JP3570921B2 - 光磁気記録媒体を用いた情報の記録方法 - Google Patents

光磁気記録媒体を用いた情報の記録方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光磁気記録媒体を用いた情報の記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光磁気記録媒体を用いた情報記録システムが実用化の段階に入り、オーバーライト機能、すなわち情報が記録されたエリアに新たな情報を再書き込みする場合、先に記録された情報を一旦消去した後に新たな情報を書き込むのではなく、先に記録された情報を消去しつつ同時に新たな情報を記録し得る機能を有する光磁気記録媒体の開発がますます重要な技術的課題になっている。
【0003】
光磁気記録媒体のオーバーライト記録方式としては、現在のところ、光磁気記録媒体に一定強度の外部磁界を印加しつつ、2値化された情報信号の“0”又は“1”に対応してパルス状に強度変調された記録用光を走査し、情報を記録する光強度変調方式が最も注目されている。光強度変調方式のオーバーライト記録を可能にした光磁気記録媒体としては、例えば特開昭62−175948号公報に記載されているもの、あるいは例えば国際公開番号WO90/02400に記載されているものなどがある。
【0004】
なお、光磁気記録媒体は、基板上に担持された磁性層に情報信号に対応する反磁区(磁化ドメイン)を形成して情報の記録を行い、このようにして情報が記録された磁性層に直線偏光を照射したとき、磁性層の磁化の向きによって反射光のカー回転角が変化することを利用して情報の再生を行うものである。磁性層に反転磁区を形成する方式には、いわゆる光強度変調方式と磁界強度変調方式とがあるが、いずれの方式においても、磁性層をキュリー温度近傍あるいはそれ以上に昇温しなくてはならない。また、光磁気記録媒体は、情報の消去と再記録とを繰り返し行うことができるイレーザブルタイプの情報記録媒体であり、情報の消去を行う場合にも磁性層をキュリー温度近傍あるいはそれ以上に昇温しなくてはならない。従来より、磁性層の昇温は、磁性層にレーザビームを合焦することによって行われている。
【0005】
かように光磁気記録媒体は、磁性層を所定温度まで昇温することによって情報の記録と消去とを行うから、所望のデータ転送速度を得るためには、磁性層のキュリー温度と、磁性層に接する部分の熱伝導率と、磁性層に照射されるレーザビームの強度と、光磁気記録媒体上を走行するレーザビームスポットの線速度とをバランス良く設定しなくてはならない。
【0006】
従来より実用化されている5インチの光磁気ディスクは、30〜40mWの半導体レーザが搭載された光磁気ディスク駆動装置に装着されて2400rpmで回転駆動され(角速度一定)、レーザビームスポットの線速度が最も高くなる(150m/s)最外周記録領域において最適な状態で情報の記録及び消去が行えるように、磁性層のキュリー温度と磁性層に接する部分の熱伝導率とが設定されている。なお、これに関連する従来技術としては、例えば特開昭56−4090号公報、特開昭56−54070号公報、特開昭57−120253号公報、特開昭57−169996号公報などを挙げることができる。
【0007】
また、従来より、例えば「わかりやすい光ディスク」、株式会社オプトロニクス、昭和60年12月10日発行、第52頁に記載されているように、2枚の光磁気記録単板の透明基板及び記録面同士を接着剤を介して貼り合わせてなるいわゆる密着貼り合わせ構造の光磁気記録媒体が知られている。また、2枚の光記録単板の透明基板の内周部及び外周部を接着剤が塗布されたスぺーサを介して貼り合わせ、相対向する記録面の間に空気層を介在させたいわゆるエアサンドイッチ構造の光磁気記録媒体が知られている。
【0008】
光記録単板は、基板のプリフォーマットパターン形成面に少なくとも記録層又は反射層を含む1層又は複数層の薄膜を被着したものであって、透明基板は、例えばガラスなどの透明セラミック材料や、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルペンテン、エポキシ、光硬化性樹脂などの透明プラスチック材料をもって形成される。一方、これらの光記録単板を接着する接着剤としてはエポキシ系接着剤などの高分子接着剤が賞用されている。
【0009】
さらに、この種の光情報記録媒体にあっては、従来より透明基板と光磁気記録膜との間に、酸化物ならびに窒化物などの透明薄層を設けて、光学多重干渉膜、保護膜として機能させる検討が種々行われている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、情報のオーバーライトを実現するためには、光強度変調方式をとるか磁界強度変調方式をとるかに拘らず、光磁気記録膜の外部磁界感度が充分に高くなくてはならない。上記光変調方式のオーバーライト記録に適用される光磁気記録媒体の公知例のうちの前者は、垂直磁化膜である光磁気記録膜上に自発磁化を有する補助磁性膜を積層したので、垂直磁化膜単独の場合に比べて記録時又は消去時の外部磁界感度を高めることができる。
【0011】
しかるに、このようにしても記録又は消去時に200(Oe)以上の外部磁界が必要であり、実用上充分に外部磁界感度が高くなっているとは言えない。また、光磁気記録膜と補助磁性膜とが直接積層されているので、両膜間に作用する交換結合力が期待される値よりもかなり大きくなり、光強度変調方式による場合には、少なくとも5〜6(KOe)もの初期化磁石が必要となる。さらに、それに比例して記録磁区が消失しやすいという問題もある。
【0012】
また、光磁気記録媒体においては、データ転送速度の高速化が最も重要な技術的課題の1つになっている。データ転送速度を高速化するためには、光磁気記録媒体に対するレーザビームスポットの線速度(例えば、光磁気ディスクの回転速度)を高速化しなくてはならないが、レーザビームスポットの線速度を高速化するとレーザビームの照射時間が短縮化されて磁性層が昇温されにくくなるので、光磁気記録媒体の記録感度を向上するか、あるいは半導体レーザを大出力化するかといういずれかの技術的課題を解決する必要がある。
【0013】
また、貼り合わせ構造の光磁気記録媒体においては、媒体内部への水分の侵入を防止し、記録層又は反射層の腐食を防止するため、接着層中に無機フィラーを混入して接着層の透湿率を低減することが多いが、この場合にも無機フィラーと接着剤との反応性が乏しいために剥離を生じやすく、長期保存性が悪いという問題がある。
【0014】
さらに、酸化物層を蒸着法やスパッタリング法で形成タイプの光磁気記録媒体にあっては、前記酸化物層が化学的に不安定となり、酸素が遊離しやすく、その遊離した酸素が光磁気記録膜中に徐々に拡散し、その結果、光磁気記録膜を酸化して、情報の記録、再生、消去特性が劣化してしまう。
【0015】
一方、酸化物層はポリカーボネートなどの合成樹脂製透明基板に対する密着性が弱いため、光磁気記録膜の下地層とした場合、長い間には透明基板と下地層との間において剥離を生じ、データストレージとしての機能が低下する。このようなことから、従来の光磁気記録媒体では信頼性に問題があった。
【0016】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、安価にして簡単なヘッド装置で情報の記録、再生が可能な光磁気記録媒体を提供することにある。
【0017】
