JPH054197B2 - - Google Patents
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- JPH054197B2 JPH054197B2 JP5709889A JP5709889A JPH054197B2 JP H054197 B2 JPH054197 B2 JP H054197B2 JP 5709889 A JP5709889 A JP 5709889A JP 5709889 A JP5709889 A JP 5709889A JP H054197 B2 JPH054197 B2 JP H054197B2
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Description
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、ガスシールドアーク溶接用フラツク
ス入りワイヤに係り、特に炭素鋼、低合金鋼等の
薄板、中板、とりわけ薄板の重ねすみ肉溶接など
において、揃いが良好で非常に光沢のあるビード
を与えるガスシールドアーク溶接用フラツクス入
りワイヤに関するものである。 (従来の技術及び解決しようとする課題) 例えば、薄板(特に3.2mm厚以下)の溶接の場
合、溶接施工法などの選定に当つては、一般に次
の項目等が考慮される。 (1) 継手部の性能 (2) 溶接能率性 (3) 溶接作業性及びビード外観 このうち、特に(2)、(3)に関しては最も重要視さ
れる項目である。 しかし、(2)の溶接能率性は現状のガスシールド
アーク溶接法の適用でほぼ満足できる水準にある
と考えられる。 また、(3)の溶接作業性及びビード外観に関して
は、現在市場に提供されている溶接材料或いは施
工法では充分に対応されていないのが実情であ
る。 すなわち、薄板溶接における溶接作業性で最も
問題視されているのがビード外観である。 一般にビード外観は安定したアーク、溶滴移行
などにも影響されるが、とりわけビードを覆うス
ラグが大きな役割を担つていると言える。例え
ば、スラグ量が極めて少ないソリツドワイヤやメ
タル系フラツクス入りワイヤは、被覆アーク溶接
棒やスラグ系のフラツクス入りワイヤに比べ、ビ
ードの光沢つやがなく、ビード外観は良いとは言
えない。 これからすると、ビード外観を重視する箇所で
は、スラグ系のフラツクス入りワイヤを用いれば
良いわけだが、薄板のすみ肉溶接の場合、溶接部
近傍の鋼板温度が極めて高くなり易いため、現在
市場に提供されているスラグ系のフラツクス入り
ワイヤでは、スラグの粘性、凝固状態等の物性が
変化し、本来の安定した被包性が著しく劣化して
しまう。このため、溶接ビードは、スラグが被つ
た部分とスラグが被らなかつた部分のビード外観
が大幅に異なり、全体として見栄えのしないビー
ドになつてしまう。こうしたスラグの被りのバラ
ツキは、特に薄板の高速溶接の場合、顕著とな
る。 以上の理由から、従来は、スラグ量が少なく、
一見一様に見えるソリツドワイヤのビード外観の
方が好まれている。 本発明は、このような状況に着目してなされた
ものであつて、薄板の高速すみ肉溶接において
も、アークや溶滴移行の安定性は勿論のこと、更
にはスラグの被包性を極めて安定させて、ビード
外観が良好で、かつビード表面が平滑な揃いの良
いビードを形成することのできるガスシールドア
ーク溶接用フラツクス入りワイヤを提供すること
を目的とするものである。 (課題を解決するための手段) 前記目的を達成するため、本発明者は、ガスシ
ールドアーク溶接用フラツクス入りワイヤの成分
調整等について鋭意研究を重ねた結果、アーク安
定性を向上し得る成分としてTiO2のほか、アル
カリ金属酸化物があるが、アルカリ金属酸化物の
