JPH05240271A - ディスクブレーキ装置のブレーキキャリパ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】ディスクロータの振れを吸収でき、かつ高い制
動性および耐久性を備えたディスクブレーキ装置のブレ
ーキキャリパを提供する。 【構成】ブレーキキャリパ１１を対向ピストン型のもの
として高い制動性と耐久性を確保し、このブレーキキャ
リパ１１を車体側に浮動的に支持させた。実施例では、
キャリパボディ３１から延出するリヤ支持アーム４０お
よびフロント支持アーム４１を、スライドピン４２，４
４の軸方向に摺動可能とすることによってブレーキキャ
リパ１１全体をディスクロータ１０の板厚方向に移動可
能としたため、万一ディスクロータ１０に振れが発生し
ても、制動時にはブレーキキャリパ１１が移動してディ
スクロータ１０の振れを吸収しながらブレーキパッド２
６，２７を安定的にディスクロータ１０に押し当て、良
好な制動力をもたらす。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ディスクブレーキ装置
のブレーキキャリパに関する。

【０００２】

【従来の技術】ディスクブレーキ装置のブレーキキャリ
パには、対向ピストン型のものと片側ピストン型のもの
とがある。

【０００３】対向ピストン型のブレーキキャリパは、デ
ィスクロータの両面に当てがわれる一対のブレーキパッ
ドが、それぞれ専用のピストンによってディスクロータ
側に押圧されるもので、ブレーキパッドおよびピストン
を保持するキャリパボディは車体側に固設される。

【０００４】これに対し、片側ピストン型のブレーキキ
ャリパは、キャリパボディがディスクロータの板厚方向
へ移動できるよう、車体側に浮動的に設置されており、
一方のブレーキパッドのみがピストンによってディスク
ロータ側に押圧され、他方のブレーキパッドは反作用に
よるキャリパボディの移動によってディスクロータに押
し付けられる。キャリパボディは、ディスクロータの板
厚方向に延びるスライドピン沿いに摺動するため、ピン
スライド型、もしくはフローティング型とも呼ばれてい
る。

【０００５】対向ピストン型のブレーキキャリパは、片
側ピストン型のものに比べてキャリパボディの剛性が高
いため、制動性および耐久性の面で優れており、制動時
の操作フィーリングが剛性感のあるコントロールし易い
ものとなることと相俟って自動車や中〜大型の自動二輪
車などに用いられている。一方、片側ピストン型のブレ
ーキキャリパは、その構造が単純であることから小型の
自動二輪車などに多用される。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】ところで、モトクロッ
サなどのように不整地でレース等を行なう自動二輪車
は、転倒や衝突の頻度が高いためディスクロータに振れ
が発生する可能性が大きい。ディスクロータに振れが発
生した場合、キャリパボディが車体側に固設された対向
ピストン型のブレーキキャリパでは、制動時にディスク
ロータの振れによってブレーキパッドおよびピストンが
押し戻されてしまい、制動力が大幅に低下するおそれが
ある。このためモトクロッサ等のブレーキキャリパに
は、キャリパボディの移動によってディスクロータの振
れをある程度まで吸収できる片側ピストン型が採用され
ている。

【０００７】しかしながら、レース時におけるモトクロ
ッサーのブレーキ使用頻度は非常に高く、ディスクロー
タの高温化などにより片側ピストン型のブレーキキャリ
パにとって苛酷な使用条件となる。特に、キャリパボデ
ィの反ピストン側のブレーキパッドを支持する部分が、
熱や振動および制動時におけるキャリパボディの変形に
よって摩耗し易くなり、反ピストン側のブレーキッドが
偏摩耗したり、引き擦りやブレーキノイズを発生させる
原因となっていた。

【０００８】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたもので、ディスクロータの振れを吸収でき、かつ
高い制動性および耐久性を備えたディスクブレーキ装置
のブレーキキャリパを提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係るディスクブレーキ装置のブレーキキャ
リパは、対向ピストン型構造を持つディスクブレーキ装
置のブレーキキャリパにおいて、ブレーキパッドおよび
ピストンを保持するキャリパボディを車体側に浮動的に
支持させたことを特徴とするものである。

