JPH05279031A - 希土類系酸化物超電導体及びその製造方法 - Google Patents

希土類系酸化物超電導体及びその製造方法

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JPH05279031A
JPH05279031A JP4076865A JP7686592A JPH05279031A JP H05279031 A JPH05279031 A JP H05279031A JP 4076865 A JP4076865 A JP 4076865A JP 7686592 A JP7686592 A JP 7686592A JP H05279031 A JPH05279031 A JP H05279031A
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rare earth
oxide superconductor
earth oxide
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JP4076865A
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Makoto Tani
信 谷
Toru Hayase
徹 早瀬
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NGK Insulators Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 貴金属又は貴金属化合物が制御された濃度分
布をしている希土類系酸化物超電導体。貴金属又は貴金
属化合物を含有する希土類系酸化物超電導体の成形体
に、該成形体の希土類系酸化物超電導体より融点の高い
希土類系酸化物超電導体の単結晶を接触配置し、次いで
該成形体を加熱して半溶融状態にした後徐冷する希土類
系酸化物超電導体の製造方法。 【効果】 配向性の高い大きな結晶粒から成る希土類系
酸化物超電導体が得られ、超電導電流のループ半径を大
きくすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、希土類系酸化物超電導
体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、酸化物超電
導体中の結晶粒の配向が制御された希土類系酸化物超電
導体、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物超電導体は、臨界磁場に達すると
磁束が侵入して常伝導に相転移する第一種超電導体と異
なり、第一臨界磁場で磁束の侵入が始まっても第二臨界
磁場に達するまでは常伝導に相転移をしない第二種超電
導体に属している。しかも超電導特性を有するNb-Ti等
の合金、Nb3Sn等の金属間化合物等と比べて臨界温度が
遥かに高いことから、臨界磁場及び臨界電流値を向上さ
せることで実用化を図ることができるのではという目的
で活発に研究が行われている。ここで、超電導が注目を
浴びているのは、超電導体が完全反磁性を示すというマ
イスナー効果のためである。マイスナー効果とは、超電
導体に臨界磁場(第二種超電導体では第一臨界磁場)を
越えない外部磁場を加えられても、超電導体の表面に環
状に超電導電流が外部磁場を打ち消すように流れ、磁力
線は超電導体内部に入れず、超電導体は完全反磁性を示
すという超電導の最も基本的な性質である。この超電導
体が完全反磁性を示すというマイスナー効果を利用し
て、超電導体を磁場遮蔽材又は磁気浮上材へに応用でき
るのではないかという目的があるわけである。当然、超
電導電流値が大きいことが実用化では所望される。
【0003】このように超電導体の内部に磁束線が入り
込むことは、本質的に超電導と相反するのだが、第二種
超電導体は、第一臨界磁場で磁束の侵入が始まっても第
二臨界磁場に達するまでは常伝導に相転移をしないとい
う性質を有している。そこで、第一臨界磁場以上の磁場
中で超電導体中に磁束の侵入が始まってもローレンツ力
による磁束線の移動を妨げることができるいわゆるピン
中心が大量に存在すれば、超電導電流値を向上すること
ができる。なお、格子欠陥がピン中心として作用するの
が知られている。
【0004】ところが、最近は意図的にピン中心として
作用する微細粒子を酸化物超電導体中に分散させること
により超電導電流密度の向上を図る試みも盛んである。
例えば、小川、吉田、平林 ISTEC ジャーナル
Vol.4 No.3 1991:p 30には、希土
類系酸化物超電導体において、YBa2Cu3O7-xの仮焼体粉
末と白金粉末とを1100℃まで加熱してY2BaCuO5の固
相と液相とが共存する半溶融状態にした後に徐冷すると
いう溶融法の一種の白金属添加法が発表されている。す
ると、結晶粒に未反応のY2BaCuO5の微粒子が分散し、そ
してこの微粒子がピン中心として作用することで酸化物
超電導体が磁場中でも高い臨界電流密度を示すことが報
告されている。同様に、出願人は、微量の白金若しくは
ロジウム又は何れかの化合物を添加してRE2BaCuO5(R
Eは、Y,Gd、Dy、Ho、Er及びYbを表す)の
微粒子をREBa2Cu3O7-xからなる結晶粒中に細かく分散す
ることでこれらの微粒子がピン中心と作用する希土類系
酸化物超電導体及びその製造方法を提案した(特願平2
ー412529)。なお、ピン中心として作用するもの
の体積率が一定ならピン中心はできるだけ微細かつ均一
に分散しているのが望ましい。
【0005】一方、マイスナー効果においては、外部磁
場を打ち消すように超電導体の表面に流れる超電導電流
の電流値が増大することが実用化にあたって必要であ
る。この超電導電流は超電導体の表面を環状に流れ、こ
の環の半径、ループ半径が大きい程、超電導電流密度は
増加する。ところが、酸化物超電導体はセラミックスで
あるので、一般には多数の結晶粒が粒界で遮られてい
る。すると、超電導電流が粒界や結晶粒内部のクラック
等に遮られると、結晶粒毎に別個に流れることになり、
ループ半径も結晶粒の大きさ以上には大きくなれない。
そこで、結晶粒の大きさを増大すること、あるいは酸化
物超電導体のより大きな単結晶を得ることがループ半径
を増大することにつながる。また、隣接する結晶粒の配
向がほぼ一致している場合には、超電導電流は粒界に遮
られることなく、粒界を乗り越えてより長いパスをとる
ことができるので、粒界の大きさにループ半径は限定さ
れなくなる。結晶粒の配向を揃えることは高い臨界電流
密度を得るには効果的である。希土類系酸化物超電導体
を構成する主成分のREBa2Cu3O7-x酸化物は、異方性のあ
るペロブスカイト型結晶構造をとるので、超電導特性に
も2次元性の異方性が表れる。即ち、臨界電流密度は、
結晶のab面で最も大きく、bc面又はca面の何れでもその
3分の1に過ぎない。従って、配向性が揃っている希土
類系超電導酸化物では、結晶のc軸が超電導体の印加磁
場と水平方向になるように用いるだけで、垂直方向で用
いるのに比べて3倍の超電導電流密度が得られることに
なる。これらのことから、結晶粒の大きさを増大するこ
と、より大きな単結晶を成長させること、及び結晶粒の
配向を揃えることは、超電導電流密度を向上し、そして
超電導特性を向上し、究極には、超電導酸化物の実現化
には、大変に重要となる。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】従来、溶融法で希土類系酸化物超電導体を
製造する際に、方向性を保って凝固させることによって
配向性が高く、大型の結晶粒を得る方法にはいわゆる温
度勾配法があった。温度勾配法では、均質な希土類系酸
化物超電導体を成形した後、加熱して溶融し、成形体に
一方向に温度勾配をつけてその温度勾配を保ったまま徐
冷する。すると、成形体は均質であると成形体内部のど
の部分でも凝固点は等しいので、温度勾配の中でも最も
温度が低い部分から結晶化が始まり、成形体が温度勾配
を保ったまま徐冷されるにつれてその結晶化が始まった
部分より、結晶粒が低温から高温にと温度勾配が設定さ
れている方向に成長していく。ここで、結晶粒の成長方
向が制御される機構は、徐冷中のいかなる温度において
も、一方向に温度勾配をつけることにより結晶成長が始
まった部分からの距離と相関をもって凝固点との温度差
が生じることであり、いわば結晶しやすさとでもいうも
のが特定方向に制御されていることである。
【0007】ところが、温度勾配法のように、徐冷の際
に成形体内部で凝固点との温度差をある特定方向に制御
することは、必ずしも成形体内部の温度分布を制御しな
ければならないということではない。逆に、徐冷時に成
形体の温度をどの部分でも等しく分布させ、成形体内部
の凝固点を特定方向に変化するように成形体の組成分布
を制御しても同じ目的は達成される。
【0008】そこで、他の希土類元素で置換した融点の
異なる希土類系超電導酸化物を融点に従って順次、層状
に積層した成形体を加熱し、半溶融状態にした後に徐冷
する溶融法の一種である凝固点分布法によっても、配向
性の高い希土類系酸化物超電導体を得ることが報告され
ている (M. Morita; S. Takebayashi; M. Tanaka; K.
