JPH0559832B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はオフセツト印刷機における湿し水供給
装置に関し、一層詳細には、版胴の版面に供給す
る湿し水の量を好適に調整すると共に、前記版面
の軸線方向における湿し水の量を部分的に選択す
ることを可能にした超音波式湿し水供給装置に関
する。

一般に、オフセツト印刷ではインキと湿し水と
が境界をつくることにより、着肉部（画線部）に
はインキだけが付着し、一方、保水部（非画線
部）には水だけが付着して所望の印刷物が得られ
る。すなわち、油分を含むインキと水との反発現
像により鮮明な印刷物を得ることが可能であり、
このため、版面に供給される湿し水の量は前記版
面の幅方向に対して正確に調整されることが望ま
しい。

従来技術に係るオフセツト印刷機では、金属製
の軸にゴムを巻き、その上に布等を巻装したロー
ラによつて構成される湿し水装置が広汎に採用さ
れてきた。この場合、版胴の版胴への湿し水の供
給は水移しローラを往復移動させ、これによつて
湿し水を間欠的に隣接する他のローラに転移させ
るものであるため、湿し水の供給量の微妙な調整
が困難となる不都合が存在していた。また、前記
ローラに装着される布は所定期間経過後に交換す
ることが必要であり、このために当該布等の頻繁
な巻き換え作業が作業者にとつて極めて繁雑とな
る欠点が指摘されていた。

そこで、湿し水供給量の微妙な調整を容易に
し、布等の頻繁な巻き換えの煩わしさをなくすた
めに、回転軸にゴムだけを巻回して構成されるロ
ーラを用いた湿し水の連続供給装置が採用される
に至つている。この種の湿し水の連続供給装置を
第１図に示す。

すなわち、この湿し水供給装置は、水舟２に貯
留された水にその一部を浸漬された水出しローラ
４を回転させることにより、その表面に水膜を付
着させ、ライダローラ６により水量を調整した上
で、次に、水移しローラ８にその水膜を転移させ
ている。次いで、長手方向に所定の往復移動をす
る水均しローラ１０にその水膜を転移し、さらに
水着けローラ１２に転移させることにより、最終
的に版胴１４の版面１６へ湿し水の供給を行つて
いる。

ところが、この種の湿し水装置において、各ロ
ーラ４乃至１２のニツプで湿し水の厚さが均一化
されるとき、過剰な湿し水が、図中、斜線で示す
各ローラ４乃至１２および版面１６の両端部分に
移行し、前記部分に付着するという傾向があつ
た。この結果、前記過剰な湿し水がインキを乳化
させたり、版面から他の部分に飛散したり、ま
た、インキ供給側へ移行して印刷に悪影響を与え
るという欠点があつた。しかも、印刷物の中には
その絵柄等により版面上の水膜の厚さを部分的に
増減させる場合があるが、前記装置ではこのよう
な水膜厚さの部分的選択は不可能である。

さらにまた、第２図に従来技術に係る他の湿し
水供給装置を示す。すなわち、この場合、水出し
ローラ４ａにはブラシローラ１８が当接してお
り、前記ブラシローラ１８から所定間隔離間して
水均しローラ１０ａを配置している。さらに、前
記水均しローラ１０ａには水着けローラ１２ａを
介して版胴１４ａが当接している。ここで、水出
しローラ４ａを回転させてその表面に水膜を付着
させ、ブラシローラ１８により前記水膜を水均し
ローラ１０ａに飛散供給し、最終的に版胴１４ａ
にこの湿し水を転移させている。

然しながら、前記の従来技術では、ブラシロー
ラ１８により飛散供給される水滴の径が水均しロ
ーラ１０ａ上において不均一となる場合が多い。
このため、最終的に、版胴１４ａ上に供給される
湿し水の水膜厚さが軸線方向に対して不均一とな
り、印刷精度の低下を惹起させてしまう。しか
も、ブラシローラ１８を使用する場合にも、版胴
１４ａの軸線方向において部分的に水膜厚さを変
化させることが出来ず、精度の高い印刷を行うこ
とが困難となる不都合が生ずる。

