JPH05229415A - 車両のスリップ制御装置 - Google Patents

車両のスリップ制御装置

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Publication number
JPH05229415A
JPH05229415A JP3101392A JP3101392A JPH05229415A JP H05229415 A JPH05229415 A JP H05229415A JP 3101392 A JP3101392 A JP 3101392A JP 3101392 A JP3101392 A JP 3101392A JP H05229415 A JPH05229415 A JP H05229415A
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JP
Japan
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brake
control means
control
slip
engine
Prior art date
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Application number
JP3101392A
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English (en)
Inventor
Tetsuhiro Yamashita
哲弘 山下
Kazuaki Nada
一昭 名田
Osamu Michihira
修 道平
Hiroaki Sakamoto
裕昭 坂本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ブレーキ制御とエンジン制御の両制御機能を
備えた車両のスリップ制御装置において、エンジン制御
機能フェイル時のブレーキ性能の信頼性を確保する。 【構成】 エンジンの発生トルクを調整するトルク調整
手段と、駆動輪へのブレーキ力を調整するブレーキ調整
手段と、駆動輪の路面に対するスリップ値を検出するス
リップ検出手段と、上記スリップ検出手段で検出される
スリップ値が第1目標値となるように上記トルク調整手
段を制御するエンジン制御手段と、駆動輪の路面に対す
るスリップ値が第2目標値となるように前記ブレーキ調
整手段を制御するブレーキ制御手段と、これら各制御手
段をON又はOFFするスイッチ手段とを備えてなる車
両において、少なくとも上記エンジン制御手段がフェイ
ルした時には上記ブレーキ制御手段をも併せてフェイル
状態に制御するフェイル制御手段を設け、ブレーキ制御
手段単独でのスリップ制御機能を抑制し、その負担を軽
減して耐久性、信頼性を確保する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、車両のスリップ制御
装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近では、滑り易い路面での車両の発進
時や加速時に駆動輪の路面に対するスリップ率が過大
(空転状態)になるのを防止して、発進性、加速性やコー
ナリング時の車両安定性を満足させるようにしたスリッ
プ制御装置(トラクション制御装置)が種々提案されるよ
うになっている。
【0003】上記スリップ制御は、要するに駆動輪への
付与トルク(トラクション)を低減することにより行なわ
れ、このため駆動輪へブレーキ力を与えるブレーキ制御
や、エンジンの発生トルク(出力)を低下させるエンジン
制御(燃料カット、点火時期のリタード)が行なわれる。
このブレーキ制御およびエンジン制御の場合共に、駆動
輪の路面に対する実際のスリップ値が所定の目標値とな
るようにフィードバック制御されるのが一般的である。
【0004】スリップ制御を、ブレーキ制御とエンジン
制御との両方で行なう従来例として例えば特開昭63−
166649号公報に示されるものがあり、この公報に
は駆動輪のスリップ値が小さいときにはエンジン制御の
みを行ない、駆動輪のスリップ値が大きくなったとき
に、エンジン制御とブレーキの両方の制御を併せて行な
うものが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
なブレーキ制御手段とエンジン制御手段との両方でスリ
ップ率の制御を行うようにしたものでは、それぞれの制
御機能が適切な関係で発揮されることが好ましい。
【0006】しかし、実際には両者共に故障を起こし又
は異常状態を呈することもあり得る。従って、両者が共
にフェイルした時はスリップ制御自体を中止することは
当然であるとして、何れか一方側のみがフェイルした時
には、どのように制御すれば良いかを十分に検討しなけ
ればならない。
【0007】これに関して、例えばブレーキ制御手段が
異常の時にはエンジン制御手段のみを作動させて適切な
駆動トルクを実現し、それによって安定した走行性を得
るようにした従来技術は存在する(例えば特開昭62−
137255号公報参照)。
【0008】一般にブレーキ制御手段の場合は応答性が
高く、スリップ率可変効果も高い。従って、該ブレーキ
制御手段が異常状態のまま制御を実行したのでは、ブレ
ーキの負担が大きくなりすぎて、通常ブレーキの性能に
も影響が生じる。その意味で、上記のようにブレーキ制
御手段がフェイル状態にあることが判定されると、当該
ブレーキ制御は即時に中止することが好ましい。
【0009】しかし、一方、その場合に他方側エンジン
制御手段の作動をどうするかは、ケースに応じて決定す
べきで、上記従来技術のように一律にエンジン制御を継
続するのは問題がある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本願の請求項1〜4各項
記載の発明は、それぞれ上記の問題を解決することを目
