JPH05256844A - 液体中のアンモニア濃度測定方法 - Google Patents

液体中のアンモニア濃度測定方法

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JPH05256844A
JPH05256844A JP5577592A JP5577592A JPH05256844A JP H05256844 A JPH05256844 A JP H05256844A JP 5577592 A JP5577592 A JP 5577592A JP 5577592 A JP5577592 A JP 5577592A JP H05256844 A JPH05256844 A JP H05256844A
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ammonia
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Akira Matsunaga
旭 松永
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 消化汚泥のように高濃度のアンモニアを含む
液体のアンモニア濃度を簡易に測定する方法を得ること
を目的とする。 【構成】 被測定試料とブランク試料としての蒸留水と
の両試料を酸性化し、窒素ガス又は二酸化炭素を除去し
た空気を通気して溶解性炭酸を揮散させ、アルカリ溶液
を用いて中和滴定を行い、この中和滴定に要したアルカ
リ溶液の量から被測定試料中の総有機酸濃度を算出し、
更に滴定を継続して溶液中のアンモニウムイオンが遊離
アンモニアになるまでに要したアルカリの滴定量と、蒸
留水を対象として同様に滴定したアルカリ滴定量との差
から被測定試料の総アンモニア濃度を算出する。被測定
試料として消化汚泥の上澄液を遠心分離処理した液体が
用いられ、且つ被測定試料の前処理として、リン不溶化
試薬によるリン酸イオンの除去と、限外濾過装置による
懸濁物質成分及び蛋白質を除去が実施される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は消化汚泥のように比較的
高濃度のアンモニアを含む液体のアンモニア濃度を簡易
に測定する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から水溶液中のアンモニア濃度を測
定する方法として、例えば下水試験方法(1984年
版)には、インドフェノール青吸光光度法、中和滴定
法、イオン電極法が記載されている。これらの各方法を
簡単に説明すると、 (1)インドフェノール青吸光光度法・・・・・試料をアル
カリ性として、加熱蒸留した時に留出するアンモニアを
ほう酸溶液に吸収させ、この留出液中のアンモニウムイ
オンがフェノール及び次亜塩素酸ナトリウムと反応して
生じる青色(インドフェノール青)の吸光度を測定して
アンモニウム性窒素を定量する方法。定量範囲は0.0
05〜0.05mg/l。
【0003】(2)中和滴定法・・・・・試料をアルカリ性
として、加熱蒸留した時に留出するアンモニアを飽和ほ
う酸溶液に吸収させ、この留出液中のアンモニウムイオ
ンを中和滴定によって測定し、アンモニウム性窒素を定
量する方法。定量範囲は0.7〜10mg/l。
【0004】(3)イオン電極法・・・・・試料をアルカリ
性として、加熱蒸留した時に留出するアンモニアを硫酸
に吸収させ、この留出液をpH11〜13としてアンモ
ニウムイオンをアンモニアに変えて、このアンモニアを
イオン電極(アンモニア電極)を用いて測定し、アンモ
ニウム性窒素を定量する方法。定量範囲はアンモニウム
イオンとして0.1〜100mgNH4 +/l。
【0005】一方、上記の既存分析方法とは全く異なる
測定原理を用いて消化汚泥の総有機酸濃度,総アンモニ
ア濃度及び全無機炭素濃度を同時に定量する自動測定方
法及び装置(消化タンクモニタ装置)が提案されてい
る。この方法は、酸,塩基平衡理論に基づいて消化汚泥
を一定のpHに調整するのに必要な酸,塩基の滴定量か
