JPH0541928A - 樹根の支持固定施工方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 多品種の部品や特殊機械などを使用せず、地
上部に危険な支線などを残さず、樹木の成育を阻害する
ことなく、安全で景観の良い樹木地下部を、熟練を要す
ることなく容易に支持固定する方法。 【構成】 地面に堀削した植穴１に根巻きした樹根２を
植付位置に設置した後、植穴１と根鉢２の隙間に客土３
を詰め、上部にねじ部８を形成したアンカー支線部４を
もった複数本のアンカー本体７を、地上部から根鉢２を
貫き、あるいは植穴１の根鉢２の近傍に打込み、植穴１
の下の硬い土中にまで打込み、アンカー支線部４の上部
から押え部材１０ー１を貫通させ、ナット１２で締め付
けて根鉢２の上面を押圧支持する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、樹木を支持、固定する
施工方法に関し、特に地上部に危険な支線などを残さ
ず、安全で景観の良い樹木地下部の支持固定施工方法に
関するものである。

【０００２】

【従来の技術】植樹を支える方法としては、主として地
上部を支持する方法か、地下部を支持する方法が一般的
である。この中で、特に最近注目されている地下部の支
持固定方法として一般的になった方法は、根巻きした樹
根、すなわち根鉢（以下、本発明においては単に樹根と
いう。）を固定するものである。従来、樹根を固定する
方法としては、特公昭５７−４３６９５号、実開昭４９
−６６２０４号、同昭４９−９３５１０号、同昭５０−
１１００２５号公報などに開示されているように、植穴
中央に樹根を置き、樹根の周囲に沿って、植穴の底に更
に深くアンカー設置用の穴を掘り、その中にアンカーを
埋め込み固定させ、このアンカーと樹木の根元部に巻き
付ける根元用ネックカラーと、別のアンカーとをワイヤ
ーやベルト類で連結し、樹根を押えて固定する方法であ
る。このワイヤーやベルト類は、樹根をしっかりと固定
する目的で使用されるものであるから、ゆるみが生じな
いように十分に締め付けることが必要である。このた
め、１つのアンカーと樹根のコーナーを通り、樹木の根
元部に巻き付ける根元用ネックカラーと他のアンカーと
を結ぶワイヤーやベルト類の間に、巻き上げ機を連結し
て、ワイヤーやベルト類のゆるみを巻き上げ、締め付け
固定することになる。この締め付け作業中、ワイヤーや
ベルト類は、締め付けられるにつれて摩擦抵抗が大きく
なって滑りが悪くなり、十分に締め付けられなくなるに
つれて、このワイヤーやベルト類が樹根の中に徐々に食
い込み、樹根を切断し傷める結果となることもある。こ
のことが、使用中にワイヤーやベルト類のゆるみを新た
に発生させる原因にもなる。このような欠点を改善する
ために、特開昭６２−１９５２２５号公報や特開昭６３
−８７９１９号公報にみられるように、ワイヤーやベル
ト類の滑りを良くするために、樹木の根元部の根元用ネ
ックカラーに滑車を接続させたり、ワイヤーやベルト類
が特に食い込む樹根のコーナー部分に食い込み防止盤な
