JPH0525635A - 乾式Ti系めつきステンレス鋼材の製造方法 - Google Patents

乾式Ti系めつきステンレス鋼材の製造方法

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JPH0525635A
JPH0525635A JP9185391A JP9185391A JPH0525635A JP H0525635 A JPH0525635 A JP H0525635A JP 9185391 A JP9185391 A JP 9185391A JP 9185391 A JP9185391 A JP 9185391A JP H0525635 A JPH0525635 A JP H0525635A
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JP
Japan
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film
stainless steel
tin
vapor
steel material
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Application number
JP9185391A
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English (en)
Inventor
Kenji Hattori
憲治 服部
Yoshio Taruya
芳男 樽谷
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】気相蒸着法で皮膜の密着性に優れた高耐食性の
乾式Ti系めっきステンレス鋼材を製造する。 【構成】母材に、Cr: 9.0〜35.0%、Si: 0.1〜5.0
%、Ti:0.01〜2.00%、S: 0.01%以下を含有するフ
ェライト系ステンレス鋼材を用いる。この母材表面にTi
皮膜、TiN皮膜、または下層にTi皮膜、上層にTi皮膜を
蒸着する。或いは下層にTi皮膜、上層にTi皮膜側から表
面に向かいN量を漸増させたTiN皮膜を蒸着する。蒸着
後は露点−15〜−55℃の非酸化性雰囲気の炉内で、500
〜1150℃の温度域で0.5min以上保持する熱処理を行う。
Ti皮膜おとびTiN皮膜の厚みは、Ti単層の場合は0.03〜
15.0μm 厚 、TiN単層の場合は0.1 〜5.0 μm 厚、Ti
とTiNの2層の場合は、Ti皮膜を0.03〜2.0 μm 厚、Ti
N皮膜を0.1 〜5.0 μm厚とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、蒸着皮膜の密着性に優
れた高耐食性の乾式Ti系めっきステンレス鋼材の製造方
法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼材はその表面に防食機能を
もつ緻密な酸化物の不働態皮膜が存在するために耐食性
材料として幅広く利用されている。また近年では嗜好の
多様化および高級化が顕著となっており、ステンレス鋼
材が高価格のために従来はあまり用いられていなかった
ような分野にまでその需要が拡がりつつある。
【0003】ステンレス鋼材は意匠性に富んだ美麗な金
属光沢をもっていることから、通常はそのままで利用さ
れることが多いが、近年ではイオンプレーティング法、
真空蒸着法などのPVD法および化学気相蒸着法(CV
D法)といったいわゆる気相蒸着法によってステンレス
鋼材の表面に他の物質、例えば耐食性のあるTiやTiNな
どを蒸着することにより、付加価値を高めることが検討
され始めている。
【0004】ところが、PVD法やCVD法などの気相
蒸着法で作成したセラミック皮膜には通常多数の欠陥が
存在しており、特に真空蒸着法、イオンプレーティング
法といったPVD法は粒子がほぼ直線的に基板まで到達
するためにチャンバー内の微細な塵、基板の凹凸、非金
属介在物の露出、基板表面の汚れなどによって蒸着皮膜
にはピンホール(ポア)が発生しやすく、このピンホー
ルの存在のためにTiやTiN等の物質を蒸着しても、コー
ティングを施した材料の耐食性はさほど向上しないとい
う問題がある。また、基板材料がステンレス鋼材の場合
には、表面に存在する不働態皮膜により蒸着皮膜の密着
性の弱さがしばしば問題となる。このため、ステンレス
鋼材の表面に保護皮膜を蒸着する場合は、蒸着に先立
ち、イオンボンバード処理等の前処理を行うのが普通で
あるが、工業的に利用される1×10-5Torr程度の真空炉