第2の目的は、初期化磁石を小型化することができ、かつ安定な記録を実現可能な光磁気記録媒体を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記第1及び第2の目的を達成するため、第1〜第3の希土類−遷移金属系の非晶質垂直磁化膜からなる光磁気記録膜と記録磁区が形成される前記第3の非晶質垂直磁化膜との間で交換結合力を及ぼし合う自発磁化を有する補助磁性膜とを有し、昇温時にキュリー温度以下の温度でM−Hループの角形比が1の状態から1と0の中間状態に変化する光磁気記録媒体を用い、情報の記録時に100(Oe)以上200(Oe)未満の外部磁界を印加することにより磁界強度変調方式で情報のオーバーライトを行うことを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、前記第1及び第2の目的を達成するため、前記補助磁性膜が、(Au,Ag,Cu,Pt)元素群から選択された少なくとも1種類の元素を含有した希土類−遷移金属系の非晶質合金で構成されていることを特徴とする。
【0020】
昇温時にキュリー温度以下の温度でM−Hループの角形比が1の状態から1と0の中間状態に変化する光磁気記録膜と自発磁化を有する補助磁性膜とを備えた光磁気記録媒体は、キュリー温度近傍でM−Hループの角形比が1の光磁気記録膜を備えた光磁気記録媒体、および、昇温時にキュリー温度以下の温度でM−Hループの角形比が1の状態から1と0の中間状態に変化する光磁気記録膜を備えるが自発磁化を有する補助磁性膜を備えない光磁気記録媒体に比べて、より小さな外部磁界で補助磁性膜の磁化の方向、ひいては光磁気記録膜の磁化の方向を上向き又は下向きにスイッチングできる。よって、従来実用化が困難であるとされていた磁界強度変調方式によるオーバーライト記録が可能になる。
【0021】
前記光磁気記録膜としては、キュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェリ磁性体、キュリー温度近傍で希土類リッチのフェリ磁性体、キュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェロ磁性体、キュリー温度近傍で希土類リッチのフェロ磁性体などを用いることができ、膜面に垂直な方向に対して傾斜した方向の磁気モーメント成分を有し、かつ当該光磁気記録膜をそのキュリー温度近傍まで加熱したとき、前記傾斜した磁気モーメント成分と膜面に対して垂直な方向の磁気モーメント成分が共に消失する磁性膜を用いることが特に好ましい。
【0022】
さらに、磁気超解像形の光磁気記録媒体としては、公知に属する任意の膜構造を有するものを用いることができるが、光磁気記録膜が、下記の(1)〜(4)の条件を満たし、かつ室温下で互いに磁気的に結合する第1、第2、第3の希土類−遷移金属系非晶質垂直磁化膜の積層体からなり、これら各磁性膜のうち、透明基板から最も離隔して配設される前記第3の磁性膜が、室温下で希土類副格子磁化が優勢な磁性膜をもって構成されたものが、特に好適である。
【0023】
(1)T<Tc<Tc,Tc
(2)Hc+Hw(3,1)<Hr(再生時に最高温度まで消音させる領域及びその近傍の領域において)
(3)Hc>Hr(室温から再生時の最高到達温度までの温度範囲において)
(4)Hc<Hw(3,1)(室温時)
但し、Tは室温、Tc,Tc,Tcは夫々第1、第2、第3の磁性膜のキュリー温度、Hc,Hcは夫々第1、第3の磁性膜の保磁力、Hrは再生用外部磁界の強度、Hw(3,1)は第3の磁性膜が第1の磁性膜に及ぼす交換磁界の強度である。
【0024】
なお、かかる構成に加えて、超解像形の光磁気記録媒体を構成する3つの磁性膜のうちの少なくともいずれか1つの磁性膜の表面に、希土類−遷移金属系非晶質合金の酸化物層又は窒化物層を形成するか、あるいは前記3つの磁性膜のいずれかと接する部分に当該接する磁性膜との間で互いに交換結合力を作用する補助磁性膜を設けるか、あるいは再生動作時に記録磁区の保存に関与する第3の磁性膜に、白金、ニオブ、ネオジム、ホルミウム、ガドリニウム、クロムから選択される少なくとも1種類の非磁性元素を添加すると、より一層外部磁界感度が高くなる。
【0025】
一方、前記補助磁性膜としては、前記光磁気記録膜との間で交換結合力を作用し合うものを備えることが好ましく、前記光磁気記録膜のキュリー温度近傍で角形比が1以下の磁性膜を用いることが特に好ましい。この補助磁性膜は、貴金属または遷移金属を含む合金で構成することができ、より具体的には、(Au,Ag,Al,Pt,Rh,Pd)元素群から選択された少なくとも1種類の元素と、(Fe,Co,Ni)元素群から選択された少なくとも1種類の元素との合金や、(Au,Ag,Al,Cu,Pt,Nb,Nd,Ho,Gd,Cr)元素群から選択された少なくとも1種類の元素を含有した希土類−遷移金属系の非晶質合金をもって形成することができる。さらに、補助磁性膜のキュリー温度と光磁気記録膜のキュリー温度との差は150℃以内とすることが好ましい。
【0026】
以下に、光磁気記録膜として、キュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェリ磁性体を用いた場合と、キュリー温度近傍で希土類リッチのフェリ磁性体を用いた場合を例にとって、前記第1及び第2の目的を達成するために構成された手段の作用をより詳細に説明する。
【0027】
希土類−遷移金属系の非晶質合金は、その磁気的性質として、希土類(重希土類金属)と遷移金属の持つ部分磁化が反平行になるフェリ磁性を示す。すなわち、媒体全体の磁化の方向は、希土類の部分磁化と遷移金属の部分磁化との差として観察され、それらの部分磁化の大小関係によって、全体の磁化の向きが希土類の部分磁化方向になったり(RE−rich)、遷移金属の部分磁化方向になったり(TM−rich)する。また、希土類の部分磁化が遷移金属の部分磁化よりも温度に対する依存性が大きいために、合金の組成によっては、室温と磁化を失う特定の温度(キュリー温度)との間に磁化方向が逆転する補償温度を持ったり、この補償温度を持たないものになったりする。さらに、媒体の保磁力も部分磁化の大小関係に依存して変化し、室温でTM−richの場合には、媒体の保磁力は室温から昇温するにしたがって漸減し、キユリー温度で保磁力を失う。一方、室温でRE−richのものの中には、室温とキュリー温度との間に保磁力が無限大に発散する磁気補償点が現われ、磁気補償点よりも低い温度ではRE−rich、磁気補償点よりも高い温度ではTM−richとなるものがある。
【0028】
貴金属−遷移金属系の補助磁性膜は、外部磁界が印加される以前においては、磁化が面内方向(補助磁性膜の膜面と平行な方向)に向いており、キュリー温度近傍まで昇温された状態で外部磁界が印加されると、磁化の方向が面内方向より立ち上がって外部磁界方向の磁気モーメント成分を生じる。また、外部磁界を取り除くと、再度磁化の方向が面内方向に復帰する。
【0029】
以下、図29に基づいて、少なくともキュリー温度の近傍においてTM−richのフェリ磁性体からなる光磁気記録膜上にこの補助磁性膜を積層してなる光磁気記録媒体における信号のオーバーライト原理について説明する。なお、この図において、符号4は光磁気記録膜を、また符号5は補助磁性膜を示し、光磁気記録膜4中の白抜き矢印は希土類の部分磁化を、実線矢印は遷移金属の部分磁化を示している。そして、各矢印の長さが、各部分磁化の大きさを表わしている。
【0030】
図29(1)の状態を消去状態、図29(2)の状態を記録状態とした場合、図29(1)の消去状態にある部分に一定強度のレーザビームを照射して補助磁性層5及び光磁気記録膜4をキュリー温度近傍まで昇温しつつ上向き(正方向)に外部磁界Hを印加してゆくと、補助磁性層5の磁化の方向が面内方向より上向きに立ち上がって外部磁界方向の磁気モーメント成分を生じる。そして、これによって光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化との間の交換結合エネルギーが徐々に大きくなり、ある特定の大きさの外部磁界を印加した段階で、光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化が上向きに反転し、全体の磁化Mが正となった図29(3)の状態になる。この状態から外部磁界Hを取り除きかつ補助磁性膜5及び光磁気記録膜4を冷却すると、補助磁性膜5の磁化の方向が面内方向に復帰し、光磁気記録膜4の磁化の方向は、上向きに保存される(図29(2)の状態)。また、図29(2)の記録状態にある部分に一定強度のレーザビームを照射して補助磁性層5及び光磁気記録膜4をキュリー温度近傍まで昇温しつつ上向きに外部磁界Hを印加した場合には、もともと光磁気記録膜4の磁化が上向きになっているので、変化を生じない。かように、初期状態における光磁気記録膜4の磁化状態に拘りなく、前記の操作を行うことによって記録が行われる。
