JPH05304894A - コアー・シェル構造を有する食品 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 ラクチトールを含んでなるシェルと各種食物
をコアーとする複層からなる食品が提供される。コアー
としては、特にアルコール飲料からなるものが好まし
い。 【効果】 シェルとして砂糖からなる従来のコアー・シ
ェル食品に比較し、保存安定性に優れ、低甘味化が達成
される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ラクチトールを含んで
なるシェル（殼）で各種食料品を被覆したコアー・シェ
ル食品に関する。本発明にいうコアー・シェル食品と
は、液状、流動状、固形状またはこれらの混合状態にあ
る食物を、外層として結晶性糖質の殼で覆った多層構造
を有する食品をいう。

【０００２】

【従来の技術】コアー・シェル食品の代表的なものとし
ては、いわゆるウィスキーボンボンが挙げられる。その
製造方法は、一般的には、砂糖を溶解して煮詰め、ウィ
スキーを添加して均一に混合した後、澱粉等で形成した
型に流し込み、次いで乾燥する工程からなる。従って、
シェルは結晶として析出した砂糖からなり、コアー（内
部）はウィスキーの砂糖飽和溶液からなる。

【０００３】このように、糖質として砂糖を用いること
から、甘過ぎ、虫歯になり易く、かつカロリーが高いた
め、肥満や成人病の原因になるといった課題のあるお菓
子であった。特に、甘過ぎることは、コアー・シェル食
品の市場拡大あるいは商品寿命を伸ばすことを阻む要因
であった。

【０００４】一方、このような、特に液状または流動状
の食物をコアーとするコアー・シェル食品の製造上の観
点に立てば、型に流し込まれる糖液中での糖の結晶析出
を極力抑制することが良好なコアー・シェル食品を得る
のに必要であった。

【０００５】ところが、糖液に砂糖を用いる場合には、
その結晶析出のし易さから７０℃という高温で操作され
るのが普通であるが、それにもかかわらず結晶析出が生
じ易く、そしてウィスキー等のように揮発性のアルコー
ルまたは香気成分を含むコアー原料や果汁等のようにこ
れらの温度で不安定な成分を含むコアー原料を用いると
きは操作に慎重を期す必要があった。さらに、コアー原
料として果汁・酸味料などを用いる場合には、pHが低く
なることにより、シェルを形成する砂糖が分解して長期
保存に耐えるコアー・シェル食品を提供することが困難
であった。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のよう
にシェルとして砂糖を用いることに起因する問題点を伴
わない、すなわち、低甘味で、非もしくは難う蝕性で、
そして低カロリーであり、さらには酸性条件下でも安定
に保存できる、成分からなるシェルを有するコアー・シ
ェル食品の提供をその目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者らは上記目的を
達成すべく、シェルを構成する糖質としてソルビトー
ル、マルチトール等をはじめとする各種糖類の使用を検
討してきたところ、ラクチトールを用いれば上記課題が
解決できるだけでなく、さらに多様性に富むコアー・シ
ェル食品が提供できることを見い出し本発明を完成し
た。

【０００８】従って、本発明によれば、シェルを構成す
る糖質がラクチトールを含んでなるコアー・シェル食品
が提供される。本発明で用いるラクチトールは、乳汁か
ら精製された乳糖の還元によって製造されるそれ自体既
知の糖質であり、その食品への各種の応用も提案されて
いる（例えば、特公昭４７−４２５０６号公報「飲食物
の製造方法」、特開昭４９−５４５７２号公報「飲食物
の製法」および特開昭６４−２５３４号公報「フォンダ
ンおよびその製造法」等、参照）。かかるラクチトール
は市販されており、例えば、日研化学株式会社販売のラ
クチトール「日研」ＬＣ−０、ＬＣ−１、ＬＣ−２、Ｌ
Ｃ−６０が挙げられる。これらは、それぞれラクチトー
ルの無水結晶、１水和結晶、２水和結晶を主体とする結
晶粉末および濃度６０％液で入手でき、いずれを用いる
こともできる。

