JPH0544667A - 密閉形スクロール圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】密閉容器１内に、スクロール圧縮機部２と電動
機３を備え、圧縮機部２と電動機３により密閉容器１内
を上部，中部，下部の三つの空間に分割した密閉形スク
ロール圧縮機において、密閉容器内に上部空間と中部空
間を連通する通路１８と、中部空間と下部空間を連通す
る通路１９と、これら通路を通過したガスを電動機３下
側コイルエンド部に導く噴射装置２３を設けた。 【効果】密閉形スクロール圧縮機で、圧縮された冷媒ガ
ス中に含まれる油を分離して油溜りに戻す作用が良好に
行われ、油上りを効果的に防ぎ、電動機下側コイルの冷
却を確実に行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は密閉形スクロール圧縮機
に係り、特に、吐出ガスに伴われて潤滑油が圧縮機の外
へ出て行く、いわゆる、油上りを防止するための改良に
関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の密閉形スクロール圧縮機では、特
開平1−77786号公報に開示されるように、潤滑油は仕切
板に衝突した際の速度変化により冷媒ガスと分離され、
仕切板に設けられた多数の透孔から潤滑油溜りに流れ落
ちる方式となっていた。

【０００３】または、特開昭62−126288号公報に示され
るように、潤滑油は電動機上部コイルエンドに衝突した
際の速度変化により冷媒ガスと分離され、電動機外周部
に形成された通路を通って潤滑油溜りに流れ落ちる方式
となっていた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来技術では、潤滑油
と冷媒ガスを仕切板に衝突させて分離させる方式では、
分離された潤滑油が完全に仕切板の透孔から潤滑油溜り
に流れ込まれずに仕切板の上面に溜ってしまう。この潤
滑油に冷媒ガスが衝突するため、潤滑油ははね上がり、
冷媒ガスに再混入して吐出配管から外部に吐出され、油
上り量が増加するという問題点があった。

【０００５】潤滑油と冷媒ガスを電動機上側コイルエン
ドに衝突させて分離させる方式では、分離された潤滑油
はコイルエンドから流れ落ち、一部が電動機外周の通路
に流れず、コイルエンド下方に溜る。この潤滑油に冷媒
ガスが衝突するため、潤滑油ははね上がり、上記の例と
同様、油上り量が増加する。さらには、電動機下部の下
部空間への冷媒ガスの流れ込みが少ないため、電動機下
側コイルの冷却が十分に行われないという問題点があっ
た。

【０００６】本発明の目的は、冷媒ガス中に含まれる油
の分離を良好に行い、油上り量の低減を図り、電動機下
側コイルの冷却を図るように改良された密閉形スクロー
ル圧縮機を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】密閉容器内に、スクロー
ル圧縮機部と電動機を備え、圧縮機部と電動機により密
閉容器内を上部，中部，下部の三つの空間に分割した密
閉形スクロール圧縮機において、密閉容器内に上部空間
と中部空間に連通する通路と、中部空間と下部空間を連
通する通路と、この通路を通過したガスを電動機下側の
コイルエンド部に導く噴射装置を設けた。

【０００８】

【作用】潤滑油溜りから吸い上げられ、各軸受やスクロ
ール摺動部を潤滑した潤滑油は、固定スクロールの吐出
口から上部空間に冷媒ガスに混って吐出され、圧縮機部
外周の通路を通って中部空間に入り、更に電動機外周の
通路を通った後、噴射装置によって電動機下側のコイル
エンドに噴きつけられ衝突して冷媒ガスと分離されコイ
ルエンドに付着した後、静かに油溜りに滴下する。冷媒
ガスはコイルエンドに衝突する際、潤滑油と分離される
と同時に電動機下側コイルを冷却する。

【０００９】この作用により油上り量の低減および電動
機下側コイルの冷却を図ることができる。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図１，図２により
説明する。図１は本発明を実施した密閉形スクロール圧
縮機の全体構造断面図を示す。

【００１１】図１において、密閉容器１内の上方には圧
縮機部２が、下方には電動機３がそれぞれ配設され、ま
た、密閉容器１の底部には潤滑の油溜り４が形成されて
いる。圧縮機部２は、台板上にうず巻状のラップ５ａを
もつ固定スクロール５と、同じく台板上にうず巻状のラ
ップ６ａをもつ旋回スクロール６と、固定スクロール５
と一体化され、旋回スクロール６を支持するフレーム７
を具え、固定スクロール５および旋回スクロール６のラ
ップ同士を噛合わせた構成となっている。また、旋回ス
クロール６とフレーム７との間には、旋回スクロール６
の自転を防止するオルダム機構８が設けられている。電
動機３は密閉容器１に圧入締結され、クランク軸９を介
して旋回スクロール６を旋回運動させるようになってい
る。クランク軸９はフレーム７に設けた主軸受１０と下
軸受１１とで支承され、そのクランクピンは旋回スクロ
ール６の背面に設けた旋回軸受１２に嵌合されている。