的としてなされたものであって、各々次のように構成さ
れている。
【0011】(1) 請求項1記載の発明の構成 請求項1記載の発明の車両のスリップ制御装置は、エン
ジンの発生トルクを調整するトルク調整手段と、駆動輪
へのブレーキ力を調整するブレーキ調整手段と、駆動輪
の路面に対するスリップ値を検出するスリップ検出手段
と、上記スリップ検出手段で検出されるスリップ値が第
1目標値となるように上記トルク調整手段を制御するエ
ンジン制御手段と、駆動輪の路面に対するスリップ値が
第2目標値となるように前記ブレーキ調整手段を制御す
るブレーキ制御手段と、これら各制御手段をON又はO
FFするスイッチ手段とを備えてなる車両において、少
なくとも上記エンジン制御手段がフェイルした時には上
記ブレーキ制御手段をも併せてフェイル状態に制御する
フェイル制御手段を設けたことを特徴とするものであ
る。
【0012】(2) 請求項2記載の発明の構成 請求項2記載の発明の車両のスリップ制御装置は、上記
請求項1記載の発明の構成を基本構成とし、同構成にお
いてエンジン制御手段およびブレーキ制御手段の作動中
において、エンジン制御手段がフェイルした時はブレー
キ制御手段の制御動作を即時に中止する一方、エンジン
制御手段の制御動作は徐々に中止するようにしたことを
特徴とするものである。
【0013】(3) 請求項3記載の発明の構成 請求項3記載の発明の車両のスリップ制御装置は、上記
請求項1記載の発明の構成を基本構成とし、同構成にお
いて、電源電圧が低下し、かつ上記トルク調整手段のト
ルク調整が適正に行われないことを表わす信号が出力さ
れた時には、エンジン制御手段によるスリップ制御動作
を保障した上でブレーキ制御手段のスリップ制御動作を
即時に中止するようにしたことを特徴とするものであ
る。
【0014】(4) 請求項4記載の発明の構成 請求項4記載の発明の車両のスリップ制御装置は、エン
ジンの発生トルクを調整するトルク調整手段と、駆動輪
へのブレーキ力を調整するブレーキ調整手段と、駆動輪
の路面に対するスリップ値を検出するスリップ検出手段
と、上記スリップ検出手段で検出されるスリップ値が第
1目標値となるように上記トルク調整手段を制御するエ
ンジン制御手段と、駆動輪の路面に対するスリップ値が
第2目標値となるように前記ブレーキ調整手段を制御す
るブレーキ制御手段と、これら各制御手段をON又はO
FFするスイッチ手段とを備えてなる車両において、少
なくとも上記エンジン制御手段がフェイルした時には上
記エンジン制御手段をも併せてフェイル状態に制御する
フェイル制御手段を設けたことを特徴とするものであ
る。
【0015】
【作用】本願の請求項1〜4各項記載の発明の車両のス
リップ制御装置は、各々以上のように構成されている結
果、当該各構成に対応して各々次のような作用を奏す
る。
【0016】(1) 請求項1記載の発明の作用 請求項1記載の発明の車両のスリップ制御装置では、先
ずエンジンの発生トルクを調整するトルク調整手段と、
駆動輪へのブレーキ力を調整するブレーキ調整手段と、
駆動輪の路面に対するスリップ値を検出するスリップ検
出手段と、上記スリップ検出手段で検出されるスリップ
値が第1目標値となるように上記トルク調整手段を制御
するエンジン制御手段と、駆動輪の路面に対するスリッ
プ値が第2目標値となるように前記ブレーキ調整手段を
制御するブレーキ制御手段と、これら各制御手段をON
又はOFFするスイッチ手段とを備えて基本となる車両
のスリップ制御装置が構成されており、制御スイッチO
N状態では、従来通りの適切なスリップ制御が行われ
る。
【0017】さらに、それに加えて上記エンジン制御手
段およびブレーキ制御手段が共に作動している状態で上
記エンジン制御手段がフェイルした時には上記ブレーキ
制御手段をも併せてフェイル状態に制御するフェイル制
御手段を設け、ブレーキ制御手段単独でのスリップ制御
は行わないようになっている。従って、確実に安定した
走行性が確保されるようになる。
【0018】(2) 請求項2記載の発明の作用 請求項2記載の発明の車両のスリップ制御装置では、そ
の基本構成に基く上記請求項1記載の発明と同様の作用
に加え、さらにエンジン制御手段およびブレーキ制御手
段の作動中において、エンジン制御手段がフェイルした
時はブレーキ制御手段の制御動作を即時に中止する一
方、他方エンジン制御手段の方の制御動作は徐々に中止
するようになっている。
【0019】ブレーキ制御手段の方の制御動作は上述の
理由により即時に中止することが好ましいが、エンジン
制御手段の方まで同時に中止するようにすると、スリッ
プ率の急変を生じて車両スピンを生じる。従って、エン
ジン制御を中止するにしても一定の時間をかけて徐々に
中止して行くようにして上記スリップ率の急変を防止し
ている。
【0020】(3) 請求項3記載の発明の作用 請求項3記載の発明の車両のスリップ制御装置では、そ
の基本構成に基く上記請求項1記載の発明と同様の作用
に加えて、例えばバッテリ電圧が低下してブレーキ力調
整手段が不作動となり、ブレーキが利きすぎたり、点火
時期のリタードや燃料カットなどのエンジン出力の低減
が可能であることを示す信号が出なくなって、上記トル
ク調整手段のトルク調整が適正に行われなくなり、ブレ
ーキ制御系の負担が増大するようになった時などには、
エンジン制御手段によるスリップ制御動作を一応保障し
た上でブレーキ制御手段のスリップ制御動作を即時に中
止してブレーキ制御の利き過ぎを防ぐとともにブレーキ
制御系の損傷を防止するようになっている。
【0021】従って、該場合にも一応スリップ率の急変
を防止し得て、しかもブレーキ制御系の信頼性を確保す
ることができるので、以後の安定した走行性を確保する
ことができるようになる。
【0022】(4) 請求項4記載の発明の作用 請求項4記載の発明の車両のスリップ制御装置では、先
ずエンジンの発生トルクを調整するトルク調整手段と、
駆動輪へのブレーキ力を調整するブレーキ調整手段と、