うちでも特定の酸化物、すなわち、Na酸化物の
うち可溶性成分がアーク安定性とスラグ被包性を
共に満足でき、更にTiO2と可溶性Na酸化物の比
を規制することにより、所期の目的に適うことを
見い出し、本発明をなしたものである。 すなわち、本発明に係るガスシールドアーク溶
接用フラツクス入りワイヤは、可溶性Na酸化物
(Na2O換算):0.1〜2.0%、TiO2を含むスラグ形
成剤:15〜40%(但し、TiO2:10〜30%)を必
須成分として含有し、かつ、可溶性Na酸化物
(Na2O換算)/TiO2の比(重量比)が0.01〜
0.08であるフラツクスを、鋼製外皮中に対しワイ
ヤ全重量当り5〜25%充填したものであることを
特徴とするものである。 以下に本発明を更に詳細に説明する。 (作用) まず、本発明のフラツクス入りワイヤにおける
フラツクス成分の特定並びにその数値限定の理由
を説明する。TiO2:10〜30% TiO2はアークの安定性を向上させると共に基
本的スラグ形成剤であるが、10%未満ではアーク
が不安定となり、スパツタ発生量が増大し、且つ
スラグ量も不足してビード表面の凹凸が激しくな
る。他方、30%を超えると、TiO2は本質的に凝
固温度が高く、且つ粘性が大であるため、特に薄
板の溶接においてはスラグの分布が不均一とな
り、ビードの外観や揃いが極めて悪化するので好
ましくない。 したがつて、TiO2量は10〜30%の範囲とする。
なお、TiO2源としてはルチール、還元ルチール
及びイルミナイト等が挙げられる。可溶性Na酸化物(Na2O換算):0.1〜2.0% 一般にNa2OやK2Oなどのアルカリ金属酸化
物は、アークの安定性を向上させるために広く用
いられているが、これらアルカリ酸化物はスラグ
の被包性の改善にさほど効果がないとされてい
る。しかし乍ら、本発明者らは、これらアルカリ
酸化物の中でもNa酸化物について種々検討した
結果、同じNa酸化物でも可溶性(水溶性)成分
がスラグの被包性に非常に効果があるとの知見を
得た。 第1表は、スラグの被包性が劣化しやすい板厚
3mmの重ねすみ肉溶接試験において、Na2Oの可
溶性成分と不溶性成分の量を変動させた時のスラ
グの被包性を調査した一例である。なお、この溶
接試験では、TiO2、Na2O(可溶性、不溶性)の
ほか、その他としてSiO2、A2O3、ZrO2等のス
ラグ形成剤(合計7%)及びMn、Si及びFe等
(残部)からなる構成のフラツクスを鋼製外皮
(JIS G 3141 SPCC)にフラツクス率20%で充
填した1.2mmφのフラツクス入りワイヤを作製し、
これを用いて、母材(鋼種:JIS G 3131
SPHC、寸法:3.0mmt×80mmw×500mm)につ
き、250A×28V×50cpmの条件で第1図に示す
ように重ねすみ肉溶接を行い、スラグの被包性を
評価した。 第1表より明らかなように、添加量が同じ場合
でも、可溶性Na2Oを使用したワイヤの方がスラ
グの被包性が安定していることが判る。 しかし、可溶性Na2Oの量としては、0.1%未
満ではスラグの被包性改善効果がなく、また2.0
%超では被包性は良いものの、アークが強くなり
過ぎてビード止端部にアンダーカツト等の欠陥が
生じ易く、更にスラグ剥離性が劣化する。また、
可溶性成分と不溶性成分が混在した場合は、可溶
性Na酸化物が上記範囲ならば同じ効果がある。 したがつて、可溶性Na酸化物量は0.1〜2.0%の
範囲とする。なお、可溶性Na酸化物源としては、
Na2O、硅酸ソーダ、長石等が挙げられる。スラグ形成剤:15〜40% スラグの被包性はスラグの粘性などの物性に大
きく依存するが、スラグの量も重要である。スラ
グ形成剤量が15%未満になると、スラグ量が不足
してビード外観が劣化する。他方、40%超になる
