JPH05320047A - 肝機能改善薬 - Google Patents

肝機能改善薬

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JPH05320047A
JPH05320047A JP4125242A JP12524292A JPH05320047A JP H05320047 A JPH05320047 A JP H05320047A JP 4125242 A JP4125242 A JP 4125242A JP 12524292 A JP12524292 A JP 12524292A JP H05320047 A JPH05320047 A JP H05320047A
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acid
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彦吉 大浦
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五夫 西岡
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 肝障害を改善する薬剤を提供する。 【構成】 下記式に示すリソスペルミン酸Bあるいはリ
ソスペルミン酸Bの塩、例えばマグネシウム塩、カリウ
ム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩を有効成分として
薬剤を調製する。 〔式中、M2+はMg2+、2K、2NH あるい
はCa2+を表す。〕

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は肝機能改善薬に関し、詳
しくは丹参の根のエキスから分離精製されたリソスペル
ミン酸B及び/又はその医薬上許容される塩を有効成分
として含有する肝機能改善薬を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】和漢薬として使用される丹参(Salvia m
iltiorrhiza Bungeの根)エキスに関する研究から、そ
の有効成分であるリソスペルミン酸Bの立体化学構造が
明らかにされ、さらにリソスペルミン酸B及びその塩が
顕著な腎機能改善作用を有することが知られている(特
開平1−268682号)。
【0003】また、このリソスペルミン酸B及びその塩
は、尿中のプロスタグランジンの量を増加させることが
報告されており、アラキドン酸カスケードに影響を与え
ることが示唆されている。
【0004】一方、アラキドン酸のリポキシゲナーゼ系
代謝産物であるロイコトリエン(LT)は、炎症反応、
アレルギー反応のみでなく、免疫反応にも関与し、また
種々の肝疾患の病態形成に重要な役割を果たし、実験的
に誘導した肝細胞障害モデルに対してLT合成阻害剤を
投与すると肝細胞障害が軽減されることが報告されてい
る(Mizoguchi, Y. et al. Gastroenterologia Jpn. 23,
263-267, 1988)。
【0005】しかし、リソスペルミン酸B及びその塩の
肝機能の改善作用については知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の肝機能改善薬で
急性及び慢性肝障害のいずれにも有効な薬は知られてい
ない。また、薬理作用としてアラキドン酸カスケードに
おけるシクロオキシゲナーゼ系の反応を増強し、逆に5
−リポキシゲナーゼ系の反応を抑制するような薬も知ら
れていない。本発明は、以上の利点を有する急性及び慢
性肝障害の両方に対して有効な肝機能改善薬を提供する
ことを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、リソスペル
ミン酸B及びその塩が、抗炎症作用及び抗線維化作用を
有することを見出し、本発明に至った。
【0008】すなわち本発明は、化1で表されるリソス
