JPH05230405A - カチオン性水性顔料分散ペースト - Google Patents

カチオン性水性顔料分散ペースト

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JPH05230405A
JPH05230405A JP4033141A JP3314192A JPH05230405A JP H05230405 A JPH05230405 A JP H05230405A JP 4033141 A JP4033141 A JP 4033141A JP 3314192 A JP3314192 A JP 3314192A JP H05230405 A JPH05230405 A JP H05230405A
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JP
Japan
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polymer
functional group
pigment
parts
acid
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JP4033141A
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Toshikatsu Kobayashi
敏勝 小林
Hiroyuki Kageyama
洋行 景山
Shoji Ikeda
承治 池田
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Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 水性媒体中に顔料、塩基性官能基含有水溶性
重合体および上記水溶性重合体を可溶化するための酸性
化合物を含有するカチオン性水性顔料分散ペーストであ
って、上記塩基性官能基含有水溶性重合体が上記酸性化
合物よりも大きい酸解離定数を有する酸性官能基をさら
に有するカチオン性水性顔料分散ペースト。 【効果】 顔料の分散性および分散安定性が良好であ
り、塗膜性能に悪影響を与えないカチオン性水性顔料分
散ペーストが提供された。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カチオン性水性塗料等
を製造するための中間組成物として用いられるカチオン
性水性顔料分散ペーストに関し、特に、カチオン性水性
顔料分散ペースト中に顔料分散剤として用いられる水溶
性重合体に関する。
【0002】
【従来の技術】水性塗料を製造する場合に、通常は、予
め顔料を高濃度で水性媒体に分散させた水性顔料分散ペ
ーストを中間組成物として用いる。粉体状の顔料を含む
全塗料成分を低濃度状態に単一工程で分散させるのは困
難だからである。
【0003】分散性が良好な水性顔料分散ペーストを得
るために、通常は、分散剤が用いられる。
【0004】カチオン性水性分散ペーストを調製するた
めに従来から用いられている分散剤としては、カチオン
性またはノニオン性の低分子量界面活性剤および中程度
または高分子量の重合体が代表的である。
【0005】カチオン性の低分子量界面活性剤として
は、オクタデシルアミン酢酸塩やポリオキシエチレンオ
クタデシルアミンなどが公知であり、ノニオン性の低分
子量界面活性剤としては、たとえば、特開昭60-51763号
公報に記載のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エス
テル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどが公知
である。
【0006】しかしながら、上記界面活性剤は分子量が
低いため顔料の分散安定性が不充分である。また、これ
らは塗膜中に低分子化合物として残存するので、耐水
性、耐蝕性のような塗膜性能に悪影響を与えるという欠
陥がある。
【0007】この欠陥は、中程度または高分子量の重合
体の分散剤を用い、分散剤自身を塗膜中のバインダー成
分として用いることにより改善される。
【0008】このような中程度または高分子量の重合体
としては、たとえば、α,β-エチレン性不飽和含窒素単
