JPH05229966A - 水素化フラーレンの製造法 - Google Patents

水素化フラーレンの製造法

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JPH05229966A
JPH05229966A JP4073227A JP7322792A JPH05229966A JP H05229966 A JPH05229966 A JP H05229966A JP 4073227 A JP4073227 A JP 4073227A JP 7322792 A JP7322792 A JP 7322792A JP H05229966 A JPH05229966 A JP H05229966A
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JP
Japan
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fullerene
hydrogen gas
hydrogenated
hydrogenation
reaction
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JP4073227A
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English (en)
Inventor
Kazuyoshi Shigematsu
一吉 重松
Kazuaki Abe
和明 阿部
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Idemitsu Kosan Co Ltd
Original Assignee
Idemitsu Kosan Co Ltd
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Publication date
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C1/00Preparation of hydrocarbons from one or more compounds, none of them being a hydrocarbon
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07CACYCLIC OR CARBOCYCLIC COMPOUNDS
    • C07C2603/00Systems containing at least three condensed rings
    • C07C2603/56Ring systems containing bridged rings
    • C07C2603/90Ring systems containing bridged rings containing more than four rings

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  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Carbon And Carbon Compounds (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 フラーレンC60から、その水素添加物にあた
るところの閉殻構造を有し、C6018又はC6036で表
される水素化フラーレンを工業的に製造する方法を提供
する。 【構成】 フラーレンC60を、炭化水素溶媒及び水添触
媒の存在下に水素ガスを導入して水素化するにあたり、
反応温度と水素ガス分圧をそれぞれX軸、Y軸として示
したとき、(1)20℃、3kg/cm2 G、(2)2
0℃、4kg/cm2 G、(3)240℃、70kg/
cm2 G、(4)240℃、3kg/cm2 Gの四点で
囲まれる範囲の温度及び水素ガス分圧のもとで反応を行
うC6018で表される水素化フラーレンの製造法及び
(1)20℃、5kg/cm2 G、(2)20℃、80
kg/cm2 G、(3)240℃、80kg/cm2
の三点で囲まれる範囲の温度及び水素ガス分圧のもとで
反応を行うC6036で表される水素化フラーレンの製造
法より成る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、C6018又はC6036
