JPH0553809U - 切削工具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 チップ取付座１３の取付ネジ穴１３ｄに偏心
ピン１４を、その偏心した頭部１４ｃを取付座底面１３
ａから突出させ、頭部外周面のカム面１４ｄのうち中心
軸Ｏから最も離れた当接部１４ｇを取付座壁面１３ｂ側
に向けて螺着する。チップ取付座１３には、その貫通孔
１５ｄ内に頭部１４ｃを挿入させ、当接部１４ｇをその
内周面に当接させてシート部材１５が装着されており、
頭部１４ｃと壁面１３ｂとの間に貫通孔１５ｄと周面１
５ｃとの間の部分が狭装され、シート部材１５が壁面１
３ｂ側に押さえ付けられた状態となっている。さらにチ
ップ取付座１３にはチップ１６が、着座面１６ｃをシー
ト部材上面１５ａに密着させ、クランプネジ１７を偏心
ピン１４のクランプネジ孔１４ｆに螺着することにより
着脱自在に装着されている。 【効果】 シート部材１５の移動を確実に拘束して、肉
厚の少ない小型の工具であっても安定した切削加工が可
能となる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、チップ取付座にシート部材を介してスローアウェイチップ（以下、 チップと称する。）が装着された切削工具に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

このような切削工具としては、例えば図７に示すようなレバーロック式のクラ ンプ機構を有するスローアウェイ式切削工具が知られている。 これは特開昭６０−２３２８０５号公報に記載されたものであって、工具本体 １の先端部に形成されたチップ取付座２に、工具本体１保護用のシート部材３を 介してチップ４が着座せしめられており、締付ネジ５を締め付けて工具本体１の 孔部６に内蔵されたトグルレバー７を傾動させることにより、チップ４はトグル レバー７の頭部８によってチップ取付座２の壁面２ａに押し付けられ、工具本体 １に固定されている。そして、このような構成の切削工具において上記シート部 材３は、その貫通孔３ａに内嵌されたバネブッシュ９等の拘束部材が上記孔部６ の内周面に嵌合することにより、該貫通孔３ａの径方向への移動が拘束されるよ うになっている。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

ところで、このようなレバーロック式のクランプ機構では、工具本体１の先端 部に上記トグルレバー６を収納する孔部６を設けなければならず、このため工具 本体１の肉厚が少ない小型の切削工具においては、上記レバーロック式のクラン プ機構を採ることはきわめて困難である。このため、かかる小型の工具では上記 チップ取付座の底面にクランプネジ孔を形成してチップをクランプネジによって 取り付ける手段の採用が検討されている。 しかしながら、このような取付手段を採った場合には、シート部材の移動を拘 束するための上記拘束部材を装着するスペースがなくなるという新たな問題が生 じてしまう。すなわち、上記クランプネジを螺着するクランプネジ孔にバネブッ シュ等の拘束部材を嵌入させることはできず、かといって上記ボーリングバー等 の限られた大きさの工具本体１先端部には他に拘束部材を装着するスペースも設 けられない。

【０００４】 本考案は、このような課題を解決して、先端部の小さな工具本体においてもシ ート部材の移動を十分に拘束し得る切削工具を提供することを目的としてなされ たものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため、本考案は、工具本体に、取付ネジ穴が穿設された底 面と、この底面から屹立する少なくとも一以上の壁面とを有するチップ取付座を 形成し、このチップ取付座の取付ネジ穴に、この取付ネジ穴に螺合する取付ネジ 部と、この取付ネジ部の中心軸から偏心したカム面を有する頭部とを備えた偏心 ピンを、上記頭部をチップ取付座の底面から突出させて螺着する一方、上記チッ プ取付座には、上下面と該上下面の周囲に配置される周面と上記上下面に開口す る貫通孔とを有するシート部材を、上記貫通孔内に上記偏心ピンの頭部を挿入さ せて上記下面を上記底面に密着させるとともに、該偏心ピン頭部の上記カム面の うち上記中心軸から最も離れた部分を上記チップ取付座の壁面側に向けて上記貫 通孔の内周面に当接させて装着し、さらにこのチップ取付座に切刃を有するチッ プを、その着座面をシート部材の上面に密着させるとともに、当該チップに挿通 されたクランプネジを偏心ピンに形成されたクランプネジ孔に螺着することによ り着脱自在に装着したことを特徴とする。

