JPH05256797A - 光磁気記録媒体の検査方法 - Google Patents

光磁気記録媒体の検査方法

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JPH05256797A
JPH05256797A JP5764192A JP5764192A JPH05256797A JP H05256797 A JPH05256797 A JP H05256797A JP 5764192 A JP5764192 A JP 5764192A JP 5764192 A JP5764192 A JP 5764192A JP H05256797 A JPH05256797 A JP H05256797A
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thin film
film
sample
recording medium
peak
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JP5764192A
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English (en)
Inventor
Yuji Takatsuka
裕二 高塚
Yukinobu Yoneyama
幸伸 米山
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Daicel Corp
Sumitomo Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Sumitomo Chemical Co Ltd
Daicel Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 光磁気記録媒体の多層薄膜内に存在するガス
元素を高い精度で定量できる検査方法を提供すること。 【構成】 荷電粒子加速装置1から単一のエネルギーを
持ったヘリウム原子核を放出して試料台2上の試料3へ
衝突させると共に、試料3の衝突面に対し荷電粒子加速
装置1側の特定方向へ後方散乱されたヘリウム原子核の
エネルギースペクトルを測定して試料3内に存在するガ
ス元素を定量することを特徴とする。そして、従来の検
査方法に較べ試料3表面をスパッタエッチングして分析
対象である薄膜を露出させる必要がないため定量誤差が
起き難く、かつ、分析対象である薄膜の酸化も防止され
るため上記ガス元素を高い精度で定量することが可能と
なり、この結果、多層薄膜の適正な製膜条件が求められ
磁気特性の揃った光磁気記録媒体を安定して量産できる
効果を有している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は光磁気記録媒体の検査方
法に係り、特に、磁性膜を主要部とした多層薄膜の製膜
時に不可避的に混入され薄膜の物理的性質に大きな影響
を与えるアルゴン等のスパッタリングガス元素や酸素等
の残留ガス元素をラザフォード後方散乱(Rutherford
backscattering)法を用いて高精度に定量できる検査方
法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁性膜を主要部とした多層薄膜をスパッ
タリング法や蒸着法等により基板上に製膜して光磁気記
録媒体を製造する際、ターゲットのスパッタリングに適
用されたガス元素や製膜室内の残留ガス元素が上記多層
薄膜中に混入することは良く知られている。また、薄膜
中に混入されたガス元素は一般に深さ方向に分布をもつ
場合が多く、かつ、薄膜が複数の層から構成される多層
薄膜においては各層によって混入したガス元素の濃度が
異なる場合が一般的である。
【0003】そして、ガス元素が薄膜中に混入すると薄
膜の物理的性質に大きな影響を与える。我々は、光磁気
記録膜のようなフェリ磁性体においては1 atm%以下の
ガス元素の混入に伴う組成変動が起こっても磁化やキュ
リー温度等の磁気特性に大きな影響を及ぼしてしまうこ
とを平均場近似を用いた磁気特性のコンピュータシミュ