本発明は前記の不都合を克服するためになされ
たものであつて、複数の超音波振動子の作用下に
夫々所定量の湿し水を霧化し、前記霧状の湿し水
を所定長さの幅員を有する複数の開口部からロー
ラ、若しくは、版胴に直接供給することにより、
前記版胴の版面上の湿し水の量を好適に調整する
と共に、必要に応じて前記版面の幅方向における
湿し水の量を部分的に選択することを可能にした
湿し水供給装置を提供することを目的とする。

前記の目的を達成するために、本発明は、印刷
機を構成する版胴の軸線方向に延在する水槽と、 前記水槽内に所定間隔離間して配設される複数
の超音波素子と、 前記複数の超音波素子に対応して前記水槽の上
方に設けられ、各超音波素子の作用下に発生し霧
化された湿し水を前記版胴の所定の部分に個別に
供給するために夫々所定の長さを有し且つ違いに
遮断された複数の開口部と、 前記夫々の開口部に連通し、各開口部に対して
夫々所定圧の空気を導入することにより前記水槽
から霧化される湿し水を前記各開口部から外部に
導出するための複数の空気供給用通路と、 を備えることを特徴とする。

次に、本発明に係る湿し水供給装置について好
適な実施例を挙げ、添付の図面を参照しながら以
下詳細に説明する。

第３図において、参照符号２０は本発明に係る
湿し水供給装置を示す。この場合、前記湿し水供
給装置２０は下部本体部２２ａと上部本体２２ｂ
とを含み、前記下部本体部２２ａは鉛直方向に後
述するローラ群と平行に延在すると共に、その上
部には一体的に形成された円筒部２４ａ乃至２４
ｎを有する。夫々の円筒部２４ａ乃至２４ｎには
送風管２６ａ乃至２６ｎを連結している。さら
に、下部本体部２２ａの略中央部には湿し水供給
用給水管２８を接続し、前記下部本体部２２ａの
下端部には排水管２９を連通させておく。一方、
上部本体部２２ｂは、第３図から諒解されるよう
に全体として偏平状に形成され、特に、夫々の円
筒部２４ａ乃至２４ｎの上端部側を内方に屈曲し
て最終的に複数個の中空直方体を構成している。
上部本体部２２ｂには円筒部２４ａ乃至に対応し
て横断面略長方形状の開口部３０ａ乃至３０ｎを
画成し、前記開口部３０ａ乃至３０nbは湿し水
供給装置２０内において一体的に連通状態とな
る。

第４図に示すように、湿し水供給装置２０の内
部にはその長手方向に延在する壁部３２ａ，３２
ｂにより水槽３４を形成しておく。前記水槽３４
には給水管２８の一端部が液密に固着されてお
り、さらにこの水槽３４の所定の位置に前記給水
管２８より所定の高さで孔部３６ａ，３６ｂを穿
設する。

そこで、前記水槽３４内の底部３８に夫々の円
筒部２４ａ乃至２４ｎに対応して電圧方式による
超音波振動子４０ａ乃至４０ｎを配設する。この
場合、夫々の超音波振動子４０ａ乃至４０ｎに接
続されるコード４２ａ乃至４２ｎは図示しない超
音波発振器に接続しておく。

本発明に係る湿し水供給装置は基本的には以上
のように構成されるものであり、次にその作用並
びに効果について説明する。

そこで、本発明に係る湿し水供給装置をオフセ
ツト印刷機を構成する版胴４４の近傍に配設す
る。すなわち、湿し水供給装置２０の上方に所定
間隔離間して水均しローラ４６を配設し、前記水
均しローラ４６と版胴４４との間に水着けローラ
４８を介装する。この場合、水均しローラ４６の
軸線を湿し水供給装置２０の長手方向に対応させ
ており、さらに、この水均しローラ４６は図示し
ない駆動源の作用下に所定方向に回転すると共に
矢印Ｃ方向に変位可能に構成されている。

