JPH0726386A - 耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜 - Google Patents

耐酸化性および耐摩耗性に優れた硬質皮膜

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JPH0726386A
JPH0726386A JP27274593A JP27274593A JPH0726386A JP H0726386 A JPH0726386 A JP H0726386A JP 27274593 A JP27274593 A JP 27274593A JP 27274593 A JP27274593 A JP 27274593A JP H0726386 A JPH0726386 A JP H0726386A
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康昭 杉崎
Toshiki Sato
俊樹 佐藤
Tatsuya Yasunaga
龍哉 安永
Masanori Sai
政憲 蔡
Kazuhisa Kawada
和久 河田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基本的にはTiN皮膜や(Ti,Al)N皮
膜の優れた特徴を生かしつつ、耐酸化性および耐摩耗性
を更に改善した硬質皮膜を提供する。 【構成】 TiN皮膜または(Ti,Al)N皮膜に、
Ta,Niおよび白金族元素よりなる群から選ばれる1
種以上の元素を5〜60原子%の割合で含有させたもの
である。あるいは、Ta,Niおよび白金族元素よりな
る群から選ばれる1種以上の元素の全部又は一部に替え
て、ハロゲン元素を0.05〜30原子%となる様に含
有させたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フライス加工,切削加
工,穿孔加工等の加工に使用される切削工具の表面コー
ティング材として有用な硬質皮膜に関し、特に耐酸化性
および耐摩耗性を改善した硬質皮膜に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】高速度工具鋼や超硬合金工具鋼等の耐摩
耗性部材を製作する場合は、耐摩耗性等の性能をより優
れたものとする目的で、工具基材の表面にTi等の窒化
物や炭化物よりなる耐摩耗性皮膜を形成することが行な
われている。
【0003】ところで切削工具等の摩耗には、切り屑生
成時の熱的脆化によって昇温する工具すくい面に生じる
クレータ摩耗と、被削材との機械的な擦り摩耗によって
工具逃げ面に生じるフランク摩耗がある。そしてクレー
タ摩耗を低減する上で必要な特性は、耐熱性および耐酸
化性であり、フランク摩耗を低減する上で必要な特性は
高硬度であるということができる。従って、表面被覆切
削工具を更に高性能化するためには、上記の様な諸特性
を全て満足する耐摩耗性皮膜を工具基材表面に形成して
やる必要がある。
【0004】上記耐摩耗性皮膜としては、イオンプレー
ティング法によるTiNやTiCが汎用されている。な
かでもTiNは、ビッカース硬度(Hv)が2000k
g/mm2 以下であり、TiCに比べると低硬度である
ため、フランク摩耗に対して耐久性が低いという欠点が
あるにも拘らず、TiCに比べると高温耐酸化性(耐熱
性)に優れており、切削時の加工熱や摩擦熱によって昇
温する工具すくい面をクレータ摩耗から保護する機能を
発揮する。TiN皮膜は基材に対する密着性に優れてお
り、且つ基材の種類如何に関わらず被覆膜を形成し易い
という長所を有するため、これらの点が評価されて、T
iN皮膜を基材表面に被覆した切削工具が多く使用され
ている。
【0005】近年、切削速度の一層の高速化が要望され
ており、切削条件がより過酷化する傾向にある為、上記
した様な従来のTiN皮膜程度ではこの要請に応えきれ
なくなっている。例えば、TiN皮膜は600℃までは
耐酸化性に優れているが、600℃を超えると分解し始
めてTi酸化物となり、更に高温でTiO2 となる。そ
