JP3509643B2 - 薄板化した後のエッチング性に優れた低熱膨張合金鋼スラブおよびその製造方法 - Google Patents

薄板化した後のエッチング性に優れた低熱膨張合金鋼スラブおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、シャドウマスク、
サーモスタット等の各種温度調整機器等に使用される低
熱膨張合金鋼、特にコンピューターディスプレイ、高輝
度大型テレビジョン用ブラウン管等に使用される高精細
用シャドウマスクに好適な優れたエッチング特性を持つ
低膨張合金鋼およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】合金薄板を素材とするシャドウマスク等
の電子部品は、一般にエッチング加工を経て製造される
が、特にシャドウマスクについては、その製品品質の良
否はエッチング速度、エッチング後の孔部両端の形状や
寸法精度等に依るところが大きい。
【0003】以下、これをブラウン管用のシャドウマス
クを例に説明する。シャドウマスクはテレビジョン、コ
ンピュターディスプレイ等のブラウン管に使用されてお
り、一般にその素材としては0.1〜0.3mm程度の
板厚まで圧延された低熱膨張合金薄板が使用される。シ
ャドウマスクは、電子銃から照射された電子ビームを、
ガラス体によって支持された黒色外光吸収膜の蛍光面上
にある所定の位置に正確に照射することによって、画像
に特定の色調を与える。そのため100〜300μm程
度の微細なエッチング孔がシャドウマスク全面に開孔さ
れる。電子ビームは非開孔部を含めたマスク全面に照射
されるため、使用中のシャドウマスクはその全面にわた
って加熱され、高温になる。
【0004】従来からシャドウマスクの素材として用い
られてきた低炭素鋼は、体積膨張率に対する温度感受性
が比較的高いために、電子ビームの照射によって加熱さ
れると熱膨張現象を生じ、この結果、開孔部が移動して
しまい電子ビームを正確に照射することができなかっ
た。そのために画像が曖昧なものとなり、鮮明な画像が
得られないという問題があった。このため近年では、高
品質シャドウマスク用素材としてFe−36%Ni(ア
ンバー合金)が広く用いられている。アンバー合金は従
来用いられてきた低炭素鋼と比べて熱膨張率が約1/1
0程度であるため、上記のような熱膨張に起因した画像
の不鮮明化が生じにくい。
【0005】Fe−Ni系合金薄板は連続鋳造法によっ
てスラブを鋳造し、次いで熱間圧延、冷間圧延及び焼鈍
の各工程を経て製造される。この合金薄板をフォトエッ
チング加工することによって電子ビームの通過孔を形成
した後、焼鈍、成形加工及び黒化処理等の工程を経て、
シャドウマスク用素材が製造される。しかし、シャドウ
マスク用素材であるFe−Ni系合金薄板は、優れた低
熱膨張特性を有する一方でエッチング特性に劣る難点が
あり、フォトエッチング加工で良好な孔形状を得ること
が難しい。このためエッチング不良により局部的に画像
の鮮明度不良を生じることがある。
【0006】一方において、近年ではテレビジョン画面
の大型化やシャドウマスクのコンピューターディスプレ
イ等への適用拡大に伴い、画像のきめ細かさや高輝度化
への要求がさらに高まってきており、このためにはシャ
ドウマスクの電子ビームの通過孔をより高精度に穿孔す
る必要が生じている。従来、シャドウマスクを製造する
際に微細な孔をエッチング面内において高精度に穿孔す
るために、エッチング技術の向上とともに素材材質の向
上が図られてきたが、上述したようなアンバー合金特有
の局部的なエッチング不良に起因する孔形状の不良を効
果的に改善することは難しかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】シャドウマスクのエッ
チング不良は、マスク部において合金薄板の圧延方向に
沿った微細な線状のむらとして観察され、“スジむら”
と呼ばれている。このスジむらの多くは数十μm〜数m