Kimura; K. Miyamoto; K. Sawano in ”Advances in Su
perconductivity III;Proceedings of the 3rd Interna
tional Symposium on Superconductivity (ISS '90)"
K. Kajimura; H. Hayakawa (Eds.), Spring-Verlag: To
kyo;1991, p. 733-736)。例えば、HoBa2Cu3O7-x(m.p.
990℃)、YBa2Cu3O7-x(m.p. 1000℃)及びDyB
a2Cu3O7-x(m.p. 1010℃)の各々の希土類系酸化物
超電導体より各層がなり、これら三層が積層した成形体
から溶融法で結晶成長させ、配向性と結晶性の高い希土
類系酸化物超電導体が得られている。即ち、この場合で
は融点の最も高いDyBa2Cu3O7-xからなる層で結晶化が始
まり、次に、この層と接していて2番目に融点が高いYB
a2Cu3O7-xからなる層に結晶が成長していき、最後にこ
の層に接していて最も融点が低いYBa2Cu3O7-xからなる
層へと、順次結晶は成長していく。 同様に、組成式がY
yYb1-yBa2Cu3O7-xと表せ、yが0より1まで0.1刻み
となる、合計11種類の希土類系酸化物超電導体の各々
より各層がなり、これら融点が順次、単調減少する11
層で構成される積層体からも凝固点分布法でも、同様な
手法で配向性の高い結晶性の希土類系酸化物超電導体が
得られている。
【0009】また、配向性の高い希土類系酸化物超電導
体を所望の結晶方位で得る溶融法として、種結晶を用い
るいわゆる単結晶種付け法がある。単結晶種付け法で
は、他の希土類元素で置換した融点がより高い希土類系
超電導酸化物を種結晶として希土類系超電導酸化物の成
形体に接触配置した後に、種結晶及び均一な成形体を両
酸化物超電導体の融点の中間の温度にまで加熱し、融点
がより低い該成形体のみを半溶融状態にし、次いで徐冷
することで種結晶より結晶成長をさせることで、配向性
の高い結晶性の希土類系酸化物超電導体を得る(同
上)。この手法で、融点が1030℃であるGdBa2Cu3O
7-xを種結晶として用い、融点が1000℃であるYBa2C
u3O7-xからなる配向性の高い希土類系酸化物超電導体が
得られている。また、出願人は、種結晶としてSrTiO3
MgO、 LaAlO3、 LaGaO3、 NdGaO3、PrGaO3等の格子定
数がREBa2Cu3O7-xの格子定数と近似することを利用し、
これらの化合物を種結晶に用いる種付け法を提案した
(特願平4−35028)。これらの化合物の融点は1
500℃以上であり、希土類系酸化物超電導体の融点よ
り遥かに高い為、溶融処理の際の温度設定の自由度が大
きくなる。
【0010】ところが、これら三種類の配向性の高い希
土類系酸化物超電導体を得る溶融法の何れにも問題点が
残されている。まず、温度制御法では、特殊な加熱装置
が必要となる上、常に温度勾配を保ちつつ徐冷をするの
で、特殊かつ高度な温度制御も必要となるので、工業上
好ましくない。更に、温度制御の必要性より、製造しう
る希土類系酸化物超電導体の形状も単純なものに制限さ
れる。
【0011】また、希土類元素を置換する凝固点分布法
では、この元素置換により超電導酸化物の融点に差があ
ることを利用するので、使用できる希土類元素の組み合
わせに制限がある。また、成形体の製造にあたり、二種
の希土類元素の種々の組成割合の原料粉末を用意する必
要があり、工程が煩雑になる。更に、単結晶種付け法で
は、種結晶は結晶成長の開始点を与え、結晶成長の初期
の段階のみで結晶方位を制御するだけである。従って、
種結晶と接触している部位だけでなく、種結晶と接触し
ていない部位からもランダムに結晶が成長し易く、種結
晶と接触している部位のみから結晶を成長させ、大型の
酸化物超電導体を配向性を保ったまま得るのは困難であ
った。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、貴金属
又は貴金属化合物が制御された濃度分布をしていること
を特徴とする希土類系酸化物超電導体、が提供される。
また、本発明においては、貴金属が銀又は貴金属化合物
が酸化銀若しくは銀化合物であることが好ましい。更
に、本発明においては、REはY、Gd、Dy、Ho、E
r及びYbからなる群のなかの少なくとも一元素からな
り、xが0以上1以下のREBa2Cu3O7-xが主成分であるこ
とが好ましい。
【0013】また、本発明によれば、貴金属又は貴金属
化合物が制御された濃度分布をしている希土類系酸化物
超電導体の成形体を形成し、次いで成形体を加熱して半
溶融状態にした後に徐冷することを特徴とする希土類系
酸化物超電導体の製造方法、が提供される。
【0014】更に本発明によれば、貴金属又は貴金属化
合物を含有する希土類系酸化物超電導体の成形体に、こ
の成形体の希土類系酸化物超電導体より融点の高い希土
類系酸化物超電導体の単結晶を接触配置し、次いで成形
体を加熱して半溶融状態にした後に徐冷することを特徴
とする希土類系酸化物超電導体の製造方法、が提供され
る。また、本発明においては、成形体中で、貴金属又は
貴金属化合物が制御された濃度分布をしていることが好
ましい。
【0015】
【作用】本発明に係る凝固点分布法では、希土類系酸化
物超電導体及びこの電導体を製造する際の成形体は、貴
金属又は貴金属化合物が制御された濃度分布をしてい
る。貴金属又は貴金属化合物を含有すると希土類系超電
導酸化物の凝固点は低下し、また、この低下の度合い
は、含有量が限られている一定範囲内では一次近似で含
有量と正比例する。例えば、図1に示すように、銀の含
有量が5重量%以下の範囲ではYBa2Cu3O7-xの凝固点、
約1010℃は約980℃にまで銀の含有量にほぼ正比
例して降下し、銀の含有量が10重量%で凝固点が約9
70℃に降下し、凝固点降下がほぼ飽和する。本発明に
係る希土類系酸化物超電導体中に分布する貴金属又は貴
金属化合物の含有率はこのような凝固点効果が飽和する
までの含有率が好ましい。
【0016】そこで、本発明に係る凝固点分布法はこの
性質を利用し、貴金属又は貴金属化合物の濃度を調整し
て希土類系超電導酸化物の成形体中に分布させること
で、成形体中の凝固点分布を制御する。そして、このよ
うな凝固点分布が制御された希土類系酸化物超電導体の
成形体を加熱し、半溶融状態にした後に徐冷する凝固点
分布法により、凝固点の最も高い部分に結晶化が開始
し、より凝固点の低い方向へ結晶が成長するように制御
するので、配向性の高い希土類系酸化物超電導体が得ら
れる。
【0017】一方、本発明に係る単結晶種付け法は、貴
金属又は貴金属化合物を含有すると希土類系超電導酸化
物の凝固点は低下するという性質を利用する、配向性の
高い希土類系酸化物超電導体の製造方法である。この本
発明に係る製造方法では、貴金属又は貴金属化合物を含
有する希土類系酸化物超電導体の成形体に、この成形体
の希土類系酸化物超電導体より融点の高い希土類系酸化
物超電導体の単結晶を種結晶として接触配置し、次いで
種結晶の融点と成形体の融点の中間の温度にまで加熱
し、融点がより低い成形体のみを半溶融状態にし、次い
で徐冷することで種結晶より結晶成長をさせることで、
配向性が高く結晶方位の制御された希土類系酸化物超電
導体を得ることができる。
【0018】この本発明に係る単結晶種付け法でも、貴
金属又は貴金属化合物を含有すると希土類系超電導酸化
物の凝固点は低下するという性質を利用しており、種結