ら有機酸やアンモニア、無機炭素濃度を算出する方法で
あり、測定装置の自動化が比較的容易で実現性の高い方
法である。
【0006】本発明者等は、先に上記の酸,塩基滴定法
に最適化という統計解析方法を導入した新しい測定方法
を開発した。即ち、pH滴定曲線を利用して化学平衡式
と電荷バランス式より導いた式の重回帰分析より算出し
た総有機酸濃度,総アンモニア濃度及び全無機炭素濃度
等を初期値として、シンプレックス法を用いて最適化処
理を行う方法である。ここで最適化処理の評価関数は、
各pHの実測値と計算値の二乗和として、この最小値を
与える総有機酸濃度,総アンモニア濃度及び全無機炭素
濃度を算出して滴定法による測定値とした(特願平3−
301455号及び特願平3−340549号等)。こ
の方法によって総有機酸,総アンモニア及び全無機炭素
の三者とも500から1000mg/lの濃度範囲では
測定値が10〜20%の誤差の範囲内に入り、総アンモ
ニアと全無機炭素に関しては実用上満足できる測定精度
が得られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記のイ
ンドフェノール青吸光光度法、中和滴定法、イオン電極
法によるアンモニア濃度測定方法は、操作が煩瑣で測定
時間がかかる上、試料の希釈等に起因する測定精度の低
下が発生し易く、且つ測定操作を自動化することが困難
であるという課題があった。
【0008】即ち、上記の各測定方法を用いて消化汚泥
のようにアンモニア性窒素濃度が数百から数千mg/l
程度の高濃度の試料の測定を行う場合には、試料の希釈
を行う必要がある。しかしながら試料の希釈を行う場
合、一般に希釈倍率が高くなるほど測定精度が低下する
ことが知られている。従って高アンモニア濃度の試料を
測定する場合には、上記3方法の中で定量範囲が比較的
広く、且つ希釈の程度が低くて済む前記(3)のイオン
電極法が一般に採用されている。
【0009】しかしイオン電極法を用いても、同一試料
の繰返し測定誤差が5〜20%あり、蒸留操作に時間が
かかる等、測定精度や測定操作の面において改善の余地
がある。又、消化タンクの維持管理を目的としたアンモ
ニアの測定の場合を例にとると、測定精度は現状のイオ
ン電極法と同じレベルか、もしくはやや劣る程度でも良
いが、測定時間が短縮された自動測定装置の開発が望ま
れている現状にある。
【0010】更に前記した酸,塩基滴定法を利用した自
動測定装置は現在開発中であるが、消化汚泥試料の固液
分離装置、酸,塩基滴定装置、パソコン等の制御装置か
ら構成される測定装置の価格は極めて高価であり、従っ
てこのような高価な測定装置を用いずに測定時間が短縮
された測定方法があれば、仮りに測定精度はイオン電極
法と同程度かやや劣るとしても実用上有用であると考え
られる。
【0011】そこで本発明は、操作が簡易化されて測定
時間が短縮できる上、試料の希釈等に起因する測定精度
の低下が発生せず、しかも価格の高騰化をともなわずに
測定操作の自動化を可能とするアンモニア濃度測定方法
を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達
成するために、被測定試料とブランク試料としての蒸留
水を用意して両試料を酸性化し、両試料に窒素ガス又は
二酸化炭素を除去した空気を一定時間通気して試料中の
溶解性炭酸を揮散させ、アルカリ溶液を用いて中和滴定
を行い、この中和滴定に要したアルカリ溶液の量から被
測定試料中の総有機酸濃度を算出するとともに、更に滴
定を継続して溶液中のアンモニウムイオンが遊離アンモ
ニアになるまでに要したアルカリの滴定量と、蒸留水を
対象として同様に滴定したアルカリ滴定量との差から総
アンモニア濃度を算出することを特徴とする液体中のア
ンモニア濃度測定方法をその実現手段としている。
【0013】上記の被測定試料は、消化汚泥の上澄液を
遠心分離処理して得られた液体であり、測定精度を高め
るための前処理として、該試料にリン不溶化試薬を添加
して試料中のリン酸イオンを不溶性の塩として除去する
方法と、該試料を限外濾過装置にかけて、妨害物質とし