量体から調製される特開昭60-135461号公報、同60-1614
64号公報、同61-166866号公報および同64-85259号公報
に記載の塩基性官能基を有するカチオン性重合体、特開
平2-34634号公報に記載の4級アンモニウム基を有する
変性シクロカーボネート化合物、および特開昭63-23919
号公報、特開平2-11668号公報および同2-73822号公報に
記載の4級アンモニウム基または3級スルホニウム基を
有するエポキシ化合物などが公知である。
【0009】一般に、上記従来の重合体は、当量以上の
酸性化合物で中和して水溶化することにより、カチオン
性水性顔料分散ペースト中に用いられる。したがって、
重合体水溶液は酸性を示し、重合体は正帯電する。
【0010】他方、当業者に周知のように、顔料粒子
は、種々の水溶液中において、その水溶液のpHが顔料の
等電点より酸性側では正帯電、そして塩基性側では負帯
電する。多くの塗料用顔料においてはその等電点が中性
領域にあるので、これらはカチオン性溶液中では正帯電
する。
【0011】その結果、重合体の正電荷と顔料粒子の正
電荷との間に静電的斥力が生じ、顔料が重合体に吸着し
難くなる。したがって、このような従来の中程度または
高分子量の重合体を分散剤として用いると、得られるカ
チオン性水性顔料分散ペーストの分散安定化が不十分と
なり、分散性不良および分散安定性不良が起こるという
欠点がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問
題を解決するものであり、その目的とするところは、顔
料の分散性および分散安定性が良好であり、塗膜性能に
悪影響を与えないカチオン性水性顔料分散ペーストを提
供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、水性媒体中に
顔料、塩基性官能基含有水溶性重合体および上記水溶性
重合体を可溶化するための酸性化合物を含有するカチオ
ン性水性顔料分散ペーストであって、上記塩基性官能基
含有水溶性重合体が上記酸性化合物よりも大きい酸解離
定数を有する酸性官能基をさらに有するカチオン性水性
顔料分散ペーストを提供するものであり、そのことによ
り上記従来の問題が解決される。
【0014】本発明において顔料を水性媒体に分散する
ための分散剤として用いる重合体には、アクリル重合
体、エポキシ重合体、ポリエステル重合体、ポリウレタ
ン重合体のような基本的に水溶性である重合体が挙げら
れる。特にアクリル重合体は本発明に用いる分散剤とし
て好適である。
【0015】本発明の分散剤であるこのような重合体は
分子中に酸性官能基と塩基性官能基の両方を有する必要
がある。塩基性官能基とは水素イオンと結合しうる官能
基を指して言う。重合体に含有される塩基性官能基が酸
性化合物で中和されることにより、重合体は水性媒体に
可溶化する。このため、重合体はアミン価が10〜200の
範囲内となるように塩基性官能基を有することが好まし
い。アミン価が前期範囲の上限を上回ると、塗膜の耐水
性、耐食性などの性能が不良となるおそれがあり、下限
を下回ると重合体が全く水に溶解しないか、または、溶
解性が不充分で均一な水性顔料分散ペーストが得られな
いおそれがある。
【0016】このような塩基性官能基としては非共有電
子対を持つ窒素を有する基などが代表的であり、たとえ
ば、一級、二級または三級アミノ基およびイミノ基など
が挙げられる。
【0017】また、酸性官能基とは脱離可能な水素イオ
ン有する官能基を指して言う。本発明の重合体に含有さ
れる酸性官能基は酸性の水性媒体中においても解離して
負の電荷を発現することにより、同水性媒体中で正に帯
電している顔料と静電的な引力を発揮する。重合体中に
含有される酸性官能基の量は、重合体固形分中の酸価が
5〜100の範囲内となる量であることが好ましい。重合
体固形分中の酸価が上記範囲の上限を上回ると重合体分
子同士の会合でビヒクル粘度が大きくなり、通常の分散
機では分散できなくなるおそれがあり、下限を下回ると
重合体の負電荷による顔料への吸着が実質的に生じない
おそれがある。このような酸性官能基としては、たとえ
ば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン基等が挙げら