ペルミン酸B及び/又はその薬理学上許容される塩を有
効成分として含有する肝機能改善薬である。以下、本発
明を詳細に説明する。
【0009】<1>本発明の肝機能改善薬 本発明の肝機能改善薬は、化1で表されるリソスペルミ
ン酸Bあるいはその薬理学上許容される塩を有効成分と
して含む。この塩としては、化2で表されるマグネシウ
ム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩等が
挙げられ、これらは単独でもあるいは任意の混合物とし
ても使用できる。
【0010】これらの化合物は、そのままの形で薬剤と
して使用され、この場合の投与方法、投与量及び剤型は
次の通りである。投与方法は、経口投与あるいは注射の
いずれも選択できる。経口投与による投与量は患者の年
齢、症状によって異なるが、重症の場合を除き成人患者
1人に対し1日あたり50〜100mgの範囲で用いる
ことにより所定の効果が期待できると考えられる。
【0011】剤型としては、経口剤として薬剤学上許容
される乳糖、馬鈴薯デンプン、アルギン酸ナトリウム、
沈降炭酸カルシウム、アミノ酢酸、合成珪酸アルミニウ
ム、結晶セルロース等の賦形剤を配合することにより、
散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠及びカプセル剤とすること
ができる。
【0012】また、リソスペルミン酸B塩は、水に易溶
性であることから、注射剤として通常、成人患者1人に
対し、1日あたり1〜10mgの範囲の投与量で用いる
ことにより本発明の効果が期待できると考えられる。こ
の場合は注射用蒸留水の他製剤上許容される生理食塩水
等の等張化剤、水酸化ナトリウム溶液等のpH調整剤を
加えて注射剤とすることができる。
【0013】<2>リソスペルミン酸B及びその塩の製
造法 リソスペルミン酸B及びその塩は、例えば、特開平1−
268682号に開示されている製造方法により得られ
る。
【0014】丹参の抽出液について、カラムクロマトグ
ラフィーによって所定の画分を分離することによって得
られる。即ち、例えば、丹参の抽出液をpH2〜4に調
整した後、これをカラムクロマトグラフィーにかけ水で
洗滌し、次に酢酸マグネシウムまたは酢酸カルシウム等
の水溶液で洗う。再びカラムを水洗したのち含水メタノ
ールで溶出し、溶出画分を分取し、さらにこれを精製す
ることによりリソスペルミン酸B塩が得られる。
【0015】また、同様に丹参の抽出液をカラムクロマ
トグラフィーにかけ薄層クロマトグラフィーでモニター
してメインスポットを含むフラクションを分取し、これ
を再び薄層クロマトグラフ法でモニターしてメインスポ
ットを含むフラクションをカラムクロマトグラフィーで
分画することによっても精製されたリソスペルミン酸B
マグネシウム塩及びリソスペルミン酸Bアンモニウム塩
が得られる。
【0016】<3>肝機能改善作用の検討法 リソスペルミン酸B及びその塩の肝機能改善作用は、急
性肝障害の場合は血清トランスアミナーゼ活性の値を測
定する方法、及び肝組織の光顕的、電顕的観察によって
検討される。慢性肝障害の場合は、肝予備能の測定(血
清アルブミン、血清蛋白、コリンエステラーゼ活性等の
値)、肝組織の線維化(ハイドロキシプロリン含量、及
び光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡観察等による肝組織学
的検討)を指標とした評価による方法等がある。
【0017】
【作用】本発明の肝機能改善薬の有効成分であるリソス
ペルミン酸B及びその塩は、実験的に誘導した肝組織に
おけるロイコトリエンの合成を阻害し、逆にプロスタグ
ランジン産生を増加する。
【0018】一般に実験的に誘導した肝不全において
は、アラキドン酸のリポキシゲナーゼ系代謝産物である
ロイコトリエンは障害的に働き、シクロオキシゲナーゼ
系の代謝産物であるプロスタグランジンは保護的に働く
と考えられている。
【0019】したがって、リソスペルミン酸B及びその
