JPH0527706B2 - - Google Patents

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JPH0527706B2
JPH0527706B2 JP62108441A JP10844187A JPH0527706B2 JP H0527706 B2 JPH0527706 B2 JP H0527706B2 JP 62108441 A JP62108441 A JP 62108441A JP 10844187 A JP10844187 A JP 10844187A JP H0527706 B2 JPH0527706 B2 JP H0527706B2
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ceramic
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layer
sprayed
zirconia
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Noritaka Myamoto
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Publication of JPH0527706B2 publication Critical patent/JPH0527706B2/ja
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 この発明のアルミニウム合金等からなる母材の
表面に断熱性や耐熱性の優れたセラミツク溶射層
を形成したセラミツク溶射部材に関し、特に自動
車用エンジンのピストン頂部やシリンダのボア部
の如く、高温腐食雰囲気での加熱と冷却が繰返さ
れる部分に使用される部材として最適なセラミツ
ク溶射部材に関するものでる。
従来の技術 従来から、自動車エンジン用ピストンの如く、
高温加熱される部位を有する部材、特にアルミニ
ウム合金を母材とする部材においては、母材表面
に熱伝導率が低くかつ耐熱性が優れたセラミツク
を溶射してセラミツク溶射層を形成することによ
り、断熱性や耐熱性を改善したセラミツク溶射部
材が適用されている。
このような従来のセラミツク溶射部材につい
て、自動車エンジン用ピストンを例に採つて以下
さらに詳細に説明する。
近年、エンジンに使用されるピストンとして
は、エンジンにおける往復運動部の慣性力を低減
させるための軽量化を主眼として、アルミニウム
合金により鋳造成形されたピストンを使用するこ
とが多くなつている。しかしながらアルミニウム
合金は熱伝導率が大きい材料であるから、アルミ
ニウム合金製ピストンを用いたエンジンでは、燃
焼室における燃料の燃焼によつて発生した燃焼熱
がピストンを介して燃焼室外へ伝達され、その分
だけエンジンの熱効率を悪化させてエンジンの出
力、燃費を低下させる傾向があつた。そこでアル
ミニウム合金製ピストンを介して燃焼室外へ伝達
される熱損失を低減するために、ピストンの頂面
(ピストンヘツド)等に熱伝導率の小さいセラミ
ツク材料を溶射して、断熱性を改善したセラミツ
ク溶射ピストンの適用が試みられている(例えば
「Cummins/TACOM Advanded Adiabatic
Engin.」R.Kamo et al. SAE Paper No.840428
等)。
しかしながら、このようにアルミニウム合金を
母材としてセラミツク溶射層を形成したセラミツ
ク溶射ピストンにおいては、母材であるアルミニ
ウム合金の熱膨張係数とセラミツク材料の熱膨張
係数との間に大きな差があり、そのためエンジン
の作動に伴なう加熱・冷却を繰返している間にア
ルミニウム合金製母材表面とセラミツク溶射層と
の熱膨張差に起因してその界面に亀裂が発生し、