はその残留ガスの主成分が H2Oであり、酸化性雰囲気で
あるため、蒸着開始までの間に再度ステンレス鋼材の表
面に不働態皮膜が生成する。このため、ステンレス鋼材
の場合にはイオンボンバード処理を施しても十分な密着
性が得られていないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、ステ
ンレス鋼材の付加価値を高めるためにその表面に耐食性
のある保護皮膜を蒸着したときの、ピンホールの存在に
より蒸着皮膜の耐食性が充分に発揮されないという問題
点と、蒸着皮膜の密着性に劣るという問題点を解消する
ことにある。即ち、本発明の目的は蒸着皮膜の密着性に
優れた高耐食性の乾式Ti系めっきステンレス鋼材を製造
することができる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】付加価値を付与する目的
でTiやTiNを蒸着したステンレス鋼材の耐食性を高める
ためには、ピンホールの発生を抑えるとともに蒸着皮膜
の密着性を改善する必要がある。しかし、真空蒸着法、
イオンプレーティング法といったPVD法によって作成
した蒸着皮膜にピンホールが生じるのは如何ともしがた
く、現在の技術ではこれを克服することは困難である。
また、ステンレス鋼材の表面に存在する酸化膜に由来す
る部分的な蒸着皮膜の密着不良についても前処理の改善
のみでは克服は困難である。ところが、本発明者らは、
鋼中のCr、SiおよびTiの含有量を適正に調整したフェラ
イト系ステンレス鋼材を母材に使用し、この表面にTi皮
膜、TiN皮膜または下層にTi皮膜、上層にTiN皮膜を蒸
着した後、露点を制御した炉内で特定の条件で熱処理を
行うと、蒸着皮膜の密着性が著しく向上するとともに蒸
着皮膜にピンホールが存在していても耐食性が損なわれ
ることがないことを見出した。
【0007】上記知見に基づく本発明は、下記(I) 〜(I
V)の乾式Ti系めっきステンレス鋼材の製造方法を要旨と
する。
【0008】(I)重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si: 0.
1〜5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含有
するフェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ0.03〜
15.0μm のTi皮膜を蒸着した後、露点−15〜−55℃の非
酸化性雰囲気の炉内で、500〜1150℃の温度域で0.5min
以上保持する熱処理を施すことを特徴とする乾式Ti系め
っきステンレス鋼材の製造方法。
【0009】(II)重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si:
0.1〜5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含
有するフェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ 0.1
〜5.0μm のTiN皮膜を蒸着した後、露点−15〜−55℃
の非酸化性雰囲気の炉内で、500 〜1150℃の温度域で0.
5min以上保持する熱処理を施すことを特徴とする乾式Ti
系めっきステンレス鋼材の製造方法。
【0010】(III)重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si:
0.1〜5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含
有するフェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ0.03
〜2.0μm のTi皮膜を蒸着し、更に、このTi皮膜の上に
厚さ 0.1〜5.0 μm のTiN皮膜を蒸着した後、露点−15
〜−55℃の非酸化性雰囲気の炉内で、500 〜1150℃の温
度域で0.5min以上保持する熱処理を施すことを特徴とす
る乾式Ti系めっきステンレス鋼材の製造方法。
【0011】(IV)重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si:
0.1〜5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含
有するフェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ0.03