【００１２】クランク軸９内には主軸受１０，下軸受１
１および旋回軸受１２へ潤滑油を導く給油通路１３が設
けられ、かつ電動機３の軸端には油溜り４の潤滑油を吸
い上げて給油通路１３へ送り込む給油装置１４が設けら
れている。

【００１３】圧縮機部２は、旋回スクロール６が電動機
３で駆動されるクランク軸９を介して旋回運動をする
と、旋回スクロール６，固定スクロール５により形成さ
れる空間（圧縮室）がスクロール中心方向に移動するに
つれて容積を減少して、吸入した冷媒ガスを圧縮する。
圧縮された冷媒ガスは固定スクロール５の台板の中央に
設けられた吐出口１６から密閉容器内の上部空間１７へ
吐出される。

【００１４】また、旋回スクロールの背面には、圧縮行
程のガスを導かれる中間圧室１５の圧力は冷媒ガスの吸
入圧力と吐出圧力の中間の圧力であり、スクロールの摺
動部への給油は、吐出圧力と中間圧力の差圧を利用して
行われる。潤滑油は給油装置１４より給油通路１３を通
り、主軸受１０，下部軸受１１、および、旋回軸受１２
を潤滑した後、中間圧室１５を経て圧縮室に流入し、冷
媒ガスと混合した状態で固定スクロール５の中央に設け
た吐出口１６より密閉容器内の上方空間１７へ吐出され
る。

【００１５】固定スクロール５およびフレーム７と密閉
容器１の内側壁との間には、固定スクロール５およびフ
レーム７の外周部に上下方向に延びる溝を設けることに
よって、上部空間１７中の冷媒ガスを圧縮機部２の下方
の空間へ導くための冷媒通路１８が形成されている。ま
た、圧縮機部２の下方空間と電動機の下方空間を連通さ
せるための冷媒通路１９が、電動機３のコア部を部分的
にカットすることによって、電動機３と密閉容器１の内
側壁との間に形成されており、冷媒通路１９の下側開口
部に連結し電動機３の下側コイルエンドに対向するよう
に開口する噴射装置２３が設けられている。

【００１６】このように密閉容器内の上方空間１７へ吐
出された冷媒ガスおよび潤滑油は、冷媒通路１８を通り
圧縮機部２の下方空間に入る。一部の冷媒ガスは電動機
３の上端に衝突し潤滑油と分離して電動機３の上側コイ
ルを冷却した後、吐出配管２１より吐出される。また、
他の冷媒ガスおよび潤滑油は、更に冷媒通路１９を通っ
て噴射装置２３より電動機３の下側コイルエンドに向か
って吹出して衝突する。この際に潤滑油と冷媒ガスが分
離され、潤滑油はコイルエンドに付着した後、静かに油
溜り４に滴下し、冷媒ガスはコイルエンドの周囲に流れ
込み電動機３の下側コイルを冷却した後、電動機３のロ
ータとステータの間の隙間を通って圧縮機部２の下方空
間に入り、吐出配管２１から吐出される。電動機３のコ
イルエンドは凹凸があるため、仕切板等の平板に冷媒ガ
スを衝突させた場合に生じる潤滑油のはね上がりがない
ため、潤滑油の冷媒ガスへの再混入が防げる。また、冷
媒ガスをコイルエンドに衝突させることにより、図２に
示すようにコイルエンド周囲に冷媒ガスが確実に流れ、
電動機下部に均一に冷却することができる。

【００１７】図３，図４は図１の噴射装置２３の一例を
示す斜視図である。図３では、233が油と冷媒ガスの混
合流体の通路であり、２３１は油と冷媒ガスの混合流体
を噴射する吹出口であり、凸部２３２の中央付近に貫通
する孔として形成されている。２３０は密閉容器内壁に
取付けるための取付代である。図４では、２３４が吹出
口、２３５が通路である。２３７は図３の取付代２３０
をリング状に形成したものであり、密閉容器にはめ込み
方式で取付けられるため取付けが容易である。２３８は
上，下方向の位置ずれを防止するためのつばであり図１
の１ｂ部に密着した状態で組立てられる。２３６は吹出
口付近の製造を容易にするための切欠きであり、なくて
も同等の効果がある。

【００１８】次に、他の実施例について図５により説明
する。図５は本発明を実施した密閉形スクロール圧縮機
の全体構造断面図を示す。本例は、冷媒通路１８と冷媒
通路１９を連結するガイド通路２４と電動機３のロータ
上部にフィン２５を図１の例に追加して設けた構造であ
る。図１の例と同様にして上方空間１７に吐出された冷
媒ガスおよび潤滑油は、そのすべてが冷媒通路１８、ガ
イド通路２４，冷媒通路１９を通り噴射装置２３から電
動機３のコイルエンドに向かって吹出し衝突する。潤滑
油は前例の説明のように冷媒ガスと分離され油溜り４に
滴下する。冷媒ガスは電動機３の下側コイルを冷却後、
電動機３のロータとステータの間に隙間を通って圧縮機
部２の下方空間に入り、ロータ上部に設けたフィン２５
によって撹拌され、電動機３の上側コイルを冷却した
後、吐出配管２１より吐出される。

