JPH0543941A - 高強度軸部品 - Google Patents
高強度軸部品Info
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- JPH0543941A JPH0543941A JP30966691A JP30966691A JPH0543941A JP H0543941 A JPH0543941 A JP H0543941A JP 30966691 A JP30966691 A JP 30966691A JP 30966691 A JP30966691 A JP 30966691A JP H0543941 A JPH0543941 A JP H0543941A
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- Grinding And Polishing Of Tertiary Curved Surfaces And Surfaces With Complex Shapes (AREA)
- Shafts, Cranks, Connecting Bars, And Related Bearings (AREA)
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】応力集中部において、切欠き感受性を鈍化させ
ることにより疲労強度を向上させる。 【構成】それ自身の形状や加工処理等により形成された
応力集中部をもつ高強度軸部品において、該応力集中部
の表面を、応力集中部以外の部分の表面より低硬さであ
る低硬さ層により構成することにより、応力集中部にお
ける切欠き感受性が鈍化させて、疲労強度を向上させ
る。
ることにより疲労強度を向上させる。 【構成】それ自身の形状や加工処理等により形成された
応力集中部をもつ高強度軸部品において、該応力集中部
の表面を、応力集中部以外の部分の表面より低硬さであ
る低硬さ層により構成することにより、応力集中部にお
ける切欠き感受性が鈍化させて、疲労強度を向上させ
る。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、締結部にスプラインを
もつ軸部品や中空の動力伝達軸部品などの高強度軸部品
に関する。
もつ軸部品や中空の動力伝達軸部品などの高強度軸部品
に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、鋼材における表面硬さと表面部
の捩り許容応力とは比例関係にある。このため、捩り強
度を必要とする軸部品としては、従来より、中炭素鋼に
高周波焼入れ、焼戻しを実施して高硬さとすることによ
り実用に供している。また、高強度化の方策として、炭
素含有量の増大により表面硬さを増大させたり、さらに
Mn、Mo、Cr、Si、Ni等の元素添加により焼入
れ性を増大させて焼きのはいる深さを増大させたりして
いる。
の捩り許容応力とは比例関係にある。このため、捩り強
度を必要とする軸部品としては、従来より、中炭素鋼に
高周波焼入れ、焼戻しを実施して高硬さとすることによ
り実用に供している。また、高強度化の方策として、炭
素含有量の増大により表面硬さを増大させたり、さらに
Mn、Mo、Cr、Si、Ni等の元素添加により焼入
れ性を増大させて焼きのはいる深さを増大させたりして
いる。
【0003】このような捩り強度を必要とする軸部品と
して、締結部としてスプラインをもつものがあり、これ
は平滑部と、この平滑部に一体的に形成され平滑部の外
径より大きなスプライン小径をもつスプライン部とから
構成されている。また、上記捩じり強度を必要とする軸
部品として、ガンドリル加工やシームレスパイプ(継目
無鋼管)による中空の動力伝達軸がある。
して、締結部としてスプラインをもつものがあり、これ
は平滑部と、この平滑部に一体的に形成され平滑部の外
径より大きなスプライン小径をもつスプライン部とから
構成されている。また、上記捩じり強度を必要とする軸
部品として、ガンドリル加工やシームレスパイプ(継目
無鋼管)による中空の動力伝達軸がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記スプラ
イン部をもつ軸部品では、スプライン部の表面に応力集
中が発生する。このような軸部品を低硬さである低炭素
鋼で形成した場合、平滑部及びスプライン部の静的捩り
強度、疲労強度に関係なく外径の小さい平滑部で破損す
る。また、上記軸部品を高硬さである高炭素鋼で形成し
た場合、静的捩り強度は増大するが、高硬さであるがゆ
えに切欠き感受性が増大し、疲労強度が逆に低下する。
このため、例えば高サイクルの疲労試験では、応力集中
が発生するスプライン部で破損することになる。
イン部をもつ軸部品では、スプライン部の表面に応力集
中が発生する。このような軸部品を低硬さである低炭素
鋼で形成した場合、平滑部及びスプライン部の静的捩り
強度、疲労強度に関係なく外径の小さい平滑部で破損す
る。また、上記軸部品を高硬さである高炭素鋼で形成し
た場合、静的捩り強度は増大するが、高硬さであるがゆ
えに切欠き感受性が増大し、疲労強度が逆に低下する。
このため、例えば高サイクルの疲労試験では、応力集中
が発生するスプライン部で破損することになる。
【0005】また、上記ガンドリル加工により軸心に中
空部が形成された中空の動力伝達軸では、ガンドリル加
工面である内周面に切削屑による傷が残存したり、上記
シームレスパイプによる中空の動力伝達軸では、パイプ
製造時、穿孔機で穴あけした加工面である内周面に傷が
残存する。このような加工内周面に残存する傷は疲労亀
裂の起点となるので、疲労強度の高い中空の動力伝達軸
