉末が堆積していた。この
交流電圧による電気泳動は、その作製条件を改良して成
膜効率やその膜質などの改良を図ることが可能である。
【0068】以上の本発明の第13実施例では、1枚の
絶縁性基板上の導電性薄膜のみで電気泳動の超電導膜を
堆積したものであるが、作製する超電導膜の形状が線状
のみでないときや分散液の微粉末を有効に使用したいと
きなどは、上記の他に、従来用いられていた対向電極を
設けてもよい。
【0069】さらに、第13実施例で用いた絶縁性基板
上の導電性薄膜の材料も銀(Ag)に限ることなく、白金
(Pt)、銅(Cu)などを用いることができる。
【0070】以上は本発明の酸化物超電導膜の製造を、
第13実施例によって説明したが、本発明は実施例によ
って限定されるものでなく、作製した超電導膜の用途に
合う特性にするため、超電導微粉末の製造方法や、その
超電導微粉末の電気泳動による堆積条件である電極間に
印加する電界強度、分散液中のその微粉末の濃度および
堆積時間などや、その後の熱処理などの条件を適宜調整
することが可能である。また使用する超電導微粉末も実
施例の固体反応法で作製したY1Ba2Cu37-xの組成の
微粉末に限定せず、例えば共沈法やスプレー法などによ
り作製した微粉末を用いることもできる。さらに、酸化
物超電導体も第13実施例のY系に限らず、Bi−Sr−
Ca−Cu−O系、Tl−Ba−Ca−Cu−O系等や、その
他NbやV等などの化合物超電導体などもその微粉末の
表面に弱結合をもつ加工をすることで同じ効果をもつ超
電導膜を形成することができる。その他絶縁性基板の材
料もYSZのみでなく、MgO、SrTiO3等を用いるこ
とができる。以上のように本発明の効果が得られる範囲
で変更した実施が可能である。
【0071】本発明の第13実施例は近接させて設けた
2つの導電性薄膜の間に電気泳動で超電導微粉末を電着
させる電圧を印加するので、微細超電導膜のパターンを
精度よく形成できるとともに、前記の印加電圧の極性を
切替えることで、双方の導電性薄膜上に超電導膜を形成
でき、絶縁性基板を有効に利用できる。さらに、形成し
た超電導膜の粒界に弱結合を形成できるので、超電導エ
レクトロニクスの種々のデバイスの作製を容易にするも
のである。
【0072】次に、この発明の第14実施例の超電導膜
の製造方法を詳細に説明する。
【0073】最初に、電気泳動法により超電導膜を形成
するのに用いる分散液302(図15に示す)を作製する
手順について説明する。超電導膜としては、Y系高温酸
化物超電導材料といわれる組成Y1Ba2Cu37-xのもの
を作製する。
【0074】まず、Y23、BaCO3およびCuOの各
粉末原料(いずれも純度99.99%以上)を、それぞれ
Y、Ba、Cuの元素組成比が1:2:3になるよう秤量
し、充分に混合する。この後、空気中で900℃で5時
間の熱処理を行って、酸化物を合成する。次に、合成し
た酸化物を粉砕および混合し、その粉末をプレス機で1
500kg/cm2の圧力をかけてペレット状(直径9mm、厚
さ1mm)に成型する。成型したペレットに空気中で95
0℃で5時間の熱処理を加えた後、再度粉砕して微粉末
にする。この微粉末に空気中で950℃に3時間保持す
る熱処理を加えた後、ふるいのメッシュを通して粒径の
選別を行って、この微粉末の平均粒径が約1μmになる
ように調整する。このように、固体反応法によって超電
導微粉末を作製する。そして、有機溶媒であるアセトン
40mlに上記超電導微粉末0.5gを分散させて、分散液
302を作製する。
【0075】次に、超電導薄膜を形成すべき基板301
を作製する手順について説明する。
【0076】まず、図14に示すように、YSZ(ジル
コニア(ZrO2)をイットリウム(Y)で安定化したもの)
からなる絶縁性基板307を用意する。この絶縁性基板
307上に、電子ビーム蒸着法により、導電膜として膜
厚200nmの銀薄膜を蒸着する。そして、硝酸鉄55g
とエチレングリコール100ccと純水25ccとの混合液
を用いて、蒸着した銀薄膜をウエットエッチング法によ
り加工して、所定のパターン(ミアンダーパターン)の薄