遂には母材表面からセラミツク溶射層が剥離・脱
落してしまうことがある。
そこで最近では、セラミツク溶射層に用いるセ
ラミツク材料として、各種のセラミツク材料のう
ちでも熱膨張係数が最も金属に近いものの一つで
あるジルコニア(ZrO2)を選択することが多く
なつている。しかしながらこのようにジルコニア
溶射層を形成したセラミツク溶射部材において
も、ジルコニア溶射層の剥離・脱落を確実に防止
することは困難であつた。
一方、従来からアルミニウム合金母材とセラミ
ツク溶射層との熱膨張係数の差によるセラミツク
溶射層の剥離を防止するための方法として、予め
母材の表面に熱膨張係数が母材とセラミツクとの
間の中間でしかもセラミツクとの密着性が良好な
金属、例えばNi−Cr−Al合金、Ni−Cr−Al−Y
合金、Ni−Co−Cr−Al−Y合金などを薄く溶射
して、ボンド層あるいは中間層と称される下地溶
射層を形成しておき、その下地溶射層の上にセラ
ミツク溶射層を溶射する方法が知られている(例
えば前掲刊行物)が、このように下地溶射層を形
成した場合でも、熱膨張差に起因するセラミツク
溶射層の剥離、脱落を防止するには未だ充分では
なかつた。
一方、本出願人が既に出願した特願昭60−
123438号の提案や特開昭59−177375号公報に示さ
れているように、セラミツク溶射層の一部に不連
続な部分を設けたり、特開昭58−87273号公報に
示されているようにセラミツク層に予め微細な割
れを導入させておいたりして、セラミツク層に生
じる応力を緩和する方法も知られているが、最近
の高負荷の使用条件下においては、これらの応力
緩和方法だけではセラミツク溶射層の剥離、脱落
を防止するには必ずしも充分ではなかつた。
さらに出願人は、既に特願昭61−125720号にお
いて、セラミツク溶射の前に予め母材表面層に母
材の熱膨張係数を下げる方向へ寄与する元素を合
金化させておくことによつてセラミツク溶射層と
母材との熱膨張係数差を小さくし、セラミツク溶
射層の剥離を防止したセラミツク溶射部材を提案
しており、また特願昭61−263314号においては、
母材と下地溶射層との界面に拡散層を金属面の2
〜50%を占めるように形成することによつて下地
溶射層の母材に対する密着強度を高める方法を提
案している。さらに本出願人は、特願昭61−
305780号において、下地溶射層とセラミツク溶射
層との間に炭化物もしくは窒化物からなる中間層
を形成して上層のセラミツク溶射層に亀裂が生じ
た時に中間層の炭化物もしくは窒化物が酸化物に
変化する際の体積膨張により亀裂を修復するよう
にしたセラミツク溶射部材を提案しており、そし
てまた特願昭61−306625号においては、セラミツ
ク溶射層を形成するにあたつて、大径セラミツク
粉末と小径セラミツク粉末とを混合して、その混
合粉末を、大径粒子が完全には溶融せずかつ小径
粒子が溶融するような条件で溶射して、表面まで
連続する連続気孔を有しかつ空隙率の高いセラミ
ツク溶射層を形成し、その空隙(連続気孔)によ
つて熱膨張差による応力を緩和すようにした方法
を提案している。しかしながらこれらのセラミツ
ク溶射部材は、いずれもかなりの程度まではセラ
ミツク層の剥離・脱落を防止することができるも
のの、未だ完全に防止できるには至つていなかつ
た。
発明が解決すべき問題点 セラミツク溶射部材においてセラミツク溶射層
の剥離・脱落が生じる原因は、母材である金属と
セラミツクとの熱膨張係数の差が主原因である
が、既に述べたように特にセラミツクとして母材
金属の熱膨張係数に近い大きな熱膨張係数を有す
るジルコニアを用いた場合でもジルコニア溶射層
の剥離・脱落を確実には防止し得なかつた。この
ようにジルコニア溶射層でもその剥離・脱落が生
じる原因について本発明者が詳細に検討した結
果、単に母材との熱膨張係数の差だけではなく、
ジルコニア溶射層におけるジルコニア粒子の性状