駆動輪の路面に対するスリップ値を検出するスリップ検
出手段と、上記スリップ検出手段で検出されるスリップ
値が第1目標値となるように上記トルク調整手段を制御
するエンジン制御手段と、駆動輪の路面に対するスリッ
プ値が第2目標値となるように前記ブレーキ調整手段を
制御するブレーキ制御手段と、これら各制御手段をON
又はOFFするスイッチ手段とを備えて基本となるスリ
ップ制御装置が構成されており、制御スイッチがONの
状態では従来通りの適切なスリップ制御が実現される。
【0023】そして、本発明では上記構成に加えて更に
ブレーキ制御手段がフェイルした時には上記エンジン制
御手段をも併せてフェイル状態に制御するフェイル制御
手段を設け、例えばシステムダウンをワーニング表示す
ることによって運転者にシステムダウンとなったことを
認識させる。
【0024】
【発明の効果】従って、上記本願の請求項1〜4各項記
載の各発明の車両のスリップ制御装置によると、各々次
のような効果を得ることができる。
【0025】(1) 請求項1記載の発明の効果 ブレーキ制御手段単独で制御することがなくなるので、
ブレーキ制御系の負担度が低減され、その耐久性、信頼
性が向上する。
【0026】(2) 請求項2記載の発明の効果 上記同様、ブレーキ系制御の耐久性、信頼性の向上が図
れるとともに同制御系フェイル時の制御解除動作がスム
ーズに行われるようになる。
【0027】(3) 請求項3記載の発明の効果 エンジン制御が正常に作動しない時のブレーキ制御手段
側の負担を軽減することができる。また、電源電圧低下
時には油圧アクチュエータ不作動によるブレーキの利き
過ぎが生じる可能性があるが、それをも確実に回避する
ことができる。
【0028】(4) 請求項4記載の発明の効果 ブレーキ制御手段がフェイルすると、実質的には余りス
リップ制御が利かなくなる。従って、該場合には、エン
ジン制御手段も併せてフェイル状態としてシステムダウ
ン扱いとすることにより、運転者にスリップ制御機能の
喪失を認識させ、ハンドリングの慎重さを期させること
が可能となる。
【0029】
【実施例】
(1) 第1実施例 図1〜図14は、本願発明の第1実施例に係る車両のス
リップ制御装置を示している。
【0030】図1において、1FLは左前輪、1FRは
右前輪、1RLは左後輪、1RRは右後輪である。車体
前部にはエンジン2が横置きに搭載され、該エンジン2
での発生トルクは、クラッチ3、変速機4、差動ギヤ5
に伝達された後、左ドライブシャフト6Lを介して左前
輪1FLに、また右ドライブシャフト6Rを介して右前
輪1FRに各々伝達される。このように、本実施例にお
ける車両は、前輪1FL,1FRが駆動輪とされ、後輪
1RL,1RRが従動輪とされた前輪駆動車となってい
る。
【0031】各車輪に装備されたブレーキ7FR〜7R
Rは、油圧式のディスクブレーキとされている。また、
ブレーキ液圧発生源としてのマスタシリンダ8は、2つ
の吐出口8a,8bを有するタンデム型とされている。こ
のマスタシリンダ8の一方の吐出口8aから伸びるブレ
ーキ配管13は、途中で2本に分岐されて、その一方の
分岐配管13Fが左前輪用ブレーキ7FL(のキャリバ
内に装備されたホイールシリンダ)に接続され、さらに
他の分岐配管13Rが右後輪用ブレーキ7RRに接続さ
れている。マスタシリンダ8の他方の吐出口8bから分
岐配管14も同じく2本に分岐されて、その一方の分岐
配管14Fが右前輪用ブレーキ7FRに接続され、他方
の分岐配管14Rが左後輪用ブレーキ7RLに各々接続
されている。
【0032】前輪用すなわち駆動輪用の分岐配管13
F,14Fには、電磁式の液圧調整弁15Lあるいは1
5Rが接続され、後輪用の分岐配管13R,14Rに
は、電磁式の開閉弁16Lあるいは16Rが接続されて
いる。液圧調整弁15L,15Rは、ブレーキ7FL,7
FRへのマスタシリンダ8からのブレーキ液圧供給と、
ブレーキ7FL,7FRのブレーキ液圧を配管21L,2
1Rを介してリザーバタンク22L,22Rへ開放する
態様とを切換える。リザーバタンク21Lのブレーキ液
は、ポンプ23Lによって、逆止弁24Lが接続された
配管25Lを介して配管13に戻され、同様に、リザー
バタンク21Rのブレーキ液は、ポンプ23Rによっ
て、逆止弁24Rが接続された配管25Rを介して配管
14に戻される。
【0033】ブレーキペダル12に対する踏込み力は、
倍力装置すなわちブレーキブースタ11を介してマスタ
シリンダ8に伝達される。このブースタ11は、基本的
には既知の真空倍力装置と同じであるが、スリップ制御
の際には後述するように、ブレーキペダルの踏込み操作
が行われていなくても倍力作用を行うように構成されて
いる。
【0034】ブースタ11は、車体およびマスタシリン
ダ8に固定されたケース31を有し、該ケース31内
が、ダイアフラム32とこれに固定されたバルブボディ
33とによって、第1室34と第2室35とに画成され
ている。第1室34には常に負圧(例えばエンジン2の
吸気負圧)が供給されており、ブレーキペダルが踏込み
操作されていないときは第2室35が第1室34と連通
されて、ブースタ11の作動が停止された状態とされ
る。そして、ブレーキペダル12を踏込み操作すると、
第2室35に大気圧が供給され、これによりダイアフラ
ム32がバルブボディ33と共に前方へ変位して倍力作
用が行われる。
【0035】第2室35に対する負圧供給と大気圧供給
との切換えは、基本的には、バルブボディ33内に装備
された弁装置によってなされる。このバルブボディ33
部分を図2に基づいて説明する。
【0036】先ず、バルブボディ33は、ダイアフラム
32に固定されるパワーピストン41を有し、このパワ
ーピストン41に形成された凹部41a内には、リアク
ションディスク42と出力軸43の基端部とが嵌合され
ている。この出力軸43は、マスタシリンダ8の入力軸
となるものである。また、ブレーキペダル12に連結さ
れた入力軸44の先端部には、バルブボディ33内にお