どを置いていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の方法で樹根を固定する場合の問題点としては次のよ
うなものがある。 植穴の狭い底部でのアンカー設置用の穴掘り作業や
設置固定作業は、穴の底の狭くて窮屈な場所であるた
め、非常に作業がやりづらく手間がかかる。特に、土質
が硬い場合は、アンカー設置用の穴掘り作業は一層面倒
なものである。 アンカー、ワイヤーやベルト類、滑車、食い込み防
止盤、根元用ネックカラー、巻き上げ機などの多品種の
部品を、狭い植穴の中で、昇ったり降りたりしながら正
しくつなぎ合わせ、意図するとおりの動作が行われるよ
うにセット調整するのには、熟練を要する上に非常に煩
雑で面倒なことである。 各種部品をセットして樹根を完全に固定し、植穴を
埋め戻す施工方法のため、作業中に足元に穴があいたま
まの下地の状況であるため、足場が悪く、作業しにくい
ものである。 ワイヤーやベルト類の締め付けは、各部分の張り具
合を注視しながら均一に力がかかるように行う必要があ
るが、ワイヤーやベルトが長い場合には、不均一になり
やすく、高度の注意力を要し、時間を要することにな
る。 樹木が成育するにつれて、樹木の根元部に巻いてあ
る根元用ネックカラーが樹木に食い込み、成育を阻害す
るおそれがあるので、通常数年後にこのネックカラーを
切断する必要があり、それに要する作業には、多くの労
力と作業時間を要求される。 巻き上げ機で巻き上げ可能なワイヤーやベルト類の
長さには限度があり、巻き上げる前に余分なワイヤーや
ベルト類の長さを調整しておかないと、樹根をがっちり
と固定できないことがある。 植樹後数ケ月して発生するワイヤーやベルト類のゆ
るみを再び締め直す場合、巻き上げ機にワイヤーやベル
ト類が一杯まで巻き上げてあると、再巻き上げできない
ので、やむを得ず再びほどいてワイヤーやベルト類の余
分をカットし、再び巻き上げなければならないため面倒
である。更には、巻き上げ機、滑車、ワイヤーやベルト
類に土が付着しているため、巻き上げが難しく、時間が
かかる。 植穴に入っての作業が必要であるため、樹根が必要
とする大きさ以上に植穴を大きく掘る必要があり、場所
によってはそれができず、施工不能の場合もある。 作業に熟練を要し、不慣れの者には適切な作業を期
待することができない。本発明は、前記従来の樹根（根
鉢）固定施工方法の問題点をすべて解消することができ
る樹根の支持固定施工方法を提供することを目的として
いる。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、地面に堀削し
た植穴に根巻きした樹根を植付位置に設置した後、前記
植穴と樹根の隙間に客土を詰め、上部にねじ部を形成し
た複数本のアンカーを地上部から打込んで植穴の下の硬
い土中まで打込み、アンカーの上部から押え部材を貫通
させ、ナットで締め付けて押え部材により根巻きした樹
根上面を押圧支持したことを特徴とする樹根の支持固定
施工方法であり、また前記アンカーの打込みは、根巻き
した樹根とその近傍の植穴あるいはこれらの両位置に打
込み、更に前記押え部材を各アンカー毎に貫通させた
り、複数本のアンカーを同時に貫通できるような形状、
大きさにするものである。

