JPH055310U - 防塵シールとこれを用いた工具チヤツク - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 異なるチャック装置間での互換性を有し、既
存のチャック装置にも適用可能であり、チャック内部に
対する完全なシール効果を有する、安価な耐久性に優れ
た工具チャック用防塵シールを提供する。 【構成】 最小内径が工具１５のシャンク外径より小さ
い環状弾性体１１の前面側に、環状金属板１２が固着さ
れてなる工具チャック用防塵シール１０。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、各種工作機械における工具チャック部への切り粉や切削油等の侵入 を防止するのに利用する防塵シールと、これを用いたテーパコレット方式の工具 チャックに関する。

【０００２】

【従来技術とその課題】

切削工具を工作機械の回転主軸に取付ける場合、チャック本体のチャック筒に 該工具のシャンク部を、テーパコレット方式ではテーパコレットを介して、ニー ドルロールロック方式ではストレートコレットを介して嵌合し、外側から締付用 ナットにて締め付けることにより、前記コレットを縮径させて緊締固定するのが 普通である。

【０００３】 ところが、通常の場合、このような工具チャック部にはシール対策が施されて いないことから、細かい切り粉や切削油がコレットと工具およびチャック筒との 間やクランプ機構部に侵入し易く、この侵入により、チャッキング精度や把持力 が低下し、加工精度が落ちると共にチャックの寿命も短くなり、更には工具の抜 け出しによる被加工物の損傷や重大事故を招く恐れがあった。

【０００４】 なお、従来においても、一部にはテーパコレット方式の工具チャックにおいて 例えば図６で示すようなシール対策を施したものも提案されている。図において 、１はチャック本体、２は該本体１のテーパ孔１ａに挿嵌したテーパコレット、 ３はベアリング４を介して外環体３ａと内環体３ｂを連結した締付用ナット、５ は切削工具であり、締付用ナット３の内環体３ｂに、コレット２の前端よりも前 方で工具５のシャンク部５ａに外嵌する小内径部３ｃが形成され、該小内径部３ ａの内周に嵌着したＯリング６によってシャンク部５ａとの間をシールするよう に構成されている。

【０００５】 しかしながら、上記提案のシール手段では、締付用ナット３の内環体３ｂがＯ リング６嵌着用の小内径部３ｃを有する特殊な構造であることから、当該チャッ ク装置に専用となり、他のチャック装置との間でシール手段としての互換性がな く、当然ながら既存のチャック装置には適用不能であり、しかもシャンク径の異 なる工具に共用できず、また締付用ナットの製作コストが非常に高く付くという 難点があった。更にシール機能の面でも、工具５のシャンク部５ａと小内径部３ ｃとの間はシールされるが、該内環体３ｂと外環体３ａとの間隙（通常０.1mm 程度）はシールされず、この間隙からチャック内部への切り粉や切削油の侵入を 防止できないという問題があった。

【０００６】 本考案は、上述の事情に鑑みて、異なるチャック装置間での互換性を有すると 共に既存のチャック装置にも適用可能であり、しかもチャック内部に対する完全 なシール効果を有する安価で耐久性に優れる防塵シールと、これを用いたテーパ コレット方式の工具チャックを提供するものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するために、この考案に係る工具チャック用防塵シールは、 最小内径が工具のシャンク外径より小さい環状弾性体の前面側に、環状金属板が 固着されてなる構成を採用したものである。

【０００８】 また同様目的において、この考案に係る工具チャックは、チャック筒のテーパ 孔にテーパコレットを介して嵌挿した工具を、該チャック筒に外嵌螺合して且つ テーパコレットに係嵌した締付用ナットの締め付けによって緊締固定するものに おいて、上記工具に前記構成の第一の防塵シールがその後端側を上記締付用ナッ トの前端面に密接して嵌装されると共に、該締付用ナットの後端面とチャック筒 の外周に設けた環状段部との間に環状弾性体からなる第二の防塵シールが介在さ れてなるものである。

【０００９】

【作用】 本考案の工具チャック用防塵シールは、環状弾性体を主体とするため、その最 小内径よりも大きいシャンク径を有する工具の該シャンク部に圧嵌して装着する ことができ、後端側外径がチャック部前端面の間隙部分の径より大きいものを用 いることにより、上記装着状態で後端側をチャック部前端面に密着させて間隙部 分をシールできる。また、工具に装着された防塵シールは、上記径差によって内 周が強制的に拡径された状態にあるため、その弾性復元力が工具のシャンク部を 常に緊締するように作用する。しかして、環状弾性体の前面側は環状金属板にて 保護されているから、切削加工中に飛散する切り粉が該環状弾性体に突き刺さっ たり傷つけたりせず、防塵シールの耐久性が著しく向上する。