で表される水素化フラーレンの製造法に関し、より詳し
く言うと、閉殻構造を有し、炭素数60の球状のカーボ
ンクラスター分子として知られるフラーレンC60から、
その水素添加物にあたるところの閉殻構造を有し、C60
18又はC6036で表される水素化フラーレンを工業的
に容易に製造するための方法に関する。
【0002】なお、本発明の方法で得られた上記水素化
フラーレンは、真球状の分子構造を有すると共に特定の
H/C比を有することから種々の特徴的な物性を有して
おり、その物性等に基づく種々の用途への利用が期待で
き、例えば固体潤滑剤、潤滑油添加剤等の潤滑部材など
として好適に利用することができる。
【0003】
【従来の技術】最近、球状分子構造を有する新しい物質
として、炭素数60、70、84等の閉殻構造を有する
カーボンクラスターがグラファイト状炭素(すす)から
抽出されたり、あるいは合成され、その性質が研究され
ている[例えば、NATURE,Vol.347,35
4(1990)等参照]。この特殊な構造を有するカー
ボンクラスターは、フラーレンとも称され、その分子骨
格を構成する炭素数によって、フラーレンC60、同
70、同C84などと呼ばれている。これらのフラーレン
類は、新しい炭素材料であり、また特殊な分子構造を有
することからも特異な物性を示すことが期待されるの
で、その性質及び用途開発についての研究は極めて重要
と思われる。
【0004】例えば、フラーレン類は球状分子であるこ
となどから、分子のレベルからも潤滑性に優れているこ
とが期待されている。したがって、フラーレン類の用途
として、例えば、固体潤滑剤、潤滑油添加剤等の潤滑部
材としての利用が考えられる。
【0005】ところで、固体潤滑剤は、潤滑油が使用し
難いような高温、極低温、高圧の場所、あるいは潤滑油
の臭気を吸収することを好まない食品加工機器などにも
好適に使用される。従来、固体潤滑剤として用いられる
物質として、二硫化モリブデン、黒鉛、フッ化黒鉛、雲
母等の無機化合物系のものとフッ素樹脂系のテフロン粉
末等の有機化合物系のものがある。しかしながら、使用
条件、作業環境、価格等の点で、従来の固体潤滑剤では
満足できないこともある。例えば、黒鉛等の従来の多く
の無機化合物系固体潤滑剤は、使用条件によっては潤滑
特性が不十分となったり、作業環境への影響から敬遠さ
れており、また、フッ素樹脂系のものは比較的クリーン
で潤滑性に優れているものの極めて高価であり、しか
も、潤滑油、グリース等へ添加した場合、分散安定性が
悪いなどの問題点がある。
【0006】一方、潤滑油等の潤滑基材油の潤滑性を向
上させるために、それらに適当な潤滑油添加剤を添加
し、分散又は溶解させることも広く行われている。例え
ば、上記の黒鉛等の無機化合物系固体潤滑剤も分散型の
潤滑油添加剤として常用されている。しかしながら、こ
うした従来の固体潤滑剤等の分散型で用いられる固体潤
滑油添加剤の多くは、潤滑油、グリース等に添加した場
合、分散安定性が不十分であるなどの欠点がある。ま
た、溶解型の潤滑油添加剤についても、潤滑性の改善効
果に優れているだけでなく、分子量、安定性等の種々の
潤滑性能を満足させるものの開発が要求されている。
【0007】以上の点から、新規な優れた特性を有する
固体潤滑剤、潤滑油添加剤等の潤滑部材の開発が強く望
まれており、その有力な候補としてフラーレン類が考え
られる。
【0008】フラーレン類は、前記したように球状分子
構造を有することから、高い潤滑性能を発揮することが
期待できる。しかしながら、C60、C70等のフラーレン
は、実質的に炭素分子であるので、例えばベンゼン、ト
ルエン等の特定の芳香族化合物など極めて限られた溶媒
に、それもわずかに溶解するのみであり、したがって、
その利用分野が著しく限定されるという欠点を有してい
る。実際、フラーレンを潤滑油添加剤として利用すべ
く、潤滑油やグリース等の液状のオイルやバインダーに
添加したところ、溶解性が著しく低く、また、親和性も
不十分であり分散安定性が悪いことが判明した。すなわ
ち、フラーレンは、有機溶剤への溶解性や親和性が著し
く低い故に、潤滑部材としての用途を意図した場合に
も、固体潤滑剤としての利用は十分に期待できるもの
の、潤滑油添加剤としての利用にはそのままでは不適当
であるという欠点を有している。
【0009】そこで、本発明者らは、フラーレンを水素
化し、水素化フラーレンとしたならば多くの溶媒に対す