塩は肝障害を軽減、改善するものと考えられる。さら
に、リソスペルミン及びその塩は、肝コラーゲン量を低
減させ、肝線維化を軽減させる作用があり、この作用か
らも肝障害の改善効果を有する。
【0020】
【実施例】以下、本発明の実施例及びリソスペルミン酸
B及びその塩の作用を示す実験例を説明する。
【0021】
【製造例】リソスペルミン酸Bマグネシウム塩の製造 丹参を水抽出し、その抽出液を塩酸でpH3程度に調整
した後、MCI−gel CHP−20Pカラムクロマ
トグラフィーに付し、リソスペルミン酸Bをカラム坦体
に吸着させた。水でカラムを洗滌後、0.1M酢酸マグ
ネシウム溶液を流し、再び水で洗滌し、続いて水−メタ
ノールのグラジエント溶出を行い、20〜40%メタノ
ールで溶出される塩化第2鉄試薬に陽性の画分を集めて
濃縮した。得られた画分をセファデックスLH−20を
用いたゲル濾過により精製し、リソスペルミン酸Bマグ
ネシウム塩を得た。収率は2〜3%であった。
【0022】
【実験例1】<1>リソスペルミン酸Bの5−リポキシ
ゲナーゼ活性に対する影響 アラキドン酸代謝系の誘導酵素である5−リポキシゲナ
ーゼ活性に対するリソスペルミン酸B塩の影響を調べ
た。
【0023】放射能標識したアラキドン酸の多核白血球
による代謝産物を以下のように測定
【0024】した。 (1)ラット腹腔多核白血球浮遊液の調製法 ウィスター系雄性ラット(220〜250g)の腹腔内
に10mlの滅菌した8%カゼインを注入した。12〜
14時間後に腹腔をハンクス溶液(HBSS)で潅流
し、腹腔多核白血球を採取した。この潅流液を低温遠心
し、細胞を集めた。これらの細胞を10%のウシ胎児血
清(FCS)、ストレプトマイシン100μg/ml及
びペニシリン100単位/mlを含むRPMI 164
0培地で洗滌した後、同培地で希釈して、5×106
/mlの細胞浮遊液に調製した。こうして得られた細胞
の90%以上が多核白血球であった。
【0025】(2)ラット腹腔多核白血球によるアラキ
ドン酸代謝に対するリソスペルミン酸Bの影響 前記で得られた腹腔多核白血球(5×106/ml)に
各種濃度のリソスペルミン酸Bマグネシウムを添加し
て、37℃で2時間培養した。培養後、リン酸緩衝生理
食塩水(PBS)で洗滌し、細胞濃度を2mM塩化カル
シウムを含むPBSで5×106/mlに調整した。こ
の細胞浮遊液に25μl/mlの[1−14C]−アラキ
ドン酸(104cpm/nmol/μl、メタノール溶液)、及
び5μl/mlのカルシウムイオノフォアA23187
(1mM エタノール溶液:以下CAI)を添加し、さ
らに20分間培養した。
【0026】培養後、ギ酸を加えて反応液をpH3に調
整し、2倍量のクロロホルムを添加してよく混和し、遠
心後クロロホルム相を蒸発濃縮した。これを、逆相高速
液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。移動
相は、メタノール:水:酢酸=75:25:0.01、
流速は1ml/分とし、分析カラムはTSK−ゲル12
0T(東ソー)を用い、溶出液の吸光度を270nmと
235nmで同時にモニーターした。結果を図1に示
す。
【0027】また、カラムからの溶出液を30秒毎に採
取して、各画分に含まれる放射活性を液体シンチレーシ
ョンカウンターで測定し、放射活性の比あるいは吸光度
のピークの面積比から、各産物の産出量の比を算出し
た。
【0028】また、コントロール群はリソスペルミン酸
Bマグネシウム非添加で同様に行った。その結果、アラ
キドン酸の代謝産物としてLTB4と5−HETE(ヒ
ドロキシエイコサテトラエノイック酸)が主として生成
されることがわかり、これらは10-8M程度のリソスペ
ルミン酸Bマグネシウム存在下では生成が抑制されるこ
とがわかった。
【0029】また、リソスペルミン酸Bマグネシウムの
濃度を変えて同様に実験を行い、LTB4と5−HET
Eの生成量から5−リポキシゲナーゼ活性を測定したと
ころ、図2に示したように、リソスペルミン酸Bマグネ
