JPH05347037A - 光磁気記録媒体とその製造方法 - Google Patents

光磁気記録媒体とその製造方法

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JPH05347037A
JPH05347037A JP15635192A JP15635192A JPH05347037A JP H05347037 A JPH05347037 A JP H05347037A JP 15635192 A JP15635192 A JP 15635192A JP 15635192 A JP15635192 A JP 15635192A JP H05347037 A JPH05347037 A JP H05347037A
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film
magneto
magnetic
optical recording
argon
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JP15635192A
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English (en)
Inventor
Yuji Takatsuka
裕二 高塚
Takashi Sato
崇志 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Daicel Corp
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Sumitomo Chemical Co Ltd
Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁界感度が良好でしかも保磁力の増大が図れ
る光磁気記録媒体とその簡便な製造方法を提供するこ
と。 【構成】 透明基板11と、基板11上に順次スパッタ
リング製膜された誘電体干渉膜21、アルゴン濃度が1
原子%〜10原子%の第一磁性膜31、上記濃度が0.
5原子%以下の第二磁性膜32、誘電体保護膜41及び
反射膜51とでその主要部が構成されている。そしてア
ルゴン濃度の高い第一磁性膜31はキュリー温度が低く
レーザ光の照射により微少な反転磁区が早く形成されか
つこの反転磁区は低い磁界強度で第二磁性膜32へ広が
る。他方、アルゴン濃度の低い第二磁性膜32はレーザ
光による再生安定性に優れかつ高温下でも記録磁区を安
定に保持できる。従って、連続製膜された第一磁性膜3
1と第二磁性膜32とで構成された光磁気記録膜は両膜
の長所を具備し磁界感度の改善と保磁力の増大が図れ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザ光等光ビームの
照射により数値、文書、映像等各種情報の記録、再生、
消去が可能な光磁気ディスク等光磁気記録媒体に係り、
特に、磁界感度が良くしかも保磁力の増大が図れる光磁
気記録媒体とその簡便な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】レーザ光等光ビームを使用して情報の記
録、再生、消去が行える光磁気ディスクは高密度の情報
記録を可能ならしめ、情報の消去、追記記録等が簡便か
つ迅速に行える等優れた情報処理能力を備えている。
【0003】以下、図面を用いて従来におけるこの種の
光磁気ディスクの構成例を説明すると、図8に示すよう
にガラス若しくはプラスチック等から成る透明基板10
と、この透明基板10上に製膜され光磁気効果を増大さ
せるための誘電体干渉膜20と、この誘電体干渉膜20
上に製膜された希土類−遷移金属合金から成りその磁化
容易軸が膜面に対し垂直な光磁気記録膜30と、この光
磁気記録膜30上に製膜され光磁気記録膜30を保護す
る誘電体保護膜40と、この誘電体保護膜40上に製膜
されレーザ光を反射させるための反射膜50とでその主
要部が構成されているものである。尚、上記反射膜50
についてはその耐久性を向上させるため0.5原子%か
ら5原子%程度のTiやCr等が添加されている。
【0004】この光磁気ディスクを用いて情報の記録を