このようにして本発明に係る湿し水供給装置を
所定の位置に配置して後、図示しないタンク等か
ら給水管２８に湿し水を供給すると、前記湿し水
は水槽３４内に導入される。その際、前記水槽３
４内の湿し水の水面が所定の高さより高くなる
と、壁部３２ａ，３２ｂに穿設された孔部３６
ａ，３６ｂから排水管２９を介して外部に排出さ
れる。従つて、水槽３４内の湿し水の水面高さは
常に均一に保つことが出来る。しかも、幅狭な水
槽３４の略中央部から湿し水を供給するため、前
記水槽３４内に貯留される湿し水の水温は全体に
亘り均一となる。

次いで、図示しな超音波発振器を駆動して超音
波振動子４０ａ乃至４０ｎの夫々に所定の高周波
電圧を印加する。この場合、前記超音波振動子４
０ａ乃至４０ｎにより湿し水は霧化されるもので
あり、前記霧状の湿し水の粒径は夫々の超音波振
動子４０ａ乃至４０ｎを介して励起される超音波
の振動数により決定される。従つて、予め、前記
振動数を選択して霧状の湿し水の粒径を印刷物に
対応させて所定の値に設定しておくと好適であ
る。また、夫々の超音波振動子４０ａ乃至４０ｎ
に印加される電圧は版胴４４に供給する湿し水の
量により決定され、例えば、前記版胴４４の軸線
方向に対し均一な水膜を供給する場合には、夫々
の超音波振動子４０ａ乃至４０ｎに同じ値の電圧
を印加すればよい。

ところで、版胴４４に供給する水膜の厚さは印
刷物の絵柄等により部分的に選択可能にしておく
ことが望ましい。そこで、本実施例では、版胴４
４の軸線方向において夫々の部位に供給される湿
し水の量を第５図に示すように設定する。すなわ
ち、夫々の開口部３０ａ乃至３０ｎから水均しロ
ーラ４６に供給する霧状の湿し水の量を種々選択
し、例えば、開口部３０ａ，３０ｆ，３０_o-5並
びに３０ｎからは極めて少量の湿し水を供給す
る。このため、第５図に示すように版胴４４に供
給する湿し水の量を調整する際には、超音波振動
子４０ａ，４０ｆ，４０_o-5並びに４０ｎ等に小
さな電圧を印加し、超音波振動子４０ｃおよび４
０_o-2等にはこれより所定量大きな電圧を印加し、
超音波振動子４０ｂ，４０ｄ，４０ｅ，４０_o-4，
４０_o-3並びに４０_o-1等にはさらに大きな電圧を
印加すればよい。そして、送風管２６ａ乃至２６
ｎには図示しないポンプ等から所定圧の空気を導
入する。

このようにして、夫々の超音波振動子４０ａ乃
至４０ｎに所定圧の電圧を印加すると、水槽３４
内の湿し水は前記超音波振動子４０ａ乃至４０ｎ
により円筒部２４ａ乃至２４ｎ内において夫々所
定量霧化される。次いで、霧状となつた湿し水は
夫々の開口部３０ａ乃至３０ｎから外部に導出
し、湿し水装置２０の上方に配設された水均しロ
ーラ４６に付着する。その際、夫々の送風管２６
ａ乃至２６ｎからは湿し水供給装置２０内に所定
圧の空気が供給されるため、前記霧状の湿し水は
この送風管２６ａ乃至２６ｎから導入される所定
速度の空気流によつて搬送され水均しローラ４６
に好適に付着することが出来る。そこで、この水
均しローラ４６を所定方向に回転させると共に矢
印Ｃに示す方向に変位させると、これに付着した
湿し水は水着けローラ４８に転移し、さらに前記
水着けローラ４８から版胴４４に移送される。従
つて、この版胴４４の軸線方向には、第５図に示
すように、部分的に付着する量を異にする湿し水
の水膜層が得られる。結果的に、図示しない印刷
紙には極めて鮮明且つ良好な印刷が施されること
になる。