を作製するには、上記中空を形成した加工内周面にさら
にリーマ加工を施して傷を無くすことが必要とされてい
た。しかし、長さが500〜600mmの自動車用車軸
部品などにリーマ加工を施すことは、多大なコストを必
要とし、量産的には非現実的である。
空部が形成された中空の動力伝達軸では、ガンドリル加
工面である内周面に切削屑による傷が残存したり、上記
シームレスパイプによる中空の動力伝達軸では、パイプ
製造時、穿孔機で穴あけした加工面である内周面に傷が
残存する。このような加工内周面に残存する傷は疲労亀
裂の起点となるので、疲労強度の高い中空の動力伝達軸
を作製するには、上記中空を形成した加工内周面にさら
にリーマ加工を施して傷を無くすことが必要とされてい
た。しかし、長さが500〜600mmの自動車用車軸
部品などにリーマ加工を施すことは、多大なコストを必
要とし、量産的には非現実的である。
【0006】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので
あり、応力集中部において、切欠き感受性を鈍化させる
ことにより疲労強度を向上させることを解決すべき技術
課題とするものである。
あり、応力集中部において、切欠き感受性を鈍化させる
ことにより疲労強度を向上させることを解決すべき技術
課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の高強度軸部品
は、それ自身の形状や加工処理等により形成された応力
集中部をもつ高強度軸部品であって、該応力集中部の表
面が、応力集中部以外の部分の表面より低硬さである低
硬さ層により構成されていることを特徴とするものであ
る。
は、それ自身の形状や加工処理等により形成された応力
集中部をもつ高強度軸部品であって、該応力集中部の表
面が、応力集中部以外の部分の表面より低硬さである低
硬さ層により構成されていることを特徴とするものであ
る。
【0008】応力集中部として、平滑部と、該平滑部と
一体的に形成され該平滑部の外径より大きなスプライン
小径をもち締結部となるスプライン部とからなる高強度
軸部品におけるスプライン部や、所定の加工により軸心
部に中空が形成された高強度軸部品において、該所定の
加工が施された加工内周面などを挙げることができる。
一体的に形成され該平滑部の外径より大きなスプライン
小径をもち締結部となるスプライン部とからなる高強度
軸部品におけるスプライン部や、所定の加工により軸心
部に中空が形成された高強度軸部品において、該所定の
加工が施された加工内周面などを挙げることができる。
【0009】スプライン部を上記応力集中部とした本発
明の高強度軸部品は、高硬さの平滑部と、該平滑部と一
体的に形成され、該平滑部の外径より大きなスプライン
小径をもち締結部となるスプライン部とからなり、該ス
プライン部の表面硬さは、次式 H>h≧H(D/d)3 (h:スプライン部表面硬さ、H:平滑部表面硬さ、
d:スプライン小径、D:平滑部外径)を満たすことを
特徴とするものである。
明の高強度軸部品は、高硬さの平滑部と、該平滑部と一
体的に形成され、該平滑部の外径より大きなスプライン
小径をもち締結部となるスプライン部とからなり、該ス
プライン部の表面硬さは、次式 H>h≧H(D/d)3 (h:スプライン部表面硬さ、H:平滑部表面硬さ、
d:スプライン小径、D:平滑部外径)を満たすことを
特徴とするものである。
【0010】一般に、スプライン部をもつ軸部品におけ
る静的捩り強度は、平滑部の外径よりスプライン部のス
プライン小径の方が大きい関係上、平滑部の静的捩り強
度よりスプライン部の静的捩り強度の方が高い。本発明
は、この関係を満足する範囲内でスプライン部の表面硬
さを低下させることにより、応力集中が発生するスプラ
イン部表面の切欠き感受性を鈍化させ、その分スプライ
ン部表面の疲労強度を向上させるものである。
る静的捩り強度は、平滑部の外径よりスプライン部のス
プライン小径の方が大きい関係上、平滑部の静的捩り強
度よりスプライン部の静的捩り強度の方が高い。本発明
は、この関係を満足する範囲内でスプライン部の表面硬
さを低下させることにより、応力集中が発生するスプラ
イン部表面の切欠き感受性を鈍化させ、その分スプライ
ン部表面の疲労強度を向上させるものである。
【0011】このスプライン部の表面硬さの決定基準は
次に示すとおりである。すなわち、鋼材における表面部
の捩り許容応力(kg/mm2 )は表面硬さ(ビッカー
ス硬さ)に比例し、kを比例定数とた場合、 (捩り許容応力)=k×(表面硬さ) の関係が成り立つ。したがって、上記平滑部の捩り許容
応力をτD 、上記スプライン部の捩り許容応力をτd と
した場合、 τD =kH τd =kh となる。ここで、平滑部及びスプライン部の表面にそれ
ぞれT(kg・mm)の負荷トルクが作用した場合、各
表面における捩り許容応力は、 τD =(16T)/(πD3 ) τd =(16T)/(πd3 ) と表され、これらの式より、 (16T)/(πD3 )=kH (16T)/(πd3 )=kh となり、したがって、 h=H(D/d)3 の関係が導かれる。この式を満足するhは、平滑部及び
スプライン部の静的捩り強度が等強度となる値であり、
平滑部の静的捩り強度をスプライン部の静的捩り強度よ
り低くするには、 h≧H(D/d)3 の関係を満足する必要があり、このように範囲内でスプ
ライン部の表面硬さhを低下させる。
次に示すとおりである。すなわち、鋼材における表面部
の捩り許容応力(kg/mm2 )は表面硬さ(ビッカー
ス硬さ)に比例し、kを比例定数とた場合、 (捩り許容応力)=k×(表面硬さ) の関係が成り立つ。したがって、上記平滑部の捩り許容