こで耐熱性や硬度が更に優れた皮膜として、TiNにT
iやN以外の第3の元素を添加することが試みられてお
り、化学的蒸着法(CVD法)や物理的蒸着法(PVD
法)によりTiとAlの複合窒化物固溶体の皮膜が提案
されている(特公平4−53642号)。
【0006】TiとAlの複合窒化物固溶体である(T
i,Al)N皮膜は、大気中で昇温してやると、800
℃程度までは表面にAl酸化皮膜(Al23 )を形成
し、このAl23 皮膜が酸化抑制の働きをする。この
様に(Ti,Al)N皮膜は高温での耐酸化性に優れて
いるとはいうものの、硬度に関してはHvが2500k
g/mm2 に届かない。さらに(Ti,Al)N皮膜
は、TiN皮膜に比べて内部応力が2倍以上も高く、耐
摩耗性を改善する目的で厚膜化するにつれて皮膜の内部
応力が増大し、クラックが発生したり膜密着性が低下し
て皮膜剥離の原因になる。従って、(Ti,Al)N皮
膜はTiN皮膜を形成する場合よりもできるだけ薄い膜
厚を形成するということで実用化されており、その為
(Ti,Al)N皮膜の有する優れた特性が十分に発揮
されているとは言えず、より一層優れた特性を発揮する
様な皮膜の開発が望まれている。また上記TiN皮膜に
ついても、基材に対する優れた密着性を維持しつつ、且
つ耐酸化性や耐摩耗性を改善した皮膜の開発が望まれて
いる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこうした事情
に着目してなされたものであって、その目的は、基本的
にはTiN皮膜や(Ti,Al)N皮膜の優れた特徴を
生かしつつ、耐酸化性および耐摩耗性をさらに改善した
硬質皮膜を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明とは、TiN皮膜又は(Ti,Al)N皮膜に、T
a,Niおよび白金族元素よりなる群から選ばれる1種
以上の元素を5〜60原子%の割合となる様に含有させ
たものである点に要旨を有する硬質皮膜である。又は、
上記硬質皮膜においてTa,Niおよび白金族元素より
なる群から選ばれる1種以上の元素の全部又は一部に替
えて、ハロゲン元素を0.05〜30原子%の割合とな
る様に含有させたものである点に要旨を有する硬質皮膜
である。
【0009】
【作用】本発明者らは、TiN皮膜や(Ti,Al)N
皮膜の特性を更に向上するという観点から、特に特性向
上に有効な第3、第4の添加元素を検索し、検討を重ね
た。その結果、TiN皮膜や(Ti,Al)N皮膜に、
Ta,Niおよび白金族元素よりなる群から選ばれる1
種以上の元素、又はこれら元素の全部又は一部に替えて
ハロゲン元素を所定量含有させてやれば、上記目的が見
事に達成されることを見出し、本発明を完成した。即
ち、TiN皮膜にあっては、上記元素を所定量含有させ
てやれば、TiN皮膜は勿論のこと従来の(Ti,A
l)N皮膜よりも酸化開始温度を高くすることができ、
且つ硬度も上昇させることができる。更に、密着性が良
いというTiN皮膜本来の特性も損なうことがないの
で、剥離の問題も生じない。一方、一般的に耐酸化性が
良いと言われている(Ti,Al)N皮膜においても、
Ta,Ni,Pd,Pt,ハロゲン元素等を所定量含有
させてやることによって、従来の(Ti,Al)N皮膜
よりも酸化開始温度を高くすることができ、且つ硬度も
更に上昇させることができたのである。尚Ta,Niお
よび白金族元素、これら元素の全部又は一部に替えて用
いられるハロゲン元素は、夫々単独で添加しても良い
が、これらの1種以上を適宜選択して複合添加してもよ
いことは勿論である。また本発明における白金族元素と
は、Ru,Rh,Pd,Os,Ir,Ptの全てを含む
趣旨であり、ハロゲン元素とは、F,Cl,Br,I,
Atの全てを含む趣旨である。
【0010】上記の様な効果を発揮させる為には、皮膜
中に含有されるTa,Niおよび白金族元素の量は、単
独又は合計で5〜60原子%となる様にする必要があ
る。即ち、Ta,Niおよび白金族元素の含有量が5原
子%未満若しくは60原子%を超えると、これらの元素
を含有させない場合よりも却って酸化開始温度が低下