晶には貴金属又は貴金属化合物を含有しない成形体と同
種の希土類系酸化物超電導体を好適に用いることができ
るが、これらには限られない。成形体中での貴金属又は
貴金属化合物が最小の濃度より、種結晶の希土類系酸化
物超電導体中の貴金属又は貴金属化合物の濃度が小さけ
ればよい。また、成形体の希土類系酸化物超電導体とは
異なる種類の希土類系酸化物超電導体も融点がより高け
れば、好適に用いることができる。
【0019】そこで、種結晶の融点と成形体の融点の中
間の温度にまで加熱すると、種結晶を半溶融状態にする
ことなく、融点がより低い成形体のみを半溶融状態にす
ることができる。次いで徐冷することで種結晶より結晶
成長をさせることで、配向性の高い結晶方位の制御され
た希土類系酸化物超電導体を得ることができる。
【0020】本発明に係る単結晶種付け法では、貴金属
又は貴金属化合物を含有する希土類系酸化物超電導体の
成形体は均一な組成を有していてもよい。しかし、成形
体中に貴金属又は貴金属化合物が制御された濃度分布を
していると、配向性の高い結晶方位の制御された希土類
系酸化物超電導体を得るのが更に容易になるので好まし
い。また、貴金属又は貴金属化合物が制御された濃度分
布をしている希土類系酸化物超電導体の成形体が用いら
れる場合は、成形体中で最も高い融点よりも、更に融点
が高い希土類系酸化物超電導体の単結晶が種結晶として
用いられる。
【0021】本発明に係るこれら両溶融法により、貴金
属化合物を含有する希土類系酸化物超電導体が得られる
が、上記のような溶融過程で貴金属化合物は粒子となっ
て、希土類系酸化物超電導体の結晶粒に分散している。
このような貴金属又は貴金属化合物の結晶粒中での分散
は、クラック等の成長防止に効果的であり、特に粒径の
小さなものが多数あることは特に効果的である。これら
の粒子は長いクラックが成長する前に多数の短く細かい
クラックとする作用があると思われ、また、粒子が分散
している部分の局所的な機械強度は高くなるようであ
る。これらの協調効果のため、超電導電流がクラックに
よって分断されずに流れることができ、磁場下でも優れ
た超電導特性を得ることができるので、好ましい。
【0022】以下、本発明について更に詳しく説明す
る。本発明に係る希土類系酸化物超電導体は、組成式で
REBa2Cu3O7-xと表せ、REは希土類元素でY、Gd、D
y、Ho、Er及びYbからなる群のなかの少なくとも
一元素からなる。ここで、xはこれらの化合物が非化学
量論的なので0以上1以下という不定比を示し、この値
が超電導特性の発現に直接影響を与える。また、これら
化合物の結晶構造は共通の特徴があり、多層ペロブスカ
イト構造を有する。本発明に係る希土類系酸化物超電導
体の主成分の具体例としては、YBa2Cu3O7-xが挙げられ
る。REと表す希土類元素は、必ずしも一元素のみに限ら
れるわけではなく、Y、Gd、Dy、Ho、Er及びY
bからなる群より任意の二以上の元素を混在させてもよ
く、希土類系酸化物超電導体の好ましい融点を選択する
自由度が増加する。このような例としては、REがYyYb
1-y(yは0以上1以下の実数)と表せる場合等があ
る。
【0023】本発明に係る希土類系酸化物超電導体の主
成分であるREBa2Cu3O7-xの原料粉末は、RE即ちY、G
d、Dy、Ho、Er若しくはYbの酸化物、Baの炭
酸塩、酸化物若しくは過酸化物、及びCuの酸化物、又
はこれら何れかの化合物を混合した混合粉末、仮焼粉
末、若しくはフリット粉末等を、焼成後REBa2Cu3O7-x
RE2BaCuO5を構成するように配合されたものであればよ
く、特に限定されるものでない。また、原料粉末の粒径
も特に制限されるものでないが、一般的には、1〜10
μmの粒径のものが用いられる。
【0024】貴金属とは、銀、金、及び白金属に属する
金属をいうが、必ずしも一の金属のみを用いることに限
られるわけではなく、二以上の金属を混在させてもよ
い。貴金属化合物とはこれらの貴金属の化合物をいう。
同様に、貴金属若しくは金属酸化物又はその他の貴金属
化合物を何れかから2種以上を同時に用いることを妨げ
るわけではない。本発明では、成形体に添加する貴金属
又は貴金属化合物は、希土類系超電導酸化物からなる成
形体の凝固点を降下するのが主目的であるので、どのよ
うな貴金属又は貴金属化合物を添加するかは制限される
ものではない。なお、コスト等を考慮すると、銀又は酸
化銀を添加することは特に好ましい。また、ロジウム若
しくは白金又はこれらの酸化物も好ましい。なお、本明
細書で貴金属化合物を貴金属を含めた貴金属を組成式に
含む化合物の総称として用いる場合もある。
【0025】同様に、本発明に係る希土類系酸化物超電
導体に含有する貴金属又は貴金属化合物は、成形体に添
加する貴金属又は貴金属化合物と必ずしも同じであると
は限られず、添加した貴金属化合物が超電導体作製中に
何等かの化合物と化学反応して他の化合物に変化してい
る可能性は無いとはいえない。しかし、貴金属は反応性
が低いことで知られているので、貴金属を添加する場合
は、貴金属が何らかの反応に関与する蓋然性は小さいと
いえる。貴金属又は貴金属化合物を加熱時に生成する適
当な貴金属化合物を上記原料粉末に添加混合してもよい
し、又は希土類系酸化物超電導体の仮焼粉末に添加して
もよい。貴金属又は貴金属化合物は、粉末とするのが好
ましく、通常は、粒径が約20μm以下の微粉末のもの
が好ましい。粒径が約20μmを超える場合は、凝集物
として残留するため、均質性を低下させるためである。
均質性の低下は、超電導特性のバラツキ原因となるため
好ましくない。
【0026】本発明においては、白金族金属のロジウム
若しくは白金又はこれらの化合物をREBa2Cu3O7-xを主成
分とする希土類系酸化物超電導体中に金属を基準として
0.01〜5重量%含有すると、RE2BaCuO5からなる粒
子が結晶粒中に細かく均一に分散する効果があり、する
とこれらの微粒子はピン中心として作用するので好まし
い。そこで、ロジウム若しくは白金又はこれらの化合物
は、希土類系酸化物超電導体に均一に分散させ、他の貴
金属又は貴金属化合物の濃度分布を制御してもよいし、
またはロジウム若しくは白金又はこれらの化合物自体の
濃度分布を制御してもよい。
【0027】この場合、REBa2Cu3O7-xを主成分とする組
成式で表せる希土類系酸化物超電導体中の上記金属成分
の含有量が、金属基準で0.01重量%未満の場合は粒
子分散効果が無く、また、5重量%を超える場合は異相
の析出量が多くなり好ましくない。また、希土類系酸化
物超電導体原料粉末に添加するロジウム若しくは白金又
はこれらの化合物は、粉末状とするのが好ましく、通常
は、粒径が約5μm以下の微粉末のものが好ましい。粒
径が約5μmを超える場合は、凝集物として残留するた
め、均質性を低下させるためである。均質性の低下は、
超電導特性のバラツキ原因となるため好ましくない。
【0028】本発明に係る希土類系酸化物超電導体の仮
焼体粉末若しくは希土類系酸化物超電導体の出発原料粉
末、何種類かの所定量の貴金属の粉末若しくは貴金属化
合物粉末、及びその他所望される成分とを均一に分布さ
れるように充分に混合し、貴金属又は貴金属化合物の濃
度が異なる何種類かの混合粉末を得る。
【0029】そして、これらの貴金属又は貴金属化合物
の濃度が異なる混合粉末を用いて、貴金属若しくは貴金
属酸化物又は貴金属化合物が所望の濃度分布となり、所
定の形状となるように、プレス成形、射出成形、鋳込成
形、等方加圧成形等公知の成形方法を用いて成形体を得
る。この場合、何れの成形方法であっても、貴金属若し