【0031】
一方、図29(2)の記録状態にある部分に一定強度のレーザビームを照射して補助磁性層5及び光磁気記録膜4をキュリー温度近傍まで昇温しつつ下向き(負方向)に外部磁界Hを印加してゆくと、補助磁性層5の磁化の方向が面内方向より下向きに立ち上がって外部磁界方向の磁気モーメント成分を生じる。そして、これによって光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化との間の交換結合エネルギーが徐々に大きくなり、ある特定の大きさの外部磁界を印加した段階で、光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化が上向きに反転し、全体の磁化Mが負となった状態になる。この状態から外部磁界Hを取り除きかつ補助磁性膜5及び光磁気記録膜4を冷却すると、補助磁性膜5の磁化の方向が面内方向に復帰し、光磁気記録膜4の磁化の方向は、上向きに保存される(図29(1)の状態)。また、図29(1)の消去状態にある部分に一定強度のレーザビームを照射して補助磁性層5及び光磁気記録膜4をキュリー温度近傍まで昇温しつつ下向きに外部磁界Hを印加した場合には、もともと光磁気記録膜4の磁化が下向きになっているので、変化を生じない。かように、初期状態における光磁気記録膜4の磁化状態に拘りなく、前記の操作を行うことによって消去が行われる。
【0032】
図29に示すように、補助磁性膜5と光磁気記録膜4とを積層してなる光磁気記録媒体は、両膜の間に作用する交換結合力によって、光磁気記録膜単層からなる光磁気記録媒体に比べて、磁化反転を生じる外部磁界Hの大きさが格段に小さくなる。よって、前記第1の手段に示した光磁気記録媒体は、小さな外部磁界を用いて磁界強度変調方式によるオーバーライト記録が可能になる。なお、前記においては、室温においてもTM−richである光磁気記録媒体を例にとって説明したが、室温においてもRE−richであり、室温とキュリー温度の間に補償点を有する光磁気記録媒体についても同様の原理で信号のオーバーライトを行うことができる。また前記においては、図29(1)の状態を消去状態、図29(2)の状態を記録状態としたが、逆に図29(1)の状態を記録状態、図29(2)の状態を消去状態としても、外部磁界Hの印加方向を逆向きとすることによって、前記と同様の原理のもとで信号のオーバーライトを行うことができる。
【0033】
次に、図30〜図32に基づいて、少なくともキュリー温度の近傍においてRE−richのフェリ磁性体からなる光磁気記録膜上に補助磁性膜5を積層してなる光磁気記録媒体における信号のオーバーライト原理について説明する。なお、この図における符号の意味内容は、図29と同じである。
【0034】
この光磁気記録媒体は、キュリー温度Tc以下のある温度Toまでは、図30に示すようなM−Hループを示すが、その温度To以上、キュリー温度Tcまでの温度範囲においては、図31に示すようなM−Hループを示す。図31(1)の状態を消去状態、図31(2)の状態を記録状態とした場合、図31(1)の消去状態にある部分に媒体温度がTo<T<Tcとなるような強度のレーザビームを照射しつつ上向き(正方向)に外部磁界Hを印加してゆくと、補助磁性膜5の磁化の方向が面内方向より上向きに立ち上がって外部磁界方向の磁気モーメント成分を生じる。そして、これによって光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化との間の交換結合エネルギーが徐々に大きくなり、ある特定の大きさの外部磁界Hcを印加した段階で、光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化が上向きに反転し、希土類の部分磁化が下向きになって全体の磁化Mが下向きとなった図31(3)の状態になる。この状態から補助磁性膜5及び光磁気記録膜4を冷却し、かつ外部磁界Hを取り除くと、補助磁性膜5の磁化の方向が面内方向に復帰し、光磁気記録膜4の磁化の方向は、下向きのまま保存される(図31(2)の状態)。
【0035】
なお、図31(3)の状態から、さらに強い外部磁界Hを上向きに印加すると、ある特定の大きさの外部磁界Hcを印加した段階で、補助磁性層5と光磁気記録膜4との間の界面磁壁に蓄えられていた交換結合力に対応するエネルギーよりも外部磁界Hと光磁気記録膜4との相互作用がもつエネルギーの方が大きくなり、補助磁性層5の部分磁化が完全に外部磁界方向に向くと共に、光磁気記録膜4の希土類の部分磁化が上向きに反転し、図31(4)の状態になる。この状態から補助磁性膜5及び光磁気記録膜4を冷却しかつ外部磁界Hを取り除くと、補助磁性膜5の磁化の方向が面内方向に復帰し、再度補助磁性層5と光磁気記録膜4との間の界面磁壁に蓄えられていた交換結合力に対応するエネルギーの方が外部磁界Hと光磁気記録膜4との相互作用がもつエネルギーよりも大きくなって、光磁気記録膜4の希土類の部分磁化が下向きに反転し、図31(2)の状態になる。また、図31(2)の記録状態にある部分に大きな外部磁界Hを印加した場合にも前記と同様にして一旦は図31(4)の状態になるが、補助磁性膜5及び光磁気記録膜4を冷却しかつ外部磁界Hを取り除けば、またもとの図31(2)の状態に復帰する。かように、初期状態における光磁気記録膜4の磁化状態に拘りなく、前記の操作を行うことによって記録が行われる。
【0036】
また、図31(1’)の消去状態にある部分に媒体温度がT<T<Tcとなるような強度のレーザビームを照射しつつ上向き(正方向)に外部磁界Hを印加してゆくと、補助磁性層5の磁化の方向が面内方向より上向きに立ち上がって外部磁界方向の磁気モーメント成分を生じる。そして、これによって光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化との間の交換結合エネルギーが徐々に大きくなり、ある特定の大きさの外部磁界Hc’を印加した段階で、光磁気記録膜4中の遷移金属の部分磁化が上向きに反転し、希土類の部分磁化が下向きになって全体の磁化Mが下向きとなった図31(3’)の状態になる。この図31(3’)の状態からさらに強い外部磁界Hを上向きに印加すると、ある特定の大きさの外部磁界Hc’を印加した段階で、補助磁性層5と光磁気記録膜4との間の界面磁壁に蓄えられていた交換結合力に対応するエネルギーよりも外部磁界Hと光磁気記録膜4との相互作用がもつエネルギーの方が大きくなり、補助磁性層5の部分磁化が完全に外部磁界方向に向くと共に、光磁気記録膜4の希土類の部分磁化が上向きに反転し、図31(4’)の状態になる。この状態から補助磁性膜5及び光磁気記録膜4を冷却しかつ外部磁界Hを取り除くと、補助磁性膜5の磁化の方向が面内方向に復帰すると共に、光磁気記録膜4の部分磁化は図31(4’)の状態のままクエンチされ、図31の破線部分をジャンプして図31(1’)の消去状態に戻る。また、図31(2’)の記録状態にある部分に大きな外部磁界Hを印加した場合にも前記と同様にして一旦図31(4’)の状態になり、外部磁界Hを取り除きかつ補助磁性膜5及び光磁気記録膜4が冷却された段階で、図31の破線部分をジャンプして図31(1’)の消去状態に戻る。かように、初期状態における光磁気記録膜4の磁化状態に拘りなく、前記の操作を行うことによって消去が行われる。
【0037】