【００１０】

【作用】このように構成することにより、高い制動性お
よび耐久性を備えたブレーキキャリパが、ディスクロー
タの板厚方向に移動可能となり、万一ディスクロータに
振れが発生してもブレーキキャリパが移動して振れを吸
収し、制動力の低下を防ぐ。

【００１１】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照
しながら説明する。

【００１２】図１は、本発明に係るディスクブレーキ装
置のブレーキキャリパが適用された自動二輪車の右側面
図である。この自動二輪車１は、例えばモトクロッサで
あり、車体フレーム２に枢着されたフロントフォーク３
およびスイングアーム４は、それぞれ長いサスペンショ
ンストロークを持ち、前輪５と後輪６を支持している。
これら前、後輪５，６にはそれぞれディスクブレーキ装
置７，８が装備されている。なお、以下の説明は後輪６
側に備えられたディスクブレーキ装置８について行な
う。

【００１３】図２は、スイングアーム４、ディスクブレ
ーキ装置８、およびそれら周辺部の構成図である。ディ
スクブレーキ装置８は、後輪６のハブ９に回転一体に固
定されたディスクロータ１０と、スイングアーム４に取
り付けられて上記ディスクロータ１０を挟み込むブレー
キキャリパ１１とから構成されている。

【００１４】車体フレーム２には、ブレーキペダル１３
とマスタシリンダ１４が設置され、上記ブレーキペダル
１３の作用点にマスタシリンダ１４が連結されている。
マスタシリンダ１４と前記ブレーキキャリパ１１は、ブ
レーキホース１５によって接続されており、ブレーキペ
ダル１３が踏み下げられるとマスタシリンダ１４内の油
圧が高まり、この油圧がブレーキホース１５を伝わって
ブレーキキャリパ１１を作動させ、ディスクロータ１０
およびハブ９の回転を制動させる。なお、１６はマスタ
シリンダ１４内に充填されたブレーキフルードを補充す
るリザーバタンクであり、リザーバホース１７によって
マスタシリンダ１４に接続されている。

【００１５】図３は、ディスクブレーキ装置８の拡大右
側面図、図４は図３のIV−IV線に沿う断面図である。

【００１６】ハブ９は、ベアリング１８，１９，２０を
介してスイングアーム４に架設されたアクスルシャフト
２２廻りに回転自在に軸支され、ディスクロータ１０は
複数のビス２３によってハブ９に回転一体に固定されて
いる。

【００１７】スイングアーム４には、プレート状のキャ
リパブラケット２４が設けられており、このキャリパブ
ラケット２４は、例えば２本の固定ボルト２５，２５に
よる締結と、アクスルシャフト２２の挿通とによってス
イングアーム４に堅固に固定され、ブレーキキャリパ１
１を支えている。

【００１８】ブレーキキャリパ１１は、対向ピストン型
の構造を持つものとされ、ディスクロータ１０の両側面
に当てがわれるブレーキパッド２６，２７と、これをデ
ィスクロータ１０に押し付ける一対のピストン２８，２
９とがキャリパボディ３１内に保持された構成となって
いる。キャリパボディ３１は、左右のボディメンバ３
２，３３をボルト３４，３４で締結して構成されてお
り、上記ピストン２８，２９を保持するシリンダ３５，
３６が形成されている。

【００１９】上記シリンダ３５，３６と、ブレーキホー
ス１５が接続されるユニオン３７との間には図示しない
オイル通路が設けられており、前述したようにマスタシ
リンダ１４からブレーキホース１５を通ってブレーキキ
ャリパ１１に伝えられた油圧は、上記オイル通路を経て
シリンダ３５，３６に掛かるため、この油圧によってピ
ストン２８，２９がディスクロータ１０側へ移動し、ブ
レーキパッド２６，２７をそれぞれディスクロータ１０
に押し付ける。なお３８は、シリンダ３５，３６および
オイル通路内のエア抜きを行なうためのブリーダであ
る。

【００２０】キャリパボディ３１は、以下に述べる構成
によって車体側（キャリパブラケット２４）に浮動的に
支持され、ディスクロータ１０の板厚方向へ移動可能と
される。