膜電極306aおよびパッド部303aを形成する。この
上に、レジストを塗布して、このレジストに所定の開口
を設け、さらに、電子ビーム蒸着法により、導電膜とし
て膜厚200nmの銀薄膜を蒸着する。そして、リフトオ
フ法により、不要箇所の銀薄膜を除去して、薄膜電極3
06bおよびパッド部303b(銅の対向電極)を形成す
る。このようにして、絶縁性基板307上に、銀(Ag)
からなる薄膜電極306aと銅(Cu)からなる薄膜電極3
06bと所定の距離だけ離間して形成する(基板301の
作製)。なお、この例では、薄膜電極306a,306bの
電極線幅はそれぞれ200μm、100μmとし、薄膜
電極306a,306b間の距離は100μmとした。
【0077】次に、電気泳動法により、上記基板30
1上に超電導薄膜を形成する手順について説明する。
【0078】まず、図15に示すように、分散液302
を、磁気スターラ305に設置した槽310に注入す
る。次に、基板301のパッド部303a,303bにリ
ード線を接続し、基板301を槽310内の分散液30
2中に浸漬する。パッド部303a,303bに接続した
リード線は直流電圧電源304の電極ターミナルに接続
する。次に、磁気スターラ305を作動させて、分散液
302中の超電導微粉末を均一に分散させる。この状態
で、定電圧電源304によって、パッド部303aが負
電位、パッド部303bが正電位になるように100V
の電圧を印加して20秒間保持する。これにより、薄膜
電極306aとパッド部303a上に、分散液302中の
超電導微粉末を堆積させる。このとき、正電位側の薄膜
電極306bが銅からなっているので、正電位側から負
電位側へ銀のマイグレーションが起こることはない。し
たがって、負電位側の薄膜電極306aのパターン形状
通りに精密に超電導微粉末を堆積することができる。続
いて、基板301を分散液302から取り出して、次の
ような熱処理を行う。まず、空気中で900℃に3時間
保持して、堆積した超電導微粉末を焼結する。続いて、
450℃に3時間保持して酸素組成比の制御を行った
後、室温まで徐冷する。これにより、組成Y1Ba2Cu3
7-xの酸化物超電導膜の形成を完了する。
【0079】実際に、上に述べた手順および条件で形成
した酸化物超電導膜の膜厚は30μmであった。また、
薄膜電極306aの微細なパターン通りの精度の良い超
電導膜を形成できた。なお、上記正電位側の薄膜電極3
06bはマイグレーションを起こさなければ良く、金ま
たは白金であっても良い。
【0080】形成した超電導膜の超電導特性を測定する
ために、真空蒸着法によりTiをマスク蒸着して、パッ
ド部303a,303a上にリード線接続用電極(電流電極
および電圧電極)を形成した。さらに、各リード線接続
用電極に、それぞれAgペーストを用いて測定用のリー
ド線を2本ずつ接続した。そして、4端子法により、上
記酸化物超電導膜の電気抵抗値を測定したところ、図1
6に示すような測定結果となった。図16(横軸は温
度、縦軸は電気抵抗を表している。)から分かるよう
に、作製した超電導膜は臨界温度Tcが90Kであっ
た。また、堆積した超電導膜は図14に示した薄膜電極
306aのパターン形状通りに精密に形成される一方、
薄膜電極306a自体は超電導膜の900℃焼成時に凝
集して導電経路を構成しなくなった。したがって、図1
7に示すように、上記超電導膜の磁気抵抗効果による抵
抗変化を効率良く検出できた。この超電導膜の磁気抵抗
の測定は、77Kの液体窒素温度で行い、超電導膜に流
す電流をパラメーターとした。このように、作製した超
電導膜の臨界温度Tcが90Kレベルと高く、また、臨
界電流密度も適当な大きさであることが分かった。した
がって、この超電導膜を用いて構成したデバイスの使用
温度範囲を広くとることができ、動作電流密度を高める
ことができる。したがって、超電導磁気抵抗効果による
磁気抵抗の変化を、従来に比して大きな電圧変化として
取り出すことができる。
【0081】なお、当然ながら、超電導膜の用途に合わ
せて、電気泳動法に用いる超電導微粉末の作製条件や分
散液302中の濃度を適宜変化させても良い。また、電