と、スラグの量が過剰となるため、すみ肉継手の
ルート部へのスラグ巻発生やビード止端部の揃い
が悪化する。 したがつて、スラグ形成剤量は15〜40%の範囲
とする。なお、ここでいうスラグ形成剤には、前
記TiO2の他に、SiO2、ZrO2、A2O3、MgO、
MnO、CaO、FeO、Fe2O3、LiFeO2、Li2MnO3、
Li2SiO3等の酸化物や、NaF、K2SiF6、LiF、
CaF2、Na2AF6、MgF2などの弗化物が挙げら
れる。なお、弗化物が脱水素剤を重ねて添加でき
るが、ヒユームやスパツタの発生を増大させるの
で5%以下が望ましい。 本発明においては、以上の各成分を必須成分と
するが、更に、それらのうちの可溶性Na酸化物
とTiO2の比を規制する必要がある。可溶性Na酸化物(Na2O換算)/TiO2:0.01〜
0.08 前述した各成分をそれぞれ規定の範囲内で含む
フラツクスを充填したフラツクス入りワイヤは、
薄板のすみ肉溶接において、溶接速度が約50cm/
分以下であるならば、スラグの被包性を安定して
いるため、極めて美しい外観を有し、かつ揃いの
良いビードを得ることができた。しかし、薄板の
溶接の場合、本質的に溶接歪みや溶け落ちを生じ
易いため、溶接の高速化(例えば80cm/分以上)
によつて対処されているが、上記ワイヤにおいて
さえもスラグ被包性の劣化によるビード外観の悪
化が生じ、適用が困難であつた。 そこで、このような高速溶接の場合でも、スラ
グの被包性が安定し、優れたビード外観が得られ
るように種々検討した結果、可溶性Na酸化物と
TiO2との重量比をある範囲に規制するという解
決手段を見い出したのである。 第2図は、TiO2、可溶性Na酸化物(Na2O換
算)及びスラグ形成剤の量を上記の規定範囲に限
定し、かつ、可溶性Na酸化物(Na2O換算)/
TiO2の重量比を種々変化させた場合、その比の
効果を調べた結果を示している。なお、実験要領
及び評価方法は以下のとおりである。 <実験要領> 供試鋼板及び継手: JIS G 3131 SPHC、
3mmt×80mmw×500 mm、重ねすみ肉 ワイヤ径:1.2mmφ フラツクス率:20% 鋼製外皮:JIS G 3141 SPCC 溶接条件:230A×28V×100cpm シールドガス:100%CO2、25/分 <評価方法> スラグの被包性及びビード外観にて次のように
評価した。 ○…スラグの被包性が良好でビード外観揃いが
良好。 △…スラグの被包性がやや劣り、ビード外観も
若干劣る。 ×…スラグの被包性が極めて悪く、ビード外
観、揃いも悪い。 第2図から明らかなように、TiO2と可溶性
Na2Oの含有量がそれぞれ前述の規定範囲内であ
つて、かつ、可溶性Na2O/TiO2で与えられる
重量比が0.01〜0.08の範囲内であれば、薄板の高
速すみ肉溶性においてもスラグの被包性が良好
で、外観、揃いの優れたビードが得られたが、そ
の比が上記範囲を外れると、スラグ被包性が劣化
することにより、ビード外観、揃いが悪化してく
る。 すなわち、高速すみ肉溶接での対応を考える
と、その比が上記範囲(可溶性Na酸化物(Na2
O換算)/TiO2:0.01〜0.08)に規制しなければ
ないことが確認された。 フラツクスの組成については、上述した通りで
あり、上記条件を満足する限り、他の成分につい
ては特段の制限がなく、一般に使用されている
Mn、Si等の脱酸剤、Ni、B等の合金剤、アルカ
リ金属のアーク安定剤等やスラグ剥離性改善のた
めの酸化ビヒマス等を適宜に配合することができ
る。 しかし、ワイヤ全重量に対するフラツクスの充
填比率(フラツクス率)は無制限に許される訳で
なく、ワイヤ全重量に対して5〜20%の範囲でな
ければならない。すなわち、フラツクス率が5%
未満では、生成スラグの絶対量が不足するため、