る溶解性や親和性が著しく向上でき、潤滑油添加剤等と
しての利用はもとより、より広範囲の用途分野への利用
が可能となるものと考えた。
【0010】ところで、従来のフラーレンの水素化技術
としては、C60のフラーレンを液体アンモニア中で、還
元剤(金属リチウム+tert−ブチルアルコール)で
処理し、C6036を得る方法が知られている[J.Ph
ys.Chem.,94,8634〜8634(199
0)]。しかしながら、この従来法は特殊な還元水素化
であり、工業的に実施するにはコスト等の点で問題があ
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の事情
を鑑みてなされたものである。本発明の目的は、フラー
レンC60から、炭素骨格がフラーレンC60様の閉殻構造
をなし、球状分子構造を有する水素化フラーレンであっ
て、フラーレンに比べて有機溶剤への溶解性や親和性に
著しく優れ、極めて多様な有機溶剤への溶解あるいは安
定な分散化が可能であるなどの利点を有するところのC
6018又はC6036で表される水素化フラーレンを、工
業的に容易に製造できる実用上著しく有用な方法である
水素化フラーレンの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記した
ようにフラーレンを十分に水素化したならば、有機溶媒
への溶解性等の特性が改善でき、しかも潤滑性等の球状
分子特有の特異な物性を示す物質が得られると考え、水
素化度(H/C比)が大きいC60系水素化フラーレンを
工業的に容易に製造することができる方法を開発すべく
鋭意研究を行った。
【0013】その結果、フラーレンC60を炭化水素溶媒
及び水添触媒の存在下で、ある特定の範囲の反応温度及
び水素分圧で水素ガスにより水素化するとH/C比の小
さい水素化フラーレンC6018を選択的にかつ効率よく
得ることができ、また、より高い特定の範囲の反応温度
及び水素分圧で水素ガスにより水素化するとH/C比の
大きい水素化フラーレンC6036を選択的にかつ効率よ
く得ることができることを見出した。これらの方法は、
工業的に極めて容易に実施できる方法であり、しかも、
反応温度及び水素分圧を変えることによって上記それぞ
れの水素化フラーレン(すなわち、C6018又はC60
36)を選択性よく得ることができるので、この点からも
プロセス上著しく有利であることを確認した。また、得
られたC6018及びC6036は、共に、フラーレンC60
に水素が付加した形の真球状分子であり、しかも、各種
の有機溶媒に対する溶解性に優れているなどの特徴を有
しているので、固体潤滑剤としてだけでなく潤滑油添加
剤等の各種の潤滑部材などとしても好適に利用すること
ができ、種々の用途に極めて有用であることも確認し
た。
【0014】本発明者らは、これらの知見に基づいて本
発明を完成するに至った。すなわち、本発明の第一の発
明は、閉殻構造を有するフラーレンC60を、炭化水素溶
媒及び水添触媒の存在下に水素ガスを導入して水素化す
るにあたり、反応温度と水素ガス分圧をそれぞれX軸、
Y軸として示したとき、(1)20℃、3kg/cm2
G、(2)20℃、4kg/cm2 G、(3)240
℃、70kg/cm2 G、(4)240℃、3kg/c
2 Gの四点で囲まれる範囲の温度及び水素ガス分圧の
もとで反応を行うことを特徴とするC6018で表される
水素化フラーレンの製造法を提供するものである。以
下、この製造法を、方法1と呼ぶことがある。
【0015】また、本発明の第二の発明は、閉殻構造を
有するフラーレンC60を、炭化水素溶媒及び水添触媒の
存在下に水素ガスを導入して水素化するにあたり、反応
温度と水素ガス分圧をそれぞれX軸、Y軸として示した
とき、(1)20℃、5kg/cm2 G、(2)20
℃、80kg/cm2 G、(3)240℃、80kg/
cm2 Gの三点で囲まれる範囲の温度及び水素ガス分圧
のもとで反応を行うことを特徴とするC6036で表され
る水素化フラーレンの製造法を提供するものである。以
下、この製造法を、方法2と呼ぶことがある。
【0016】本発明の方法1及び方法2における反応条
件である反応温度及び水素ガス分圧の関係を図1に示
す。
【0017】本発明の第一の発明である前記方法1と本
発明の第二の発明である前記方法2は、反応温度と水素
分圧がそれぞれ前記特定の範囲となるように水素ガスを
導入して前記水素化を行う以外は、他の条件や手法等の
他の点については基本的に同様にして行うことができる