〜2.0μm のTi皮膜を蒸着し、更に、このTi皮膜の上に
厚さ 0.1〜 5.0μm のTiN皮膜を、Ti皮膜側から表面に
向かいTiN皮膜中のN量を漸増させながら蒸着した後、
露点−15〜−55℃の非酸化性雰囲気の炉内で、500 〜11
50℃の温度域で0.5min以上保持する熱処理を施すことを
特徴とする装飾用乾式Ti系めっきステンレス鋼材の製造
方法。
【0012】
【作用】上記のように、鋼中のCr、SiおよびTiの含有量
を適正に調整したフェライト系ステンレス鋼材を母材に
用い、この表面にTiやTiNを蒸着した後、露点を制御し
た炉内で熱処理すると、Ti単層のめっきステンレス鋼材
の場合には、ステンレス鋼材とTi皮膜の界面でステンレ
ス鋼中に存在するCr、SiおよびTiの拡散が起こり、下層
がTi皮膜で上層がTiN皮膜の2層めっきステンレス鋼材
の場合には、ステンレス鋼中に存在するCr、SiおよびTi
の拡散に加えて下層のTi皮膜中のTiの拡散も起こる。ま
た、TiN単層のステンレス鋼材の場合にはステンレス鋼
材とTiN皮膜の界面でステンレス鋼中に存在するCr、Si
およびTiの拡散が起こる。このようにステンレス鋼材と
蒸着皮膜の界面でCr、SiおよびTiの拡散が起こり、界面
にこれらの拡散層が生成されると密着性が改善されると
ともに異種物質を蒸着したステンレス鋼材にしばしば発
生する隙間腐食も抑制される。また、ピンホール部の露
出したステンレス鋼材表面にもTi、CrおよびSiが拡散
し、これらの元素が濃化した酸化物層が生成されると、
その露出した部分の耐食性も改善される。
【0013】以下に、本発明の構成要件とその限定理由
を説明する。
【0014】まず、母材のフェライト系ステンレス鋼材
における含有成分を上記のように限定する理由を説明す
る。
【0015】(A)ステンレス鋼材における含有成分 (a) Cr:Crは母材の耐食性を確保する上で重要な成分
である。前記したように蒸着したTi皮膜やTiN皮膜には
ピンホールが存在するために、母材部は部分的に露出し
ている。この露出した部分の耐食性を確保するために
は、母材のフェライト系ステンレス鋼材が十分な耐食性
を備えている必要がある。Crの含有量が 9.0%未満では
蒸着を行わない一般の鋼材においても耐食性の改善効果
が発揮されず十分な耐食性が得られない。一方、35.0%
を超えてCrを含有すると、鋼材が脆くなり、製造が困難
となる。よってその含有量を 9.0〜35.0%と定めた。
【0016】(b) Si:Siは脱酸作用のほかに、低い露
点で熱処理を施したときに母材表面に濃化し、母材の耐
食性を向上させる作用をもった成分である。しかし、そ
の含有量が 0.1%未満では脱酸作用が十分に得られず、
5.0%を超えると鋼材の加工性が著しく劣化するため、
その含有量を 0.1〜 5.0%とした。
【0017】(c) Ti:Tiは鋼中のCを安定化し、熱処
理時の鋭敏化を防止する作用がある。また、母材中に存
在するTiが適切な熱処理を施すことによってステンレス
鋼材と蒸着皮膜の界面に拡散し、蒸着皮膜の密着性を改
善する効果がある。しかし、その含有量が0.01%未満で
は所望の効果が得られず、2.00%を超えてもより一層の
改善効果がみられないため、その含有量を0.01〜2.00%
と定めた。
【0018】(d) S:Sは耐食性を劣化させるばかり
でなく、熱処理中に母材と蒸着皮膜との間に偏析し、蒸
着皮膜の密着性を低下させるため、その含有量は極力低
く抑えるのがよい。Sの含有量が0.01%を超えると耐食
性および蒸着皮膜の密着性がともに低下するので、その
含有量を0.01%以下とした。より望ましいのは 0.003%
以下に抑えることである。
【0019】母材のフェライト系ステンレス鋼材には、
上記成分の他に一般のフェライト系ステンレス鋼材に含
まれているC、Mn、Cu、Ni、Mo等の成分を含んでいても
よい。これらの成分が含まれていても蒸着皮膜の密着性
に何ら影響を及ぼさない。
【0020】本発明では、上記フェライト系ステンレス
鋼材を母材に使用し、この表面にTiやTiNをイオン
プレーティング法、真空蒸着法等によって蒸着し、次い
で、露点を制御した炉内で熱処理を行い、蒸着皮膜の密
着性を改善して母材ステンレス鋼材の耐食性を高める。
前記TiおよびTiNはステンレス鋼材の表面に一方または
両方を蒸着してもよい。即ち、Ti単層のめっきステンレ
ス鋼材、TiN単層のめっきステンレス鋼材、下層がTiで
上層がTiNの2層めっきステンレス鋼材のいずれにして
もよい。また、2層めっきステンレス鋼材とする場合
は、上層のTiN皮膜を下層のTi皮膜側から表面に向かい