図31に示すように、高温時(T時)において光磁気記録膜4に磁化反転を生じる外部磁界の大きさHc’は、高温になることによって光磁気記録膜4の保磁力が低下していることから、低温時(T時)において光磁気記録膜4に磁化反転を生じる外部磁界の大きさHcに比べて小さくなる。すなわち、Hc’<Hc の関係にあるので、外部磁界HをHc’<H<Hcに調整すると共に、補助磁性層5及び光磁気記録膜4を温度Tまで昇温するようにレーザビームの低レベルのパワーを調整し、補助磁性層5及び光磁気記録膜4を温度Tまで昇温するようにレーザビームの高レベルのパワーを調整することによって、初期磁界を必要としない光強度変調方式によるオーバーライト記録が可能になる。
【0038】
上記のオーバーライト記録を実現するに必要な外部磁界H、レーザビームの低レベルのパワー、それにレーザビームの高レベルのパワーは、以下のようにして求めることができる。まず、T<T<T<Tとなるように、適当にレーザビームの低レベルのパワーと高レベルのパワーとを設定する。次に、外部磁界Hの大きさと印加方向とを種々変えて信号の記録を行う。この信号記録部から信号を読み出し、外部磁界Hと再生信号出力値との相関図を描くと、図32(a)及び図32(b)のグラフ図が得られる。ここに、温度Tで信号の記録が行え、かつ温度Tでは信号の記録が行えなくなるような外部磁界Hの大きさが、信号のオーバーライト記録を実現するに必要な外部磁界Hの大きさである。外部磁界Hの値は、温度T,Tによって変動する。したがって、レーザビームの低レベルのパワー及び高レベルのパワーを種々変更し、温度T,Tを種々変更しながら上記の試験を繰り返し、最適なレーザビームを選択する。
【0039】
なお、上記のようなオーバーライト記録を実現するためには、補助磁性膜5のキュリー温度と光磁気記録膜4のキュリー温度との差が150℃以内に規制されていることが好ましく、その差が小さいほど好ましい。また、前記においては、図31(1),(1’)の状態を消去状態、図31(2),(2’)の状態を記録状態としたが、逆に、図31(1),(1’)の状態を記録状態、図31(2),(2’)の状態を消去状態としても、外部磁界Hの印加方向を逆向きとすることによって、前記と同様の原理のもとで信号のオーバーライトを行うことができる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下に、前記第1及び第2の目的を達成するための手段を具体化した実施例を参考例と共に説明する。
【0041】
<第1参考例>
第1参考例に係る光磁気記録媒体を図1〜図5に基づいて説明する。図1は本例に係る光磁気記録媒体の要部断面図であって、この図に示すように本例の光磁気記録媒体は、透明基板1のプリフォーマットパターン2形成面に、透明基板1側より、透明基板1よりも高い屈折率を有する無機誘電体からなるエンハンス膜3と、光磁気記録膜4と、補助磁性膜5と、保護膜6とを順次積層してなる。
【0042】
透明基板1は、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオレフィン、エポキシなどのプラスチック材料や、ガラスなどの透明基板をもって、ディスク状もしくはカード状など所望の形状に形成される。
【0043】
透明基板1の片面には、レーザスポットを案内するための案内溝や、この案内溝に沿つて画定される記録トラックのアドレスなどを表わすプリピット列からなるプリフォーマットパターン2が微細な凹凸状に形成され、トラッキングサーボ信号やプリフォーマット信号が光学的に読み出せるようになっている。なお、図1においては、透明基板1の片面にプリフォーマットパターン2が直接形成されているが、平板状に形成された透明基板の片面に当該透明基板と屈折率が近似した光硬化性樹脂層を設け、この光硬化性樹脂層の表面に前記プリフォーマットパターン2を転写することもできる。
【0044】
エンハンス膜3は、光磁気記録膜4と透明基板1との間で再生用光ビームを多重干渉させ、見掛け上のカー回転角を大きくするために設けられるものであって、シリコン、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、タンタルの窒化物や酸化物など、屈折率が前記透明基板1よりも大きな無機誘電体からなり、600〜1000Åの膜厚に形成される。該エンハンス膜3の成膜手段としては、スパッタリングが特に好適である。
【0045】
光磁気記録膜4は、フェリ磁性を有する希土類−遷移金属系の非晶質垂直磁化膜にて形成される。希土類−遷移金属系の非晶質垂直磁化膜としては、下記の一般式で表わされるものが特に好ましい。
【0046】
一般式;TbFe(100−x−y−z)Co
但し、15原子%≦x≦30原子%
5原子%≦y≦15原子%
0原子%≦x≦10原子%
Mは、Nb,Cr,Ptから選択された少なくとも1種類の元素。
【0047】
この垂直磁化膜は、組成を種々変更することによって、少なくともキュリー温度直下でTM−richのものとしたり、あるいはRE−richのものにすることができる。この垂直磁化膜は、TbとFeとCoと添加元素Mとの合金、又はこれらの元素を含む焼結体にて形成されたターゲツトをスパッタリングすることによって、200〜500Åの膜厚に形成される。
【0048】
補助磁性膜5は、再生用光に対する反射率が70%以上で、かつ常温における熱伝導率が0.05〜2.0W/cm・degの範囲に規制された材料から形成される。その膜厚は、200〜400Åの範囲が適当である。すなわち、本例の光磁気記録媒体は、光磁気記録膜4を透過した再生用光を補助磁性膜5によって透明基板1側に戻し、入射光及び戻り光が光磁気記録膜4を透過する際に受けるファラデー効果によつて見掛け上のカー回転角を増大させ、もって再生CN比の改善を図ることを特徴の1つとするものであるので、再生用光に対する反射率は高いほど良好な結果を得ることができるのであって、少なくとも再生用光に対して70%以上の反射率を有することがより好ましい。
【0049】
また、補助磁性膜5の熱伝導率が低すぎると、情報の記録又は消去の際に光磁気記録層4が過剰に加熱され、これが繰り返されることによって光磁気記録層4が変質(例えば、非晶質垂直磁化膜が結晶化する等)したり、透明基板1のプリフォーマットパターン2が変形したりしやすく、再生出力レベルが短期間のうちに低下するといった不都合を生じる。一方、補助磁性膜5の熱伝導率が高すぎると、光磁気記録層4を情報の記録又は消去に必要な温度まで昇温することが難しくなり、記録感度が低下したり、既記録信号の消え残りによる記録/再生エラーが増加するので、大パワーのレーザ光源を搭載しなくてはならなくなるといつた不都合を生じる。
【0050】
図2に、補助磁性膜5の熱伝導率と、記録/消去動作を10 回繰り返した後の再生出力の低下、及び情報の記録/消去動作に要するレーザパワーとの関係を示す。この図から明らかなように、補助磁性膜5として熱伝導率が0.05W/cm・deg以下のものを用いると、記録/消去動作を10 回繰り返した後の再生出力が急激に低下し、実用性がないことがわかる。また、補助磁性膜5として熱伝導率が2.0W/cm・deg以上のものを用いると、情報の記録/消去に10mW(膜面)以上のレーザパワーが必要となり、やはり実用化が難しくなることがわかる。これらのデータから、補助磁性膜5の熱伝導率が前記の範囲に決められる。
【0051】
補助磁性膜5の具体例としては、Pt,Al,Ag,Au,Cu,Rhなどの貴金属元素群から選択された少なくとも1種類の元素と、Fe,Co,Niなどの遷移金属元素群から選択された少なくとも1種類の元素との合金薄膜を挙げることができる。なお、貴金属−遷移金属系の補助磁性膜は、組成を調整することによって、外部磁界が印加される以前においては磁化が面内方向(補助磁性膜の膜面と平行な方向)に向いており、キュリー温度近傍まで昇温された状態で外部磁界が印加されると磁化の方向が面内方向より立ち上がって外部磁界方向の磁気モーメント成分を生じ、外部磁界を取り除くと再度磁化の方向が面内方向に復帰するものを作製できる。したがって、この種の補助磁性膜5は、構成元素が同一であっても、その含有比率によって、既記録信号を完全に消去するに要する外部磁界の大きさが変動する。