ての液中の懸濁物質成分及び蛋白質を除去する方法を採
用する。
【0014】前記溶液中のアンモニウムイオンが遊離ア
ンモニアになるまでに要したアルカリの滴定量とは、試
料のpHが7から11.5になるまでに要したアルカリ
量を用いている。
【0015】
【作用】かかる請求項1記載のアンモニア濃度測定方法
によれば、消化汚泥等の被測定試料とブランク試料と両
試料を酸性化し、窒素ガス又は二酸化炭素を除去した空
気を通気することによっての溶解性炭酸が揮散される。
その後にアルカリ溶液を用いて中和滴定を行い、この中
和滴定に要したアルカリ溶液の量から被測定試料中の総
有機酸濃度が算出される。
【0016】更に滴定を継続し、溶液中のアンモニウム
イオンが遊離アンモニアになるまでに要したアルカリの
滴定量,即ち、pHが7から11.5になるまでに要し
たアルカリ滴定量と、ブランク試料を対象とした同様な
アルカリ滴定量との差から、請求項6に記載した演算式
によって総アンモニア濃度が算出される。
【0017】又、請求項3,4に記載したように、前処
理として試料にリン不溶化試薬を添加することによって
試料中のリン酸イオンが不溶性の塩として除去され、更
に試料を限外濾過装置にかけることによって妨害物質と
しての液中の懸濁物質成分及び蛋白質が除去されて、ア
ンモニア測定値に対する正の誤差が減少する。
【0018】
【実施例】以下本発明にかかる液体中のアンモニア濃度
測定方法の一実施例を詳述する。本願出願人は、先に特
願平3−216818号によってメタン発酵槽の有機酸
測定方法に関する提案を行ったが、本発明は上記の提案
技術に改良を加えて、有機酸のみならずアンモニア濃度
をも測定可能としたことを特徴としている。
【0019】先ず図1に基づいて本発明の測定原理を説
明する。まずステップ101により被測定試料としての消
化汚泥の上澄液を遠心分離法によって採取して試料と
し、次段のステップ102により該試料にリン不溶化試薬
を添加した後、再度遠心分離機にかけ、更にステップ10
3によって試料を限外濾過装置を用いて処理する。そし
てステップ104で限外濾過装置の濾過膜を透過した試料
から50mlを採取する。
【0020】上記のステップ102でリン不溶化試薬を添
加する理由として、通常消化汚泥にはリン酸塩がかなり
含まれており、このリン酸塩が測定結果に対して正の誤
差を与えてしまうことが考慮される。従って本実施例で
は後述する操作に基づいてリン酸塩を除去した。更にス
テップ103で限外濾過装置を用いる理由として、水中の
懸濁物質(ss成分)とか緩衝性のある蛋白質を除去す
ることにより、アンモニア濃度測定時における妨害物質
をなくして測定誤差を低減することにある。
【0021】尚、ステップ102,103は、本実施例におけ
る測定精度を高めるために実施するものであり、測定精
度を多少犠牲にしても速度を重視する場合には、該ステ
ップ102,103は省略しても良い。
【0022】次段のステップ105では、上記試料に(1
+1)硫酸を加えてpH2.5以下に酸性化し、次にス
テップ106で窒素通気法,即ち窒素ガスN2を30分間バ
ブリングを行うか、又は旧下水試験方法1974年版の
直接滴定法で採用されている加熱還流手段、もしくは真
空吸引を行う。上記加熱還流手段とは、酸性化した検体
をホットプレート等のヒーター上で還流冷却器をつけて
5分間沸騰する方法である。又、上記窒素ガスN2に代
えて二酸化炭素が除去された空気を用いることも可能で
ある。このステップ106によって試料中の溶解性炭酸が
揮散される。
【0023】次にステップ107でアルカリ溶液としての
1N水酸化ナトリウム溶液で試料のpHが3になるよう
に調整し、次段のステップ108でN/10又は1N水酸
化ナトリウムを用いて中和滴定を行う。
【0024】上記とは別途に、ステップ109によってブ
ランク試料としての蒸留水50mlを準備して、この蒸
留水に上記ステップ105〜108と同一の処理を実施する。
【0025】ステップ108における滴定用アルカリとし
て用いるN/10水酸化ナトリウムは、低濃度の有機酸
を測定するには適しているが、高濃度の有機酸とアンモ