れる。
【0018】上述のような酸性官能基および塩基性官能
基は、それぞれの官能基を有するモノマーに由来する。
たとえば、本発明の重合体に酸性官能基を導入するため
のモノマーとしては、アクリル酸、アクリルアミドメチ
ルプロパンスルホン酸、2-アシッドホスホキシエチルメ
タクリレート、クロトン酸、アリル酢酸、メタクリル
酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、無水フタ
ル酸、コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸およびテト
ラクロル無水フタル酸などが挙げられる。
【0019】また、本発明の重合体に塩基性官能基を導
入するためのモノマーとしては、式
【0020】
【化1】
【0021】または
【0022】
【化2】
【0023】[式中、R1は水素原子またはメチル基であ
り、R2、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子または
炭素数6個以下のアルキル基であり、nは2〜8の整数
である。]で表される塩基性アクリモノマーが挙げられ
る。
【0024】式(I)で示される塩基性アクリモノマーの
具体例には、たとえば、N,N-ジメチルアミノエチル(メ
タ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)ア
クリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリ
レート、N-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレートなどが挙
げられる。式(II)で示される塩基性アクリルモノマーの
具体例には、たとえば、N,N-ジメチルアミノエチル(メ
タ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メ
タ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0025】このようなモノマーを用いてアクリル系重
合体を合成する方法や、重合体のカルボキシル基を2-ヒ
ドロキシエチルエチレンイミンのようなイミン化合物を
用いて変性する方法により本発明の重合体中に酸性官能
基および塩基性官能基が導入される。酸性官能基含有モ
ノマーおよび塩基性官能基を導入する方法はそれぞれ1
以上を併用することができる。
【0026】上記酸性官能基含有モノマーおよび塩基性
官能基含有モノマーに加えて、その他の重合性モノマー
をコモノマーとして用いてもよい。同重合性モノマーの
使用割合は、たとえば、重合体固形分の10〜90重量%と
され、重合性モノマーとしては、たとえば、エチレン性
不飽和単量体、ポリオール化合物、ポリイソシアネート
化合物、多官能性エポキシ化合物などが使用されうる。
【0027】これらのモノマーを用い、重合を行うので
あるが、その方法は従来公知の重合体を得るための重合
方法と同じでよい。なお、モノマーの比率を酸性官能基
含有モノマーと塩基性官能基含有モノマーとの比率が1/
10〜1/1(モル比)となるように設定するのが好ましい。
この範囲を外れると重合体の負電荷による顔料への吸着
が実質的に生じなかったり、酸性化合物の中和により重
合体が水性媒体中に均一に溶解しなくなるおそれがあ
る。また、重合の際に、上記モノマーの他に、必要に応
じて、水、水溶性有機溶媒、重合開始剤、重合反応触
媒、連鎖移動剤などを1以上用いることができる。酸性
官能基含有モノマーおよび塩基性官能基含有モノマーを
それぞれ重合しておいてからブロック重合したり、それ
らの一方のみを重合しておいてから、他方をグラフト重
合するようにしてもよい。
【0028】得られた重合体の分子量は数平均分子量1,
000〜100,000の範囲内であることが好ましい。上記の範
囲の上限を上回るとビヒクル粘度が大きくなり、通常の
分散機では分散できなくなるおそれがある。下限を下回
ると分散安定化に充分な重合体吸着層の厚みが得られ
ず、分散性不良、分散安定性不良を生ずるおそれがあ
る。また、低分子量界面活性剤のように塗膜性能に悪影
響を与えるおそれも生じる。