行うには、上記光磁気ディスクに対してレーザ光等光ビ
ームを照射し光磁気記録膜30の一部が熱せられ磁化が
消失するキュリー温度近傍になったところでバイアス磁
界が作用してその部位の磁化を反転させる一方、記録情
報を消去するには記録時とは逆向きのバイアス磁界を作
用させその部位の磁化を反転させてこれを行うものであ
る。
【0005】そしてこの光磁気ディスクおいては、情報
の高密度化と大容量化が図れると共に、高速アクセスが
可能でかつ書換え性能や耐久性も向上できるため可換媒
体としての有用性が高く評価されている。また、現在で
はデータの転送速度を上げるためドライブの高回転数化
が図られており、従ってこの高回転数化に対応できるデ
ィスクの開発や書込み速度の高速化の要求を満たす直接
オーバーライト可能な光磁気ディスクの開発も盛んにな
されている。そして、光変調オーバーライトや磁界変調
オーバーライトの可能な高い特性を備えた光磁気ディス
クが次々と試作され高い評価を受けている。更に、光磁
気ディスクドライブも安価でかつ小型化され、パーソナ
ルコンピュータに内蔵されようとしている。
【0006】ところで、高回転数対応の光磁気ディスク
やその実用化が近いと思われる磁界変調オーバーライト
対応の光磁気ディスクにおいては、記録磁区の形成、消
去に要するバイアス磁界の低減を図ることが必要とさ
れ、これを図るためには光磁気ディスクにおける磁界感
度の改善が必要とされた。
【0007】しかし、単に磁界感度を良くしようとして
も、これに伴い記録磁区を保持するために必要な光磁気
記録膜の保磁力も減少してしまうため記録磁区の安定性
が悪くなってしまう欠点を有していた。
【0008】このため、高回転数対応の光磁気ディスク
においては光磁気記録国際シンポジウム’91(1991年)
で発表されたように面内磁化膜を磁気キャップ層として
光磁気記録層上に形成したり(プロシーディングス 395
-398頁参照)、交換結合膜を利用する等して磁界感度の
改善と保磁力の増大を図る方法が試みられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これ等の方法
では記録膜について上記面内磁化膜や光磁気記録層等組
成の異なる2つの層で構成することを必要とするためそ
の製造が繁雑となる問題点があり、かつ、このために製
造装置の改造を必要とする問題点があった。
【0010】更に、交換結合膜を利用するディスクにお
いてはその界面の状態で特性が変化し易く磁気特性の揃
ったディスクの量産が困難となる問題点があった。
【0011】本発明はこのような問題点に着目してなさ
れたもので、その課題とするところは、磁界感度が良く
しかも保磁力の増大が図れる光磁気記録媒体とその簡便
な製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】ところで、本発明者等は
アルゴン(Ar)等不活性ガスが光磁気記録膜のような
フェリ磁性体に混入すると磁化やキュリー温度等の磁気
特性に大きな影響を与えることを平均場近似を用いた磁
気特性のコンピュータシミュレーションによりすでに見
出している(IEEE TRANSACTION ON MAGNETICS,VOL.26,N
O.5 SEPTEMBER1990年 1909-1911頁参照)。
【0013】そこで、希土類−遷移金属合金から成る光
磁気記録膜内にアルゴン等不活性ガスを混入し、その磁
気特性を適宜調整することにより上記問題点を解決する
方法を試みた。しかし、光磁気記録膜内のアルゴン濃度
を測定する適当な手段がなかったため、アルゴン濃度が
特定された光磁気記録膜の製膜条件を実際に決めること
は困難であった。
【0014】このような技術的背景の下、本発明者等は
ラザフォード後方散乱(Rutherfordbackscattering)法
を適用して光磁気記録膜内に存在するアルゴン等のガス
元素を高い精度で定量できる方法を確立した(特願平4
−57641号明細書参照)。
【0015】そして、この測定法を利用してアルゴン濃
度が特定されている光磁気記録膜の磁気特性を詳細に分
析したところ、アルゴン濃度が高くなるに従い光磁気記
録膜のキュリー温度が低下することが、また、アルゴン