【００１０】 なお、環状弾性体の後端面に環状リップ部を形成すれば、柔軟な該リップ部を チャック部の前端面に常時弾圧状態で密着させることができる。また、環状弾性 体に前面に臨む環状テーパー面を設け、環状金属板が該環状テーパー面を覆うも のとすれば、切削加工中の高速回転下において、遠心力による環状弾性体の外側 への脹らみ変形が環状金属板にて抑えられ、該変形に伴う環状弾性体の内径拡大 による工具との界面の密着性低下および環状弾性体のチャック部端面からの離反 が防止される。

【００１１】 一方、本考案の工具チャックは、テーパコレット方式のチャックにおいて上記 防塵シールをチャック筒前端側のシール手段として用いたものであるが、この防 塵シールを第一のものとして、環状弾性体からなる第二の防塵シールを締付用ナ ットの後端面とチャック筒の外周に設けた環状段部との間に介在させている。し かして、第二の防塵シールは、工具取付時に締付用ナットを緊締せしめた際、該 ナット後端面と上記環状段部との間で挟圧されて圧縮変形するように設定される 。従って、チャック筒前端側では、締付用ナットとテーパーコレットとの界面の 前端側、工具とテーパコレットとの界面、締付用ナットの外環体と内環体との隙 間がいずれも第一の防塵シールにて封止されると共に、締付用ナットとチャック 筒との螺合界面の後端側も第二の防塵シールにより封止されることになる。更に 第二の防塵シールの外周面または．および内周面に金属または硬質の合成樹脂性 の環状体を固着することによって、第二の防塵シールの外周面の切屑等による損 傷を防ぐことができ、また第二の防塵シールの内周面の磨耗を防止することがで きる。

【００１２】

【実施例】

図１は本考案の一実施例に係る工具チャック用防塵シール１０を示す。この防 塵シール１０は、外周が前面（工具への嵌装時に工具刃先側に向く面）に臨む環 状テーパ面１１ａをなす円環状の弾性体１１と、その環状テーパ面１１ａを含む 前面側のほぼ全体を覆う環状金属板１２とが、融着もしくは接着にて一体化され たものである。

【００１３】 しかして、弾性体１１は、オイルシール用Ｏリングと同様の軟質ゴムや軟質合 成樹脂等の弾性高分子材料の成形物からなり、後端面に、外周縁に沿って前記テ ーパ面１１ａの延長方向に突出する外側環状リップ部１３ａと、その内側に位置 して略同方向に突出する内側環状リップ部１３ｂとを備えると共に、内周面１１ ｂには各々前方側に傾いた山形の断面をなす複数の周方向の凸条１４…が平行に 形成されて凹凸状の滑り止め部を構成している。環状金属板１２は、円孔１２ａ が弾性体１１の内周面１１ｂにおける谷部内径よりも若干大きい内径に設定され 、後端縁が弾性体１１の外側環状リップ部１３ａ外周面より若干弾性体１１のテ ーパ面１１ａ寄り或いは該テーパ面１１ａまでを覆う大きさを有している。

【００１４】 図２は、切削工具１５を装着した本考案の一実施例に係るテーパコレット方式 の工具チャックを示す。この工具チャックは、チャック本体１６の前部側に、外 周面にねじ部１７ａを有して内側が奥細テーパ孔１７ｂをなすチャック筒１７を 備えており、切削工具１５のシャンク部１５ａを嵌合させたテーパコレット１８ を上記テーパ孔１７ｂに挿入し、該コレット１８に係嵌した締付用ナット１９を チャック筒１７に外嵌螺合させて締め付けることにより、コレット１８がチャッ ク筒１７の内奥側へ強制的に圧入されて縮径し、工具１５が該コレット１８によ るシャンク部１５ａの締め付けによってチャック筒１７に軸方向移動および相対 回転不能に把持されるようになされている。

【００１５】 なお、コレット１８の外端部近傍の外周面には環状係止溝１８ａを有し、該係 止溝１８ａに締付用ナット１９の内向きフランジ部２０が係入しているため、該 ナット１９を緩めることによってコレット１８がテーパ孔１７ａから抜脱される 。また、図３でも示すように締付用ナット１９は、内面にチャック筒１７のねじ 部１７ａに対応するねじ部を有する外環体１９ａと、その前部側の内周にボール ベアリング２１を介して相対回転自在に嵌装されて前記内向きフランジ部２０を 有する内環体１９ｂとからなり、両環体１９ａ，１９ｂの前端面が略面一となる ように設定されている。