気泳動法による堆積条件、例えば薄膜電極306a,30
6b間に印加する電界強度、電極間距離、堆積時間など
の条件を適当に調整することも可能である。また、使用
する超電導微粉末は、上に述べた固体反応法で作製した
1Ba2Cu37-xの組成の微粉末に限定せず、例えば共
沈法やスプレー法などにより作製した微粉末を用いるこ
ともできる。その他、絶縁性基板307の材料もYSZ
のみでなく、MgO、SrTiO3等を用いることができ
る。
【0082】以上より明らかなように、この発明の第1
4実施例の超電導膜の製造方法は、互いに離間して並ぶ
一対の導電膜を被着した基板を、超電導物質の材料を分
散した溶媒中に浸漬した状態で、上記一対の導電膜のう
ちの一方を負電位、他方を正電位に保持して、電気泳動
法により、上記負電位側の導電膜上に上記超電導物質を
堆積させる場合に、上記負電位側の導電膜を銀とする一
方、上記正電位側の導電膜を銅、金、または白金として
いるので、超電導特性の良い超電導膜を、加工精度良く
高密度にパターン形成することができる。したがって、
外部微弱磁界を高感度に検出できる磁気センサをはじ
め、超電導エレクトロニクスの種々のデバイスを容易に
作製することができる。
【0083】次いで、本発明の第15実施例の酸化物超
電導膜の製造方法を図面を参照して説明する。
【0084】先ず、第15実施例の電気泳動の電着法に
使用した超電導微粉末及び酸化銀微粉末について説明す
る。この超電導微粉末はY系高温酸化物超電導材料とい
われるY1Ba2Cu37-xの組成であり、次のような方法
で作製した。
【0085】純度のよい粉末原料(純度99.99%以
上)のY23、BaCO3およびCuOを、それぞれに含ま
れたY、BaおよびCu元素組成比が1:2:3になるよ
う秤量し、充分に混合した後、空気中で900℃で5時
間の熱処理を行って酸化物を合成した。合成した酸化物
は続いて粉砕および混合を行った後、その粉末をプレス
機で1500kg/cm2の圧力をかけペレット(直径9mm、
厚さ1mm)に成型した。成型したペレットは、空気中で
950℃で5時間の熱処理を行った上、再度粉砕して微
粉末にした後、空気中で950℃で3時間の熱処理を行
った。以上のように作製した微粉末は、ふるいのメッシ
ュを通して粒径の選別を行い、この実施例に使用する酸
化物超電導微粉末にしたが、この微粉末の平均粒径は約
1μmになるように調整した。酸化銀微粉末(Ag2O)に
ついては市販のもの((株)高純度化学研究所製)を用い
た。
【0086】以上で作製したY系酸化物超電導微粉末お
よび市販の酸化銀微粉末を有機溶媒として用いたアセト
ンに分散させた。この分散液402は(図19に示す)
は、アセトン40mlに対し、超電導微粉末0.5g、酸化
銀微粉末0.025gの割合、すなわち重量比5wt%で分
散させた。
【0087】次に、本実施例に用いた基板401を以下
のように準備した。この基板401は、図19で平面図
を示したように、イットリウム(Y)で安定化したジルコ
ニア(ZrO2)であるYSZの絶縁基板407の表面上に
形成すべき超電導膜のパターンにした銅(Cu)の導電性
薄膜電極406aと、これと一定の距離をおいて同じ銅
(Cu)材料の導電性薄膜電極406bとを有している。そ
れぞれの電極406a,406bには導電性薄膜電極パッ
ド部403a,403bが設けられている。以上の薄膜電
極406a,406bおよびパッド部403a,403bは、
電子ビーム加熱により真空蒸着した膜厚200nmのCu
薄膜を、塩化第二鉄を用いたウエットエッチング法を用
いて同時にパターニングして形成した。なお、以上で説
明した薄膜電極406a,406bの電極線幅はそれぞれ
200μm、100μm、電極間距離は100μmとい
う微細なパターンとした。
【0088】以上のようにして作製した分散液402と
基板401を用いた電気泳動による超電導微粉末の電着
装置の概要を示したのが図19である。図19は前記の
分散液402を、磁気スターラ405に設置した槽41
0に注入する。次に、導電性薄膜パッド部403a,40
3bにリード線を接続した基板401を槽410中の分