応力をτD 、上記スプライン部の捩り許容応力をτd と
した場合、 τD =kH τd =kh となる。ここで、平滑部及びスプライン部の表面にそれ
ぞれT(kg・mm)の負荷トルクが作用した場合、各
表面における捩り許容応力は、 τD =(16T)/(πD3 ) τd =(16T)/(πd3 ) と表され、これらの式より、 (16T)/(πD3 )=kH (16T)/(πd3 )=kh となり、したがって、 h=H(D/d)3 の関係が導かれる。この式を満足するhは、平滑部及び
スプライン部の静的捩り強度が等強度となる値であり、
平滑部の静的捩り強度をスプライン部の静的捩り強度よ
り低くするには、 h≧H(D/d)3 の関係を満足する必要があり、このように範囲内でスプ
ライン部の表面硬さhを低下させる。
【0012】また、所定の加工が施された加工内周面を
上記応力集中部とした本発明の高強度軸部品は、所定の
加工により軸心に中空部が形成された高強度軸部品にお
いて、該所定の加工が施された加工内周面に脱炭層が設
けられていることを特徴とするものである。従来のガン
ドリル加工による中空軸部品の製造後や、シームレスパ
イプ製造後における中空内周面には、前述したように疲
労亀裂の起点となる傷が残存しており、本発明では、こ
の加工内周面に脱炭層を設けるものである。
上記応力集中部とした本発明の高強度軸部品は、所定の
加工により軸心に中空部が形成された高強度軸部品にお
いて、該所定の加工が施された加工内周面に脱炭層が設
けられていることを特徴とするものである。従来のガン
ドリル加工による中空軸部品の製造後や、シームレスパ
イプ製造後における中空内周面には、前述したように疲
労亀裂の起点となる傷が残存しており、本発明では、こ
の加工内周面に脱炭層を設けるものである。
【0013】この脱炭層の厚さとしては、上記残存する
傷の深さ以上とすることが好ましい。具体的には、ガン
ドリル加工による切削傷の深さが一般に0.1mm未満
であり、この場合の脱炭層の厚さは0.10〜0.15
mm程度が適当である。また、シームレスパイプ製造後
における傷の深さが一般に0.15mm未満であり、こ
の場合の脱炭層の厚さは0.15〜0.20mm程度が
適当である。なお、従来のガンドレル加工による切削傷
の深さ分布を図12に示し、従来のシームレスパイプ製
造後における傷の深さ分布を図13に示す。ここで、炭
素鋼材(Fe−0.4C−1.5Mn−0.002B)
を脱炭処理するために、900℃での保持時間と鋼材表
面に形成された脱炭層厚さとの関係を図14の線図に示
すとともに、保持時間0.5時間における鋼材表面部分
の断面の金属組織を示す顕微鏡写真(100倍)を図1
5に、保持時間1.5時間における鋼材表面部分の断面
の金属組織を示す顕微鏡写真(100倍)を図16にそ
れぞれ示す。図14に示すように、脱炭層の厚さを0.
1〜0.15mm程度とするには、保持温度を900℃
としたとき、保持時間を0.5時間程度とすることが適
当であり、脱炭層の厚さを0.15〜0.20mm程度
とするには、保持温度を900℃としたとき、保持時間
を1.5時間程度とすることが適当である。
傷の深さ以上とすることが好ましい。具体的には、ガン
ドリル加工による切削傷の深さが一般に0.1mm未満
であり、この場合の脱炭層の厚さは0.10〜0.15
mm程度が適当である。また、シームレスパイプ製造後
における傷の深さが一般に0.15mm未満であり、こ
の場合の脱炭層の厚さは0.15〜0.20mm程度が
適当である。なお、従来のガンドレル加工による切削傷
の深さ分布を図12に示し、従来のシームレスパイプ製
造後における傷の深さ分布を図13に示す。ここで、炭
素鋼材(Fe−0.4C−1.5Mn−0.002B)
を脱炭処理するために、900℃での保持時間と鋼材表
面に形成された脱炭層厚さとの関係を図14の線図に示
すとともに、保持時間0.5時間における鋼材表面部分
の断面の金属組織を示す顕微鏡写真(100倍)を図1
5に、保持時間1.5時間における鋼材表面部分の断面
の金属組織を示す顕微鏡写真(100倍)を図16にそ
れぞれ示す。図14に示すように、脱炭層の厚さを0.
1〜0.15mm程度とするには、保持温度を900℃
としたとき、保持時間を0.5時間程度とすることが適
当であり、脱炭層の厚さを0.15〜0.20mm程度
とするには、保持温度を900℃としたとき、保持時間
を1.5時間程度とすることが適当である。
【0014】
【発明の作用、及び効果】本発明の高強度軸部品は、応
力集中部の表面が、応力集中部以外の部分の表面より低
硬さである低硬さ層により構成されているので、応力集
中部における切欠き感受性が鈍化されて、この結果応力
集中部の疲労強度が向上する。また、スプライン部をも
つ本発明の高強度軸部品は、平滑部を高硬さとし、かつ
スプライン部の静的捩り強度が平滑部の静的捩り強度よ
り高い範囲内で、スプライン部の表面硬さを低下してい
る。このため、応力集中が発生しない平滑部は高硬さで
あるので、充分な静的捩り強度及び疲労強度をもってい
る。また、応力集中が発生するスプライン部は平滑部よ
り高い静的捩り強度をもつとともに、表面硬さが低くな
った分切欠き感受性が鈍化しているので、応力集中に耐
え得る充分な疲労強度をもっている。したがって、スプ
ライン部をもつ本発明の高強度軸部品では、静的捩り強
度及び疲労強度共に高強度化を実現することができる。
力集中部の表面が、応力集中部以外の部分の表面より低
硬さである低硬さ層により構成されているので、応力集
中部における切欠き感受性が鈍化されて、この結果応力
集中部の疲労強度が向上する。また、スプライン部をも