【０００９】本発明の食品におけるシェルは、ラクチト
ール自体が有する特性、例えば、低甘味性、非もしくは
難う蝕性、低温での操作安定性および耐酸性等を損なわ
ない限り、他の糖質をはじめとする食料品または食品添
加物を含めてもよい。ラクチトールを含めることができ
る副原料は、当該コアー・シェル食品が向けられる用途
分野またはコアーを構成する食物に応じて変えられるの
で限定されない。しかしながら、一般的に用いられる副
原料の具体例としては、砂糖、グルコース、フラクトー
ス、マルトース、水飴のような糖、ソルビトール、ガラ
クチトール、マルチトールのよな糖アルコール、無機
塩、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムＫなど
の甘味剤、クエン酸などの酸味料、ポリデキストロース
などの食物繊維、その他の香料、着色料およびビタミン
類が挙げられる。

【００１０】これらの副原料は、それぞれ単独で、また
は２成分以上をラクチトールに混合して用いることがで
きるが、ラクチトールの純度は９０重量％以上、好まし
くは９５重量％以上とするのがよい。しかしながら、上
述のラクチトールの特性を損なわないかぎり、上記以外
の純度に設定してもよい。

【００１１】本発明のコアーを構成する食物は、液状、
流動状、固体状またはそれらの複合状のいずれの状態に
あるものであってもよい。限定されるものでないが、液
状食物としては、ブランデー、ウィスキー、焼酎、ワイ
ン、清酒、梅酒およびラム酒などのアルコール飲料、果
汁、牛乳、コーヒー、紅茶、およびコーラなどその他の
飲料が挙げられ、流動状食物としては、生クリームおよ
びカスタードクリームなどのクリーム類、ジャム、ヨー
グルト、チョコレート、フォンダンなどその他の流動食
物が挙げられ、そして固体状食物としては各種果実の果
肉などが挙げられる。これらのコアーを構成する食物に
も、必要に応じて上記シェルの構成に用いることができ
る副原料を含めることができる。

【００１２】本発明のコアー・シェル食品は、上述のよ
うなシェルとコアーからなるものであればいかなる形状
であってもよく、さらに当該シェルの外側にシェルを構
成する成分以外の食物からなる層を堆積させることもで
きる。

【００１３】本発明のコアー・シェル食品は、コアーを
構成する食物の性状に応じてそれ自体公知の製造方法に
よって製造することができる。コアーが液状食物や一部
の流動食物の場合には、いわゆるウィスキーボンボンの
製造方法に準じて、例えば、ラクチトールを適当な濃度
で含む一定温度の水性糖液を用意し、これにコアー成分
を混入して均一になるまで混合し、この混合液を型に流
し込んで放冷した後、型の壁面に沿ったラクチトールの
結晶析出を介してシェルを形成することによって製造す
ることができる。コアーが固体状の食物の場合は、コア
ーにラクチトールを含む糖液を噴霧もしくは塗布する
か、または糖液中にコアーを浸漬してシェルを形成する
ことによって製造することができる。

【００１４】かかる製造方法においてラクチトールから
なる糖液は、約８０℃付近での操作が必要な砂糖からな
る糖液よりも遙かに低い温度（４０〜６０℃）で取り扱
うことができ、しかも結晶析出速度が遅いため平滑で緻
密な表面層（シェル）を有する製品を容易に製造でき
る。こうして、ラクチトールは砂糖より緻密なシェルを
形成できるので、特にアルコール飲料をコアーとする食
品の品質安定性に優れており、また、アルコールの飽和
砂糖溶液よりラクチトール飽和溶液の方が糖質の結晶析
出に対して著しく安定であるためざらついた食感を伴わ
ない。

【００１５】

【実施例】以下、本発明をコアーが液状食物からなるコ
アー・シェル食品を例に具体的に説明するが、本発明を
これらに限定することを意図するものでない。

【００１６】実施例１ 市販のラクチトール粉末（日研化学株式会社製：ラクチ
トール「日研」ＬＣ−２）１００ｇと水１５ｇを１０７
℃まで煮詰め、６０℃まで放冷した。別に、ブランデー
1６．3 ccとエタノール（９５ｖ％） 5．0 ccを混合
し、５０℃に加温したものを加え、均一になるまでよく
攪拌し、液温５０℃で予め乾燥した澱粉型に流し込む。
流し込んだ液の表面に澱粉を約１ミリの厚さに振り掛
け、３５℃の乾燥機に入れた。一晩経過後澱粉と分離
し、ブランデーコアー・シェル食品を得た。この方法に
より得られた製品は、甘さが抑えられ後味が優れたコア
ー・シェル食品であった。