レーションによりすでに見出している(IEEE TRANSACTI
ON ON MAGNETICS,VOL.26,NO.5 SEPTEMBER 1990年 1909-
1911頁参照)。
【0004】従って、磁気特性の揃った光磁気記録媒体
を安定して製造するためには、製造された光磁気記録媒
体の多層薄膜内に存在するガス元素の濃度を定期的に検
査し、その検査結果に基づいて製膜室内の真空度やガス
圧、ガス流量等の製膜条件を適正な値に設定することを
必要とする。
【0005】ところで、薄膜の組成分析には、従来、蛍
光X線、EPMA、オージェ電子分光、XPS(X線光
電子分光法)、SIMS(二次イオン質量分析)等が利
用されており、多層薄膜の深さ方向の分析には上記オー
ジェ電子分光、XPS、SIMSが広く用いられてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これ等オージ
ェ電子分光、XPS、及び、SIMS等の分析方法を適
用した場合、多層薄膜の深さ方向の組成を調べるために
は真空中で薄膜表面をスパッタエッチングし分析対象で
ある各層を順次露出させる必要があるため、薄膜内に存
在するガス元素を高い精度でもって定量できない問題点
があった。
【0007】すなわち、薄膜内に存在するガス元素が上
記スパッタエッチング時に膜中から離脱して定量誤差が
起き易く、かつ、スパッタエッチングに適用されたガス
元素と薄膜内に含まれるガス元素とが同一の場合にはそ
の区別が困難なため、上記従来法においては薄膜内に存
在するガス元素を1 atm%以下のレベルで定量できない
問題点があった。
【0008】特に、TbFeCo等の磁性膜は酸化を受
け易い性質を有しているため、分析途中で分析室内の残
留酸素により上記磁性膜が酸化されることがあり、薄膜
内に存在する酸素元素の定量が実質的に困難となる問題
点があった。
【0009】このため、製膜条件や製膜に用いた装置が
相違すると、製膜された各多層薄膜が従来の検査法では
同じ組成比と分析された光磁気記録媒体であるにも拘ら
ずその磁気特性が異なる場合があり、その原因がはっき
り分らず磁気特性の揃った光磁気記録媒体を安定して製
造できない問題点があった。
【0010】本発明はこの様な問題点に着目してなされ
たもので、その課題とするところは、多層薄膜内に存在
するガス元素を0.1 atm%程度の高い精度で定量でき
る光磁気記録媒体の検査方法を提供しもって上記問題点
を解消することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち請求項1に係る
発明は、希土類金属−遷移金属から成る磁性膜を主要部
とした多層薄膜が基板上に積層されている光磁気記録媒
体の検査方法を前提とし、上記多層薄膜面へ単一のエネ
ルギーを持った荷電粒子を照射すると共に、この照射面
に対し照射源側の特定の方向へ後方散乱された荷電粒子
のエネルギースペクトルを測定して多層薄膜内に存在す
るガス元素を定量することを特徴とするものであり、他
方、請求項2に係る発明は請求項1に係る光磁気記録媒
体の検査方法を前提とし、上記希土類金属−遷移金属か
ら成る磁性膜の膜厚が600Å以下に設定され、かつ、
定量されるガス元素がアルゴンであることを特徴とする
ものである。
【0012】以下、請求項1〜2に係る検査方法につい
て図面を参照して説明する。
【0013】まず、図1はこの検査方法に用いられる機
器の配置を示した概念図であり、荷電粒子加速装置1か
ら1〜2MeVの単一のエネルギーを持ったヘリウム原
子核(He+ )が放出されて試料台2上の試料3に衝突
し、試料3中の構成原子とヘリウム原子核(He+ )が
弾性衝突を起こしてヘリウム原子核(He+ )が散乱さ
れる。ここで、図1に示すように入射方向に対し90°
〜180°の角(θ)をなす方向に検出装置4を配置
し、散乱されたヘリウム原子核(He+ )を検出する分
析方法を上述したラザフォード後方散乱(Rutherford
backscattering)法という。
【0014】そして、理想的な弾性散乱の場合は衝突す
る試料中の構成原子の質量と散乱角度(θ)によって散