つ本発明の高強度軸部品は、平滑部を高硬さとし、かつ
スプライン部の静的捩り強度が平滑部の静的捩り強度よ
り高い範囲内で、スプライン部の表面硬さを低下してい
る。このため、応力集中が発生しない平滑部は高硬さで
あるので、充分な静的捩り強度及び疲労強度をもってい
る。また、応力集中が発生するスプライン部は平滑部よ
り高い静的捩り強度をもつとともに、表面硬さが低くな
った分切欠き感受性が鈍化しているので、応力集中に耐
え得る充分な疲労強度をもっている。したがって、スプ
ライン部をもつ本発明の高強度軸部品では、静的捩り強
度及び疲労強度共に高強度化を実現することができる。
【0015】さらに、所定の加工により軸心部に中空が
形成された本発明の高強度軸部品は、加工内周面に脱炭
層が設けられて他の外周面より低硬さとなっている。す
なわち、脱炭層が設けられた加工内周面は、焼入れ後に
おいても、軟らかい焼入れ組織となっている。このた
め、たとえ該加工内周面に疲労亀裂の起点となる傷が残
存していても、切欠き感受性が鈍化され、亀裂には到り
にくい。
形成された本発明の高強度軸部品は、加工内周面に脱炭
層が設けられて他の外周面より低硬さとなっている。す
なわち、脱炭層が設けられた加工内周面は、焼入れ後に
おいても、軟らかい焼入れ組織となっている。このた
め、たとえ該加工内周面に疲労亀裂の起点となる傷が残
存していても、切欠き感受性が鈍化され、亀裂には到り
にくい。
【0016】
【実施例】以下、本発明の高強度軸部品の具体的な実施
例を説明する。 (実施例1)本実施例1の高強度軸部品は、図1に示す
ように、φ22.0mmの外径Dをもつ平滑部1と、平
滑部1の両端に一体的に形成されφ22.8mmのスプ
ライン小径dをもつスプライン部2とからなる。なお、
この軸部品の炭素濃度分布及び硬さ分布を図6及び図7
に示すように、平滑部1の表面部の炭素含有量は0.5
0%、表面硬さはHv710であり、スプライン部2の
表面部の炭素含有量は0.35%、表面硬さはHv65
0である。そして、スプライン部2の表面硬さh(ビッ
カース硬さ)と、平滑部1の表面硬さH(ビッカース硬
さ)との関係は、 h≧H(D/d)3 =710×(22.0/22.8)3 ≒638(Hv) を満たしている。
例を説明する。 (実施例1)本実施例1の高強度軸部品は、図1に示す
ように、φ22.0mmの外径Dをもつ平滑部1と、平
滑部1の両端に一体的に形成されφ22.8mmのスプ
ライン小径dをもつスプライン部2とからなる。なお、
この軸部品の炭素濃度分布及び硬さ分布を図6及び図7
に示すように、平滑部1の表面部の炭素含有量は0.5
0%、表面硬さはHv710であり、スプライン部2の
表面部の炭素含有量は0.35%、表面硬さはHv65
0である。そして、スプライン部2の表面硬さh(ビッ
カース硬さ)と、平滑部1の表面硬さH(ビッカース硬
さ)との関係は、 h≧H(D/d)3 =710×(22.0/22.8)3 ≒638(Hv) を満たしている。
【0017】上記軸部品は、炭素含有量0.50%の炭
素鋼材を使用し、以下のように製造した。 (スプライン下径機械加工)まず、上記炭素鋼材にスプ
ライン下径の機械加工を施した(図2)。なお、このス
プライン下径はφ23.85mmとした。 (脱炭)次に、カ−ボンポテンシャル:0.35%、9
50℃の雰囲気中で1時間脱炭処理を施して、鋼材の表
面に脱炭層3を形成した(図3)。 (平滑部機械加工)そして、平滑部となる部分の外周面
に機械加工を施して脱炭層3を除去し、φ22.0mm
の外径Dをもつ平滑部1とした(図4)。 (スプライン部転造加工)さらに、転造によりφ22.
8mmのスプライン小径dをもつスプライン部2を形成
した(図5)。 (高周波焼入れ、焼戻し)最後に、プレ−ト電圧:10
kV、プレ−ト電流:18.5A、グリッド電流:3.
8A(深さ6mm)、加熱時間:8秒、回転数:200
rpm、冷却時間:15秒の条件で高周波焼入れを施
し、続いて180℃、1時間の焼戻しを施すことによ
り、本実施例1の軸部品とした。 (比較例1)炭素含有量0.35%の炭素鋼材を使用
し、前記実施例1のスプライン下径機械 加工、平滑部
機械加工、スプライン部転造加工、高周波焼入れ、焼戻
しの各工程を施して比較例1の軸部品を製造した。 (比較例2)炭素含有量0.50%の炭素鋼材を使用
し、同じく前記実施例1のスプライン下径機械加工、平
滑部機械加工、スプライン部転造加工、高周波焼入れ、
焼戻しの各工程を施して比較例2の軸部品を製造した。 (比較例3)炭素含有量0.50%の炭素鋼材を使用
し、前記実施例1の脱炭工程において、カ−ボンポテン
シャルを0.25%の条件に変更することにより、スプ
ライン部の表面部の炭素含有量を0.25%、スプライ
ン部の表面硬さh’をHv550として、 h’<H(D/d)3 とすること以外は前記実施例1と同様にして比較例3の
軸部品を製造した。
素鋼材を使用し、以下のように製造した。 (スプライン下径機械加工)まず、上記炭素鋼材にスプ
ライン下径の機械加工を施した(図2)。なお、このス
プライン下径はφ23.85mmとした。 (脱炭)次に、カ−ボンポテンシャル:0.35%、9
50℃の雰囲気中で1時間脱炭処理を施して、鋼材の表
面に脱炭層3を形成した(図3)。 (平滑部機械加工)そして、平滑部となる部分の外周面
に機械加工を施して脱炭層3を除去し、φ22.0mm
の外径Dをもつ平滑部1とした(図4)。 (スプライン部転造加工)さらに、転造によりφ22.
8mmのスプライン小径dをもつスプライン部2を形成
した(図5)。 (高周波焼入れ、焼戻し)最後に、プレ−ト電圧:10
kV、プレ−ト電流:18.5A、グリッド電流:3.