【0029】得られた塩基性官能基および酸性官能基を
含有する重合体を可溶化するために、本発明のカチオン
性水性顔料分散ペーストには酸性化合物が含有される。
本発明に用いられる酸性化合物としては酢酸、プロピオ
ン酸、蟻酸、酪酸、乳酸、ピバル酸、カプロン酸および
これらの組み合せなどが挙げられる。
【0030】重合体の十分な溶解度を達成するために
は、酸性化合物の使用割合を、重合体に含有される塩基
性官能基の中和率が100%もしくはそれ以上になるよう
に設定することが好ましい。上記中和率が100%未満だ
と重合体の溶解度が不十分になり、重合体が析出した
り、分散性不良、分散安定性不良を生じるおそれがあ
る。
【0031】なお、上記重合体中の塩基性官能基の中和
に用いる酸性化合物のpka値(酸解離定数の逆数の常用対
数であり、小さい程酸強度が高い)をa1とし、上記重合
体中の酸性官能基のpka値をa2とすると、 a1 ≧ a2 の関係が成立するように、重合体の酸性官能基および酸
性化合物を選択することが好ましい。
【0032】酸のpka値は、たとえば、次のようにして
求められる。
【0033】弱酸AHの水中での解離平衡 AH → A- + H+ AH ← A- + H+ におけるpka値は、 pka = -log([A-][H+]/[AH]) と表される。
【0034】したがって、 pka = -log([A-]/[AH])-log[H+] を得る。
【0035】半当量点(酸が全当量数の1/2中和された
点)では [A-] = [AH] である。
【0036】従って、半当量点では、 pka = -log[H+] = pH となる。
【0037】以上のように、酸AHを適当な塩基で中和滴
定し、その半当量点でのpHから酸AHのpka値を求めるこ
とができる。
【0038】本発明において用いる顔料は6以上の等電
点を有する両性または塩基性の顔料が好ましい。たとえ
ば、酸化チタン、酸化鉄およびカーボンブラックのよう
な無機着色顔料、キナクリドン、フタロシアニン、ペリ
レンおよびイソインドリノンのような有機着色顔料、炭
酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリンおよびクレーの
ような体質顔料、および塩基性ケイ酸鉛、ジンククロメ
ートおよびストロンチウムクロメートのような防錆顔料
が挙げられる。
【0039】上述の塩基性官能基および酸性官能基を有
する水溶性重合体、酸性化合物および顔料を水性媒体中
に配合することにより本発明のカチオン性水性顔料分散
ペーストが得られる。
【0040】本明細書で水性媒体とは、水、または水中
に水溶性有機溶媒を溶解してなる水-有機溶媒混合溶液
を意味する。後者の場合、水と有機溶媒との割合は有機
溶媒が混合溶液の50重量%を下回る量で含有されること
が好ましい。この範囲を外れると実質的に水性塗料を構
成できないおそれがある。水性媒体中に混合される有機
溶媒としては、ブチルセロソルブおよびブチルジグリコ
ールなどのような水溶性有機溶媒であれば特に限定され
ない。
【0041】顔料、上記重合体および水性媒体の配合割
合は、たとえば、次のように設定される。顔料100重量
部(以下、「重量部」を単に「部」と言う)に対して、重合体
10〜1000部、水性媒体50〜5000部が好ましい。重合体の
量が上記範囲の上限を上回ると、この水性分散ペースト
を配合して得られる水性塗料組成物による着色が充分で
ないおそれが生じる。また、下限を下回ると充分な顔料
分散性、分散安定性が得られないおそれが生じる。配合
される水性媒体の量が上記範囲の上限を上回ると、顔料
の分散が困難となるおそれが生じ、下限を下回ると分散
ペーストの粘度が高くなり過ぎるので通常の分散機では
分散できないおそれが生じる。
【0042】本発明のカチオン性水性顔料分散ペースト
には、上記の必須成分以外にも、必要に応じて、消泡
剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤のような添加剤を配合する
ことが可能である。これらの添加剤は顔料の分散安定性
を害さない量で含有される。一般に、これらの添加剤は
顔料100部に対して50部を下回る量で本発明のカチオン
性水性分散ペースト中に含有される。