スラグの被包性が劣化すると共にスパツタ発生量
が増大する。一方、20%を超えると生成スラグ量
が増加するので、スラグ流動性が大きくなり、ビ
ードが不揃いになる。 なお、フラツクス入りワイヤ及びガスシールド
アーク溶接の他の条件(例えば、ワイヤ径、ワイ
ヤ断面形状、シールドガス、母材等)は、特に制
限されない。 本発明ワイヤは上述の如く構成されているの
で、現在市場に提供されている溶接材料では困難
であつた薄板(3.0mm厚以下)の高速重ねすみ肉
溶接施工においても、安定したアーク、優れたス
ラグ被包性などが得られるため、平滑で光沢があ
り、美しく、かつ揃いの良いビードが得られる。 次に本発明の実施例を示す。 (実施例) 第2表に示す成分組成を有するフラツクスを軟
鋼製(JIS G 3141 SPCC)の外皮中にフラツ
クス率15%で充填した1.2mmφのフラツクス入り
ワイヤを用いて、薄板(供試鋼板:JIS G 3131
SPHC、3mmt×80mmw×500mm)に対し、第
1図に示す継手形状で、230A×28V×100cpm、
シールドガス:100%CO2、25/分の条件で、
重ねすみ肉高速溶接を行い、作業性を評価した。
その結果を第2表に併記する。 第2表より以下の如く考察される。 比較例No.1は、TiO2が不足しているため、ス
ラグの被包性が悪く、ビード外観が劣化してい
る。またスパツタ発生量が増大した。一方、比較
例No.2は、TiO2が過剰になつているため、スラ
グの被包性やアークの安定性は比較的良好である
が、ビードの揃いが極めて悪い。 比較例No.3は、可溶性Na2Oが不足しているた
め、スラグ被包性が悪く、ビード外観が悪い。一
方、比較例No.4は、可溶性Na2Oが過剰のため、
アークが強くなりずきて、アンダーカツトが生
じ、ビード外観等も悪化している。 比較例No.5は、スラグ形成剤が不足しているた
め、スラグの被りが劣化して、ビード外観が悪化
している。一方、比較例No.6は、スラグ形成剤が
過剰のため、スラグ流動性が大きくなり、ビード
の揃いが極めて悪い。 比較例No.7は、スラグ形成剤中の弗化物量が過
剰で、且つ可溶性Na2O/TiO2の比が本発明範
囲外であるため、他成分は本発明範囲内であるも
のの、スラグの包被性、ビード外観など極めて悪
い。 これらに対し、No.8〜No.13は本発明例であり、
いずれも、薄板重ね高速すみ肉溶接においても、
スラグの包被性が極めて良好で、且つアークも安
定しているため、外観が美しく、且つ揃いの良好
なビードが得られている。 【表】 【表】 (発明の効果) 以上詳述したように、本発明によれば、薄板の
高速すみ肉溶接においても、アークや溶滴移行の
安定性が極めて良好であり、更にはスラグの被包
性も極めて安定しているので、ビード外観が良好
で、且つビード表面が平滑な揃いの良いビードを
形成することができる。
ス入りワイヤに係り、特に炭素鋼、低合金鋼等の
薄板、中板、とりわけ薄板の重ねすみ肉溶接など
において、揃いが良好で非常に光沢のあるビード
を与えるガスシールドアーク溶接用フラツクス入
りワイヤに関するものである。 (従来の技術及び解決しようとする課題) 例えば、薄板(特に3.2mm厚以下)の溶接の場
合、溶接施工法などの選定に当つては、一般に次
の項目等が考慮される。 (1) 継手部の性能 (2) 溶接能率性 (3) 溶接作業性及びビード外観 このうち、特に(2)、(3)に関しては最も重要視さ
れる項目である。 しかし、(2)の溶接能率性は現状のガスシールド
アーク溶接法の適用でほぼ満足できる水準にある
と考えられる。 また、(3)の溶接作業性及びビード外観に関して
は、現在市場に提供されている溶接材料或いは施
工法では充分に対応されていないのが実情であ
る。 すなわち、薄板溶接における溶接作業性で最も
