JPH05238452A - 自動二輪車のチェーンカバー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】走行時におけるチェーンの上下揺動を妨げるこ
となく、後輪やリヤフェンダより落下する泥からチェー
ンを保護する。 【構成】チェーン２１を覆うカバー部２８を、チェーン
２１が挿通されるパイプ状に形成し、このカバー部２８
をスイングアーム１３に対して上下方向に浮動可能とし
た。実施例においてカバー部２８は、前端部Ａ点がスイ
ングアーム１３上に固定された片持支持とされ、上記Ａ
点の弾力性によってスイングアーム１３に対し上下方向
に浮動する。カバー部２８の中間部分には、下方に延び
るガイドプレート４３が設けられ、このガイドプレート
４３に穿設された長孔４４が、スイングアーム１３の内
側面に設けられたボス４５に摺動自在に係合しており、
カバー部２８の上下方向への浮動量が決定される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動二輪車のチェーン
カバーに関する。

【０００２】

【従来の技術】モトクロッサーなど、不整地を走破する
ことを目的とする自動二輪車には、後輪駆動用のチェー
ンを泥等の付着から保護するチェーンカバーが備えられ
る。

【０００３】一般にチェーンカバーは、チェーンの上部
や側部を覆う形状を持ち、後輪が軸支されるスイングア
ームに一体的に固定される。チェーンカバーとチェーン
との間には上下方向に間隔が空けられ、走行時における
チェーンの上下揺動に対しチェーンカバーが干渉しない
ようにされている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、雨天時に不
整地を走行する際、後輪が巻き上げた泥やリヤフェンダ
の内側に付着した泥が大量に前記チェーンカバー上に落
下する。しかしながら、前述したようにチェーンカバー
とチェーンとの間には干渉防止のために上下方向に間隔
が空けられているため、泥がチェーンカバーとチェーン
との間に比較的容易に入り込んでしまい、入り込んだ泥
はチェーンに運ばれて順次前方に移動し、フットレスト
やシフトレバー等の周辺へ大量に堆積してしまう。

【０００５】このためライダーの足場が滑り易くなった
り、適確なシフト操作が行い難くなったりする恐れがあ
ると同時に、このように堆積した大量の泥によって車体
重量が大幅に増加し、自動二輪車の走行安定性や操縦性
が低下する懸念があった。また、チェーンカバー自体に
も泥が堆積するため、上記重量増加の問題が助長され
る。

【０００６】さらに、チェーンのローラー間に泥がつま
るため、チェーンのたるみ量が設定値より小さくなって
スイングアームの揺動に支障が出たり、チェーンがスム
ーズにスプロケットに噛合できなくなるなどの問題が発
生する。

【０００７】本発明は、これらの問題点を解決するため
になされたもので、走行時におけるチェーンの上下揺動
を妨げることなく、後輪やリヤフェンダより落下する泥
からチェーンを保護することの出来る自動二輪車のチェ
ーンカバーを提供することを目的とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明に係る自動二輪車のチェーンカバーは、後輪
が軸支されるスイングアームに取り付けられて後輪駆動
用のチェーンを覆い、上記チェーンを泥等から保護する
自動二輪車のチェーンカバーにおいて、チェーンを覆う
カバー部を、チェーンが挿通されるパイプ状に形成し、
このカバー部をスイングアームに対して上下方向に浮動
可能としたことを特徴とするものである。

【０００９】

【作用】このように構成することにより、上記カバー部
が後輪やリヤフェンダより落下する泥からチェーンを効
果的に保護する。カバー部は、スイングアームに対して
上下方向に浮動可能であるため、自動二輪車の走行時に
おけるチェーンの上下揺動に追従でき、チェーンの動き
を妨げることはない。

【００１０】

【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照
しながら説明する。

【００１１】図１は、例えばモトクロス用自動二輪車の
後半部左側面を示す図であり、本発明の一実施例を示し
ている。この自動二輪車１の車体フレーム２は、一般的
なセミダブルクレードル型のもので、そのダウンチュー
ブ３上にエンジン４が搭載されている。メインチューブ
５の上部からは左右一対のシートレール６が後方に延
び、このシートレール６はメインチューブ５の下部から
延びる左右一対のシートステー７に支持されている。シ
ートレール６上には着座シート８が載置され、リヤフェ
ンダ９およびサイドカバー１０が取り付けられる。

