JPH0527000B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の利用分野〕 本発明は圧力容器据付具に係り、特にスカート
を有する竪型円筒圧力容器の据付作業に用いるの
に好適な据付具に関する。

〔発明の背景〕

一般に、竪型圧力容器は径寸法に比べて長さ寸
法が大きいため、横置状態で輸送され、現場での
据付時に立てられる。この横置状態からの立設作
業には、通常クレーンが用いられ、第１図に示す
如く圧力容器１の上下端に設けたトツプラグ２、
スカート側ラグ３にフツクを掛けてワイヤ４にて
吊る二点吊り方法や、第２図に示す如く特に容器
下部のスカート５のラグをピン支持ラグ６とし、
これにローラ７付の架台８をピン９にて連結して
転がり移動可能にしつつ、トツプラグ２をワイヤ
吊りする方法が採用されている。前者はトツプラ
グ２側の引き上げとスカート側ラグ３の引き下げ
を同時に２台のクレーンで行うので、比較的広い
スペースがとれる場所で適用され、後者は狭い場
所や圧力容器１が大径重量物であるときに適用さ
れる。

ところで、上記いずれの方法による場合も、容
器下部に設けたスカート５にラグ３，６を設け、
これに容器１の重量の半分を負担させることは構
造上問題である。すなわち、スカート５は非圧部
であり、比較的薄肉で剛性が小さく、しかも開断
面とされているからである。このため、据付時の
不可避的な荷重負担による破損防止の観点から、
このスカート部分への補強が行われている。

従来の補強が施された据付具を第３〜８図に示
す。まず、第３〜４図に示す補強構造は二点吊り
方法に適用されるもので、スカート５と下縁のベ
ースプレート１０の隔部に長手方向に沿つてラグ
３が設けられるが、このラグ３の両端面に補強リ
ブ１１を周方向に沿うように取付け、集中荷重を
分配させるようにしたものである。次に、第５〜
６図に示すものも二点吊り方法に適用されるもの
であるが、この場合には、スカート５の開口端部
内に放射状に複数の補強ステー１２を張り渡し、
開断面による剛性の低下を阻止しようとしたもの
である。更に第７〜８図に示す構造は、第２図に
示したピン構造による方法に適用したもので、ス
カート５の開口部の大半を被うように、ベースプ
レート１０にはカバープレート１３を取付け、こ
のカバープレート１３の中央線に沿つて補強ステ
ー１４を溶着して一体化し、ラグ６を補強ステー
１４上に取付けている。また、この例では、スカ
ート５の下面にピン取合用のラグ６が取付くた
め、クレーンで吊上げた状態で該補強部材を取外
さなければならず、通常カバープレート１３をベ
ースプレート１０にボルト１５でセツトするよう
にしている。

しかしながら、上記従来の据付具はいずれも次
のような欠点を有していた。すなわち、第３〜４
図に示す第１の構造は圧力容器１が小径かつ軽量
なものにのみ適用できるが、大径重量物の圧力容
器１ではスカート５が開断面であつて充分な剛性
が得られず、したがつて、スカート５やベースプ
レート１０の肉厚を必要以上に大きくしないと適
用できない。また、第５〜６に示す第２の構造で
は部分的な補強ステー１２による荷重負担が大き
くなる欠点がある。すなわち、この構造で問題と
なるのは圧力容器の荷重分布であり、圧力容器１
の自重が円筒壁を介してスカート端に伝わる荷重
分布はせん断力分布となつて伝わり、第９図に示
すような分布となる。この分布図から明らかなよ
うに、大半の荷重は第６図における吊上げ方向と
直交する補強ステー１２Ａで受けることになり、
したがつて曲げ剛性で受けるため、非常に大きな
補強ステー１２Ａが必要となつてくる。更に、第
７〜８図に示す第３の構造では、前述と同様、せ
ん断力荷重分布（第９図）により、カバープレー
ト１３を極厚の板としなければならず、取外し作
業が非常に困難となつてしまう。しかも、圧力容
器自重の1/2を取付ボルトのせん断力で受けるこ
とになり、何百トンもの重量に達する大型圧力容
器１に使用する場合、大径ボルトが数十本程度必
要であり、取外し作業の困難性や危険性を増大さ
せる効果となつていた。

なお、前記第１、第２の構造では、補強部材を
溶接結合しているため、据付現地での切断作業が
別途必要となる不利益があつた。

更に、前述した第２、第３のラグ構造を適用す
る圧力容器１のスカートがミニスカートである場
合、放射状の補強ステー１２やカバープレート１
３が取付け不能となるため、第１０図のように、
補助スカート５Ａを継ぎ足して適用しなければな
らない不便がある。また、継ぎ足しのためのボル
トのせん断の問題も同様に生じる。