m程度の幅を有し、マスク部の一辺から他辺に達する。
従来、このようなスジむらはNiの偏析や不純物の偏析
が原因で発生することが知られており、このようなスジ
むらを抑制するために幾つかの技術が提案されている。
【0008】例えば、特開平9−176797号公報に
は、特定の成分組成の下で結晶粒度を結晶粒度番号で
5.0以上に調整したエッチング穿孔特性、耐共振性及
び耐座屈性に優れたシャドウマスクが提案されている。
また、特開平9−143625号公報には、Niの偏析
と同じ位置のSi、Mn、Pの成分濃度差の規制により
スジむらの発生を抑制する方法が提案されている。しか
し、これら従来技術のような結晶粒の微細化や成分濃度
差の規制だけでは、高精度なエッチング特性を得ること
は不可能である。
【0009】また、特公平7−78270号公報には、
等軸晶率が30%以下の連続鋳造スラブでは1100℃
以上で1時間以上の加熱を、等軸晶率が30%未満の連
続鋳造スラブでは950℃以上で1時間以上の加熱をそ
れぞれ行うことで、スジむらの発生を抑制する方法が提
案されている。しかし、等軸晶率の大小によって加熱条
件を変更しただけでは、特に微細なエッチング孔を高精
度に穿孔する必要のあるコンピューターディスプレイ用
のシャドウマスク等において、スジむらを安定して解消
することは不可能である。
【0010】このように従来技術ではスジむら等のエッ
チング不良を完全に解消することはできず、近年求めら
れているような高品質シャドウマスクを安定して製造す
ることは困難である。したがって本発明の目的は、シャ
ドウマスクに適用した場合に画像の鮮明度の低下をもた
らすスジむら等のエッチング不良が発生せず、且つ孔形
状の良好な高精度のエッチング加工が可能であり、シャ
ドウマスク等の高品質化の要求に十分に応えられる合金
薄板を得ることが可能な低膨張合金鋼スラブを提供する
ことにある。また、本発明の他の目的は、このような低
膨張合金鋼スラブを得るのに好適な製造方法を提供する
ことにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Fe−N
i系低熱膨張合金薄板のエッチング特性について種々検
討を行った結果、上述したスジむらをはじめとするエッ
チング不良が、熱間圧延および冷間圧延時に伸延された
スラブ内部の凝固組織の形態、具体的には、凝固組織の
結晶粒の形態ではなくデンドライトのアーム間隔に大き
く影響されるという事実を見い出した。
【0012】すなわち、Fe−Ni系合金のスラブは加
熱炉で加熱昇温および均熱処理を施された後、熱間圧延
されるが、加熱炉で高温、長時間の均熱処理を行うとス
ラブ表面には厚い酸化スケールが生成し、その後のスラ
ブの手入れが必要となる。このためスラブを均熱する場
合には均熱温度が低く、且つ均熱時間が短い方が工程的
には有利である。しかし、均熱温度が低いとFeおよび
Ni原子の拡散が十分に行われないために、FeとNi
の濃度偏析が残存してしまう恐れがある。一般に、上記
の原子拡散が十分になされるためには1200℃以上で
均熱することが必要である。
【0013】フォトエッチングの際に最も問題となるの
は上述したFeとNiの偏析である。Niは粒界に偏析
する元素ではなく、Feデンドライト主軸間、つまりデ
ンドライト樹間に排出される。したがって、結晶粒その
ものだけに注目した従来技術(例えば、特開平9−17
6797号公報)では、このようなFeとNiの偏析の
問題は改善できないことが判った。
【0014】本発明者らが上記の知見事実に基づきさら
に検討を重ねた結果、スラブの冷却速度等を制御するこ
とによりデンドライトアームの間隔を特定の条件に調整
し、デンドライトアーム間隔に不可避的に存在するNi
濃化部位間の距離を制御することによって、優れたエッ
チング特性をもつ低熱膨張合金鋼スラブが製造できるこ
とを見い出した。また、このような低熱膨張合金鋼スラ
を得るための製造条件についても検討を行い、スラブ
のデンドライトアーム間隔を安定して1000μm以下
