JPH05214590A - 亜鉛系メッキ鋼板のクロメート処理方法 - Google Patents

亜鉛系メッキ鋼板のクロメート処理方法

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JPH05214590A
JPH05214590A JP4040221A JP4022192A JPH05214590A JP H05214590 A JPH05214590 A JP H05214590A JP 4040221 A JP4040221 A JP 4040221A JP 4022192 A JP4022192 A JP 4022192A JP H05214590 A JPH05214590 A JP H05214590A
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彰彦 古田
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英樹 山田
Masaaki Yamashita
正明 山下
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 5 〜70g/l のCr6++Cr3+と、1 〜40g/l のMg
2+と、0.5 〜20g/l のNi2+と、10〜100 g/l のSO
4 2- と、1〜60g/l の酸化物ゾルとを含有し、Cr3+/ 全
Crが重量比で0.5 以下で、Ni2+/ Mg2+が重量比で0.05〜
2 であり、1 〜5 のpH値を有する、30〜70℃の温度のク
ロメート処理液を使用し、0.5 〜40C/dm2 の電気量によ
って、亜鉛系メッキ鋼板に対し陰極電解処理を施し、亜
鉛系メッキ被膜の上にクロメート被膜を形成する。 【効果】 亜鉛系メッキ鋼板に、優れた耐食性、塗料密
着性、および、白色度の高い均一な色調の外観を付与す
ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、亜鉛メッキ鋼板また
は亜鉛系合金メッキ鋼板に、優れた耐食性、塗料密着
性、および、白色度の高い均一な色調を付与することが
できる、亜鉛系メッキ鋼板のクロメート処理方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】その少なくとも1つの表面上に、亜鉛メ
ッキ被膜または亜鉛系合金メッキ被膜(以下、「亜鉛系
メッキ被膜」という)が形成された亜鉛メッキ鋼板また
は亜鉛系合金メッキ鋼板(以下、「亜鉛系メッキ鋼板」
という)は、自動車用鋼板、家庭電器用鋼板、建材用鋼
板等に広く使用されている。
【0003】近時、自動車業界においては、省エネルギ
ー対策のために、自動車車体の軽量化が積極的に進めら
れており、そのために、自動車メーカーから、板厚が一
段と薄く、且つ、防錆対策として優れた塗料密着性およ
び耐食性を有する亜鉛系メッキ鋼板の開発が要求されて
いる。家庭電器業界においては、製品の低コスト化のた
めに、家庭電器用鋼板を無塗装で使用する場合が多くな
り、そのために、家庭電器メーカーから、裸耐食性に優
れ、且つ、白色度の高い均一な色調の美麗な外観を有す
る亜鉛系メッキ鋼板の開発が要求されている。また、建
材業界からは、建材の長期耐久性を高めるために、防錆
対策として、優れた塗料密着性および耐食性を有する亜
鉛系メッキ鋼板の開発が要求されている。
【0004】上述した要求を満足させる亜鉛系メッキ鋼
板として、亜鉛系メッキ鋼板に対し、クロメート処理を
施し、亜鉛系メッキ被膜の上にクロメート被膜が形成さ
れたクロメート処理亜鉛系メッキ鋼板が知られている。
【0005】クロメ−ト処理方法には、亜鉛系メッキ鋼
板に対し、クロメート処理液をスプレ−し、または、ク
ロメート処理液中に亜鉛系メッキ鋼板を浸漬することに
よって、亜鉛系メッキ被膜とクロメ−ト処理液とを反応
させ、亜鉛系メッキ被膜の表面上にクロメ−ト被膜を形