【０００６】

【作用】

このような構成の切削工具によれば、チップはクランプネジにより偏心ピンを 介してチップ取付座に取り付けられるため、小型の切削工具においてもチップを 確実に装着することができる。 一方、上記貫通孔内に挿入された偏心ピンの頭部が、そのカム面のうち上記中 心軸から最も離れた部分をチップ取付座の壁面側に向けて当該貫通孔の内周面に 当接することにより、この頭部とチップ取付座の壁面との間にシート部材の貫通 孔と周面との間の部分が狭装され、シート部材がチップ取付座壁面に押さえ付け られて係止された状態となり、その移動が拘束される。

【０００７】

【実施例】

図１ないし図３は、本考案をボーリングバーに用いた場合の一実施例を示すも のである。これらの図において工具本体１１は鋼材等から成形された略円柱状の 部材であって、その先端部にはチップポケット１２が形成されるとともに、この チップポケット１２の底面１２ａと工具本体１１の先端面１１ａと上記先端部の 一の側面１１ｂとが交差する角部には、これらの面に開口するチップ取付座１３ が形成されている。 このチップ取付座１３は、チップポケット１２の底面１２ａから一段低められ るように形成された平面視に略平行四辺形状の底面１３ａと、この底面１３ａか ら屹立して上記チップポケット底面１２ａに連なる二つの壁面１３ｂ，１３ｂと から構成されており、これら二つの壁面１３ｂ，１３ｂが交差する隅部には、後 述するシート部材およびチップとの干渉を避ける逃げ部１３ｃが形成されている 。また、上記底面１３ａの中央部には該底面１３ａから垂直に取付ネジ穴１３ｄ が穿設されている。

【０００８】 この取付ネジ穴１３ｄには、図４に示すような偏心ピン１４が螺着されている 。この偏心ピン１４は、上記取付ネジ穴１３ｄに螺合する雄ネジ部１４ａが形成 された取付ネジ部１４ｂと、この取付ネジ部１４ｂの基端側に形成された頭部１ ４ｃとから構成されている。この頭部１４ｃは、その軸心Ｃが取付ネジ部１４ｂ の中心軸Ｏから偏心量εで僅かに偏心させられた半径Ｄの円盤状に成形されてい て、その外周面１４ｄが、上記中心軸Ｏ回りに当該偏心ピン１４を回動させるこ とによって該中心軸Ｏから偏心して回動するカム面とされている。さらに、この 偏心ピン１４の取付ネジ部１４ｂの先端面には六角レンチ等の工具を挿入するレ ンチ穴１４ｅが形成されており、一方頭部１４ｃの基端面からは上記中心軸Ｏに 同軸にクランプネジ孔１４ｆが形成されている。 そして、この偏心ピン１４は、頭部１４ｃがチップ取付座１３の底面１３ａか ら突出するようにして取付ネジ穴１３ｄにねじ込まれており、かつ該取付ネジ穴 １３ｄに概ねねじ込まれたところで、頭部１４ｃの外周面１４ｄのうち上記中心 軸Ｏから最も離れた部分（以下、当接部と称する。）１４ｇが、チップ取付座１ ３の逃げ部１３ｃ側を向くように設定されている。

【０００９】 一方、上記チップ取付座１３にはシート部材１５が装着されている。 このシート部材１５は、チップ取付座１３の底面１３ａと略同形同大の平行四 辺形状をなす上下面１５ａ，１５ｂと、これらの上下面１５ａ，１５ｂの周囲に 配置される周面１５ｃ…と、当該シート部材１５をその厚さ方向に貫いて上記上 下面１５ａ，１５ｂの中央に開口する貫通孔１５ｄとを有しており、この貫通孔 １５ｄの半径ｄは、上記偏心ピン１４の頭部１４ｃの外径ｄと偏心量εとの和と 略等しくなるように設定されている。 なお、このシート部材１５の厚さは、偏心ピン１４の頭部１４ｃの厚さよりも 僅かに厚く設定されている。これは、偏心ピン１４を取付ネジ穴１３ｄに概ねね じ込んで上記当接部１４ｇを逃げ部１３ｃ側に向けた際に、偏心ピン１４の頭部 １４ｃをシート部材１５の上面１５ａから突出させないためである。