くは貴金属化合物の濃度が異なるが、各々の組成は均一
な複数の成形体を所望の形状で成形した後、これら複数
の成形体を所望に配置して、次の真空溶融若しくは半熔
融状態にする加熱を行ってもよいし、又はこれらの成形
体を所望の配置で組み合わせた後、等方加圧成形等で接
合・一体化してから次の真空溶融若しくは半熔融状態に
する加熱を行ってもよい。
【0030】接合・一体化する方法としては、プレス成
形等を用い、混合粉末を金型に投入しプレスをした後、
最初に成形した成形体をプレスから取り出さずに次の混
合粉末を投入してプレス成形を行い積層体を成形し、以
下同様にして積層成形体を取り出すことなく混合粉末を
投入してプレス成形をするという過程を繰り返し、積層
体を成形するものがある。
【0031】このようにして得られる貴金属又は貴金属
化合物が所望の濃度分布となる成形体の形状又は複数の
成形体を組み合わせた形状は任意であり、必要に応じて
円柱、多角柱、平行六面体、直方体、円錐、多角錐、回
転楕円体、球等の形状を含有するだけではなく、これら
の形状を任意の方向に塑性変形して得られる形状、ある
いはこれらの形状を任意の方向に平面もしくは曲面で切
断して得られる形状も含有し、更に、前記の何れかの形
状に1以上の穴を開けた形状、例えば、円筒、ドーナツ
形状も含有する。
【0032】多数の穴がありアンダーカットの生じるよ
うな複雑な形状を有する成形体を均一な酸化物から形成
し、これを半溶融状態にしてからこのような複雑な形状
の温度分布を制御することは工業上、極めて困難である
が、本発明に係る両溶融法では、貴金属又は貴金属化合
物の濃度が一定の一の部分を一の成形体で構成し、全体
の複雑な形状を複数の成形体より形成することもできる
ので、このような形状であっても各部分の貴金属又は貴
金属化合物の濃度を制御することで結晶の配向性を揃え
ることが可能であり、既存技術よりこのような点でも優
れている。
【0033】本発明に係る凝固点分布法において、希土
類系酸化物超電導体の成形体の貴金属又は貴金属化合物
の濃度分布は、希土類系酸化物超電導体の結晶成長時
に、複数の結晶が生成することなく、ただ1つの結晶が
成長して全体が1結晶となるように、適宜調節するのが
好ましい。一般には、凝固温度の最も高い領域をできる
だけ狭くすることが好ましい。凝固点より温度が低くな
った部位では、どこでも結晶成長の開始点となりうる。
従って、このような領域が広すぎると、複数の配向の異
なる結晶が生成する確率が高くなり、配向性の揃った酸
化物超電導体が得られ難くなる。種結晶を用いないとき
は、凝固点の最も高い領域の大きさが直径約10mm.以
下であることが好ましい。また、本発明に係る凝固点分
布法においても、単結晶種付け法を併用することは、配
向性の高い大型の酸化物超電導体を所望の結晶方位で得
ることができるので好ましい。このように種結晶を用い
るときは、凝固点の最も高い領域の大きさが種結晶の接
触面の周囲から半径約10mm.以下であることが好まし
い。
【0034】また、本発明に係る凝固点分布法は、凝固
点が好ましく制御された分布をするように貴金属又は貴
金属化合物の濃度分布を制御するので、必ずしも、添加
する化合物は一種類に限られはせず、複数の化合物を添
加しそれらの濃度分布をそれぞれ制御することで成形体
の凝固点分布を制御することも可能である。また、複数
の化合物を添加することは制御しうる物性の自由度も高
まり、好ましい。
【0035】本発明に係る希土類系酸化物超電導体の成
形体の貴金属又は貴金属化合物の濃度分布の具体例は、
図2にあげられているが、これらの成形体は複数の成形
体を所望の配置にするだけで必ずしも一体化しなくても
よいし、等方加圧成形等により接合・一体化してもよ
い。何れの場合にしろ、本発明の濃度分布はこれらの具
体例に限られるわけではない。
【0036】図2a−hは凝固点分布法に用いられる成
形体の貴金属化合物の濃度分布を例示している。図2a
−dは、単結晶種付け法にも用いられる貴金属(図2b
及びc)及び貴金属酸化物(図2a及びd)の成形体内
部の濃度分布の例である。図2b及びdでは、貴金属化
合物が制御された濃度分布をしている希土類系酸化物超
電導体の成形体中で最も高い融点よりも、更に融点が高
い希土類系酸化物超電導体の単結晶が種結晶として成形
体の上面に接触配置していることが特徴である。また、
図2a及びcには種結晶として酸化マグネシウム等の単
結晶薄板の(100)面を成形体に接触させることで希
土類系酸化物超電導体の結晶成長の開始点を提供し、結
晶方位を制御する例を示している。
【0037】図2a、c、d、e及びfでは円柱又は多
角柱の軸と交わる水平方向に貴金属又は貴金属化合物の
濃度が同一の層が分布し、軸方向に貴金属又は貴金属化
合物の濃度が同一な層が積層し、これらの濃度が単調に
増加又は減少している。
【0038】一方、図2g及びhでは、柱の軸方向に貴
金属又は貴金属化合物の濃度が同一の層が分布し、軸と
垂直な方向に貴金属又は貴金属化合物の濃度が同一な層
が配置されている。また図2gでは軸と垂直な方向に貴
金属又は貴金属化合物が単調に増加又は減少している
が、図2hでは同軸円筒状に貴金属又は貴金属化合物が
分布している。即ち、図2hでは軸部分が貴金属又は貴
金属化合物の濃度が最も低く、そこから周辺部に従い単
調に濃度が増加する。
【0039】次いで、貴金属又は貴金属化合物の濃度分
布が制御された希土類系酸化物超電導体の成形体を真空
溶融した後、大気中で冷却する真空溶融処理をするのも
好ましい。この場合、真空溶融及び後の冷却で積層体が
大きく収縮し変形する。例えば、成形体が図3aのよう
な円柱体の場合、真空溶融そして冷却後には、円柱体の
上面の中心部が陥没し、また側面中央部も少し歪んだ鼓
状に変形する(図3b)。そこから面だしをすると、貴
金属又は貴金属化合物の濃度分布は図3cのようにな
る。このような濃度分布では、上下方向のみでなく、水
平方向にも結晶成長方向を制御することができる。
【0040】一方、本発明に係る単結晶種付け法では、
貴金属又は貴金属化合物を含有して凝固点が低下した希
土類系酸化物超電導体の成形体より融点が高い希土類系
酸化物超電導体の単結晶小片をこの成形体の上面中心部
に置いてから好ましい公知方法で種結晶の融点と成形体
の融点の中間の温度にまで加熱し、種結晶を半溶融状態
にすることなく、成形体のみを半溶融状態にする。な
お、希土類系酸化物超電導体の成形体に貴金属又は貴金
属化合物が制御された濃度分布をしていて成形体中の融
点が一定でない場合は、種結晶として用いられる単結晶
の希土類系酸化物超電導体の融点が成形体中で最も高い
融点よりも更に高い必要がある。この場合、種結晶を配
置する部位は、成形体中の最も凝固点の高い領域の中心
部とする。
【0041】種結晶として、SrTiO3、 MgO、 LaAlO3
LaGaO3、 NdGaO3、 PrGaO3等の酸化物単結晶を用いるこ
ともできる。この方法では、これらの酸化物単結晶の
(100)研摩面を成形体に接触配置し、加熱して成形
体を半溶融状態とした後、成形体の凝固点以下に徐冷し
結晶成長させる。酸化物単結晶の(100)面が希土類
系酸化物超電導体のab面と格子定数が近似することか
ら、この方法によって、酸化物単結晶の(100)面上
に希土類系酸化物超電導体のab面を選択的に結晶成長さ
せることができる。また、これらの酸化物単結晶の融点
が1500℃以上であり、希土類系酸化物超電導体の融
点より遥かに高い為、種結晶を配置することによって半
溶融温度に制限を生じることはない。なお、この場合、