【００２１】例えば右側のボディメンバ３３には、キャ
リパブラケット２４側に延びるリヤ支持アーム４０とフ
ロント支持アーム４１が一体形成されており、リヤ支持
アーム４０は図４に示すようにキャリパブラケット２４
に締結されたスライドピン４２に挿嵌され、キャリパボ
ディ３１をスライドピン４２に沿って移動可能とさせて
いる。リヤ支持アーム４０とスライドピン４２との間に
介装されたラバーブーツ４３は、リヤ支持アーム４０と
ともにスライドピン４２沿いに摺動するもので、スライ
ドピン４２を全面的に覆って水や塵等から保護し、リヤ
支持アーム４０の摺動性をスムーズに保つと共に、リヤ
支持アーム４０をスライトピン４２に対して隙間無く、
かつ弾性的に支持させる働きを持っている。

【００２２】フロント支持アーム４１は、リヤ支持アー
ム４０とほぼ同様にしてキャリパブラケット２４に支持
されるが、スライドピン４４は図５に示すように、フロ
ント支持アーム４１側に締結されており、キャリパブラ
ケット２４に設けられたスライドシリンダ４５内に摺動
自在に挿通されている。フロント支持アーム４１とキャ
リパブラケット２４との間には、摺動部分を防水、防塵
するラバーブーツ４６が介装される。

【００２３】このように構成されたブレーキキャリパ１
１は、キャリパボディ３１を車体側に浮動的に支持させ
ることによってブレーキキャリパ１１全体がディスクロ
ータ１０の板厚方向へ移動可能となったため、自動二輪
車１の転倒などで万一ディスクロータ１０に振れが発生
しても、制動時にはブレーキキャリパ１１が移動してデ
ィスクロータ１０の振れを吸収しブレーキパッド２６，
２７を安定的にディスクロータ１０に押圧させる。よっ
て制動力が低下するおそれはなく、通常のブレーキング
を行なうことができる。

【００２４】しかも、対向ピストン型の構造を持つブレ
ーキキャリパ１１は、キャリパボディ３１の剛性が高い
ので制動性、耐久性に優れており、苛酷な使用条件に耐
えられるものである。このため、前述したディスクロー
タ１０の振れの吸収効果と相俟って、本実施例における
自動二輪車１のようなモトクロッサに使用するのに好適
である。

【００２５】なお、本発明は自動二輪車に限らず、自動
車など他の車両のディスクブレーキ装置に応用してもよ
い。

【００２６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るディ
スクブレーキ装置のブレーキキャリパは、対向ピストン
型構造を持つディスクブレーキ装置のブレーキキャリパ
において、ブレーキパッドおよびピストンを保持するキ
ャリパボディを車体側に浮動的に支持させたこを特徴と
するものである。

【００２７】したがって、対向ピストン型の構造による
優れた制動性と耐久性を備えたブレーキキャリパをディ
スクロータの板厚方向に移動可能とさせることができ
る。このため、万一ディスクロータに振が発生しても、
ブレーキキャリパが移動することによってディスクロー
タの振れを吸収し、ブレーキパッドを安定的にディスク
ロータに押し当てて良好な制動力を発揮できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明が適用された自動二輪車の右側面図。

【図２】スイングアーム、ディスクブレーキ装置などの
構成図。

【図３】ディスクブレーキ装置の拡大右側面図。

【図４】本発明の一実施例を示すもので、図３のIV−IV
線に沿う断面図。

【図５】図３のＶ−Ｖ線に沿う断面図。

【符号の説明】

１ 自動二輪車 ４ スイングアーム ８ ディスクブレーキ装置 ９ ハブ １０ ディスクロータ １１ ブレーキキャリパ ２２ アクスルシャフト ２４ 車体側に固定されたキャリパブラケット ２６，２７ ブレーキパッド ２８，２９ ピストン ３１ キャリパボディ ４０ リヤ支持アーム ４１ フロント支持アーム ４２，４４ スライドピン ４３，４６ ラバーブーツ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 対向ピストン型構造を持つディスクブレ
   ーキ装置のブレーキキャリパにおいて、ブレーキパッド
   およびピストンを保持するキャリパボディを車体側に浮
   動的に支持させたことを特徴とするディスクブレーキ装
   置のブレーキキャリパ。