ので、該方法1と方法2の共通部分については一括して
説明する。但し、方法1と方法2は、それぞれ、C60
18及びC6036を選択的に得ることを目標においている
ので、それぞれの目標を好適に達成させるためには、前
記反応温度及び水素ガス分圧以外の他の条件等も異なっ
てくる場合があることにも留意すべきである。
【0018】本発明の方法1及び2においては、少なく
ともフラーレンC60を前記それぞれの反応温度及び水素
ガス分圧の範囲で水素化し、前記それぞれの目的とする
水素化フラーレン(C6018、C6036)を含有する水
素化生成物を得るが、ここで前記水素化に供する原料と
しては、純粋なフラーレンC60も勿論使用可能である
が、不純物を含有する粗製のフラーレンC60等の各種の
フラーレンC60含有原料を使用することができる。例え
ば、グラファイトのアーク放電やレーザーアブレーショ
ン等により得られたフラーレンC60を含有するスス状物
質をそのまま本発明の方法の水素化原料として使用する
こともできるし、そのようなフラーレンC60含有スス類
から、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶
媒などによって抽出された粗製フラーレンC60粉体など
の粗製フラーレンC60、更にはそのような粗製フラーレ
ンC60を、例えばクロマト分離等の各種の精製手法で更
に精製した精製フラーレンC60などの種々の製法及び精
製法によって得られた各種の純度(精製度)のフラーレ
ンC60若しくはフラーレンC60含有物を、適宜、前記水
素化の原料として使用することができる。こうしたフラ
ーレンC60又はフラーレンC60含有物がすでに炭化水素
溶媒に溶解分散されている場合には、必ずしも溶媒を分
離しないでもよく、場合によっては、これを前記水素化
に供してもよい。
【0019】本発明の方法1及び2においては、前記フ
ラーレンC60若しくはこれを含有する原料を炭化水素溶
媒に溶解分散(溶解及び/又は分散)し、水添触媒の存
在下で水素ガスと反応させる。この水素化(水添反応)
によって、少なくとも原料中のフラーレンC60を前記そ
れぞれの目的とする水素化フラーレン(C6018、C60
36)に選択性よく転化させる。ここで、使用する前記
炭化水素溶媒としては、特に制限はなく、多種多様の炭
化水素1種又は2種以上からなる単独又は混合溶媒が使
用可能である。該炭化水素溶媒又はその成分として使用
される炭化水素の具体例としては、例えば、ベンゼン、
トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素、
シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシク
ロヘキサン等のシクロアルカン系炭化水素、ヘキサン、
ヘプタン、オクタン、デカン等のアルカン系炭化水素な
どを挙げることができる。なお、これらは、1種単独で
使用してもよく、2種以上を混合するなどして併用する
こともできる。
【0020】こうした各種の炭化水素の中でも、フラー
レン類(原料フラーレンC60及び水素化フラーレン)を
溶解する芳香族炭化水素(特に、ベンゼン、トルエン、
キシレン、メシチレン等)からなる単独又は混合溶媒が
好適に使用される。このように、前記炭化水素溶媒とし
て、芳香族炭化水素溶媒を使用することによって、原料
フラーレンC60の溶解性をよくすることができるので、
前記水素化における触媒との接触効率が著しく向上し、
該水素化反応を極めて有効に進めることができる。ま
た、このように芳香族炭化水素溶媒を用いると、溶媒又
は溶媒成分の芳香族炭化水素は、前記フラーレンC60
水素化の際に同時に水添され、それぞれ対応するシクロ
アルカン類(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘ
キサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘ
キサン等)に転化される。これらのシクロアルカン類
は、生成物の水素化フラーレン類(C6018及びC60
36等)の溶解性が高いが、原料のフラーレンC60等のフ
ラーレン(また、原料中の炭素類など)は溶解しないの
で、水素化後の反応混合物から触媒を濾過等によって分
離する際に水素化フラーレン以外の不溶性のフラーレン
類等を容易に分離除去することができるという利点もあ
る。