【0052】
図3に、CoPt合金薄膜を例にとって、薄膜中のPt含有率と消去方向磁界との関係を示す(膜厚は、200Å)。ここに、消去方向磁界とは、消去方向に外部磁界を印加しつつ情報の記録を行つたときに、記録が行えなくなる最小の磁界であり、およそ既記録信号を完全に消去するに要する外部磁界の大きさを表わす。図3から明らかなように、CoPt合金薄膜においては、消去方向磁界が最小となるPt含有率がある。ドライブ側からの要請により、ドライブに搭載可能な外部磁界はせいぜい300[Oe]であり、この外部磁界によって既記録信号を完全に消去するためには、CoPt合金薄膜のPt含有率を60〜95原子%に調整する必要があることがわかる。
【0053】
保護層6は、前記エンハンス層3と同様の無機誘電体、又は光硬化性樹脂などの有機材料をもって形成される。保護層材料として無機誘電体を用いる場合には、500〜2000Åの膜厚に形成される。
【0054】
以下に、本第1参考例に係る光磁気記録媒体の実験例と比較例とを示し、両者の記録・消去特性を比較する。
【0055】
<実験例1>
射出成形されたポリカーボネート基板のプリフォーマットパターン形成面に、800ÅのSiONエンハンス層と、500ÅのTb18Fe67Co10Cr非晶質垂直磁化膜と、200ÅのPt80Co20補助磁性膜と、1000ÅのSiON保護層とを順次スパッタリングして、図4(a)の光磁気記録媒体を作成した。ここに、前記Pt80Co20補助磁性膜は、当該補助磁性膜のキュリー温度直下で膜面に垂直な方向の成分を有して印加された外部磁界により磁気モーメントが回転して外部磁界方向の成分を生じ、かつ前記光磁気記録膜に対して交換結合力を及ぼすものとなり、再生用光に対する反射率が70%以上となつている。さらに、膜厚を200Åに調整したので、常温における熱伝導率が0.05〜2.0W/cm・degになっている。一方、前記Tb18Fe67Co10Cr非晶質垂直磁化膜は、当該光磁気記録膜のキュリー温度直下においてTM−richであって、外部磁界を印加して前記補助磁性膜の磁気モーメントが外部磁界方向の成分を有した際に両膜の遷移金属がもつ部分磁化の磁気モーメントとの間に交換結合力が作用して、光磁気記録膜の磁化の方向が外部磁界の方向に向けられるものになっている。
【0056】
<比較例1>
射出成形されたポリカーボネート基板のプリフォーマットパターン形成面に、800ÅのSiONエンハンス層と、500ÅのTb18Fe67Co10Cr非晶質垂直磁化膜と、1000ÅのSiON保護層とを順次スパッタリングして、図4(b)の光磁気記録媒体を作成した。
【0057】
図5に、実験例1に係る光磁気記録媒体の記録・消去特性と、比較例1に係る光磁気記録媒体の記録・消去特性とを示す。ここにいう記録・消去特性とは、記録時に印加する外部磁界の大きさ及び方向を変化させたときの再生CN比の変化をいい、図5の横軸には記録時に印加する外部磁界の大きさ及び方向が目盛られ、縦軸には再生CN比が目盛られている。
【0058】
この図から明らかなように、比較例1の光磁気記録媒体は、約500[Oe]の外部磁界を記録方向に印加しなければ再生CN比が飽和値に達しないのに対し、実験例1の光磁気記録媒体は、約50[Oe]の外部磁界を記録方向に印加するだけで再生CN比が飽和値に達する。このことから、実験例1の光磁気記録媒体は、より小さな外部磁界で完全な記録を行えることがわかる。また、比較例1の光磁気記録媒体は、消去方向に約620[Oe]の外部磁界を印加しなければ再生CN比をゼロにすることができないのに対し、実験例1の光磁気記録媒体は、約80[Oe]の外部磁界を消去方向に印加するだけで再生CN比をゼロにすることができる。このことから、実験例1の光磁気記録媒体は、より小さな外部磁界で完全な消去を行えることがわかる。かように、実験例1の光磁気記録媒体は、100[Oe]程度の小さな外部磁界で情報の記録と再生とを行うことができるので、作用の欄に示した原理に基づいて、磁界変調方式によるオーバーライトが可能である。また、再生CN比の飽和値は、実験例1の光磁気記録媒体及び比較例1の光磁気記録媒体ともにほぼ同じ値になっており、充分な高CN比を帯有していることがわかる。
【0059】
なお、前記第1参考例においては、透明基板1と光磁気記録膜4との間にエンハンス膜3を介設したが、補助磁性膜5の反射率が高く、充分な再生CN比を得られる場合には、これを省略することもできる。
【0060】
また、前記第1参考例においては、媒体の最外面に保護膜6を配設したが、補助磁性膜5として耐食性に優れたものを用いる場合には、これを省略することもできる。
【0061】
さらに、前記第1参考例においては、光磁気記録膜4の背面側に補助磁性膜5を直接積膜したが、これら光磁気記録膜4と補助磁性膜5との間に、エンハンス膜3と同様の無機誘電体からなる第2エンハンス膜を設けることもできる。
【0062】
<第2参考例>
第2参考例に係る光磁気記録媒体を図6〜図12に基づいて説明する。本例の光磁気記録媒体は、前記第1参考例における補助磁性膜の組成を変更することによって、光磁気記録膜の外部磁界感度を向上したことを特徴とするものである。図6は本例に係る光磁気記録媒体の要部断面図であつて、この図に示すように本例の光磁気記録媒体は、透明基板1のプリフォーマットパターン2形成面に、透明基板1側より、エンハンス膜3と、光磁気記録膜4と、補助磁性膜5と、保護膜10とを順次積層してなる。なお、透明基板1、プリフォーマットパターン2、エンハンス膜3、光磁気記録膜4については、前記第1参考例と同じであるので、説明を省略する。また、必要に応じて、保護膜10上に反射膜を積層することもできる。
【0063】
前記補助磁性膜5としては、例えば貴金属(Au,Pt,Ag,Cu,Rh,Pdなど)と遷移金属(Fe,Co,Ni,Mn,Crなど)との合金、具体的にはPtCo合金、AgCo合金、PdCo合金、RhCo合金、RhFe合金、AgFe合金などの合金、あるいはAlCo合金、AlFe合金などの強磁性体、あるいはFe などの各種フェライト、鉄ガーネット、クロマイト、希土類−遷移金属合金などのフェリ磁性体あるいはこれら磁性金属とそれの酸化物又は窒化物との混合体からなり、そのキュリー温度と前記光磁気記録膜4のキュリー温度との差が150℃以内に調整されたものが用いられる。なお、補助磁性膜5の膜厚は20〜1000Å、より好ましくは300〜500Åである。また、この補助磁性膜5は、前記光磁気記録膜4に対して基板側に設けることもできるし、その反対側に設けることもできる。さらには、前記光磁気記録膜4の中間に設けることもできる。
【0064】
前記光磁気記録膜4のキュリー温度との差が150℃以内であるキュリー温度を有する補助磁性膜5を前記光磁気記録膜4と接触するように形成すれば、光磁気記録膜4と補助磁性膜5との間に磁気的な相互作用が生じ、磁界強度変調方式による信号のオーバーライトが実現可能となる。
【0065】
図7は、補助磁性膜のキュリー温度と必要消去磁界との関係を示す特性図である。すなわち、光磁気記録膜4として膜厚が300ÅのTbFeCo合金膜を形成し、その上に補助磁性膜として膜厚が500ÅのCoPt合金膜を形成した。そして、補助磁性膜の合金組成比を変えることにより、それのキュリー温度を10〜600℃の範囲で変化させた。このとき、光磁気記録膜4のキュリー温度は200℃とした。
【0066】
図8は、CoPt合金膜中におけるPtの含有率とその合金膜のキュリー温度(T )との関係を示す特性図である。この図に示すように、Ptの含有率を調整することにより、その合金膜のキュリー温度Tcを任意に変更することが可能である。
【0067】
このような光磁気記録媒体を使用して、消去方向に外部磁界を印加しつつ情報の記録を行い、記録が行える最小限の磁界強度を測定し、それを必要消去磁界とした。この必要消去磁界は、既記録信号を完全に消去するに必要な外部磁界の大きさに相当する。
【0068】