【0043】本発明のカチオン性水性顔料分散ペースト
を調製するためには、上述の必須成分を用いること以外
は、従来の方法および装置を使用できる。このようにし
て得られたカチオン性水性顔料分散ペーストは顔料が非
常に良好に分散しており、しかも、長期間(たとえば、1
2カ月以上)にわたってその良好な分散状態が保たれる。
【0044】本発明のカチオン性水性顔料分散ペースト
は、カチオン性水性塗料のビヒクルとして通常用いられ
る水溶性重合体、水分散性重合体および水系エマルショ
ンなどとの混和性が良いので、本発明のカチオン性水性
顔料分散ペーストをこれらの重合体に溶解することによ
りカチオン性水性塗料組成物を得ることができる。その
際に、顔料の分散に用いた重合体および/または中和に
用いる塩基性化合物をさらに配合することが可能であ
る。このような操作により溶解時のショックによる顔料
凝集が防止される。
【0045】カチオン性水性塗料組成物を得るための配
合は、一般に、カチオン性水性顔料分散ペーストを10〜
100部、水溶性重合体を10〜500部、水溶性硬化剤を3〜
50部、水性媒体を10〜500部である。
【0046】本発明のカチオン性水性顔料分散ペースト
を用いてカチオン性水性塗料組成物を調製する場合は、
従来と同様の方法および装置を用い、従来と同様の条件
で行なうことができる。得られた水性塗料組成物は、従
来のカチオン性水性顔料分散ペーストを用いて調製した
水性塗料組成物と比べて、着色性および光沢などのよう
な外観特性、および塗料の沈降および凝集に対する安定
性に優れるという利点を有する。
【0047】
【作用】一般に、分散剤である重合体に含まれる塩基性
官能基を酸性化合物で中和することにより重合体を水溶
化する場合に、充分な水溶性を達成するためには、中和
率を100%もしくはそれより大きくする必要がある。こ
のような中和を行うと、水性媒体のpHは酸性(pH≦6)に
なる。顔料の水性媒体中での荷電状態(ζ電位)と水性媒
体のpHとの関係は、一般に、酸性領域ではζ電位がプラ
スであり、塩基性領域ではζ電位がマイナスとなる。し
たがって、酸性の水性媒体中では、重合体の塩基性官能
基の残基(正に帯電している)と顔料の間には静電的な引
力は作用せず、この力による重合体吸着は生じない。
【0048】分散剤である重合体中に負電荷を発現させ
ることにより重合体と顔料との間に静電的な引力を形成
させるために、本発明の分散剤である重合体には、塩基
性官能基だけでなく、酸性官能基も導入した。しかしな
がら、カチオン性水性顔料分散ペースト中のように中和
に用いる酸性化合物が共存する雰囲気下では、重合体に
含有される酸性官能基の解離よりも酸性化合物の解離が
優先して生じ得る。このような場合は重合体の酸性官能
基がほとんど解離しないので、結果として重合体中に負
の電荷は生じない。
【0049】ここで、重合体の酸性官能基ARHの解離定
数をKa R、酸性化合物ANHの解離定数をKa Nとすると、2
種の酸ARHおよびANHの酸解離平衡定数はそれぞれ以下の
式(1)および(2)で示される。 Ka R = [AR -][H+]/[ARH] (1) Ka N = [AN -][H+]/[ANH] (2)
【0050】ARHおよびANHの両者が同一水溶液中に共存
する場合には、[H+]が等しいから、次式を得る。 Ka R/Ka N = ([AR -]/[ARH])/([AN -]/[ANH]) (3)
【0051】式(3)より、重合体の酸ARHと中和用のANH
の解離度の比は解離定数の比に等しいことが示される。
【0052】したがって、Ka RをKa Nより相対的に大きく
なるように、カチオン性重合体に酸性官能基を導入し、
かつ中和用の酸化合物を選択することにより、カチオン
性水性顔料分散ペースト中の本発明の重合体に負電荷が
発現する。その結果、分散剤である重合体と正に帯電し
ている顔料との間に静電的引力が生じて、重合体吸着に
よる分散の安定化が達成される。
【0053】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説
明する。しかしながら、本発明はこれらに限定されな
い。
【0054】
【調製例1】 重合体Aの調製 以下の表に示す組成の混合物(A)、(B)および(C)を調製
した。
