JPH0525540A - 耐火強度の優れた構造用ボロン処理薄手鋼材の製造方法 - Google Patents

耐火強度の優れた構造用ボロン処理薄手鋼材の製造方法

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JPH0525540A
JPH0525540A JP17914391A JP17914391A JPH0525540A JP H0525540 A JPH0525540 A JP H0525540A JP 17914391 A JP17914391 A JP 17914391A JP 17914391 A JP17914391 A JP 17914391A JP H0525540 A JPH0525540 A JP H0525540A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 Mo,Bを含有しボロン処理をした特定炭素
当量の鋼を加熱−圧延し、耐火強度の優れた薄手鋼材を
得ること。 【構成】 重量%にて、Mo:0.005〜0.6%、
B:0.0003〜0.0025%、を含み、ボロン処
理を行った炭素当量(Ceq=C+Mn/6+Si/2
4+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14)が
0.25〜0.45%である鋼を、1050℃超、12
80℃以下に加熱し、圧延終了温度が800〜1000
℃となるように圧延し、圧延後放冷する。これにより板
厚3〜20mmの薄手材の耐火強度を向上できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は構造物の製作に用いられ
る耐火材の被覆を簡略化あるいは省略しても、火災時に
おいて十分な強度を有する板厚3〜20mmの薄手鋼材の
製造方法に関わる。
【0002】
【従来の技術】鉄骨構造等の構造物では、火災時におい
ても十分な強度を保証するため、鋼材にロックウール等
の耐火材の被覆を施し、鋼材の温度が350℃以上に上
昇しないように対策することが義務付けられていた。
【0003】近年、建築基準法が改正され、鋼材の高温
における強度に応じ耐火被覆を簡略あるいは省略できる
ようになった。たとえば、鋼材が600℃において十分
な強度(常温の規格降伏強度の2/3以上)を有する場
合、通常のビルでは耐火被覆を約1/3に簡略化、駐車
場ビルのように解放的な場合には耐火被覆を省略でき
る。
【0004】このようなことから、本発明者らは鋼材に
耐火性を付与する方法を検討し、特開平2−25094
0号公報を提案し、Mo,Vの一方あるいは両方とボロ
ン処理の組合せにより、優れた特性を付与できることを
見出している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前述での製造方法にお
いて、加熱温度を900〜1050℃に限定することに
より、良好な耐火性を得ている。しかし、薄手材におい
ては、上記の条件では常温での強度が上がりすぎ、耐火
強度が相対的に低下する問題がある。
【0006】このような状況から、本発明は鉄骨構造等
の構造物において、耐火被覆を省略する場合の重要な特
性である600℃での強度が、従来鋼より著しく改善さ
れた薄手鋼材の製造法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、600℃
での構造用薄手鋼材の耐火強度におよぼす化学成分の効
果を種々検討した結果、ボロン処理したMo添加鋼を1
050℃超の温度で加熱圧延することにより、薄手鋼材
の耐火が向上することを見出した。
【0008】本発明はこの知見を基に成されたものであ
り、その要旨とするところは、重量%にて、Mo:0.
005〜0.6%、B:0.0003〜0.0025
%、を含み、ボロン処理を行った炭素当量(Ceq=C
+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo
/4+V/14)が0.25〜0.45%である鋼を、
1050℃超、1280℃以下に加熱し、圧延終了温度
が800〜1000℃となるように圧延し、圧延後放冷
することを特徴とする耐火強度の優れた構造用ボロン処
理薄手鋼材の製造方法である。
【0009】
【作用】以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
ここでボロン処理とは、ボロンの焼入れ性向上効果を発
揮させるための処理を総称しており、ボロンを0.00
03〜0.0025%添加し、さらに0.03%以上の
Alあるいは0.005%以上のTiを添加し、鋼中の
Nを固定する処理を指している。
【0010】Moは火災時に炭窒化物として析出し、耐
火性を向上する。このため、耐火鋼に必須の元素である
が、ボロン処理との相互作用により一層効果的となる。
ボロン処理との相互作用が存在するMo添加量の下限は
0.005%である。0.6%以上のMoでは効果が飽
和するため、添加量の上限を0.6%とする。