散液402に浸漬する。前記パッド部403a,403b
に接続したリード線は直流定電圧電源404の電極ター
ミナルに接続されている。以上のように電気泳動装置の
準備をした後、磁気スターラ405を作動させ、分散液
402中の超電導微粉末および酸化銀微粉末を均一に分
散させた状態にした。この上で、先ず、パッド部403
aが負電位、パッド部403bが正電位になるよう電圧を
100Vにした定電圧電源404に接続して20秒間保
持し、導電性薄膜の電極406aとパッド部403a上
に、アセトン中に分散させた超電導微粉末および酸化銀
微粉末に電気泳動により堆積させた。以上のように導電
性薄膜上に超電導微粉末を堆積させた基板401を空気
中で900℃で3時間の熱処理を行うことで超電導微粉
末および酸化銀微粉末の焼結を行い、続いて450℃で
3時間保持することによる酸素組成比の制御を行った
後、室温まで徐冷する工程からなる熱処理により酸化物
超電導膜の作製を行った。以上の条件で形成した酸化物
超電導膜の膜厚は30μmであった。また、微細なパタ
ーンの導電性薄膜電極406aのパターン通りの精度の
よい超電導膜が形成できていた。
【0089】以上のように作製した超電導膜には、パッ
ド部上に電流電極および電圧電極と超電導膜の接続部を
メタルマスクを用いたTiの真空蒸着法で形成した。こ
のTi薄膜のリード線接続用電極はそれぞれAgペースト
による測定用のリード線を接続した。その4本のリード
線を用いた通常の4端子法により作製した酸化物超電導
膜の電気抵抗値の温度依存性を測定し、その結果を示し
たのが図20である。図20の横軸は温度(K)で、縦軸
が電気抵抗を示している。この図20から分かるよう
に、本実施例で作製した超電導膜は電気抵抗がゼロにな
る臨界温度は90Kであった。
【0090】また、作製した超電導膜は基板上に形成し
た導電性薄膜の形状通りに精密に形成されていた。さら
に詳細に測定を行った結果、負電位としたため超電導膜
が形成された銅薄膜は酸化されて高抵抗となっていた。
この結果、超電導薄膜のみの導電経路が生じる状態とな
って、超電導磁気抵抗効果による抵抗変化が効率良く検
出できた。このように作製した超電導膜の磁気抵抗特性
を図21に示す。温度は77Kで測定し、超電導膜に流
す電流をパラメータとしている。また、臨界温度Tc,en
dも90Kレベルと高く、酸化物超電導で作製したデバ
イスの使用温度範囲も広くとれ、また、臨界電流密度も
適当な大きさであるため、超電導磁気抵抗効果による磁
気抵抗の変化をより大きな電圧変化とて取り出すことが
できる。
【0091】以上は本発明の酸化物超電導膜の作製条件
を第15実施例によって説明したが、本発明は結晶粒界
に起因した磁気抵抗効果を大きく取り出すため、超電導
微粉末に銀酸化物微粉末を添加し堆積させて行う。銀酸
化物微粉末の添加する割合を限定したが、本発明はこの
第15実施例によって限定されるものでなく、作製した
超電導の用途に合う特性にするため、超電導微粉末の製
造方法や、その超電導微粉末の電気泳動による堆積条件
である電極間に印加する電界強度、電極間距離、分散液
中のその微粉末の濃度および堆積時間などの条件を適当
に調整することが可能である。また、使用する超電導微
粉末も実施例の固体反応法で作製したY1Ba2Cu37-x
の組成の微粉末に限定せず、例えば共沈法やスプレー法
などにより作製した微粉末を用いることできる。また、
銀酸化物微粉末に関しても限定せず、各種手法により作
製したものを用いることも可能である。その他絶縁性基
板の材料もYSZのみでなく、MgO、SrTiO3等を用
いることができる。以上のように本発明の効果が得られ
る範囲で変更した実施が可能である。
【0092】このように、この発明の第15実施例の超
電導膜の製造方法は、高温超電導体における結晶粒界に
起因する磁気抵抗効果の大きな超電導膜を形成し、その
効果を効率良く外部に取り出すことができる。その結
果、外部微弱磁界を高感度で検出できる磁気センサをは
じめ、超電導エレクトロニクスの種々のデバイス作製を
容易にするものである。
【0093】
【発明の効果】以上より明らかなように、この発明の酸