【００１９】図６は図５の実施例で、ガイド通路２４と
噴射装置２３を一体で形成した例であり、２３９は油と
冷媒ガスの混合流体の通路であり、２３１１は油と冷媒
の混合流体が噴出される吹出口である。２３１０は密閉
容器内壁に取付けるための取付代である。本例は、図５
の実施例と同等の効果が得られる。

【００２０】図７は潤滑油溜り４の上方に仕切板を噴射
装置２３と一体で形成して設けた例であり、図８はその
斜視図である。本例では、電動機３のコイルエンドで分
離された潤滑油は噴射装置２３の仕切板部上に滴下し、
仕切板部に設けられた透孔２３１３より潤滑油溜り４に
滴下する。仕切板部上面には潤滑油が残るが、図２で説
明したように冷媒ガスは電動機３のコイルエンド周囲に
流れ込んだ後に電動機３の下側を通りロータとステータ
の隙間へと流れるため、直接仕切板に衝突させて潤滑油
を分離する場合に比べ、仕切板部（２３）の上方を通る
冷媒の速度は減速しており、潤滑油のはね上がりによる
冷媒ガスへの再混入は生じない。図８では、２３１２が
油と冷媒ガスの混合流体を噴出させる吹出口である。２
３１３は潤滑油溜りに油を滴下させるため透孔である。
２３１４は図７の給油装置１４を潤滑油溜めに貫通させ
るための孔である。２３１５〜２３１７は図７の電動機
３のコアカット部２６をふさぎ、潤滑油を含む冷媒ガス
を確実に吹出口２３１２に導くためのつばであり、上下
方向の位置決めの役割も果たしている。２３１８は潤滑
油を含む冷媒ガスを吹出口方向に導く偏向板であり、反
吹出側先端は密閉容器内壁に密着させず微小隙間を設け
るように形成されており、図７の通路１９を通過する際
に分離された油は、この微小隙間より潤滑油溜りに密閉
容器内壁に沿って流れ込む。但し、微小隙間を設けない
場合についても油分離効果が損われることはない。

【００２１】図９は、噴射装置の吹出口を複数個にした
例であり、潤滑油を含む冷媒ガスを複数の吹出口から噴
出させることにより、電動機のコイルエンドの広い範囲
に衝突させ、潤滑油の分離を効率よく行えるようにした
ものである。図９において２３１９〜２３２１が吹出口
であり、２３２２の外周部が冷媒通路である。2323は密
閉容器内壁に密着させて固定するための取付代である。

【００２２】すべての実施例において、噴射装置におけ
る吹出口の穴形状は円形，長方形以外の場合にも同等の
効果が得られる。

【００２３】

【発明の効果】本発明によれば、密閉形スクロール圧縮
機において、圧縮された冷媒ガス中に含まれる油を分離
して油溜りに戻す作用が良好に行われ、いわゆる油上り
を効果的に防止できると共に、電動機下側コイルの冷却
を確実に行うことができる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例の密閉形スクロール圧縮機の
断面図。

【図２】図１の電動機下側コイルエンド付近の断面図。

【図３】噴射装置の形状の例を示す斜視図。

【図４】噴射装置の形状の例を示す斜視図。

【図５】本発明の一実施例の密閉形スクロール圧縮機の
断面図。

【図６】図５の実施例に関する噴射装置の形状の例を示
す斜視図。

【図７】本発明の一実施例の密閉形スクロール圧縮機の
断面図。

【図８】図７の実施例の仕切板一体形噴射装置の形状の
例を示す斜視図。

【図９】複数個の吹出口をもった噴射装置の形状の例を
示す斜視図。

【符号の説明】

１…密閉容器、２…圧縮機部、３…電動機、４…潤滑油
溜り、５…固定スクロール、６…旋回スクロール、７…
フレーム。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三宅 成志 静岡県清水市村松390番地 株式会社日立 製作所清水工場内

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】密閉容器内に、固定スクロールとこれに噛
   み合う旋回スクロールをもった圧縮機部と、前記圧縮機
   部を作動させるロータおよびステータから成る電動機を
   備え、前記圧縮機部と前記電動機により密閉容器内空間
   を前記圧縮機部の上部の空間と、前記圧縮機部と前記電
   動機の間の中部空間と、前記電動機の下部の空間の三つ
   に分割した密閉形スクロール圧縮機において、前記密閉
   容器内に前記上部空間と前記中部空間を連通する通路
   と、前記中部空間と前記下部空間を連通する通路と、前
   記通路を通過したガスを前記電動機の下側のコイルエン
   ド部に導く噴射装置を設けたことを特徴とする密閉形ス
   クロール圧縮機。