ところで、版胴４４に移送される湿し水の量は
前記版胴４４の回転速度等により増減される。す
なわち、版胴４４の回転速度が小さい場合、第５
図中破線に示すように、前記版胴４４に供給され
る湿し水の量を全体的に減ずる必要がある。その
際には、夫々の超音波振動子４０ａ乃至４０ｎに
印加する電圧を全体的に所定量減らすことにより
容易に対応することが出来る。一方、版胴４４の
回転速度が大きい場合には、前記とは逆に、夫々
の超音波振動子４０ａ乃至４０ｎに印加する電圧
を所定量増圧して版胴４４に供給される湿し水の
量を多くすればよい。

以上のように本発明によれば、版胴の軸線方向
に延在する単一の水槽内に複数の超音波振動子を
配設し、個々の振動子に夫々所定の電圧を印加す
ることにより生起された霧状の湿し水を所定長さ
の幅員を有する開口部からローラ、または、版胴
上に直接供給するよう構成している。このため、
各々の振動子により発生される霧状の湿し水は軸
線方向の水量分布設定に従い良好に版胴上に供給
することが出来る。従つて、版胴の軸線方向に対
し部分的に異なる水膜厚さを有する湿し水を供給
することが可能となり、しかも、前記版胴の軸線
方向に対し極めて均一な水膜層を得ることも出
来、オフセツト印刷をより一層高精度に行う利点
が得られる。さらに、霧化される湿し水の粒径を
種々選択することが出来ると共に版胴の回転速度
の変化にも影響されることはない。結局、種々の
印刷物に対応し、しかも、自動化が一層容易とな
る利点が得られる。

以上、本発明について好適な実施例を挙げて説
明したが、本発明はこの実施例に限定されるもの
ではなく、例えば、超音波振動子の数並びに本体
部に設けた開口部の数は種々選択することが出
来、しかも夫々の数を異にすることも可能であ
り、また、本装置を版胴に直接臨ませて湿し水を
供給することが出来る等、本発明の要旨を逸脱し
ない範囲において種々の改良並びに設計の変更が
可能なことは勿論である。

【図面の簡単な説明】

第１図および第２図は従来技術に係る湿し供給
水装置の概略説明図、第３図は本発明に係る湿し
水供給装置の一部省略斜視図、第４図は本発明に
係る湿し水供給装置の断面側面図、第５図は版胴
に供給される湿し水の量をグラフを用いて示した
説明図である。 ２０……湿し水装置、２２ａ……下部本体部、
２２ｂ……上部本体部、２４ａ〜２４ｎ……円筒
部、２６ａ〜２６ｎ……送風管、２８……給水
管、２９……排水管、３０ａ〜３０ｎ……開口
部、３４……水槽、３６ａ，３６ｂ……孔部、４
０ａ〜４０ｎ……超音波振動子、４２ａ〜４２ｎ
……コード、４４……版胴、４６……水均しロー
ラ、４８……水着けローラ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 印刷機を構成する版胴の軸線方向に延在する
   水槽と、 前記水槽内に所定間隔離間して配設される複数
   の超音波素子と、 前記複数の超音波素子に対応して前記水槽の上
   方に設けられ、各超音波素子の作用下に発生し霧
   化された湿し水を前記版胴の所定の部分に個別に
   供給するために夫々所定の長さを有し且つ違いに
   遮断された複数の開口部と、 前記夫々の開口部に連通し、各開口部に対して
   夫々所定圧の空気を導入することにより前記水槽
   から霧化される湿し水を前記各開口部から外部に
   導出するための複数の空気供給用通路と、 を備えることを特徴とする湿し水供給装置。 ２ 特許請求の範囲第１項に記載の装置におい
   て、夫々の超音波素子は圧電振動子からなり、前
   記圧電振動子に夫々所定圧の電圧を印加すること
   により生起される霧状の湿し水を夫々の圧電振動
   子に対応する開口部から直接若しくは間接的に版
   胴に供給し、前記版胴の軸線方向における水膜厚
   さを調節自在に構成することを特徴とする湿し水
   供給装置。 ３ 特許請求の範囲第１項に記載の装置におい
   て、前記水槽には、該水槽内に湿し水を供給する
   ための湿し水供給用通路と、 前記水槽内の湿し水の水面高さを一定に維持す
   べく余剰な湿し水を排出するための排出用孔部
   と、 が形成されることを特徴とする湿し水供給装置。