ニアを測定するには適していないので、低濃度有機酸の
測定精度を犠牲にしても測定のスピードアップをはかる
という観点から、始めから1N水酸化ナトリウムを用い
て滴定することも考慮される。
【0026】更にステップ110により、pH4からpH
7になるまでに要したアルカリの滴定量から総有機酸濃
度を算出する。そしてステップ112により、滴定pH補
正表を用いて滴定pH範囲を選定し、ステップ113によ
って上記滴定pH範囲に相当する滴定量とブランク試験
の滴定量から総有機酸濃度を算出する。
【0027】上記の有機酸濃度算出から更に滴定を継続
して、ステップ111によりpH7からpH11.5にな
るまでに要したアルカリの滴定量と、蒸留水を対象とし
て同様にpH4からpH11.5になるまでに要したア
ルカリ溶液の量(ブランクテスト)を測定して、後述す
る計算式に基づいて総アンモニア濃度を算出する。
【0028】このステップ111における総アンモニア濃
度の算出時において、滴定pH範囲を7から11.5に
したのは以下の理由による。即ち、通常溶液中のアンモ
ニアの存在形態とpHとの関係から該アンモニアは中性
付近ではほとんどアンモニウムイオンとして存在してい
るが、pH11.5ではほとんど遊離アンモニアとな
る。従ってpH11.5以上ではアンモニウムイオンの
遊離アンモニアへの変化はなく、水素イオンが放出され
ることもないので、本滴定における終点とみなすことが
できる。
【0029】ステップ111でアルカリ滴定量からアンモ
ニア濃度を算出する計算式は次式のよう表わすことが出
来る。
【0030】
【数2】 総アンモニア(mg・N/l)=(a−b)F×(1000/検体ml)×14×1.3 ・・・・・・(1) ここでa;試料の滴定pH範囲(7〜11.5)に相当する
滴定量 b;蒸留水の滴定pH範囲(7〜11.5)に相当する滴定
量 F;1N水酸化ナトリウム溶液のファクター (1)式で14は濃度換算係数、1.3はリン不溶化処理を
行った場合のリン不溶化試薬添加による希釈を考慮した
換算係数である。アルカリとして0.1N・NaOHを用い
た場合には更に係数0.1を乗じる。
【0031】又、蒸留水によるブランク試験を実施した
理由は、試料中へ空気中の二酸化炭素が溶解することを
完全に防止することは不可能であるため、同一の試験条
件下における二酸化炭素の溶解による滴定量の増加分
と、蒸留水のpH上昇に必要な滴定量を求めて、これら
の合計量を検体の滴定量から差し引くことが合理的であ
るという根拠に基づいている。
【0032】消化汚泥は溶解性炭酸の濃度が高いことか
ら、総アンモニアの直接滴定において妨害分子として最
も影響が大きいのは溶解性炭酸であるが、リン酸イオン
や硫化物イオンも無視することは出来ない。又、蛋白質
やSS成分に含まれる可溶性固形硫化物もpH緩衝作用
があるので、アンモニアの直接滴定において妨害因子に
なると考えられる。従ってこれらの妨害因子の影響を減
少させない限り、アンモニアの直接滴定の測定精度を高
めることは困難である。
【0033】そこで本実施例では以下の実験により測定
精度の検証を行った。先ずアンモニア、溶解性炭酸、有
機酸、リン酸イオン、硫化物イオン等を含む人工試料を
用いて以下の手順でリン酸イオンの除去操作を行った。
即ち、人工試料100mlに対して、塩化カルシウム溶
液(1.1W/V%)20ml,水酸化ナトリウム溶液
(1W/V%)と炭酸ナトリウム溶液(1.3W/V
%)の等容混合液10mlを加えてマグネチックスター
ラで5分間撹拌した後、3000rpm,5分間の遠心
分離を行い、上澄液を採取して滴定用試料とした。
【0034】この試料を用いて図1に示す各ステップに
基づく直接滴定操作を実施してアンモニア濃度を測定し
た。図2はリン酸イオンを不溶性の塩として除去した場
合のアンモニア調整濃度と直接滴定法による測定値の相
関を示すグラフ、図3はリン酸イオンを除去していない
場合の同様な相関を示すグラフであり、図2の場合に
は、アンモニアの測定値と調整濃度の相関回帰式は、Y
=0.936X+6.2(r=0.9992)であり、
図3の場合の相関回帰式は、Y=0.985X+49.