接触面において成形体よりも面積の大きい酸化物単結晶
を種結晶に用いることが望ましい。これは、希土類系酸
化物超電導体が正方晶系であるのに対して、これらの酸
化物単結晶は立方晶系であり、酸化物単結晶の(10
0)(010)(001)面が同等であるため、接触面
において成形体よりも面積の小さい酸化物単結晶を種結
晶に用いると、酸化物単結晶の(100)(010)
(001)面それぞれに希土類系酸化物超電導体のab面
が形成され、異なる配向の結晶が複数成長してしまい、
結果として配向の揃った超電導酸化物が得られないから
である。
【0042】本発明に係る溶融法で半溶融状態にする温
度は、成形体の主成分が固相のRE2BaCuO5と液相とに分
解溶融する温度と固相のRE2O3と液相とに再分解する温
度との間に設定する。Y、Gd、Dy、Ho、Er、Y
bの何れかの希土類元素により又は貴金属化合物の種類
若しくは添加量により設定する温度は異なり、成形体の
大きさ、種結晶の有無及びその種類、加熱条件等に考慮
を払い、適宜選択すればよい。具体的には、希土類元素
が、Yであれば約990〜1150℃、Gdであれば約
1020〜1180℃、Dyであれば約1000〜11
60℃、Hoであれば約980〜1140℃、Erであ
れば約960〜1120℃、Ybであれば約890〜1
150℃の範囲で適宜選択すればよい。また、この半溶
融状態とする加熱処理はこうして定められた温度に所定
時間保持することにより行う。保持時間は特に制限され
るものでなく、上記の温度範囲と同様に加熱条件等によ
り適宜選択することができ、通常は、20分〜2時間で
ある。
【0043】このように半溶融状態とした後は、通常の
溶融法と同様に徐冷する。この場合、徐冷の開始温度
は、成形体の凝固点より約5℃高い温度とし、徐冷の終
了温度は、成形体の凝固点より約30℃低い温度とす
る。徐冷速度は、1時間あたり0.1〜1℃とするのが
好ましい。成形体中の凝固点が一様でない場合には、徐
冷の開始温度は成形体中の最も高い凝固点よりも5℃程
度高い温度、終了温度は成形体中の最も低い凝固点より
15℃程度低い温度とし、徐冷速度は1時間あたり0.
2〜2℃とするのが好ましい。また、成形体よりも融点
の高い希土類系超電導酸化物超電導体の単結晶を種結晶
として成形体に接触配置した場合は、成形体の種結晶と
接触している部位の周辺では種結晶よりの拡散のため凝
固点が高くなるので、溶融温度から徐冷を開始すると、
より好ましい。例えば銀を0〜10重量%含有するYBa2
Cu3O7-xでは、1015℃から940℃まで1時間あた
り1℃で徐冷するのが好ましい。
【0044】本発明に係る凝固点分布法では、次いで半
溶融状態の希土類系酸化物超電導体を徐冷することで、
凝固点が最も高い部分に結晶化が開始し、より凝固点の
低い方向へ結晶が成長し、配向性の高い希土類系酸化物
超電導体が得られる。また、このように結晶成長が起こ
るように希土類系酸化物超電導体の成形体の凝固点分布
を制御する。
【0045】一方、本発明に係る単結晶種付け法では、
成形体に接触配置する単結晶よりも融点が低い成形体の
み半溶融状態にして、次いで徐冷することで、成形体と
結晶の格子定数が類似する種結晶より結晶成長をさせる
ことで、配向性が高い希土類系酸化物超電導体を所望の
結晶方位で得ることができる。また、単結晶種付け法で
は、貴金属又は貴金属化合物を含有する希土類系酸化物
超電導体の成形体は均一な組成を有していてもよいが、
成形体中に貴金属又は貴金属化合物が制御された濃度分
布をしていると、特に大型の成形体において配向性の高
い結晶性の希土類系酸化物超電導体を所望の結晶方位で
得るのが容易になるので好ましい。
【0046】次いで、公知の溶融法と同様に、酸素雰囲
気中、所定温度で保持して熱処理することにより、酸化
物超電導体中の主成分であるREBa2Cu3O7-xに酸素を吸収
させ、酸素の組成比xを0.2以下の正の実数に調節
し、酸化物超電導特性を発現させることができる。通常
600℃で5〜10時間、500℃で10〜20時間、
400℃で20〜50時間、それぞれ保持するのが好ま
しい。
【0047】従って、本発明に係る凝固点分布法では、
貴金属又は貴金属化合物が制御された濃度分布をしてい
る希土類系酸化物超電導体の成形体を形成することで成
形体中の凝固点分布を制御し、次いでこのような成形体
を加熱し、半溶融状態にした後に徐冷することで、凝固
点の最も高い部分に結晶化が開始しより凝固点の低い方
向へ結晶が成長するので、配向性の高い希土類系酸化物
超電導体を得ることができる。ここで、成形体の凝固点
分布を制御するにあたって、貴金属又は貴金属酸化物を
含有すると希土類系超電導酸化物の凝固点は低下すると
いう性質を利用し、凝固点の最も高い部分に結晶化が開
始し、より凝固点の低い方向へ結晶が成長し易いよう
に、成形体の凝固点分布を制御する。
【0048】また、本発明に係る単結晶種付け法では、
貴金属又は貴金属化合物を含有する希土類系酸化物超電
導体の成形体に、この成形体の希土類系酸化物超電導体
より融点の高い希土類系酸化物超電導体の単結晶を種結
晶として接触配置し、次いで種結晶の融点と成形体の融
点の中間の温度にまで加熱し、融点がより低い成形体の
みを半溶融状態にし、次いで徐冷することで種結晶より
結晶成長をさせることで、配向性の高い希土類系酸化物
超電導体を所望の結晶方位で得ることができる。この単
結晶種付け法では、貴金属又は貴金属酸化物を含有して
凝固点が低下した希土類系酸化物超電導体を成形体に用
い、この希土類系酸化物超電導体より融点が高い希土類
系酸化物超電導体の単結晶を種結晶として用いることが
特徴である。
【0049】なお、単結晶種付け法では、貴金属又は貴
金属化合物を含有する希土類系酸化物超電導体の成形体
は均一な組成を有していてもよいが、成形体中に貴金属
又は貴金属化合物が制御された濃度分布をしていると、
特に大型の成形体において、配向性の高い希土類系酸化
物超電導体を得るのが更に容易になるので好ましい。
【0050】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明す
る。但し、本発明は下記実施例により制限されるもので
ない。
【0051】(実施例1)Y2O3、BaO2、CuOの各々の粉
末を、これら化合物のモル比が0.9:2.4:3.4
となるように添加し、ここに更に白金粉末を0.5重量
%添加した。次いで、これを乾式ポットミルで6時間混
合した後、酸素と窒素との体積比が1:4となる気流中
にある銀板上にこの混合粉末を敷き広げて、700℃で
10時間仮焼した。次いで、この仮焼体をジルコニア玉
石を用いた回転ミルで15時間粉砕して、平均粒径は約
3μmであるYBa2Cu3O7-xの仮焼粉末を得た。
【0052】こうして得られたYBa2Cu3O7-xの仮焼粉末
に、重量比で1%から1%刻みで9%まで含まれるよう
に平均粒径約2μmの酸化銀粉末を添加、混合すること
で、酸化銀の濃度のみが異なる9種類の混合物を得た。
酸化銀粉末を添加しないYBa2Cu3O7-xの仮焼粉末も便宜
上ここでは混合物といい、合計10種類の酸化銀の濃度
が異なる混合物を得た。次いで、この各々の混合物を乾
式ポットミルで64時間混合して、酸化銀の濃度が異な
る10種類の平均粒径は約3μmの混合粉末を得た。こ
のようなBaCuO2を用いない原料混合粉末の合成方法を単
に合成方法1という。
【0053】こうして得られた酸化銀を含有しない混合
粉末15gを内径50mm.の円筒状金型に投入し、荷重
2トンでプレス成形をすることで、厚さ約2.7mm.