TiN皮膜中のN量が漸増するように蒸着してもよい。Ti
N皮膜中のN両を漸増させると、TiN皮膜の内部応力が
緩和され、より密着性が向上するとともに、皮膜に割れ
が生じにくくなるので耐食性が更に改善される。このよ
うなTi皮膜側から表面に向かいN量が漸増するTiN皮膜
は、例えば、TiN皮膜の蒸着中に、チャンバ内に導入す
るN2 ガス量を漸増させ、チャンバ内の窒素分圧を増大
させることにより形成することができる。
【0021】なお、TiN皮膜は美麗な黄金色をしている
ので、TiN単層のめっきステンレス鋼材および上層にTi
N皮膜を配した2層めっきステンレス鋼材は装飾用に最
適である。
【0022】本発明において、これらの蒸着皮膜の厚み
および熱処理条件を一定の範囲に限定した理由は下記の
とおりである。
【0023】(B)蒸着皮膜の厚み (a) Ti皮膜 Ti単層めっきステンレス鋼材および下層がTiで上層がTi
Nの2層めっきステンレス鋼材のいずれの場合も、Ti皮
膜の厚みが 0.03 μm 未満であると均一な蒸着面が得ら
れず、ミクロポアが多数存在することになるので、下限
を0.03μm 厚とした。一方、Ti単層めっきステンレス鋼
材の場合、15.0μm を超えると熱処理後の冷却時の熱応
力によりTi皮膜に割れが生じやすくなるので、15.0μm
厚を上限とした。2層めっきステンレス鋼材の場合、Ti
皮膜は0.03μm 厚以上あればその厚みを厚くするほどTi
N皮膜の密着性は向上するが、それにつれてコストも上
昇するので、2.0 μm を上限とした。
【0024】(b) TiN皮膜 TiN皮膜はTiN単層めっきステンレス鋼材、下層がTi皮
膜で上層がTiN皮膜の2層めっきステンレス鋼材および
上層のTiN皮膜を下層のTi皮膜側から表面に向かい皮膜
中のN量を漸増させた2層めっきステンレス鋼材のいず
れであっても、その厚みが 0.1μm より薄いと均一な蒸
着面が得られず、TiN皮膜に色むらが生じやすくなり、
5.0μm を超えると熱処理後の冷却時において、熱応力
によりTiN皮膜に割れが生じやすくなるので、その厚み
を 0.1〜5.0 μm とした。
【0025】(C)熱処理条件 (a) 炉内雰囲気 Ti単層めっきステンレス鋼材の場合は表面のTi皮膜を酸
化させることなく、TiN単層めっきステンレス鋼材およ
び上層がTiN皮膜の2層めっきステンレス鋼材の場合は
表面のTiN皮膜の黄金色を損なうことなく、蒸着皮膜と
ステンレス鋼材との界面およびミクロポア欠陥部にTi、
SiおよびCrの拡散を促進させ、密着性とミクロポア欠陥
部の耐食性を改善するためには、炉内雰囲気を低酸素ポ
テンシャルとする必要があるので、炉内雰囲気を非酸化
性雰囲気とした。炉内を非酸化性雰囲気とする場合、ア
ンモニア分解ガス (AXガス) 、H2−N2混合ガス、水素
ガス、COガス、Arガス等を用いて行ってもよく、炉内を
真空引きしてもよい。真空引きして炉内を非酸化性雰囲
気とする場合は、1×10-7torr以上の高真空度とするの
がよい。
【0026】(b) 炉内露点:炉内露点はミクロポア欠
陥部の露出したステンレス鋼材の表面に有害な酸化スケ
ールが生成されるのを防止するために極力下げる必要が
ある。鋼中成分の酸化ポテンシャルを計算し、炉内露点
を決定することは容易であるが実炉においては必ずしも
計算と一致しないのが実状である。本発明者らは実炉に
おける検討を行い、炉内露点を−15〜−55℃としたとき
にTi単層めっきステンレス鋼材、TiN単層めっきステン
レス鋼材および上層がTiN皮膜の2層めっきステンレス
鋼材の耐食性が向上することを見いだした。即ち、炉内
露点が−15℃より高い場合には、有害な酸化スケールが
ミクロポア欠陥部の露出したステンレス鋼材の表面に生
成してその部分の耐食性が著しく劣化し、−55℃よりも
炉内露点が低い場合には耐食性の改善に効果のある酸化
膜が露出したステンレス鋼材の表面に生成しない。
【0027】なお、−38℃より高い露点で熱処理する
と、Ti単層めっきステンレス鋼材の場合にはTi皮膜の酸
化によるブルーイングが顕著となるから、Ti単層めっき
ステンレス鋼材の中でも着色が問題となる場合には露点
を−38℃以下にして熱処理を行うのが望ましい。
【0028】(c) 処理温度および時間 熱処理の処理温度が 500℃より低いと、Ti、CrおよびSi
の拡散が非常に遅く、1150℃を超えるとTi皮膜と母材と
の合金化が問題となる上に、熱処理後の冷却過程で生じ
る熱応力によるTi皮膜またはTiN皮膜の剥離が顕在化す
るため、処理温度を500 〜1150℃とした。一方、Ti、Cr