5(r=0.9994)であった。又、両図とも○印を
付した試料の全無機炭素濃度は500(mg/l),総
有機酸濃度は100(mg/l),総アンモニア濃度は
0〜2000(mg・N/l),リン酸イオン濃度は2
50(mg・P/l),硫化物イオン濃度は10(mg・
S/l)であり、△印を付した試料の全無機炭素濃度は
1000(mg/l),総有機酸濃度は100(mg/
l),総アンモニア濃度は0〜1500(mg・N/
l),リン酸イオン濃度は125(mg・P/l),硫
化物イオン濃度は0(mg・S/l)であった。
【0035】リン酸イオンの除去操作を行わなかった場
合には、アンモニア調整濃度が200mg/l以下にお
いてリン酸イオンによるものと考えられる正の誤差が発
生するが、アンモニア調整濃度が500〜2000mg
/lでリン酸イオン濃度が250mg/l以下の場合に
は、リン酸イオンを除去しなくてもアンモニア測定値は
10%k誤差範囲内に入っていることが確認された。
【0036】リン酸の化学平衡式は以下の(2)(3)
(4)式で表わすことができる。
【0037】 H3PO4 ←→ H2PO4 -+H+ ・・・・・(2) H2PO4 - ←→ HPO4 -+H+ ・・・・・・(3) HPO4 2- ←→ HPO4 2-+H+ ・・・・・(4) 従ってリン酸イオンは解離して水素イオンを放出するた
め、アルカリを消費する。このリン酸イオンを滴定前に
除去することによりアンモニアの測定誤差が低減され
る。
【0038】又、前記ステップ103における限外濾過装
置は、緩衝性のある蛋白質を除去するだけでなく、ss
成分(Suspended solid,水中の懸濁物質)をも除去す
る作用を有している。このss成分中には金属硫化物も
含まれており、その一部は酸性条件下で流出する。更に
アルカリを添加すると一部は金属水酸化物として沈澱す
るので、アルカリ消費物質でもある。従って限外濾過を
行うことは、アンモニア濃度測定時における妨害物質を
除いて測定誤差を低減する効果がある。
【0039】次に実際の消化汚泥を用いて本実施例に基
づく総アンモニア濃度と総有機酸濃度を測定した結果を
表1,表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】表1は、リン除去+限外濾過した試料と、
リン除去しただけの試料と、遠心分離しただけの3種の
試料に関して本実施例にかかる窒素通気直接滴定法を行
った場合の総アンモニア濃度(mg・N/l)の測定結
果と、遠心分離+限外濾過した試料について蒸留イオン
電極法による総アンモニア濃度の測定結果を比較した表
である。この表1によれば、リン除去+限外濾過した試
料を窒素通気直接滴定法を用いて測定した総アンモニア
濃度がイオン電極法による測定値に最も近いことが判明
した。又、リン除去しただけの試料と、遠心分離しただ
けの試料は、pH緩衝性物質の除去が不十分と考えら
れ、従って限外濾過処理を行うことによって蛋白質とか
可溶性固形硫化物の除去を行うことは正の誤差を減少さ
せる作用があることが判明した。更に蒸留イオン電極法
による総アンモニア濃度の繰返し測定誤差が5〜20%
であるのに対して、本実施例を適用した試料は蒸留イオ
ン電極法と比較して試料番号4のみ約35%の差がある
ものの、それ以外の各試料は3〜18%と誤差範囲内に
入っていることがわかる。
【0043】表2は同様にリン除去+限外濾過した試料
と、リン除去しただけの試料と、遠心分離しただけの3
