JPH0569601B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

産業上の利用分野 本発明は、カラーテレビブラウン管のシヤドウ
マスク用鉄−ニツケル基合金材料の製造方法に関
するものであり、特には電子ビーム通過用の孔を
穿孔するためのエツチング時のスジむらの発生を
抑制しうるシヤドウマスク用鉄−ニツケル基合金
材料の製造方法に関する。本発明に従い製造され
たシヤドウマスク材料は、高精細マスクの作製を
可能とし、高品位カラーテレビやコンピユーター
のデイスプレイ用シヤドウマスク分野で有益に利
用される。 発明の背景 カラーテレビブラウン管のシヤドウマスク材と
しては一般に軟鋼（リムド鋼あるいはアルミキル
ド鋼）が知られている。カラーテレビブラウン管
内では電子銃から出る電子ビームがシヤドウマス
クの微小孔を通過して蛍光スクリーン上の所定の
点に精密に照射されて、特定の色調を与える。と
ころが、電子ビームは全部シヤドウマスクの微小
孔を通過するわけではなく、シヤドウマスクの微
小孔を通過せずにシヤドウマスクに射突する電子
ビームによつてシヤドウマスクは加熱される。そ
のため、シヤドウマスクは、熱膨張により、いわ
ゆるドーミングと呼ばれる変形を起こす。その結
果、シヤドウマスクと蛍光スクリーンとの位置関
係にずれが起り、電子ビームが正確に蛍光スクリ
ーンに照射されなくなり、色純度が低下するとい
う問題があつた。 この問題を解決するために、熱膨張係数の小さ
いアンバーのような鉄−ニツケル基合金をシヤド
ウマスク材として使用することが提案された。 従来技術 しかし、このような鉄−ニツケル基合金シヤド
ウマスク材を通常の製造工程、例えばリードフレ
ーム用42合金材と同様の製造工程（連続鋳造（電
磁攪拌なし）−熱間圧延−酸洗、研摩−冷間圧延
−焼鈍−冷間圧延、以降所定板厚まで焼鈍、冷間
圧延を適宜繰り返す）で製造すると、シヤドウマ
スク材に電子ビーム通過用の孔を穿孔するための
エツチングをした際スジむらが発生した。このス
ジむらは、エツチングしたシヤドウマスクを透過
光（斜光）で観察すると、圧延方向と平行に多数
のスジが見える現象である。軟鋼でも圧延方向と
平行にスジが発生することがあるが、これは軟鋼
中の非金属介在物が原因であることがわかつてい
る。しかし、アンバーのような鉄−ニツケル基合
金の場合には、合金中の非金属介在物を減少させ
てもスジむらは消失せず、鉄−ニツケル基合金固
有の原因があると考えられ、改善が望まれてい
た。 そこで、本件出願人は先に、鉄−ニツケル基合
金材のスジむらについて種々の研究を行ない、そ
の結果、スジむらの原因はニツケル、マンガン等
の成分偏析であり、偏析部は母材部とエツチング
性に差があるため、エツチング孔壁面に凹凸がで
き、これらがスジ状に見えることを解明した。そ
こで、本件出願人は、この偏析によるスジむらを
解消するために、鉄−ニツケル基合金インゴツト
を850℃以上で且つ融点以下の温度で加熱し、１
ヒート又は２ヒート以上で、断面現象率40％以上
の条件で鍛造する製造方法を提案した（特開昭60
−128253）。 発明が解決しようとする課題 上記鍛造方法により確かにスジむら解消の効果
は得られた。しかし、特にドーミングによる色純
度の低下が問題になる高精細のコンピユーターの
デイスプレイ用シヤドウマスクでは、まだ、十分
スジむらが解消できない問題があつた。また、前
記鍛造を行なう方法であると、作業性が悪く、イ
ンゴツトを連続鋳造で製造するわけにはいかない
ので、コスト的にも不利であつた。 従つて、本発明の目的は、連続鋳造の採用を可
能ならしめる、コスト的に有利な方法でエツチン
グ時のスジむら発生を一層充分に解消する方法を
新たに開発することである。 発明の概要 本発明者らは、これらの問題について種々の検
討を行つた結果、偏析は主に鋳造スラブの中心部
で起こることが判明し、その為、加熱法が基本的
には最も効果的との結論に達した。しかし、連続
鋳造により製造したスラブを加熱し、成分偏析に
よるスジむらを完全に解消するためには、加熱時
間を非常に長くしなければならず、コスト的に問
題なうえ、スラブの酸化が重大な問題となる。そ
こで、検討を重ねたところ、鋳造時に電磁攪拌を
行うことで、加熱時の酸化問題を伴わず、成分偏
析によるスジむらを完全に解消することに成功し
た。鋳造時の攪拌効果と加熱による拡散効果をう
まく利用することにより、スジむらの完全解消が
実現されたのである。 この知見に基づいて、本発明は、電磁攪拌を行
いながら連続鋳造した鉄−ニツケル基合金材料を
1100〜1400℃の温度に加熱しそして熱間圧延を行
うことを特徴とする、エツチング時のスジむらの
発生を抑制しうるシヤドウマスク用鉄−ニツケル
基合金材料の製造方法を提供する。 発明の具体的説明 本発明において、「鉄−ニツケル基合金」とは
ニツケルを30〜45重量％含有する材料を基本と
し、適宜Cr、Mn、Co、Ti、Ｖ、Nb、Zr、Mo、
Al、Ｗ等の副成分や添加材を５重量％まで添加
したものを包括する。 シヤドウマスクの一般的製造工程は次の通りで
ある： 材料の溶解及び鋳造後適宜の圧延等の工程を経