化物超電導膜の製造方法は、有機溶媒に酸化物超電導微
粉末を分散させた溶液中に、銅の電極を形成した基板を
浸漬して、該電極上に電気泳動法により形成した前記酸
化物超電導微粉末の堆積膜の焼結を、真空または不活性
ガス雰囲気で行い、続いて、酸素または空気等の酸素を
含む雰囲気中で、酸素組成比制御の熱処理を行うので、
銅基板の表面にCuO層が形成されるのを防止でき、銅
基板の上に特性の優れた酸化物超電導膜を形成すること
ができる。
【0094】また、上記酸素組成比制御の熱処理温度が
500℃以下で、かつ、300℃以上の範囲である場
合、CuO層形成を効果的に抑制することができる。
【0095】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、酸化物超電導微粉末を分散させた有機溶媒中に、
所定のパターンの導電膜を表面に形成した絶縁基板を浸
漬し、負電位に保持した前記導電膜上に前記酸化物超電
導微粉末を堆積させた後、熱処理を行う酸化物超電導膜
の製造方法において、前記絶縁基板上の導電膜に銀の薄
膜を用いるので、基板材料の酸化による超電導体の劣化
を防止できる。
【0096】また、上記酸化物超電導微粉末を堆積され
るパターン化した銀の導電膜に近接させて、該酸化物超
電導微粉末の堆積において正電位に保持する導電膜を形
成する場合、正電位の導電膜と負電位の導電膜との間に
集中した電界を形成でき、したがって、超電導微粉末を
パターン精度良く堆積できる。
【0097】また、上記堆積した超電導微粉末を880
℃から935℃の範囲で焼成する場合、上記導電膜を凝
集させて常電導経路を消失させることができ、磁気抵抗
効果および光応答特性を向上させることができる。
【0098】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、超電導微粉末を分散した有機溶媒中に絶縁性基板
上に所定のパターンに形成した導電性膜を浸漬して負電
位に保持し、前記導電性膜上に前記超電導微粉末を堆積
させる超電導膜の製造方法において、前記絶縁性基板上
の導電性膜のパターンが近接した一定間隔になる2本の
並行な形状であり、該2本の導電性膜間の保持電圧差に
より超電導微粉末の堆積を行い、かつ前記2本の導電性
膜の保持電圧の切替をするので、両方の導電性薄膜上に
超電導膜を堆積することができる。したがって、絶縁性
基板を有効に利用して高密度に超電導膜を形成すること
ができる。しかも、両導電性薄膜間に集中した電界を形
成でき、パターン精度を向上させることができる。
【0099】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、互いに離間して並ぶ一対の導電膜を被着した基板
を、超電導物質の材料を分散した溶媒中に浸漬した状態
で、上記一対の導電膜のうちの一方を負電位、他方を正
電位に保持して、電気泳動法により、上記負電位側の導
電性薄膜上に上記超電導物質を堆積させる場合に、上記
負電位側の導電性薄膜を銀とする一方、上記正電位側の
導電性薄膜を銅、金、または白金としているので、超電
導特性の良い超電導膜を、加工精度良く高密度にパター
ン形成することができる。したがって、外部微弱磁界を
高感度に検出できる磁気センサをはじめ、超電導エレク
トロニクスの種々のデバイスを容易に作製することがで
きる。
【0100】また、この発明の酸化物超電導膜の製造方
法は、超電導微粉末を分散した有機溶媒中に絶縁性基板
上に所定のパターンを形成した導電性膜を浸漬して負電
位に保持し、前記導電性膜上に前記超電導微粉末を堆積
させる超電導膜の製造方法において、前記超電導微粉末
を分散させた有機溶媒中に酸化銀の微粉末を添加してい
るので、微粒子からなるセラミック構造を有する超電導
膜を形成でき、超電導膜の磁気抵抗特性および光応答特
性を向上させることができる。
【0101】また、上記酸化銀微粉末を超電導微粉末に
対して重量比0.5から10%の割合で有機溶媒に分散
させた場合、作製された超電導膜の磁気抵抗特性および
光応答特性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電気泳動による超電導微粉末膜の熱処理プロ