種の試料に関して本実施例にかかる窒素通気直接滴定法
を行った場合の総有機酸濃度(mg/l)の測定結果
と、遠心分離+限外濾過した試料についてイオンクロマ
トグラフィー法による総有機酸濃度の測定結果を比較し
た表である。表2によれば、本実施例にかかる測定方法
によって総アンモニア濃度と総有機酸濃度とが同時に測
定可能であることがわかる。尚、本測定時には、1N・
NaOHを用いた滴定しているため、有機酸濃度が低い
試料番号1,2,3の各試料では既存の分析方法である
イオンクロマトグラフィー法による測定値との間に差が
生じており、従って測定精度を上げるためには滴定用の
アルカリ濃度を低くすることが必要であると思われる。
【0044】本発明にかかるアンモニア濃度測定方法に
関しては、以下にように考察される。即ち、有機酸の簡
易測定法である直接中和滴定法(下水試験方法1974
年版)と類似の方法に基づいて、アンモニアの蒸留操作
を省略した直接滴定法が考えられる。図4は全アンモニ
ア中のアンモニア(%)とpHとの関係を示すグラフで
ある(用水廃水便覧の第1225頁から引用)。通常ア
ンモニアは酸性や中性の条件下では大部分NH4イオン
として存在するが、pHが高くなるほど遊離アンモニア
として存在する比率が高くなる。
【0045】アンモニアの化学平衡式は(5)式で表わ
される。 NH4 + ←→ NH3+H+ ・・・・・・・・・(5) この(5)式によれば、アンモニウムイオンが遊離アン
モニアになる際に水素イオンを放出するので、pHを高
めるためにはこの水素イオンを中和するのに必要な分量
で溶液のpHを高めるのに必要な分量の和に相当する当
量と等当量のアルカリを加える必要がある。
【0046】アンモニアのみを含む溶液であれば、直接
滴定により所定のpHに調整するのに必要なアルカリ量
からアンモニア濃度を測定することができる。しかしな
がら消化汚泥のような試料は通常溶解性炭酸を含んでい
る。この溶解性炭酸の化学平衡式は H2O+CO2 ←→ H2CO3・・・・・・(6) H2CO3 ←→ HCO3 -+H+・・・・・(7) HCO3 - ←→ CO3 2-+H+・・・・・・(8) 式で表わすことができる。図5はpHに対する全炭酸、
即ち上記のH2CO3,HCO3 -,CO3 2-の濃度分布
(25℃)を示すグラフである。
【0047】溶解性炭酸を含む試料にアルカリを加えて
pHを高めていくと、溶解性炭酸は水素イオンを放出し
て最終的に炭酸イオン(CO3 2-)になるので、水素イ
オンの放出量に相当する分量と等当量のアルカリを余分
に加えなければならない。
【0048】従って溶解性炭酸が共存する条件では、ア
ンモニアを直接滴定する事はできないが、溶解性炭酸や
その他の緩衝性物質を除去すればアンモニアの直接滴定
は可能であると考えられる。しかしながら現在までのと
ころ、溶液中のアンモニア濃度を溶解性炭酸の除去後、
直接滴定により測定する方法は提案されていない。これ
は溶解性炭酸以外にアルカリを消費する物質が試料中に
入っている場合が多いために測定精度が低くなるためと
推察される。
【0049】そこで人口試料を用いたアンモニア直接滴
定における妨害物質の影響について検討して以下の結果
が得られた。先ずアンモニアのみを含む人口試料及びア
ンモニアと溶解性炭酸を含む試料について、無処理で直
接滴定した場合のアンモニア測定値と調整濃度の関係を
図6に示す。ここでアンモニアのみを含む試料では該ア
ンモニアの測定値と調整濃度の相関回帰式は、Y=0.