成することからなる反応型クロメ−ト処理、亜鉛系メッ
キ被膜の表面上にクロメ−ト処理液を塗布し、水洗する
ことなく乾燥することからなる塗布型クロメ−ト処理、
および、亜鉛系メッキ被膜の表面上に電解によってクロ
メ−ト被膜を形成することからなる電解クロメ−ト処理
がある。
【0006】反応型クロメート処理には、次のような問
題がある。即ち、一般に、クロメート処理液は、金属と
反応しやすい。従って、クロメート処理液中に溶出した
金属イオンが、クロメート被膜中に含有されて、クロメ
ート被膜の品質に著しい悪影響を与える。反応型クロメ
−ト処理においては、特に、クロメート処理が施される
亜鉛系メッキ鋼板の亜鉛系メッキ被膜表面の影響を受け
やすい。従って、クロメート処理前における、メッキ条
件、酸洗、アルカリ洗浄等の前処理条件、および、ライ
ン速度等の操業条件の変動によって、亜鉛系メッキ被膜
の上に形成されたクロメート被膜の量および品質が大き
く変化し、クロメート被膜の品質が不安定になりやす
い。また、クロメート処理液との反応性が劣るような亜
鉛系メッキ被膜に対しては、適用することができない。
【0007】塗布型クロメ−ト処理には、次のような問
題がある。即ち、塗布型クロメート処理の場合には、ク
ロメート処理液の成分を調整することによって、クロメ
ート処理液と亜鉛系メッキ被膜との反応の影響をある程
度抑制し、クロメート被膜をコントロールすることがで
きる。しかしながら、クロメート被膜量をコントロール
するためには、クロメート処理液の濃度を変えたり、コ
ーターによる塗布条件を適正に設定する必要があるの
で、操業条件に迅速に対応させることが極めて困難であ
る。更に、クロメート処理液および亜鉛系メッキ被膜の
表面性状によって、濡れ性が異なるために、クロメート
被膜にハジキや塗布ムラ等の欠陥が生じやすい。
【0008】一方、電解クロメ−ト処理は、Cr6+を主成
分とする水溶液中において、亜鉛系メッキ鋼板を陰極と
して陰極電解することにより、亜鉛系メッキ被膜の表面
上にクロメ−ト被膜を形成することからなっている。従
って、電解クロメート処理によれば、亜鉛系メッキ鋼板
の種類や亜鉛系メッキ被膜の表面性状によってクロメー
ト被膜の付着量が左右されず、陰極電解処理時の電流密
度および電気量によって、クロメート被膜の量および品
質を容易に且つ安定して制御することができ、付着むら
の生ずることが少ないなどの利点がある。
【0009】そこで、このような電解クロメート処理に
よって、亜鉛系メッキ被膜の表面上にクロメート被膜を
形成し、これによって、亜鉛系メッキ鋼板の耐食性およ
び塗料密着性を向上させる方法に関する研究が従来から
行われており、例えば、特公平1−24880 号は、下記か
らなる方法を開示している。Cr6+およびCr3+と、シリカ
および/またはケイ酸塩と、そして、NO3 - とを含有
し、Cr3+/ Cr6+の比が、1/50から1/3 の範囲内に調整さ
れたクロメート処理液を使用し、亜鉛系メッキ鋼板に対
し陰極電解処理を施す( 以下、先行技術1という) 。
【0010】特公平1−14436 号は、下記からなる方法
を開示している。Cr6+と、PO4 3- と、フッ素化合物の1
種または2種と、シリカおよび/またはケイ酸塩と、Z
n、Ni、Co、Al、Mg、Sn、Pb、Mnイオンの少なくとも1
種とを含有するクロメート処理液を使用し、亜鉛系メッ
キ鋼板、アルミ合金メッキ鋼板、鉛または鉛合金メッキ
鋼板に対し陰極電解処理を施して、メッキ被膜の上にク
ロメート被膜を形成し、次いで、直ちに陽極電解処理を
施す( 以下、先行技術2という) 。
【0011】特開平2−145797号は、下記からなる方法
を開示している。Cr03とSiO2とH2ZrF6とを主成分とし、
更に、H2SO4 、F - を含有するクロメート処理液中にお
いて、亜鉛系メッキ鋼板に対し陰極電解処理を施し、亜
鉛系メッキ被膜の表面上にクロメート被膜を形成する
