JPH0525382B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、放電灯の無接点始動器等に使用さ
れる高電圧発生用非線形コンデンサに関する。

〔従来の技術〕

従来、チタン酸バリウム等を主体とする強誘電
体セラミツクコンデンサは、電子部品として種々
の用途に用いられているが、その一つとして該コ
ンデンサの非線形電圧−電荷特性を利用して、金
属蒸気放電灯に内蔵する始動器の高電圧パルス発
生用素子等としても使用されている。

このような用途に使用される高電圧パルス発生
用コンデンサは、従来第４図に示すように構成さ
れている。すなわち強誘電体セラミツク基板１の
両面に電線膜２ａ，２ｂを形成し、それらの電極
膜２ａ，２ｂの表面を該電極膜２ａ，２ｂの中央
部を残して無機質ガラス３ａ，３ｂで被覆すると
共に、電極膜２ａ，２ｂの中央部に導電性接着剤
４ａ，４ｂでリード端子５ａ，５ｂを固定して構
成されている。

ところが、このような構成の高電圧パルス発生
用コンデンサにおいては、リード端子５ａ，５ｂ
を電極膜２ａ，２ｂに固定するための接着剤４
ａ，４ｂは、接着強度を重視しているため、多め
の低融点ガラス粉末と銀粉（通常、混合比は重量
％で50：50である）とで構成されており、リード
端子５ａ，５ｂを電極膜２ａ，２ｂに、この導電
性接着剤４ａ，４ｂを焼成して（焼成温度：約
600℃）接続した場合、導電性接着剤４ａ，４ｂ
のガラス成分が、電極膜２ａ，２ｂを通して強誘
電体セラミツク基板１の結晶粒界内部に拡散し、
コンデンサの諸特性に悪影響を及ぼして発生させ
る高電圧パルスの値を低下させ、更には高電圧パ
ルス発生時における電歪現象により、セラミツク
基板が導電性接着剤のガラス成分の入り込んだ結
晶粒界部分から破壊するという問題点があつた。

この問題点を解消するため、本件発明者等は、
先に第５図Ａ，Ｂに示す構成のものを提案した
（特願昭61−281863号）。すなわち、強誘電体セラ
ミツク基板１の両面に電極膜２ａ，２ｂを形成
し、これらの電極膜２ａ，２ｂの表面を該電極膜
に対する通電部６ａ，６ｂを除いて無機質ガラス
３ａ，３ｂで被覆すると共に、その無機質ガラス
３ａ，３ｂの外表面に通電部６ａ，６ｂに接続し
た導電膜７ａ，７ｂを形成し、該導電膜７ａ，７
ｂ上に導電性接着剤４ａ，４ｂでリード端子５
ａ，５ｂを固着するものである。

このように構成することにより、リード端子固
定のための導電性接着剤のガラス成分の拡散は、
無機質ガラスで阻止され、導電膜、無機質ガラス
及び電極膜を通してセラミツク基板へ拡散するこ
とはなくなり、したがつて発生パルス電圧の低下
やセラミツク基板の破壊を効果的に防止できるも
のである。なお、電極膜及び導電膜を形成する銀
ペーストには僅かのフリツト（通常数％）が含ま
れているが、銀ペーストの焼成温度（約850〜900
℃）も高く、したがつて電極膜や導電膜からのフ
リツト成分の拡散は殆ど問題にならないほど少な
い。

〔発明が解決しようとする問題点〕

ところで、このように構成した高電圧パルス発
生用非線形コンデンサをチヨークコイル形安定器
等と共に用いて高電圧パルスは発生させた場合、
発生した高電圧パルスにより非線形コンデンサに
は電歪現象により機械的振動が生ずる。この非線
形コンデンサが円板状の場合には、第６図Ａ，Ｂ
に示すように、円板状非線形コンデンサの径方向
と厚み方向に振動が生ずる。そしてこの機械的振
動が外部より抑制されずに大きくなるほど、発生
する高電圧パルスの電圧が高くなる。

したがつて上記のようにこの非線形コンデンサ
に導電膜を設けてリード端子を取り付ける場合、
非線形コンデンサの電歪現象による機械的振動に
影響を与えないように通電部を配置して導電膜を
形成しなければ、発生する高電圧パルスの電圧値
を低下させてしまうという問題点があつた。