8A(深さ6mm)、加熱時間:8秒、回転数:200
rpm、冷却時間:15秒の条件で高周波焼入れを施
し、続いて180℃、1時間の焼戻しを施すことによ
り、本実施例1の軸部品とした。 (比較例1)炭素含有量0.35%の炭素鋼材を使用
し、前記実施例1のスプライン下径機械 加工、平滑部
機械加工、スプライン部転造加工、高周波焼入れ、焼戻
しの各工程を施して比較例1の軸部品を製造した。 (比較例2)炭素含有量0.50%の炭素鋼材を使用
し、同じく前記実施例1のスプライン下径機械加工、平
滑部機械加工、スプライン部転造加工、高周波焼入れ、
焼戻しの各工程を施して比較例2の軸部品を製造した。 (比較例3)炭素含有量0.50%の炭素鋼材を使用
し、前記実施例1の脱炭工程において、カ−ボンポテン
シャルを0.25%の条件に変更することにより、スプ
ライン部の表面部の炭素含有量を0.25%、スプライ
ン部の表面硬さh’をHv550として、 h’<H(D/d)3 とすること以外は前記実施例1と同様にして比較例3の
軸部品を製造した。
【0018】これら実施例1の軸部品、比較例1〜3の
軸部品における平滑部及びスプライン部の表面硬さを表
1に示す。
軸部品における平滑部及びスプライン部の表面硬さを表
1に示す。
【0019】
【表1】 (評価1)前記実施例1の軸部品、及び比較例1〜3の
軸部品について、静的捩り強度試験、及び疲労強度試験
を施した。なお、静的捩り強度試験は捩り試験機を用い
て捩り速度5deg/分で評価することにより、また疲
労強度試験は捩り疲労試験機を用いて5Hzの繰り返し
で評価することにより行った。これらの結果を図8及び
図9に示す。
軸部品について、静的捩り強度試験、及び疲労強度試験
を施した。なお、静的捩り強度試験は捩り試験機を用い
て捩り速度5deg/分で評価することにより、また疲
労強度試験は捩り疲労試験機を用いて5Hzの繰り返し
で評価することにより行った。これらの結果を図8及び
図9に示す。
【0020】これらの結果からも明らかなように、スプ
ライン部の表面硬さが本発明の範囲内にある本実施例1
の軸部品は、比較例2の静的捩り強度を低下させること
なく、106 回(高サイクル領域)の時間疲労強度を格
段と向上させることができた。なお、本実施例1の軸部
品では、静的捩り強度試験及び疲労強度試験共に破断箇
所が平滑部だった。
ライン部の表面硬さが本発明の範囲内にある本実施例1
の軸部品は、比較例2の静的捩り強度を低下させること
なく、106 回(高サイクル領域)の時間疲労強度を格
段と向上させることができた。なお、本実施例1の軸部
品では、静的捩り強度試験及び疲労強度試験共に破断箇
所が平滑部だった。
【0021】一方、平滑部及びスプライン部の表面硬さ
が共にHv650である比較例1の軸部品では、平滑部
の表面硬さが低すぎるため、静的捩り強度試験及び疲労
強度試験共に低トルクで平滑部で破断した。また、平滑
部及びスプライン部の表面硬さが共にHv710である
比較例2の軸部品では、静的捩り強度試験の結果は良好
だったが、スプライン部の表面硬さが高すぎるためにス
プライン部表面における切欠き感受性が増大し、スプラ
イン部表面における疲労強度が低下した。さらに、平滑
部の表面硬さをHv710、スプライン部の表面硬さを
Hv550とした比較例3の軸部品では、スプライン部
における表面硬さが低すぎるため、静的捩り強度試験及
び疲労強度試験共に低トルクでスプライン部で破断し
た。
が共にHv650である比較例1の軸部品では、平滑部
の表面硬さが低すぎるため、静的捩り強度試験及び疲労
強度試験共に低トルクで平滑部で破断した。また、平滑
部及びスプライン部の表面硬さが共にHv710である
比較例2の軸部品では、静的捩り強度試験の結果は良好
だったが、スプライン部の表面硬さが高すぎるためにス
プライン部表面における切欠き感受性が増大し、スプラ
イン部表面における疲労強度が低下した。さらに、平滑
部の表面硬さをHv710、スプライン部の表面硬さを
Hv550とした比較例3の軸部品では、スプライン部
における表面硬さが低すぎるため、静的捩り強度試験及
び疲労強度試験共に低トルクでスプライン部で破断し
た。
【0022】なお、前述した実施例では、スプライン部
2の表面硬さを低下させる硬さ調整処理として、高周波
焼入れ前の脱炭処理法を用いたが、このほかに局部焼戻
し処理法等でも行うことができる。 (実施例2)本実施例2の高強度軸部品は、図10に示
すように、φ30.0mmの外径Dをもつ平滑部1’
と、平滑部1’の両端に一体的に形成されφ35.0m
mのスプライン小径dをもつスプライン部2’とからな
り、軸心に口径φ15.0mmの中空部3が形成されて
いる。
2の表面硬さを低下させる硬さ調整処理として、高周波
焼入れ前の脱炭処理法を用いたが、このほかに局部焼戻
し処理法等でも行うことができる。 (実施例2)本実施例2の高強度軸部品は、図10に示
すように、φ30.0mmの外径Dをもつ平滑部1’
と、平滑部1’の両端に一体的に形成されφ35.0m
mのスプライン小径dをもつスプライン部2’とからな
り、軸心に口径φ15.0mmの中空部3が形成されて
いる。
【0023】上記軸部品は、Fe−0.4C−1.5M
n−0.002Bの丸棒炭素鋼材を使用し、以下のよう
に製造した。 (スプライン下径機械加工)まず、上記丸棒炭素鋼材を
所定長さに切断した後、スプライン下径の機械加工を施
した。なお、このスプライン下径はφ34.4mmとし
た。 (穿孔)上記スプライン下径機械加工を施したものの軸
心部に、口径φ15.0mmの中空部3をガンドリル加
工により形成した。 (脱炭)次に、大気中で900℃、0.5時間脱炭処理
を施して、鋼材の表面に厚さ約130μmの脱炭層を形
成した。なお、この脱炭処理条件は、ガンドリル加工に
よる傷の深さが平均62μm程度であったので、この傷
の深さを考慮して図14に示す処理時間と脱炭層厚さと
の関係により決定することができる。 (平滑部機械加工)そして、平滑部となる部分の外周面
に機械加工を施して脱炭層を除去し、φ30.0mmの
外径Dをもつ平滑部1’とした。 (スプライン部転造加工)さらに、転造によりφ35.