乱されたヘリウム原子核(He+ )の持つエネルギーが
一義的に決められる。従って、特定の散乱角度(θ)に
検出装置4を固定し、この検出装置4により散乱された
ヘリウム原子核(He+ )の持つエネルギーを測定すれ
ば元素の分析が可能となる。
【0015】また、単一のエネルギーを持ったヘリウム
原子核(He+ )等の荷電粒子が物質中を高速で通過す
ると、その物質の密度と膜厚に応じて一定の割合で上記
荷電粒子はその運動エネルギーを失う。この原理を用い
て多層膜における各層の分析が可能となる。
【0016】そこで、このラザフォード後方散乱法によ
り光磁気記録媒体の多層薄膜を分析する方法について図
2〜図3を用いて説明する。
【0017】まず、図2は、光磁気記録媒体の構成断面
図を示したもので、基板5と、この上に積層された化合
物AmBn層(A,Bは元素名、m,nは元素比をそれ
ぞれ示す)6と、この上に積層されたC層(Cは元素名
を示す)7と、この上に積層された化合物AxBy層
(A,Bは元素名、x,yは元素比をそれぞれ示す)8
とでその主要部が構成されている。尚、構成元素の原子
番号はC>B>Aの関係にあり、基板5を構成している
原子はAよりも軽い元素である。
【0018】また、図3は、図2に示された光磁気記録
媒体の多層薄膜についてラザフォード後方散乱法により
分析を行って得られたエネルギースペクトルを示すグラ
フ図である。ここで、この縦軸は、BACKSCATTERING YIE
LD(バックスキャッタリングイールド)と呼ばれ散乱さ
れたヘリウム原子核(He+ )の数に対応した量を示し
ており、また、横軸は、CHANNEL NUMBER(チャネル ナ
ンバー)と呼ばれ散乱されたヘリウム原子核(He+
が持っている運動エネルギーに対応した量を示してい
る。
【0019】そして、この図3において、0 チャネル
ナンバーから続いているなだらかなピーク9が基板5
の情報を示し、次のピーク10,11が元素A、ピーク
12,13が元素B、ピーク14が元素Cから散乱され
たヘリウム原子核(He+ )を示している。また、ピー
ク10と12はAmBn層6を示しそのピークの面積比
が組成比を表し、他方、ピーク11と13はAxBy層
8を示しそのピークの面積比が組成比を表している。
【0020】従って、このエネルギースペクトルから上
記多層薄膜の組成分析が可能となり、かつ、多層薄膜内
に存在するガス元素の定量も可能となる。特に、この検
査方法においては、従来法のように薄膜表面をスパッタ
エッチングして分析対象である各層を露出させる必要が
ないため定量誤差が起き難く、かつ、分析対象である各
層の酸化も防止されるため上記ガス元素を高い精度で定
量できる利点を有している。
【0021】また、このラザフォード後方散乱法により
多層薄膜の組成分析を行う場合、上述したように薄膜の
膜厚と密度に応じて荷電粒子がその運動エネルギーを失
うことになるため、その構成元素に対応したピークのエ
ネルギー位置が本来の位置からずれて現れることにな
る。従って、多層薄膜の構成元素が既知の場合には、薄
膜の膜厚又は密度を他の手段で予め測定しておくことに
より、既知元素に対応したピークの出現エネルギーの位
置ずれから未知の密度又は膜厚を求めることが可能とな
る。特に、膜厚1000Å以下の薄膜の密度を測定する
ことは通常の体積法のような方法では困難なため、ピー
クの出現エネルギーの位置ずれからその密度が求められ
る上記手段は有益な方法となる。
【0022】ここで、希土類金属−遷移金属から成る磁
性膜を主要部とした多層薄膜の組成分析を上記ラザフォ
ード後方散乱法により行う場合、遷移金属元素に対応し
たピークのエネルギー位置とアルゴン元素に対応したピ
ークのエネルギー位置とが近似しているため、磁性膜の
設定密度又は膜厚如何によって遷移金属元素に対応した
ピークのエネルギー位置が低エネルギー側に伸びてアル
ゴンのピーク位置と重なってしまいアルゴンの定量に悪
影響を及ぼすことがある。この場合、磁性膜の密度か膜
厚のいづれか一方を制御して遷移金属元素に対応したピ
ークの低エネルギー側への伸びを防止すればよいが、光
磁気記録媒体においてその磁性膜の密度は通常6〜8.