し、且つ硬度も低下する。あるいは、上記Ta,Niお
よび白金族元素の全部又は一部に替えて添加されるハロ
ゲン元素の量は、単独又は合計で0.05〜30原子%
となる様にする必要がある。即ち、ハロゲン元素の含有
量が0.05原子%未満若しくは30原子%を超える
と、これらの元素を含有させない場合よりも却って酸化
開始温度が低下し、且つ硬度も低下し、特に30原子%
を超えた場合には皮膜が脆化する。
【0011】ところでハロゲン元素による置換は、T
a,Niおよび白金族元素の全部を置換してハロゲン元
素のみを添加するというケースが最も代表的な実施態様
となり、この場合のハロゲン元素の含有量は上記の通り
となる。これに対し、上記Ta,Niおよび白金族元素
の一部をハロゲン元素に置換した皮膜、すなわち、Ti
N皮膜又は(Ti,Al)N皮膜に、Ta,Niおよび
白金族元素よりなる群から選ばれる1種以上の元素と、
ハロゲン元素を併用する場合も本発明の範囲内に包含さ
れる。この場合においても上記効果を発揮させる為に
は、Ta,Niおよび/又は白金族元素の量を、単独又
は合計で5〜60原子%、またハロゲン元素の量を、単
独又は合計で0.05〜30原子%となる様にすること
が好ましい。より好ましくは、例えばTaの一部をハロ
ゲン元素で置換する場合には、Taの量は10〜50原
子%であり、ハロゲン元素の量は単独又は合計で0.0
5〜20原子%であり;Niの一部をハロゲン元素で置
換する場合には、Niの量は10〜50原子%であり、
ハロゲン元素の量は単独又は合計で0.05〜20原子
%であり;Ptの一部をハロゲン元素で置換する場合に
は、Ptの量は10〜50原子%であり、ハロゲン元素
の量は単独又は合計で0.05〜20原子%である。
【0012】本発明の硬質皮膜が従来の皮膜に比べて優
れた耐酸化性および耐摩耗性を発揮することができる理
由は、高温酸化時にTiの酸化を抑制したり、Al酸化
皮膜等の保護皮膜が著しく緻密化するためであると考え
られる。この緻密化する機構については未解明である
が、例えばTiN皮膜の場合は添加元素が酸素の内部拡
散を抑え、Tiの酸化を抑制する;ハロゲン元素がTi
酸化物と反応し、ガス化することによって皮膜表面上に
保護皮膜のみが残る;Ta,Ni,白金族元素およびハ
ロゲン元素が何らかの作用でTiの拡散を抑えること等
が考えられる。
【0013】本発明の硬質皮膜の製造方法としては、例
えばカソードを蒸発源とするアーク放電によって金属成
分又はハロゲン元素をイオン化する方法、即ちイオンプ
レーティング法やスパッタリング法等に代表されるPV
D法によって行なうことができる。これらの方法のうち
例えばイオンプレーティング法で行なう場合は、前記の
様にイオン化した金属成分又はハロゲン元素をN2 雰囲
気中で反応させて窒化物を被覆するものである。このと
きカソードとしては、Ti,Al,Ta,Ni,白金族
元素およびハロゲン元素等を個別に使用することができ
るが、目的組成そのものからなるターゲット(Ti・N
iターゲット若しくはTiAl・Niターゲット等)と
すれば、皮膜組成のコントロールが容易である。
【0014】また本発明の皮膜を上記基材表面に形成す
るときの膜厚については、特に限定されるものではない
が、1〜10μmが好ましい。即ち、1μm未満では皮
膜による耐摩耗性付与効果が発揮されず、一方膜厚があ
まり大きくなって10μmを超えると硬質皮膜の全体の
厚みが大きくなり過ぎ、却って強度を低下させる。
【0015】以下実施例について説明するが、本発明は
下記の実施例に限定されるものではなく、前・後記の趣
旨に徴して適宜設計変更することは本発明の技術的範囲
に含まれる。
【0016】
【実施例】
実施例1 Ta,Ni,白金族元素等を含有したTiのターゲット
をカソード電極とするカソードアーク方式イオンプレー
ティング装置の基板ホルダーに超硬チップを取付けた。
皮膜に当たっては、400 ℃に加熱保持したまま、蒸発源
よりTiとTa,Ni,白金族元素等を蒸発させると共
に、装置内に高純度N2 ガスを導入して7×10-3To
rrの雰囲気とし、且つ基材に−70Vの電圧を印加
し、アーク放電を開始して基材表面にTa,Ni,白金