由し、そして最終冷間加工にて所定の厚さを有す
るシヤドウマスク素材が製造される。シヤドウマ
スク素材はエツチング穿孔加工されてフラツトマ
スクとなる。フラツトマスクは焼鈍されてプレス
成形性を付与されその後プレスにより球面成形さ
れる。球面成形されたマスクは、黒化処理を施さ
れてシヤドウマスクとなる。プレス成形性を付与
する焼鈍を最終圧延直後に実施する方式もあり、
これはプレアニール法と呼ばれている。もう少し
詳しく説明すると、先ずシヤドウマスク素材の製
造方法として鉄−ニツケル基合金材料を例えば
VOD炉で溶製後、インゴツトに鋳造し、鍛造後
熱間圧延及び冷間圧延し、その後焼鈍と冷間圧延
を繰り返し、所定の厚みまで最終冷間圧延が施さ
れる。その後、スリツトして所定板幅としてシヤ
ドウマスク素材を得る。シヤドウマスク素材は、
脱脂後、フオトレジストを両面に塗布しそしてパ
ターンを焼付けて現像後、エツチング液にてエツ
チング穿孔加工され、個々に切断されてフラツト
マスクとなる。 フラツトマスクは、非酸化性雰囲気中で焼鈍さ
れてプレス成形性を付与される（プレアニール法
ではこの焼鈍がエツチング前に最終冷間圧延材に
行われる。）レベラー加工を経た後、プレスによ
りマスク形態に球面成形される。 そして最後に、球面成形されたマスクは、脱脂
後、水蒸気又は燃焼ガス雰囲気中で黒化処理を施
されて表面に黒色酸化膜を形成する。こうしてシ
ヤドウマスクが作製される。 更には、前述の様な製造工程を取らず、エツチ
ング穿孔後のフラツトマスクについて再結晶焼鈍
やプレスによる球面成形を行わないで、張力を付
加した状態でフレーム等に固定し黒化処理後ブラ
ウン管に組み込む製造方式もある。 次に本発明を構成する条件の限定理由を説明す
る。 本発明においては、連続鋳造時に電磁攪拌によ
り、板厚中心部に発生する偏析を板厚方向に分散
させることを特徴とするものであり、その結果、
爾後の加熱により容易に成分偏析の解消を可能な
らしめたものである。電磁攪拌は、溶融金属に強
い磁場を適用し同時に鋳型の両端に置かれた電極
に直流を流すことにより、電流の通じる溶融金属
中に生じる磁場と外部磁場との相互作用によつて
攪拌効果を得るものである。電磁攪拌は中心部偏
析の低減に非常に有効な手段である。従つて、電
磁攪拌はできるだけ凝固位置に近いところで行う
のが好ましい。電磁攪拌は、連続鋳造性を損なわ
ない程度に行なえばよく、攪拌の程度は、設備、
処理容量等に応じて適宜決定されうる。 次に、成分偏析を拡散により解消するための加
熱条件であるが、1100℃未満では成分偏析の拡散
による解消が十分でなく、他方1400℃を超えると
極く短時間でも酸化が著しくなるため、加熱温度
は1100〜1400℃とする。尚、この加熱は成分偏析
の拡散と熱間圧延のための加熱を兼ねることが製
造コスト上からも好ましい。 以上のような方法を用いれば、従来中心偏析が
強くシヤドウマスク用としては不適当だつた連続
鋳造による製造が可能になり、従来不可欠であつ
た鍛造工程を省略することができる。 こうして偏析低減のための電磁攪拌を行いなが
ら鋳造し、偏析解消のための条件で熱間圧延を行
つた後、酸洗い、冷間圧延及び再結晶焼鈍を所要
数繰り返し、最終冷間圧延を行い、シヤドウマス
ク用素材とする。 この後、前述したように、電子ビーム通過用の
孔がエツチングにより穿孔されるが、この際に本
発明によればスジむらの発生が最大限に抑制され
るのである。 次に実施例及び比較例を示し、本発明を詳しく
説明する。 実施例及び比較例 鉄−ニツケル基合金としてはアンバー（36％
Ni−残Fe）を用いた。合金はVOD炉で溶製後、
電磁攪拌有りと無しの２種類の方法で連続鋳造し
た（スラブ厚150mm）。 次に、第１表に示す各種条件で熱間圧延を行い
板厚５mmとした。 その後、酸洗、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延、焼
鈍、冷間圧延により、板厚0.15mmのシヤドウマス
ク素材を製造した。 このようにして製造された素材を実際に高精細
マスクにエツチング穿孔し、スジむらの評価を行
つた。その結果を第１表に併せて示す。

【表】 第１表から明らかなように、本発明例は高精細
マスクにおいてもスジむらを発生しない。 発明の効果 このように、鉄−ニツケル基合金材料を電磁攪
拌を行いながら連続鋳造した後、特定の条件で熱
間圧延することにより支障なく成分偏析によるス
ジむらを解消することができる。このため、エツ
チング孔を精密に生成出来、しかも、製造コスト
上有利な連続鋳造材が高精細マスクとして使用で
きるようになり、カラーテレビやコンピユーター
デイスプレイ用カラーブラウン管の高画質化と低
コスト化に大きく貢献する。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 電磁攪拌を行いながら連続鋳造した鉄−ニツ
   ケル基合金材料を1100〜1400℃の温度に加熱しそ
   して熱間圧延を行うことを特徴とする、エツチン
   グ時のスジむらの発生を抑制しうるシヤドウマス
   ク用鉄−ニツケル基合金材料の製造方法。