JPH0555662A - 薄膜作製方法 - Google Patents

薄膜作製方法

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JPH0555662A
JPH0555662A JP21360891A JP21360891A JPH0555662A JP H0555662 A JPH0555662 A JP H0555662A JP 21360891 A JP21360891 A JP 21360891A JP 21360891 A JP21360891 A JP 21360891A JP H0555662 A JPH0555662 A JP H0555662A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】薄膜内の分極軸の配向方向を制御でき、かつ分
極軸の配向方向の反転を実現できる薄膜作製方法を提供
する。 【構成】基板4への薄膜の形成をイオンビーム蒸着で行
ない、電源8によって蒸発源5と基板ホルダ3あるいは
基板4との間に印加される電圧(加速電圧)の極性およ
び大きさ、蒸発物質の一部をイオン化するための電子放
出源6からの電子線の電流(イオン化電流)を変化さ
せ、基板4上に形成される薄膜中の分極軸の配向方向お
よび配向度を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面弾性波素子、圧電
アクチュエータ、電気光学素子、誘電体メモリなどの素
子に使用される圧電性、誘電性を有する薄膜の作製方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】表面弾性波素子、圧電アクチュエータ、
電気光学素子、誘電体メモリなどの素子に使用される圧
電性、誘電性を有する薄膜材料としては、ZnO,Al
N,Ta 25,PbTiO3,Bi4Ti312,BaTi
3,SrTiO3,PZT[Pb(Ti,Zr)O3],Li
NbO3などが知られている。これら薄膜材料は、CV
D法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンビーム蒸着法な
どの方法によって薄膜に形成され、上述のような素子に
加工される。これら素子では、圧電性、誘電性を有する
薄膜内での分極軸の配向方向が所定の方向であって分極
軸の配向が揃っていることが重要であり、上記の方法な
どによって、分極軸の配向度の高い薄膜が作製されてい
る。
【0003】ここで、分極軸の配向方向とは、各ドメイ
ンごとの分極軸が全体として向いている方向のことであ
り、配向度とは、各ドメインごとの分極軸の方向が前記
配向方向にどの程度揃っているかを表わす尺度である。
一般に、分極軸の配向方向は薄膜材料と基体の材質など
によって規定される。
【0004】これら薄膜において、配向方向の分極軸の
並びを制御し電気機械結合係数を向上させる方法とし
て、薄膜作製時に基板の面内方向に電界を印加する方法
(特開昭62-81076号公報)が行われている。また、分極
軸の配向方向を反転させる方法として、LiNbO3
に対して、Tiを熱拡散させる方法およびキュリー点に
近い温度での熱処理を行う方法が行われている(電子情
報通信学会技術研究報告US86−18)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】Tiを熱拡散させる方
法およびキュリー点に近い温度での熱処理を行う方法に
よる分極軸の配向方向の反転は、これを実現できる材料
がLiNbO3に限定されて他の材料に応用することが
困難であって、また薄膜の形態にした場合については検
討がなされていなかった。そして上述した従来の方法で
は、一般的には、原子の並びや分極軸の配向方向を制御
したり、配向方向を反転させたりすることが困難であ
る。
【0006】本発明の目的は、分極軸の配向方向を制御
でき、かつ分極軸の配向方向の反転を実現できる薄膜作
製方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の薄膜作製方法
は、分極軸を有する薄膜を基体上に形成する薄膜作製方