976X+8.2(r=0.9996)であり、良好な
相関が見られた。しかし溶解性炭酸が含まれるとアンモ
ニアの測定値が高くなる傾向が見られた。尚、図中○印
の試料の全無機炭素と総有機酸濃度は0、総アンモニア
濃度は0〜1000(mg・N/l)であり、図中の□
印の試料の全無機炭素は500(mg・C/l)、総有
機酸濃度は0、総アンモニア濃度は500(mg・N/
l)であった。
【0050】一方、図7はアンモニア直接滴定における
妨害物質の影響(その1)を調べるために、溶解性炭酸
のみを含む試料について無処理で直接滴定を行った場合
の滴定量から後述するアンモニア濃度計算式を用いて相
当するみかけのアンモニア濃度を算出したものである。
具体的には全無機炭素の既定濃度におけるpH7から1
1.5の滴定量を総アンモニア濃度に換算した。
【0051】全無機炭素として表示した1(mg・C/
l)の溶解性炭酸は、総アンモニア濃度1.21(mg
・N/l)に相当し、溶解性炭酸はアンモニアの直接滴
定において正の誤差を与えることがわかる。
【0052】更に図8(A)(B)(C)はアンモニア
直接滴定における妨害物質の影響(その2)を調べたも
のであり、同図からリン酸イオンの1(mg・P/l)
は総アンモニアの0.14(mg・N/l)に相当し、
硫化物イオンの1(mg・S/l)は総アンモニアの
0.22(mg・N/l)に相当し、酢酸1mg/lは
総アンモニアの0.007(mg・N/l)に相当する
ことが判明した。従ってリン酸イオンと硫化物イオン
は、アンモニアの直接滴定において正の誤差を与えるこ
とがわかる。又、酢酸は実質的に妨害しないことが判明
した。
【0053】尚、有機酸の濃度が高くなると、アンモニ
アの測定値に正の誤差を生じることが考慮されるが、そ
の影響の程度は有機酸1000mg/lに対して正の誤
差は7mg/l程度であり、この誤差は実質的に無視す
ることができる。
【0054】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にか
かるアンモニア濃度測定方法によれば、被測定試料を酸
性下で窒素通気することによって溶解性炭酸と硫化物イ
オンを大気中に揮散させて除去する作用があり、ブラン
ク試料とともにアルカリ溶液の直接滴定を行うことによ
って液体中の有機酸濃度と総アンモニア濃度を同時に算
出することができる。又、滴定用のアルカリの濃度を変
えることにより、試料の希釈操作なしで低濃度から高濃
度までの広範囲の有機酸濃度とアンモニア濃度を測定す
ることができる。
【0055】更に本発明によれば、従来のインドフェノ
ール青吸光光度法とか中和滴定法もしくはイオン電極法
によるアンモニア濃度測定方法に比して操作が簡易化さ
れる上、測定時間が短縮されるという効果があり、且つ
試料の希釈等に起因する測定精度の低下が発生しないと
いう効果がある。特に消化汚泥のようにアンモニア性窒
素濃度が数百から数千mg/l程度の高濃度の試料の測
定を行う場合にあっても試料の希釈を行う必要がなく、
且つ同一試料の繰返し測定誤差を許容範囲にすることが
可能である。
【0056】又、消化汚泥試料の固液分離装置とかパソ
コン等の高価な制御装置を用いなくとも実用上満足でき
る測定精度が得られ、しかも測定操作の自動化を可能と
するアンモニア濃度測定方法を提供することが出来る。
【0057】被測定試料の前処理としてリン不溶化試薬
を用いて、pH緩衝作用のあるリン酸イオンを不溶性の
塩として除去することにより、アンモニア濃度の測定値
に与える正の誤差が減少し、更に前試料として限外濾過
装置にかけて同様にpH緩衝作用のあるss成分中の酸
可溶性固形硫化物とか蛋白質を除去することにより、妨