およびSiの拡散量とステンレス鋼材の表面に生成する酸
化膜の厚さは処理時間により決まるが、0.5min未満では
Ti、CrおよびSiの拡散が十分に得られないため、処理温
度を0.5min以上とした。本発明では処理時間の上限は特
に限定する必要はない。しかし、1500分を超えて処理し
ても耐食性および密着性の更なる改善が望めないので、
1500分以内に止めるのが好ましい。
【0029】
【実施例1】表1(1)および(2)に示す成分組成の
フェライト系ステンレス鋼板(いずれも板厚は0.8mm)を
母材に使用し、これらの母材の表面に厚さ1μm のTi皮
膜をイオンプレーティング法で蒸着した後、アンモニア
分解ガス雰囲気の炉内で、表2(1)および(2)に示
す炉内露点、処理温度および処理時間で熱処理を施し
た。
【0030】こうして得られたTi単層めっきステンレス
鋼板から試験片を切り出し、耐食性および皮膜の密着性
を調べた。これらの評価結果を同じく表2(1)および
(2)に示す。
【0031】耐食性は、それぞれのTi単層めっきステン
レス鋼板から試験片を5枚づつ採取し、これらの試験片
に対して塩水噴霧試験(10%NaCl水溶液,35℃,3ヵ
月)を実施し、その後、25倍の拡大鏡を用いて腐食の程
度を調べ、表3に示す塩水噴霧試験の評価ランクにより
判定した。
【0032】密着性は密着曲げ試験を実施し、曲げ側に
同厚の板を5枚挟んで 180度折り曲げ、曲げ部を 100倍
の光学顕微鏡により観察し、蒸着皮膜の表面状態を観察
して評価した。表2中、「◎」は皮膜に割れ発生なし、
「○」は皮膜の一部分に割れ発生、「△」は皮膜の全面
に割れ発生、「×」は皮膜に割れおよびび剥離発生、を
意味する。
【0033】
【表1(1)】
【0034】
【表1(2)】
【0035】
【表2(1)】
【0036】
【表2(2)】
【0037】
【表3】
【0038】表2から、本発明方法により得られたTi単
層めっきステンレス鋼板はいずれも皮膜の密着性に優れ
ているとともに高耐食性を有していることがわかる。こ
れに対して、母材の組成および熱処理条件が本発明で規
定する範囲外の比較例および熱処理を施していない比較
例のTi単層めっきステンレス鋼板は、皮膜の密着性およ
び耐食性のいずれか一方または両方が劣っている。
【0039】
【実施例2】表1(1)に示す鋼種Dと同じ成分組成の
フェライト系ステンレス鋼板(0.8mm厚) を母材に用
い、これらの母材の表面にTiN皮膜をイオンプレーティ
ング法で蒸着した。次いで、非酸化性雰囲気中で、炉内
露点、処理温度および処理時間を変えて熱処理を行っ
た。
【0040】熱処理後、それぞれのTiN単層めっきステ
ンレス鋼板から試験片を切り出し、実施例1と同様の塩
水噴霧試験および密着曲げ試験を実施し、耐食性および
蒸着皮膜の密着性を調べた。その結果を表4にTiN皮膜
厚および熱処理条件とともに示す。
【0041】
【表4】
【0042】表4から、本発明方法で製造したTiN単層
めっきステンレス鋼板はいずれも密着性および耐食性に
優れているのに対して、TiN皮膜厚または熱処理条件が
本発明で規定する範囲から外れている比較例のTiN単層
めっきステンレス鋼板は密着性および耐食性がともに劣
っていることがわかる。
【0043】
【実施例3】表1(1)に示す鋼種Dと同じ成分組成の
フェライト系ステンレス鋼板(0.8mm厚) を母材に用
い、これらの母材の表面にTi皮膜と、更に、Ti皮膜の上
にTiN皮膜をそれぞれイオンプレーティング法で蒸着し
た。次いで、非酸化性雰囲気中で、炉内露点、処理温度
および処理時間を変えて熱処理を行った。
【0044】熱処理後、それぞれのTiとTiNの2層めっ
きステンレス鋼板から試験片を切り出し、実施例1と同
様の塩水噴霧試験および密着曲げ試験を実施し、耐食性
および蒸着皮膜の密着性を調べた。その結果を表5にTi
皮膜厚、TiN皮膜厚および熱処理条件とともに示す。
【0045】
【表5】
【0046】表5から、本発明方法で製造したTiとTiN
の2層めっきステンレス鋼板はいずれも密着性および耐
食性に優れていることがわかる。これに対して、熱処理
条件が本発明で規定する範囲から外れている比較例は密
着性および耐食性が悪い。
【0047】
【実施例4】表1(1)に示す鋼種Dと同じ成分組成の
フェライト系ステンレス鋼板(0.8mm厚) を母材に用
い、これらの母材の表面にTi皮膜をイオンプレーティン
グ法で蒸着し、更に、この上に、チャンバー内に導入す
るN2 ガス量を漸増させ、チャンバー内の窒素分圧を増
大させてTi皮膜側から上方に向かい皮膜中のN量が漸増