【００１２】メインチューブ５の下部に架設された車幅
方向に延びるピボット軸１２には、後方へ延びるスイン
グアーム１３がピボット軸１２廻りに回動自在に枢着さ
れ、スイングアーム１３の後端部には後輪１４が軸支さ
れる。スイングアーム１３の基端側にはリンク機構１５
およびショックアブソーバ１６からなるサスペンション
装置が構成され、スイングアーム１３の回動を緩衝、復
元させる。

【００１３】エンジン４の左側面に突出するドライブシ
ャフト１８にはドライブスプロケット１９が、また後輪
１４の左側面にはドリブンスプロケット２０がそれぞれ
回転一体に設けられ、ドライブスプロケット１９とドリ
ブンスプロケット２０との間に後輪１４駆動用のチェー
ン２１が巻装されている。このチェーン２１のたるみ
は、車体フレーム２の下部に片持支持されたチェーンテ
ンショナー２３によって吸収される。なお２４はライダ
ーの足を載せるフットレスト、２５は変速操作を行うた
めのシフトレバーである。

【００１４】スイングアーム１３には、本発明に係るチ
ェーンカバー２６が取り付けられている。このチェーン
カバー２６は、スイングアーム１３の基端部周囲をＵ字
形に囲むバッファ部２７と、チェーン２１を覆うカバー
部２８とを、弾力のある合成樹脂等の材料を用いて一体
に成形したものである。

【００１５】図２および図３は、それぞれ上記バッファ
部２７およびカバー部２８前方部分の平面図および左側
面図である。バッファ部２７は、スイングアーム１３の
基端部周囲を囲むことにより、自動二輪車１の走行時に
チェーン２１が上下方向に揺動した際、チェーン２１が
スイングアーム１３に衝突するのを防止するためのもの
である。

【００１６】バッファ部２７の上下面には、チェーン２
１を安定的に走行させるガイドレール３０，３１が長手
方向に沿って突設され、先端部にはチェーン２１の誘導
溝３２が設けられている。また、バッファ部２７の上下
内側には取付ブラケット３３，３４が一体に形成され、
これらの取付ブラケット３３，３４がボルト３５，３６
によってスイングアーム１３に締結される。また、バッ
ファ部２７の先端部はスイングアーム１３に突設された
バッファガイド３７，３８の間に挾まれて位置決めされ
る。

【００１７】カバー部２８は、図４にも示すようにチェ
ーン２１が挿通されるパイプ状に形成されている。本実
施例において、カバー部２８は角パイプ形状であり、そ
の上面は車体外側に向かって傾斜する斜面とされ、内部
の上下面にはチェーン２１の走路を安定させるチェーン
レール４１，４２が長手方向に突設されている。

【００１８】カバー部２８の長さは、前記取付けブラケ
ット３３の直後からドリブンスプロケット２０の直前ま
で達するもので、図３に示すようにカバー部２８の前端
部Ａ点が取付けブラケット３３によってスイングアーム
１３上に固定され、カバー部２８はスイングアーム１３
に対してαの角度を持って片持支持されている。このた
め、カバー部２８は上記Ａ点の弾力性によってスイング
アーム１３に対し上下方向に浮動可能となっている。

【００１９】カバー部２８の中間部分には、下方に延び
るガイドプレート４３が一体的に垂設されている。この
ガイドプレート４３は、スイングアーム１３の内側を通
って下側のチェーンライン２１′の側方まで達してい
る。

【００２０】ガイドプレート４３には長孔４４が穿設さ
れ、この長孔４４はスイングアーム１３の内側面に突設
されたボス４５に摺動自在に係合し、上記ボス４５には
ワッシャ４６を介してボルト４７が締結されている。こ
のため、カバー部２８の上下方向への浮動量は長孔４４
の長さによって決定され、かつカバー部２８の横方向へ
の動きは、スイングアーム１３の内側面およびワッシャ
４６によって規制される。

【００２１】図５および図６に示すように、自動二輪車
１の走行時における後輪１４およびスイングアーム１３
の動きによってチェーン２１が上下に揺動すると、カバ
ー部２８がチェーン２１の揺動に追従して上下に揺動す
るため、チェーン２１の揺動が阻害される恐れはない。
しかも、チェーン２１はカバー部２８によって横方向へ
の揺れを規制されるとともに、カバー部２８内に設けら
れたチェーンレール４１，４２に沿ってスムーズにドラ
イブスプロケット１９側へ走行するため、後輪１４との
干渉やチェーン外れ等が有効に防止される。

