JPH0557861B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［発明の技術分野］ 本発明は、切開することなく体腔外から体腔
内、例えば膝等の関節腔内の軟骨（関節半月、関
節軟骨）、軟骨瘤、腫瘍等を切除し、体腔外へ排
出する外科用切除器具に関するものである。

［発明の技術的背景とその問題点］ 従来、関節手術は、主として切開法（開放外
科）によつて行われていた。例えば、一般的な関
節の手術においては、膝蓋骨上の腫瘍を除去した
り、膝関節から破損した軟骨、骨等を切除するこ
と等であるが、比較的大きな切開を必要としてい
た。そのため、切開による外傷を生じ、苦痛と運
動制限とを伴い、直るまでに多くの時間を要する
という欠点を有していた。

そこで、近年関節鏡（内視鏡）の観察のもと
で、関節を切開しないで該関節に小さな穿刺孔を
形成し、この穿刺孔に挿入されるプローブを使用
して手術（閉鎖外科）する器具が提案されてい
る。例えば、特開昭54−77493号公報等にこれら
が開示されている。この従来技術に係る器具は、
外周に軸方向に伸びる切削口が形成された細長い
固定外被チユーブと、この外被チユーブ内に回転
自在に内装された前記切削口において内部回転刃
を形成しているチユーブ状内側部材と、本体と、
吸引装置と、駆動モータとを備えて、真空引きに
よつて組織片等を切削口内に吸引する一方、前記
駆動モータで回転刃を回転して切削し、切削片を
チユーブ状内側部材を経て吸引排出するように構
成したものである。

しかしながら、従来技術に係る器具では、外被
チユーブ内周と該外被チユーブ内に回転自在に内
装されるチユーブ状内側部材外周との全体が摺接
し、この摺接状態で内側部材が回転するので、回
転抵抗が大きいといつた問題点がある。又、チユ
ーブ状内側部材は、前記のように外被チユーブ内
に挿入され全体的に摺接しているのみで、正確な
軸受をされていないため、内部回転刃を有する内
側部材の先端側の回転にぶれが生じることがあ
り、このぶれによつて内部回転刃と外被チユーブ
の切削刃口とのかみ合い時にこれら内部回転刃と
切削口との間に隙間が生じてしまつて切れ味が悪
いといつた問題点がある。特に体腔内組織、例え
ば膝関節腔内の破損した関節半月、軟骨、腫瘍等
の対象組織は、弾力的で粘性を有しているため、
前記のように外側刃と内側刃とのかみ合い時に隙
間が生じてしまつては効率のよい切除、切削は行
なわれない。

［発明の目的］ 本発明は、これらの事情に鑑みてなされたもの
で、内管の回転抵抗を低減すると共に、刃口を有
する内管の先端部側に外管内周に対して軸受させ
て該刃口を有する内管先端の回転ぶれをなくし、
外管刃口と内管刃口とが隙間なくかみ合えるよう
にして切れ味をよくし、効率よく組織を切除、切
削きるようにした外科用切除器具を提供すること
を目的としている。

［発明の概要］ 前記目的を達成するため本発明による外科用切
除器具は、先端部に組織取込口を開口した外管内
に、該外管の刃口と係合する刃口を有する内管を
軸回りに回転自在に内装し、この内管の前記回転
によつて該内管の刃口と外管刃口とを開閉可能に
するものにおいて、前記内管先端の刃口形状部側
のみを外管内周に嵌合軸受させ、この軸受部後方
側の内管と外管との間には基部側に向つて空間を
設けている。

［発明の実施例］ 以下、図面を参照して本発明の実施例を説明す
る。

第１図及び第２図は本発明の第１実施例に係
り、第１図は縦断面図、第２図は使用状態の一例
を示す説明図である。

これらの図において、符号１は外科用切除器具
で、手元側の把持部を兼用した本体２と、この本
体２から前方へ延設されて体腔内、例えば関節腔
内へ挿入される細長な挿入部３とから構成されて
いる。前記挿入部３は、開口した基部を本体２の
先端部に固定した外管４と、この外管４内に軸回
りに回動自在に内装された内管５とからなり、前
記外管４は先端に組織取込刃口６を開口し、一方
内管４は先端に刃口７を開口している。前記外管
刃口６は、例えば半球状、弧面等の外管有底状先
端部から管側面を一部切欠いて前記先端部に一部
弧面の有底部８を残して、管側面より先端有底部
８に至るよう連続して形成されている。又、内管
刃口７も外管刃口６と同様に、半球状、弧面等の
内管有底状先端部から管側面を一部切欠いて前記
先端部に一部曲面の有底部９を残して、管側面よ
り先端有底部９に至るよう連続して形成されてい
る。前記外管刃口６と内管刃口７は、内管５の回
転によるこれら刃口６，７同士の一致によつて連
通し、且つずれることにより閉塞されるようにな
つており、両刃口６，７の連通開口時に組織に食
い付き、かみ合い時に切除、切削して切片を内管
刃口７内に取り込むようになつている。前記内管
５の内路は、外管刃口６と内管刃口７とに連通し
た切片吸引路１０となつていると共に、切片吸引
装置を接続した手元側本体２に連通している。