濃度が異なる2つの磁性膜を組合わせることにより光磁
気記録膜における磁界感度の改善と保磁力の増大とを共
に図れることが見出され本発明を完成するに至ったもの
である。
【0016】すなわち請求項1に係る発明は、希土類−
遷移金属合金から成りその磁化容易軸が膜面に対し垂直
な光磁気記録膜を基板上に備え、この光磁気記録膜へバ
イアス磁界を印加させながら光ビームを照射して情報の
記録・消去を行う光磁気記録媒体を前提とし、上記光磁
気記録膜が、濃度1原子%以上10原子%以下のアルゴ
ンを含有し希土類−遷移金属合金から成る第一磁性膜
と、濃度0.5原子%以下のアルゴンを含有し上記第一
磁性膜とその組成比が同一の希土類−遷移金属合金から
成る第二磁性膜との積層膜により構成されていることを
特徴とするものである。
【0017】この様な技術的手段において濃度1原子%
以上10原子%以下とアルゴン濃度の高い第一磁性膜
は、上述したようにそのキュリー温度が低くなっている
ため磁化反転が起こり易くなり、光ビーム照射時に濃度
0.5原子%以下とアルゴン濃度の低い第二磁性膜に較
べて微少な反転磁区が早く形成されることになる。そし
て、光磁気記録膜においては磁壁移動型の磁化反転機構
を示し微少な反転磁区は低い磁界強度でも広がるため、
レーザ光等光ビームを照射して情報の記録、消去を行う
際、バイアス磁界を低く設定してもこれを行うことが可
能となる。
【0018】一方、アルゴン濃度が低い上記第二磁性膜
は、アルゴン濃度の高い第一磁性膜よりもキュリー温度
が高いためレーザ光による再生安定性に優れており、か
つ、100℃程度の高温下において保存された場合でも
記録磁区を安定に保つことが可能となる。
【0019】そして、これ等2つの磁性膜を連続して製
膜した場合、よく知られているように製膜された2つの
磁性膜の間に交換結合力が働くため、上記第一磁性膜と
第二磁性膜との積層膜により構成された光磁気記録膜は
両方の膜の長所を具備することになる。
【0020】従って、上記光磁気記録膜についてこれを
アルゴン濃度の高い第一磁性膜とアルゴン濃度の低い第
二磁性膜との積層膜にて構成することにより、磁界感度
が良好でしかも保磁力の増大が図れた光磁気記録媒体を
求めることが可能となる。
【0021】尚、これ等磁性膜中におけるアルゴン濃度
については、この値が10原子%より大きいと垂直磁化
膜(その磁化容易軸が膜面に対し垂直な膜をいう)にな
り難くなり、かつ、密度が低下して腐食し易くなる弊害
を有する。他方、アルゴンガスを適用したスパッタリン
グ法により光磁気記録膜を製膜する際、製膜された光磁
気記録膜中のアルゴン濃度を0にすることは不可能で、
通常、0.2原子%〜0.5原子%程度の混入は避けら
れない。そこで、上記製造性や腐食性等を考慮しそのキ
ュリー温度が高く設定される第二磁性膜についてはその
アルゴン濃度を0.5原子%以下にしている。一方、第
一磁性膜については上述したようにキュリー温度を低く
設定する必要があるため、上記第二磁性膜よりそのキュ
リー温度が5℃以上低くなるようアルゴン濃度を1原子
%以上とし、かつ、垂直磁気依存性を考慮して10原子
%以下としている。
【0022】次に、この技術的手段において上記第一磁
性膜と第二磁性膜は共にその組成比が同一の希土類−遷
移金属合金で構成されており、また、室温においては殆
ど同じ磁気特性を備えている。これは磁性膜内に混入さ
れたアルゴン濃度の大小によってそのキュリー温度は大
きく変化するが補償温度についてはその変化が小さいた
めである。
【0023】従って、光磁気記録媒体の構造を設計する
上で単一組成の光磁気記録膜の場合と近似の方法で設計
できる利点を有する。すなわち、上述したような交換結
合膜等を利用する従来法においては組成の異なる2つの
磁性膜にて光磁気記録膜を構成していたため、光磁気記
録媒体の構造を設計する上でその組成が異なる交換結合
膜の設計に必要な界面エネルギーの温度依存性と膜厚の
関係等複雑な計算を行う必要があった。これに対し、こ
の技術的手段においては第一磁性膜と第二磁性膜とを組
成比が同一の希土類−遷移金属合金にて構成しているた
め、単一組成の光磁気記録膜の場合と近似の方法により
上記設計を行える利点を有している。
【0024】また、第一磁性膜と第二磁性膜とが組成比