法において、イオンビーム蒸着を用い、該イオンビーム
蒸着時のイオン化電流および/または加速電圧を変化さ
せることにより、前記薄膜中の前記分極軸の配向方向お
よび配向度を制御する。
【0008】
【作用】本発明は、イオンビーム蒸着を用いて分極軸を
有する薄膜の形成を行なった場合、この時のイオン化電
流および/または加速電圧を変化させることにより、分
極軸の配向方向を制御、反転させることができるという
新たな知見に基づくものである。本発明では、圧電性、
誘電性を持ちかつ自発分極を有する材料であれば特に材
料に限定されることなく、分極軸の配向方向の反転を行
うことができる。したがって、圧電材料などの薄膜にお
いて、同一の印加電界に対する変位方向を任意に変える
ことができる。ここでイオンビーム蒸着とは、蒸発源か
らの蒸発分子あるいは蒸発原子の一部をイオン化させ、
加速電圧を印加して蒸着を行なう方法のことである。イ
オン化は一般に、蒸発分子あるいは蒸発原子に荷電粒子
を照射することによって行なわれるから、この荷電粒子
の電流をイオン化電流と称する。プラズマ放電によって
イオン化を行なう場合には、このプラズマ放電の電流を
イオン化電流とみなすことができる。
【0009】ここで、本発明の作用を説明するため、本
発明に至る研究の過程について説明する。まず、分極軸
の配向方向を反転させて圧電材料薄膜を形成した実験に
ついて述べる。
【0010】図1は、この実験に用いたイオンビーム蒸
着装置の一例の構成を示す概略断面図である。排気可能
な真空容器1の底部には、るつぼと加熱手段とからなる
蒸発源5が設けられ、蒸発源5に対向するようにして真
空容器1の内部には、薄膜の形成される基板4を下向き
に保持するための基板ホルダ3が設けられている。基板
ホルダ3は導電性であって、このため基板4は基板ホル
ダ3と同電位に保たれる。蒸発源5に近接して、蒸発源
5からの蒸発分子あるいは蒸発原子の一部をイオン化す
るための電子線を放出する電子放出源6、加速電極7が
設けられている。加速電極7は、一般的には基板ホルダ
3と同電位に保たれる。また、真空容器1内にガスを導
入するための先端が開口したガス導入管2が設けられて
いる。ガス導入管2の他端は図示しないガス供給源に接
続されている。さらに、蒸発源5と基板ホルダ3は、イ
オンビーム蒸着における加速電圧を印加するための電源
8の両極にそれぞれ接続されている。この電源8は、図
1においては蒸発源5側が正、基板ホルダ3側が負とな
っているが、正負の極性および電圧を変えることができ
るものである。以下の説明において、加速電圧が正と
は、基板ホルダ3に対し蒸発源5側が正になっているこ
とであり、加速電圧が負とは、蒸発源5側が負になって
いることと定義する。
【0011】なお真空容器1は不図示の排気装置により
排気することができ、基板4の温度、蒸発源5の温度、
電子放出源6から放出される電子線の電流すなわちイオ
ン化電流、ガス導入管2から真空容器1内に導入される
ガス流量は、不図示の制御装置により、それぞれ独立に
制御することができるようになっている。
【0012】(実験1)代表的な圧電材料のひとつであ
るAlNを用いて、図2に示すような5層構造のバイモ
ルフタイプの薄膜カンチレバー型変位素子10を作製し
た。この薄膜カンチレバー型変位素子10は、基板4の
上に、Cr/Auの積層膜からなる膜厚0.1μmの下
部電極11、AlNからなる膜厚0.3μmの下部圧電
体薄膜12、Auからなる膜厚0.1μmの中電極1
3、AlNからなる膜厚0.3μmの上部圧電体薄膜1
4、Auからなる膜厚0.1μmの上部電極15を順次
積層させたものであり、下部電極11の下にあたる部位
の基板4は大きくえぐられていて、下部電極11はその
一方の端部付近でのみ基板4と接するようになってい
る。薄膜カンチレバー型変位素子10の寸法は、長さ
(図示横方向)200μm、幅(図示奥行き方向)50
μmとした。下部電極11、中電極13、上部電極15
は、それぞれ通常の抵抗加熱蒸着で成膜されている。ま
た下部誘電体薄膜12および上部誘電体薄膜14は、上
述のイオンビーム蒸着装置を用いたイオンビーム蒸着に
よって、同一の成膜条件で成膜されている。
【0013】ここで、下部誘電体薄膜12と上部誘電体