【0011】しかして、耐火強度が向上するのは、高温
での変形が始まり、移動を開始した転位に、Moを主体
とする炭窒化物が核生成析出し、転位の移動を阻害する
ためである。Mo単独添加でも耐火強度向上効果を有す
るが、ボロン処理との併用による相互作用により、この
ような析出物を多数かつ安定的に析出させるようになる
ため極めて好都合である。
【0012】ボロン処理を行った0.08%C−0.1
5%Si−1.2%Mn−0.015%P−0.005
%S−0.15%Mo−0.06%Al−0.0015
%B鋼を種々の温度で加熱し、圧延終了温度が880〜
900℃となるように12mm厚に圧延後放冷した。
【0013】600℃での耐火強度の変化を図1に示
す。600℃での耐火強度を求めるに際し、火災時の鋼
材温度の上昇挙動を考慮し、図2のような昇温パターン
で試験片を加熱し、600℃にて15分加熱保持後、
0.15%/minの引張速度で変形させ、塑性歪みが
0.2%での強度を耐火強度として求めた。図1に示す
ように、耐火強度は加熱温度にあまり依存しない。
【0014】一方、図3に上記の鋼材の常温での引張強
さを示す。耐火鋼と言えども設計は常温強度をベースと
して行われ、常温での引張強さも重要な特性である。図
3から、加熱温度が1050℃以下で引張強さが上昇す
る傾向がみられる。
【0015】加熱温度が1050℃以下では、ボロンに
よる焼入れ性向上効果が上がりすぎ、また鋼材が12mm
厚と薄手なため冷却速度が速いこともあり、圧延により
導入される塑性歪が放冷中に回復しない。すなわち、放
冷ままでは加工硬化した状態にあり、図3のような引張
強さの挙動がみられる。
【0016】図4に、600℃耐火強度と常温引張強さ
の比への加熱温度の関係を示す。1050℃以下で上記
の比が低下し、薄手材の加熱温度として1050℃超と
する。加熱温度が高くなりすぎると、スケールの発生が
多くなり過ぎ、また加熱炉の耐火物の損耗が激しくなり
過ぎるため、上限を1280℃とする。
【0017】CeqはCeq=C+Mn/6+Si/2
4+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14として
定義され、溶接性の指標であるとともに、常温での引張
強さとの相関が深い。製造熱処理条件にもよるが、圧延
ままでCeqが0.25%より小さいと構造用の鋼材と
しての強度が得られず、Ceqが0.45%より大きい
と強度が上がり過ぎ、延性、靭性および溶接性の低下が
問題となる。このため、Ceqとして0.25〜0.4
5%になるようにC,Si,Mn,Ni,Cr,Mo,
Vを規制する。また、各元素は下記の範囲内であること
が好ましい。
【0018】Cは常温強度および耐火強度を高めるのに
有効な元素であり、0.05%以上の添加が好ましい。
しかし、添加量が多過ぎると溶接性を害するので添加量
の上限は0.15%が好ましい。
【0019】Siは脱酸のため0.02%以上添加する
が、添加量が多いと靭性を低下するため上限を0.5%
とするのが好ましい。
【0020】MnはSを固定し、強度を高めるのに有効
な元素であるが、添加量が多いと材料内の偏析を著しく
し、靭性の異方性を増すため、0.1〜1.5%とする
のが好ましい。
【0021】Niは鋼材の靭性を向上させる元素であ
り、このような効果を要する時、0.05%以上添加す
る。しかし、0.5%超では添加コストが上昇しすぎ、
構造用鋼材として不適当であるため、上限を0.5%と
することが好ましい。
【0022】Crは焼入れ性を増すとともに、焼戻しで
炭窒化物を析出し、耐火強度を向上させる元素である。
このような効果を要する時、0.05%以上を添加す
る。しかし、0.8%超の添加は構造用薄肉鋼材として
は不必要なため、上限を0.8%とすることが好まし
い。
【0023】Pは鋼中でミクロ偏析し靭性の方向差を著
しくするばかりでなく、靭性を低下させる元素であるた
め、上限を0.03%とすることが好ましい。
【0024】Sは鋼中で非金属介在物MnSを形成し、
靭性の方向差を大きくし、且つシャルピー試験での上部
棚エネルギーを低下させるため、上限を0.02%とす
ることが好ましい。
【0025】Cuは鋼材の焼入れ性を上昇し、また耐食
性を向上する元素である。このような効果を要する時、
0.05%以上を添加する。しかし、0.5%超の添加
で熱間加工性を損なう。このため、Cu量の添加量の上
限を0.5%とすることが好ましい。
【0026】Vは安定な炭窒化物を形成し、耐火強度を
向上させる元素であり、Moと複合して添加することに
より耐火性を著しく向上する。このような効果を必要と
する場合、0.005%以上の添加が必要である。一
方、0.2%超では添加量に見合った効果が得られない
ため、0.2%以下に抑制することが好ましい。
【0027】Nbは安定な炭窒化物を形成し、鋼の耐火
強度を向上させる効果を有する元素である。また、圧延
により加工誘起析出し、結晶粒界の移動を妨げ、再結晶
粒の粗大化を阻止する。このような効果を必要とする場
合、0.005%以上の添加が必要である。一方、0.