〔発明の目的〕

本発明は、上記従来の問題点に着目し、圧力容
器の据付作業を簡便に行うことのできる軽量かつ
簡易構造の据付具を提供することを目的とする。

〔発明の概要〕

上記目的を達成するために、本発明は、圧力容
器の端部にその荷重を支持する円筒状のスカート
を有し、該スカートの全周端縁部に環状ベースプ
レートを設けた圧力容器用の据付具において、前
記ベースプレートに内接してセツトリングが嵌着
され、一対の第１の補強ビームおよび一対の第２
の補強ビームが前記セツトリングの装着時に外側
となる面に溶着されてある据付具本体を有し、前
記一対の第１の補強ビームは前記セツトリングの
中心から等距離で長手方向が加重方向に平行に配
置され、他方の一対の第２の補強ビームは前記第
１の補強ビームに直角であつて前記第２の補強ビ
ームどうしが平行に配置されており、据付時の圧
力容器の荷重を支持するラグが前記第１の補強ビ
ームに設けられた圧力容器据付具を備えるもので
あり、望ましくは前記第１の補強ビーム間隔をス
カートの壁心内径の0.6〜0.9倍とし、また据付具
本体をベースプレートと前記第１および第２の補
強ビームを装着するボルトにより圧力容器に据付
可能としたものである。

上記構成により、圧力容器自重の伝達荷重分布
に対し、その重心近くであるスカート径の0.6〜
0.9倍の離間距離で平行に補強ビームを配置し、
荷重を軸力で受けもたせることができることによ
り補強部材の低減を図ることができる。更にベー
スプレート内面にセツトリングを嵌め込み、荷重
をこのリングを通して補強ビームに伝達するよう
にし、セツトボルトにせん断力を作用させない構
造としたものである。

〔発明の実施例〕

以下に本発明に係る圧力容器据付具の実施例を
第１１〜１２図を参照して詳細に説明する。

実施例に係る据付具は、図示のように、圧力容
器端部に設けられ、その荷重を支持する円筒上の
スカート５の全周端縁部に設けられたベースプレ
ート１０に対して装着される据付具本体２０を含
んでいる。この据付具本体２０はベースプレート
１０に嵌着されるセツトリング２１を有してい
る。セツトリング２１は角断面部材をベースプレ
ート１０の内周面に沿うリングとなしたもので、
ベースプレート１０の内周面と接触して同心円配
置される。また、このようなセツトリング２１の
装着時の外端面となる一方に面では一対の平行は
補強ビーム２２と、両補強ビーム２２に直交する
やはり一対の平行な補強ビーム２３とが井げた状
に組まれて溶着されている。補強ビーム２２はセ
ツトリング２１の中心から等距離に配置されたＩ
型鋼であり、該配置位置でセツトリング２１の弦
長より長く、延長端部がベースプレート１０に接
合し得るような長さに設定されている。そして、
補助ビーム２３は補強ビーム２２より小断面のＩ
型鋼であり、前記延長端部相互を連結して補強ビ
ーム２２の間隔保持を行わせている。これら井げ
た配置のビーム２２，２３はセツトリング２１に
対して接触面の縁部にすみ肉溶接を施すことによ
り、一体化しているものである。図中２４は溶接
部を示す。

ここで、前記補強ビーム２２の取付間隔Ｌはス
カート５の壁心内径ｄの0.6〜0.9倍（Ｌ＝0.6o〜
0.9d）に設定される。この設定値は次のように決
定する。すなわち、第９図に示すせん断力分布図
を参照すると、荷重支持方向からの回転角とした
場合、各回転角度位置の荷重Ｗは、 Ｗ＝wsinθ （但しｗは単重） ……(1) で示され、荷重合計〓Ｗは、片側のみを考える
と、 〓Ｗ＝∫〓_Owsinθ dθ＝2W ……(2) で表わされる。一方、スカート中心回わりのせん
断力によるモーメントの合計〓Ｍは、 〓Ｍ＝∫〓_ORsinθ・wsinθdθ＝π／２RW ……(3) となる。但し、Ｒはスカートの半径である。

上式(2)(3)から中心からの重心距離ｌは、 ｌ＝〓Ｍ／〓Ｗ＝π／４Ｒ ……(4) となる。したがつて、中心からの距離ｌ＝π／
４・ｄの位置に補強ビーム２２を配置することで
せん断荷重を最小モーメントアームで支持でき、
かつ補強ビーム２２をせん断荷重作用方向に長手
方向を沿わせることで軸力で支持できる。そし
て、せん断荷重は左右壁に作用するので、補強ビ
ーム２２をＬ＝2lすなわち、Ｌ＝π／４ｄ＝0.785d の間隔で平行配置することで効果的に支持でき
る。この場合、補強ビーム２２の位置は正確に重
心距離に一致させることが望ましいものの、その
近傍でも充分な効果が得られる。したがつて、モ
ーメントアームの最小化をできるだけ図れる許容
範囲として、前記間隔距離Ｌ＝0.785dを中心とす
る0.6d〜0.9dに配置することで足る。

次に、上述した据付具本体２０の前記補強ビー
ム２２の長手方向中心には各々ピン支持ラグ２５
を設けている。このラグ２５はビーム２２の長手
方向に板面を一致させた突片であり、その板面を
貫通するピン孔２６を設けている。ピン孔２６の
中心線はスカート５の中心軸心を通るように設定
され、これに第２図に示した架台８のピン９を装
着させ得るようにしている。また、補強ビーム２
２の一方の先端部にもボトムラグ２７を設け、二
点吊り作業にも供し得るものとしている。