薄膜14の成膜条件について詳しく説明する。まず、蒸
着源5に薄膜の原料物質であるAlを充填し、真空容器
1内を排気した。そののち蒸発源5内のAlを加熱して
蒸発させ、さらにガス導入管2からNH3ガスを流量1
0ml/minで導入して基板4の表面に吹きつけなが
ら、イオン化電流を50mAとし加速電圧を+0.5k
Vとしてイオンビーム蒸着を行なった。このときの基板
4の温度は200℃とした。なおこのとき、基板ホルダ
3と加速電極7とが接地されるようにした。
【0014】このようにして作製した薄膜カンチレバー
型変位素子10について、下部電極15と上部電極17
とを短絡して接地し、中電極16に+2Vの電圧を印加
したところ、素子の先端部20は上方に1μm変位し
た。また、同様に−2Vの電圧を印加した場合、下方に
1μm変位した。
【0015】(実験2)下部誘電体薄膜12と上部誘電
体薄膜14の成膜条件について、イオン化電流を100
mAとし、加速電圧を極性を逆転して−0.5kVとし
た以外は上述と同様にして、薄膜カンチレバー型変位素
子10を作製した。この薄膜カンチレバー型変位素子1
0に実験1と同じ+2Vの電圧を加えたところ、逆に下
方への1μmの変位が得られた。
【0016】以上の実験1および実験2の結果から、イ
オン化電流と加速電圧を変化させることにより、分極軸
の配向方向が逆で、同等の圧電性を持つ薄膜が形成され
ることがわかった。
【0017】すなわち本発明は、図1に示した上述の装
置を用いた場合には、蒸発源5から薄膜の原料物質を蒸
発させ、その原料物質の蒸気に対して電子放出源6より
電子線を照射してその一部をイオン化させ、加速電極7
および基板ホルダ3と蒸発源5との間の電位差(加速電
圧)によって上記イオンを加速して基板面に蒸着を行な
い薄膜を作製するものであって、この際、イオン化電流
および/または加速電圧を変化させることにより、分極
軸の並びすなわち配向度を制御するとともに分極軸の配
向方向を制御し、さらに分極軸の配向方向を反転して薄
膜を作製するものである。
【0018】作製する薄膜材料が複数の構成元素を含む
場合などには、必要に応じてイオンビーム蒸着装置に、
蒸発源、電子放出源、加速電極及び加速のための電源か
らなるイオンガン部を複数設けて用いることもできる。
【0019】本発明を適用できる薄膜材料としては、前
述のAlNのほかにもZnO,Ta25,PbTiO3,B
4Ti312,BaTiO3,SrTiO3,PZT,LiN
bO 3などの圧電性、誘電性を持ちかつ自発分極を行う
材料であれば、特に限定されるものではない。薄膜材料
の原料物質として蒸発源から蒸発させるものは、上記薄
膜材料を構成する金属元素の単体もしくはその金属元素
の化合物の中から、融点、蒸気圧、蒸発源のるつぼなど
との反応性などを考慮して、適切なものを選べばよい。
【0020】PbTiO3などのように複数の金属元素
を含む薄膜材料を使用する場合には、好ましくはその金
属元素の数だけイオンガン部を複数設けて用いるとよ
い。あるいは、この薄膜材料を構成する金属元素単体も
しくはその金属元素の化合物を適当な比率で混合し、単
一のイオンガン部より蒸着することも可能である。蒸発
源における加熱方法としては、抵抗加熱、電子ビーム加
熱、レーザー光線による加熱などを用いることができ
る。
【0021】本発明におけるイオン化の方法としては、
上述したような電子線の照射以外にも、プラズマ放電に
よるものなどがあり、特に方法は問わない。また、図1
に示したような装置を用いてイオンビーム蒸着を行うと
きの基板ホルダーおよび基板、蒸発源、加速電極への電
圧の印加方法は、一般には基板ホルダーおよび基板と加
速電極を接地して、蒸発源に電位を印加する方法を用い
るが、特にこれに限定されるものではない。
【0022】本発明におけるイオン化電流および加速電
圧は、蒸発源から蒸発させる原料物質の種類、その蒸発
速度、基板温度などの諸条件により異なるが、好ましく
は概ね以下の範囲から選ぶ。
【0023】 イオン化電流:0〜500mA 加速電圧 :−10kV〜+10kV イオン化電流および加速電圧は、いずれも大きくしすぎ
ると、イオンのエネルギーおよび密度が大きくなりすぎ