本発明は、従来の高電圧パルス発生用非線形コ
ンデンサにおける上記問題点を解決するためなさ
れたもので、通電部の配設位置の範囲を定めて導
電膜の大きさを制限して、発生させるパルス電圧
の値の低下を防止できるようにした高電圧パルス
発生用非線形コンデンサを提供することを目的と
する。

〔問題点を解決するための手段及び作用〕

上記問題点を解決するため、本件発明者等は
種々の大きさの強誘電体セラミツク基板を用い、
且つ通電部の配設位置を変えて、上記第５図Ａ，
Ｂに示したものと同様な構成の非線形コンデンサ
を作成し、第２図に示すパルス発生回路を構成し
て、発生パルス電圧を測定したところ、第１図に
示すような結果が得られた。

第１図において、曲線ａは、直径15.5mm、厚み
0.65mm、電極膜直径14.5mmのセラミツク基板を用
いて構成した非線形コンデンサの通電部の配設位
置を変化させた場合の、発生パルス電圧値の変化
を示す曲線である。曲線ｂは、直径17.6mm、厚み
0.65mm、電極膜直径16.5mmのセラミツク基板、同
じく曲線ｃは、直径19.3mm、厚み0.65mm、電極膜
直径18.0mmのセラミツク基板を、それぞれ用いて
構成した非線形コンデンサの通電部の配設位置を
変化させた場合の、発生パルス電圧値の変化を示
す曲線である。

パルス発生回路は、第２図に示すように、上記
構成の各非線形コンデンサ１１と125W水銀灯用
安定器１２の直列回路を、200V，50Hzの交流電
源１３に接続して構成し、発生パルス電圧を、非
線形コンデンサ１１の端子間に接続したオシロス
コープ１４により測定した。

第１図の曲線ａからわかるように、直径15.5
mm、厚み0.65mmのセラミツク基板を用いたものに
おいては、通電部を中心から５mm以内に設置した
場合には、発生パルス電圧はほぼ一定で規定の±
1000V以上のパルス電圧を発生しているが、通電
部の配設位置が６mm以上になると、発生パルス電
圧は急激に低下し、規定の±1000Vに達していな
いことがわかる。

したがつてこの寸法のセラミツク基板を用いた
ものでは、通電部の配設位置を５mm以内とする必
要があることがわかる。５mmをセラミツク基板半
径に対する比率で表すと約65％となる。他の寸法
のセラミツク基板を用いたものについても、曲線
ｂ，ｃに示すように、曲線ａと同様な傾向がみら
れ、やはりセラミツク基板半径の約65％以内に通
電部を配設した場合、ほぼ一定の規定のパルス電
圧を発生していることがわかる。

以上の結果から、本発明は、通電部をセラミツ
ク基板の中心から該セラミツク基板の半径の寸法
の65％以内の位置に配設するように構成するもの
である。

このように構成することにより、導電膜の大き
さが制限され、電歪現象による機械的振動を抑制
せず、発生する高電圧パルスの電圧値の低下を阻
止することが可能となる。

〔実施例〕

以下本発明の実施例について説明する。第３図
Ａは、本発明の一実施例を示す断面図で、第３図
Ｂはその上面図である。第３図Ａ，Ｂに示す構成
の非線形コンデンサを得る場合には、まずチタン
酸バリウムを主成分とする強誘電体セラミツク素
材を焼成して、直径16.0mm、厚み0.65mmの円板状
のセラミツク基板１を作成する。このセラミツク
基板１の両面に銀ペーストをスクリーン印刷等で
直径15.0mmに塗布し、乾燥させた後焼成して電極
膜２ａ，２ｂを形成する。しかる後、中心よりセ
ラミツク基板１の半径の65％以内である５mmの位
置を通電部６ａ，６ｂに設定し、この通電部６
ａ，６ｂを除いて電極膜２ａ，２ｂの表面を強誘
電性結晶化ガラス膜３ａ，３ｂで被覆する。次に
結晶化ガラス膜３ａ，３ｂの外表面に、その外表
面中心部と電極膜２ａ，２ｂへの通電部６ａ，６
ｂとを結ぶようにして銀膜等からなる導電膜８
ａ，８ｂを形成する。そして最後にセラミツク基
板１の中心部に対応する導電膜上に、ニツケルか
らなるリード端子５ａ，５ｂを、低融点ガラス粉
末と銀粉末からなる導電性接着剤４ａ，４ｂで接
着し、焼成を行つて高電圧パルス発生用非線形コ
ンデンサを完成する。

