JPH0531679A - 巻取収納可能な形状記憶合金製アーム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 〔目的〕 荷重を支持、搬送したり、作業をしたりする
アームを、非使用時にはコンパクトな収納形状に、使用
時には所定長さに伸長できるようにする。 〔構成〕 そのため本発明によるアームは、一端に温流
体供給口（３）、他端に温流体排出口（４）を設けたプ
ラスチック薄膜製チューブ（２）内に、低温相において
は渦巻状に巻き取られた平板状を呈し、高温相において
は伸長された円筒に近似した形状を呈する所定長さの形
状記憶合金板（１）を装入してある。使用時には温流体
供給口（３）から温流体をチューブ（２）内に供給して
形状記憶合金板（１）を高温相とし、使用終了後は温流
体の供給を停止して低温相とする。このアームは、物品
搬送用、作業用等に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、荷重を支持し、又は搬
送するアームに関し、使用時には所定の長さに伸長し、
非使用時にはコンパクトに収納可能なアームに関する。

【０００２】

【従来の技術】金属製アームの先端に把持具や作業具を
取りつけて、物品を把持し及び／又は搬送したり、作業
をすることは、日常広く行われていることである。この
ようなアームが可搬式である場合、アームが長すぎるこ
とは運搬に不便なため、いくつかの部分に分割して使用
時に接続したり、関節を設けて折り畳み可能とすること
も周知である。

【０００３】しかしながら上記の対策では限度があり、
あまり短くすることは製作上、操作上不利を招くことに
なる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な欠点を解消し、可搬式アームに好適な、軽量であって
しかも非使用時（収納時）には非常にコンパクトにする
ことができるアームを提供することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】そのため本発明によるア
ームは、一端に温流体供給口、他端に温流体排出口を設
けたプラスチック薄膜製チューブ内に、低温相において
は渦巻状に巻き取られた平板状を呈し高温相においては
伸長された円筒に近似した形状を呈する所定長さの形状
記憶合金板を挿入してなることを特徴としている。

【０００６】形状記憶合金板をチューブ内に挿入する代
りに、細長いプラスチック薄膜の長手方向両側縁を形状
記憶合金板の裏面長手方向両側縁部に接合して形成した
チューブの両端に、温流体供給口及び温流体排出口を設
けることもできる。

【０００７】

【発明の作用】Ｔｉ−Ｎｉ，Ｃｕ−Ｚｎ，Ａｕ−Ｃｄ等
の合金は、相変態によって形状が変化するので形状記憶
合金板と呼ばれている。すなわち形状記憶合金は、ある
形状に加工した後に形状記憶熱処理を施してその形状を
記憶させ、次にある定まった低温域で他の形状に変形
し、その後必要に応じて所定温度以上に加温すると変形
以前の記憶させた形状に復元する特性を有する。この形
状変化は、合金の相変態温度域を挾んだ低温側形状と高
温側形状との間で、低温側から高温側へのみ起こる一方
向的変化と、低温側から高温側へ、高温側から低温側へ
起こる二方向的変化の２種類がある。

【０００８】本発明は、上記のような二方向形状記憶合
金の特性を利用し、荷重を支持又は搬送するアームの実
質的な本体を形状記憶合金の板で形成し、伸長時の形状
を高温相のβ組織として記憶させ、これを冷却した後に
低温相のマルテンサイト組織で巻取収納時の形状に変形
させて、使用時にはこれを温流体により加温して上記の
記憶された伸長形状のアームとするものである。使用終
了後は、温流体による加温を停止して冷却することによ
って再び巻取収納時の形状となる。

【０００９】二方向形状記憶合金のこのような形状変化
は、１００万回のオーダーで反復することができる。

【００１０】本発明においては、一端に温流体供給口、
他端に温流体排出口を設けたプラスチック薄膜製チュー
ブ内に、前記のように伸長時の形状を記憶させた形状記
憶合金の所定長さの板（以下、単に板と呼ぶことがあ
る）を挿入し、低温相において収納時の渦巻状形状に変
形させる。

【００１１】また細長いプラスチック薄膜の長手方向両
側縁を伸長時の形状を記憶させた板の裏面長手方向両側
縁部に接合して、プラスチック薄膜と板とによってチュ
ーブ状のものを形成し、その両端に温流体供給口、温流
体排出口を設けても、上記の板をチューブ内に挿入した
ものと同様の作用をさせることができる。

【００１２】アームとして使用時には、例えば大気圧よ
りわずかに高い圧力の温風のような温流体を、チューブ
の巻き取られていない一端に設けられた温流体供給口か
らチューブ内に供給すると、これによって板は温流体供
給口の側から順次加温されてβ組織となり、記憶した形
状を呈し、最終的には全体が伸長される。使用中は温風
の供給を継続していればこの形状を保持することができ
る。使用が終了したならば温風の供給を停止し、これに
より板はマルテンサイト組織に戻り、温流体排出口の側
から巻き取られる。