自体にも原因があることが判明した。以下にその
知見を述べる。
母材表面にNi基合金等からなる下地溶射層を
形成してその上にジルコニア溶射層を形成したセ
ラミツク溶射部材を、酸化雰囲気や高温腐食雰囲
気で使用した場合のジルコニア溶射層の剥離・脱
落の状況を調べたところ、外部の酸化性あるいは
腐食性のガスがジルコニア溶射層中のマイクロク
ラツクを通じて下地溶射層に至り、その下地溶射
層が酸化性ガスや腐食性ガスに侵されて下地溶射
層とジルコニア溶射層との界面の結合力が弱ま
り、それによつて容易にジルコニア溶射層の剥離
に至つていることが判明した。このようにジルコ
ニア溶射層にマイクロクラツクが存在することが
溶射層の剥離・脱落の間接原因となつているが、
ジルコニア溶射層にマイクロクラツクが生じてい
る原因は次の通りであることが実験によつて明ら
かになつた。すなわち、溶射ガンにより溶射され
たジルコニア溶融粒子は、先に溶射されているジ
ルコニア層に衝突して付着する。この時、ジルコ
ニア溶融粒子は約105〜106℃/secという急激な
速さで凝固するが、凝固収縮に加えてジルコニア
は熱膨張係数が大きいため冷却収縮量が大きく、
そのため凝固→冷却という過程でジルコニア粒子
は大きく収縮することになる。しかもその凝固→
冷却時には、粒子の下側の部分は先に溶射されて
いるジルコニア層に強固に付着しているため、粒
子収縮時に粒子内に大きな応力が作用し、粒子内
に多数のマイクロクラツクが生じるのである。こ
のようなジルコニア溶射層におけるジルコニア溶
射粒子の凝固後の1粒(但しY2O3により安定化
したZrO2・8Y2O3粒子)についての顕微鏡写真
を第5図に示す。第5図に示すようにジルコニア
溶射粒子内には多数の“ひび割れ”状のマイクロ
クラツクが形成されており、したがつてこのマイ
クロクラツクを通じて外部の酸化性ガスもしくは
腐食性ガスが下地溶射層まで侵入し、前述のよう
に下地溶射層が侵されて界面の結合力を弱め、ジ
ルコニア溶射層の剥離を招いていたのである。
この発明は以上の事情を背景としてなされたも
ので、主要セラミツク材料としてジルコニアを使
用しながらも、前述のように外部の酸化性ガスも
しくは腐食性ガスが下地溶射層にまで至らないよ
うにし、これによつて下地溶射層の酸化、腐食に
起因するセラミツク溶射層の剥離を未然に防止し
得るようにしたセラミツク溶射部材を提供するこ
とを目的とするものである。
問題点を解決するための手段 第1発明のセラミツク溶射部材は、例えば第1
図に示すように、金属からなる母材1の表面に、
セラミツクとの密着性が良好なNi基合金等の金
属からなる下地溶射層2が形成され、その下地溶
射層2の上にジルコニア(ZrO2)からなる第1
セラミツク溶射層3が形成され、その第1セラミ
ツク溶射層3の上に、アルミナ(Al2O3)、チタ
ニア(TiO2)もしくはスピネル(MgO・Al2O3
のうちの1種または2種以上からなる第2セラミ
ツク溶射層4が形成されてものであつて、このよ
うにジルコニアからなる第1セラミツク溶射層3
の上にアルミナ、チタニア、スピネルの1種また
は2種以上からなる第2セラミツク溶射層4を形
成しておくことによつて外気の侵入を防止し、下
地溶射層の酸化、腐食に起因するセラミツク溶射
層の剥離を防止している。
また第2発明のセラミツク溶射部材は、例えば
第2図に示すように、金属からなる母材1の表面
にセラミツクとの密着性が良好なNi基合金等の
金属からなる下地溶射層2が形成され、その下地
溶射層2の上にジルコニアからなる第1セラミツ
ク溶射層3が形成され、さらにその第1セラミツ
ク溶射層3の上に、ジルコニアと、アルミナ、チ
タニアもしくはスピネルの1種または2種以上と
からなりかつ第1セラミツク溶射層の側から表面
側へ向けてジルコニアの含有量が減少するグレー
テツド溶射層5が形成され、さらにそのグレーテ
ツド溶射層5の上にアルミナ、チタニアもしくは