問題視されているのがビード外観である。 一般にビード外観は安定したアーク、溶滴移行
などにも影響されるが、とりわけビードを覆うス
ラグが大きな役割を担つていると言える。例え
ば、スラグ量が極めて少ないソリツドワイヤやメ
タル系フラツクス入りワイヤは、被覆アーク溶接
棒やスラグ系のフラツクス入りワイヤに比べ、ビ
ードの光沢つやがなく、ビード外観は良いとは言
えない。 これからすると、ビード外観を重視する箇所で
は、スラグ系のフラツクス入りワイヤを用いれば
良いわけだが、薄板のすみ肉溶接の場合、溶接部
近傍の鋼板温度が極めて高くなり易いため、現在
市場に提供されているスラグ系のフラツクス入り
ワイヤでは、スラグの粘性、凝固状態等の物性が
変化し、本来の安定した被包性が著しく劣化して
しまう。このため、溶接ビードは、スラグが被つ
た部分とスラグが被らなかつた部分のビード外観
が大幅に異なり、全体として見栄えのしないビー
ドになつてしまう。こうしたスラグの被りのバラ
ツキは、特に薄板の高速溶接の場合、顕著とな
る。 以上の理由から、従来は、スラグ量が少なく、
一見一様に見えるソリツドワイヤのビード外観の
方が好まれている。 本発明は、このような状況に着目してなされた
ものであつて、薄板の高速すみ肉溶接において
も、アークや溶滴移行の安定性は勿論のこと、更
にはスラグの被包性を極めて安定させて、ビード
外観が良好で、かつビード表面が平滑な揃いの良
いビードを形成することのできるガスシールドア
ーク溶接用フラツクス入りワイヤを提供すること
を目的とするものである。 (課題を解決するための手段) 前記目的を達成するため、本発明者は、ガスシ
ールドアーク溶接用フラツクス入りワイヤの成分
調整等について鋭意研究を重ねた結果、アーク安
定性を向上し得る成分としてTiO2のほか、アル
カリ金属酸化物があるが、アルカリ金属酸化物の
うちでも特定の酸化物、すなわち、Na酸化物の
うち可溶性成分がアーク安定性とスラグ被包性を
共に満足でき、更にTiO2と可溶性Na酸化物の比
を規制することにより、所期の目的に適うことを
見い出し、本発明をなしたものである。 すなわち、本発明に係るガスシールドアーク溶
接用フラツクス入りワイヤは、可溶性Na酸化物
(Na2O換算):0.1〜2.0%、TiO2を含むスラグ形
成剤:15〜40%(但し、TiO2:10〜30%)を必
須成分として含有し、かつ、可溶性Na酸化物
(Na2O換算)/TiO2の比(重量比)が0.01〜
0.08であるフラツクスを、鋼製外皮中に対しワイ
ヤ全重量当り5〜25%充填したものであることを
特徴とするものである。 以下に本発明を更に詳細に説明する。 (作用) まず、本発明のフラツクス入りワイヤにおける
フラツクス成分の特定並びにその数値限定の理由
を説明する。TiO2:10〜30% TiO2はアークの安定性を向上させると共に基
本的スラグ形成剤であるが、10%未満ではアーク
が不安定となり、スパツタ発生量が増大し、且つ
スラグ量も不足してビード表面の凹凸が激しくな
る。他方、30%を超えると、TiO2は本質的に凝
固温度が高く、且つ粘性が大であるため、特に薄
板の溶接においてはスラグの分布が不均一とな
り、ビードの外観や揃いが極めて悪化するので好
ましくない。 したがつて、TiO2量は10〜30%の範囲とする。
なお、TiO2源としてはルチール、還元ルチール
及びイルミナイト等が挙げられる。可溶性Na酸化物(Na2O換算):0.1〜2.0% 一般にNa2OやK2Oなどのアルカリ金属酸化
物は、アークの安定性を向上させるために広く用
いられているが、これらアルカリ酸化物はスラグ
の被包性の改善にさほど効果がないとされてい
る。しかし乍ら、本発明者らは、これらアルカリ
酸化物の中でもNa酸化物について種々検討した