0mmのスプライン小径dをもつスプライン部2’を形
成した。 (高周波焼入れ、焼戻し)最後に、プレ−ト電圧:10
kV、プレ−ト電流:18.5A、グリッド電流:3.
8A(深さ6mm)、加熱時間:8秒、回転数:200
rpm、冷却時間:15秒の条件で高周波焼入れ(ズブ
焼入れ)を施し、続いて180℃、1時間の焼戻しを施
すことにより、本実施例2の軸部品とした。 (比較例4)脱炭処理を施さないこと以外は前記実施例
2と同様にして、比較例4の軸部品を製造した。 (評価2)前記実施例2の軸部品、及び比較例4の軸部
品について、疲労強度試験を施した。なお、疲労強度試
験は捩り疲労試験機(油圧サーボ式)を用いて、捩りト
ルク1500Nm、2000Nm、2500Nm、30
00Nmの各捩りトルク、5Hzの繰り返しで行い、各
捩りトルクにおける破断するまでの繰り返し回数を調べ
ることにより行った。これらの結果を図11に示す。
n−0.002Bの丸棒炭素鋼材を使用し、以下のよう
に製造した。 (スプライン下径機械加工)まず、上記丸棒炭素鋼材を
所定長さに切断した後、スプライン下径の機械加工を施
した。なお、このスプライン下径はφ34.4mmとし
た。 (穿孔)上記スプライン下径機械加工を施したものの軸
心部に、口径φ15.0mmの中空部3をガンドリル加
工により形成した。 (脱炭)次に、大気中で900℃、0.5時間脱炭処理
を施して、鋼材の表面に厚さ約130μmの脱炭層を形
成した。なお、この脱炭処理条件は、ガンドリル加工に
よる傷の深さが平均62μm程度であったので、この傷
の深さを考慮して図14に示す処理時間と脱炭層厚さと
の関係により決定することができる。 (平滑部機械加工)そして、平滑部となる部分の外周面
に機械加工を施して脱炭層を除去し、φ30.0mmの
外径Dをもつ平滑部1’とした。 (スプライン部転造加工)さらに、転造によりφ35.
0mmのスプライン小径dをもつスプライン部2’を形
成した。 (高周波焼入れ、焼戻し)最後に、プレ−ト電圧:10
kV、プレ−ト電流:18.5A、グリッド電流:3.
8A(深さ6mm)、加熱時間:8秒、回転数:200
rpm、冷却時間:15秒の条件で高周波焼入れ(ズブ
焼入れ)を施し、続いて180℃、1時間の焼戻しを施
すことにより、本実施例2の軸部品とした。 (比較例4)脱炭処理を施さないこと以外は前記実施例
2と同様にして、比較例4の軸部品を製造した。 (評価2)前記実施例2の軸部品、及び比較例4の軸部
品について、疲労強度試験を施した。なお、疲労強度試
験は捩り疲労試験機(油圧サーボ式)を用いて、捩りト
ルク1500Nm、2000Nm、2500Nm、30
00Nmの各捩りトルク、5Hzの繰り返しで行い、各
捩りトルクにおける破断するまでの繰り返し回数を調べ
ることにより行った。これらの結果を図11に示す。
【0024】これらの結果からも明らかなように、ガン
ドリルによる加工内周面に脱炭層を設けた本実施例2の
軸部品は、上記加工内周面に脱炭層を設けていない比較
例4の軸部品と比較して、疲労強度が向上した。なお、
各捩りトルクにおける疲労亀裂の起点を調べた結果、比
較例4の軸部品が全て加工内周面に残存する傷を起点に
して疲労亀裂が発生しているのに対し、本実施例2の軸
部品は全て通常の最大応力箇所である外周部近傍の介在
物を起点にして疲労亀裂が発生していた。これは、本実
施例2の軸部品は、加工内周面に残存する傷による切欠
き感受性が鈍化され、本来の疲労強度を得ることが可能
となったことを示している。 (実施例3)前記実施例2と同形状の高強度軸部品を、
Fe−0.4C−1.5Mn−0.002Bの丸棒炭素
鋼材を使用し、以下のように製造した。 (ビレット加熱)上記丸棒炭素鋼材を、加熱温度125
0℃、加熱時間120分の条件で加熱した。 (穿孔)上記加熱処理を施したものの軸心部に、口径φ
60.0mm程度の軸孔をマンドレルミルにより形成し
た。 (圧延)軸孔内に芯金を配設し、圧下率1.8の条件で
圧延処理を施した。 (脱炭)上記芯金を取り外した状態で、大気中で900
℃、1.0時間脱炭処理を施して、鋼材の表面に厚さ約
200μmの脱炭層を形成した。なお、この脱炭処理条
件は、マンドレルミルにより軸孔内周面の傷の深さが平
均160μm程度であったので、この傷の深さを考慮し
て図14に示す処理時間と脱炭層厚さとの関係により決
定することができる。 (圧延)上記脱炭処理を施した鋼材を、圧下率1.2の
条件で再び圧延処理を施した。 (スプライン下径機械加工)上記鋼材を所定長さに切断
した後、スプライン下径の機械加工を施した。なお、こ
のスプライン下径はφ35.0mmとした。 (平滑部機械加工)そして、平滑部となる部分の外周面
に機械加工を施して脱炭層を除去し、φ30.0mmの
外径Dをもつ平滑部1’とした。 (スプライン部転造加工)さらに、転造によりφ34.