とすることができる鋳造条件を見い出した。
【0015】本発明はこのような知見に基づきなされた
もので、その特徴は、Ni:30〜45重量%を含有す
るFe−Ni系合金からなり、連続鋳造法により鋳造
れた厚さ120mm〜500mmのスラブであって、
ンドライトアームの間隔が1000μm以下に制御され
たことを特徴とする、薄板化した後のエッチング性に優
れた低熱膨張合金鋼スラブである
【0016】また、本発明の低熱膨張合金鋼の製造方法
の特徴は以下の通りである。[1] Ni:30〜45重量
%を含有するFe−Ni系合金からなる厚さ120mm
〜500mmスラブを連続鋳造法により鋳造する際に、
連続鋳造時の溶鋼の温度と液相線温度との差ΔT(℃)
を、 ΔT≦30 とするとともに、連続鋳造時の電磁撹拌の磁束密度B
(Gauss)と冷却速度V(℃/min)が下記(1)式および
(2)式の関係を満足することを特徴とする、薄板化した
後のエッチング性に優れた低熱膨張合金鋼スラブの製造
方法。 0≦B≦500の場合 2.0−B/1000≦V … (1) 500<Bの場合 1.5≦V … (2)
【0017】[2] Ni:30〜45重量%を含有するF
e−Ni系合金からなる厚さ120mm〜500mmス
ラブを連続鋳造法により鋳造する際に、連続鋳造時の溶
鋼の温度と液相線温度との差ΔT(℃)を、 30<ΔT≦50 とするとともに、連続鋳造時の電磁撹拌の磁束密度B
(Gauss)と冷却速度V(℃/min)が下記(3)式および
(4)式の関係を満足することを特徴とする、薄板化した
後のエッチング性に優れた低熱膨張合金鋼スラブの製造
方法。 0≦B≦500の場合 2.2−B/1000≦V … (3) 500<Bの場合 1.7≦V … (4)
【0018】ここで、本発明で規定するデンドライトア
ーム間隔は以下のように定義される。図1はスラブのデ
ンドライトが方向性をもって成長した所謂柱状晶の場合
のデンドライトを示すもので、同図(a)はスラブ断面
のデンドライトの模式図、同図(b)は同図(a)の矢
印線に沿った部分でのNi濃度分布を示すグラフであ
る。また、図2はスラブのデンドライトの方向性がラン
ダムな所謂等軸晶の場合のデンドライトを示すもので、
同図(a)はスラブ断面のデンドライトの模式図、同図
(b)は同図(a)の矢印線に沿った部分のNi濃度分
布を示すグラフである。本発明では図1(b)、図2
(b)に示されるNi濃度分布の隣り合うピーク部間の
間隔をデンドライトアーム間隔と定義する。
【0019】また、一般にデンドライトアーム間隔はス
ラブ厚さ方向で一定ではなく、スラブ厚み方向の中心ほ
ど大きくなる傾向があるが、本発明では最大のデンドラ
イトアーム間隔(通常、スラブ厚み方向の1/2近辺の
デンドライトアーム間隔)を1000μm以下とする必
要がある。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細とその限定理
由について説明する。本発明の低熱膨張合金鋼はNiを
30〜45重量%含有するFe−Ni系合金であり、こ
のようなFe−Ni系合金は電子部品の性能を低下させ
る寸法変化や位置ずれを生じにくい低熱膨張性を有して
いる。このようなFe−Ni系合金を用いることによ
り、室温〜100℃の平均熱膨張係数が2.0×1/1
/℃以下であるような低熱膨張合金薄板を得ること
ができる。なお、本発明の低熱膨張合金鋼では、所望の
低熱膨張特性が得られる範囲内においてNiの一部を置
換する元素としてCoを添加してもよい。
【0021】本発明の低熱膨張合金鋼は、本発明の効果
が損なわれない限度でNiおよびFe以外の他の元素、
例えばSi、Mn、B、N、O等を含有してもよいが、
これらの含有量については、Si:0〜0.07重量%
(但し、無添加の場合を含む)、Mn:0〜0.5重量
%(但し、無添加の場合を含む)、B:0〜0.02重
量%(但し、無添加の場合を含む)、N:0〜0.00
5重量%(但し、無添加の場合を含む)、O:0〜0.