【0055】 混合物(A) ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA) 133 部 メチルメタクリレート(MMA) 192 部 エチルアクリレート(EA) 222.4 部 2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA) 222.4 部 t-ブチルパーオクトエート(t-BPO) 16 部 ブチルセロソルブ(BC) 100 部 混合物(B) 2-アシッドホスホキシエチルメタクリレート(APEMA) (商品名「ライトエステルPM」、共栄社油脂化学社製) 30.2 部 BC 60 部 混合物(C) t-BPO 1.6 部 BC 160 部
【0056】2リットル容の反応容器にブチルセロソル
ブ480部を入れ、加熱して120℃とした。この中に、混合
物(A)と混合物(B)とを同時に、窒素雰囲気下で3時間か
けて滴下した。滴下終了後、120℃に1時間保った。そ
の後、混合物(C)を30分かけて滴下し、数平均分子量210
0(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレ
ン換算)、アミン価60、酸価20および不揮発分50%の重
合体Aの溶液を得た。
【0057】この重合体Aは塩基性官能基として三級ア
ミノ基を、酸性官能基としてリン酸基を有し、酸性官能
基のpka値は2.6(第一段目の解離)であった。
【0058】
【調製例2】 重合体Bの調製 以下の表に示す組成の混合物(D)、(E)および(F)を調製
した。
【0059】 混合物(D) DMAPAA 133 部 MMA 207.4 部 EA 222.4 部 HEA 222.4 部 t-BPO 16 部 N―2―メチルピロリドン(NMP) 100 部 混合物(E) アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸(AMPS) 14.8 部 NMP 60 部 混合物(F) t-BPO 1.6 部 NMP 160 部
【0060】2リットル容の反応容器にNMP480部を入
れ、加熱して120℃とした。この中に混合物(D)と混合物
(E)とを同時に、窒素雰囲気下で3時間かけて滴下し
た。滴下終了後、120℃に1時間保った。その後、混合
物(F)を30分かけて滴下し、数平均分子量1700、アミン
価60、酸価5および不揮発分50%の重合体Bの溶液を得
た。
【0061】この重合体Bは塩基性官能基として三級ア
ミノ基を、酸性官能基としてスルホン酸基を有し、酸性
官能基のpka値は2.4であった。
【0062】
【調製例3】 重合体Cの調製 以下の表に示す組成の混合物(G)および(H)を調製した。
【0063】 混合物(G) ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA) 122.4 部 MMA 205.3 部 EA 225.9 部 HEA 225.9 部 アクリル酸(AA) 20.5 部 t-BPO 16 部 BDG 160 部 混合物(H) t-BPO 1.6 部 BDG 160 部
【0064】2リットル容の反応容器にブチルジグリコ
ール(DDG)480部を入れ、加熱して120℃とした。この中
に混合物(G)を3時間かけて窒素雰囲気下で滴下した。
滴下終了後、120℃に1時間保った。その後、混合物(H)
を30分かけて滴下し、数平均分子量1,300、アミン価6
0、酸価20および不揮発分50%の重合体Cの溶液を得た。
この重合体Cは塩基性官能基として三級アミノ基を、酸
性官能基としてカルボキシル基を有し、酸性官能基のpk
a値は4.9であった。
【0065】
【調製例4】 比較重合体Dの調製 以下の表に示す組成物の混合物(I)を調製した。
【0066】 混合物(I) DMAPAA 133 部 MMA 222.2 部 EA 222.4 部 HEA 222.4 部 t-BPO 16 部 BC 150 部
【0067】2リットル容の反応容器にブチルセロソル
ブ480部を入れ、加熱して120℃とした。この中に混合物
(I)を3時間かけて滴下した。滴下終了後、120℃に1時
間保った。その後、調製例1の混合物(C)を30分かけて