ていわゆるイオンエッチングを実施しているのと同じこ
とになる。その結果、薄膜の結晶性が低下したり、薄膜
の堆積が起らなくなったりする。このため、このような
好ましくない現象が起きない範囲で、必要な結晶性の薄
膜が得られるような値にイオン化電流と加速電圧を設定
する。
【0024】分極軸の配向方向の制御は、主に加速電圧
の値を変えることで行なう。さらには加速電圧の極性を
逆転することによっても行なえる。このとき、薄膜の結
晶性が変化する場合があるので、イオン化電流を変えて
結晶性の変化の補償を行なう。
【0025】イオンビーム蒸着装置の真空容器内に導入
されるガスは、作製する薄膜材料に応じて適当なものを
選ぶ。すなわち、ZnO,PbTiO3などの酸化物系の
薄膜を作製するときには、O2あるいO3,N2O,NO2,
酸素ラジカルなどを用い、AlNなどの窒化物系の薄膜
にはN2あるいはNH3などを用いる。さらにはこれらの
ガスを電離させてプラズマやイオンにしたものを導入し
てもよい。
【0026】
【実施例】次に、本発明の薄膜作製方法の実施例につい
て具体的数値を挙げて説明する。
【0027】(実施例1)図1を用いて上述したイオン
ビーム蒸着装置を用いて、代表的な圧電材料のひとつで
あるZnOを使用したの薄膜カンチレバー型変位素子を
作製した。なお、真空容器1は不図示の排気装置により
2×10-7Torr程度まで排気できるようになっている。
【0028】この薄膜カンチレバー型変位素子10は、
5層構造のバイモルフタイプのものであって上述の実験
1,2で作製したものとほぼ同様のものであり、その構
成が図2に示されている。この薄膜カンチレバー型変位
素子10は、Si単結晶からなる基板4の上に、Cr/
Auの積層膜からなる膜厚0.1μmの下部電極11、
ZnOからなる膜厚0.3μmの下部圧電体薄膜12、
Auからなる膜厚0.1μmの中電極13、ZnOから
なる膜厚0.3μmの上部圧電体薄膜14、Auからな
る膜厚0.1μmの上部電極15を順次積層させたもの
である。下部電極11、中電極13、上部電極15は、
それぞれ通常の抵抗加熱蒸着で成膜されている。また下
部誘電体薄膜12および上部誘電体薄膜14は、図1の
イオンビーム蒸着装置を用いたイオンビーム蒸着によっ
て、同一の成膜条件で成膜されている。この薄膜カンチ
レバー型変位素子10は、基板4の上にこれら各層を成
膜したのち、カンチレバー型にパターニングして形成し
た。パターニングにはフォトレジストを用い、反応性イ
オンエッチング装置によりCF4ガスを用いてドライエ
ッチングを行ない、その後レジストを剥離し、水酸化カ
リウム水溶液を用いて基板4の異方性エッチングを行な
って、素子として完成させた。薄膜カンチレバー型変位
素子10の寸法は、長さ(図示横方向)200μm、幅
(図示奥行き方向)50μmとした。
【0029】次に、下部誘電体薄膜12と上部誘電体薄
膜14の成膜条件と薄膜カンチレバー型変位素子10の
変位特性との関係について詳しく説明する。これら各誘
電体薄膜12,14は、まず蒸着源5に薄膜の原料物質
であるZnを充填して真空容器1内を排気し,続いて蒸
発源5のZnを加熱して蒸発させ、さらにガス導入管2
からO2ガスを流量12ml/minで真空容器1内に
導入して基板4の表面に吹きつけながら、イオン化電流
と加速電圧を変化させて成膜した。このときの基板温度
は200℃とした。
【0030】まず、上記の成膜条件においてイオン化電
流を50mA、加速電圧を+0.5kVとし、各誘電体
薄膜12,14の膜厚を0.3μmとして素子を作製し
た。作製されたカンチレバー型変位素子10の下部電極
11と上部電極15とを短絡して接地し、中電極13に
+2Vの電圧を印加したところ、素子の先端部20は上
方に2μm変位した。また、同様に−2Vの電圧を印加
した場合、下方に2μm変位した。
【0031】一方、上記の成膜条件でイオン化電流を5
0mA、加速電圧を極性を逆転して−0.5kVとし、
膜厚を0.3μmとして素子を作製した場合、作製され
たカンチレバー型変位素子10の下部電極11と上部電
極15を短絡して接地し、中電極13に+2Vの電圧を
印加したところ、素子の先端部20は下方に1.5μm
変位した。また、同様に−2Vの電圧を印加した場合、