いて、バルブプランジャ45が取付けられている。この
バルブプランジャ45の後方には、真空弁46が配設さ
れている。
【0037】パワーピストン41には圧力導入通路50
が形成されており、該圧力導入通路50は常時、前記バ
ルブプランジャ45の周囲に形成される空間Xに連通さ
れている。この空間Xは、常に第2室35と連通されて
いる。そして、圧力導入通路50の空間X側への開口端
部に、前記真空弁46が離着座される弁座47が形成さ
れている。また、真空弁46は、バルブプランジャ45
の後端に形成された弁座45aに対しても離着座され
る。
【0038】以上のような構成において、いま、圧力導
入通路50に負圧が導入されている場合を想定する。こ
の状態で、ブレーキペダル12が踏込み操作されていな
いときは、図2の状態で、スプリング48,49の付勢
力によって真空弁46が弁座45aに着座するも、弁座
47とは離間されている。したがって、圧力導入通路5
0からの負圧は、空間Xを介して第2室35に導入さ
れ、倍力作用は行われない。
【0039】ブレーキペダル12を踏込み操作すると、
入力軸44したがってバルブプランジャ45が前方動
(図中左方動)される。この前方動の際、真空弁46は、
先ず弁座47に着座して空間Xと圧力導入通路50との
連通を遮断し、その後真空弁46に対して弁座45aが
離間される。この真空弁46と弁座45aとが離間する
ことにより、バルブボディ33の後方からの大気圧が空
間Xに導入されて、第2室35が大気圧となる。これに
より、ダイアフラム32がバルブボディ33と共に前方
へ変位し、この結果出力軸43が前方動して倍力作用が
行われる。マスタシリンダ8からのブレーキ反力は、リ
アクションディスク42を介して、バルブプランジャ4
5したがってブレーキペダル12に伝達される。ブレー
キペダル12の踏込み操作力が解放されると、リターン
スプリング36(図1参照)により図2の状態へ復帰し
て、次の倍力作用に備えることになる。
【0040】以上説明した部分は、既知の真空倍力装置
と同じであるが、本実施例では、スリップ制御のため
に、圧力導入通路50に対して、第1室34の負圧を導
入させる状態と大気圧を導入させる状態とに切換えるよ
うにしている。すなわち、第1室34と圧力導入通路5
0とが配管37を介して接続され、該配管37に3方電
磁切換弁38(図1参照)が接続されている。この切換弁
38は、消磁時に圧力導入通路50を第1室34に連通
させ、励磁時に圧力導入通路50に大気圧を導入させ
る。この切換弁38が励磁されて圧力導入通路50に大
気圧が導入されると、前記空間Xしたがって第2室35
は、ブレーキペダル12の踏込み操作が行われていなく
ても大気圧となり、この結果倍力作用を行ってマスタシ
リンダ8にブレーキ液圧を発生させることになる。
【0041】図3は、制御系を簡略的に示すものであ
り、同図中Uは、マイクロコンピュータを利用して構成
された制御ユニットである。この制御ユニットUには、
センサあるいはスイッチS1〜S9からのON/OFF
信号が入力される。センサS1〜S4は、各車輪1FL
〜1RRの回転速度を検出するものである。スイッチS
5はアクセルペダル10が全閉となったときにオンとさ
れるアクセルスイッチである。スイッチS6,S7はそ
れぞれブレーキペダル12が踏込み操作されたときに作
動されるもので、例えば一方のスイッチは常開型とさ
れ、他方は常閉型とされる。センサS8は、アクセル開
度を検出するものである。センサS9は、ハンドル舵角
を検出するものである。
【0042】また、制御ユニットUからは、図3に示す
ように各機器類に制御信号が出力されるが、その中で符
号9は、エンジン2の発生トルクを調整するトルク調整
手段である。なお、トルク調整手段9は、例えば吸入空
気量を調整することにより、あるいは各燃料カツト気筒
数と点火時期調整との組み合わせにより、エンジンの発
生トルクの調整を行うものである。
【0043】すなわち、上記制御ユニットUは、上述し
たブレーキ制御系に加え、上記各センサスイッチからの
信号を受け入れる入力インターフェイスと、CPUとR
OMとRAMとからなるマイクロコンピュータと、出力
インターフェイスと、イグナイタ及び燃料噴射装置を駆
動するための駆動回路とを備えており、ROMにはスリ
ップ制御に必要な制御プログラム、各種マップないしは
テーブルが設けられ、またRAMには該制御を実行する
のに必要な各種メモリが設けられている。そして、その
中央制御部には、後に述べたようなスリップ判定用閾値
の設定手段、スリップ量の演算手段、スリップ判定手
段、制御目標値の設定手段、制御レベルの演算手段及び
上記エンジンのトルク調整用コントロール手段等を備え
て構成されている。
【0044】燃料噴射量の制限は、平均スリップ量の制
御目標量からの偏差と該偏差の変化率等を考慮し、前回
の値と初回値とを加算して決定した制御レベルFCに基
いて次の燃料カットテーブルのパターンを選択(制御レ
ベルFCのが高くなるほど数値の高いパターンを選択)
することにより行なう。この場合、エンジン回転数が低
い領域では燃料カットが制限されるように、各制御レベ
ルFC毎に燃料カット禁止条件を付ける。
【0045】また点火時期については、上記制御レベル
に応じてリタード量を決定し、出力する。この場合、エ
ンジン回転数が高い領域では最大リタード量を制限する
ようにする。
【0046】次に、先ず本実施例のスリップ制御の概要
について、図4をも併せて参照しつつ説明する。なお、
図4では、左前輪1FLにはスリップが生じなくて、右
駆動輪1FRに大きなスリップが生じた場合を例に示し
てある。
【0047】エンジン制御 先ず、エンジン制御の開始は、左右前輪1FL,1FR
の各スリップ値のうち、大きい方のスリップ値が所定の
開始しきい値以上となった時点で開始される(図4のt1
時点)。
【0048】エンジン制御の中止は、アクセルが全閉に
なったとき、あるいは実際のスリップ値が制御継続用し