したTiN皮膜を蒸着した。次いで、TiN皮膜を蒸着した
後のステンレス鋼板を所定の大きさに切断し、これらの
試料をアンモニア分解ガス雰囲気の炉内で、炉内露点、
処理温度および処理時間を変えて熱処理を行った。
【0048】こうして得られたTiN皮膜中のN濃度を漸
増させたTiとTiNの2層めっきステンレス鋼板から試験
片を切り出し、実施例1と同様の塩水噴霧試験および密
着曲げ試験を実施し、耐食性および蒸着皮膜の密着性を
調べた。これらの評価結果を表6にTi皮膜厚、TiN皮膜
厚および熱処理条件とともに示す。また、図1に二次イ
オン質量分析(SIMS)で母材表層部からTiN皮膜表
面までのTi、NおよびFe濃度を分析した結果を示す。
【0049】
【表6】
【0050】表6から、本発明方法で得られた2層めっ
きステンレス鋼板は、いずれも密着性および耐食性に優
れていることがわかる。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明方法によれ
ば蒸着皮膜の密着性に優れた高耐食性の乾式Ti系めっき
ステンレス鋼材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で製造しためっきステンレス鋼材の
母材表層部からTiN皮膜表面までのTi、NおよびFe濃度
をSIMSで分析した結果を示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/34

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si: 0.1〜
    5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含有する
    フェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ0.03〜15.0
    μm のTi皮膜を蒸着した後、露点−15〜−55℃の非酸化
    性雰囲気の炉内で、500〜1150℃の温度域で0.5min以上
    保持する熱処理を施すことを特徴とする乾式Ti系めっき
    ステンレス鋼材の製造方法。
  2. 【請求項2】重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si: 0.1〜
    5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含有する
    フェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ0.1〜5.0μ
    m のTiN皮膜を蒸着した後、露点−15〜−55℃の非酸化
    性雰囲気の炉内で、500 〜1150℃の温度域で0.5min以上
    保持する熱処理を施すことを特徴とする乾式Ti系めっき
    ステンレス鋼材の製造方法。
  3. 【請求項3】重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si: 0.1〜
    5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含有する
    フェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ0.03〜2.0
    μm のTi皮膜を蒸着し、更に、このTi皮膜の上に厚さ
    0.1〜5.0 μm のTiN皮膜を蒸着した後、露点−15〜−5
    5℃の非酸化性雰囲気の炉内で、500 〜1150℃の温度域
    で0.5min以上保持する熱処理を施すことを特徴とする乾
    式Ti系めっきステンレス鋼材の製造方法。
  4. 【請求項4】重量%で、Cr: 9.0〜35.0%、Si: 0.1〜
    5.0 %、Ti:0.01〜2.00%、S:0.01%以下を含有する
    フェライト系ステンレス鋼材の表面に、厚さ0.03〜2.0
    μm のTi皮膜を蒸着し、更に、このTi皮膜の上に厚さ
    0.1〜 5.0μm のTiN皮膜を、Ti皮膜側から表面に向か
    いTiN皮膜中のN量を漸増させながら蒸着した後、露点
    −15〜−55℃の非酸化性雰囲気の炉内で、500 〜1150℃
    の温度域で0.5min以上保持する熱処理を施すことを特徴
    とする装飾用乾式Ti系めっきステンレス鋼材の製造方
    法。
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