上方に1.5μm変位した。このように変位の方向が逆
転したことから、各誘電体薄膜の分極軸の配向方向が反
転していることが確認された。しかし、成膜時の加速電
圧を逆方向にかけたために誘電体薄膜内部での結晶配向
性が低下し、分極軸の並びが乱れ電気機械結合係数が低
下して、変位量が小さくなった。このためイオン化電流
を増やして100mAとして各誘電体薄膜12,14を
成膜したところ、同じ+2Vの印加電圧に対してやはり
下方に2μmの変位が得られ、分極方向が逆で、同等の
圧電性を持つ薄膜が形成されていることが確認された。
【0032】このように、イオン化電流と加速電圧を制
御することにより、薄膜の分極軸の並びを制御し、分極
軸の配向方向を制御し、さらに配向方向を反転して薄膜
を作製することができた。
【0033】(実施例2)実施例1では、下部誘電体薄
膜12と上部誘電体薄膜14にZnOを用いたが、ここ
では強誘電体であるPbTiO3を用いて図2に示す構
成の薄膜カンチレバー型変位素子10を作製した。な
お、下部電極11にはTi/Pt積層膜、中電極13と
上部電極15にはPt膜を使用した。PbTiO3は金
属元素を2種含むので、蒸発源、電子放出源、加速電極
および加速のための電源からなるイオンガン部を2個有
するイオンビーム蒸着装置を用いて、各誘電体薄膜1
2,14を成膜した。
【0034】まず、このイオンビーム蒸着装置の構成に
ついて、図3を用いて説明する。排気可能な真空容器
1’の底部には、るつぼと加熱手段とからなる2個の蒸
発源5が設けられ、両方の蒸発源5に対向するようにし
て真空容器1’の内部には導電性の基板ホルダ3が設け
られている。基板ホルダ3は、薄膜の形成される基板4
を下向きに保持するためのものであり、基板4は基板ホ
ルダ3と同電位に保たれる。各蒸発源5に近接して、当
該蒸発源5からの蒸発分子あるいは蒸発原子の一部をイ
オン化するための電子線を放出する電子放出源6、加速
電極7がそれぞれ設けられている。加速電極7は、一般
的には基板ホルダ3と同電位に保たれる。また、真空容
器1’内にガスを導入するための先端が開口したガス導
入管2が設けられ、ガス導入管2の他端は図示しないガ
ス供給源に接続されている。さらに、各蒸発源5は、イ
オンビーム蒸着における加速電圧を印加するための各々
の電源8の一端にそれぞれ接続され、各電源8の他端は
基板ホルダ3に接続されている。各電源8の極性および
電圧は、任意に設定できるようになっている。また、真
空容器1’は不図示の排気装置により2×10-7Torr程
度まで排気することができ、基板4の温度、各蒸発源5
の温度、各電子放出源6におけるイオン化電流、ガス導
入管2からのガス流量は、不図示の制御装置によってそ
れぞれ独立に制御することができるようになっている。
【0035】次に、本実施例の薄膜カンチレバー型変位
素子10の作製方法について説明する。まず、Siから
なる基板4の上に、通常のRFスパッタリングによって
膜厚0.1μmの下部電極11を成膜し、続いて図3の
装置によるイオンビーム蒸着によって下部誘電体薄膜1
2を成膜し、通常のRFスパッタリングによって膜厚
0.1μmの中電極13を成膜し、図3の装置によるイ
オンビーム蒸着によって上部誘電体薄膜14を成膜し、
最後に通常のRFスパッタリングによって膜厚0.1μ
mの上部電極15を成膜して5層構造を形成し、そのの
ち上述の実施例1と同様にしてカンチレバー型の素子に
加工した。各誘電体薄膜12,14の成膜条件は同一で
ある。薄膜カンチレバー型変位素子10の寸法は、長さ
(図示横方向)200μm、幅(図示奥行き方向)50
μmとした。
【0036】次に、下部誘電体薄膜12と上部誘電体薄
膜14の成膜条件と薄膜カンチレバー型変位素子10と
しての変位特性との関係について詳しく説明する。これ
ら各誘電体薄膜12,14は、まず図3に示した装置の
一方の蒸発源5に薄膜の原料物質のひとつであるPbO
を充填し、他方の蒸発源5にはもうひとつの原料物質で
あるTiを充填し、真空容器1’内を排気し、続いて各
蒸発源5を加熱してそれぞれの原料物質を蒸発させ、さ
らにガス導入管2からO2ガスを12ml/minの流
量で真空容器1’内に導入して基板4の表面に吹きつけ