で、直径50mmの円盤状の成形体に成形した。次いで、
成形体を円筒状金型から取り出さずに、成形体上に酸化
銀を重量比で1%含有する混合粉末15gを投入して同
様にプレス成形をし、水平方向に二層からなる円盤状の
積層体を成形した。以下同様にして積層成形体を取り出
さずに、酸化銀の濃度が重量比で1%ずつ増加するよう
に混合粉末15gを投入してプレス成形をするという過
程を繰り返し、酸化銀濃度が0%の層から9%までの層
が水平方向に順次積層する10層からなる、円柱形状の
積層体を成形した(図2a参照)。このようにして得ら
れた円柱形状の積層体に室温で0.5トン/cm2で等方加
圧成形を行い、直径46mm.で高さ25mm.の円柱形状の
積層成形体を得た。
【0054】研磨された(100)面があり、厚さが
0.5mm.で一辺が50mm.の正方形形状を有するMgO
単結晶板上に、このようにして得られた円柱形状の積層
成形体を積層成形体の酸化銀を含有しない層を底にし
て、図2aのように置いた。次いで、大気雰囲気の電気
炉内で、MgO単結晶板上の積層成形体を1100℃で
1時間保持して溶融した後、1100℃から1015℃
まで1時間あたり100℃で冷却した。次いで、101
5℃から950℃まで1時間あたり0.1〜1.0℃で
徐冷し、希土類系酸化物超電導体を単結晶板上に保持し
たまま結晶成長させた。その後、更に、炉内雰囲気を酸
素雰囲気に変えて、650℃〜400℃で50時間熱処
理して直径約40mm.で高さ約15mm.である円柱形状の
いわゆる疑似単結晶と呼ばれる希土類系酸化物超電導体
を得た。
【0055】このようにして得られた円柱形状の希土類
系酸化物超電導体の全表面を目視で観察したところ、粒
界もクラックも見られなかった。
【0056】直径約40mm.で高さ約15mm.である円柱
形状の希土類系酸化物超電導体を試料として、永久磁石
との反発力の測定を行った。まず、直径20mm.高さ1
0mm.の円柱形状を有し、表面磁束密度が3500Gで
あるSm−Co永久磁石を円形である一面を下面として
設置した。そして、希土類系酸化物超電導体試料を液体
窒素に浸して超電導特性を発現させた。その直後にこの
円柱形状の試料の円形である一面を永久磁石の円形であ
る上面に押さえつけ、この両面の間隙が0.1mm.のと
きの反発力をロードセルで測定した。5個の試料を測定
した平均値は、10.5kgであった。これを浮上力測
定という。
【0057】また、希土類系酸化物超電導体を任意の方
向に切断し、その断面を倍率50倍の偏向顕微鏡で観察
した。すると、粒界、クラックはこれらの断面で観察さ
れなかった。
【0058】ついで、希土類系酸化物超電導体より箔片
を切りとり、X線回折装置で結晶方位を測定した。する
と、結晶粒のc軸は円柱の軸方向に平行に配向してい
た。よって、任意に選んだ断面又は箔片で粒界、クラッ
クが観察されず、結晶方位も揃っているので、希土類系
酸化物超電導体は単結晶であると思われる。これらの実
験条件及び実験結果を表1にまとめる。
【0059】(実施例2)粒径約3μmのBaCO3粉末と
これと等モルのCuO粉末に0.54重量%の白金粉末を
添加する。次いで、湿式ポットミルでこれらの粉末を3
時間混合した後、酸素気流中にある高純度アルミナ板上
にこの混合粉末を敷き広げて、1000℃で10時間仮
焼し、BaCuO2の仮焼体を得た。次いで、この仮焼体をジ
ルコニア玉石を用いた回転ミルで15時間粉砕して、平
均粒径は約5μmであるBaCuO2の仮焼粉末を得
た。
【0060】Y2O3、BaCuO2、CuOの各々の粉末を、これ
ら化合物のモル比が0.9:2.4:1.0となるよう
に添加混合した。ここに更に重量比で3%から1%刻み
で8%含まれるように平均粒径約1μmの銀粉末を添加
することで、銀の含有率のみが異なる6種類の混合物を
得た。次いで、この混合物を乾式ポットミルで64時間
混合し、銀の含有率が異なる6種類の混合粉末を得た。
このようなBaCuO2を経由する原料粉末合成方法を原料合
成方法2という。
【0061】この各々の仮焼粉末15gを個別に内径5
0mm.の円筒状金型に投入し、荷重2トンでプレス成形
をして、銀濃度が異なる6種類の円盤状体を成形した。
このようにして得られた6種類の円盤状体の各々に室温
で0.5トン/cm2で等方加圧成形を行い、銀の含有率が
異なる6種類の直径46mm.高さ2.5mm.の円盤状成形
体を得た。図3aに示すように、高純度アルミナ板上に
銀含有率が8重量%の円盤状成形体を一番下にし、その
上に銀の含有率が順次少なくなるように6種類の円盤状
成形体を積層した。
【0062】次いで、真空中の電気炉内で、アルミナ板
上の積層成形体を1010℃まで加熱して溶融させ、大
気雰囲気に切り変えてから更に1100℃に1時間保持
して溶融した後、大気中で室温まで冷却した。なお、こ
れを真空溶融処理という。この真空溶融処理後は、図3
bに示すように、銀含有率の異なる6種類の成形体は溶
融して一体化すると同時に、円柱体の上面の中心部が陥
没し、また側面中央部も少し歪んだ鼓状に変形した。
【0063】この陥没した円柱体上面及び側面を研磨
し、変形のない円柱体にした。試料の断面をEPMA観察す
ると、図3cに示すように、研磨後の上面は同心円状の
銀濃度分布となり、中心部で銀濃度が低く、周囲にいく
につれて銀濃度が高くなっていた。
【0064】高純度アルミナ板上に、銀を8重量%含有
する面を底にしてこの研磨した円柱体を置いた。銀無添
加のYBa2Cu3O7-xの約4mm.x5mm.の単結晶をab面で劈
開して、この劈開面を円柱体の上面の中央部に置いた
(図2b)。次いで、大気雰囲気中の電気炉内で、アル
ミナ板上の円柱体を1000℃で1時間保持して溶融し
た後、そのまま大気雰囲気中で1000℃から950℃
まで1時間あたり1.0℃で徐冷し、希土類系酸化物超
電導体をアルミナ板上に保持したまま結晶成長させた。
その後、更に、炉内雰囲気を酸素雰囲気として650℃
〜400℃で50時間熱処理して円柱形状の希土類系酸
化物超電導体を得た。
【0065】このようにして得られた円柱形状の希土類
系酸化物超電導体の全表面を目視で観察したところ、粒
界もクラックも見られなかった。
【0066】直径約40mm.で高さ約15mm.である円柱
形状の希土類系酸化物超電導体を試料として、永久磁石
との反発力の測定を実施例1と同様に行った。5個の試
料を測定した平均値は、11.2kgであった。
【0067】また、希土類系酸化物超電導体を任意の方
向に切断し、その断面を倍率50倍の偏向顕微鏡で観察
した。すると、粒界、クラックはこれらの断面で観察さ
れなかった。
【0068】ついで、希土類系酸化物超電導体より箔片
を切りとり、X線回折装置で結晶方位の測定をした。す
ると、結晶粒のc軸は円柱の軸方向に平行に配向してい
た。よって、任意に選んだ断面又は箔片で粒界、クラッ
クが観察されず、結晶方位も揃っているので、希土類系