同一の希土類−遷移金属合金にて構成されているためこ
れ等磁性膜の連続製膜が可能となり、大量生産に適用さ
れるインライン方式のスパッタリング装置でもスパッタ
リングチャンバー(真空槽)を増やすことなく製造でき
る利点を有している。
【0025】ここで、第一磁性膜と第二磁性膜の積層配
置については特に制限はなく、光ビームの照射により低
いバイアス磁界条件下で第一磁性膜に微少な反転磁区が
形成され、かつ、この反転磁区が低い磁界強度でもって
第二磁性膜へ広げられるなら、光ビームの照射側に第一
磁性膜又は第二磁性膜のいずれを配置してもよく任意で
ある。但し、光磁気記録膜に入射されたレーザ光線の吸
収が膜厚方向で変化することを考慮した場合、アルゴン
濃度の低い上記第二磁性膜に対してアルゴン濃度の高い
上記第一磁性膜をレーザ光等光ビームの照射側に配置し
た方が効率的である。
【0026】請求項2に係る発明はこの様な技術的理由
によりなされており、請求項1に係る光磁気記録媒体を
前提とし、濃度1原子%以上10原子%以下のアルゴン
を含有し希土類−遷移金属合金から成る第一磁性膜が、
上記第二磁性膜に対し光ビームの照射側に製膜されてい
ることを特徴とするものである。
【0027】尚、アルゴン濃度の高い第一磁性膜は上述
したようにそのキュリー温度が低下するためカー回転角
(ファラデー回転角)も若干低下する。従って、この第
一磁性膜を上記第二磁性膜に対し光ビームの照射側に配
置した構造を採った場合、又は、再生方式として光磁気
記録膜の透過光を検出する透過方式を採った場合には、
上記カー回転角(ファラデー回転角)の低下に伴うCN
Rの低下を防止するため第一磁性膜の膜厚については光
ビームが十分透過可能な100Å以内で、かつ、磁性膜
としての特性を維持できる50Å以上に設定することが
望ましい。但し、上記第一磁性膜に対し第二磁性膜を光
ビームの照射側に配置した構造を採り、かつ、再生方式
として光磁気記録膜(すなわち第二磁性膜)からの反射
光を検出する反射方式を採った場合には、上記第一磁性
膜におけるカー回転角等の低下が再生信号に直接関与し
難くなるため第一磁性膜の膜厚については必ずしも上記
数値範囲に設定する必要はない。
【0028】次に、請求項1又は2記載の光磁気記録媒
体を製造する方法を提供するため、本発明者等は濃度の
異なるアルゴンが混入された磁性膜の製膜方法について
以下の検討を行った。この場合、磁性膜を製膜した後に
この膜面へアルゴンイオンを照射する等して物理的に磁
性膜内にアルゴンを注入する方法が考えられるが、注入
するアルゴンイオンのエネルギーが高いと磁性膜の磁気
特性、特に保磁力が悪くなり、また、アルゴンイオンの
エネルギーを低くするとアルゴン原子が磁性膜内に混入
されないという問題があった。
【0029】従って、本発明者等は上記磁性膜のスパッ
タリング製膜中にアルゴン原子を混入させる方法につい
て鋭意検討を行った。ここで、磁性膜のスパッタリング
製膜中にアルゴン原子を混入させる方法としてチャンバ
ー内のアルゴン分圧を高めることやアルゴン流量を高め
ること等が考えられたが、これ等の方法でアルゴン原子
を混入させた場合、アルゴン濃度が1原子%以下と少な
いこと、条件の設定が難しく再現性に欠けるといった問
題があることが判明した。
【0030】次に、本発明者等はスパッタリング製膜中
におけるアルゴンプラズマに着目し検討を続行した。こ
の結果、チャンバー内に基板を配置する際、アルゴンプ
ラズマの密度の高い部分が基板に接するようその配置を
適宜調整しスパッタリング製膜中においてこの基板に衝
突するアルゴン原子の数が増大するようにしたところア
ルゴン濃度の高い磁性膜を製膜できることが判明した。
【0031】ところで、本発明に係る光磁気記録媒体を
製造するにはアルゴン濃度の高い第一磁性膜に加えてそ
の濃度が低い第二磁性膜をも連続製膜することを要す
る。
【0032】従って、高い濃度のアルゴンを混入させる
ことが可能な上記製膜法を適用してアルゴン濃度の相違
する2つの磁性膜を連続的に製膜できる簡便な方法につ
いて更なる検討を行った。ここで、アルゴンプラズマに
基板を接触させる方法として最も簡単な方法はターゲッ
トと基板との距離を接近させることであるが、同じ製膜