【００１３】以下、本発明によるアーム及びそのアーム
を用いた作業器具の一例の各実施態様について、添付の
図面を参照しながら説明する。

【００１４】

【実施例】図１は、本発明によるアームの一実施態様の
略図であり、（Ａ）は非使用時の収納状態を示す側面図
及び渦巻部分の断面図、（Ｂ）は使用時の伸長状態にお
ける内部を示す側面図及び断面図である。形状記憶合金
の長い板１は、ポリエチレンのようなプラスチック薄膜
製チューブ２内に挿入されており、チューブ２の一端に
は温流体供給口３、他端には温流体排出口４が設けられ
ている。

【００１５】板１は、チューブ２内に装入される前に、
図１（Ｂ）（特に断面図）に見るように、長手方向両側
縁部５，５がある程度離れている円筒近似形状に加工さ
れて形状記憶熱処理を受け、この形状を記憶した後に室
温まで冷却され、次いで平板状に再び加工される。こう
して平板状になった板１を、板１より少し長いチューブ
２内に装入し、温流体排出口４の側から、巻物を巻くよ
うにして図１（Ａ）の形状に変形させる。

【００１６】支持、搬送等のアームとして使用しないと
きは、本発明によるアームは図１（Ａ）の形状をしてい
るので、収納に場所をとることはないし、アームとして
使用する場所へ運搬するのにも長いままで運ぶ必要がな
いので便利である。

【００１７】アームとして使用するときは、大気圧より
わずかに高い圧力の温風を温流体供給口３からチューブ
２内へ供給すると、この温風によって板１が加温され、
温流体供給口３側から順次β組織となって、記憶してい
た図１（Ｂ）の高温相の形状となり、最終的には直管と
なる。本発明によるアームは、伸長された使用時には断
面が円筒近似形状を呈するので、先端部（温流体排出口
４近傍）に適当な把持具を取りつけて物品を把持して水
平に支持した場合でも十分その荷重に耐える強度を有
し、温流体供給口３側ほど巾を広くした板１を用いれ
ば、強度は一層大きくなる。

【００１８】この直管状の伸長状態は、チューブ２内に
温風を供給している間は継続するので、アームとしての
使用が終了したときは温風の供給を停止する。これによ
り板１は徐々に室温まで冷却されるので、再び図１
（Ａ）の低温相の形状に戻る。

【００１９】前記のように形状記憶合金にはいろいろな
種類のものがあり、例えばＴｉ−Ｎｉ合金は機能特性は
良好であるが、溶接や熱処理が困難で比較的高価である
し、Ｃｕ−Ｚｎ合金、Ｃｕ−Ｚｎ−Ａｌ合金等の銅基合
金は機能特性が低下しやすいが加工しやすく安価である
とされている。しかしながら、他の材料を添加するなど
の改良研究がなされているので、本発明のアームに用い
る材料としては、用途、使用可能な温流体の種類と温
度、価格等を勘案して適当な形状記憶合金を選択すれば
よい。

【００２０】この実施態様では温流体として温風を使用
しているが、温水や温粉でもよい。しかしながら排出口
４から絶えず排出されること、どこででも安価に入手で
きることなどを考慮すると、一般的には温風がもっとも
有利であろう。温風は大気圧よりわずかに高い圧力であ
ればよい。温流体の温度は、上記のように形状記憶合金
の種類と関係があるので、高温相に相変態させるに十分
な温度を選択する必要がある。

【００２１】また図１（Ｂ）に見るように、円筒形状に
なったときの板１の両側縁部５，５間に相当するチュー
ブ２の面に、適当な間隔で複数の孔６，６…を設け、供
給温風をここからも排出できるようにすると、温風の供
給量を調整することによって、伸長を任意の長さでとど
めることができる。孔６，６…以外に、さらに図１
（Ａ）のようにチューブ２の長手方向両側縁部に同様に
複数の孔７，７を設けると伸長速度の調節が可能であ
る。

【００２２】本発明によるアームは、次のような各種の
用途に適用することができる。 （１） 先端部に把持具を取りつけ、基部を関節状接続
具に適合するように接続し、アームを伸長させて離れた
位置にある物品を把持し、アームの回動及び収縮により
物品を搬送、（２） 把持具の代わりに工具その他の作
業具を取りつけ、上記（１）と同様に離れた場所での作
業、（３） ブラインド、舞台の幕などの開閉、等。

【００２３】これらの用途のうち、（３）は定置式であ
るが、（１），（２）は定置式よりも可搬式の場合に、
特に本発明の利点である非使用時（収納時）にコンパク
トで使用時に伸長できるという効果が十分に発揮され
る。次に（２）の用途のうち、高所のような離れた場所
（例えば窓や壁面）を清掃するための清掃装置の一実施
態様を、図２を参照しながら説明する。