【００１６】 しかして、工具１５のシャンク部１５ａには、そのシャンク径ｄ₂ よりも小さ い最小内径ｄ₁ （図１参照）の前記防塵シール１０がコレット１８の前方位置に 圧嵌装着されている。この防塵シール１０は、図３の如く、上記工具１５の取付 状態において、外側環状リップ部１３ａが締付用ナット１９の外環体１９ａの前 端面に、内側環状リップ部１３ｂが同じく内外環体１９ｂの前端面に、それぞれ 弾圧接触している。

【００１７】 一方、チャック筒１７の外周には前方に臨む環状段部１７ｃがねじ部１７ａの 後部に形成されており、この環状段部１７ｃの前方に、外周面に断面Ｖ字形の環 状溝２２ａを有する環状弾性体からなる防塵シール２２が嵌装されている。この 防塵シール２２は、工具１５の取付において締付用ナット１９を緊締せしめた際 、該ナット１９の後端面と環状段部１７ｃとの間で挟圧され、環状溝２２ａの開 きが狭まる形で軸方向に圧縮変形するように設定されている。更にこの防塵シー ル２２の外周面には金属または合成樹脂製の環状体２４ａが前記Ｖ字形の環状溝 ２２ａの部分を除いて固着され、これによって防塵シール２２の外周面が切屑等 の付着による損傷から防止することができ、また図４に示すように防塵シール２ ２の内周面に、さらには図５に示すように外周面にも金属または合成樹脂製の環 状体２４ａ、２４ｂを固着することによって防塵シール２２の内周面については 摺動による磨耗あるいは防塵シール２２の収縮による雄ねじ２３ｄに対する食い 込みを防止することができる。

【００１８】 上記構成によれば、締付用ナット１９の両環体１９ａ，１９ｂ間の間隙２３ａ 、該ナット１９とコレット１８との界面２３ｂ、工具１５のシャンク部１５ａと コレット１８との界面２３ｃの各前端側が全て防塵シール１０にて覆われて密封 されると共に、締付用ナット１９とチャック筒１７との螺合界面２３ｄの後端側 も該ナット１９の後端面と環状段部１７ｃとの間で挟圧された防塵シール２２に より密封されるため、切削加工中にこれら間隙２３ａや界面２３ｂ〜２３ｄへの 切り粉や切削油の侵入が完全に阻止され、該侵入によるチャッキング精度および 把持力の低下ならびに各部材及びチャック前体の寿命短縮も回避される。

【００１９】 しかも、前端側の第一の防塵シール１０は、図３の如く凸条１４が潰れるよう に内周を強制的に拡径した状態にあり、その弾性復元力により工具１５のシャン ク部１５ａを常時緊締しており、且つ各凸条１４の前方へ傾く山形断面によりシ ャンク部１５ａに対して前方つまり抜け方向への移動に対する抵抗が大きいこと から、切削加工中に抜け出す恐れがなく完全なシール状態を保持する。また該防 塵シール１０自体は、切削加工中に飛散する切り粉が当たる前面側を環状金属板 １２で保護しているので、弾性体１１に切り粉が突き刺さったり、該切り粉で弾 性体１１が傷つくことがなく、耐久性に優れ長寿命である。

【００２０】 なお、上記第二の防塵シール２２は外周面に環状溝２２ａを有するため、該環 状溝２２ａが圧縮変形の吸収部となり、工具取付時の該防塵シール２２の軸方向 の圧縮を大きくしてシール性を高め得ると共に、該圧縮による外側への脹らみを 抑止できるという利点がある。

【００２１】 本考案の防塵シールは、前記実施例以外の種々の形状及び構造に設計変更可能 であり、例えば内側環状リップ部１１ｂのないもの、外周の前部側一部のみが環 状テーパ面となったもの、内周面の滑り止め形状が異なるもの等としてもよい。 また本考案の工具チャックにおける各構成部材の細部構造、第二の防塵シールの 形状についても、実施例以外に種々設計変更可能であること言うまでもない。