チャンバー(真空槽)内において混入させるアルゴン濃
度に対応させてターゲットと基板との距離を各膜ごと変
えることは実際上困難である。
【0033】そこで、以下に述べるような別の方法を検
討したところ、アルゴンプラズマと基板との距離を簡単
に制御でき、従って、簡単にアルゴン濃度が異なる2つ
の磁性膜を連続的に製膜できることが見出された。すな
わち、上記製膜チャンバーの外周に導線を巻き付けこれ
に電流を流すと、チャンバー内に垂直成分50 Gauss、
水平成分10 Gauss程度の磁場を形成することができ、
かつ、この磁場をON、OFFすることによりアルゴン
プラズマの大きさが変化してアルゴンプラズマと基板と
の距離を簡単に制御できることが発見された。そして、
上記導線へ通電して磁場をON状態にすると、アルゴン
プラズマが集まって小さくなりアルゴンイオン濃度の高
いプラズマが形成される。そこで、このアルゴンイオン
濃度の高いプラズマ部分に基板が接するように配置する
ことによりアルゴン濃度の高い磁性膜を製膜することが
可能となる。一方、磁場をOFF状態にすると、アルゴ
ンプラズマは広がってアルゴンイオン濃度の高い部分が
できなくなるため、製膜中の磁性膜内に混入されるアル
ゴン濃度は低くなる。従って、この方法を採ることによ
りアルゴン濃度が異なる2つの磁性膜を連続的にしかも
簡単に製膜することが可能となる。
【0034】請求項3に係る発明はこの様な技術的検討
に基づいて創作されている。
【0035】すなわち、請求項3に係る発明は、希土類
−遷移金属ターゲットが投入された真空槽内に基板を配
置し、アルゴンガスを用いたスパッタリング法により上
記基板上に光磁気記録膜を製膜して請求項1又は2記載
の光磁気記録媒体を製造する方法を前提とし、通電の有
無により選択的に磁場が形成されて上記真空槽内の放電
プラズマの大きさを制御する導線を真空槽の外周部に巻
き付けると共に、スパッタリング製膜中に上記導線への
通電を選択的に行って上記光磁気記録膜を構成するアル
ゴン濃度の異なる2つの磁性膜を連続的に製膜すること
を特徴とするものである。
【0036】ここで、請求項1〜3に係る発明において
光磁気記録媒体の基板に適用できる材料としては、従来
同様、ガラス、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリ
オレフィン系樹脂等があり、また、第一磁性膜及び第二
磁性膜の主要部を構成する磁性材料としては、ガドリニ
ウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム
(Dy)等の希土類元素と、鉄(Fe)、コバルト(C
o)等の遷移金属元素の非晶質合金が適用できる。この
具体例としては、GdTbFe、TbDyFe、TbF
eCo、DyFeCo等の3元系合金や、GdTbFe
Co,TbDyFeCo、GdDyFeCo等の4元系
合金等が挙げられる。尚、これ等第一磁性膜及び第二磁
性膜については、耐環境性向上のため4原子%以下程度
のCrやTi等を添加する場合もある。また、上記第一
磁性膜と第二磁性膜で構成される光磁気記録膜を酸化等
の劣化から保護するための誘電体膜としては、Si
x 、AlN、SiO2 、SiO、Ta2 5 、AlO
3 、SiAlN、及びSiAlON等が適用できる。
【0037】また、上記基板についてはトラッキングを
容易にするための案内溝や信号の読取りに利用されるピ
ット(プレフォーマット信号ピット)、及び、ROM領
域等を予め設けてもよく、また第一磁性膜と第二磁性膜
とで構成される光磁気記録膜についてはその光ビームの
照射側とは反対側に誘電体を挟んで又は直接にAl等の
金属膜で構成され実効的にカー回転角を大きくする反射
膜を設けてもよい。
【0038】更に、この光磁気記録媒体の再生方式は、
レーザ光等光ビームを照射しその反射光を検出してその
記録情報を再生する方式(上述した反射方式)であって
も、あるいは磁性膜を通過した透過光を検出して再生す
る方式(上述した透過方式)であってもよく任意であ
る。
【0039】
【作用】請求項1に係る発明によれば、光磁気記録膜
が、濃度1原子%以上10原子%以下のアルゴンを含有
し希土類−遷移金属合金から成る第一磁性膜と、濃度