酸化物超電導体は単結晶であると思われる。これらの実
験条件及び実験結果を表1にまとめる。
【0069】(実施例3、5−8)実施例3、5−8で
は、実施例1と2と同一な形状である、直径40mm.、
高さ15mmの円柱形状のYBa2Cu3O7-x酸化物超電導体を
凝固点分布法で作製した。また、実施例3、6、及び8
では銀の濃度分布を制御したが、実施例5及び7では酸
化銀の濃度分布を制御した。
【0070】実施例3、5、及び6では、図2c、e及
びfに示すように、円柱の軸方向と交わる水平方向に銀
又は酸化銀の濃度が同一の層が分布し、円柱の軸方向に
濃度が単調に増加又は減少している。実施例3では銀濃
度が0重量%から9重量%までの10層に水平に分布す
る成形体を作製し(図2c)、凝固点分布法で、成形体
の上部に酸化マグネシウムの単結晶箔片の(100)面
を成形体に接触させることで希土類系酸化物超電導体の
結晶成長開始点を提供し、結晶方位を制御する例を示し
ている。実施例5では酸化銀濃度が0重量%から6重量
%までの7層に水平に分布する成形体を(図2e)、実
施例6では銀濃度が5重量%から10重量%までの6層
に水平に分布する成形体を作製した(図2f)。
【0071】実施例7(図2g)と実施例8(図2h)
とでは、円柱の軸方向に酸化銀又は銀の濃度が同一の層
が分布し、軸方向と交わる方向に酸化銀又は銀の濃度が
変化させた。また実施例7では軸方向と垂直に酸化銀濃
度が5重量%から10重量%に単調に増加させた(図2
g)。実施例8では同軸円筒状に銀濃度が分布してい
て、軸部分で銀濃度が4重量%であり、同軸円筒状に周
辺部つまり外側に1重量%刻みに7重量%にと単調増加
するように分布させた。これらの実験条件及び実験結果
を表1にまとめる。
【0072】(実施例4)実施例4では、実施例1−3
及び5−8と同一な形状である、直径40mm.、高さ1
5mmの円柱形状のYBa2Cu3O7-x酸化物超電導体を単結晶
種付け法で作製した。第2原料合成方法を用い、真空溶
融過程をせずに、図2dに示すように、酸化銀濃度が0
重量%から9重量%まで1%刻みで10層に水平に分布
する成形体を作製した。なお、この成形体中の濃度分布
は凝固点分布法を用いる実施例3の銀の濃度分布と近似
している。これらの実験条件及び実験結果を表1にまと
める。
【0073】(実施例9)実施例1−8では同一のサイ
ズの円柱形状である希土類系酸化物超電導体を作製した
が、実施例9では直径100mm.、高さ20mmと大型化
した円柱形状のYBa2Cu3O7-x酸化物超電導体を作製し
た。実施例9では、実施例2での第2原料合成方法では
なく第1原料合成方法で原料粉末を処理した以外は、実
施例2と同様の製造条件で、単結晶種付け法で銀が3重
量%から8重量%まで分布するYBa2Cu3O7-x酸化物超電
導体を製造した。これらの実験条件及び実験結果を表1
にまとめる。
【0074】(比較例1)Y2O3、BaO2、CuOの各々の粉
末を、これら化合物のモル比が0.9:2.4:3.4
となるように添加し、ここに更に白金粉末を0.5重量
%添加し、混合粉末を得た。Y23を5モル%から5モ
ル%刻みで50モル%までYb23で置換すること以外
は同様にして、更に10種類のYのYbへの置換率が異
なる混合粉末を得た。このようにして得られた合計11
種類の混合粉末の各々を乾式ポットミルで6時間混合し
た後、酸素と窒素との体積比が1:4となる気流中にあ
る銀板上にこの混合粉末を敷き広げて、700℃で10
時間仮焼し、Y1-aYbaBa2Cu3O7-x(a=b/20;bは
0以上10以下の整数)の仮焼体を得た。次いで、この
各々の仮焼体を乾式ポットミルで64時間粉砕して、平
均粒径は約3μmであるYのYbへの置換率が異なる1
1種類のY1-aYbaBa2Cu3O7-x(a=b/20;bは0以
上10以下の整数)の仮焼粉末を得た。なお、この仮焼
粉末には銀も酸化銀も添加されていない。
【0075】この各々の仮焼粉末15gを個別に内径5
0mm.の円筒状金型に投入し、荷重2トンでプレス成形
をして、YのYbへの置換率が異なる11種類の円盤状
体を成形した。このようにして得られた11種類の円盤
状体の各々に室温で0.5トン/cm2で等方加圧成形を行
い、YのYbへの置換率が異なる11種類の直径46m
m.高さ2.5mm.の円盤状成形体を得た。
【0076】図4aに示すように、高純度アルミナ板上
にYのYbへの置換率が50%の円盤状成形体を一番下
にし、その上にYbへの置換率が順次少なくなるように
残りの円盤状成形体を積層した。銀無添加のSmBa2Cu3O
7-xの約4mm.x5mm.の単結晶をab面で劈開して、この
劈開面を、積層した円盤状成形体の一番上のもの、即ち
Ybに置換されていないYBa2Cu3O7-xの円盤状成形体の
上面に接するように置いた。次いで、大気雰囲気中の電
気炉内で、アルミナ板上の積層した円盤状成形体を10
30℃で1時間保持して半熔融状態として一体化した
後、そのまま大気雰囲気中で1030℃から930℃ま
で1時間あたり1.0℃で徐冷し、酸化物超電導体をア
ルミナ板上に保持したまま結晶成長させた。その後、更
に、炉内雰囲気を酸素雰囲気として650℃〜400℃
で50時間熱処理して円柱形状の希土類系酸化物超電導
体を得た。
【0077】このようにして得られた円柱形状の希土類
系酸化物超電導体の全表面を目視で観察したところ、粒
界もクラックも見られなかった。
【0078】直径約40mm.で高さ約15mm.である円柱
形状の希土類系酸化物超電導体を試料として、永久磁石
との反発力の測定を実施例1と同様に行った。5個の試
料を測定した平均値は、10.8kgであった。
【0079】また、実施例1と同様に、酸化物超電導体
の断面を偏向顕微鏡で観察し、箔片の結晶方位を透過型
電子顕微鏡で観察した。すると、結晶粒のc軸は円柱の
軸方向に配向していた。これらの実験条件及び実験結果
を表1にまとめる。
【0080】(比較例2−4)比較例2及び3では、凝
固点分布法を用いず単結晶種付け法のみを用いて、YBa2
Cu3O7-x酸化物超電導体を作製した。比較例4では、凝
固点分布法も単結晶種付け法も何れも用いずにYBa2Cu3O
7-x酸化物超電導体を作製した。
【0081】比較例2(図4b)では、原料合成方法2
で銀が無添加のYBa2Cu3O7-xの混合粉末を得た。比較例
3(図4c)では、原料合成方法2で銀を5重量%含有
するYBa2Cu3O7-xの混合粉末を得た。比較例4(図4
d)では、原料合成方法2で銀を10重量%含有するYB
a2Cu3O7-xの混合粉末を得た。そして、この各々の混合
粉末150gを内径50mm.の円筒状金型に投入し、荷
重2トンでプレス成形を円柱形状体を成形した。更に、
この円柱形状体に室温で0.5トン/cm2で等方加圧成形
を行い、直径46mm.で高さ25mm.の円柱形状の成形体
を得た。
【0082】次に、表1及に示す実験条件で希土類系酸
化物超電導体を作製した。このようにして得られた円柱