【００１０】 このようなシート部材１５は、その貫通孔１５ｄ内に上記底面１３ａから突出 した偏心ピン１４の頭部１４ｃを挿入させ、また下面１５ｂを該底面１３ａに密 着させるとともに隣接する二つの周面１５ｃ，１５ｃをそれぞれ上記二つの壁面 １３ｂ，１３ｂに密着させた状態でチップ取付座１３内に装着されている。 そして、この状態で当該シート部材１５は、図５および図６に示すように、そ の貫通孔１５ｄの内周面のうち上記逃げ部１３ｃ側に位置する部分に偏心ピン１ ４の上記当接部１４ｇが当接せしめられていて、該当接部１４ｇと上記壁面１３ ｂ，１３ｂとの間に、シート部材１５の貫通孔１５ｄと周面１５ｃ，１５ｃとの 間の部分が狭装されることとなる。また、平面視にこのシート部材１５の上面１ ５ａ中央には、偏心ピン１４に形成されたクランプネジ孔１４ｆの開口部が配置 されることとなる。

【００１１】 さらに上記チップ取付座１３のシート部材１５上には、チップ１６が着脱自在 に装着されている。 このチップ１６は、超硬合金等から形成された平行四辺形平板状のポジティブ 型のものであって、そのすくい面となる上面１６ａの辺稜部には切刃１６ｂ…が 形成されているとともに、この上面１６ａの中央から該チップ１６の着座面とな る下面１６ｃに向けては、上面１６ａ側から下面１６ｃ側に向かって漸次縮径す るクランプ孔１６ｄが貫設されている。なお、この下面１６ｃは、シート部材１ ５の上下面１５ａ，１５ｂと同形同大に形成されている。

【００１２】 このようなチップ１６は、下面１６ｃをシート部材１５の上面１５ａに密着さ せるとともに、隣接する二つの周面１６ｅ，１６ｅをチップ取付座１３の二つの 壁面１３ｂ，１３ｂにそれぞれ当接させてチップ取付座１３に着座されており、 この状態において上記クランプ孔１６ｄは、取付ネジ穴１３ｄに螺着された偏心 ピン１４のクランプネジ孔１４ｅに同軸的に連通するように配置されている。 そして、このクランプ孔１６ｄにクランプネジ１７を挿通してクランプネジ孔 １４ｅに螺着することにより、当該チップ１６はシート部材１５を介してチップ 取付座１３に固定されている。なお、このクランプネジ１７の螺着する際には、 偏心ピン１４のずれを防ぐため、上記レンチ穴１４ｅに六角レンチを挿入し、偏 心ピン１４を固定した状態でクランプネジ１７を締め付けることが望ましい。

【００１３】 このような構成の切削工具では、従来のようにレバーロック式のクランプ機構 を用いることなく、クランプネジ１７によりチップ１６をシート部材１５を介し てチップ取付座１３に装着することができる。一方、これらチップ１６とチップ 取付座１３との間に介装されたシート部材１５は、その貫通孔１５ｄに挿入され た偏心ピン１４の当接部１４ｇとチップ取付座１３の壁面１３ｂ，１３ｂとの間 に、該シート部材１５の貫通孔１５ｄと周面１５ｃ，１５ｃとの間の部分が狭装 されて、偏心ピン１４の頭部１４ｃにより上記壁面１３ｂ，１３ｂ側に押さえ付 けられて係止された状態となる。 そして、これによりシート部材１５の移動が確実に拘束されるため、上記構成 の切削工具によれば、例えば小径の穴明け加工を行うボーリングバーなど、比較 的肉厚の少ない小型の工具であっても、シート部材１５およびチップ１６を確実 かつ強固に保持することができ、安定した切削加工を行うことが可能となる。

【００１４】 また、これに加えて上記構成の切削工具では、従来のレバーロック式の切削工 具に対してトグルレバーを収納・傾動するための孔部を設ける必要がなく、工具 本体先端部に形成される空洞部分を必要最小限とすることができ、これによって 工具先端部における剛性の向上が図られて、切削時のビビリ振動等の発生を抑え ることができる。このため本考案によれば、特に上述したようなボーリングバー など、肉厚が少なくて工具剛性を確保するのが困難な小型の工具に用いて一層最 適な切削工具を提供することができる。