【０００５】

【作用】本発明では、地面に堀削した植穴に、しっかり
と根巻きした樹根を正しい植付位置に設置した後、植穴
と樹根との隙間に客土を十分に詰める。このことによ
り、樹木を植付けたのとほぼ同じ状態に安定させること
ができるとともに、深い穴を埋めたことにより足場が良
く、作業しやすくなる。この状態で、上部にねじ部を形
成しかつ土中からの抜き出しを阻止できるような形状の
下端部をもったアンカーを、地上部から複数本直接打込
み、植穴の下の硬い土質の中まで打込む。次いで、アン
カーの上部から押え部材を貫通してナットで徐々に締め
付け、アンカーを土中でしっかりと固定させると同時に
押え部材が樹根上面を押圧し、この結果樹根ががっちり
と固定されることになる。アンカーの打込みは、樹根を
貫通させて打込んでも、樹根を貫通させずに植穴の樹根
近傍に打込んでも良く、またこれらの両位置に打込むこ
ともできる。また、押え部材を、各アンカー毎に貫通さ
せて樹根を押圧支持できるような形状にしたり、複数本
のアンカーを同時に貫通できるような形状、大きさにす
ることもできる。

【０００６】

【実施例】以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。図１〜３に示すように、地面に堀削した植穴１
に、しっかりと根巻きした樹根２を、正しい植付位置に
設置した後、植穴１と樹根２の隙間にほぼ樹根の高さ程
度になるまで客土３を十分に詰める。このことより、樹
木を植付けたのとほぼ同じ状態に安定させることができ
るとともに、客土３によって深い穴がなくなり、足場が
良く非常に作業しやすくなる。このような植付状況で、
地上部からアンカーを打込む。アンカーとしては、例え
ば図４，５に示すように、アンカー支線部４の下端に、
打込用鋼鉄棒５（図４）の差し込み口６をもつアンカー
本体７のほぼ中央部が枢着され、アンカー支線部４の上
部にねじ部８が形成されたものを使用すると便利であ
る。すなわち、打込用鋼鉄棒５をアンカー本体７の差し
込み口６に差し込み装着して、樹根２の適当な位置に地
上部からハンマー９等で打込み（図６参照）、樹根２を
貫き、更に植穴１の下の硬い土質の中まで直接打込む
（図７参照）。アンカー支線部４を所定の深さまで打込
んだ後、打込用鋼鉄棒５だけを抜き取り、図１〜３に示
すように、地上に露出しているアンカー支線部４上部の
ねじ部８に、所定の位置に穴をあけた押え部材１０−１
を通し、その上に座金１１を介してナット１２で徐々に
締め付けを行う。このナット１２の締め付けにより、ア
ンカー支線部４が上方に引っぱられ、土中でアンカー本
体７が回転してアンカー支線部４に対してほぼ直交とな
り、アンカー本体７がアンカー支線部４の抵抗体とな
り、土中でアンカー本体７が固定される。この結果、樹
根２が下層の硬い土質にがっちりと固定されることにな
る。なお、アンカー支線部４を樹根２に貫いた場合、樹
根への影響を実験により確かめたところ、樹木の成長に
障害となる事実は認められなかった。以上のようにし
て、植穴１の中に作業者が入ることなく、地上部からの
作業で、容易に樹木を地中にがっちりと固定することが
できる。使用するアンカーとしては、前述した図４，５
に示すようなものが便利であるが、アンカー支線部４の
みの構造をもつものでも、土中に打込みアンカー状の役
目をするものであれば、使用可能である。また、押え部
材１０−１の材質や形状は、使用に耐え、樹根２を押え
られるものであれば特に限定されない。

【０００７】上述した実施例では、各アンカー毎に押え
部材１０−１を適した場合を示したが、アンカー間の距
離などによって、図８〜１０に示すように、２本あるい
はそれ以上のアンカーに共通の１個の押え部材１０−２
を通して、樹根２の上面を押圧支持することもできる。

【０００８】図１１，１２は、アンカーを樹根２の中に
打込みできない場合に有効で、その場合には植穴１の中
で樹根２になるべく近い位置にアンカーを打込み、押え
部材１０−３として樹根２の肩部および上面を押えるこ
とができるような形状とし、各アンカー毎に通した例で
ある。

【０００９】上述した図１１，１２に示す実施例では、
各アンカー毎に押え部材１０−３を通した場合である
が、図１３，１４に示すように、複数本のアンカーに共
通の１個の押え部材１０−２を通すこともできる。

【００１０】図１５〜１７に示す実施例は、アンカーを
樹根２に打込んで貫入させたものと、植穴１の中の樹根
２の近傍とに打込んだもので、これらアンカーに別々に
押え部材を通すこともできるが、樹根２に貫入させたア
ンカーと植穴１中に打込んだアンカーとに共通の押え部
材１０−４を通した場合の例である。

【００１１】なお、上述した各実施例以外に、樹木の大
きさや土質などにより、アンカーの本数、押え部材の位
置、個数、形状、押え方などを変化させて組み合わせる
ことができ、現場の状況に合わせた色々な施工方法を選
択することが可能である。また、押え部材をナットで締
め付ける時、単なる座金ではなく、スプリングワッシャ
ー、スプリングなどを採用して、使用中のゆるみを出に
くくすることも好ましい例である。