結果、同じNa酸化物でも可溶性(水溶性)成分
がスラグの被包性に非常に効果があるとの知見を
得た。 第1表は、スラグの被包性が劣化しやすい板厚
3mmの重ねすみ肉溶接試験において、Na2Oの可
溶性成分と不溶性成分の量を変動させた時のスラ
グの被包性を調査した一例である。なお、この溶
接試験では、TiO2、Na2O(可溶性、不溶性)の
ほか、その他としてSiO2、A2O3、ZrO2等のス
ラグ形成剤(合計7%)及びMn、Si及びFe等
(残部)からなる構成のフラツクスを鋼製外皮
(JIS G 3141 SPCC)にフラツクス率20%で充
填した1.2mmφのフラツクス入りワイヤを作製し、
これを用いて、母材(鋼種:JIS G 3131
SPHC、寸法:3.0mmt×80mmw×500mm)につ
き、250A×28V×50cpmの条件で第1図に示す
ように重ねすみ肉溶接を行い、スラグの被包性を
評価した。 第1表より明らかなように、添加量が同じ場合
でも、可溶性Na2Oを使用したワイヤの方がスラ
グの被包性が安定していることが判る。 しかし、可溶性Na2Oの量としては、0.1%未
満ではスラグの被包性改善効果がなく、また2.0
%超では被包性は良いものの、アークが強くなり
過ぎてビード止端部にアンダーカツト等の欠陥が
生じ易く、更にスラグ剥離性が劣化する。また、
可溶性成分と不溶性成分が混在した場合は、可溶
性Na酸化物が上記範囲ならば同じ効果がある。 したがつて、可溶性Na酸化物量は0.1〜2.0%の
範囲とする。なお、可溶性Na酸化物源としては、
Na2O、硅酸ソーダ、長石等が挙げられる。スラグ形成剤:15〜40% スラグの被包性はスラグの粘性などの物性に大
きく依存するが、スラグの量も重要である。スラ
グ形成剤量が15%未満になると、スラグ量が不足
してビード外観が劣化する。他方、40%超になる
と、スラグの量が過剰となるため、すみ肉継手の
ルート部へのスラグ巻発生やビード止端部の揃い
が悪化する。 したがつて、スラグ形成剤量は15〜40%の範囲
とする。なお、ここでいうスラグ形成剤には、前
記TiO2の他に、SiO2、ZrO2、A2O3、MgO、
MnO、CaO、FeO、Fe2O3、LiFeO2、Li2MnO3、
Li2SiO3等の酸化物や、NaF、K2SiF6、LiF、
CaF2、Na2AF6、MgF2などの弗化物が挙げら
れる。なお、弗化物が脱水素剤を重ねて添加でき
るが、ヒユームやスパツタの発生を増大させるの
で5%以下が望ましい。 本発明においては、以上の各成分を必須成分と
するが、更に、それらのうちの可溶性Na酸化物
とTiO2の比を規制する必要がある。可溶性Na酸化物(Na2O換算)/TiO2:0.01〜
0.08 前述した各成分をそれぞれ規定の範囲内で含む
フラツクスを充填したフラツクス入りワイヤは、
薄板のすみ肉溶接において、溶接速度が約50cm/
分以下であるならば、スラグの被包性を安定して
いるため、極めて美しい外観を有し、かつ揃いの
良いビードを得ることができた。しかし、薄板の
溶接の場合、本質的に溶接歪みや溶け落ちを生じ
易いため、溶接の高速化(例えば80cm/分以上)
によつて対処されているが、上記ワイヤにおいて
さえもスラグ被包性の劣化によるビード外観の悪
化が生じ、適用が困難であつた。 そこで、このような高速溶接の場合でも、スラ
グの被包性が安定し、優れたビード外観が得られ
るように種々検討した結果、可溶性Na酸化物と
TiO2との重量比をある範囲に規制するという解
決手段を見い出したのである。 第2図は、TiO2、可溶性Na酸化物(Na2O換
算)及びスラグ形成剤の量を上記の規定範囲に限
定し、かつ、可溶性Na酸化物(Na2O換算)/
TiO2の重量比を種々変化させた場合、その比の
効果を調べた結果を示している。なお、実験要領