きい値SC(第1目標値よりも小)となった時間が所定時
間以上継続したとき(図4のt6〜t7)に行われる。
【0049】ブレーキ制御 ブレーキ制御の開始は、次の条件の全てを満足したとき
になされる。
【0050】第1の開始条件は、エンジン制御中である
ことである。
【0051】第2の開始条件は、左右駆動輪1FL,1
FRの実際のスリップ値の差が所定値以上となったこと
である(図4のt2)。
【0052】第3の開始条件は、車速が所定の第1車速
V1以下であることである。
【0053】第4の開始条件は、後述する所定の遅延時
間を経過したことである。
【0054】このブレーキ制御の開始に先立ち、応答送
れを見込んで、エンジン制御の開始と同時に切換弁38
が励磁されて、ブースタ11が倍力作用状態とされると
共に、液圧調整弁15L,15Rはリリーフ位置に、ま
た開閉弁16L,16Rは閉とされる。そして、切換弁
38を励磁した後、実際のスリップ値が所定の減速度を
示すようになると(所定の減速度を示すまでの時間が前
記遅延時間とされ、図4ではt2〜t3の間)、ブレーキ
制御が開始される。
【0055】ブレーキ制御は、左右駆動輪1FL,1F
Rについて個々に孤立して、それぞれ実際のスリップ値
がブレーキ用目標値(第2目標値)STB(>STE)とな
るように、液圧調整弁15L,15Rをフィードバック
制御することにより行われる(デューティ制御)。
【0056】ブレーキ制御の中止は、次のいずれか1つ
の条件を満足したときに行われる。
【0057】第1の中止条件は、エンジン制御が中止さ
れたときである。
【0058】第2の中止条件は、車速が所定の第2車速
V2(V2>V1)以上の高車速となったときである。
【0059】第3の中止条件は、左右の液圧調整弁15
L,15Rに対する制御信号が、いずれも減圧を示しか
つ所定時間(実施例では500msec)継続したときである
(図4のt4〜t5)。
【0060】第4の中止条件は、左右のブレーキ7F
L,7FRのブレーキ液圧が共に零となったときであ
る。
【0061】第5の中止条件は、ブレーキペダル12が
踏込み操作されたことが、スイッチS6,S7のいずれ
か一方で検出されたときである(スイッチS6,S7によ
りブレーキペダル12が踏込み操作されていることが検
出されたときは、ブレーキ制御の開始が禁止される)。
【0062】ブレーキ制御中止の際は、エンジン制御が
行われている限り切換弁38は作動されており、液圧調
整弁15L,15Rはリリーフ位置にあり、開閉弁16
L,16Rは閉状態とされる(ブレーキ制御開始までの待
機状態と同じ状態)。そして、エンジン制御が中止され
た時点あるいはブレーキペダル12が踏込み操作された
時点で、切換弁38が消磁される。
【0063】次に、図5以下のフローチャートを参照し
つつ本発明実施例の制御動作について説明するが、以下
の説明でPは各処理のプロセスステップを示すものとす
る。
【0064】図5は、本システムの全体の流れを示すも
ので、プロセスP1において各センサ等からの信号が入
力された後、プロセスP2において、左右駆動輪1F
L,1FRの各回転速度WSRLとWSRRとを平均す
ることにより、実車速VSが算出される。
【0065】プロセスP3では、後述のようにして、エ
ンジン制御用の第1目標値STEと、ブレーキ用の第2
目標値STBが決定される(STB>STE)。プロセス
P4では、左駆動輪1FLのスリップ値SFLが、その
回転速度WSFLから車速VSを差し引くことにより算
出され、同様に、右駆動輪1FRのスリップ値SFR
が、その回転速度WSFRから車速VSを差し引くこと
により算出される。
【0066】次にプロセスP5〜P7の処理では、左右
駆動輪のスリップ値SFL,SFRのうち、いずれか大
きい方のスリップ値が、エンジン制御用のスリップ値S
Aとして設定される。
【0067】プロセスP8では、現在スリップフラグが
前輪1FL,1FRであるか否かが判断されるが、この
スリップフラグは、1のときがスリップ制御中(少なく
ともエンジン制御中)であることを意味する。
【0068】プロセスP8の判別でNOのときは、プロ
セスP9において後述するエンジン制御の開始判定がな
された後、プロセスP10において後述する終了判定が
なされる。
【0069】プロセスP8の判別でYESのときは、プ
ロセスP11において、エンジン制御が行われた後、プ
ロセスP12において、ブレーキフラグが1であるか否
かが判別される。このブレーキフラグは、1のときがブ
レーキ制御中であることを意味する。
【0070】プロセスP12の判別でNOのときは、プ
ロセスP13において後述するブレーキ開始判定が行わ
れた後、プロセスP10へ移行する。また、プロセスP
12の判別でYESのときは、プロセスP14において
ブレーキ制御が行われた後、プロセスP10へ移行す
る。
【0071】図6は、図5のプロセスP9の内容を示
す。先ず、プロセスP21において、エンジン制御用の
実際のスリップ値SAが、所定の開始しきい値を示す所
定値以上であるか否かが判別される。プロセスP21の
判別でNOのときは、スリップ制御が不用なときである
ので、そのままプロセスP1へリターンされる。
【0072】プロセスP21の判別でYESのときは、
プロセスP22において、スリップフラグ1にセットさ
れ、プロセスP23においてエンジン制御が開始され、
プロセスP24においてブレーキ制御開始の準備がなさ
れる。このプロセスP24での準備は、具体的には、切
換弁38を励磁してマスタシリンダ8にブレーキ液圧を
発生させておくことと、液圧調整弁15L,15Rをリ
リーフ位置とすることと、開閉弁16L,16Rを閉と
することである。
【0073】図7は、図5のプロセスP13の内容を示
す。先ず、プロセスP31において、車速VSが第1車
速V1以下であるか否かが判別される。このプロセスP
31の判別でYESのときは、プロセスP32におい