5g/ccに設定されており簡単に制御できるものでは
ないことを考えると、希土類金属−遷移金属から成る磁
性膜の膜厚を制御することが望ましい。
【0023】上述した請求項2に係る発明はこの様な技
術的理由から創作されたものであり、上記希土類金属−
遷移金属から成る磁性膜の膜厚を制御するに当たりその
膜厚を600Å以下に設定し、遷移金属元素に対応した
ピークのエネルギー位置とアルゴン元素に対応したピー
クのエネルギー位置との重なりを防止してアルゴンを
0.1 atm%程度の高い精度で定量できるようにしたも
のである。
【0024】尚、請求項1〜2に係る発明において検査
対象である光磁気記録媒体の基板に適用できる材料とし
ては、従来同様、ガラス、ポリカーボネート、エポキシ
樹脂、ポリオレフィン系樹脂等があり、また、多層薄膜
の主要部を構成する磁性膜の材料としては、ガドリニウ
ム(Gd)、テルビウム(Tb)、ディスプロシウム
(Dy)等の希土類金属と、鉄(Fe)、コバルト(C
o)等の遷移金属の結晶質又は非晶質合金が適用でき、
具体的にはGdTbFe、GdTbCo、TbDyF
e、GdFeCo、TbFeCo、DyFeCo等の3
元系合金や、GdTbFeCo,TbDyFeCo、G
dTbFeCo等の4元系合金等が挙げられる。
【0025】また、多層薄膜を構成する磁性膜以外の被
膜としては、SiNx 、SiO2 、SiO、AlSi
N、AlSiON等から構成される干渉膜や保護膜に加
えて、アルミニウム系等から構成される反射膜が挙げら
れる。
【0026】
【作用】請求項1に係る発明によれば、希土類金属−遷
移金属から成る磁性膜を主要部とした多層薄膜内に存在
するガス元素を定量するに際し、上記多層薄膜面へ単一
のエネルギーを持った荷電粒子を照射すると共に、この
照射面に対し照射源側の特定の方向へ後方散乱された荷
電粒子を検出してそのエネルギースペクトルを求めこの
エネルギースペクトルから上記ガス元素を定量してい
る。
【0027】従って、従来の検査方法のように薄膜表面
をスパッタエッチングして分析対象である各層を露出さ
せる必要がないため定量誤差が起き難く、かつ、分析対
象である各層の酸化も防止されるため上記ガス元素を高
い精度で定量することが可能となる。
【0028】他方、請求項2に係る発明によれば、上記
希土類金属−遷移金属から成る磁性膜の膜厚が600Å
以下に設定されているため、遷移金属元素に対応したピ
ークのエネルギー位置とアルゴン元素に対応したピーク
のエネルギー位置との重なりが防止され、求められたエ
ネルギースペクトルから多層薄膜内に存在するアルゴン
元素を0.1 atm%程度の高い精度で定量することが可
能となる。
【0029】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
て詳細に説明する。
【0030】[実施例1]この実施例の検査方法に適用
された光磁気ディスクは、図4に示すようにポリカーボ
ネート製の透明基板50と、この基板50上にスパッタ
法にて製膜された膜厚1000Åの窒化硅素(Si
x )の干渉膜60と、この干渉膜60上へスパッタ法
にて製膜された膜厚300ÅのTbFeCo系の磁性膜
70と、この磁性膜70上にスパッタ法にて製膜された
膜厚300Åの窒化硅素の保護膜80と、この保護膜8
0上にスパッタ法にて製膜された膜厚600Åのアルミ
ニウム系の反射膜90とでその主要部が構成されている
ものである。
【0031】尚、これ等スパッタ法に適用されたガス元
素はアルゴンであった。
【0032】そして、磁気特性が正常な光磁気ディスク
を試料1とし、この試料1の多層薄膜(干渉膜60、磁
性膜70、保護膜80、及び、反射膜90から成る)に
ついてラザフォード後方散乱法によりその組成を検査
し、求めたエネルギースペクトルのグラフ図を図5に示
す。
【0033】他方、保磁力が減少し、M−Hループの角
型が悪い等の磁気特性に異常を示した光磁気ディスクを
試料2とし、この試料2についてもその多層薄膜をラザ
フォード後方散乱法により検査し、求めたエネルギース
ペクトルのグラフ図を図6に示す。
【0034】これ等図5と図6に示されたグラフ図の比
較から、図6にはチャネル ナンバー197付近に図5
には無いピークが確認できる。
【0035】そこで、測定結果を解析するために図5及
び図6の波形分離を行った。図7は図6のエネルギース