シウムにより活性が抑制されることがわかった。
【0030】(3)腹腔多核白血球の5−リポキシゲナ
ーゼ活性に及ぼすリソスペルミン酸Bマグネシウム影響 次に、腹腔多核白血球の破砕液の遠心上清を酵素液とし
て同様の実験を行った。上記と同様にして調製した腹腔
多核白血球を、2mM塩化カルシウムを含むPBSで5
×107/mlに調製し、超音波破砕(Branson sonicat
or model 350Sを使用)した後、10000×g、
4℃で10分遠心し、得られた上清を5−リポキシゲナ
ーゼ酵素液とした。
【0031】この酵素液100μlに2mM ATP、
2mM塩化カルシウムを含む0.05Mのトリス塩酸緩
衝液(pH7.5)及び各種濃度のリソスペルミン酸B
マグネシウムを加えて37℃で5分間培養した後、[1
14C]−アラキドン酸5μl(105cpm/nmol/μl
エタノール溶液)を添加し、30℃で3分間培養した。
培養後、反応停止液(ジエチルエーテル:メタノール:
1Mクエン酸=30:4:1)300μlを加えて充分
混和し、遠心(3000rpm.、4℃、15分)にて
除タンパクし、その上清を得た。この上清を蒸発濃縮さ
せ、メタノール50μlに溶解させ、逆相HPLCにか
け、5−リポキシゲナーゼ産物を測定した。また、コン
トロール群はリソスペルミン酸Bマグネシウム非添加で
同様に測定した。
【0032】その結果、リソスペルミン酸Bマグネシウ
ム非添加では主要生成物は5−HETEであった(図
3)。さらに、この5−HETEの生成はリソスペルミ
ン酸Bマグネシウムにより抑制されることがわかった。
【0033】そこで、腹腔多核白血球浮遊液に直接各種
濃度のリソスペルミン酸Bマグネシウムを添加し、前記
と同様の方法で5−HETEを定量したところ、表1に
示したように、ラット腹腔多核白血球の5−リポキシゲ
ナーゼ活性はリソスペルミン酸Bマグネシウムにより抑
制されることがわかった。
【0034】
【表1】
【0035】以上の結果から、リソスペルミン酸Bマグ
ネシウムは、腹腔多核白血球のロイコトリエン産生及び
5−リポキシゲナーゼ活性を抑制することが明らかとな
った。
【0036】
【実験例2】次に、急性肝細胞障害を持つ実験動物を用
いて、リソスペルミン酸Bマグネシウムが急性肝障害に
及ぼす影響を調べた。
【0037】<1>D−ガラクトサミン肝細胞障害モデ
ルの誘導 ウィスター系雄ラット(170〜180g)に、D−ガ
ラクトサミン(和光純薬から購入)を700mg/kg
とリポ多糖類(LSP、Salmonella enteritidis由来、
Difco社から購入)を1μg/ラットの割合で投与
した。
【0038】投与4時間後に、ラットをエーテル麻酔下
で開腹し、下大静脈から採血し、血清トランスアミナー
ゼ値を測定するのと同時に肝組織を取り、肝組織を光顕
的に検討した。
【0039】さらに、肝浸潤多核白血球を分離した。ま
た、リソスペルミン酸Bマグネシウムの影響を検討する
場合は、リソスペルミン酸Bマグネシウムを10mg/
kg体重の割で経口投与した。
【0040】<2>血清トランスアミナーゼに及ぼすリ
ソスペルミン酸Bマグネシウムの影響投与後4時間後
に、ラットをエーテル麻酔下で開腹し、下大静脈から採
血し、血清トランスアミナーゼ値を測定した。ALT
(アラニン・トランスアミナーゼ)値と血清AST(ア
スパラギン酸トランスアミナーゼ)値を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】この結果から、リソスペルミン酸Bマグネ
シウムは血清トランスアミナーゼ値の上昇を抑制するこ
とがわかった。
【0043】<3>肝の組織学的検討 肝組織をホルマリンで固定し、ヘマトキシリン・エオシ
ン染色を施し、光顕的に検索した。
【0044】その結果、リソスペルミン酸Bマグネシウ
ム非投与群では肝細胞の染色性の低下及び空砲変性が認
められた。さらに、グリソン鞘周囲の細胞壊死及び単核
細胞の浸潤が観察された。