て、左右駆動輪1FL1FRとの各回転速度差DNLが
算出された後、プロセスP33において、この差DNL
が所定値以上であるか否かが判別される。このプロセス
P33の判別でYESのときは、プロセスP34におい
て、上記差が生じてから所定の遅延時間が経過したか否
かが判別される(図4のt2〜t3)。このプロセスP34
の判別でYESのときは、プロセスP35においてブレ
ーキフラグが1にセットされた後、プロセスP36にお
いて、液圧調整弁15L,15Rを制御することによる
ブレーキ制御が開始される。
【0074】各プロセスP31,P33,P34のいずれ
かの判別でNOのときは、そのまま終了する。
【0075】図8は、図5のプロセスP10の内容を示
す。先ず、プロセスP41において、アクセルが全開で
あるか否かが判別される。このプロセスP41の判別で
YESのときは、プロセスP42において、スリップ制
御すなわちエンジン制御およびブレーキ制御を共に共に
中止した後、プロセスP43において各フラグが0にリ
セットされる。
【0076】プロセスP41の判別でNOのときは、プ
ロセスP45において、エンジン制御用の実際のスリッ
プ値SAが終了しきい値SC以下であるか否かが判別さ
れる。このプロセスP45の判別でYESのときは、プ
ロセスP46において、SAが終了しきい値SC以下で
ある状態が1000msec継続しているか否かが判別され
る。このプロセスP46の判別でYESのときは、プロ
セスP42に移行して、スリップ制御が中止される。
【0077】プロセスP45あるいはプロセスP46の
判別でNOのときは、プロセスP47において、車速V
Sが、第2車速V2以上であるか否か判別される、この
プロセスP47の判別でYESのときは、プロセスP4
8において、再スリップ発生防止のためにブレーキ液圧
を徐々に低下させつつブレーキ制御を中止させた後、プ
ロセスP49においてブレーキフラグが0にリセットさ
れる。なお、ブレーキ制御の徐々なる中止は、液圧調整
弁15L,15Rへの所定時間毎の減圧信号を当該所定
時間毎に低減させることにより行われるが、1回当りの
減圧度合が大きくなり過ぎないように制限が加えられ
る。
【0078】プロセスP47の判別でNOのときは、プ
ロセスP50において、左右駆動輪用ブレーキ7FL,
7FRのブレーキ液圧が共に0になったか否かが判別さ
れる。このプロセスP50の判別でYESのときは、プ
ロセスP51においてブレーキ制御を中止した後、プロ
セスP49に移行する。なお、ブレーキ液圧の推定は、
既に提案されている種々の手法により間接的に知り得る
が、直接ブレーキ液圧を検出するセンサを利用すること
もできる。
【0079】プロセスP50の判別でNOのときは、プ
ロセスP52において、液圧調整弁15L,15Rへの
制御信号が、共に減圧を示すものであるか否かが判別さ
れる、このプロセスP52の判別でYESのときは、上
記減圧信号が共に0である状態が500msec継続したか
否かが判別される。このプロセスP53の判別でYES
のときは、プロセスP51においてブレーキ制御が中止
される。
【0080】プロセスP52あるいはプロセスP53の
判別でNOのときは、そのまま終了される(エンジン制
御およびブレーキ制御の継続)。
【0081】図9は、図5のプロセスP3の内容を示
す。先ず、プロセスP61において、車速VSと当該車
速VSを微分することにより得られた車体加速度とに基
づいて、路面μが推定される。次いで、プロセスP62
において、図10に示すマップを参照して、推定された
路面μに対応したエンジン制御用の基本目標値STEO
とブレーキ制御用の基本目標値STBOとが決定される
(STEO<STBO)。
【0082】プロセスP63〜P65では、順次、車速
VSに基づく補正係数K1、アクセル開度に基づく補正
係数K2、ハンドル舵角に基づく補正係数K3が、図1
1〜図13に示すマップを参照しつつ決定される。車速
VSに基づく補正係数K1は、車速VSが大きくなるほ
ど大きくなるように、連続可変的に設定される。
【0083】プロセスP66では、エンジン制御用の基
本目標値STEOに対して補正係数K2とK3とを乗算
することにより、最終目標値STEが決定される。次い
で、プロセスP67において、ブレーキ制御用の基本目
標値STBOに対して補正係数K1とK2とK3とを乗
算することにより、最終目標値STBが決定される。
【0084】このように、エンジン制御用の目標値ST
Bは、車速に基づく補正が行われていないので、車速の
変化によっては変化されないものとなる。これに対し
て、ブレーキ制御用の目標値STBは、車速に応じた補
正が行われて、車速が大きくなるほど連続可変的に大き
くされる。図4では、時間の経過と共に車速が増大して
いく場合を例にしており、この図4に、STBからST
Eを差引いた偏差が車速増大と共に大きくなる様子が示
されている。
【0085】ここで、ブレーキスイッチS6あるいはS
7のいずれか一方で、ブレーキペダル12が踏込み操作
されたことが検出されると、前記フローチャートに対す
る割込み処理によって、ブレーキ制御が強制的に中止さ
れる。
【0086】次に、上記ブレーキ(ブレーキトラクショ
ン)制御又はエンジン(エンジントラクション)制御が各
々フェイルした時のトラクション制御システムについて
図14のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0087】先ず制御開始後、プロセスP1では、エン
ジン制御手段がフェイルしているか否かを判断する。
【0088】その結果、YESの時は、さらにプロセス
P2に進んで現在トラクションスイッチがONで実際に
トラクション制御中であるか否かを判断する。他方、N
Oの時は後述するプロセスP2〜P10の動作を全てジ
ャンプして初期の動作にリターンする。
【0089】次に、上記プロセスP2の判断でもYES
(トラクション制御中)と判定された時は、さらにプロセ