0.5原子%以下のアルゴンを含有し上記第一磁性膜と
その組成比が同一の希土類−遷移金属合金から成る第二
磁性膜との積層膜により構成されている。
【0040】そして、濃度1原子%以上10原子%以下
とアルゴン濃度の高い第一磁性膜はそのキュリー温度が
低く磁化反転が起こり易いため、光ビーム照射時にアル
ゴン濃度の低い第二磁性膜に較べて微少な反転磁区が早
く形成されることになる。また、光磁気記録膜において
は磁壁移動型の磁化反転機構を示し微少な反転磁区は低
い磁界強度でも広がるため、光ビームを照射して情報の
記録、消去を行う際、バイアス磁界を低く設定してもこ
れを行うことが可能となる。
【0041】他方、上記第二磁性膜はアルゴン濃度の高
い第一磁性膜よりもキュリー温度が高いため、光ビーム
による再生安定性に優れており、かつ、100℃程度の
高温下において保存された場合でも記録磁区を安定に保
つことが可能となる。
【0042】しかも、連続製膜された第一磁性膜と第二
磁性膜との間には交換結合力が作用しこれ等積層膜によ
り構成された光磁気記録膜は両膜の長所を具備すること
になるため、光磁気記録膜における磁界感度の改善と保
磁力の増大とを共に図ることが可能となる。
【0043】また、上記第一磁性膜と第二磁性膜とはそ
の組成比が同一の希土類−遷移金属合金にて構成されて
いるため、光磁気記録媒体の構造を設計する上で単一組
成の光磁気記録膜の場合と近似の方法により設計するこ
とが可能となり、かつ、大量生産に適用されるインライ
ン方式のスパッタリング製膜法により真空槽を増やすこ
となく第一磁性膜と第二磁性膜とを連続製膜することが
可能となる。
【0044】次に、請求項2に係る発明によれば、濃度
1原子%以上10原子%以下のアルゴンを含有し希土類
−遷移金属合金から成る第一磁性膜が、第二磁性膜に対
し光ビームの照射側に製膜されているため、記録・消去
時における光ビーム照射に伴う熱効率の向上が図れる。
【0045】一方、請求項3に係る発明によれば、通電
の有無により選択的に磁場が形成され真空槽内の放電プ
ラズマの大きさを制御する導線を真空槽の外周部に巻き
付けると共に、スパッタリング製膜中に上記導線への通
電を選択的に行って光磁気記録膜を構成するアルゴン濃
度の異なる2つの磁性膜を連続的に製膜しているため、
請求項1又は2に係る光磁気記録媒体を簡便に製造する
ことが可能となる。
【0046】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
て詳細に説明する。
【0047】すなわち、この実施例に係る光磁気ディス
クは、図1に示すようにポリカーボネート製の透明基板
11と、この基板11上にスパッタリング製膜された膜
厚1200Åの非晶質窒化硅素(SiNx )の誘電体干
渉膜21と、この誘電体干渉膜21上へスパッタリング
製膜され(Tb19.6Fe71.7Co8.7 98Ar2 の組成
を有する非晶質合金から成る膜厚80Åの第一磁性膜3
1と、この第一磁性膜31上にスパッタリング製膜され
(Tb19.6Fe71.7Co8.7 99.6Ar0.4 の組成を有
する非晶質合金から成る膜厚200Åの第二磁性膜32
と、第二磁性膜32上にスパッタリング製膜された膜厚
300Åの非晶質窒化硅素(SiNx )の誘電体保護膜
41と、この誘電体保護膜41上にスパッタリング製膜
された膜厚400ÅのAlTi合金膜の反射膜51とで
その主要部が構成されている。
【0048】尚、これ等膜を製膜したスパッタリング装
置はバッチ式で、かつ、その真空槽の外周部に導線を巻
き付けこの導線への通電の有無により真空槽内に弱い磁
場が形成される構造のものを適用し、またスパッタガス
はアルゴンであった。
【0049】そして、第一磁性膜31の製膜時には上記
導線へ通電して(Tb19.6Fe71.7Co8.7 98Ar2
組成の被膜を形成し、一方、第二磁性膜32の製膜時に
はこの通電を停止し(Tb19.6Fe71.7Co8.7 99.6
Ar0.4 組成の被膜を形成して各磁性膜内のアルゴン濃
度を調整している。
【0050】この様にして製造された光磁気ディスクを
試料としこの試料の多層薄膜(誘電体干渉膜21、第一
磁性膜31、第二磁性膜32、誘電体保護膜41、及