【0045】一方、リソスペルミン酸Bマグネシウム投
与群では単核細胞の浸潤は認められるが、肝細胞の壊死
や変性はほとんど観察できなかった。
【0046】<4>肝浸潤多核白血球の産出するプロス
タグランジン(PG)に及ぼす影響 (1)ラット肝浸潤多核白血球の分離 ラットの腹腔内にペントバルビタールを注入して麻酔
後、開腹して門脈を露出し、18ゲージの留置針を挿入
した。この針を通してペリスタポンプを用い、カルシウ
ムを含まないN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−
N’−2−エタンスルホン酸カルシウム(HEPES、
Sigma社)加ハンクス液(HBSS)溶液100m
lを流し、続いて0.05%コラゲナーゼ(タイプI
V、和光純薬)を含有したHEPES加HBSS100
ml、さらに0.05%プロナーゼEを含有したHEP
ES加HBSS溶液50mlをそれぞれ流速12ml/
分で流した。
【0047】潅流後、肝臓を取り出して眼科ハサミで細
切りし、0.05%プロナーゼEを含有したHEPES
加HBSS溶液50ml中に入れて37℃で20分振盪
して肝実質細胞を消化した。
【0048】未消化物をガーゼで濾過した後、遠心(4
00×G、3分、4℃)により肝細胞を取り除き、混入
している赤血球を低浸透圧処理にて溶血させた。得られ
た細胞ペレットをHBSSでさらに3回洗滌した後、以
下の実験に供した。
【0049】(2)プロスタグランジン(PG)の測定 上記のように分離した肝浸潤多核白血球を2mMの塩化
カルシウムを含むPBSに浮遊させ、細胞濃度を1×1
7細胞/mlに調整した。
【0050】この細胞浮遊液に25μl/mlの[1−
14C]−アラキドン酸(104cpm/nM/μl、エ
タノール溶液)及び5μl/mlのCaΙを添加して、
30分間培養した。
【0051】反応終了後、ギ酸を加えて反応溶液をpH
3.0に調整し、2倍量のクロロホルムを添加して充分
に混和した。この溶液を遠心(1500×G、10分、
4℃)し、クロロホルム相を分取して、蒸発、濃縮し
た。次いで、逆相HPLCの移動相(アセトニトリル:
水:リン酸=33:67:0.1)を流速1.0ml/
分で流し、分析カラム(TSK−ゲル 120T、東ソ
ー)を用い、溶出液の吸光度を195nmでモニターす
ることにより、生成するシクロオキシゲナーゼ産物を解
析した。
【0052】同時に、カラムの溶出液を30秒ごとに採
取して、各分画に含まれる放射活性を液体シンチレーシ
ョンカウンターで測定することより、プロスタグランジ
ンの量を定量した。
【0053】なお、リソスペルミン酸Bマグネシウムの
影響を見る場合は、肝浸潤多核白血球を各種濃度のリソ
スペルミン酸Bマグネシウム存在下で2時間培養した後
に同様の方法でサンプルを採取した。
【0054】その結果、図4、5に示すように、正常ラ
ットの肝非実質細胞はPGD2、PGF2α、6−ケト−
PGF1α、PGE2、TXB2を産生することが確認で
きた。 正常ラットに比べ、肝障害ラットではすべての
プロスタグランジン及びTXB2の量が有意に減少して
いた。一方、リソスペルミン酸Bマグネシウムを投与し
た肝障害ラットでは、PGD2及び6−ケト−PGF1α
量は、非投与群に比べて有意に増加した。
【0055】以上の結果から、リソスペルミン酸Bマグ
ネシウムは、D−ガラクトサミンによる急性肝障害の誘
導を抑制し、さらに肝浸潤白血球からのプロスタグラン
ジン産生低下を抑制し、換言すれば、プロスタグランジ
ンの産生を増強させることが明らかとなった。
【0056】
【実験例3】次に、慢性肝障害モデルを用いて、リソス
ペルミン酸Bマグネシウムの肝障害に対する影響を調べ
た。
【0057】<1>四塩化炭素肝障害モデルの誘導 ウィスター系雄性ラット(170−180g)に最初は
0.5ml/体重の100%四塩化炭素(和光純薬から
購入)を皮下注射し、2回目からは40%四塩化炭素
(オリーブ油に溶解)を0.3ml/体重、週3回皮下
注射した。