【００２２】

【考案の効果】

本考案に係る工具チャック用防塵シールによれば、工具のシャンク部に嵌装す るだけでチャック部の前端面を完全にシールすることができ、かつ該工具による 加工中も抜脱する恐れがなく完全なシール状態を維持でき、もってチャック内部 への切り粉や切削油の侵入によるチャッキング精度および工具把持力の低下、更 にはチャック装置の各部および全体の寿命短縮が防止され、加工精度が向上する と共に工具の抜け出しによる被加工物の損傷や重大事故を回避できる。しかも、 この防塵シールは、主体をなす環状弾性体の前面側が環状金属板にて保護されて いるから、切削加工中に飛散する切り粉による該弾性体の傷損を生じず、耐久性 に優れて長寿命であり、また異なるチャック装置および工具に共用可能で既存の チャック装置に支障なく適用できる上、構造的に簡素で安価に提供できるという 利点がある。

【００２３】 また、本考案の請求項２の防塵シールによればチャック部の前端面との密着性 が高くなり、シール性がより向上するという利点がある。更に本考案の請求項３ の防塵シールによれば工具シャンク部に対する密着性が高くなり、共にシール性 がより向上するという利点がある。

【００２４】 一方、本考案の請求項４に係る工具チャックによれば、テーパコレット方式の チャックにおいて、締付用ナットとテーパーコレットとの界面、工具とテーパコ レットとの界面、締付用ナットの外環体と内環体との隙間がいずれも第一の防塵 シールにて封止されると共に、締付用ナットとチャック筒との螺合界面の後端側 も第二の防塵シールにより封止され、切削加工中にこれら間隙や界面への切り粉 や切削油の侵入が完全に阻止され、該侵入によるチャッキング精度及び把持力の 低下ならびに各部材及びチャック全体の寿命短縮を回避できる。

【００２５】 さらに本考案の請求項５に係る工具チャックによれば、第二の防塵シールの外 周面または．および内周面に金属または硬質の合成樹脂性の環状体を固着するこ とによって、第二の防塵シールの外周面の切屑等による損傷や高速回転による第 二の防塵シールの膨らみを防ぐことができ、また第二の防塵シールの内周面の磨 耗やチャック筒雄ねじに対する食い込みを防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本考案の一実施例に係る防塵シールの縦断面
図。

【図２】 本考案の一実施例に係る工具チャックの縦断
面図。

【図３】 同工具チャックの要部の拡大縦断面図。

【図４】 同工具チャックの他の要部の拡大縦断面図。

【図５】 同工具チャックの他の要部の拡大縦断面図。

【図６】 従来のシール手段を施したチャック装置の縦
断面図。

【符号の説明】

１０ 防塵シール １１ 環状弾性体 １１ａ 環状テーパ面 １２ 環状金属板 １３ａ 外側環状リップ部 １３ｂ 内側環状リップ部 １５ 工具 １６ チャック本体 １７ チャック筒 １７ｂ テーパ孔 １７ｃ 環状段部 １８ テーパコレット １９ 締付用ナット ２２ 防塵シール（第二の防塵シール） ２２ａ 環状溝 ２４ａ，２４ｂ 金属または合成樹脂製の環状体 ｄ₁ 防塵シールの最小内径 ｄ₂ シャンク外径

Claims (5)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 最小内径が工具のシャンク外径より小さ
   い環状弾性体の前面側に、環状金属板が固着されてなる
   工具チャック用防塵シール。
2. 【請求項２】 環状弾性体の後端面に環状リップ部が形
   成されてなる請求項１記載の工具チャック用防塵シー
   ル。
3. 【請求項３】 環状弾性体が前面に臨む環状テーパー面
   を有し、環状金属板が該環状テーパー面を覆って固着さ
   れてなる請求項１又は２記載の工具チャック用防塵シー
   ル。
4. 【請求項４】 チャック筒のテーパ孔にテーパコレット
   を介して嵌挿した工具を、該チャック筒に外嵌螺合して
   且つテーパコレットに係嵌した締付用ナットの締め付け
   によって緊締固定する工具チャックにおいて、上記工具
   に請求項１〜３のいずれかに記載される構成の第一の防
   塵シールがその後端側を上記締付用ナットの前端面に密
   接して嵌装されると共に、該締付用ナットの後端面とチ
   ャック筒の外周に設けた環状段部との間に環状弾性体か
   らなる第二の防塵シールが介在されてなる工具チャッ
   ク。
5. 【請求項５】 第二の防塵シールの外周面または．およ
   び内周面に金属または合成樹脂性の環状体を固着してな
   る請求項４記載の工具チャック。