上述したラグ２５を設けた据付具本体２０は、
据付作業時に圧力容器に取付けるものであるが、
この取付けのために、補強ビーム２２のベースプ
レート１０に対面する延長端部をボルト２８によ
つて連結するようにしている。ボルト２８は各種
部で２個ずつ用い、合計８本のボルト２８を使用
している。

このような構成に係るラグ構造の作用は次の如
くなる。まず、横置状態の圧力容器の下端側に設
けたスカート５に対し、セツトリング２１を嵌め
込むとベースプレート１０内に装着され、補強ビ
ーム２２の端部がベースプレート１０に接触して
セツト位置となり、ボルト２８を締め付けてセツ
ト完了する。そして、第１図または第２図に示し
た方法で圧力容器を立設するが、このとき自重に
よりスカート端には第９図の如きせん断力分布が
作用する。しかし、この作用はせん断力分布の重
心位置に吊上荷重作用方向に沿つて配置した補強
ビーム２２により、大半が軸力で受けられる。し
たがつて、モーメントアームの最小化と相俟つて
斯かる補強部材の低減が図られる。そして、この
とき、補強ビーム２２への荷重伝達はベースプレ
ート１０の内面のセツトリング２１を通じて行わ
れ、セツト用のボルト２８には伝達されない。し
たがつて、ボルト２８にはせん断力が作用しない
ので、据付具本体２０をセツトするだけでよく、
小断面のボルトを用いることができ、使用本数も
低減できる。

また、上記構成によれば、補強ビーム２２は井
げた状に組まれ、ベースプレート１０の外面側に
位置するので、スカート５が第１０図の如きミニ
スカートであつても、確実に装着でき、補強スカ
ート５Ａを使用しなくても据付作業ができる。加
えて、セツトボルト２８の本数が少ないので、ス
カート５への着脱作業を迅速に行うことができる
利点がある。

次に、上記据付具の使用例を第１３図に示す。
これは、クレーンとの関係その他の事情により、
スカート側を一点で吊りたい場合に適用した例で
ある。一対の補強ビーム２２端に設けたボトムラ
グ２７に連結可能なプラケツト２９を設けた吊り
ビーム３０を別に準備し、該ビーム３０の中央に
ラグ３１を設け、これにより吊り作業を行えばよ
い。

また、第１４図には一点吊りの為の据付具の変
形例を示す。これはボトムラグ２７を廃し、代わ
りに両補強ビーム２２の先端相互に山形ビーム３
２を設け、該ビーム３２の頂点に吊りラグ３３を
設けたものである。この例も先の例と同様に一点
吊りができ、第１１〜１２図の如き構造のものと
同様の利点があることは明らかである。

〔発明の効果〕

以上の如く、本発明によれば、圧力容器据付時
の容器自重によるスカート端での荷重分布の重心
近傍で支え、荷重の大半を軸力でうけることがで
き、補強部材の軽重化、作業の簡便化を図ること
ができるというすぐれた効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は圧力容器据付作業の二点吊りによる方
法を示す側面図、第２図は他のピン支持による方
法を示す側面図、第３図は従来のラグ補強構造を
示す正面図、第４図は同側面図、第５図は他の従
来例によるラグ補強構造を示す正面図、第６図は
同側面図、第７図は更に他の従来例に係るラグ補
強構造を示す側面図、第８図は同正面図、第９図
はせん断力分布図、第１０図は補助スカートの構
造例を示す断面図、第１１は本発明の実施例に係
る据付具の部分断面側面図、第１２図は同正面
図、第１３図は変形使用例を示す正面図、第１４
図は他の実施例を示す正面図である。 １……圧力容器、５……スカート、１０……ベ
ースプレート、２０……据付具本体、２１……セ
ツトリング、２２……補強ビーム、２５……ピン
支持ラグ、２７……ボトムラグ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 圧力容器の端部にその荷重を支持する円筒状
   のスカートを有し、該スカートの全周端縁部に環
   状ベースプレートを設けた圧力容器用の据付具に
   おいて、前記ベースプレートに内接してセツトリ
   ングが嵌着され、一対の第１の補強ビームおよび
   一対の第２の補強ビームが前記セツトリングの装
   着時に外側となる面に溶着されてある据付具本体
   を有し、前記一対の第１の補強ビームは前記セツ
   トリングの中心から等距離で長手方向が加重方向
   に平行に配置され、他方の一対の第２の補強ビー
   ムは前記第１の補強ビームに直角であつて前記第
   ２の補強ビームどうしが平行に配置されており、
   据付時の圧力容器の荷重を支持するラグが前記第
   １の補強ビームに設けられていることを特徴とす
   る圧力容器据付具。 ２ 前記第１の補強ビーム間距離は前記スカート
   の壁心内径の0.6〜0.9倍とされていることを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載の圧力容器据付
   け具。 ３ 前記据付具本体は前記ベースプレートと前記
   第１および第２の補強ビームを装着するボルトに
   より圧力容器に据付可能としたことを特徴とする
   特許請求の範囲第１項又は第２項記載の圧力容器
   据付具。