【0058】7週間後に血清トランスアミナーゼを測定
すると同時に肝組織中のヒドロキシプロリン量及び肝組
織を光顕的に検討した。さらに、肝浸潤多核白血球を分
離した。
【0059】リソスペルミン酸Bマグネシウムの影響を
検討する場合は、リソスペルミン酸Bマグネシウムを1
0mg/kg体重一日に一回経口投与した。
【0060】<2>血清トランスアミナーゼに及ぼすリ
ソスペルミン酸Bマグネシウムの影響 実験例1と同様に、血清トランスアミナーゼ値を測定し
た。血清ALT値と血清AST値を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】この結果から明らかなように、血清トラン
スアミナーゼ値、特に血清AST値の上昇は抑制され
た。
【0063】<3>肝の組織学的検討 肝組織をホルマリンで固定し、ヘマトキシン・エオシン
染色とアザン・マロリー染色を施行し、光顕的に検索し
た。
【0064】その結果、ヘマトキシン・エオシン染色を
施したリソスペルミン酸Bマグネシウム非投与群では、
肝組織においては脂肪沈着並びにグリソン鞘周辺域から
小葉内にかけてのブリッジングネクロシスを含む壊死が
認められた。一方、リソスペルミン酸Bマグネシウム投
与群では脂肪沈着並びに小葉内のフォカルネクロシスの
所見は認められたが非投与群と比較して壊死の程度は軽
かった。
【0065】また、アザン・マロリー染色で検討する
と、リソスペルミン酸Bマグネシウム非投与群ではブリ
ッジングフィブロシス並びにペリセリュラーフィブロシ
スといった高度な繊維化が認められた。一方、リソスペ
ルミン酸Bマグネシウム投与群ではグリソン鞘から星帽
状に伸びた軽度の繊維化が認められるにすぎなかった。
【0066】<4>肝浸潤多核白血球の産出するプロス
タグランジンに及ぼす影響 実験例2と同様にしてラット肝浸潤多核白血球を分離
し、ブロスタグランジン産生の解析を行った。
【0067】その結果、図6、7に示すように、正常ラ
ットの肝非実質細胞はPGD2、PGF2α、6−ケト−
PGF1α、PGE2、TXB2を産生することが確認さ
れた。
【0068】特に、正常ラットの肝非実質細胞はPGD
2及びTXB2を主として産生し、さらにUV−吸光度の
ピークと放射活性のピークが一致した。一方、肝障害ラ
ットではすべてのプロスタグランジン及びTXB2の量
が有意に減少していた。しかし、リソスペルミン酸Bマ
グネシウムを投与した肝障害ラットでは、PGD2及び
TXB2量は、非投与群に比べて有意に増加し、その結
果、全体のプロスタグランジンの量は著明に産生低下を
抑制した。
【0069】<5>肝組織中の肝コラーゲン量に及ぼす
リソスペルミン酸Bマグネシウムの影響 リソスペルミン酸B塩の肝線維化に対する効果を調べる
ために、ジャマールらの方法に準じて肝組織中のコラー
ゲン量を、コラーゲンの主要構成アミノ酸であるヒドロ
キシプロリン含有量として測定した。
【0070】その結果、リソスペルミン酸Bマグネシウ
ム非投与群ではヒドロキシプロリン含有量は0.913
±0.143mg/gと増加した。一方、リソスペルミ
ン酸Bマグネシウム投与群では0.673±0.112
mg/gと顕著に減少した。このことから、リソスペル
ミン酸B塩は肝線維化を低減させる効果があることが判
明した。
【0071】以上の結果から、リソスペルミン酸Bマグ
ネシウムは、四塩化炭素による慢性肝障害の誘導を抑制
し、肝線維化を軽減し、さらに肝浸潤白血球から産生さ
れるプロスタグランジン量の産生低下を抑制することが
明らかとなり、急性肝障害のみならず、慢性肝障害にも
有効であると考えられる。
【0072】
【実験例4】リソスペルミン酸Bマグネシウムについて
LD50を測定した結果は以下の通りである。 (1)腹腔内投与(ddY雄性マウス、6週令、体重3
1〜34g、Up and Down法により測定) LD50 > 2195mg/kg (2)経口投与(ddY雄性マウス、6週令、体重31
〜35g、Up and Down法により測定) LD50 > 3000mg/kg