前記内管５は、その刃口７を有する先端部側が
回転ぶれが生じないよう外管４の内周に嵌合して
軸受されていると共に、この軸受部５ａから基部
側にかけては外管４内周との間に空間Ｇを形成し
内管５の回転抵抗を低減している。このように、
内管５は、その刃口７を有する先端部側がぶれる
ことなく回転でき、その結果、外管刃口６と内管
刃口７とのかみ合い時に隙間が生じることなく、
対象組織の切れ味が良好となつている。

前記本体２は、切除器具１を外科医等の術者が
手に持つて操作する部分であり、前記内管５を回
転駆動する駆動部分等を収納するハウジング１１
と、前記内管５の吸引路１０に連通した空洞１２
ａを有して切片吸引装置に接続される吸引管口金
２２を取付けた前部ハウジング１２とから構成さ
れている。この前部ハウジング１２は、例えば螺
合手段にてハウジング１１に着脱自在に螺着連結
されている。又、この前部ハウジング１２は、前
方に環状の固定部１２ｂを延設し且つ、その内周
軸方向に溝部１２ｃを形成している。一方、外管
４の基部外周には、前方にフランジ１３ａを有す
るスリーブ１３が嵌合されていると共に、スリー
ブ１３外周にピン１４を植立している。そして、
前記ピン１４を溝部１２ｃ内に係入した状態でス
リーブ１３を嵌合した外管４基部を固定部１２ｂ
内に挿入し、且つ外管固定ねじ体１５を固定部１
２ｂ外周に螺合して着脱自在に外管４の基部を固
定している。

前記ハウジング１１の後部には、モータ１６が
内装され、そのモータ軸１７は雄スプライン１８
を固定している。一方、このモータ１６の前方に
は出力軸１９が回転自在且つ軸方向へ摺動可能に
軸受されていると共に、その後部に雌スプライン
２０が形成され、該雌スプライン２０が前記雄ス
プライン１８に噛合している。前記出力軸１９
は、前部ハウジング１２の空洞１２ａに突出し、
この突出部に内管５の基部を嵌入固定した内管ス
リーブ２１を係入固定しており、前記モータ１６
の回転力を内管５に伝達し該内管５を回転させる
ようになつている。内管スリーブ２１は前方が開
口した筒状に形成され、内管５の吸引路１０を該
スリーブ２１内に連通している。又、このスリー
ブ２１は側部に開口２１ａを有し前部ハウジング
１２の空洞１２ａと連通している。

前記吸引管口金２２は、前部ハウジング１２の
外周に空洞１２ａと連通状態で取付けられてい
る。この吸引管口金２２は、その入口部分の開口
面積を大きく取れるようハウジング１２ａの軸方
向に対して後方に傾斜させている。又、この吸引
管口金２２を取付けた前部ハウジング１２は、そ
の外周壁を前方に向つて下方に傾斜させ、前記吸
引管口金２２の後方傾斜取付けと同様該吸引管口
金２２の入口部分の開口面積を大きくしている。

このように構成された第１実施例を用いて体腔
内、例えば関節腔内の対象組織を切除する動作を
第２図を参照して以下に説明する。

第２図に示すように目的とする部位、例えば膝
関節内の対象組織を切除するには、膝部３１に外
科用切除器具１の挿入部３を挿入する小孔をトラ
カール等の穿刺操作によつて設けてトラカール等
を介して又は直接挿入部３を挿入する。又、この
挿入部３の挿入前に、関節腔内を観察しながら対
象組織の切除手術が行えるように、証明及び観察
光学系が配設された関節鏡３２の挿入部３３をト
ラカール等の穿刺操作によつて関節腔内に挿入
し、この関節鏡３３の接眼部より直接又は該接眼
部に装着したテレビカメラ３４によつて撮影した
映像を表示する表示装置３５に関節腔内及び該腔
内に挿入された前記外科用切除器具１の挿入部３
を観察できる状態にする。さらに、関節腔内を膨
ませ切除手術が容易なように生理的食塩水を制御
された水圧で給水源３６から関節腔内に穿刺した
給水管３７を経て該関節腔内に供給できる状態に
する。一方、外科用切除器具１の手元側把持部本
体２の吸引管口金２２にチユーブ３８を接続し、
吸引、回収装置３９と連結し、又ケーブル４０の
図示しないコネクタをモータ制御部４１に接続し
モータ１６に電力が供給できる状態に設定する。