族元素等を含有させたTiN皮膜を形成した。
【0017】上記方法により表1に示す組成の皮膜(N
o.1〜28)を製作した。また従来例として同一の基材
上に、Tiカソードを用いて蒸発源よりTiのみを蒸発
し、N2 導入圧7×10-3Torrの条件でTiN皮膜
も製作した(No.29)。
【0018】これらの試料を、大越式摩耗試験機に供
し、FC25鋼材を摩耗相手材として皮膜の比摩耗量を
測定したところ、表1に併記する結果が得られた。尚摩
耗試験は、荷重2.2kgf、摩擦速度3.5m/秒の
条件下で行なった。
【0019】
【表1】
【0020】表1から明らかな様に、Ta,Ni,白金
族元素等を5〜60原子%含有させた実施例のTiN皮
膜(No.2〜5,8〜11,14〜17,20〜23,
25〜28)は、従来のTiN皮膜や比較例の皮膜より
耐摩耗性に優れていることが分かる。尚実施例の皮膜
は、後記実施例2で示す結果と比較して明らかな様に、
従来の(Ti,Al)N皮膜よりも優れた耐摩耗性を示
している。
【0021】実施例2 Tiのターゲットをカソード電極とするカソードアーク
方式イオンプレーティング装置の基板ホルダーに超硬チ
ップを取付けた。皮膜に当たっては、400 ℃に加熱保持
したまま、蒸発源よりTiを蒸発させると共に、N2
Cl2 ,N2 /F2 ,N2 /Br2 ,N2 /I2 ,N2
/Atの各混合ガスを導入して7×10 -3Torrの雰
囲気とし、且つ基材に−70Vの電圧を印加し、アーク
放電を開始して基材表面にハロゲン元素を含有させたT
iN皮膜を形成した。上記方法により表2に示す組成の
皮膜(No.30〜54)を製作した。これらの試料を実
施例1と同じ条件で摩耗試験を行ったところ、表2に併
記する結果が得られた。
【0022】
【表2】
【0023】表2から明らかな様に、ハロゲン元素等を
0.05〜30原子%含有させた実施例のTiN皮膜
は、従来のTiN皮膜や比較例の皮膜より耐摩耗性に優
れていることが分かる。
【0024】実施例3 Ta,Ni,白金族元素等を含有したTiAlのターゲ
ットをカソード電極として、蒸発源からTi,Alと、
Ta,Ni,白金族元素等を蒸発させること以外は実施
例1と同様にして、表3に示す組成の皮膜(No.56〜
83)を製作した。このとき従来例として、同一の基材
上にTiAlカソードを用いて蒸発源よりTiとAlの
みを蒸発し、N2 導入圧7×10-3Torrの条件で
(Ti,Al)N皮膜も製作した(No.84)。得られ
た試料について、実施例1と同じ条件で摩耗試験を行な
ったところ、表3に併記する結果が得られた。
【0025】
【表3】
【0026】表3から明らかな様に、Ta,Ni,白金
族元素等を5〜60原子%含有させた実施例の(Ti,
Al)N皮膜は、従来の(Ti,Al)N皮膜や比較例
の皮膜より耐摩耗性に優れていることが分かる。
【0027】実施例4 TiAlのターゲットをカソード電極として、蒸発源か
らTiとAlを蒸発させること以外は実施例2と同様に
して、表4に示す組成の皮膜(No.85〜109)を製
作した。得られた試料について、実施例1と同じ条件で
摩耗試験を行なったところ、表4に併記する結果が得ら
れた。
【0028】
【表4】
【0029】表4から明らかな様に、ハロゲン元素を
0.05〜30原子%含有させた実施例の(Ti,A
l)N皮膜は、従来の(Ti,Al)N皮膜や比較例の
皮膜より耐摩耗性に優れていることが分かる。
【0030】実施例5 皮膜の耐酸化性を調べるため、白金からなる基材をイオ
ンプレーティング装置の基板ホルダーに取付け、400
℃に加熱保持したまま、蒸発源よりTiとTa,Ni,
白金族元素等を蒸発させると共にN2 ガスを導入して7
×10-3Torrの雰囲気とし、且つ基材に−70Vの
電圧を印加してTa,Ni,白金族元素を含有させたT
iN皮膜を形成した。上記方法により表5に示す組成の
皮膜(No.111〜138)を製作した。また従来例と
して、同一の基材上に、蒸発源よりTiのみを蒸発し、
2 導入圧7×10-3Torrの条件でTiN皮膜も製
作した(No.139)。