及び評価方法は以下のとおりである。 <実験要領> 供試鋼板及び継手: JIS G 3131 SPHC、
3mmt×80mmw×500 mm、重ねすみ肉 ワイヤ径:1.2mmφ フラツクス率:20% 鋼製外皮:JIS G 3141 SPCC 溶接条件:230A×28V×100cpm シールドガス:100%CO2、25/分 <評価方法> スラグの被包性及びビード外観にて次のように
評価した。 ○…スラグの被包性が良好でビード外観揃いが
良好。 △…スラグの被包性がやや劣り、ビード外観も
若干劣る。 ×…スラグの被包性が極めて悪く、ビード外
観、揃いも悪い。 第2図から明らかなように、TiO2と可溶性
Na2Oの含有量がそれぞれ前述の規定範囲内であ
つて、かつ、可溶性Na2O/TiO2で与えられる
重量比が0.01〜0.08の範囲内であれば、薄板の高
速すみ肉溶性においてもスラグの被包性が良好
で、外観、揃いの優れたビードが得られたが、そ
の比が上記範囲を外れると、スラグ被包性が劣化
することにより、ビード外観、揃いが悪化してく
る。 すなわち、高速すみ肉溶接での対応を考える
と、その比が上記範囲(可溶性Na酸化物(Na2
O換算)/TiO2:0.01〜0.08)に規制しなければ
ないことが確認された。 フラツクスの組成については、上述した通りで
あり、上記条件を満足する限り、他の成分につい
ては特段の制限がなく、一般に使用されている
Mn、Si等の脱酸剤、Ni、B等の合金剤、アルカ
リ金属のアーク安定剤等やスラグ剥離性改善のた
めの酸化ビヒマス等を適宜に配合することができ
る。 しかし、ワイヤ全重量に対するフラツクスの充
填比率(フラツクス率)は無制限に許される訳で
なく、ワイヤ全重量に対して5〜20%の範囲でな
ければならない。すなわち、フラツクス率が5%
未満では、生成スラグの絶対量が不足するため、
スラグの被包性が劣化すると共にスパツタ発生量
が増大する。一方、20%を超えると生成スラグ量
が増加するので、スラグ流動性が大きくなり、ビ
ードが不揃いになる。 なお、フラツクス入りワイヤ及びガスシールド
アーク溶接の他の条件(例えば、ワイヤ径、ワイ
ヤ断面形状、シールドガス、母材等)は、特に制
限されない。 本発明ワイヤは上述の如く構成されているの
で、現在市場に提供されている溶接材料では困難
であつた薄板(3.0mm厚以下)の高速重ねすみ肉
溶接施工においても、安定したアーク、優れたス
ラグ被包性などが得られるため、平滑で光沢があ
り、美しく、かつ揃いの良いビードが得られる。 次に本発明の実施例を示す。 (実施例) 第2表に示す成分組成を有するフラツクスを軟
鋼製(JIS G 3141 SPCC)の外皮中にフラツ
クス率15%で充填した1.2mmφのフラツクス入り
ワイヤを用いて、薄板(供試鋼板:JIS G 3131
SPHC、3mmt×80mmw×500mm)に対し、第
1図に示す継手形状で、230A×28V×100cpm、
シールドガス:100%CO2、25/分の条件で、
重ねすみ肉高速溶接を行い、作業性を評価した。
その結果を第2表に併記する。 第2表より以下の如く考察される。 比較例No.1は、TiO2が不足しているため、ス
ラグの被包性が悪く、ビード外観が劣化してい
る。またスパツタ発生量が増大した。一方、比較
例No.2は、TiO2が過剰になつているため、スラ
グの被包性やアークの安定性は比較的良好である
が、ビードの揃いが極めて悪い。 比較例No.3は、可溶性Na2Oが不足しているた
め、スラグ被包性が悪く、ビード外観が悪い。一
方、比較例No.4は、可溶性Na2Oが過剰のため、
アークが強くなりずきて、アンダーカツトが生
じ、ビード外観等も悪化している。 比較例No.5は、スラグ形成剤が不足しているた
め、スラグの被りが劣化して、ビード外観が悪化