ペクトルについてその波形分離を行った結果を示すエネ
ルギースペクトルのグラフ図である。
【0036】以下、図7に示されたグラフ図に従って各
ピークにつき詳細に説明する。
【0037】まず、ピーク15はポリカーボネート基板
50からの情報を示し、ピーク16は干渉膜60の一部
を構成する窒素元素、ピーク17は保護膜80の一部を
構成する窒素元素、ピーク18は磁性膜70の干渉膜6
0側に存在した酸素元素、ピーク19は反射膜90の表
面に存在する酸素元素、ピーク20は干渉膜60の一部
を構成する硅素元素、ピーク21は反射膜90を構成す
るアルミニウム元素、ピーク22は保護膜80の一部を
構成する硅素元素、ピーク23は干渉膜60内に存在す
るアルゴン元素、ピーク24は磁性膜70内に存在する
アルゴン元素、ピーク25は保護膜80内に存在するア
ルゴン元素、ピーク26は磁性膜70の一部を構成する
遷移金属元素、ピーク27は磁性膜70の一部を構成す
るテルビウム(Tb)元素をそれぞれ示している。
【0038】尚、図5のエネルギースペクトルについて
その波形分離を行った結果を示すエネルギースペクトル
のグラフ図(図示せず)からは、図7のピーク18(す
なわち磁性膜70の干渉膜60側に存在した酸素元素)
に相当するピークは確認できなかった。
【0039】そして、上記波形分離に基づき試料1のエ
ネルギースペクトルを解析した結果を以下の表1に、ま
た、試料2のエネルギースペクトルを解析した結果を表
2に示す。尚、これ等表において多層薄膜を構成する各
薄膜の膜厚は、各製膜材料について予めスパッタリング
時間と膜厚の関係を示す換算表を作成しておきそのスパ
ッタリング時間から求めたものであり、また、密度につ
いては、上述したように既知元素に対応したピークの出
現エネルギーの位置ずれから計算により求めている。
【0040】
【表1】
【表2】 表2に示された結果から、試料2の光磁気ディスクはT
bFeCo系磁性膜70の干渉膜60側が酸化されてい
ることが確認できる。
【0041】また、図5及び図6のグラフ図の比較か
ら、試料1と試料2のアルゴン元素を示すチャネル ナ
ンバー332付近のピークの高さと形状が異なってい
る。
【0042】そこで、これを解析した結果、表1及び表
2に示すように試料1における磁性膜70内のアルゴン
の濃度が試料2より高くなっていること、及び、試料2
は試料1に較べて窒化硅素膜(干渉膜60、保護膜8
0)内のアルゴン濃度が高くなっており、これ等が原因
となって試料2に係る光磁気ディスクの磁気特性が異常
を示していることが判明した。
【0043】従って、これ等現象が回避されるスパッタ
条件を設定することにより試料1と同様の磁気特性を備
えた光磁気ディスクを求めることが可能となる。
【0044】この様に、実施例に係る検査方法を適用す
ることにより多層薄膜の一部が部分的に酸化されてるか
否かの分析や、各薄膜内のアルゴン濃度を1 atm%以下
の精度で定量できる利点を有している。
【0045】[比較例1]実施例1において検査された
試料1と試料2に係る多層薄膜をオージェ電子分光法に
よりその深さ方向の定性分析を行った。尚、試料1の結
果を図8に、また試料2の結果を図9にそれぞれ示す。
【0046】そして、図8と図9の比較から、図9には
磁性膜内に酸素のピークが存在していることを確認でき
たがその定量は困難であった。
【0047】この様にオージェ電子分光法を適用した場
合、酸素の分析は定性的には実施例1の結果と同じであ
ったがその定量は困難であり、かつ、実施例1において
確認できたアルゴン元素の分布についてはこの方法では
分からなかった。
【0048】[比較例2]実施例1において検査された
試料1につきこれを従来の検査手段であるXPS(X線
光電子分光法)で分析した場合に分析途上における磁性
膜の経時的酸化を調べた。
【0049】すなわち、真空度2×10-9mbarのチャン
バー中で上記試料1に係る多層薄膜をアルゴンイオンに
よりスパッタエッチングして磁性膜を露出させ、その時
点でスパッタエッチングをストップした後、XPSによ
り酸素原子の1s状態から放出される電子の数(酸素1
sのピーク強度)の経時変化を測定した。この結果を図
10に示す。
【0050】この図10から時間と共に酸素1sのピー
ク強度が大きくなっていることが分かる。これは、2×
10-9mbar程度の高真空中でも10分以上露出している