【００１５】 なお、上記実施例では本考案をボーリングバーに用いた場合について説明した が、その他の切削工具に用いても構わない。さらに、上述したような小型の工具 以外に用いても、勿論構わない。 また一方、上記実施例では、シート部材１５の貫通孔１５ｄと二つの周面１５ ｃ，１５ｃとの間の部分を頭部１４ｃとチップ取付座１３の二つの壁面１３ｂ， １３ｂとの間に狭装し、該シート部材１５をこれらの壁面１３ｂ，１３ｂ側に押 さえ付けるようにしてその移動を拘束したが、チップ取付座の壁面が一つの場合 にも本考案を用いることが可能である。この場合には、シート部材はこの一つの 壁面側に押さえ付けられることとなり、従って上記当接部もこの一つの壁面側に 向けられてシート部材の貫通孔に当接することとなる。

【００１６】 さらにまた、上記実施例においては、偏心ピン１４の頭部１４ｃをその軸心Ｃ が取付ネジ部１４ｂの中心軸Ｏから偏心した円盤状に形成し、この円盤の外周面 １４ｄをカム面としたが、本考案のカム面がこのようなもののみに限られること はない。 すなわち、上記頭部１４ｃの外周面１４ｄと同様の作用効果を奏功し得るもの ならば、例えば楕円状の外周面を有するもの等であっても構わない。さらに、こ のカム面が上記当接部１４ｇの近傍のみに形成されていてもよい。

【００１７】

【考案の効果】

以上説明したように本考案によれば、偏心ピンの頭部ととチップ取付座の壁面 との間にシート部材の貫通孔と周面との間の部分が狭装されて、シート部材が壁 面側に押さえ付けられて係止された状態となり、これによってシート部材の移動 を確実に拘束できるため、比較的肉厚の少ない小型の工具であってもシート部材 を確実かつ強固に保持することができて、安定した切削加工を行うことが可能と なる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例を示すボーリングバー先端部
の平面図である。

【図２】図１に示す実施例の側面図である。

【図３】図１に示す実施例のＸＸ断面図である。

【図４】図１に示す実施例の偏心ピン１４の（イ）平面
図、（ロ）側面図である。

【図５】図３に示す断面図のチップ取付座１３近傍の拡
大図である。

【図６】図１に示す平面図のチップ取付座１３近傍の拡
大図である。ただし、チップ１６およびクランプネジ１
７が取り付けられていない状態を示す。

【図７】従来のレバーロック式のクランプ機構を示す断
面図である。

【符号の説明】

１１ 工具本体 １３ チップ取付座 １３ｄ 取付ネジ穴 １４ 偏心ピン １４ｂ 取付ネジ部 １４ｃ 頭部 １４ｆ クランプネジ孔 １４ｇ 当接部 １５ シート部材 １５ｄ 貫通孔 １６ チップ １７ クランプネジ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 工具本体に、取付ネジ穴が穿設された底
   面と、この底面から屹立する少なくとも一以上の壁面と
   を有するチップ取付座が形成され、 このチップ取付座の上記取付ネジ穴には、該取付ネジ穴
   に螺合する取付ネジ部と、この取付ネジ部の中心軸から
   偏心したカム面を有する頭部とを備えた偏心ピンが、上
   記頭部を上記チップ取付座の底面から突出させて螺着さ
   れる一方、 上記チップ取付座には、上下面と該上下面の周囲に配置
   される周面と上記上下面に開口する貫通孔とを有するシ
   ート部材が、上記貫通孔内に上記偏心ピンの頭部を挿入
   させて上記下面を上記底面に密着させるとともに、該偏
   心ピン頭部の上記カム面のうち上記中心軸から最も離れ
   た部分を上記チップ取付座の壁面側に向けて上記貫通孔
   の内周面に当接させて装着されており、 さらに当該チップ取付座には、切刃を有するスローアウ
   ェイチップが、その着座面を上記シート部材の上面に密
   着させるとともに、当該スローアウェイチップに挿通さ
   れたクランプネジを上記偏心ピンに形成されたクランプ
   ネジ孔に螺着することにより着脱自在に装着されている
   ことを特徴とする切削工具。