【００２２】以上のように、チェーン２１はパイプ状に
形成されたカバー部２８に挿通されて完全に覆われるた
め、後輪１４やリヤフェンダ９より落下する泥から確実
に保護される。このため、従来のようにチェーン２１上
に落下した泥が前方に運ばれてフットレスト２４やシフ
トレバー２５等の周辺に堆積することはなく、ライダー
の足場は滑りにくく保たれ、適確なシフト操作が行える
とともに、泥の堆積による車体重量の増加が無くなり、
自動二輪車１の走行安定性や操縦性が良好に維持され
る。

【００２３】また、チェーン２１のローラー間に入り込
む泥の量が著しく減少するため、チェーン２１のたるみ
量が設定値通りに保たれると同時に、チェーン２１とド
ライブスプロケット１９並びにドリブンスプロケット２
０との噛合が非常にスムーズになる。

【００２４】なお、カバー部２８上に落下した泥は、カ
バー部２８上面の傾斜と、カバー部２８の浮動時におけ
る振動とによって容易に振り落とされ、カバー部２８上
には堆積しない。また、ドリブンスプロケット２０の周
囲においてチェーン２１に付着した泥は、カバー部２８
の入口（後端部）にてかき落とされ、前部へ運ばれるこ
とはない。さらに、下方へ延びたガイドプレート４３に
よって、下側のチェーンライン２１′上に載った泥も直
ちにかき落とされるか、若しくはたたき落とされる。

【００２５】なお、本発明に係るチェーンカバー２６を
用いることにより、従来、前記チェーンテンショナー２
３とともに車体フレーム２に設けられていたローラー状
のアッパーテンショナーを廃止することができ、部品点
数の削減によるコストダウンを実現できる。

【００２６】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る自動
二輪車のチェーンカバーは、後輪が軸支されるスイング
アームに取り付けられて後輪駆動用のチェーンを覆い、
上記チェーンを泥等から保護する自動二輪車のチェーン
カバーにおいて、チェーンを覆うカバー部を、チェーン
が挿通されるパイプ状に形成し、このカバー部をスイン
グアームに対して上下方向に浮動可能としたことを特徴
とするものである。

【００２７】したがって、上記カバー部はチェーンの上
下揺動に追従して上下に浮動しながらチェーンを覆い、
後輪やリヤフェンダより落下する泥からチェーンを確実
に保護する。このため泥がチェーン上に載ってフットト
レストやシフトレバーの周辺に堆積する恐れがなくな
り、ライダーの足場は滑りにくく保たれ、適確なシフト
操作が行える。また、泥の堆積による車体重量の増加が
無くなるため、自動二輪車の走行安定性や操縦性が悪く
なる恐れがない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す、モトクロス用自動二
輪車の後半部左側面図。

【図２】バッファ部およびカバー部前方部分の平面図。

【図３】バッファ部およびカバー部前方部分の側面図。

【図４】図１のIV−IV線に沿う断面図。

【図５】チェーンカバーの作動を示す、自動二輪車の後
半部左側面図。

【図６】チェーンカバーの作動を示す、自動二輪車の後
半部左側面図。

【符号の説明】

１ 自動二輪車 ２ 車体フレーム ９ リヤフェンダ １２ ピボット軸 １３ スイングアーム １４ 後輪 １９ ドライブスプロケット ２０ ドリブンスプロケット ２１ チェーン ２４ フットレスト ２５ シフトレバー ２６ チェーンカバー ２７ バッファ部 ２８ カバー部 ３３，３４ 取付ブラケット ４３ ガイドプレート ４４ 長孔 ４５ ボス ４６ ワッシャ ４７ ボルト

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 後輪が軸支されるスイングアームに取り
   付けられて後輪駆動用のチェーンを覆い、上記チェーン
   を泥等から保護する自動二輪車のチェーンカバーにおい
   て、チェーンを覆うカバー部を、チェーンが挿通される
   パイプ状に形成し、このカバー部をスイングアームに対
   して上下方向に浮動可能としたことを特徴とする自動二
   輪車のチェーンカバー。