び、反射膜51から成る)についてラザフォード後方散
乱法によりその組成を検査し、求めたエネルギースペク
トルのグラフ図を図2に示すと共にこのスペクトルにお
いてArを示すピークの拡大グラフ図を図3に示す。
尚、図3の線aは測定データ、線bは測定データからバ
ックグランドのノイズを差し引いた値をプロットしたも
のである。
【0051】また、図2及び図3の線bを解析して得ら
れた各元素の濃度について以下の表1に示す。尚、図3
の線cは表1の結果に基づき計算によりその結果をプロ
ットしたもので、図3の線cと線bは良い一致を示して
いることが確認できる。
【0052】そして、表1より第一磁性膜31と第二磁
性膜32のアルゴン濃度が上記設定通りになっているこ
とが分かる。
【0053】[比較例]実施例で適用したスパッタリン
グ装置において上記導線に電流を通電しなかった点を除
き実施例と同様な方法で光磁気ディスクを製造した。
【0054】この様にして製造された比較例に係る光磁
気ディスクを試料としこの試料の多層薄膜(誘電体干渉
膜、光磁気記録膜、誘電体保護膜、及び反射膜から成
る)についてラザフォード後方散乱法によりその組成を
検査し、求めたエネルギースペクトルのグラフ図を図4
に示すと共にこのスペクトルにおいてArを示すピーク
の拡大グラフ図を図5に示す。尚、図5の線a’は測定
データ、線b’は測定データからバックグランドのノイ
ズを差し引いた値をプロットしたものである。
【0055】また、図4及び図5の線b’を解析して得
られた各元素の濃度について以下の表2に示す。尚、図
5の線c’は表2の結果に基づき計算によりその結果を
プロットしたものである。
【0056】そして、図5においてアルゴンを示すピー
クは図3の場合と相違して左右対称になっており、か
つ、光磁気記録膜中のアルゴン原子が光磁気記録膜中で
均一な分布をしているとして計算した線c’と線b’と
が良い一致を示していることから、比較例に係る光磁気
ディスクにおいてはその光磁気記録膜中にアルゴン原子
が均一に分布していると考えられる。
【0057】
【表1】
【表2】 『確認試験』この様にして得られた実施例と比較例に係
る光磁気ディスクについてその磁界感度と再生安定性の
確認試験を行った。
【0058】上記磁界感度については光磁気ディスク評
価装置OMS2000を用い、1800rpmの回転数
でディスクの半径30mmの位置において、3.7MH
z、パルスduty22%、6mWで書込みする際の磁
場強度(記録バイアス磁界強度)を−400Oeから+
400Oeまで変化させて行い、キャリア・ノイズ・レ
シオ(CNR)を測定することにより評価した。この結
果を図6に示す。
【0059】図6から分かるように実施例に係る光磁気
ディスク(○で示す)の方が、比較例に係る光磁気ディ
スク(●で示す)に較べて0磁界に近い負の磁場でCN
Rが立上がり0磁界に近い正の磁場で飽和している。
【0060】従って、実施例に係る光磁気ディスクは比
較例に係る光磁気ディスクよりその磁界感度が優れてい
ることが確認できた。
【0061】一方、上記再生安定性については、磁界感
度の評価と同様に光磁気ディスク評価装置OMS200
0を用い、1800rpmの回転数でディスクの半径3
0mmの位置において再生パワー2mWの条件で100万
回の再生を行い、CNRを測定することにより評価し
た。この結果を図7に示す。
【0062】そして、図7から明らかなように実施例に
係る光磁気ディスク(○で示す)は比較例に係る光磁気
ディスク(●で示す)と略同一の特性を示し、従って、
従来同様再生安定性の良いディスクであることが確認で
きた。
【0063】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、光磁気記
録膜が、濃度1原子%以上10原子%以下のアルゴンを
含有し希土類−遷移金属合金から成る第一磁性膜と、濃
度0.5原子%以下のアルゴンを含有し上記第一磁性膜
とその組成比が同一の希土類−遷移金属合金から成る第
二磁性膜との積層膜により構成されているため、光磁気
記録膜における磁界感度の改善と保磁力の増大とを共に
図ることが可能となる。
【0064】従って、高回転数対応の光磁気記録媒体や