滴下し、数平均分子量1500、アミン価50、酸価0、およ
び不揮発分50%の比較重合体Dの溶液を得た。
【0068】この重合体Dは、塩基性官能基として三級
アミノ基を有しているが、酸性官能基は有しない。
【0069】
【実施例1〜9】表1に示す配合で水性顔料分散ペース
トを作製した。顔料の分散は、0.2リットル容の卓上型
サンドミルを用いて、チタン白および黄色酸化鉄は1000
rpmで30分間、そして銅フタロシアニンブルーは2000rpm
で2時間撹拌することにより行った。
【0070】得られた分散ペーストに対してグラインド
ゲージ試験(JIS K5400)を行い、グレンサイズを求め
た。また、製造直後の分散ペースト、および、分散ペー
ストの状態で40℃、2週間貯蔵したものに対し、コーン
プレート型粘度計(東京計器(株)製、E型)を用いて、ず
り速度を1.92sec-1から384sec-2まで変化させて粘度測
定を行い、ケイソン(Casson)の式により降伏値を求め
た。グレンサイズおよび降伏値の測定値を表1に併せて
示す。
【0071】実施例1〜9の各分散ペーストは、重合体
の酸性官能基の顔料に対する吸着作用により、グレンサ
イズが十分に小さくなっており、また良好な分散が得ら
れている。さらに貯蔵による流動性の悪化も観測されな
かった。
【0072】
【比較例1〜3】表1に示す配合で、酸性官能基を有し
ない比較重合体D溶液を用いること以外は実施例1〜9
と同様にして、比較例1〜3の顔料分散ペーストを得
た。得られたそれぞれの分散ペーストを実施例1〜9と
同様にして評価した。表1に示すように、グレインサイ
ズが充分に微小化せず、良好な分散性が得られなかっ
た。また貯蔵安定性も不良であった。
【0073】
【実施例10〜15および比較例4〜5】実施例1、
2、3、7、8および9、および比較例1および2でそ
れぞれ得られたカチオン性水性顔料分散ペーストを用
い、表2に示す配合で白色及び青色の塗料エナメル(水
性塗料組成物)を調製した。得られた塗料エナメル、お
よび、この塗料エナメルを40℃で2週間貯蔵したものを
5ミルのドクターブレードを用いてガラス板に塗布し、
150℃で30分間焼付けすることにより塗膜を得た。次い
で、各塗膜の20゜鏡面光沢値を評価した。結果を表2に
示す。
【0074】表2の結果より明らかに、実施例10〜15の
塗料を用いた場合は、比較例4および5の塗料を用いた
場合と比較してそれぞれ高い光沢が得られた。また、比
較例4および5塗料を用いて得られた塗膜は貯蔵によ
り、光沢が減少したのに対し、実施例10〜15の塗料を用
いて得られた塗膜は良好な貯蔵安定性を示した。
【0075】
【実施例16〜18および比較例6】実施例10〜15およ
び比較例4および5で得られた白色および青色の塗料を
それぞれ表3に示す割合で混合し、水色の塗料を得た。
【0076】得られた塗料を5ミルのドクターブレード
でガラス板に塗布した。塗布後30分間放置し、塗膜の一
部分を指でこすった(ラビングテスト)。その後、150℃
で30分間焼付を行うことにより硬化塗膜を得た。
【0077】得られた硬化塗膜のうち、先に指でこすっ
た部分とこすらなかった部分の色差を色差計で測定し
た。結果を表3に示す。
【0078】表3の結果より、実施例16〜18の塗料を用
いて形成した塗膜は、比較例6の塗料を用いて形成した
塗膜と比較して色差が小さく、良好な混色安定性を示す
ことが確認された。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【発明の効果】顔料の分散性および分散安定性が良好で
あり、塗膜性能に悪影響を与えないカチオン性水性顔料
分散ペーストが提供された。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水性媒体中に顔料、塩基性官能基含有水
    溶性重合体および該水溶性重合体を可溶化するための酸
    性化合物を含有するカチオン性水性顔料分散ペーストで
    あって、該塩基性官能基含有水溶性重合体が該酸性化合
    物よりも大きい酸解離定数を有する酸性官能基をさらに
    有するカチオン性水性顔料分散ペースト。
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