と薄膜の酸化が進行していることを示している。
【0051】そして、XPSで定量分析を行うためには
測定元素のXPSスペクトルのピークを波形分離する必
要があり、多層薄膜における深さ方向の1点の測定に少
なくとも10分以上の時間を要するため測定中に薄膜の
酸化が進行してしまうことを示している。
【0052】従って、XPSに限らず測定に10分以上
の時間が必要な従来の検査方法で光磁気ディスクにおけ
る多層薄膜の分析を行った場合、磁性膜中の酸素濃度に
ついて高い精度で定量することは困難であることが確認
できる。
【0053】[実施例2]この実施例の検査方法に適用
された光磁気ディスクは、実施例1に係る光磁気ディス
クと同様に、ポリカーボネート製の透明基板と、この基
板上にスパッタ法にて製膜された膜厚1000Åの窒化
硅素の干渉膜と、この干渉膜上へスパッタ法にて製膜さ
れたTbFeCo系の磁性膜と、この磁性膜上にスパッ
タ法にて製膜された膜厚200Åの窒化硅素の保護膜
と、この保護膜上にスパッタ法にて製膜された膜厚50
0Åのアルミニウム系の反射膜とでその主要部が構成さ
れているものである。
【0054】但し、TbFeCo系の磁性膜についてそ
の膜厚が450Å、750Å、及び、1000Åに設定
された3種類の光磁気ディスクを用意し、その各々の光
磁気ディスクについてラザフォード後方散乱法によりそ
の多層薄膜内に存在するガス元素の分析を行った。図1
1に示されたエネルギースペクトルのグラフ図は磁性膜
の膜厚が450Åの場合、図12に示されたエネルギー
スペクトルのグラフ図は磁性膜の膜厚が750Åの場
合、及び、図13に示されたエネルギースペクトルのグ
ラフ図は磁性膜の膜厚が1000Åの場合である。
【0055】図11のグラフ図に示されているようにチ
ャネル ナンバー 332付近にアルゴン元素のピーク
が確認できる。そして、図11、図12、図13と磁性
膜の膜厚が増えるに従ってFeCoのピークが低チャネ
ル ナンバー側に広がり、アルゴン元素のピークと重な
っていることが確認できる。また、アルゴン元素のピー
クよりFeCo等遷移金属のピークが大きいため、遷移
金属とアルゴン元素のピークが重なるとアルゴン元素の
定量精度が悪くなることも確認できる。
【0056】次に、図11、図12、図13のグラフ図
から多層薄膜内に存在するアルゴン濃度を計算により求
めた。図11から求められたアルゴン濃度は0.3 atm
%、図12から求められたアルゴン濃度は1.8 atm%
であり、図13からはアルゴン濃度は求められなかっ
た。
【0057】他方、これ等3種類の光磁気ディスクにつ
いてその磁気特性を調べたところ、アルゴン濃度が相違
するにも拘らず測定結果は同じ性質を示している。
【0058】このように各光磁気ディスクの磁気特性が
同じ性質を示していることから、上記測定結果に反して
膜厚450Åと750Åとでその磁性膜内に存在するア
ルゴン濃度が1.5 atm%も相違するとは考え難い。す
なわち、このアルゴン濃度差は、Fe、Co等の遷移金
属元素を示すピークの裾がアルゴン元素を示すピークに
重なったためであると推察される。
【0059】一般に光磁気ディスクの磁性膜において遷
移金属を示すピークはFe、Co等2種類以上の元素の
ピークが重なってできているため、アルゴン元素のピー
クと遷移金属元素のピークの裾の重なりを分離すること
は難しい。しかし、磁性膜の膜厚を450Åと小さく設
定することにより遷移金属元素におけるピークの低エネ
ルギー側への伸びを防止することができるため、ピーク
の重なりが起こり難くなってアルゴン元素を高い精度で
定量できることをこの例は示している。また、この膜厚
を750Åにするとピークの重なりが起こって定量精度
が低下し、1000Åでは分析できないこともこれ等例
は示している。
【0060】この様に、磁性膜の膜厚を600Å以下の
薄膜に設定することにより遷移金属元素のピークの低エ
ネルギー側への伸びを防止することが可能となり、多層
薄膜内に存在するアルゴン濃度を0.1 atm%程度の高
い精度で定量できることが確認できる。
【0061】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、従来の検
査方法のように薄膜表面をスパッタエッチングして分析
対象である各層を露出させる必要がないため定量誤差が