このような設定状態で術者は関節鏡３３によ
り、又は表示装置３５により関節腔内及び切除器
具１の挿入部３先端部を観察しながら、挿入部３
先端の組織取込刃口６，７を切除対象組織に当接
させ、この状態でスイツチをオンしてモータ１６
を駆動して出力軸１９等の駆動伝達系を介して内
管５を軸回りに回転させて外管刃口６と内管刃口
７とをかみ合わせると共に該刃口６，７を開閉さ
せ刃口６，７内に取込んだ組織を切断又は切削
し、必要時又は常時吸引、回収装置３９を作動し
て切片を内管５の吸引路１０、内管スリーブ２
１、前部ハウジング１２の空洞１２ａ、吸引管口
金２２、チユーブ３８を経て吸引、回収装置３９
に回収、排出することができる。

尚、第２図中符号４２は光源装置、４３はライ
トガイドケーブル、４４はテレビカメラのケーブ
ルを示す。

このように本発明では、体腔内、例えば関節腔
内の対象組織を体腔外から挿入した外科用切除器
具１の挿入部３を構成する外管４及び内管５の先
端の刃口６，７で切除、切削するのであるが、こ
れら外管刃口６と内管刃口７とが、内管５先端の
回転ぶれがないことにより、隙間なくかみ合うこ
とができ、良好な切れ味を示し、効率よく対象組
織を切除、切削できるものである。

第３図は本発明の第２実施例に係る挿入部先端
を示しＡは断面図、Ｂは側面図である。

この第２実施例では、外管４先端の刃口部分な
いし軸受部分と内管５先端の刃口部分ないし軸受
部分を別部材としたものである。即ち、外管４の
先端には外管刃５１が連設されており、この外管
５１の基部側には開口して外管内路に連通し、先
端部側は刃口７を有する弧面有底状に形成されて
いる。前記刃口７は第１実施例と略同じに形成さ
れている。一方、内管５の先端には内管刃部５２
が連設されており、この内管刃部５２の基部側は
開口して内管内路に連通し、先端部側は刃口８を
有する弧面有底状に形成され、且つ刃口８は第１
実施例と略同じに形成されている。前記内管刃部
５２の外周は、外管刃部５１の内周に嵌合して軸
受されていると共に、この内管刃部５２より後方
の内管５と外管４との間には空間Ｇが形成されて
いる。この実施例では、刃口６，７が形成され且
つ嵌合軸受される外管刃部５１、内管刃部５２を
外管４と内管５とは別個に製作できるので、刃口
６，７の加工が容易となり、しかも回転ぶれがで
きないよう軸受精度を出しやすい。

第４図は本発明の第３実施例に係る挿入部先端
を示し、Ａは断面図、Ｂは側面図である。

この第３実施例では、前記第２実施例と同様外
管刃部５１と内管刃部５２とを夫々外管４、内管
５と別部材で製作し連設したものである。この第
３実施例では、外管刃口６と内管刃口７とを側面
に形成し、外管４の半球状、弧状の有底部５３は
そのまま残している。又、内管刃部５２の先端を
開口させ外管刃部５１の先端内壁に当接させてい
る。

尚、本発明において、外管刃口、内管刃口の形
状は適宜選択形成される。

また、本発明は、関節腔内のみならず、他の体
腔内部部位にも適用される。

［発明の効果］ 以上説明したように本発明によれば、内管の回
転抵抗を低減すると共に、刃口を有する内管の先
端部側を外管内周に対して軸受させて該刃口を有
する内管先端部位の回転ぶれをなくし、外管刃口
と内管刃口とのかみ合い時にすきまの発生をなく
して切れ味を良好にし効率よく組織を切除、切削
できる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図及び第２図は本発明の第１実施例に係
り、第１図は縦断面図、第２図は使用状態一例を
示す説明図、第３図は本発明の第２実施例に係る
挿入部先端を示し、Ａは平面図、Ｂは側面図、第
４図は本発明の第３実施例に係る挿入部先端を示
し、Ａは断面図、Ｂは側面図である。 ２……本体、３……挿入部、４……外管、５…
…内管、６……刃口、７……刃口、Ｇ……空間。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 先端部に組織取込刃口を開口した外管内に、
   該外管の刃口と係合する刃口を有する内管を軸回
   りに回転自在に内装し、この内管の前記回転によ
   つて該内管の刃口と外管刃口とを開閉可能にする
   と共に、前記刃口を有する内管先端部が回転ぶれ
   しないよう該内管先端部の刃口形成部側を外管内
   周に嵌合軸受させる一方、この軸受部後方からの
   基部側に向う内管と外管との間には空間を形成し
   たことを特徴とする外科用切除器具。