【0031】これらの試料を、下記の酸化条件の酸化試
験に供したところ、表5に併記する結果が得られた。 <酸化条件> 昇温範囲:室温〜1300℃ 昇温速度:5℃/min 雰囲気 :乾燥空気 流量 :50cc/min
【0032】
【表5】
【0033】表5から明らかな様に、従来のTiN皮膜
では約600℃で、また比較例の皮膜では約490℃で
酸化が始まるのに対して、実施例の皮膜(No.112〜
115,118〜121,124〜127,130〜1
33,135〜138)の様にTa,Ni,白金族元素
等を5〜60原子%含有させることによって酸化開始温
度を高め、耐酸化性を向上させることができる。尚実施
例の皮膜は、後記実施例7で示す結果と比較して明らか
な様に、従来の(Ti,Al)N皮膜よりも優れた耐酸
化性を示すものである。
【0034】実施例6 蒸発源からTiを蒸発させると共に、N2 /Cl2 ,N
2 /F2 ,N2 /Br 2 ,N2 /I2 ,N2 /Atの各
混合ガスを導入したこと以外は実施例5と同様にして、
表6に示す組成の皮膜(No.140〜164)を製作し
た。得られた試料について、実施例5と同じ酸化条件で
酸化試験を行なったところ、表6に併記する結果が得ら
れた。
【0035】
【表6】
【0036】表6から明らかな様に、従来のTiN皮膜
では約600℃で、比較例の皮膜では約460℃で酸化
が始まるのに対して、実施例の様にハロゲン元素等を
0.05〜30原子%含有させることによって酸化開始
温度を高め、耐酸化性を向上させることができる。
【0037】実施例7 蒸発源からTi,Alと、Ta,Ni,白金族元素等を
蒸発させること以外は実施例5と同様にして、表7に示
す組成の皮膜(No.166〜193)を製作した。この
とき従来例として、同一の基材上に、蒸発源よりTiと
Alのみを蒸発し、N2 導入圧7×10-3Torrの条
件で(Ti,Al)N皮膜も製作した(No.194)。
得られた試料について、実施例5と同じ酸化条件で酸化
試験を行なったところ、表7に併記する結果が得られ
た。
【0038】
【表7】
【0039】表7から明らかな様に、従来の(Ti,A
l)N皮膜では約800℃で、また比較例の皮膜では約
500℃で酸化が始まるのに対して、実施例の様にT
a,Ni,白金族元素等を5〜60原子%含有させるこ
とによって酸化開始温度を高め、耐酸化性を向上させる
ことができる。
【0040】実施例8 蒸発源からTiとAlを蒸発させること以外は実施例6
と同様にして、表8に示す組成の皮膜(No.195〜2
19)を製作した。得られた試料について、実施例5と
同じ酸化条件で酸化試験を行なったところ、表8に併記
する結果が得られた。
【0041】
【表8】
【0042】表8から明らかな様に、従来の(Ti,A
l)N皮膜では約800℃で、また比較例の皮膜では約
630℃で酸化が始まるのに対して、実施例の様にハロ
ゲン元素を0.05〜30原子%含有させることによっ
て酸化開始温度を高め、耐酸化性を向上させることがで
きる。
【0043】実施例9 超硬合金製チップを、Tiターゲットをカソード電極と
するカソードアーク方式イオンプレーティング装置の基
板ホルダーに取付け、400℃に加熱保持したまま、蒸
発源よりTiとTa,Ni,白金族元素等を蒸発させる
と共にN2 ガスを導入して7×10-3Torrの雰囲気
とし、且つ基材に−70Vの電圧を印加してTa,N
i,白金族元素等を含有させたTiN皮膜を形成した。
【0044】上記方法により表9に示す組成の皮膜(N
o.221〜248)を製作した。また従来例として、同
一の基材上に、蒸発源よりTiのみを蒸発し、N2 導入
圧7×10-3Torrの条件でTiN膜も製作した(N
o.249)。これらの試料を、下記条件の切削試験に供
したところ、表9に併記する結果が得られた。 <切削条件> 被削材 :S50C 切削速度:170m/min 送り速度:0.25mm/rev 切り込み:0.1mm 切削時間:15分
【0045】
【表9】
【0046】表9から明らかな様に、TiN皮膜にT
a,Ni,白金族元素等を5〜60原子%含有させた実
施例の皮膜(No.222〜225,228〜231,2