005%超では添加量に見合った効果が得られないた
め、経済的に0.05%以下に抑制することが好まし
い。
【0028】TiはNを固定し、ボロンの焼入れ性向上
効果を発揮させる元素である。また、Nbと同様炭窒化
物を形成し、鋼の耐火強度を向上させる効果を有する。
Nを固定するため、0.005%以上の添加が必要であ
る。しかし、0.05%を超えるとTiCが増えすぎ、
却って靭性を害するので上限は0.05%とすることが
好ましい。
【0029】Alは鋼の脱酸に不可欠な元素であり、N
を固定し、ボロンの効果を発揮させるには0.03%以
上を添加する。しかし、0.1%超の添加は不必要であ
るため、上限は0.1%が好ましい。
【0030】Nは鋼の耐火強度を上昇させるが、添加量
が多過ぎると溶接性を害するため、添加を0.02%以
下とすることが好ましい。
【0031】次に、圧延条件について述べる。前記のよ
うな化学成分を有する鋼は転炉、電気炉で溶製した後、
必要に応じて取鍋精練や真空脱ガス処理を施して得ら
れ、通常鋳型あるいは一方向凝固鋳型で造塊した後、1
000〜1300℃で均熱の後、圧延または鍛造により
スラブとする。また、スラブは連続鋳造法により溶鋼か
ら直接製造しても良い。
【0032】分塊での均熱・圧下はいかなるものであっ
ても構わない。即ち、スラブを冷却した後均熱してもよ
く、分塊のまま熱片で均熱炉に装入しても良い。
【0033】厚板圧延における圧延終了温度は800〜
1000℃とする。すなわち、800℃未満では耐火強
度が却って低下し、1000℃を超えると、圧延による
オーステナイト粒の細粒化が十分でなく、組織が粗くな
り靭性確保が困難になり好ましくない。
【0034】板厚は20mmを超えると冷却速度が遅く薄
肉材特有の本発明の効果がみられない。また、3mm未満
の板厚は構造材料としての用途がなく本発明の適用が不
必要である。しかして、本発明の薄手鋼材とは板厚を3
〜20mmとする。
【0035】薄肉材であるため、水冷等の加速冷却によ
ると冷却速度が速くなり過ぎ、常温引張強さの上昇を通
して耐火性が相対的に低下する。このため、圧延後の冷
却条件は放冷を採用する。このようにして製造した鋼板
は切断、溶接等の加工の後、構造材料として使用でき
る。
【0036】
【実施例】
(実施例1)表1に示す化学成分を有する鋼を表2中の
製造条件で圧延し、常温での引張強さ、0℃でのシャル
ピー衝撃吸収エネルギーおよび600℃での耐火強度を
測定した。結果を表2にまとめて示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】鋼番AおよびBはMoあるいはBが本発明
の範囲外であり、この鋼を用いて圧延した鋼板A2およ
びB2の圧延条件が発明条件を満たすものの、耐火強度
が10kgf/mm2 台と小さく、耐火強度と引張強さの比
も0.25前後と低い。
【0040】表1の鋼番C〜Jは本発明の成分である。
この鋼より、表2の条件で圧延した。圧延板の特性を同
表中に示している。鋼番C〜Jより本発明条件で圧延し
た鋼板C1〜J1は何れも耐火強度が20kgf/mm2
上と高く、引張強さとの比も総て0.4以上である。こ
れに対し、板番C2およびF2では、加熱温度が105
0℃未満であり、それぞれ板番C1およびF1と比べて
引張強さが高く、耐火強度と引張強さの比が小さく、耐
火性が劣る。板番D2およびG2では圧延終了温度が1
000℃を超えており、耐火性が良好なるも、vEoが
1〜3kgf-mと低い。板番E2,I2あるいはJ2で
は、それぞれ仕上温度(圧延終了温度)が低い、板厚が
薄い、あるいは圧延終了後の冷却速度がミスト冷却によ
り速いため、板番E1,I1あるいはJ1に比べ常温で
の引張強さが高くなり過ぎ、耐火強度と常温引張強さの
比が小さくなり、耐火特性が劣る。板番H2では板厚が
厚く冷却速度が遅く、常温での引張強さが板番H1に比
べて低く、耐火強度と常温引張強さの比も低く耐火性も
劣る。
【0041】
【発明の効果】本方法による薄手鋼板は溶接構造用鋼材
(JIS G3106)の常温での引張強さおよび靭性
を満足するばかりでなく、耐火鋼として重要である高温
での耐火強度が優れており、鉄骨構造等の建築物の製作
において耐火被覆を簡略あるいは省略可能であり、工業
的価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】加熱温度による600℃耐火強度の変化を示す
図表である。
【図2】火災時の鋼材温度の上昇挙動を模した試験片加
熱パターンを示す説明図である。
【図3】加熱温度による常温引張強さを表す図表であ
る。
【図4】加熱温度による600℃耐火強度と常温引張強
さの比の変化を示す図表である。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 重量%にて、 Mo:0.005〜0.6%、 B :0.0003〜0.0025%、 を含み、ボロン処理を行った炭素当量(Ceq=C+M
    n/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4
    +V/14)が0.25〜0.45%である鋼を、10
    50℃超、1280℃以下に加熱し、圧延終了温度が8
    00〜1000℃となるように圧延し、圧延後放冷する
    ことを特徴とする耐火強度の優れた構造用ボロン処理薄
    手鋼材の製造方法。
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Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0277523A (ja) * 1988-06-13 1990-03-16 Nippon Steel Corp 耐火性の優れた建築用低降伏比鋼材の製造方法およびその鋼材を用いた建築用鋼材料
JPH0339418A (ja) * 1989-07-04 1991-02-20 Sumitomo Metal Ind Ltd 高温での弾性率低下の少ない鉄骨建築用鋼材の製造方法
JPH03126816A (ja) * 1989-10-11 1991-05-30 Nippon Steel Corp 耐火性の優れた建築用薄手低降伏比鋼の製造方法

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