このようにして得られた非線形コンデンサを第
１図に示した高電圧パルス発生回路に適用して、
発生パルス電圧値を測定したところ、±1100Vの
パルス電圧を発生させていることが確認された。

上記実施例において、無機材料被覆として強誘
電性結晶化ガラスを用いているのは、該結晶化ガ
ラスが銀電極膜や銀導電膜に特に拡散しにくいた
め、拡散によるトラブルの発生を有効に防止する
ことができるためである。またこの結晶化ガラス
膜はクツシヨン材となり、リード端子をランプマ
ウントに固定した場合でも、電歪現象によるセラ
ミツク基板の振動を、リード端子が抑制する作用
を低減する機能をもつものである。

また上記実施例では、リード端子としてニツケ
ルを主成分とする線材で形成したものを示した。
この非線形コンデンサにおいては、リード端子は
導電性接着剤で600℃程度に加熱されて固着され
るが、ニツケルリード端子はこの焼成温度でも酸
化されにくく、また導電性接着剤とぬれ性がよ
く、更にはランプマウントへのスポツト溶接が容
易にできるために用いているものである。

更に鉄・ニツケル又は鉄・ニツケル・コバルト
を主成分としたリード端子の場合も、同様な効果
が得られるのでよく用いられる。

〔考案の効果〕

本発明によれば、電極膜への通電部の配設位置
を、発生パルス電圧値に影響を与えない範囲に設
定したので、発生パルス電圧の低減を防止した高
電圧パルス発生用非線形コンデンサを容易に得る
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、通電部配設位置を変えた場合の発生
パルスの電圧値の変化を示す図、第２図は、パル
ス発生回路とパルス測定回路を示す図、第３図
Ａ，Ｂは、本発明の一実施例の断面図及び上面
図、第４図は、従来の高電圧パルス発生用コンデ
ンサの断面図、第５図Ａ，Ｂは、先に提案した高
電圧パルス発生用コンデンサの断面図及び上面
図、第６図Ａ，Ｂは、強誘電体セラミツク基板の
電歪現象による径方向及び厚み方向の振動態様を
示す図である。 図において、１は強誘電体セラミツク基板、２
ａ，２ｂは電極膜、３ａ，３ｂは強誘電性結晶化
ガラス膜、４ａ，４ｂは導電性接着剤、５ａ，５
ｂはリード端子、６ａ，６ｂは通電部、８ａ，８
ｂは導電膜を示す。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 円板状強誘電体セラミツク基板の両面に電極
   膜を形成し、これらの電極膜の表面を該電極膜に
   対する通電部を除いて無機材料で被覆し、該被覆
   の外表面に前記通電部とセラミツク基板の中心部
   に対応する部分を結ぶように導電膜を施し、該セ
   ラミツク基板の中心部に対応する前記導電膜上に
   リード端子を導電性接着剤で接続してなる高電圧
   パルス発生用非線形コンデンサにおいて、前記通
   電部を、セラミツク基板の中心から、該セラミツ
   ク基板の半径の寸法の65％以内の位置に配設した
   ことを特徴とする高電圧パルス発生用非線形コン
   デンサ。 ２ 前記無機材料被覆は、強誘電性結晶化ガラス
   で形成されていることを特徴とする特許請求の範
   囲第１項記載の高電圧パルス発生用非線形コンデ
   ンサ。 ３ 前記リード端子は、ニツケルあるいは鉄・ニ
   ツケルあるいは鉄・ニツケル・コバルトを主成分
   とした線材により構成されていることを特徴とす
   る特許請求の範囲第１項又は第２項記載の高電圧
   パルス発生用非線形コンデンサ。