【0021】主として、このような理由によって、芳香
族炭化水素溶媒が好適に使用されるが、使用する炭化水
素溶媒は、これに限定されるものではなく、前記したよ
うに種々の種類及び組成の炭化水素系溶媒を適宜使用す
ることができる。なお、前記炭化水素溶媒には、本発明
の目的を阻害しない範囲で、炭化水素以外の他の成分を
含有させてもよい。
【0022】また、前記したようにフラーレンC60含有
原料として、前記抽出液等の芳香族炭化水素などの炭化
水素系溶媒にすでに溶解若しくは溶解分散してある原料
を用いる場合には、必ずしも、前記炭化水素溶媒にあら
ためて溶解分散しなくてもよく、そのまま前記水素化
(水添反応)に供することもできる。
【0023】本発明の方法1及び2において、前記水添
触媒としては、特に制限はなく、公知の、炭化水素等の
水素化触媒として使用若しくは提案されているものなど
各種の水添用触媒が使用可能である。そのような水添用
触媒としては、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、M
o、Ru、Rh、Pd、W、Re、Os、Ir、Pt等
の遷移金属をはじめとする各種の金属からなる種々の形
態の触媒があり、それらのうちの代表的なものを例示す
ると、例えば、Ptコロイド、ラネーニッケル、ラネー
ルテニウム、ラネーコバルト等で代表される金属コロイ
ド等の金属系触媒、白金黒、パラジウムブラック、ルテ
ニウムブラック、ロジウムブラック、レニウムブラッ
ク、酸化クロム、酸化モリブデン等で代表される金属酸
化物系触媒、硫化モリブデン、硫化レニウム等の代表さ
れる金属硫化物系触媒、各種の金属錯体系触媒などの金
属化合物系触媒、更には、これらの金属又は金属化合物
を各種の担体(例えば、活性炭等カーボン類系担体、シ
リカ、アルミナ、シリカアルミナ、粘土類、珪藻土、各
種合成又は天然シリケート類など酸化物系担体など)に
担持してなる各種の担持型触媒(例えば、担持Pd/カ
ーボン、Ru/カーボン、ニッケル/珪藻土、Pd/シ
リカ)などの様々なものを挙げることができる。これら
の中でも、水素化後の反応混合物から触媒を濾過等によ
って容易に除去することができるなどの点から、通常は
固体触媒が好適に使用され、中でも特に好適に使用する
ことができるものとして、例えば、Pd/カーボン、R
u/カーボン、Ni/珪藻土などを挙げることができ
る。なお、これらの水添触媒は1種単独で使用してもよ
く、2種以上を混合したり複合化するなどして併用する
こともできる。
【0024】前記水添反応に使用する水素ガスとして
は、純粋なものはもとより、種々の工業用のものなど種
々の純度若しくはグレードのものが使用可能であり、水
素ガス含有ガスとしても使用することができる。
【0025】本発明の方法1及び2においては、フラー
レンC60あるいはこれを含有する原料を、前記水添触媒
の存在下で水素ガスと接触せしめて水素化し、水素化フ
ラーレンを得るが、方法1では主目的化合物をC6018
で表される水素化フラーレンとしてこれを選択性よく製
造し、一方、方法2では主目的化合物をC6036で表さ
れる水素化フラーレンとしてこれを選択性よく製造す
る。
【0026】ここで、方法1では、いずれの触媒を用い
る場合にも、図3に示す特定範囲の条件、すなわち、反
応温度と水素ガス分圧が(1)20℃、3kg/cm2
G、(2)20℃、4kg/cm2 G、(3)240
℃、70kg/cm2 G、(4)240℃、3kg/c
2 Gの四点で囲まれる範囲内の条件を設定して前記水
素化を行うことが重要であり、一方、方法2では、いず
れの触媒を用いる場合にも反応温度と水素ガス分圧が
(1)20℃、5kg/cm2 G、(2)20℃、80
kg/cm2 G、(3)240℃、80kg/cm2
の三点で囲まれる範囲の温度内の条件を設定して前記水
素化を行うことが重要である。
【0027】本発明の方法1において、前記水素化を行
うに際し、もし、前記水素ガス分圧が、3kg/cm2
G未満であると、C6018への水素化率が不十分とな
り、方法1で目的とするC6018の収率や選択率が不十
分となり、また、温度が20℃未満では、反応速度が遅
く、工業的には不利になり、温度及び水素ガス分圧が
(20℃、4kg/cm2 G)、(240℃、70kg
/cm2 G)の範囲を超える条件での水素化では、温度
及び水素分圧が高過ぎて、C6018の選択性や収率が低
下し、温度が240℃を越える範囲での水素化では、反
応生成物の分解等が起こり、目的とするC6018の選択