【００１２】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、次
に列記するような極めて卓越した効果を奏するものであ
る。 植穴に樹根を設置後、植穴と樹根の間に客土してか
ら施工することができるため、下地の穴をほぼ埋めた状
態になり、深い穴もなく良い足場で作業が非常にしやす
くなる。 植穴の狭い場所に入っての作業や、植穴の底に入っ
ての穴掘り作業および穴の中に出たり入ったりの昇り降
りしての作業がなく、地上部からの設置作業だけで樹根
を固定でき、作業が非常にやりやすく能率的である。 樹根を固定する方法が、従来のようにアンカー、ワ
イヤーやベルト類、滑車、食い込み防止盤、根元用ネッ
クカラー、巻き上げ機などの多品種の部品を使用して、
穴の中の狭い所で昇ったり降りたりしながら設置する方
法と異なり、地上部から直接アンカーを打込み、押え部
材をナットで締め付けるだけの極めて簡単な方法で確実
に固定できるので、熟練を要せず、極めて作業がやりや
すい。 ワイヤーやベルト類とは異なり、接地面積を大きく
した押え部材をナットで締め付けるため、ゆるみが出に
くい。 アンカーの打込み本数、固定位置、押え部材の形状
などの組み合わせにより、各種樹木の固定に使用可能で
ある。 植樹して、時間経過後に発生する押え部材のゆるみ
の再締め付けは、地上よりナットを締め付けるだけで簡
単にできる。 植樹後成育して幹が太くなっても、従来のように根
元用ネックカラー、ワイヤーやベルト類で結び付けて固
定していないため、成育を阻害することなく、成育後結
び付け部品を切断する手間は不要となる。 植穴の中での作業がないため、樹根以上に大きい穴
を掘る必要もなく、樹根が設置できるだけのスペースが
あれば作業できる。 土質が硬くても打込みできるアンカーを使用し、作
業しにくい場所でも容易に施工できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す縦断側面図

【図２】図１の樹根の斜視図

【図３】図１の樹根の押え部付近の拡大図

【図４】本発明で使用するアンカーの一例を示す側面図

【図５】図４のアンカーの打込みに使用する打込用鋼鉄
棒の側面図

【図６】アンカーの打込状態説明図

【図７】アンカーの打込状態説明図

【図８】本発明の他の実施例を示す縦断側面図

【図９】図８の樹根の斜視図

【図１０】図８の樹根の押え部材付近の拡大図

【図１１】本発明の他の実施例を示す縦断面図

【図１２】図１１の樹根の斜視図

【図１３】本発明の他の実施例を示す縦断面図

【図１４】図１３の樹根の斜視図

【図１５】本発明の更に他の実施例を示す縦断側面図

【図１６】図１５の樹根の斜視図

【図１７】図１５の樹根の押え部材付近の拡大図

【符号の説明】

１ 植穴 ２ 樹根 ３ 客土 ４ アンカー支線部 ５ 打込用鋼鉄棒 ６ 差し込み口 ７ アンカー本体 ８ ねじ部 ９ ハンマー １０−１ 押え部材 １０−２ 押え部材 １０−３ 押え部材 １０−４ 押え部材 １１ 座金 １２ ナット

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 地面に堀削した植穴に根巻きした樹根を
   植付位置に設置した後、前記植穴と樹根の隙間に客土を
   詰め、上部にねじ部を形成した複数本のアンカーを地上
   部から打込んで植穴の下の硬い土中まで打込み、アンカ
   ーの上部から押え部材を貫通させ、ナットで締め付けて
   押え部材により根巻きした樹根上面を押圧支持したこと
   を特徴とする樹根の支持固定施工方法。
2. 【請求項２】 前記アンカーが根巻きした樹根を貫通さ
   せて打込むものである請求項１記載の樹根の支持固定施
   工方法。
3. 【請求項３】 前記アンカーが根巻きした樹根近傍の植
   穴に打込むものである請求項１記載の樹根の支持固定施
   工方法。
4. 【請求項４】 前記アンカーが根巻きした樹根を貫通さ
   せて打込むものと樹根近傍の植穴に打込むものとを併用
   するものである請求項１記載の樹根の支持固定施工方
   法。
5. 【請求項５】 前記押え部材が前記アンカーの複数本を
   同時に貫通するものである請求項１、２、３、または４
   項記載の樹根の支持固定施工方法。