【００２４】図２は、アームが伸長された使用時の状態
の清掃装置を示している。本発明による前記のようなア
ーム１１，２１は、それぞれの温流体（温風）供給口１
２，２２が、アームの長手方向軸と直角な軸周りを回動
する接続具３１に接続され、一方のアーム１１が他方の
アーム２１に対して屈伸できるようになっている。接続
具３１は、その内部に各温流体供給口１２，２２と連通
する温流体通路を有しているので、温風は接続具３１を
介して両アームのチューブ内に送られ、これによりアー
ム１１，２１がそれぞれ伸長される。

【００２５】伸長された状態のアーム２１の温流体排出
口２３側の管端部は、ユニバーサル手継手３２に取りつ
けられた管固定具３３にしっかりと把持固定されるの
で、アーム２１及びこれと接続されたアーム１１は、ユ
ニバーサル手継手によって任意の方向へ向けられ、その
位置に固定することができる。清掃作業終了後は、管固
定具３３から解除した後に接続具３１からの温風供給を
停止すれば、アーム１１，２１を図１（Ａ）の収納状態
にすることができる。

【００２６】例えば回転ブラシのような清掃具３４は、
アーム１１の温流体排出口１３の側の形状記憶合金板の
端部に、前記接続具３１の回動軸と平行で、アームの両
側に突出した軸３５の突出部分に、回転自在に取りつけ
られる。

【００２７】本発明によるアームを利用した清掃装置
は、本実施態様では上記のような構成なので、非使用時
には接続具３１の両側に図１（Ａ）に示すような渦巻状
に巻き取られたアーム１１，２１が連結された形状（接
続具３１により折畳み可能）をとり、使用時には例えば
使用現場まで運ばれて、まず接続具３１から温風を各ア
ームのチューブ内に供給し、伸長された後にアーム２１
の温流体排出口２３側の管端部を、管固定具３３を介し
てユニバーサル手継手３２に取りつければよい。これに
よりアーム１１の温流体排出口１３側に取りつけられて
いる回転ブラシ３４は任意の場所を清掃することができ
るのである。

【００２８】接続具３１の温流体通路を２本設け、一方
は温流体供給口１２に、他方は温流体供給口２２に連通
するようにし、温流体供給口１２には温湯（洗剤を含む
とさらに好ましい）を供給すると、回転ブラシ３４の近
傍の温流体排出口１３から温湯が排出されるので、他に
清掃のための水や湯を必要とせずに汚れを落すことがで
きる。

【００２９】本実施態様は、アームに清掃具を取りつけ
た清掃装置の一例であるが、清掃以外のいろいろな作業
が、それに適した作業具を備えた装置によって行われ、
また物品の支持や搬送も行われることは容易に理解でき
るであろう。

【００３０】

【発明の効果】本発明によるアームは、形状記憶合金の
特性を活用することによって、非使用時には渦巻状に巻
取られたコンパクトな形状となり、使用時には所定の長
さに伸長することができるので、非使用時の収納に小さ
なスペースしか必要とせず、また使用現場への運搬がき
わめて容易となる。この形状の変化に必要な温流体も形
状記憶合金の種類を選択することによって、例えば１０
０℃前後のきわめて入手しやすい温微圧風を利用でき
る。

【００３１】したがって本発明によるアームの用途は広
く、前記したような分野で利用することによってそれぞ
れ顕著な効果を発揮することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のアームの一実施態様を示す略図で、
（Ａ）非使用時（収納時）の側面図及び渦巻部分の断面
図、（Ｂ）は使用時（伸長時）の内部側面図及び断面
図。

【図２】本発明によるアームを利用した清掃装置の斜視
図。

【符号の説明】

１ 形状記憶合金の長い板 ２ 形状記憶合金板が装入されるチューブ ３，１２，２２ チューブへの温流体供給口 ４，１３，２３ チューブからの温流体排出口 １１，２１ アーム ３１ 接続具 ３２ ユニバーサル手継手 ３３ 管固定具 ３４ 清掃具（回転ブラシ）

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 【請求項１】 荷重を支持又は搬送し、使用時には所定
   の長さに伸長し、非使用時にはコンパクトに収納可能な
   アームにおいて、低温相においては渦巻状に巻き取られ
   た平板状を呈し、高温相においては伸長された円筒に近
   似した形状を呈する所定長さの形状記憶合金板を一端に
   温流体供給口、他端に温流体排出口を設けたプラスチッ
   ク薄膜製チューブ内に挿入するか、細長いプラスチック
   薄膜の長手方向の両側縁を前記形状記憶合金板の裏面長
   手方向の両側縁部に接合して形成したチューブの両端に
   前記温流体供給口及び温流体排出口を設けることによっ
   て形成されたアーム。