グラムを説明する図である。
【図2】 電気泳動による膜堆積装置の概要を示した断
面図である。
【図3】 第1乃至第11実施例により作製した酸化物
超電導膜の電気抵抗の温度依存性を示した図である。
【図4】 この発明の第12実施例により作製した酸化
物超電導膜の諸特性の焼成温度依存性を示した図であ
る。
【図5】 超電導微粒子の堆積に用いた銀薄膜電極パタ
ーンを示した平面図である。
【図6】 電気泳動による堆積膜作製装置の概要を示し
た断面図である。
【図7】 基板上の超電導膜で作製した磁気抵抗素子を
示す平面図である。
【図8】 第12実施例により作製した酸化物超電導膜
の電気抵抗の温度依存性を示す図である。
【図9】 第12実施例により作製した超電導磁気抵抗
素子におけるバイアス電流を変えたときの感度特性を示
す図である。
【図10】 電気泳動による膜堆積装置の概要を示した
断面図である。
【図11】 堆積に用いた基板を示す平面図である。
【図12】 基板上の超電導膜で作製した超電導デバイ
スを示す平面図である。
【図13】 第13実施例により作製した酸化物超電導
膜の電気抵抗の温度依存性を示す図である。
【図14】 堆積に用いた基板を示す平面図である。
【図15】 上記基板に酸化物超電導膜を堆積するとき
の状態を示す図である。
【図16】 第14実施例により作製した酸化物超電導
膜の電気抵抗の温度依存性データを示す図である。
【図17】 上記酸化物超電導膜の磁気特性データを示
す図である。
【図18】 堆積に用いた基板を示す平面図である。
【図19】 電気泳動による堆積膜作製装置の概要を示
す断面図である。
【図20】 第15実施例により作製した酸化物超電導
膜の電気抵抗の温度依存性を示す図である。
【図21】 上記酸化物超電導膜の磁気特性データを示
す図である。
【符号の説明】
1,101,201,301,401 基板 2,102,202,302,402 分散液 3a,3b,103a,103b,203a,203b,303a,3
03b,403a,403b 電極パッド部 4,104,204,304,404 直流定電圧源 5,105,205,305,405 磁気スターラ 6a,6b,106a,106b,206a,206b,306a,3
06b,406a,406b 導電性薄膜電極 7,107,207,307,407 絶縁性基板(YSZ) 109a,109b,209a,209b 電流電極パッド部 110a,110b,210a,210b 電圧電極パッド部 120,220,310,410 分散液槽
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C25D 1/14 ZAA 8414−4K (31)優先権主張番号 特願平3−143205 (32)優先日 平3(1991)6月14日 (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 長田 昌也 大阪府大阪市阿倍野区長池町22番22号 シ ヤープ株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機溶媒に酸化物超電導微粉末を分散さ
    せた溶液中に、銅の電極を形成した基板を浸漬して、該
    電極上に電気泳動法により形成した前記酸化物超電導微
    粉末の堆積膜の焼結を、真空または不活性ガス雰囲気で
    行い、続いて、酸素または空気等の酸素を含む雰囲気中
    で、酸素組成比制御の熱処理を行うことを特徴とする酸
    化物超電導膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1における酸素組成比制御の熱処
    理温度が500℃以下で、かつ、300℃以上の範囲で
    あることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導膜
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 酸化物超電導微粉末を分散させた有機溶
