JPH05296582A - 車両用空気調和装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 冷媒圧縮機による液冷媒の圧縮を防止して冷
媒圧縮機の騒音を防止する。 【構成】 冷媒ガスを圧縮して吐出する冷媒圧縮機３を
有する冷凍サイクル９と、冷媒圧縮機３の内部に溜まっ
た液冷媒を排出する排出管路１８と、この排出管路１８
より流入した液冷媒を一時的に貯溜する貯溜タンク１９
と、この貯溜タンク１９内の液冷媒を冷凍サイクル９内
に戻す戻し管路２０と、排出管路１８に設けた電磁弁２
１とを備えている。そして、冷凍サイクル９の起動前に
のみ電磁弁２１を開弁して排出管路１８を開くことによ
って、冷媒圧縮機３内に溜まった液冷媒を排出して冷媒
圧縮機３による大量の液冷媒の圧縮を防止した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、冷媒圧縮機による液冷
媒の圧縮を防止した車両用空気調和装置に関するもので
ある。

【０００２】

【従来の技術】従来より、送風ダクト内において車室内
に向かう空気流を発生させる送風機と、冷媒圧縮機、冷
媒凝縮器、レシーバ、減圧装置および冷媒蒸発器を冷媒
配管により環状に接続してなる冷凍サイクルとを備えた
車両用空気調和装置（以下従来の技術と呼ぶ）が提案さ
れている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の技術
においては、冷媒圧縮機がその他の冷房機器に比べて熱
容量が大きく温度上昇が遅れるため、自動車を一晩屋外
に放置すると冷媒ガスが冷媒圧縮機内に移動して液化す
る。一般に、冷媒圧縮機の吸入口や吐出口は、冷媒圧縮
機の上側に形成されているため、一度冷媒圧縮機内に溜
まった液冷媒は冷媒圧縮機の外部に排出されない。

【０００４】この状態で冷凍サイクルを起動させると、
冷媒圧縮機が液冷媒を圧縮するため冷媒圧縮機の駆動ト
ルクが増大し電磁クラッチやベルトに滑りが生じて騒音
が発生する。このような冷媒圧縮機の騒音は、冷媒圧縮
機内に溜まる液冷媒量に応じて増大し、液冷媒量が冷媒
圧縮機の全容積中７５％以上になると車両乗員に不快感
を与えるレベルに達するという課題があった。本発明
は、冷媒圧縮機による液冷媒の圧縮を防止して冷媒圧縮
機の騒音を防止する車両用空気調和装置の提供を目的と
する。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は、冷媒ガスを圧
縮して吐出する冷媒圧縮機を有する冷凍サイクルと、前
記冷媒圧縮機の下部より下方に延ばされ、前記冷媒圧縮
機の内部より液冷媒を排出する排出管路と、前記冷媒圧
縮機を起動する前に、前記排出管路を開弁するように構
成された弁手段とを備えた技術手段を採用した。

【０００６】

【作用】本発明は、冷媒圧縮機を起動する前に弁手段に
より排出管路を開くと、重力により冷媒圧縮機内に溜ま
った液冷媒が冷媒圧縮機の下部より下方に排出管路を通
って排出される。よって、冷媒圧縮機を起動しても冷媒
圧縮機が液冷媒を圧縮することはなくなるため冷媒圧縮
機の騒音が防がれる。

【０００７】

【実施例】つぎに、本発明の車両用空気調和装置を図１
ないし図３に示す一実施例に基づいて説明する。図１は
自動車用冷房装置を示した図である。自動車用冷房装置
１は、車室内に空気を送るための送風ダクト（図示せ
ず）と、この送風ダクト内において車室内に向かう空気
流を発生させるブロワ２と、冷媒圧縮機３、冷媒凝縮器
４、レシーバ５、膨張弁６および冷媒蒸発器７を冷媒配
管８により環状に接続してなる冷凍サイクル９と、冷媒
圧縮機３による液冷媒の圧縮を防止する液圧縮防止装置
１０とを備えている。

【０００８】冷媒圧縮機３は、電磁クラッチ１１が通電
（オン）されると、内燃機関（図示せず）によりベルト
（図示せず）、プーリ１２を介して回転駆動され、冷媒
蒸発器７から内部に吸入した冷媒ガスを圧縮して、高温
高圧の冷媒ガスを冷媒凝縮器４に向けて吐出する。ま
た、冷媒圧縮機３の上部には、低圧の冷媒ガスを吸入す
る吸入口１３、および高圧の冷媒ガスを吐出する吐出口
１４が形成されている。さらに、冷媒圧縮機３の下部
（最も下方に位置する部位）には、冷媒圧縮機３の低圧
部と液圧縮防止装置１０を連通させる連通口１５が形成
されている。