磁界強度変調方式によるオーバーライトを行う場合、記録再生装置側からの要請により、その装置に搭載可能な外部磁界はせいぜい200[Oe]程度である。この図7の結果から明らかなように、キュリー温度が360℃を越えると外部磁界遮蔽を生じ、またキュリー温度が50℃未満であると光磁気記録膜4と補助磁性膜との磁気的相互作用がほとんど生じない。その結果、必要消去磁界は200[Oe]を越えてしまい、実用的でない。
【0069】
これに対して、光磁気記録膜4と直接接触し、そのキュリー温度が50〜350℃の範囲である補助磁性膜を形成すれば、200[Oe]以下の小さな外部磁界で完全な情報の消去が可能となる。特に、補助磁性層のキュリー温度を100〜300℃の範囲に規制すれば、100[Oe]以下の外部磁界で完全な情報の消去が可能であることがわかる。
【0070】
光磁気記録膜4としてTbの含有率が23重量%、Feの含有率が66重量%、Coの含有率が11重量%の組成を有するTbFeCo系合金を使用し、補助磁性膜としてPtの含有率が80重量%、Coの含有率が20重量%の組成を有するPtCo系合金を使用した場合、光磁気記録膜4のキュリー温度は200℃で補助磁性膜のキュリー温度は180℃となり、光磁気記録膜4と補助磁性膜とのキュリー温度差は20℃である。
【0071】
図9に、図6に示した本発明の参考例に係る光磁気記録媒体と、補助磁性膜を有しない従来の光磁気記録媒体の記録、消去特性を比較して示す。ここでいう記録、消去特性とは、記録時に印加する外部磁界の大きさ及び方向を変化させたときの再生CNの変化をいう。なお、図中の曲線Aが本発明の参考例に係る光磁気記録媒体の特性曲線で、曲線Bが従来の光磁気記録媒体の特性曲線である。
【0072】
この図から明らかなように、従来の光磁気記録媒体(曲線B)は約330[Oe]以上の外部磁界を記録方向に印加しなければ再生CN比が飽和値に達しないのに対して、参考例に係る光磁気記録媒体(曲線A)は約100[Oe]の外部磁界を記録方向に印加するだけで再生CN比が飽和値に達する。このことからも参考例に係る光磁気記録媒体は、より小さな外部磁界で完全な記録が行えることがわかる。また、従来の光磁気記録媒体(曲線B)は約600[Oe]以上の外部磁界を消去方向に印加しなければ再生CN比をゼロにすることができないのに対して、参考例に係る光磁気記録媒体(曲線A)は約50[Oe]の外部磁界を消去方向に印加するだけで再生CN比をゼロにすることができる。このことからも参考例に係る光磁気記録媒体は、より小さな外部磁界で完全な消去が行えることがわかる。従って、参考例に係る光磁気記録媒体は、外部磁界変調方式による情報のオーバーライトが確実に行える記録、消去特性を有していることが立証できる。
【0073】
図10ならびに図11は、本参考例の変形例を示す要部拡大断面図である。これらの図において、1は透明基板、3はエンハンス膜、4は光磁気記録膜、12は保護膜、7は反射膜、は補助磁性膜である。図10の参考例の場合、補助磁性膜がエンハンス膜3と光磁気記録膜4との間に形成されている。一方、図11の参考例の場合、補助磁性膜が光磁気記録膜4の両面に形成されている。
【0074】
また、光磁気記録膜4の組成を調整し、少なくともキュリー温度直下でRE−richとなる光磁気記録膜4を用いれば、光強度変調方式によるダイレクトオーバーライトも可能となる。すなわち、前記したように、希土類−遷移金属系の非晶質垂直磁化膜は、組成を種々変更することによって、少なくともキュリー温度直下でTM−richのものとしたり、あるいはRE−richのものにすることができる。そして、少なくともキュリー温度直下においてRE−richである光磁気記録膜に接して前記第1参考例に示した補助磁性膜5を積層し、外部磁界の大きさ及びレーザパワーを適宜選択することによって、作用の欄に示した原理に基づいて、光強度変調方式によるダイレクトオーバーライトを行うことができる。図12に、光強度変調方式によるダイレクトオーバーライトが可能な光磁気記録媒体の構成の一例を示す。
【0075】
以下に、特開平1−143042号公報などに記載されている超解像方式の光磁気記録媒体に関する参考例及び本発明の実施例を示す。
【0076】
<第3参考例>
第3参考例に係る光磁気記録媒体を図18及び図19に基づいて説明する。図18は本例に係る光磁気記録媒体の要部断面図であり、図19は本実施例の効果を示すグラフ図である。
【0077】
図18に示すように、本例の光磁気記録媒体は、透明基板1のプリフォーマットパターン形成面2に、見掛け上のカー回転角を大きくし、再生信号のCN比を改善するためのエンハンス膜3と、フェリ磁性を有する希土類−遷移金属系の非晶質垂直磁化膜からなる第1〜第3の磁性膜4a,4b,4cと、保護層6とを順次積層してなる。透明基板1としては、いわゆる2P法によつて片面にプリフォーマットパターン2が転写されたガラス基板を用いた。このガラス基板1のプリフォーマットパターン2上に、膜厚が約850ÅのSiNエンハンス膜3と、膜厚が約300ÅのGdFeCo系非晶質垂直磁化膜からなる第1の磁性膜4aと、膜厚が約100ÅのTbFeNb系非晶質垂直磁化膜からなる第2の磁性膜4bと、膜厚が約400ÅのTbFeCo系非晶質垂直磁化膜からなる第3の磁性膜4cと、膜厚が約800ÅのSiN保護層14とを連続スパッタリングして、第6実施例の光磁気記録媒体とした。前記第3の磁性膜4cは、室温においてTb副格子磁化が優勢な組成に調整されている。
【0078】
図19に、第3参考例に係る光磁気記録媒体と、当該光磁気記録媒体における第3の磁性膜4cに代えてFeCo副格子磁化が優勢な組成のTbFeCo系非晶質垂直磁化膜が設けられた比較例に係る光磁気記録媒体との外部磁界特性を示す。このグラフ図の縦軸には再生信号のCN比が目盛られ、横軸には印加される外部磁界の大きさが目盛られている。なお、外部磁界の正値は記録方向の磁界を示し、負値は消去方向の磁界を示す。このグラフ図から明らかなように、第3の磁性膜4cとしてFeCo副格子磁化が優勢な組成のTbFeCo系非晶質垂直磁化膜が設けられた比較例に係る光磁気記録媒体は、記録方向に約300[Oe]以上、消去方向に約600[Oe]以上の外部磁界を印加しなくては飽和磁界に達しないのに対し、第3の磁性膜4cとしてTb副格子磁化が優勢な組成のTbFeCo系非晶質垂直磁化膜が設けられた第1実施例に係る光磁気記録媒体は、記録方向及び消去方向に夫々約200[Oe]以上の外部磁界を印加するだけで飽和磁界に達することができる。よって、外部磁界ひいてはドライブ装置の小型化、軽量化、省電力化を図ることができると共に、磁界変調方式による情報のオーバーライトが実現可能になった。
【0079】
なお、前記参考例では、透明基板1としてガラス基板を用いたが、これに代えて樹脂基板を用いた場合にも前記と同様の結果が得られた。また、前記参考例では、エンハンス膜3及び保護膜6としてSiNを用いたが、SiO ,SiO,Si ,AlN等、他の無機誘電体を用いた場合にも前記と同様の結果が得られた。また、無機保護膜6に代えて、UV樹脂保護膜を形成した場合にも前記と同様の結果が得られた。また、各膜の膜厚を種々変更した場合にも、前記と同様の結果が得られた。さらに、第1の磁性膜4aとしてGdFe又はGdCo系の非晶質垂直磁化膜を用い、第2の磁性膜4bとしてTbFe,TbFeCo,TbFeCoCr,TbFeCoPt系の非晶質垂直磁化膜を用いた場合にも、前記と同様の結果が得られた。
【0080】
<第4参考例>
以下、第4参考例に係る光磁気記録媒体を図20及び図21に基づいて説明する。図20は本例に係る光磁気記録媒体の要部断面図であり、図21は本実施例の効果を示すグラフ図である。
【0081】
図20に示すように、本例の光磁気記録媒体は、第3の磁性膜4cの表面に、酸化層9を形成したことを特徴とする。酸化層9は、ガラス基板1上に、エンハンス膜3と、第1〜第3の磁性膜4a,4b,4cとを連続スパッタリングした後、成膜を一旦中止してスパッタチャンバー内の酸素量を調整し、第3の磁性膜4cを加熱することによつて形成される。その後、スパッタチャンバー内の真空度を再度調整し、所定の膜厚の保護層6をスパッタリングすることによって、第4参考例の光磁気記録媒体を形成できる。酸化層9以外の部分については、第3参考例の光磁気記録媒体と同様に形成される。