スP3に進んで当該制御中はエンジン制御手段およびブ
レーキ制御手段が共に作動中のものであるか否かを判定
する一方、上記プロセスP2の上記判定結果がNOのト
ラクションスイッチがOFFの時はプロセスP4に移っ
てブレーキ制御手段、エンジン制御手段共に作動を禁止
する。
【0090】一方、上記プロセスP3の判定でYES、
つまりエンジン制御手段とブレーキ制御手段の両方が共
に制御動作を行っている状態において、エンジン制御手
段がフェイルした時にはプロセスP7に進んで、先ずブ
レーキ制御手段の制御動作を中止し、さらにプロセスP
8に進んで上述のエンジン制御手段による制御レベルF
Cの値を本来の値よりも徐々に低下させる。そして、プ
ロセスP10でFC=0になつたことが確認されると、
最終的にプロセスP10に進みブレーキ制御手段および
エンジン制御手段が共に制御機能を停止し、システムダ
ウン状態となったことを所定の点滅表示および音声報知
によりワーニングして制御を終える。
【0091】他方、上記プロセスP3の制御状態判定に
おいて、NOと判定されたエンジン制御手段かブレーキ
トラクション制御手段の何れか一方のみが制御動作中で
ある時はプロセスP5に移って、それがエンジン制御手
段のみのものであるか否かを判断する。
【0092】その結果、YESの時はブレーキ制御停止
動作は不要であるから上述のプロセスP8,P9の動作
を経てエンジン制御を徐々に停止状態に移行させ、最終
プロセスP10で、上述と同様のシステムダウンのワー
ニング表示を実行する。
【0093】他方、プロセスP5の判断でNO、すなわ
ち、制御中であるのがブレーキ制御手段のみである時に
は、直ちにプロセスP6に進んでブレーキ制御手段の動
作を停止して、最終プロセスP10に進み、ワーニング
表示を点滅作動させてブレーキ制御がフェイル状態に移
行したことを運転者に報知する。これにより、運転者は
ブレーキが通常の制動能力状態にあることを認識する。
【0094】上記実施例の構成では、エンジントラクシ
ョン制御手段およびブレーキトラクション制御手段が共
に作動している状態で上記エンジン制御手段がフェイル
した時には上記ブレーキ制御手段をも併せてフェイル状
態に制御するフェイル制御手段を設け、ブレーキ制御手
段単独でのスリップ制御は行わないようになっている。
従って、ブレーキトラクション制御手段単独で制御する
ことがなくなるので、ブレーキ制御系の負担度が低減さ
れ、その耐久性、信頼性が向上する。さらにエンジント
ラクション制御手段およびブレーキトラクション制御手
段の作動中において、エンジントラクション制御手段が
フェイルした時はブレーキ制御手段の制御動作を即時に
中止する一方、他方エンジントラクション制御手段の方
の制御動作は徐々に中止するようになっている。ブレー
キトラクション制御手段の方の制御動作は上述の理由に
より即時に中止することが信頼性上好ましいが、エンジ
ントラクション制御手段がフエイルしていない状態にお
いてエンジン制御手段の方まで同時に中止するようにす
ると、スリップ率の急変を生じて車両スピンを生じる。
従って、エンジン制御を中止するにしても一定の時間を
かけて徐々に中止して行くようにして上記スリップ率の
急変を防止している。その結果、該場合にも上記同様、
ブレーキ系制御の耐久性、信頼性の向上が図れる一方、
さらに同制御系フェイル時の制御解除動作がスムーズに
行なわれるようになる。
【0095】(2) 第2実施例 次に図15は、本願発明の第2実施例に係る車両のスリ
ップ制御装置を示している。本実施例の構成は上記図1
4のフローチャートのプロセスP1のエンジン制御フェ
ールの判定に代えてブレーキ制御フェールの判定を挿入
したもので、ブレーキ制御がフェールした時は必ずエン
ジン制御をも同時に停止させるようにし、しかも、それ
によるシステムダウンを運転者にワーニングするように
したことを特徴とするものである。
【0096】ブレーキ制御手段がフェイルすると、実質
的には余りスリップ制御が利かなくなる。従って、該場
合には、エンジン制御手段も併せてフェイル状態として
システムダウン扱いとすることにより、運転者にスリッ
プ制御機能の喪失を認識させ、ハンドリングの慎重さを
指示することが可能となる。
【0097】(3) 第3実施例 また、上記各実施例の構成において、例えばエンジン制
御手段およびブレーキ制御手段の作動中において、制御
系の電源電圧が低下し、かつ上記トルク調整手段のトル
ク調整が適正に行われないことを表わすような信号が出
力されたような時には、エンジン制御手段によるスリッ
プ制御動作を保障した上でブレーキ制御手段のスリップ
制御動作を即時に中止するようにすることもできる。例
えばバッテリ電圧が低下してブレーキ力調整手段が不作
動となり、ブレーキが利きすぎたり、点火時期のリター
ドや燃料カットなどのエンジン出力の低減が可能である
ことを示す信号が出なくなって、上記トルク調整手段の
トルク調整が適正に行われなくなり、ブレーキ制御系の
負担が増大するようになった時などには、エンジン制御
手段によるスリップ制御動作を一応保障した上でブレー
キ制御手段のスリップ制御動作を即時に中止してブレー
キ制御の利き過ぎを防ぐとともにブレーキ制御系の損傷
を防止することが好ましい。
【0098】上記構成の結果、該実施例の場合にも一応
スリップ率の急変を防止し得て、しかもブレーキ制御系
の信頼性を確保することができるようになるので、上記
実施例同様に以後の安定した走行性を確保することがで
きるようになる。また、上記の如くブレーキ制御を即時
に中止することにより、電源電圧低下時には油圧アクチ
ュエータ不作動によるブレーキの利き過ぎが生じる可能
性があるが、それをも確実に回避することができるよう
になる。
【0099】以上3つの実施例について説明したが、何
れの実施例においても上記スリップ値の算出は、駆動輪
と従動輪との差ではなく、それらの比、例えば駆動輪速
/従動輪速としてもよく、あるいは又(駆動輪速−従動
輪速)/従動輪速として示すこともできる。