【０００９】冷媒凝縮器４は、冷媒圧縮機３の吐出側に
接続され、冷媒圧縮機３から内部に流入した冷媒ガス
を、電動ファン１６により送り込まれる外気（車室外空
気）と熱交換させることによって凝縮液化させる。レシ
ーバ５は、冷媒凝縮器４の下流側に接続され、冷媒凝縮
器４から内部に流入した冷媒ガスと液冷媒とを分離し
て、液冷媒のみを膨張弁６に供給する。膨張弁６は、レ
シーバ５の下流側に接続され、レシーバ５から供給され
た液冷媒を断熱膨張させて低圧の霧状冷媒にする。冷媒
蒸発器７は、冷媒圧縮機３の吸入側と膨張弁６の下流側
との間に接続され、膨張弁６から内部に流入した霧状冷
媒を、ブロワ２により吹き付けられる空気と熱交換させ
ることによって蒸発気化させる。冷媒圧縮機３の吸入側
と冷媒蒸発器７の下流側との間の冷媒配管８には、液圧
縮防止装置１０より液冷媒や冷媒圧縮機３の潤滑油を戻
すための合流部１７が形成されている。

【００１０】図２は冷媒圧縮機の下方に配された貯溜タ
ンクを示した図で、図３は自動車用冷房装置の主要な電
気回路である。液圧縮防止装置１０は、排出管路１８、
貯溜タンク１９、戻し管路２０、電磁弁２１および制御
タイマー２２等より構成されている。排出管路１８は、
冷媒圧縮機３の下部に形成された連通口１５より貯溜タ
ンク１９に至るまで延長された管路であって、内部を液
冷媒が流れる。貯溜タンク１９は、冷媒圧縮機３の下方
に位置し、一時的に液冷媒を貯溜するもので、排出管路
１８の出口部２３より、戻し管路２０の入口部２４が下
方に位置するように形成されている。その貯溜タンク１
９は、冷媒圧縮機３内に溜まった液冷媒を十分に蓄積可
能な容積を持つ。戻し管路２０は、貯溜タンク１９内の
液冷媒を冷媒配管８の合流部１７より冷凍サイクル９内
に戻す管路である。

【００１１】電磁弁２１は、本発明の弁手段であって、
通電（オン）されると排出管路１８を開き、通電が停止
（オフ）されると排出管路１８を閉じる。制御タイマー
２２は、図３に示したように、運転者がイグニッション
スイッチ２５をＯＦＦ（オフ）位置よりＯＮ（オン）位
置に設定した際にバッテリ２６より通電電流が流れ始め
てから設定時間（例えば１０秒間）が経過するまでスイ
ッチ２７をａ接点側に設定し、設定時間が経過した後は
スイッチ２７をｂ接点側に設定する。なお、ａ接点には
電磁弁２１が電気的に接続されており、ｂ接点にはエア
コンスイッチ２８を介して冷媒圧縮機３の電磁クラッチ
１１が電気的に接続されている。

【００１２】つぎに、この自動車用冷房装置１の作用を
図１ないし図３に基づいて簡単に説明する。イグニッシ
ョンスイッチ２５が運転者によってオフ位置よりオン位
置に設定されると、制御タイマー２２が作動を開始す
る。制御タイマー２２は、作動を開始してから設定時間
（例えば１０秒間）が経過するまでスイッチ２７をａ接
点側に設定するため、電磁弁２１がオンされる。このた
め、仮に自動車を一晩屋外に放置して冷媒圧縮機３内に
液冷媒が溜まってしまった場合でも、電磁弁２１が排出
管路１８を開くため冷媒圧縮機３の低圧部より液冷媒が
排出される。このとき、エアコンスイッチ２８のオン、
オフに拘らず、電磁クラッチ１１がオンされないので冷
凍サイクル９が起動せず、液冷媒を圧縮することもな
い。そして、冷媒圧縮機３の内部より排出された液冷媒
は、貯溜タンク１９が冷媒圧縮機３より下方に位置して
いるため重力によって排出管路１８を通って貯溜タンク
１９に導かれる。