【0082】
図21に、本第4参考例に係る光磁気記録媒体と、前記第3参考例に係る光磁気記録媒体との外部磁界特性を示す。このグラフ図から明らかなように、本例の光磁気記録媒体は、記録方向及び消去方向に夫々約100[Oe]以上の外部磁界を印加するだけで飽和磁界に達することができ、第3参考例の光磁気記録媒体に比べて、さらに約±100[Oe]も外部記録感度が向上している。
【0083】
なお、本第4参考例では、第3の磁性膜4cの表面に加熱酸化層を形成したが、第1の磁性膜4a又は第2の磁性膜4bの表面に前記と同様の加熱酸化層9を形成しても、前記と同様の結果が得られた。また、前記加熱酸化層9に代えて、加熱窒化層を形成した場合にも前記と同様の結果が得られた。加熱窒化層は、窒化しようとする磁性膜をスパッタリングした後、スパッタチャンバー内の窒素量を調整し、当該窒化しようとする磁性膜を加熱することによって形成される。その他、透明基板1の材料や保護膜6の材料、それに加熱酸化層9又は加熱窒化層の形成位置を第3参考例の説明欄に表記したように変更しても、前記と同様の結果が得られた。
【0084】
<第1実施例>
以下、本発明の第1実施例に係る光磁気記録媒体を図22及び図23に基づいて説明する。図22は本例に係る光磁気記録媒体の要部断面図であり、図23は本実施例の効果を示すグラフ図である。
【0085】
図22に示すように、本例の光磁気記録媒体は、第3の磁性膜4cに接して、補助磁性膜5に設けたことを特徴とする。補助磁性膜5としては、第3の磁性層4cに記録磁区が形成される温度(第3の磁性層4cのキユリー温度近傍又は補償温度近傍)で、遷移金属副格子磁化が優勢な希土類−遷移金属系非晶質垂直磁化膜が用いられる。その他、エンハンス膜3、第1〜第3の磁性膜4a,4b,4c、保護層6については、第3参考例の場合と同じである。補助磁性膜5は、他の薄膜と共に連続スパッタリングされる。
【0086】
図23に、前記補助磁性膜5として、膜厚が50Åの上記組成のTbFeCo膜が設けられた本第1実施例に係る光磁気記録媒体と、前記第3参考例に係る光磁気記録媒体との外部磁界特性を示す。このグラフ図から明らかなように、本例の光磁気記録媒体は、記録方向及び消去方向に夫々約100[Oe]以上の外部磁界を印加するだけで飽和磁界に達することができ、第3参考例の光磁気記録媒体に比べて約±100[Oe]も外部記録感度が向上している。これは、前記補助磁性膜5を形成することによって、記録磁区を形成しようとする領域又は消去しようとする領域に作用するその周囲領域からの浮遊磁界が減少されるためであると考えられる。
【0087】
なお、本第1実施例においては、第3の磁性膜4の表面側(保護膜6側)にのみ補助磁性膜5を形成したが、第3の磁性膜4cの背面側(透明基板1側)に補助磁性膜5を形成しても同様の結果が得られた。また、第1の磁性膜4a又は第2の磁性膜4bの表面に前記と同様の補助磁性膜5を形成しても、前記と同様の結果が得られた。その他、透明基板1の材料や保護膜6の材料を第3参考例の説明欄に表記したように変更しても、前記と同様の結果が得られた。
【0088】
<第2実施例>
以下、第2実施例に係る光磁気記録媒体を図24〜図27に基づいて説明する。図24は補助磁性膜中のPt添加量と垂直磁気異方性定数との関係を示すグラフ図、図25は補助磁性膜中のPt添加量と残留カー回転角との関係を示すグラフ図、図26は補助磁性膜中のPt添加量と再生CN比との関係を示すグラフ図、図27は補助磁性膜中のPt添加量と記録信号を消去するに要する最小消去磁界との関係を示すグラフ図である。
【0089】
本例の光磁気記録媒体は、前記第1実施例に係る光磁気記録媒体の補助磁性膜5をAu,Ag,Al,Cu,Pt,Nb,Ho,Gd,Crから選択された少なくとも1種類の元素が添加された希土類−遷移金属系非晶質合金にて形成したことを特徴とする。その他、エンハンス膜3、第1〜第3の磁性膜4a,4b,4c、保護層6については、第1実施例の場合と同じである。補助磁性膜は、他の薄膜と共に連続スパッタリングされる。したがつて、本例の光磁気記録媒体の断面構造は、前記第1実施例の光磁気記録媒体と同じになる(図22参照)。
【0090】
図24に、本第2実施例に係る光磁気記録媒体にける補助磁性膜中のPt添加量と垂直磁気異方性定数との関係を示す。この図から明らかなように、本例の光磁気記録媒体の垂直磁気異方性エネルギーは、補助磁性膜中のPt添加量を増加するにしたがって低下し、補助磁性膜中のPt添加量が約13at%を越えると磁化容易軸が膜面に平行な方向に向く。一方、図25に、この光磁気記録媒体における補助磁性膜中のPt添加量と残留カー回転角との関係を示す。この図から明らかなように、本例の光磁気記録媒体の残留カー回転角は、補助磁性膜中のPt添加量が約10at%まではほぼ一定であるが、10at%を越えると急激に低下する。これら図24及び図25の結果から、補助磁性膜中に約10原子%までのPtを添加することによって、カー回転角を低下させることなく垂直磁気異方性エネルギーを低下させることができること、すなわち光磁気記録媒体の再生CN比を低下することなく外部磁界感度を高めることがわかる。
図26に、Ptを添加したTbFeCo膜が補助磁性膜として設けられた光磁気記録媒体の再生CN比とPt添加量との関係を示す。但し、補助磁性膜の膜厚を約50Å、記録信号のパルス幅を60nS、記録磁区間のピツチを1.53μm、媒体に対する光ビームの線速を7.54m/sとし、最大出力時のCN比を測定した。この図から明らかなように、本例の光磁気記録媒体の再生CN比は、補助磁性膜中のPt添加量が約10〜12at%まではほぼ一定であるが、その値を越えると急激に低下する。図27に、図26のデータをとるに使用した光磁気記録媒体の消去磁界の大きさと補助磁性膜中のPt添加量との関係を示す。ただし、本例では、記録時の搬送波レベルに対する消去後のノイズレベルが−40dBとなるために必要な外部磁界の大きさをもつて消去磁界の大きさとした。この図から明らかなように、補助磁性膜中にPtを添加すると、添加量が増加するにしたがつて必要な消去磁界が小さくなる。しかし、10at%を越えるPtを添加しても消去磁界の低下度がきわめて小さくなる。このことから、第3の磁性層4cに記録磁区が形成される温度で遷移金属副格子磁化が優勢な希土類−遷移金属系非晶質垂直磁化膜からなる補助磁性膜に約10at%のPtを添加することによつて、消去磁界感度を極限まで高められることがわかる。
【0091】
なお、本第2実施例では、補助磁性膜の添加元素としてPtを用いたが、これに代えてAu,Ag,Al,Cu,Nb,Ho,Gd,Crなどを用いても、前記と同様の結果が得られた。その他、透明基板1の材料や保護膜6の材料、それに補助磁性膜5の形成位置を第実施例の説明欄に表記したように変更しても、前記と同様の結果が得られた。
【0092】
なお、前記第1及び第2の目的を達成するための手段を具体化した実施例においては、光磁気記録膜としてキュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェリ磁性体(図13)を用いた場合、及びキュリー温度近傍で希土類リッチのフェリ磁性体(図14)を用いた場合についてのみ説明したが、その他、キュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェロ磁性体(図15)、及びキュリー温度近傍で希土類リッチのフェロ磁性体(図16)を用いることもできる。本実施例においては、キュリー温度近傍における光磁気記録膜の磁気モーメントの大きさのみを問題にしており、室温における光磁気記録膜の磁気モーメントの大きさについては、何ら問題にならない。例えば、図17に示すように、室温においては希土類リッチのフェリ磁性体であっても、キュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェリ磁性体となるものは、遷移金属リッチのフェリ磁性体として取り扱うことができる。これらの図13〜図17において、黒矢印は遷移金属の磁気モーメントを、白矢印は希土類金属の磁気モーメントを示している。