【0100】また、ブレーキ制御用のブレーキ液圧は、
ブースタ11を利用することなく別途専用のオイルポン
プによって発生させるようにしてもよい。
【0101】さらに、ブレーキ制御用目標値STBをエ
ンジン制御用目標値STEよりも常に小さい値として設
定しおくことも可能であり、また、ある車速以上となっ
たときに、STBがSTEより小さい状態から大きい状
態へと変化するように設定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本願発明の第1実施例の車両のスリッ
プ制御装置の全体システム図である。
【図2】図2は、同装置のブレーキブースタの要部を示
す断面図である。
【図3】図3は、同装置の制御ユニットに対する入力上
記出力関係を示す図である。
【図4】図4は、同装置の制御例を図式的に示すタイム
チャートである。
【図5】図5は、同装置の基本となる制御例を示すフロ
ーチャートである。
【図6】図6は、同装置のエンジン制御開始判定の制御
例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、同装置のブレーキ制御開始判定の制御
例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、同装置の制御終了判定の制御例を示す
フローチャートである。
【図9】図9は、同装置の目標値設定制御例を示すフロ
ーチャートである。
【図10】図10は、同装置における路面μに応じた基
本目標値の設定例を示す図である。
【図11】図11は、同車速に応じた目標値の補正係数
を示す図である。
【図12】図12は、同アクセル開度に応じた目標値の
補正係数を示す図である。
【図13】図13は、同ハンドル舵角に応じた目標値の
補正係数を示す図である。
【図14】図14は、本願発明の上記第1実施例の要部
の制御例を示すフローチャートである。
【図15】図15は、本願発明の第2実施例に係る車両
のスリップ制御装置の要部の制御例を示すフローチャー
トである。
【符号の説明】
1FL,1FRは前輪(駆動輪)、1RL,1RRは後輪
(従動輪)、2はエンジン、7FR〜7RRはブレーキ、
8はマスタシリンダ、9はトルク調整手段、11はブレ
ーキブースタ(倍力装置)、12はブレーキペダル、15
L,15Rは液圧調整弁、16L,16Rは開閉弁、38
は切換弁(負圧供給、大気圧供給切換)、Uは制御ユニッ
ト、S1〜S4は車輪速センサである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂本 裕昭 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンの発生トルクを調整するトルク
    調整手段と、駆動輪へのブレーキ力を調整するブレーキ
    調整手段と、駆動輪の路面に対するスリップ値を検出す
    るスリップ検出手段と、上記スリップ検出手段で検出さ
    れるスリップ値が第1目標値となるように上記トルク調
    整手段を制御するエンジン制御手段と、駆動輪の路面に
    対するスリップ値が第2目標値となるように前記ブレー
    キ調整手段を制御するブレーキ制御手段と、これら各制
    御手段をON又はOFFするスイッチ手段とを備えてな
    る車両において、少なくとも上記エンジン制御手段がフ
    ェイルした時には上記ブレーキ制御手段をも併せてフェ
    イル状態に制御するフェイル制御手段を設けたことを特
    徴とする車両のスリップ制御装置。
  2. 【請求項2】 エンジン制御手段およびブレーキ制御手
    段の作動中において、エンジン制御手段がフェイルした
    時はブレーキ制御手段の制御動作を即時に中止する一
    方、エンジン制御手段の制御動作は徐々に中止するよう
    にしたことを特徴とする請求項1記載の車両のスリップ
    制御装置。
  3. 【請求項3】 電源電圧が低下し、かつ上記トルク調整
    手段のトルク調整が適正に行われないことを表わす信号
    が出力された時には、エンジン制御手段によるスリップ
    制御動作を保障した上でブレーキ制御手段のスリップ制
    御動作を即時に中止するようにしたことを特徴とする請
    求項1記載の車両のスリップ制御装置。
  4. 【請求項4】 エンジンの発生トルクを調整するトルク
    調整手段と、駆動輪へのブレーキ力を調整するブレーキ
    調整手段と、駆動輪の路面に対するスリップ値を検出す
    るスリップ検出手段と、上記スリップ検出手段で検出さ
    れるスリップ値が第1目標値となるように上記トルク調
    整手段を制御するエンジン制御手段と、駆動輪の路面に
    対するスリップ値が第2目標値となるように前記ブレー
    キ調整手段を制御するブレーキ制御手段と、これら各制
    御手段をON又はOFFするスイッチ手段とを備えてな
    る車両において、少なくとも上記エンジン制御手段がフ
    ェイルした時には上記エンジン制御手段をも併せてフェ
    イル状態に制御するフェイル制御手段を設けたことを特
    徴とする車両のスリップ制御装置。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101013948B1 (ko) * 2004-10-07 2011-02-14 현대자동차주식회사 트랙션 제어 시스템 장착 차량의 엔진 제어부 고장 진단제어방법

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101013948B1 (ko) * 2004-10-07 2011-02-14 현대자동차주식회사 트랙션 제어 시스템 장착 차량의 엔진 제어부 고장 진단제어방법

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