性や収率が低下し、本発明の目的を十分達成することが
できない。
【0028】また、本発明の方法2において、前記水素
化を行うに際し、もし、反応温度が20℃未満であると
反応速度が遅く工業的に不利となり、水素ガス分圧が8
0kg/cm2 Gを越えると水素ガス分圧が高過ぎて、
6036の選択性や収率が低下し、本発明の方法2の目
的が十分達成することができないし、反応温度及び水素
ガス分圧が(20℃、5kg/cm2 G)、(240
℃、80kg/cm2G)未満の条件での反応では、C
6036の収率や選択率が低下し、本発明の目的を十分に
達成できなくなる。
【0029】なお、前記方法1及び方法2において前記
水素化を行う際に、水素ガスは少なくとも原料のフラー
レンC60の水素化(水添反応)に消費されるし、また、
場合によってはそれ以外に例えば溶媒の芳香族炭化水素
等の水素化されうる他の成分の水素化によっても消費さ
れることになるので、こうした水素ガスの消費量等を考
慮して反応系の水素ガス分圧を前記それぞれの範囲に調
節するのが望ましい。このような水素ガス分圧の調節
は、例えば、水素ガスの初期分圧の選定によって行うこ
ともできるが、通常は、反応による水素ガスの消費を補
うように反応系に水素ガスを適宜添加して、該水素化反
応の反応初期から反応終了時点まで反応系の水素ガス分
圧を前記それぞれの範囲に保持するように行う方式など
が好適に採用される。
【0030】反応時間は、温度、水素ガス圧等の他の条
件によって異なるので、一律に定めることができない
が、本発明の方法1及び2のいずれの場合も、通常は、
10分間〜100時間程度で十分である。なお、本発明
の方法1において、前記溶媒として芳香族炭化水素溶媒
を用いた時は、該溶媒の芳香族炭化水素の水素化(核水
素化)が完了する前に(つまり、芳香族炭化水素溶媒の
水素化が部分的に起こった時点で)、この水素化反応を
終了するという方式が、この方法1の反応時間(すなわ
ち、フラーレンC60からC6018を選択性よく得るため
の反応時間)の目安として好適に採用することができ
る。一方、本発明の方法2において、芳香族炭化水素溶
媒を用いた時は、該溶媒の芳香族炭化水素の水素化(核
水素化)が完了した時点で、フラーレンC60からC60
36への水素化は通常完了しているので、このことをこの
方法2の反応時間の目安として利用することができる。
【0031】以上のようにして、本発明の方法1によっ
て、フラーレンC60を選択性よくC6018に水素化(水
添)させることができ、一方、方法2によって、フラー
レンC60をC6036に選択性よく水素化(水添)させる
ことができる。
【0032】反応終了後、反応混合物から、適宜必要に
応じて、触媒、未反応原料や原料中の混在物など、更に
は、必要に応じて、溶媒や主目的生成物であるC6018
又はC6036以外の他の水素化フラーレンや他の副生物
等を適宜分離除去することによって、目的とするC60
18やC6036を得ることができる。こうした反応後の分
離工程は、公知の分離・精製法等の各種の方法によって
容易に行うことができる。例えば、未反応のフラーレン
60等のフラーレン類や原料中の炭素類が残留していて
も、これらは水素化後の溶媒(溶媒として芳香族炭化水
素溶媒を用いた場合にも前記したように該芳香族炭化水
素は水素化されてその全部又は大部分がシクロアルカン
となっている。)に殆ど溶解せず、一方、C6018やC
6036等の水素化度が高い水素化フラーレンは該水素化
後の溶媒等の多くの炭化水素溶媒に十分によく溶解する
ので、この溶解度の著しい違いを利用して、目的とする
水素化フラーレンを効率よく分離することができる。す
なわち、触媒を反応混合物から濾過等によって分離する
際に、不溶性の原料や原料中の不純物等の混在成分を簡
単に分離除去することができ、それぞれの目的水素化フ
ラーレンを高濃度で含有する高純度の水素化フラーレン
の溶液を容易に得ることができる。この濾過後、濾さい
を適当な溶剤(例えば、シクロアルカン類など)で適宜
洗浄し、固形物に付着した水素化フラーレンを濾液中に
回収することも好適に行われる。こうして濾過等によっ
て分離回収されたそれぞれの目的水素化フラーレンを含
有する溶液は、そのまま製品として利用することもでき
るが、必要に応じて、溶媒を例えば蒸留等の通常の分離
手段で分離除去し、更には、必要に応じて、乾燥し、そ
れぞれC6018又はC6036を主成分とする水素化フラ