【0093】
<第5参考例>
第5参考例は、光磁気記録膜及び補助磁性膜の好適な組合せと、それら両膜の作製方法とに関する。
【0094】
本参考例の光磁気記録媒体は、透明基板上に、第1エンハンス膜と、光磁気記録膜と、補助磁性膜と、第2エンハンス膜と、熱拡散膜とがこの順に積層されている。
【0095】
光磁気記録膜は、下記の一般式で表わされる希土類−遷移金属−添加元素系の非晶質合金であって、補償温度がない、すなわちキュリー温度まで希土類モーメントが優勢な磁性膜にて形成され、補助磁性膜は、この合金に酸素又は窒素が添加されたものにて形成される。
【0096】
一般式;(Tb100−A Fe100−X−Y−Z Co
但し、25原子%≦X≦40原子%
5原子%≦Y≦15原子%
0原子%≦Z≦10原子%
0原子%≦A≦20原子%
MはNb,Cr,Pt,Ti,Alから選択された少なくとも 1種類の元素、
QはGd,Nd,Dyから選択された少なくとも1種類の元素。
【0097】
光磁気記録膜は100〜500Åの膜厚に形成され、補助磁性膜はその5〜40%の膜厚に形成される。補助磁性膜は、定法にしたがって第1エンハンス膜と光磁気記録膜とのスパッタリングが終了した後、スパッタチャンバー内の真空度を1×10 〜1×10 (Pa)に調整し、この真空条件下で加熱するか、あるいはスパッタチャンバー内に酸素又は窒素とスパッタガス(例えば、Ar,Kr,Xe等)の混合ガスを導入しながら加熱することによって形成できる。第2エンハンス膜及び熱拡散膜は、補助磁性膜の作製後、定法にしたがってスパッタリングされる。この方法によると、全ての膜を連続スパッタリングできるので、光磁気記録媒体を量産性よく製造できる。
【0098】
図28に、膜厚が400ÅのTb31.7Fe56.4Co11.9光磁気記録膜と、膜厚が100Åの酸素を5%含有したTbFeCo補助磁性膜を有する光磁気記録媒体(第5参考例品)と、光磁気記録膜の組成が第5参考例品と同じで、酸素を含まないTbFeCo補助磁性膜が積層された光磁気記録媒体(比較例品)と、従来品の、C/Nの磁場依存性を示す。この図から明らかなように、第5参考例品は、50(Oe)の外部磁界で飽和磁化に達することができ、100(Oe)以上の外部磁界を印加しなくては飽和磁化に達しない比較例品、及び200(Oe)以上の外部磁界を印加しなくては飽和磁化に達しない従来品に比べて、格段に外部磁界感度が改善される。
【0099】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、昇温時にキュリー温度以下の温度でM−Hループの角形比が1の状態から1と0の中間状態に変化する光磁気記録膜と自発磁化を有する補助磁性膜とを備えた光磁気記録媒体を用いるので、キュリー温度近傍でM−Hループの角形比が1の光磁気記録膜を備えた光磁気記録媒体、および昇温時にキュリー温度以下の温度でM−Hループの角形比が1の状態から1と0の中間状態に変化する光磁気記録膜を備えるが自発磁化を有する補助磁性膜を備えない光磁気記録媒体に比べて外部磁界感度を高めることができ、情報の記録時に100(Oe)以上の外部磁界を印加することにより磁界強度変調方式で情報のオーバーライトを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1参考例に係る光磁気記録媒体の要部断面図である。
【図2】第1参考例における強磁性反射膜の効果を示すグラフ図である。
【図3】第1参考例におけるPtCo薄膜の組成と消去方向磁界との関係を示すグラフ図である。
【図4】実験例1及び比較例に係る光磁気記録媒体の説明図である。
【図5】第1参考例中の各実験例及び比較例に係る光磁気記録媒体の記録・消去特性を比較して示すグラフ図である。
【図6】第2参考例に係る光磁気記録媒体の要部断面図である。
【図7】第2参考例における補助磁性膜のキュリー温度と必要消去磁界との関係を示すグラフ図である。
【図8】第2参考例における補助磁性膜の組成とキュリー温度との関係を示すグラフ図である。
【図9】第2参考例に係る光磁気記録媒体と従来の光磁気記録媒体の記録、消去特性を比較して示すグラフ図である。
【図10】第2参考例に係る光磁気記録媒体の変形例を示す要部断面図である。
【図11】第2参考例に係る光磁気記録媒体の他の変形例を示す要部断面図である。
【図12】光強度変調方式によるオーバーライトが可能な光磁気記録媒体の構成の一例を示す説明図である。
【図13】キュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェリ磁性体の説明図である。
【図14】キュリー温度近傍で希土類リッチのフェリ磁性体の説明図である。
【図15】キュリー温度近傍で遷移金属リッチのフェロ磁性体の説明図である。
【図16】キュリー温度近傍で希土類リッチのフェロ磁性体の説明図である。
【図17】室温では希土類リッチで、キュリー温度近傍では遷移金属リッチとなるフェリ磁性体の説明図である。
【図18】第3参考例に係る光磁気記録媒体の要部断面図である。
【図19】第3参考例に係る光磁気記録媒体の効果を示すグラフ図である。
【図20】第4参考例に係る光磁気記録媒体の要部断面図である。
【図21】第4参考例に係る光磁気記録媒体の効果を示すグラフ図である。
【図22】第1実施例に係る光磁気記録媒体の要部断面図である。
【図23】第1実施例に係る光磁気記録媒体の効果を示すグラフ図である。
【図24】第2実施例に係る光磁気記録媒体の垂直磁気異方性定数と補助磁性膜への白金添加量との関係を示すグラフ図である。
【図25】第2実施例に係る光磁気記録媒体の残留カー回転角と補助磁性膜への白金添加量との関係を示すグラフ図である。
【図26】第2実施例に係る光磁気記録媒体の再生CN比と補助磁性膜への白金添加量との関係を示すグラフ図である。
【図27】第2実施例に係る光磁気記録媒体の最小消去磁界と補助磁性膜への白金添加量との関係を示すグラフ図である。
【図28】第5参考例に係る光磁気記録媒体のCN比の磁場依存性を示すグラフ図である。
【図29】補助磁性膜を有する光磁気記録媒体の磁界強度変調方式によるオーバーライトの原理を示す説明図である。
【図30】キュリー温度直下でRE−richの光磁気記録膜の低温時の記録・消去特性を示す説明図である。
【図31】補助磁性膜を有する光磁気記録媒体の光強度変調方式によるオーバーライトの原理を示す説明図である。
【図32】外部磁界強度及びレーザパワーの選択方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 プリフォーマットパターン
3 エンハンス膜
4 光磁気記録膜
5 補助磁性膜
6 保護層
7 反射膜
8 熱制御層

Claims (2)

  1. 第1〜第3の希土類−遷移金属系の非晶質垂直磁化膜からなる光磁気記録膜と記録磁区が形成される前記第3の非晶質垂直磁化膜との間で交換結合力を及ぼし合う自発磁化を有する補助磁性膜とを有し、昇温時にキュリー温度以下の温度でM−Hループの角形比が1の状態から1と0の中間状態に変化する光磁気記録媒体を用い、情報の記録時に100(Oe)以上200(Oe)未満の外部磁界を印加することにより磁界強度変調方式で情報のオーバーライトを行うことを特徴とする情報の記録方法。
  2. 請求項1に記載の情報の記録方法において、前記補助磁性膜が、(Au,Ag,Cu,Pt)元素群から選択された少なくとも1種類の元素を含有した希土類−遷移金属系の非晶質合金で構成されていることを特徴とする情報の記録方法。
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