【００１７】実施例２ 市販のラクチトール液（日研化学株式会社製：ラクチト
ール「日研」ＬＣ−６０）１５１ｇを、実施例１と同様
に１１２℃まで煮詰め、６０℃まで放冷した。別に、清
酒１２．３ccとエタノール（９５ｖ％） 6．6 ccを混合
し、５０℃に加温したものを加え、均一になるまでよく
攪拌し、液温５５℃で予め乾燥した澱粉型に流し込む。
流し込んだ液の表面に澱粉を約１ミリの厚さに振り掛
け、３５℃の乾燥機に入れた。以後、実施例１と同様の
条件で乾燥し、製品化した。こうして得られた製品も、
甘さが抑えられているので清酒の風味が生きた極めて良
好な清酒コアー・シェル食品であった。

【００１８】実施例３ 実施例１で得られたブランデーコアー・シェル食品に、
市販のチョコレートを加温溶解し衣掛けしてチョコレー
トコアー・シェル食品を得た。この製品も従来の砂糖で
作ったブランデーコアー・シェル食品では甘すぎるのに
対して、非常にサッパリした味のチョコレートコアー・
シェル食品であった。

【００１９】実施例４ 市販のラクチトール粉末（日研化学株式会社製：ラクチ
トール「日研」ＬＣ−２）１００ｇと水１５ｇを、実施
例１と同様に１０７℃まで煮詰め、７０℃まで放冷し
た。別に、５分の１濃縮オレンジ果汁７ccをを混合し、
５０℃に加温したものを加え、均一になるまでよく攪拌
し、液温６０℃で予め乾燥した澱粉型に流し込む。流し
込んだ液の表面に澱粉を約１ミリの厚さに振り掛け、４
０℃の乾燥機に入れた。以後、実施例１と同様の条件で
乾燥し、製品化した。この方法において得られた製品
は、果汁の風味が生きたコアー・シェル食品であった。

【００２０】参考例１ 市販のグラニュー糖（伊藤忠製糖株式会社製）９０ｇと
２５ｇを１１２℃まで煮詰め９５℃まで放冷する。別に
ブランデー 1６．3 ccとエタノール（９５容量％） 5.
0 ccを混合し、９０℃に加温したものを加え、均一にな
るまでよく攪拌し、液温８５℃で予め乾燥した澱粉型に
流し込む。流し込んだ液の表面に澱粉を約１ミリの厚さ
に振り掛け、４０℃の乾燥機に入れた。一晩経過後澱粉
と分離し、ブランデーコアー・シェル食品を得た。この
方法により得られた製品は甘さが強く、後まで口の中に
甘さが残る。このグラニュー糖を使用したコアー・シェ
ル食品と実施例１のラクチトールを使用したのもとの比
較を表１に示す。

【００２１】参考例２ 市販のグラニュー糖（伊藤忠製糖株式会社製）９０ｇと
２５ｇを１１２℃まで煮詰め８０℃まで放冷する。別に
ブランデー 1６．3 ccとエタノール（９５ｖ％） 5. 0
ccを混合し、５０℃に加温したものを加え、均一になる
までよく攪拌したところ砂糖の結晶が析出した。そのま
ま液温７５℃で予め乾燥した澱粉型に流し込んだがコア
ー・シェル食品にはならなかった。

【００２２】

【表１】

【００２３】

【発明の効果】本発明によれば、特に、アルコール飲料
をコアーとする保存安定性に優れ、低甘味化が実現した
コアー・シェル食品が提供される。かかる発明の効果
は、シェルとしてラクチトールを用いることにより達成
できる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シェルを構成する糖質がラクチトールを
   含んでなるコアー・シェル食品。