ながら、イオン化電流と加速電圧を変化させて成膜し
た。このとき基板温度400℃とした。
【0037】まず、上記の成膜条件においてPbOおよ
びTiに対するイオン化電流をいずれも50mAとし、
加速電圧をいずれも+0.5kVとし、各誘電体薄膜1
2,14の膜厚を0.3μmとして薄膜カンチレバー型変
位素子10を作製した。作製された素子の下部電極11
と上部電極15を短絡して接地しかつ中電極13に+5
Vの電圧を印加したところ、素子の先端部20は上方に
7μm変位した。また、同様に−5Vの電圧を印加した
場合、下方に7μm変位した。
【0038】一方、上記の成膜条件においてPbOおよ
びTiに対するイオン化電流をいずれも50mAとし、
加速電圧を極性を逆転させて−0.5kVとし、膜厚を
0.3μmとして薄膜カンチレバー型変位素子10を作
製し、作製された素子の下部電極11と上部電極15を
短絡して接地し、中電極13に+5Vの電圧を印加した
ところ、素子の先端部20は下方に4μm変位した。ま
た、同様に−5Vの電圧を印加した場合、上方に4μm
変位した。
【0039】このように実施例1と同様に変位の方向が
逆転し、各誘電体薄膜の分極軸の配向方向が反転してい
ることが確認されたが、成膜時の加速電圧を逆方向にか
けたため各誘電体薄膜12,14における結晶の配向性
が低下し、分極軸の並びが乱れ電気機械結合係数が低下
して、変位量が小さくなった。このためイオン化電流を
増やして、PbO,Tiともに100mAとして各誘電
体薄膜12,14を成膜したところ、同じ+5Vの印加
電圧に対して、やはり下方に7μmの変位が得られ、分
極方向が逆で、同等の圧電性を持つ薄膜が作製できてい
ることが確認された。また、これら誘電体薄膜をPbT
iO3のキュリー温度である490℃以上に加熱して、
分極の消滅により発生する電流を測定したところ、逆方
向に電流が発生し圧電性の測定と同様に分極の反転が起
っていることが確認された。
【0040】このように、薄膜材料として強誘電体であ
るPbTiO3を用いた場合でもイオン化電流と加速電
圧を制御することにより、作製される薄膜の分極軸の並
びを制御し、分極軸の配向方向を制御し、さらに配向方
向を反転して薄膜を作製することができた。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、イオンビ
ーム蒸着を用い、この時のイオン化電流および/または
加速電圧を変化させることにより、分極軸の配向方向を
制御、反転させることができ、圧電性、誘電性を有する
薄膜を使用し各種の機能を有する素子を容易に製造でき
るようになるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】イオンビーム蒸着装置の一例の構成を示す概略
断面図である。
【図2】薄膜カンチレバー型変位素子の構成を示す概略
断面図である。
【図3】イオンビーム蒸着装置の別の一例の構成を示す
概略断面図である。
【符号の説明】
1,1’ 真空容器 2 ガス導入管 3 基板ホルダ 4 基板 5 蒸発源 6 電子放出源 7 加速電極 8 電源 10 薄膜カンチレバー型変位素子 11 下部電極 12 下部圧電体薄膜 13 中電極 14 上部圧電体薄膜 15 上部電極

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分極軸を有する薄膜を基体上に形成する
    薄膜作製方法において、 イオンビーム蒸着を用い、該イオンビーム蒸着時のイオ
    ン化電流および/または加速電圧を変化させることによ
    り、前記薄膜中の前記分極軸の配向方向および配向度を
    制御することを特徴とする薄膜作製方法。
  2. 【請求項2】 分極軸を有する薄膜を基体上に形成する
    薄膜作製方法において、 イオンビーム蒸着を用い、該イオンビーム蒸着時のイオ
    ン化電流および/または加速電圧を変化させることによ
    り、前記薄膜中の前記分極軸の配向方向を反転させるこ
    とを特徴とする薄膜作製方法。
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