害物質による正の誤差をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明装置の測定原理を説明するための概要
図。
【図2】リン酸イオンを除去した場合のアンモニア調整
濃度と直接滴定法による測定値の相関を示すグラフ。
【図3】リン酸イオンを除去していない場合のアンモニ
ア調整濃度と直接滴定法による測定値の相関を示すグラ
フ。
【図4】アンモニア濃度とpHとの相関を示すグラフ。
【図5】pHに対する全炭酸の濃度分布を示すグラフ。
【図6】人工試料のアンモニア直接滴定結果を示すグラ
フ。
【図7】アンモニア直接滴定における妨害物質の影響
(その1)を示すグラフ。
【図8】アンモニア直接滴定における妨害物質の影響
(その2)を示すグラフ。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被測定試料とブランク試料としての蒸留
    水を用意して両試料を酸性化し、両試料に窒素ガス又は
    二酸化炭素を除去した空気を一定時間通気して試料中の
    溶解性炭酸を揮散させ、アルカリ溶液を用いて中和滴定
    を行い、この中和滴定に要したアルカリ溶液の量から被
    測定試料中の総有機酸濃度を算出するとともに、更に滴
    定を継続して溶液中のアンモニウムイオンが遊離アンモ
    ニアになるまでに要したアルカリの滴定量と、蒸留水を
    対象として同様に滴定したアルカリ滴定量との差から被
    測定試料の総アンモニア濃度を算出することを特徴とす
    る液体中のアンモニア濃度測定方法。
  2. 【請求項2】 前記被測定試料は、消化汚泥の上澄液を
    遠心分離処理して得られた液体である請求項1記載の液
    体中のアンモニア濃度測定方法。
  3. 【請求項3】 被測定試料の前処理として、該試料にリ
    ン不溶化試薬を添加して試料中のリン酸イオンを不溶性
    の塩として除去することを特徴とする請求項1記載の液
    体中のアンモニア濃度測定方法。
  4. 【請求項4】 被測定試料の前処理として、該試料を限
    外濾過装置にかけて、妨害物質としての液中の懸濁物質
    成分及び蛋白質を除去することを特徴とする請求項1記
    載の液体中のアンモニア濃度測定方法。
  5. 【請求項5】 溶液中のアンモニウムイオンが遊離アン
    モニアになるまでに要したアルカリの滴定量は、試料の
    pHが7から11.5になるまでに要したアルカリ量で
    ある請求項1記載の液体中のアンモニア濃度測定方法。
  6. 【請求項6】 被測定試料へのアルカリ滴定量aと、蒸
    留水を対象として滴定したアルカリ滴定量bとの差か
    ら、アルカリ溶液のファクターをFとして、 【数1】総アンモニア(mg・N/l)=(a−b)F×(10
    00/検体ml)×14×1.3 式によって総アンモニア濃度を算出することを特徴とす
    る請求項1記載の液体中のアンモニア濃度測定方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005131452A (ja) * 2003-10-28 2005-05-26 Kobelco Eco-Solutions Co Ltd アンモニア性窒素含有排水の硝化方法
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CN114019087A (zh) * 2021-10-18 2022-02-08 福建傲农生物科技集团股份有限公司 一种测定沸石粉吸氨量的方法

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