    媒中に、所定のパターンの導電膜を表面に形成した絶縁
    基板を浸漬し、負電位に保持した前記導電膜上に前記酸
    化物超電導微粉末を堆積させた後、熱処理を行う酸化物
    超電導膜の製造方法において、 前記絶縁基板上の導電膜に銀の薄膜を用いたことを特徴
    とする酸化物超電導膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項3の酸化物超電導微粉末を堆積さ
    せるパターン化した銀の導電膜に近接させて、該酸化物
    超電導微粉末の堆積において正電位に保持する導電膜を
    形成することを特徴とする請求項3に記載の酸化物超電
    導膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項3の堆積した超電導微粉末を、8
    80℃から935℃の範囲で焼成することを特徴とする
    請求項3に記載の酸化物超電導膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 超電導微粉末を分散した有機溶媒中に絶
    縁性基板上に所定のパターンに形成した導電性膜を浸漬
    して負電位に保持し、前記導電性膜上に前記超電導微粉
    末を堆積させる超電導膜の製造方法において、 前記絶縁性基板上の導電性膜のパターンが近接した一定
    間隔になる2本の並行な形状であり、該2本の導電性膜
    間の保持電圧差により超電導微粉末の堆積を行い、かつ
    前記2本の導電性膜の保持電圧の切替をすることを特徴
    とする酸化物超電導膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記超電導微粉末の堆積中の2本の導電
    性膜の保持電圧の切替が、定電圧電源からの接続の極性
    を切替える接続であることを特徴とする請求項6に記載
    の酸化物超電導膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記2本の導電性膜上に形成した超電導
    膜の一方の先端部を導電性膜により電気的に接続するこ
    とを特徴とする請求項6に記載の酸化物超電導の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記絶縁性基板上に形成した2本の導電
    性薄膜の他に、該絶縁性基板に対向する位置に正電位に
    保持する導電性電極を設けたことを特徴とする請求項6
    または7に記載の酸化物超電導膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 互いに離間して並ぶ一対の導電膜を被
    着した基板を、超電導物質の材料を分散した溶媒中に浸
    漬した状態で、上記一対の導電膜のうちの一方を負電
    位、他方を正電位に保持して、電気泳動法により、上記
    負電位側の導電膜上に上記超電導物質を堆積させる超電
    導膜の製造方法において、 上記負電位側の導電膜は銀からなる一方、上記正電位側
    の導電膜は銅、金、または白金からなることを特徴とす
    る酸化物超電導の製造方法。
  11. 【請求項11】 超電導微粉末を分散した有機溶媒中に
    絶縁性基板上に所定のパターンを形成した導電性膜を浸
    漬して負電位に保持し、前記導電性膜上に前記超電導微
    粉末を堆積させる超電導膜の製造方法において、 前記超電導微粉末を分散させた有機溶媒中に酸化銀の微
    粉末を添加したことを特徴とする酸化物超電導膜の製造
    方法。
  12. 【請求項12】 上記酸化銀微粉末を超電導微粉末に対
    して重量比0.5%から10%の割合で有機溶媒に分散
    させたことを特徴とする請求項11に記載の酸化物超電
    導膜の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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