磁界変調オーバーライト対応の光磁気記録媒体として適
用できる効果を有している。
【0065】また、上記第一磁性膜と第二磁性膜とはそ
の組成比が同一の希土類−遷移金属合金にて構成されて
いるため、組成が異なる2つの磁性膜にて光磁気記録膜
を構成する従来法に較べて光磁気記録媒体の構造を設計
する上でその簡略化が図れ、かつ、真空槽を増やすこと
なく上記第一磁性膜と第二磁性膜とをインライン方式の
スパッタリング製膜法により連続製膜できる効果を有し
ている。
【0066】次に、請求項2に係る発明によれば、濃度
1原子%以上10原子%以下のアルゴンを含有し希土類
−遷移金属合金から成る第一磁性膜が、第二磁性膜に対
し光ビームの照射側に製膜されているため、記録・消去
時における光ビーム照射に伴う熱効率の向上が図れる効
果を有しており、一方、請求項3に係る発明によれば、
真空槽の外周部に巻き付けた導線への通電の有無により
光磁気記録膜を構成するアルゴン濃度の異なる2つの磁
性膜を連続的に製膜できるため、請求項1又は2に係る
光磁気記録媒体を簡便にかつ確実に製造できる効果を有
している。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る光磁気ディスクの構成を示す断面
図。
【図2】実施例に係る光磁気ディスクについてラザフォ
ード後方散乱法により求められたエネルギースペクトル
を示したグラフ図。
【図3】図2のエネルギースペクトルにおいてArを示
すピークの拡大グラフ図。
【図4】比較例に係る光磁気ディスクについてラザフォ
ード後方散乱法により求められたエネルギースペクトル
を示したグラフ図。
【図5】図4のエネルギースペクトルにおいてArを示
すピークの拡大グラフ図。
【図6】記録バイアス磁界とCNRとの関係を示したグ
ラフ図。
【図7】繰り返し再生回数とCNR低下量との関係を示
したグラフ図。
【図8】従来例に係る光磁気記録媒体の構成を示す断面
図。
【符号の説明】
11 透明基板 21 誘電体干渉膜 31 第一磁性膜 32 第二磁性膜 41 誘電体保護膜 51 反射膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 崇志 兵庫県揖保郡揖保川町馬場805 オプティ カルストレージ株式会社播磨工場内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類−遷移金属合金から成りその磁化容
    易軸が膜面に対し垂直な光磁気記録膜を基板上に備え、
    この光磁気記録膜へバイアス磁界を印加させながら光ビ
    ームを照射して情報の記録・消去を行う光磁気記録媒体
    において、 上記光磁気記録膜が、濃度1原子%以上10原子%以下
    のアルゴンを含有し希土類−遷移金属合金から成る第一
    磁性膜と、濃度0.5原子%以下のアルゴンを含有し上
    記第一磁性膜とその組成比が同一の希土類−遷移金属合
    金から成る第二磁性膜との積層膜により構成されている
    ことを特徴とする光磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】濃度1原子%以上10原子%以下のアルゴ
    ンを含有し希土類−遷移金属合金から成る第一磁性膜
    が、上記第二磁性膜に対し光ビームの照射側に製膜され
    ていることを特徴とする請求項1記載の光磁気記録媒
    体。
  3. 【請求項3】希土類−遷移金属ターゲットが投入された
    真空槽内に基板を配置し、アルゴンガスを用いたスパッ
    タリング法により上記基板上に光磁気記録膜を製膜して
    請求項1又は2記載の光磁気記録媒体を製造する方法に
    おいて、 通電の有無により選択的に磁場が形成されて上記真空槽
    内の放電プラズマの大きさを制御する導線を真空槽の外
    周部に巻き付けると共に、スパッタリング製膜中に上記
    導線への通電を選択的に行って上記光磁気記録膜を構成
    するアルゴン濃度の異なる2つの磁性膜を連続的に製膜
    することを特徴とする光磁気記録媒体の製造方法。
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