34〜237,240〜243,245〜248)で
は、逃げ面摩耗量、すくい面摩耗深さ共に従来のTiN
皮膜に比べて改善され、また比較例の皮膜に比べても優
れていることが分かる。尚実施例の皮膜は、後記実施例
11で示す結果と比較して明らかな様に、従来の(T
i,Al)N皮膜と同等若しくはそれ以上の耐摩耗性を
示すものである。
【0047】実施例10 蒸発源からTiを蒸発させると共に、N2 /Cl2 ,N
2 /F2 ,N2 /Br 2 ,N2 /I2 ,N2 /Atの各
混合ガスを導入したこと以外は実施例9と同様にして、
表10に示す組成の皮膜(No.250〜274)を製作
した。得られた試料について、実施例9と同じ条件で切
削試験を行なったところ、表10に併記する結果が得ら
れた。
【0048】
【表10】
【0049】表10から明らかな様に、従来のTiN皮
膜にハロゲン元素等を0.05〜30原子%添加させた
実施例の皮膜では、逃げ面摩耗量、すくい面摩耗深さ共
にTiN皮膜に比べて改善され、また比較例の皮膜に比
べて優れていることが分かる。
【0050】実施例11 蒸発源からTi,Alと、Ta,Ni,白金族元素等を
蒸発させること以外は実施例9と同様にして、表11に
示す組成の皮膜(No.276〜303)を製作した。こ
のとき従来例として、同一の基材上に蒸発源よりTiと
Alのみを蒸発し、N2 導入圧7×10-3Torrの条
件で(Ti,Al)N皮膜も製作した(No.304)。
得られた試料について、実施例9と同じ条件で切削試験
を行なったところ、表11に併記する結果が得られた。
【0051】
【表11】
【0052】表11から明らかな様に、従来の(Ti,
Al)N皮膜にTa,Ni,白金族元素等を5〜60原
子%添加させた実施例の皮膜では、逃げ面摩耗量、すく
い面摩耗深さ共に(Ti,Al)N皮膜に比べて改善さ
れ、また比較例の皮膜に比べても優れていることが分か
る。
【0053】実施例12 蒸発源からTiとAlを蒸発させること以外は実施例1
0と同様にして、表12に示す組成の皮膜(No.305
〜329)を製作した。得られた試料について、実施例
9と同じ条件で切削試験を行なったところ、表12に併
記する結果が得られた。
【0054】
【表12】
【0055】表12から明らかな様に、従来の(Ti,
Al)N皮膜にハロゲン元素等を0.05〜30原子%
添加させた実施例の皮膜では、逃げ面摩耗量、すくい面
摩耗深さ共に従来の(Ti,Al)N皮膜に比べて改善
され、また比較例の皮膜に比べて優れていることが分か
る。
【0056】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、従
来のTiN皮膜や(Ti,Al)N皮膜における耐酸化
性および耐摩耗性を更に向上させた硬質皮膜が得られ
た。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23C 16/34 (72)発明者 安永 龍哉 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 蔡 政憲 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 (72)発明者 河田 和久 兵庫県神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 TiN皮膜又は(Ti,Al)N皮膜
    に、Ta,Niおよび白金族元素よりなる群から選ばれ
    る1種以上の元素を5〜60原子%の割合となる様に含
    有させたものであることを特徴とする耐酸化性および耐
    摩耗性に優れた硬質皮膜。
  2. 【請求項2】 前記Ta,Niおよび白金族元素よりな
    る群から選ばれる1種以上の元素の全部又は一部に替え
    て、ハロゲン元素を0.05〜30原子%の割合となる
    様に含有させたものであることを特徴とする請求項1に
    記載の硬質皮膜。
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