【0073】
【製剤例】以下に、製剤例を示す。
【0074】
【製剤例1】(製法)表4に示す組成物を、日本薬局方
の錠剤の製法により、1錠当りの重量が240mgの錠
剤とする。 (用法、用量)通常、成人には1回2錠、1日3回(増
減)の経口投与で効果が期待できる。
【0075】
【表4】
【0076】
【製剤例2】(製法)リソスペルミン酸Bマグネシウム
2gを、日局生理食塩水に溶解し、1000mlとす
る。 (用法、用量)通常、成人には1日1回1管(5ml)
を、皮下又は静脈内に投与することにより効果が期待で
きる。
【0077】
【発明の効果】有効成分としてリソスペルミン酸Bある
いはその塩を有効成分として含有する本発明の肝障害改
善薬は、急性肝障害及び慢性肝障害のいずれにおいても
これらを改善する効果を有する。この効果は、肝の5−
リポキシゲナーゼ活性を抑制してロイコトリエンの合成
を阻害し、さらに、肝浸潤白血球からのプロスタグラン
ジン量の産生低下を抑制する作用等に基づくと考えられ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】アラキドン酸代謝産物の逆相HPLCによる溶
出パターンを示す図。(B)はリソスペルミン酸Bマグ
ネシウム無処理、(C)は処理したもの、(A)は標準
化合物。
【図2】リソスペルミン酸Bマグネシウムによるリポキ
シゲナーゼ活性の抑制を示す図。
【図3】アラキドン酸代謝産物の逆相HPLCによる溶
出パターンを示す図。(B)はリソスペルミン酸Bマグ
ネシウム無処理、(C)は処理したもの、(A)は標準
化合物。
【図4】アラキドン酸代謝産物の逆相HPLCによる溶
出パターンを示す図。(B)は正常ラット、(C)はガ
ラクトサミンで誘導した肝障害ラット、(D)はリソス
ペルミン酸Bマグネシウム処理した肝障害ラット、
(A)は標準化合物。
【図5】アラキドン酸代謝産物量を示す図。
【図6】アラキドン酸代謝産物の逆相HPLCによる溶
出パターンを示す図。(B)は正常ラット、(C)は四
塩化炭素で誘導した肝障害ラット、(D)はリソスペル
ミン酸Bマグネシウム処理した肝障害ラット、(A)は
標準化合物。
【図7】アラキドン酸代謝産物量を示す図。
【符号の説明】
図1、3中、AはLTB−4、Bは5−HETEを示
す。図4、6中、1は6−ケト−PGF1α、2はTX
2、3はPGF2α、4はPGE2、5はPGD2を示
す。図5中、GALはD−ガラクトサミンを、図5、7
中、LSAは、リソスペルミン酸Bマグネシウムを表
す。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 化1で表されるリソスペルミン酸B及び
    /又はその薬理学上許容される塩を有効成分として含有
    する肝機能改善薬。 【化1】
  2. 【請求項2】 前記薬理学上許容される塩が化2で表さ
    れる塩であることを特徴とする請求項1記載の肝機能改
    善薬。 【化2】 式中、M2+はMg2+、2K+、2NH4 +あるいはCa2+
    を表す。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002308767A (ja) * 2001-04-04 2002-10-23 Mitsui Chemicals Inc 過酸化脂質生成抑制剤
JPWO2002062365A1 (ja) * 2001-02-01 2004-06-03 明治製菓株式会社 フェノール類含有シソ科植物エキスの製造法及びその用途
JP2006298896A (ja) * 2005-03-22 2006-11-02 Iskra Ind Co Ltd 高脂血症改善剤、動脈硬化改善剤及び肝機能改善剤
WO2007102451A1 (ja) * 2006-03-07 2007-09-13 Nippon Shinyaku Co., Ltd. 育毛剤

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