スピネルの1種または2種以上からなる第2セラ
ミツク溶射層4が形成されたものであつて、この
ようにグレートテツド溶射層5を形成しておくこ
とによつて、第1発明のセラミツク溶射部材の場
合よりも一層確実にセラミツク溶射層の剥離を防
止し得るようにされている。
作 用 第1発明のセラミツク溶射部材は、第1図に例
示しているように、ジルコニアからなる第1セラ
ミツク溶射層3の上に、アルミナ、チタニア、ス
ピネルのうちから選ばれた1種または2種以上か
らなる第2セラミツク溶射層4が形成されてい
る。したがつてジルコニアからなる第1溶射層3
は直接外気に触れないことになる。
ここで、第2セラミツク溶射層4を構成してい
るセラミツク材料であるアルミナ、チタニア、ス
ピネルは、その熱膨張係数がアルミナでは7×
10-6/℃、チタニアでは7×10-6/℃、スピネル
では8×10-6/℃と、いずれも第1セラミツク溶
射層3の構成セラミツク材料であるジルコニアの
熱膨張係数10×10-6/℃よりも小さい。したがつ
て第2セラミツク溶射層4のセラミツク材料を溶
射するにあたつては、アルミナ、チタニアもしく
スピネルからなる溶融セラミツク粒子が先に形成
されている溶射層に衝突・付着して凝固する際
に、凝固→冷却の過程で生じる収縮量がジルコニ
アからなる粒子の凝固→収縮過程での収縮量に比
べて少なくなる。そのため第2セラミツク溶射層
4における凝固後のセラミツク粒子に生じるマイ
クロクラツクは、ジルコニアの場合と比べて少な
くなり、またそのマイクロクラツクの割れ幅も小
さくなる。一例として、アルミナからなる溶射粒
子の凝固後の断面を第4図に示す。既に説明した
第5図のジルコニア溶射粒子の場合と比較すれ
ば、アルミナ溶射粒子の内部のマイクロクラツク
が少なくかつその幅も狭いことが明らかである。
このようにアルミナ、チタニアもしくはスピネル
からなる第2セラミツク溶射層4はその内部のマ
イクロクラツクが少なくかつマイクロクラツクの
幅も狭いため、通気性がジルコニアからなる溶射
層よりも格段に低く、そのため外気がセラミツク
層の内部へ侵入しにくいことになる。
既に述べたように下地溶射層の上にジルコニア
溶射層のみを形成した従来のセラミツク溶射部材
では、酸化性雰囲気や腐食性雰囲気で使用した場
合に外部の酸化性ガスもしくは腐食性ガスがジル
コニア溶射層を透過して容易に下地溶射層に到達
するところから、下地溶射層の酸化や腐食が早期
に進行していたが、この発生のセラミツク溶射部
材の場合は上述のように最外表面に存在する第2
セラミツク溶射層4の通気性が低いため、外部の
酸化性ガスもしくは腐食性ガスがセラミツク溶射
層内部まで侵入して下地溶射層に到達することが
有効に抑制され、そのため下地溶射層の酸化や腐
食が防止されるところから、下地溶射層の酸化や
腐食によりその下地溶射層と第1セラミツク溶射
層との界面における結合力が低下することが防止
され、セラミツク溶射層の剥離や脱落が生じにく
くなるのである。
なおここで第1セラミツク溶射層としてはジル
コニアを用いているが、ジルコニアは既に述べた
ように熱膨張係数が母材や下地溶射層の金属の熱
膨張係数に近く、したがつて熱膨張差に起因する
応力は比較的小さい。したがつてこの発明のセラ
ミツク溶射部材では、最外表面に通気性の低い第
2セラミツク溶射層が存在することと、第1セラ
ミツク溶射層と母材や下地溶射層との熱膨張係数
差が小さく熱膨張差による応力が小さいこととが
相俟つて、著しく優れたセラミツク溶射層の剥離
防止効果を得ることができるのである。換言すれ
ば、この発明では、母材や下地溶射層との熱膨張
差が小さい点では有利なジルコニアを用いつつ、
その欠点であるマイクロクラツク(通気性)によ
る不利を第2セラミツク溶射層によつて補つて、
耐剥離性を改善したものと言うことができる。
またこの発明のセラミツク溶射部材は、セラミ