4mmのスプライン小径dをもつスプライン部2’を形
成した。 (高周波焼入れ、焼戻し)最後に、プレ−ト電圧:10
kV、プレ−ト電流:18.5A、グリッド電流:3.
8A(深さ6mm)、加熱時間:8秒、回転数:200
rpm、冷却時間:15秒の条件で高周波焼入れ(ズブ
焼入れ)を施し、続いて180℃、1時間の焼戻しを施
すことにより、本実施例3の軸部品とした。 (比較例5)脱炭処理を施さないこと以外は前記実施例
3と同様にして、比較例5の軸部品を製造した。 (評価3)前記実施例3の軸部品、及び比較例5の軸部
品について、前記評価2と同様にして、疲労強度試験を
施した。これらの結果を図11に併せて示す。
ドリルによる加工内周面に脱炭層を設けた本実施例2の
軸部品は、上記加工内周面に脱炭層を設けていない比較
例4の軸部品と比較して、疲労強度が向上した。なお、
各捩りトルクにおける疲労亀裂の起点を調べた結果、比
較例4の軸部品が全て加工内周面に残存する傷を起点に
して疲労亀裂が発生しているのに対し、本実施例2の軸
部品は全て通常の最大応力箇所である外周部近傍の介在
物を起点にして疲労亀裂が発生していた。これは、本実
施例2の軸部品は、加工内周面に残存する傷による切欠
き感受性が鈍化され、本来の疲労強度を得ることが可能
となったことを示している。 (実施例3)前記実施例2と同形状の高強度軸部品を、
Fe−0.4C−1.5Mn−0.002Bの丸棒炭素
鋼材を使用し、以下のように製造した。 (ビレット加熱)上記丸棒炭素鋼材を、加熱温度125
0℃、加熱時間120分の条件で加熱した。 (穿孔)上記加熱処理を施したものの軸心部に、口径φ
60.0mm程度の軸孔をマンドレルミルにより形成し
た。 (圧延)軸孔内に芯金を配設し、圧下率1.8の条件で
圧延処理を施した。 (脱炭)上記芯金を取り外した状態で、大気中で900
℃、1.0時間脱炭処理を施して、鋼材の表面に厚さ約
200μmの脱炭層を形成した。なお、この脱炭処理条
件は、マンドレルミルにより軸孔内周面の傷の深さが平
均160μm程度であったので、この傷の深さを考慮し
て図14に示す処理時間と脱炭層厚さとの関係により決
定することができる。 (圧延)上記脱炭処理を施した鋼材を、圧下率1.2の
条件で再び圧延処理を施した。 (スプライン下径機械加工)上記鋼材を所定長さに切断
した後、スプライン下径の機械加工を施した。なお、こ
のスプライン下径はφ35.0mmとした。 (平滑部機械加工)そして、平滑部となる部分の外周面
に機械加工を施して脱炭層を除去し、φ30.0mmの
外径Dをもつ平滑部1’とした。 (スプライン部転造加工)さらに、転造によりφ34.
4mmのスプライン小径dをもつスプライン部2’を形
成した。 (高周波焼入れ、焼戻し)最後に、プレ−ト電圧:10
kV、プレ−ト電流:18.5A、グリッド電流:3.
8A(深さ6mm)、加熱時間:8秒、回転数:200
rpm、冷却時間:15秒の条件で高周波焼入れ(ズブ
焼入れ)を施し、続いて180℃、1時間の焼戻しを施
すことにより、本実施例3の軸部品とした。 (比較例5)脱炭処理を施さないこと以外は前記実施例
3と同様にして、比較例5の軸部品を製造した。 (評価3)前記実施例3の軸部品、及び比較例5の軸部
品について、前記評価2と同様にして、疲労強度試験を
施した。これらの結果を図11に併せて示す。
【0025】これらの結果からも明らかなように、加工
内周面に脱炭層を設けた本実施例3の軸部品は、上記加
工内周面に脱炭層を設けていない比較例5の軸部品と比
較して、疲労強度が向上した。なお、各捩りトルクにお
ける疲労亀裂の起点を調べた結果、比較例5の軸部品が
全て加工内周面に残存する傷を起点にして疲労亀裂が発
生しているのに対し、本実施例3の軸部品は全て通常の
最大応力箇所である外周部近傍の介在物を起点にして疲
労亀裂が発生していた。 (評価4)前記実施例2、3、及び比較例4、5と同様
の炭素鋼材より、それぞれ同様の方法により長さ590
mmの試験片を作製し、これらの試験片について、室
温、空気中での3点曲げ試験(支点間距離400mm)
を行った。
内周面に脱炭層を設けた本実施例3の軸部品は、上記加
工内周面に脱炭層を設けていない比較例5の軸部品と比
較して、疲労強度が向上した。なお、各捩りトルクにお
ける疲労亀裂の起点を調べた結果、比較例5の軸部品が
全て加工内周面に残存する傷を起点にして疲労亀裂が発
生しているのに対し、本実施例3の軸部品は全て通常の
最大応力箇所である外周部近傍の介在物を起点にして疲
労亀裂が発生していた。 (評価4)前記実施例2、3、及び比較例4、5と同様
の炭素鋼材より、それぞれ同様の方法により長さ590
mmの試験片を作製し、これらの試験片について、室
温、空気中での3点曲げ試験(支点間距離400mm)
を行った。
【0026】その結果、各試験片の曲げ強度自体は、そ
れぞれ8200〜9000kgf程度で大差がなかった
が、実施例2、3、及び比較例5に係る試験片が試験後
において曲がるだけで破断しなかったのに対して、比較
例4に係る試験片だけ試験後において破断した。比較例
4に係る試験片は、ガンドリルによる加工内周面に円周
方向に傷が残存しているため、この傷を起点に破断が生
じたと考えられる。これに対して、ガンドリルによる加
工内周面に脱炭層を設けた本実施例2に係る試験片は、
上記加工内周面の切欠き感受性が鈍化させているため破
断に到らなかったものと考えられる。なお、シームレス
パイプによる実施例3及び比較例5に試験片は、加工内
周面に残存する傷の方向が軸方向であるため、双方とも
に破断に到らなかった。
れぞれ8200〜9000kgf程度で大差がなかった
が、実施例2、3、及び比較例5に係る試験片が試験後
において曲がるだけで破断しなかったのに対して、比較
例4に係る試験片だけ試験後において破断した。比較例
4に係る試験片は、ガンドリルによる加工内周面に円周
方向に傷が残存しているため、この傷を起点に破断が生
じたと考えられる。これに対して、ガンドリルによる加
工内周面に脱炭層を設けた本実施例2に係る試験片は、
上記加工内周面の切欠き感受性が鈍化させているため破