ーレンとして取得することができる。これらを、更に高
純度のC6036又はC6018とするには、例えば、溶媒
抽出やクロマト分離など、公知の精製法などを適宜適用
し、精製度を必要な範囲まで高めればよい。
【0033】以上のようにして、主たる目的生成物であ
るC6018又はC6036を、種々の純度(精製度)のも
のとして得ることができる。
【0034】以上、本発明の方法(方法1又は方法2)
によると、反応温度及び水素ガスによる直接水添という
工業的に有利な水素化方法を用いており、しかも、反応
温度及び水素ガス分圧をそれぞれの特定の範囲に調節す
るという簡単な操作によって、フラーレンC60をその水
素添加物にあたるところの閉殻構造を有するC6018
はC6036で表される水素化フラーレンにそれぞれ選択
性よくかつ効率よく転化させることができる。
【0035】すなわち、本発明の方法(方法1及び方法
2)は、フラーレンC60又はこれを含有する原料から、
6018又はC6036で表される水素化フラーレンある
いはこれを含有する製品を工業的に容易に製造するため
の方法として極めて有用である。
【0036】なお、本発明の方法で得られた上記水素化
フラーレン特にC6018及びC6036は、フラーレンC
60特有の真球状の分子構造を有すると共に高いH/C比
を有することから種々の特徴的な物性を有しており、そ
の物性等に基づく種々の用途への利用が期待できる。特
に、C6018及びC6036あるいはこれを主成分とする
水素化フラーレンは、フラーレンC60と比較して、ベン
ゼン等の芳香族炭化水素溶媒に対する溶解性が向上する
のみならず、他の各種の炭化水素系溶媒(例えば、ヘキ
サン等のアルカン系溶媒、シクロヘキサン等のシクロア
ルカン系溶媒など)や他の有機溶媒(例えば、塩化メチ
レン、クロロホルム等)への溶解性がずっと優れている
ので、この点からも用途範囲が著しく拡大しており、広
い範囲の利用分野に好適に利用することができる。具体
的には、例えば、固体潤滑剤としてだけでなく、潤滑油
添加剤等の潤滑部材などとして好適に利用することがで
きる。
【0037】
【実施例】以下に、本発明の実施例によって本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定
されるものではない。
【0038】実施例1 フラーレンC60 90%、フラレーンC70 10%を含
むフラレーン類500mgをトルエン500mlに溶解
し、5%ルテニウルカーボン(50%wet)2.05
gを触媒として添加し、水素ガスを挿入し、水素圧が2
0kg/cm2Gになるようにして昇温を開始した。設
定温度180℃まで40分で昇温した。その後、2時間
反応を続行した。この反応の間、圧力はゲージ圧で20
kg/cm2 Gに制御した。反応後、室温まで冷却し、
脱圧後、触媒を瀘別した。瀘液を減圧下、留去し赤褐色
粉末体を得た。その収量350mgであった。
【0039】該化合物はマススペクトル測定では738
に親ピークを有する化合物であり、プロトンNMR測定
では、2.8ppm〜4.6ppmにブロートなピーク
を示した。また、この化合物物のIRスペクトルチャー
トを図2に示した。これらの結果より、該化合物はC60
18と結論した。
【0040】該化合物はベンゼン等の芳香族化合物のみ
ならずメチルシクロヘキサン、ヘキサン、塩化メチレ
ン、クロロホルム等に可溶になることがわかった。
【0041】実施例2 実施例1において反応温度を180℃、ゲージ圧50k
g/cm2 Gにて2時間反応させる以外は、実施例1と
同様にして行った。
【0042】得られた化合物は、マススペクトル測定で
は756に親ピークを有する化合物であり、プロトンN
MR測定では、2.6ppm〜4.4ppmにブロード
なピークを示した。また、この化合物のIRスペクトル
チャートを図3に示した。これらの結果により、該化合
物はC6036と結論した。
【0043】該化合物はベンゼン等の芳香族化合物のみ
ならずメチルシクロヘキサン、ヘキサン、塩化メチレ
ン、クロロホルム等に可溶になることがわかった。
【0044】実施例3 反応温度を100℃とし水素分圧を5kg/cm2 Gと
した以外は実施例1と同様に操作した。得られた化合物
の収量は340mgであった。該化合物のマススペクト
ル測定結果、NMR測定結果、IR測定結果は実施例1
で得た化合物と同じであり、C6018と結論した。
【0045】実施例4 反応温度を100℃として水素分圧を20kg/cm2