ツク層剥離の問題に対し次のような点からも有利
である。すなわち、一般にセラミツク層は断熱性
が著しく高いため高温雰囲気で使用すればその層
内に厚み方向に大きな温度勾配が生じ、これによ
つて外側では熱膨張が大きく内側では熱膨張が小
さくなつて、層内でも熱応力が発生し、層内での
破壊が生じるおそれがある。しかしながらこの発
明のセラミツク溶射部材の場合、外側(外表面
側)の部分をジルコニアよりも熱膨張係数の小さ
いアルミナ、チタニアもしくはスピネルからなる
第2セラミツク溶射層で置換することによつて、
温度が高い外側でも熱膨張が小さくなり、その結
果セラミツク層内で発生する熱応力も小さくなつ
て、層内での亀裂発生が生じにくくなり、層内亀
裂発生による剥離も生じにくくなつているのであ
る。
次に第2発明のセラミツク溶射部材について説
明すると、第2発明のセラミツク溶射部材が第1
発明のセラミツク溶射部材と異なる点は、第2図
に例示しているように、ジルコニアからなる第1
セラミツク溶射層3と、最外表面のアルミナ、チ
タニアもしくはスピネルの1種または2種以上か
らなる第2セラミツク溶射層4との間に、グレー
テツド溶射層5が形成されている点である。この
グレーテツド溶射層5は、第1セラミツク溶射層
3の構成材料であるジルコニアと、第2セラミツ
ク溶射層4の構成材料であるアルミナ、チタニ
ア、スピネルの1種または2種以上とからなり、
かつジルコニアの含有量が第1セラミツク溶射層
3の側から第2セラミツク溶射層4の側へ向けて
段階的に減少もしくは漸減するように構成された
もので、このようなグレーテツド溶射層5を介在
させることによつて第1セラミツク溶射層3と第
2セラミツク溶射層4との熱膨張係数の差に起因
する応力を緩和することができるとともに、第1
および第2セラミツク溶射層3,4の間の密着強
度を高めることができ、したがつて第1および第
2セラミツク溶射層3,4の間で剥離が生じたり
することを有効に防止できる。なお第2図におい
ては第1セラミツク溶射層3とグレーテツド溶射
層5との境界およびグレーテツド溶射層5と第2
セラミツク溶射層4との境界がそれぞれ明確にあ
らわれているように示したが、実際上はこれらの
境界は明確にあらわれないのが通常である。
なお以上のような第1発明および第2発明のセ
ラミツク溶射部材において、下地溶射層2として
は、第1セラミツク溶射層3を構成しているジル
コニアに対する密着性が良好でしかもアルミニウ
ム合金等の母材1の金属とジルコニアとの中間の
熱膨張係数を有する金属、例えばNi−Al合金、
Ni−Cr合金、Ni−Cr−Al合金、Ni−Ci−Al−
Y合金、Ni−Co−Cr−Al−Y合金等を用いれば
良く、またその厚みは時に限定しないが、通常は
0.05〜0.1mm程度とすれば良い。
また第1セラミツク溶射層3を構成するジルコ
ニアとしては、Y2O3やCaO、MgOなどによつて
安定化したものを用いることが望ましい。この第
1セラミツク溶射層3の厚みは特に限定しない
が、この発明のセラミツク溶射部材の場合、断熱
層としての機能や強度等を主として担うのは第2
セラミツク溶射層4ではなく第1セラミツク溶射
層3であり、その観点から通常は0.1〜1mm程度
の厚さとする。
さらに第2セラミツク溶射層4は、前述のよう
にアルミナ、チタニアもしくはスピネルからなる
ものであつて、そのうちの1種を単独で用いて
も、また2種以上を複合して用いても良い。その
第2セラミツク溶射層4の厚みは、要は第1セラ
ミツク溶射層3への外気の侵入を阻止し得る程度
とすれば足り、実際上は0.05mm〜0.5mm程度とす
れば良い。またグレーテツド溶射層5を形成する
場合は、グレーテツド溶射層5と第2セラミツク
溶射層4の合計厚みを0.1mm〜0.5mm程度とするの
が好ましい。
実施例 実施例 1 純アルミニウム(JIS 1100)からなる50×50×