断に到らなかったものと考えられる。なお、シームレス
パイプによる実施例3及び比較例5に試験片は、加工内
周面に残存する傷の方向が軸方向であるため、双方とも
に破断に到らなかった。
【図1】実施例1の高強度軸部品の全体を示す正面図で
ある。
ある。
【図2】実施例1の軸部品に係り、炭素鋼材にスプライ
ン下径機械加工を施した状態を示す部分正面図である。
ン下径機械加工を施した状態を示す部分正面図である。
【図3】実施例1の軸部品に係り、脱炭処理後の状態を
示す部分断面図である。
示す部分断面図である。
【図4】実施例1の軸部品に係り、平滑部機械加工後の
状態を示す部分断面図である。
状態を示す部分断面図である。
【図5】実施例1の軸部品に係り、スプライン部転造加
工後の状態を示す部分断面図である。
工後の状態を示す部分断面図である。
【図6】実施例1の軸部品における表面付近の炭素濃度
分布を示すグラフである。
分布を示すグラフである。
【図7】実施例1の軸部品における表面付近の表面硬さ
分布を示すグラフである。
分布を示すグラフである。
【図8】実施例1の軸部品及び比較例1〜3の軸部品に
おける静的捩り強度試験の結果を示す棒グラフである。
おける静的捩り強度試験の結果を示す棒グラフである。
【図9】実施例1の軸部品及び比較例1〜3の軸部品に
おける疲労強度試験の結果を示す棒グラフである。
おける疲労強度試験の結果を示す棒グラフである。
【図10】実施例2の高強度軸部品の全体を示す一部断
面正面図である。
面正面図である。
【図11】実施例2、3の軸部品及び比較例4、5の軸
部品における疲労強度試験の結果を示すグラフである。
部品における疲労強度試験の結果を示すグラフである。
【図12】従来のガンドリル加工による切削傷の深さ分
布を示すグラフである。
布を示すグラフである。
【図13】従来のシームレスパイプ製造後における傷の
深さ分布を示すグラフである。
深さ分布を示すグラフである。
【図14】900℃での保持時間と鋼材表面に形成され
る脱炭層厚さとの関係を示すグラフである。
る脱炭層厚さとの関係を示すグラフである。
【図15】保持温度900℃、保持時間0.5時間の脱
炭処理後における鋼材表面部分の断面の金属組織を示す
顕微鏡写真(100倍)である。
炭処理後における鋼材表面部分の断面の金属組織を示す
顕微鏡写真(100倍)である。
【図16】保持温度900℃、保持時間1.5時間の脱
炭処理後における鋼材表面部分の断面の金属組織を示す
顕微鏡写真(100倍)である。
炭処理後における鋼材表面部分の断面の金属組織を示す
顕微鏡写真(100倍)である。
1、1’は平滑部、2、2’はスプライン部、3は中空
部である。
部である。
Claims (3)
- 【請求項1】それ自身の形状や加工処理等により形成さ
れた応力集中部をもつ高強度軸部品であって、 該応力集中部の表面が、応力集中部以外の部分の表面よ
り低硬さである低硬さ層により構成されていることを特
徴とする高強度軸品。 - 【請求項2】高硬さの平滑部と、 該平滑部と一体的に形成され、該平滑部の外径より大き
なスプライン小径をもち締結部となるスプライン部とか
らなり、 該スプライン部の表面硬さは、次式 H>h≧H(D/d)3 (h:スプライン部表面硬さ H:平滑部表面硬さ d:スプライン小径 D:平滑部外径) を満たすことを特徴とする高強度軸部品。 - 【請求項3】所定の加工により軸心に中空部が形成され
た高強度軸部品において、 該所定の加工が施された加工内周面に脱炭層が設けられ
ていることを特徴とする高強度軸部品。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2-291284 | 1990-10-29 | ||
JP29128490 | 1990-10-29 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0543941A true JPH0543941A (ja) | 1993-02-23 |
Family
ID=17766887
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP30966691A Pending JPH0543941A (ja) | 1990-10-29 | 1991-10-29 | 高強度軸部品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0543941A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010029841A1 (ja) * | 2008-09-12 | 2010-03-18 | Ntn株式会社 | 動力伝達軸、ドライブシャフト及びプロペラシャフト |
-
1991
- 1991-10-29 JP JP30966691A patent/JPH0543941A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010029841A1 (ja) * | 2008-09-12 | 2010-03-18 | Ntn株式会社 | 動力伝達軸、ドライブシャフト及びプロペラシャフト |
JP2010065815A (ja) * | 2008-09-12 | 2010-03-25 | Ntn Corp | 動力伝達軸 |
US20110136580A1 (en) * | 2008-09-12 | 2011-06-09 | Hirokazu Ooba | Power transmission shaft, drive shaft, and propeller shaft |
US8435125B2 (en) | 2008-09-12 | 2013-05-07 | Ntn Corporation | Power transmission shaft, drive shaft, and propeller shaft |
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