形状の希土類系酸化物超電導体の全表面を目視で観察し
たところ、何れの比較例でも粒界、クラックが観察され
た。
【0083】直径約40mm.で高さ約15mm.である円柱
形状の希土類系酸化物超電導体を試料として、永久磁石
との反発力の測定を実施例1と同様に行った。5個の試
料を測定した平均値は、比較例2で4.2kg、比較例
3で6.1kg、比較例4で3.3kgだった。
【0084】また、実施例1と同様に、酸化物超電導体
の断面を偏向顕微鏡で観察し、箔片の結晶方位を透過型
電子顕微鏡で観察した。すると、結晶粒のc軸は円柱の
軸方向に配向していた。これらの実験条件及び実験結果
を表1にまとめる。
【0085】
【表1】
【0086】実施例1−9で得られたYBa2Cu3O7-x酸化
物超電導体を比較例2−4で得られたYBa2Cu3O7-x酸化
物超電導体と比較すると、成形体中の凝固点分布を制御
することで、結晶粒が大きくなり、またその配向性が高
くなることがわかる。更に、浮上力で表される超電導特
性も実施例1−9で得られたYBa2Cu3O7-x酸化物超電導
体の方が比較例2−4で得られたYBa2Cu3O7-x酸化物超
電導体よりもはるかに優れることがわかる。
【0087】
【発明の効果】
本発明に係る凝固点分布法では、貴金属又は貴金属化合
物が制御された濃度分布をしている希土類系酸化物超電
導体の成形体を形成することで成形体中の凝固点分布を
制御し、次いでこのような成形体を加熱し、半溶融状態
にした後に徐冷することで、配向性の高い希土類系酸化
物超電導体が得ることができる。
【0088】また本発明に係る単結晶種付け法では、貴
金属又は貴金属化合物を含有する希土類系酸化物超電導
体の成形体に、希土類系酸化物超電導体の単結晶を種結
晶として接触配置し、次いで種結晶の融点と成形体の融
点の中間の温度にまで加熱し、融点がより低い成形体の
みを半溶融状態にし、次いで徐冷することで種結晶より
結晶成長をさせることで、配向性の高い希土類系酸化物
超電導体を得ることができる。
【0089】このようにして得られる本発明に係る希土
類系酸化物超電導体は、たとえ超電導体そのものが大型
であっても、配向性の高い大型の結晶粒からなり、従っ
て、超電導電流のループ半径が大きくなる。即ち、配向
性が高いと、隣接する結晶粒の配向がほぼ一致している
ため、超電導電流は粒界に遮られることなく、粒界を乗
り越えて超電導電流は希土類系超電導酸化物全体を環状
に流れることができる。従って、超電導電流のループ半
径は、希土類系超電導酸化物の半径にまで大きくなり得
る。配向性を保ちつつ希土類系超電導酸化物を大型化す
ることによって、ループ半径を更に大きくすることがで
きる。そして、このように超電導電流のループ半径が大
きくなるとマイスナー効果により希土類系超電導酸化物
が発生する磁場が増加するので、希土類系酸化物超電導
体の実用化に向けて一歩、近ずくことになり、本発明は
産業の発達に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】YBa2Cu3O7-xにおいての銀含有率と凝固点との
関係を示す図である。
【図2】本発明に係る希土類系酸化物超電導体又はその
成形体において、貴金属又は貴金属化合物の制御された
濃度分布を示す説明断面図である。
【図3】本発明に係る希土類系酸化物超電導体の成形体
に真空溶融を施す過程を説明する断面図である。
【図4】従来の希土類系酸化物超電導体又はその成形体
において、貴金属又は貴金属化合物の濃度分布を示す説
明断面図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 H01L 39/24 ZAA B 8728−4M

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 貴金属又は貴金属化合物が制御された濃
    度分布をしていることを特徴とする希土類系酸化物超電
    導体。
  2. 【請求項2】 該貴金属が銀又は該貴金属化合物が酸化
    銀若しくは銀化合物であることを特徴とする請求項1に
    記載の希土類系酸化物超電導体。
  3. 【請求項3】 REはY、Gd、Dy、Ho、Er及びY
    bからなる群のなかの少なくとも一元素からなり、xが
    0以上1以下のREBa2Cu3O7-xが主成分であることを特徴
    とする請求項1又は2に記載の希土類系酸化物超電導
    体。
  4. 【請求項4】 貴金属又は貴金属化合物が制御された濃
    度分布とは、該貴金属又は該貴金属化合物の濃度の単調
    増加又は単調減少であることを特徴とする請求項1、2
    又は3に記載の希土類系酸化物超電導体。
  5. 【請求項5】 貴金属又は貴金属化合物が制御された濃
    度分布をしている希土類系酸化物超電導体の成形体を形
    成し、次いで該成形体を加熱して半溶融状態にした後に
    徐冷することを特徴とする希土類系酸化物超電導体の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 貴金属又は貴金属化合物が制御された濃
    度分布とは、該貴金属又は該貴金属化合物の濃度の単調
    増加又は単調減少であることを特徴とする請求項5に記
    載の希土類系酸化物超電導体の製造方法。
  7. 【請求項7】 貴金属又は貴金属化合物を含有する希土
    類系酸化物超電導体の成形体に、該成形体の希土類系酸
    化物超電導体より融点の高い希土類系酸化物超電導体の
    単結晶を接触配置し、次いで該成形体を加熱して半溶融
    状態にした後に徐冷することを特徴とする希土類系酸化
    物超電導体の製造方法。
  8. 【請求項8】 該成形体中で、貴金属又は貴金属化合物
    が制御された濃度分布をしていることを特徴とする請求
    項7に記載の希土類系酸化物超電導体の製造方法。
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DE69307374T DE69307374D1 (de) 1992-03-31 1993-03-31 Supraleitender Körper auf der Basis seltener Erden und Verfahren zu dessen Herstellung
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6136756A (en) * 1993-11-30 2000-10-24 Adelwitz Technologiezentrum Gmbh Method for manufacturing of high temperature superconductor material
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