Gとした以外は実施例1と同様に操作した。得られた化
合物の収量は335mgであった。該化合物のマススペ
クトル測定結果、NMR測定結果、IR測定結果は実施
例2で得た化合物と同じであり、C6036と結論した。
【0046】実施例5 水添触媒として、5%パラジウムカーボン(50%we
t)を2.40g用いた以外は実施例1と同様に操作し
た。得られた化合物は、マススペクトル測定、プロトン
NMR測定、IRスペクトル測定の結果より、実施例1
の生成物と同じC6018と結論した。生成物の収量は、
330mgであった。
【0047】
【発明の効果】本発明の方法(方法1又は方法2)によ
ると、水素ガスによる直接水添という工業的に有利な水
素化方法を用いており、しかも、反応温度及び水素ガス
分圧をそれぞれの特定の範囲に調節するという簡単な操
作によって、フラーレンC60をその水素添加物にあたる
ところの閉殻構造を有するC6018又はC6036で表さ
れる水素化フラーレンにそれぞれ選択性よくかつ効率よ
く転化させることができる。
【0048】すなわち、本発明によると、フラーレンC
60又はこれを含有する原料から、C6018又はC6036
で表される水素化フラーレンあるいはこれを含有する製
品を工業的に容易に製造するための方法として極めて有
用な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法1及び方法2の反応条件である反
応温度及び水素ガス分圧の関係を示した図である。
【図2】本発明の方法(前記方法1)の例である前記実
施例1で得られた生成物(C6018で表される水素化フ
ラーレン)のIRスペクトルの1例を示すチャートであ
る。
【図3】本発明の方法(前記方法2)の例である前記実
施例2で得られた生成物(C6036で表される水素化フ
ラーレン)のIRスペクトルの1例を示すチャートであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // C07B 61/00 300

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 閉殻構造を有するフラーレンC60を、炭
    化水素溶媒及び水添触媒の存在下に水素ガスを導入して
    水素化するにあたり、反応温度と水素ガス分圧をそれぞ
    れX軸、Y軸として示したとき、(1)20℃、3kg
    /cm2 G、(2)20℃、4kg/cm2 G、(3)
    240℃、70kg/cm2 G、(4)240℃、3k
    g/cm2 Gの四点で囲まれる範囲の温度及び水素ガス
    分圧のもとで反応を行うことを特徴とするC6018で表
    される水素化フラーレンの製造法。
  2. 【請求項2】 閉殻構造を有するフラーレンC60を、炭
    化水素溶媒及び水添触媒の存在下に水素ガスを導入して
    水素化するにあたり、反応温度と水素ガス分圧をそれぞ
    れX軸、Y軸として示したとき、(1)20℃、5kg
    /cm2 G、(2)20℃、80kg/cm2 G、
    (3)240℃、80kg/cm2 Gの三点で囲まれる
    範囲の温度及び水素ガス分圧のもとで反応を行うことを
    特徴とするC6036で表される水素化フラーレンの製造
    法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0833377A3 (en) * 1996-09-30 1999-08-18 Xerox Corporation Enhancement of hydrogenation of materials encapsulated by an oxide
JP2004189722A (ja) * 2002-11-27 2004-07-08 Mitsubishi Chemicals Corp 水素化フラーレンの精製方法及びその方法により得られる水素化フラーレン
CN100387514C (zh) * 2003-09-25 2008-05-14 中国科学院理化技术研究所 富勒烯基储氢材料c60h36的合成方法
JP2011068899A (ja) * 2010-11-10 2011-04-07 Ntn Corp 潤滑油組成物およびその製造方法、グリース組成物およびその製造方法、転がり軸受、および酸化防止剤

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