起き難く、かつ、分析対象である各層の酸化も防止され
るためガス元素を高い精度で定量することが可能とな
る。
【0062】従って、この検査結果に基づいて多層薄膜
における適正な製膜条件を求めることが可能になるた
め、磁気特性の揃った光磁気記録媒体を安定して量産で
きる効果を有している。
【0063】他方、請求項2に係る発明によれば、遷移
金属元素に対応したピークのエネルギー位置とアルゴン
元素に対応したピークのエネルギー位置との重なりが防
止され、求められたエネルギースペクトルから多層薄膜
内に存在するアルゴン元素を0.1 atm%程度の高い精
度で定量することが可能となる。
【0064】従って、より適正な製膜条件を求めること
が可能となるため、更に安定して磁気特性の揃った光磁
気記録媒体を量産できる効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る検査方法を示す説明図。
【図2】光磁気記録媒体の構成を示す断面図。
【図3】ラザフォード後方散乱法により求められたエネ
ルギースペクトルを示したグラフ図。
【図4】実施例1の検査方法に適用された光磁気ディス
クの断面図。
【図5】実施例1に係る試料1の多層薄膜についてラザ
フォード後方散乱法により求められたエネルギースペク
トルを示したグラフ図。
【図6】実施例1に係る試料2の多層薄膜についてラザ
フォード後方散乱法により求められたエネルギースペク
トルを示したグラフ図。
【図7】図6のエネルギースペクトルについてその波形
分離を行った結果を示すエネルギースペクトルのグラフ
図。
【図8】比較例1に係る試料1の多層薄膜についてオー
ジェ電子分光法により求めた分析結果を示すグラフ図。
【図9】比較例1に係る試料2の多層薄膜についてオー
ジェ電子分光法により求めた分析結果を示すグラフ図。
【図10】比較例2に係る試料1の多層薄膜についてX
PS法における酸素1Sピークの経時変化を示すグラフ
図。
【図11】実施例2に係る光磁気ディスクの多層薄膜
(磁性膜の膜厚が450Å)についてラザフォード後方
散乱法により求められたエネルギースペクトルを示した
グラフ図。
【図12】実施例2に係る光磁気ディスクの多層薄膜
(磁性膜の膜厚が750Å)についてラザフォード後方
散乱法により求められたエネルギースペクトルを示した
グラフ図。
【図13】実施例2に係る光磁気ディスクの多層薄膜
(磁性膜の膜厚が1000Å)についてラザフォード後
方散乱法により求められたエネルギースペクトルを示し
たグラフ図。
【符号の説明】
1 荷電粒子加速装置 2 試料台 3 試料 4 検出装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 米山 幸伸 兵庫県姫路市網干区新在家1239 ダイセル 化学工業株式会社総合研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】希土類金属−遷移金属から成る磁性膜を主
    要部とした多層薄膜が基板上に積層されている光磁気記
    録媒体の検査方法において、 上記多層薄膜面へ単一のエネルギーを持った荷電粒子を
    照射すると共に、この照射面に対し照射源側の特定の方
    向へ後方散乱された荷電粒子のエネルギースペクトルを
    測定して多層薄膜内に存在するガス元素を定量すること
    を特徴とする光磁気記録媒体の検査方法。
  2. 【請求項2】上記希土類金属−遷移金属から成る磁性膜
    の膜厚が600Å以下に設定され、かつ、定量されるガ
    ス元素がアルゴンであることを特徴とする請求項1記載
    の光磁気記録媒体の検査方法。
JP5764192A 1992-03-16 1992-03-16 光磁気記録媒体の検査方法 Pending JPH05256797A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014194355A (ja) * 2013-03-28 2014-10-09 Toppan Printing Co Ltd 薄膜評価用構造体および薄膜評価方法
JP2015118077A (ja) * 2013-11-14 2015-06-25 凸版印刷株式会社 薄膜評価用構造体及び薄膜評価方法

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