01重量%(但し、無添加の場合を含む)の範囲に制限
することが好ましい。
【0022】Siは溶鋼の脱酸元素として添加すること
ができるが、過剰に添加すると黒化処理において板表層
に濃化し、均質な黒色の酸化膜の形成を阻害する。この
ためSiは0.07重量%以下とすることが好ましい。
Mnは良好な熱間加工性を確保する上で有用な元素であ
るが、過剰に添加するとエッチング性を低下させ、また
黒化処理において板の表層に濃化し、均質な黒色の酸化
膜の形成を阻害する。このためMnは0.5重量%以下
とすることが好ましい。
【0023】Bは熱間加工性の向上やスケール生成を抑
制する効果があるが、過剰に添加すると黒化処理におい
て板表層に濃化し、均質な黒色の酸化膜の形成を阻害す
る。このためBは0.02重量%以下とすることが好ま
しい。Nはプレス加工性の劣化やエッチング性の劣化を
もたらすため、0.005重量%以下とすることが好ま
しい。Oはプレス前の軟質化焼鈍時に結晶粒の成長を阻
害し、プレス成形性を劣化させるので、0.01重量%
以下とすることが好ましい。また、合金中には上記以外
に不可避的不純物等の他の元素が微量含まれることは妨
げない。
【0024】本発明の低熱膨張合金鋼スラブは、連続鋳
造法により鋳造され、デンドライトアームの間隔が10
00μm以下に制御されることを特徴とし、低熱膨張合
金薄板は、このようなデンドライトアーム間隔が制御さ
れたスラブを加熱・均熱して熱間圧延した後、冷間圧延
及び焼鈍工程を経て製造される。本発明が規定するよう
にスラブのデンドライトアーム間隔を短くすると、デン
ドライト樹間に偏析したNi原子を短い均熱時間で効果
的に拡散させることが可能となり、この結果、デンドラ
イトアーム間隔のNi濃化部に起因するスジむら等のエ
ッチング不良を解消することができる。
【0025】図3は、スラブのデンドライトアーム間隔
がエッチング特性に及ぼす影響をスラブの均熱時間(ス
ラブ均熱温度:1300℃)との関係で示したものであ
る。このエッチング特性の評価では、エッチング加工後
の孔の形状や界面に異常が見られず、寸法精度が±2%
以下であるものを“○”、それ以外のもの(エッチング
性に問題のあるもの)を“×”としてある。図3によれ
ば、デンドライトアーム間隔を1000μm以下とした
スラブでは、均熱温度1300℃で約20時間以上の均
熱処理を行うことにより、デンドライトアーム間隔に不
可避的に存在するNi濃化部に起因するスジむらが解消
され、優れたエッチング特性が得られることが示されて
いる。これに対してデンドライトアーム間隔が1000
μmを超えるスラブでは、長時間の均熱処理を行っても
デンドライトアーム間隔のNi濃化部に起因するスジむ
らを解消することができず、エッチング特性は劣ってい
る。
【0026】スラブのデンドライトアーム間隔は、例え
ば、鋳造時のスラブの冷却速度を制御したり、或いはモ
ールド内での電磁撹拌等によりデンドライト晶出を制御
すること等により調整することが可能である。特に、デ
ンドライトアーム間隔はスラブの冷却速度に依存する傾
向があり、デンドライトアーム間隔を短くするには鋳造
時のスラブの冷却速度を大きくすることが有効である。
また、スラブのデンドライト間隔を短くするにはスラブ
鋳造の際の溶湯鋳込み温度をなるべく低くすること、さ
らには、適度な強度に制御された電磁撹拌を実施して微
細な等軸晶的デンドライトを晶出させることも有効であ
る。
【0027】本発明の低熱膨張合金鋼スラブを得るため
には、合金鋼を転炉、電気炉、その他の溶鋼溶製炉で溶
解して、連続鋳造法でスラブを鋳造する。通常、このス
ラブ厚は120〜500mm程度である。そして、この
スラブの所望のデンドライトアーム間隔を得るために、
例えば、スラブ鋳造の際の溶湯鋳込み温度の調整や二次
冷却帯での冷却条件の調整等によって冷却速度をコント
ロールし、若しくはモールド内で適度な強度に制御され
た電磁撹拌を実施すること等により微細な等軸晶的デン
ドライトを晶出させ、或いはこれらを適宜組み合せて実
施する。
【0028】以下、本発明の低熱膨張合金鋼スラブを得
るための好ましい製造条件について説明する。スラブの
鋳造時における冷却速度、電磁撹拌の強さ、溶湯鋳込み
温度等がデンドライトアーム間隔の大きさに及ぼす影響
はそれぞれ異なる。デンドライトアーム間隔が1000
μm以下のスラブはその凝固組織に拘りなく製造可能で
あリ、例えば、凝固組織が柱状晶の場合でも冷却速度を
比較的大きくすることによりデンドライトアーム間隔を
1000μm以下にすることが可能である。一方、凝固
組織を等軸晶化した場合には冷却速度がある程度小さく
てもデンドライトアーム間隔を1000μm以下にする
ことが容易であり、したがって、デンドライトアーム間
隔が1000μm以下のスラブを比較的容易に且つ安定