10mmの平板の一面に、スチールグリツトによるシ
ヨツトブラスト処理を施した後、その面に下地溶
射層としてNiAl合金を0.1mmの厚さで溶射し、さ
らにその下地溶射層の上に第1セラミツク溶射層
としてZrO2・8Y2O3を0.4mmの厚さで溶射し、次
いでその第1セラミツク溶射層の上に第2セラミ
ツク溶射層としてAl2O3を0.1mmの厚さで溶射し
て、この発明によるセラミツク溶射部材を作成し
た。
比較例 1 純アルミニウムからなる50×50×10mmの平板の
一面に下地溶射層としてNiAl合金を0.1mmの厚さ
で溶射した後、その下地溶射層の上にセラミツク
溶射層としてZrO2・8Y2O3を0.5mm厚で溶射して、
比較例1のセラミツク溶射部材とした。この比較
例1におけるセラミツク溶射層の厚みは、実施例
1における第1セラミツク溶射層、第2セラミツ
ク溶射層の合計厚みと同じである。
以上の実施例1および比較例1の各セラミツク
溶射部材について、次のような熱サイクル試験を
行なつた。すなわち、アセチレン−酸素ガスバー
ナにより60秒間セラミツク溶射層の中央部を加熱
した後、50℃に保持した水中に入れて急冷し、60
秒間保持する加熱−冷却サイクルを5000サイクル
繰返した。その結果、従来の比較例1のセラミツ
ク溶射部材では、1100サイクルでセラミツク層の
剥離が生じたが、この発明による実施例1のセラ
ミツク溶射部材では5000サイクル後もセラミツク
溶射層に異常が認められなかつた。
また上述の熱サイクル試験後の実施例1および
比較例1のセラミツク溶射部材について、下地溶
射層の上面(セラミツク溶射層と接する面)の
EPMA分析を行なつたところ、比較例1の場合
は下地溶射層の全面に酸化が認められたのに対
し、実施例1の場合は酸化は気孔の周囲の部分し
か認められなかつた。
実施例 2 第3図に示すようにピストン頂部6にカツプ状
の燃焼室7を有するデイーゼルエンジン用ピスト
ン8を製造するにあたつて、その燃焼室7の母材
内壁面に次のように溶射層を形成した。すなわち
先ずアルミニウム合金(JIS AC8A)によつて母
材(ピストン本体)を常法にしたがつて鋳造に加
工した後、燃焼室7の内壁面にスチールグリツト
によるシヨツトブラスト処理を施し、次いで燃焼
室7の内壁面に下地溶射層としてNiAl合金を0.1
mmの厚さで溶射した。次にその下地溶射層の上に
第1セラミツク溶射層としてZrO2・8Y2O3を0.3
mmの厚さで溶射し、続いてZrO2・8Y2O3とTiO2
をその成分比(ZrO2・8Y2O3/TiO2比)が表面
へ向つて段階的に小さくなるように溶射してグレ
ーテツド溶射層を形成し、そのグレーテツド溶射
層の表面にはTiO2が100%の第2セラミツク溶射
層を形成した。なおこれらのグレーテツド溶射層
と第2セラミツク溶射層の合計厚みは0.2mmとし
た。
比較例 2 実施例2と同様にJIS AC8A製のピストン本体
を鋳造し、その燃焼内壁面にスチールグリツトに
よるシヨツトブラスト処理を施した後、下地溶射
層としてNiAl合金を0.1mmの厚さで溶射した。次
いでその下地溶射層の上にZiO2・8Y2O3を0.5mm
の厚さで溶射して、比較例2のピストンとした。
このZrO2・8Y2O3の溶射厚みは、実施例2にお
ける第1セラミツク溶射層+グレーテツド溶射層
+第2セラミツク溶射層の合計厚みと同じであ
る。
以上の実施例2のピストンおよび比較例2のピ
ストンを各2個用意し、これらを4気筒デイーゼ
ルエンジンに組込んで300時間の実機耐久試験を
行なつた。エンジン条件は、回転数4000rpm、過
給圧550mmHg、馬力85HPである。
この耐久試験による300時間後の各ピストンを
観察したところ、比較例2のピストンではそれぞ
れ6.4cm2、3.9cm2の面積でセラミツク層が剥離して
いたのに対し、実施例2によるピストンでは剥離
が全く認められなかつた。