している。一方、比較例No.6は、スラグ形成剤が
過剰のため、スラグ流動性が大きくなり、ビード
の揃いが極めて悪い。 比較例No.7は、スラグ形成剤中の弗化物量が過
剰で、且つ可溶性Na2O/TiO2の比が本発明範
囲外であるため、他成分は本発明範囲内であるも
のの、スラグの包被性、ビード外観など極めて悪
い。 これらに対し、No.8〜No.13は本発明例であり、
いずれも、薄板重ね高速すみ肉溶接においても、
スラグの包被性が極めて良好で、且つアークも安
定しているため、外観が美しく、且つ揃いの良好
なビードが得られている。 【表】 【表】 (発明の効果) 以上詳述したように、本発明によれば、薄板の
高速すみ肉溶接においても、アークや溶滴移行の
安定性が極めて良好であり、更にはスラグの被包
性も極めて安定しているので、ビード外観が良好
で、且つビード表面が平滑な揃いの良いビードを
形成することができる。
第1図は重ね水平すみ肉溶接の継手形状及び溶
接要領を説明する図、第2図はスラグの被包性及
びビード外観と可溶性Na2O/TiO2の重量比の
関係を示す図である。
接要領を説明する図、第2図はスラグの被包性及
びビード外観と可溶性Na2O/TiO2の重量比の
関係を示す図である。
Claims (1)
- 1 重量%(以下、同じ)で、可溶性Na酸化物
(Na2O換算):0.1〜2.0%、TiO2を含むスラグ形
成剤:15〜40%(但し、TiO2:10〜30%)を必
須成分として含有し、かつ、可溶性Na酸化物
(Na2O換算)/TiO2の比(重量比)が0.01〜
0.08であるフラツクスを、鋼製外皮中に対ワイヤ
全重量当り5〜25%充填したものであることを特
徴とするガスシールドアーク溶接用フラツクス入
りワイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5709889A JPH02235596A (ja) | 1989-03-09 | 1989-03-09 | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5709889A JPH02235596A (ja) | 1989-03-09 | 1989-03-09 | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH02235596A JPH02235596A (ja) | 1990-09-18 |
JPH054197B2 true JPH054197B2 (ja) | 1993-01-19 |
Family
ID=13046033
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5709889A Granted JPH02235596A (ja) | 1989-03-09 | 1989-03-09 | ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH02235596A (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2637907B2 (ja) * | 1992-09-30 | 1997-08-06 | 株式会社神戸製鋼所 | フラックス入りワイヤ |
-
1989
- 1989-03-09 JP JP5709889A patent/JPH02235596A/ja active Granted
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH02235596A (ja) | 1990-09-18 |
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