【００１３】制御タイマー２２は、設定時間が経過した
後はスイッチ２７をｂ接点側に設定する。このため、エ
アコンスイッチ２８がオンされていると、電磁クラッチ
１１がオンされることによって冷媒圧縮機３がベルト、
電磁クラッチ１１を介して内燃機関に回転駆動される。
このように冷凍サイクル９が起動すると、冷媒圧縮機３
が吸入、圧縮、吐出を繰り返すため冷凍サイクル９内を
冷媒が循環する。このとき、貯溜タンク１９内の液冷媒
には重力が働いているが、液冷媒は重力に逆らいながら
冷媒圧縮機３の吸入圧力によって吸い上げられる。この
ため、貯溜タンク１９内の液冷媒は、戻し管路２０を通
って冷媒配管８の合流部１７より冷凍サイクル９内に徐
々に戻される。なお、液冷媒が冷凍サイクル９内に戻さ
れる際には、重力に逆らって冷媒圧縮機３の吸入圧力に
よって吸い上げられているので、冷凍サイクル９内に戻
される液冷媒量は少なく、冷媒圧縮機３が多量の液冷媒
を圧縮する可能性はない。また、液冷媒は、冷媒配管
８、貯溜タンク１９や戻し管路２０を通過する際に蒸発
気化する可能性があるので、冷媒圧縮機３内に戻る液冷
媒量は非常に少量となる。

【００１４】したがって、冷凍サイクル９の起動時の冷
媒圧縮機３による液冷媒の圧縮を抑えることができるの
で、冷媒圧縮機３の駆動トルクの増大が防がれ電磁クラ
ッチ１１やベルトに滑りが発生せず騒音の発生を防止で
き、車両乗員に不快感を与えるレベルまで冷媒圧縮機３
の騒音が大きくなることはなく、大量の液冷媒を圧縮す
ることによる冷媒圧縮機３の損傷も防止できる。また、
この実施例では、冷媒圧縮機３の内部より排出した液冷
媒を再度冷凍サイクル９内に戻すようにしているので、
液冷媒に混入して冷媒圧縮機３の内部を潤滑する潤滑油
が排出されることによる潤滑油不足を防止でき、冷媒不
足も防止できる。そして、内燃機関の起動時のみ冷媒圧
縮機３内より液冷媒を排出しているので、冷凍サイクル
９の運転中に電磁クラッチ１１がオフされてからオンし
た場合でも制御タイマー２２は働かず、冷媒圧縮機３内
に液冷媒が無い場合に無駄に液圧縮防止装置１０を作動
させることもない。

【００１５】〔変形例〕本実施例では、自動車用冷房装
置に用いたが、冷媒の流れ方向を変更することにより車
室内の冷暖房が可能なヒートポンプに用いても良い。本
実施例では、冷媒圧縮機の下方に液冷媒を貯溜する貯溜
タンクを設けたが、貯溜タンクをアキュームレータで代
用しても良い。本実施例では、貯溜タンクより流出した
液冷媒を冷媒圧縮機と冷媒蒸発器との間の低圧側の冷媒
配管に戻したが、貯溜タンクより流出した液冷媒を、直
接冷媒圧縮機内の低圧部に戻しても良く、またレシーバ
の前後や減圧装置の前後に戻しても良い。本実施例で
は、冷媒圧縮機を内燃機関により回転駆動したが、冷媒
圧縮機を電動モータにより回転駆動しても良い。

【００１６】

【発明の効果】本発明は、冷媒圧縮機を起動する前に冷
媒圧縮機内の液冷媒を排出することによって、冷媒圧縮
機を起動させても冷媒圧縮機が液冷媒を圧縮することを
防止できるため、冷媒圧縮機の騒音を防止することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に適用された自動車用冷房装
置を示した構成図である。

【図２】本発明の一実施例にかかる貯溜タンクを示した
断面図である。

【図３】本発明の一実施例に適用された自動車用冷房装
置の主要な電気回路である。

【符号の説明】

１ 自動車用冷房装置（車両用空気調和装置） ３ 冷媒圧縮機 １８ 排出管路 ２１ 電磁弁（弁手段）

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 （ａ）冷媒ガスを圧縮して吐出する冷媒
   圧縮機を有する冷凍サイクルと、 （ｂ）前記冷媒圧縮機の下部より下方に延ばされ、前記
   冷媒圧縮機の内部より液冷媒を排出する排出管路と、 （ｃ）前記冷媒圧縮機を起動する前に、前記排出管路を
   開弁するように構成された弁手段とを備えた車両用空気
   調和装置。