発明の効果 以上の実施例からも明らかなように、この発明
のセラミツク溶射部材はジルコニアからなる第1
セラミツク溶射層の上に、ジルコニアよりも熱膨
張係数が小さいアルミナ、チタニアもしくはスピ
ネルの1種または2種以上からなる第2セラミツ
ク溶射層が形成されたものであり、この第2セラ
ミツク溶射層はマイクロクラツクが少なくかつそ
のマイクロクラツクの幅も小さいため通気性が低
く、したがつて外部の酸化性もしくは腐食性のガ
スがセラミツク層を透過して下地溶射層に達する
ことを防止でき、そのため下地溶射層が酸化もし
くは腐食してセラミツクとの界面の結合力が低下
するような事態を有効に防止でき、また高温雰囲
気で使用した場合に最も高温となる最外表面の第
2セラミツク溶射層の熱膨張係数が内側の第1セ
ラミツク溶射層より小さいため、セラミツク層内
での厚み方向の温度勾配によるセラミツク層内厚
み方向の熱膨張量の差が少なく、そのためセラミ
ツク層内で生じる熱応力も小さく、さらに母材や
下地溶射層に近い第1セラミツク溶射層のジルコ
ニアはその熱膨張係数が母材や下地溶射層の熱膨
張係数に近いため、母材や下地溶射層と第1セラ
ミツク溶射層との間の熱膨張の差も小さいから、
その間での熱応力も少なく、したがつてこれらが
総合的に機能して、セラミツク層の剥離・脱落が
有効に防止される。したがつてこの発明のセラミ
ツク溶射部材は、高温酸化性雰囲気、高温腐食性
雰囲気での加熱と冷却が繰返される部材、例えば
内燃機関のピストン等に適用すれば、耐久性を従
来よりも格段に向上させて、優れた断熱性、耐熱
性を長期間発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は第1発明のセラミツク溶射部材の一例
を模式的に示す縦断面図、第2図は第2発明のセ
ラミツク溶射部材の一例を模式的に示す縦断面
図、第3図は実施例2において用いたピストン本
体の部分切欠正面図、第4図はアルミナ
(Al2O3)の溶射粒子の断面金属組織写真(倍率
1000倍)、第5図はY2O3安定化ジルコニウム
(ZrO2・8Y2O3)の溶射粒子の断面金属組成写真
(倍率1000倍)である。 1……母材、2……下地溶射層、3……第1セ
ラミツク溶射層、4……第2セラミツク溶射層、
5……グレーテツド溶射層。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 金属母材の表面に、セラミツクとの密着性が
    良好な金属からなる下地溶射層が形成され、その
    下地溶射層の上にジルコニアからなる第1セラミ
    ツク溶射層が形成され、その第1セラミツク溶射
    層の上に、アルミナ、チタニアもしくはスピネル
    のうちの1種または2種以上からなる第2セラミ
    ツク溶射層が形成されていることを特徴とするセ
    ラミツク溶射部材。 2 金属母材の表面に、セラミツクとの密着性が
    良好な金属からなる下地溶射層が形成され、その
    下地溶射層の上にジルコニアからなる第1セラミ
    ツク溶射層が形成され、その第1セラミツク溶射
    層の上に、アルミナ、チタニアもしくはスピネル
    のうちの1種または2種以上とジルコニアとから
    なりかつ表面に向つてジルコニアの混合比が減少
    するグレーテツド溶射層が形成され、さらにその
    グレーテツド溶射層の上に、アルミナ、チタニア
    もしくはスピネルのうちの1種または2種以上か
    らなる第2セラミツク溶射層が形成されているこ
    とを特徴とするセラミツク溶射部材。
JP62108441A 1987-05-01 1987-05-01 セラミック溶射部材 Granted JPS63274751A (ja)

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