して製造するためには凝固組織を等軸晶化することが有
利である。本発明者らは、鋳造されたスラブのデンドラ
イトアーム間隔を1000μm以下とするための好適な
製造条件、特に凝固組織を等軸晶化することでデンドラ
イトアーム間隔を1000μm以下とするのに好適な製
造条件を見い出した。
【0029】溶湯鋳込み温度は低い方が凝固組織の等軸
晶化には有利であり、この溶湯鋳込み温度(鋳造時の溶
鋼温度)と液相線温度との差ΔT(溶鋼過熱度)が50
℃を超えてしまうと、凝固組織の等軸晶化の達成が難し
くなる。このためΔTは50℃を超えない範囲とするこ
とが好ましい。また、凝固組織の等軸晶化に与える影響
はΔTによって異なるので、ΔT≦30の場合と30<
ΔT≦50の場合とに分けて製造条件の検討を行い、そ
の結果、以下のような製造条件を採用することによりス
ラブのデンドライトアーム間隔を安定して1000μm
以下にできることが判った。
【0030】まず、連続鋳造時の溶鋼温度と液相線温度
との差ΔTがΔT≦30の場合、電磁撹拌の磁束密度B
(Gauss)が0≦B≦500の時には、電磁撹拌の磁束
密度B(Gauss)と冷却速度V(℃/min)との関係が下
記(1)式、 2.0−B/1000≦V … (1) を満足することにより、また、電磁撹拌の磁束密度B
(Gauss)が500<Bの時には、電磁撹拌の磁束密度
B(Gauss)と冷却速度V(℃/min)との関係が下記
(2)式、 1.5≦V … (2) を満足することにより、鋳造されるスラブのデンドライ
トアーム間隔を1000μm以下とすることができる。
ここで、上記磁束密度B(Gauss)とは空芯時の磁束密
度である(以下同様)。
【0031】また、連続鋳造時の溶鋼温度と液相線温度
との差ΔTが30<ΔT≦50の場合、電磁撹拌の磁束
密度B(Gauss)が0≦B≦500の時には、電磁撹拌
の磁束密度B(Gauss)と冷却速度V(℃/min)との関
係が下記(3)式、 2.2−B/1000≦V … (3) を満足することにより、また、電磁撹拌の磁束密度B
(Gauss)が500<Bの時には、電磁撹拌の磁束密度
B(Gauss)と冷却速度V(℃/min)との関係が下記
(4)式、 1.7≦V … (4) を満足することにより、鋳造されるスラブのデンドライ
トアーム間隔を1000μm以下とすることができる。
【0032】したがって、本発明の低熱膨張合金鋼スラ
の好ましい製造条件としては、連続鋳造時の溶鋼の温
度と液相線温度との差ΔT(℃)がΔT≦30の場合、
連続鋳造時の電磁撹拌の磁束密度B(Gauss)と冷却速
度V(℃/min)が下記(1)式および(2)式の関係を満足
することが好ましい。 0≦B≦500の場合 2.0−B/1000≦V … (1) 500<Bの場合 1.5≦V … (2)
【0033】また、連続鋳造時の溶鋼の温度と液相線温
度との差ΔT(℃)が30<ΔT≦50の場合、連続鋳
造時の電磁撹拌の磁束密度B(Gauss)と冷却速度V
(℃/min)が下記(3)式および(4)式の関係を満足する
ことが好ましい。 0≦B≦500の場合 2.2−B/1000≦V … (3) 500<Bの場合 1.7≦V … (4)
【0034】鋳造されたスラブは加熱・均熱された後、
熱間圧延に供されるが、スラブを熱間圧延するに当たっ
て、デンドライト樹間に偏析したNi原子を拡散させる
ためには高温での均熱処理が不可欠となる。Fe中での
Ni原子の拡散係数は他の混入原子に比べて非常に小さ
く、普通炭素鋼で行うような温度での均熱処理では不十
分であるからである。本発明者らがNi原子の拡散の度
合いを均熱時間に応じてモデリング化したところ、デン
ドライトアーム間隔を1000μm以下に制御したスラ
ブに対する1300℃近辺での均熱条件では、Ni原子
の拡散に必要な時間は約20時間以上であるという結果
を得た。すなわち、1300℃×20時間以上の均熱処
理を行えばスラブ中のNi偏析を十分に低減化でき、デ
ンドライトアーム間隔に不可避的に存在するNi濃化部
に起因するスジむらを効果的に解消できることが判っ
た。
【0035】但し、50時間以上の均熱処理を行うとス
ラブの表層スケール量が増大するため、スラブ手入れの
コストや工程的負担が増大し、また加熱炉のエネルギー
ロスも大きくなるので、均熱時間は50時間以内とする
ことが好ましい。熱間圧延された合金鋼は、常法に従い
1回以上の冷間圧延及び焼鈍処理を経て合金薄板が製造
される。
【0036】
【実施例】以下、シャドウマスク用合金薄板を製造し
て、フォトエッチング加工を施した実施例について説明
する。表1に示す成分組成のFe−Ni合金を溶製して
連続鋳造法でスラブを鋳造した。このスラブの鋳造で
は、冷却速度等を制御し且つ必要に応じて電磁撹拌を実
施することにより、スラブのデンドライトアーム間隔を
調整した。鋳造されたスラブを加熱して表2および表3
に示す所定の条件で均熱処理した後、熱間圧延して板厚
2.0〜4.0mmの熱延鋼板を得た。さらに、冷間圧
延と700℃以上の焼鈍を1〜4回実施し、板厚0.0
9〜0.25mmnの合金薄板を製造した。
【0037】これらの低熱膨張合金薄板をエッチング加
工し、シャドウマスク用合金薄板を得た。そして、これ
らのシャドウマスク用合金薄板について、エッチング加
工後の孔の形状や界面に異常が見られず、寸法精度が±
2%以下であるもの(高品質、高輝度の要求を満たすこ
とができるもの)を“○”、それ以外のもの(エッチン
グ性に問題があり、高品質、高輝度の要求を満たすこと
ができないもの)を“×”としてエッチング性の評価を
行った。
【0038】エッチング性評価の結果を、スラブ鋳造条
件(溶鋼過熱度、冷却速度及び電磁撹拌の磁束密度)、
デンドライトの形態およびデンドライトアーム間隔、ス
ラブの均熱処理条件とともに表2および表3に示す。表
2および表3によれば、本発明例のシャドウマスク用合
金素材は、比較例に較べて優れたエッチング特性が得ら
れることが判る。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】以上述べたように本発明の低熱膨張合金
スラブから得られる合金薄板は優れたエッチング特性
を示し、このためシャドウマスクに適用した場合に、画
像の鮮明度の低下をもたらすスジむら等のエッチング不
良が発生せず、且つ孔形状の良好な高精度のエッチング
加工が可能であり、従来技術では製造できなかった高品
質、高輝度のシャドウマスクの製造を可能ならしめるも
のである。また本発明の製造方法によれば、このような
低熱膨張合金鋼のスラブを安定して製造することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】方向性をもって成長した柱状晶のデンドライト
とそのNi濃度分布を示す説明図
【図2】方向性がランダムな等軸晶のデンドライトとそ
のNi濃度分布を示す説明図
【図3】スラブのデンドライトアーム間隔がエッチング
特性に及ぼす影響をスラブの均熱時間との関係で示すグ
ラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 有賀 珠子 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−8213(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/00 B22D 11/115 B22D 11/22 C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni:30〜45重量%を含有するFe
    −Ni系合金からなり、連続鋳造法により鋳造された厚
    さ120mm〜500mmのスラブであって、デンドラ
    イトアームの間隔が1000μm以下に制御されたこと
    を特徴とする、薄板化した後のエッチング性に優れた低
    熱膨張合金鋼スラブ
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のスラブを素材とするエ
    ッチング性に優れた低熱膨張合金鋼薄板。
  3. 【請求項3】 Ni:30〜45重量%を含有するFe
    −Ni系合金からなる厚さ120mm〜500mmのス
    ラブを連続鋳造法により鋳造する際に、連続鋳造時の溶
    鋼の温度と液相線温度との差ΔT(℃)を、 ΔT≦30 とするとともに、連続鋳造時の電磁撹拌の磁束密度B
    (Gauss)と冷却速度V(℃/min)が下記(1)式および
    (2)式の関係を満足することを特徴とする、薄板化した
    後のエッチング性に優れた低熱膨張合金鋼スラブの製造
    方法。 0≦B≦500の場合 2.0−B/1000≦V … (1) 500<Bの場合 1.5≦V … (2)
  4. 【請求項4】 Ni:30〜45重量%を含有するFe
    −Ni系合金からなる厚さ120mm〜500mmのス
    ラブを連続鋳造法により鋳造する際に、連続鋳造時の溶
    鋼の温度と液相線温度との差ΔT(℃)を、 30<ΔT≦50 とするとともに、連続鋳造時の電磁撹拌の磁束密度B
    (Gauss)と冷却速度V(℃/min)が下記(3)式および
    (4)式の関係を満足することを特徴とする、薄板化した
    後のエッチング性に優れた低熱膨張合金鋼スラブの製造
    方法。 0≦B≦500の場合 2.2−B/1000≦V … (3) 500<Bの場合 1.7≦V … (4)
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