(以下、先行技術3という)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】上述した先行技術1お
よび2の方法には、次のような問題がある。即ち、従来
技術に比べて、耐食性または塗料密着性の、ある程度の
向上は認められるが、両者を共に向上させる点におい
て、未だ不十分である。即ち、塗料密着性の向上につい
て配慮した場合には、所望の耐食性が得られない。一
方、耐食性の向上のために、クロメート被膜量を多くし
た場合には、クロメート被膜が不均一に着色して、その
外観が劣化する。このように、先行技術1および2によ
っては、耐食性、塗料密着性および外観が共に優れたク
ロメート被膜を形成することが困難である。
【0013】特に、先行技術1の方法によって、亜鉛系
メッキ鋼板を連続的にクロメート処理した場合には、ク
ロメート処理液中に含有されているNO3 - によって、メ
ッキ金属の溶出が促進され、溶出した金属イオンが、ク
ロメート処理液中に蓄積される。その結果、クロメート
処理液中のシリカおよび/またはケイ酸塩がゲル化して
液中に沈殿し、この沈殿物がクロメート被膜の表面上に
付着する。先行技術2の方法によって、亜鉛系メッキ鋼
板を連続的にクロメート処理した場合には、陰極電解処
理によって形成されたクロメート被膜が、陽極電解処理
時に、部分的に溶解または剥離してスラッジとなり、こ
のスラッジがクロメート被膜中に含有され、または、ク
ロメート被膜の表面上に付着する。このように、先行技
術1および2によっては、クロメート処理液中の沈澱物
が、クロメート被膜中に含有され、または、クロメート
被膜の表面上に付着する結果、形成されたクロメート被
膜の色調が不均一になり、その外観が著しく劣化する。
【0014】先行技術3の方法の場合には、クロメート
処理液中に含有されたH2ZrF6によって、白色度の高い色
調のクロメート被膜が得られるが、その反面、クロメー
ト処理液の安定性が悪いために、安定して均一な色調の
外観を得ることが困難である。
【0015】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、亜鉛系メッキ鋼板に、優れた耐食性および塗
料密着性、ならびに、白色度の高い均一な色調の外観を
付与することができる、亜鉛系メッキ鋼板のクロメート
処理方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上述した
問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、所定量
の、Cr6++Cr3+,Mg2+,Ni2+,SO4 2- 、および、Al2O3,
Sb2O5,SiO2,SnO2, TiO2, ZrO2の群のうちの少なくとも
1つを含有し、Cr3+/全Cr量およびNi2+/Mg2+が所定の
範囲内にある、所定のpH値および温度のクロメート処理
液を使用し、所定の電気量によって、亜鉛系メッキ鋼板
に対し陰極電解処理を施して、亜鉛系メッキ被膜の上に
クロメート被膜を形成すれば、亜鉛系メッキ鋼板に、優
れた耐食性および塗料密着性、ならびに、白色度の高い
均一な色調の外観を付与し得ることを知見した。
【0017】この発明は、上述した知見に基いてなされ
たものであって、この発明は、少なくとも1つの表面上
に亜鉛系メッキ被膜が形成された、亜鉛系メッキ鋼板に
対し、クロメート処理液中において陰極電解処理を施す
ことにより、前記亜鉛系メッキ被膜の上にクロメート被
膜を形成することからなる、亜鉛系メッキ鋼板のクロメ
ート処理方法において、前記クロメート処理液として、
Cr6++Cr3+( 全クロム量) :5〜 70g/l、 Mg2+ :1〜 40g/l、 Ni2+ :0.5 〜 20g/l、 SO4 2- :10〜100g/l、および、Al2O
3,Sb2O5,SiO2,SnO2, TiO2, および ZrO2のうちの少な
くとも1つの酸化物ゾル :固形分とし
て1 〜60g/l 、を含有し、そして、Cr3+/全Cr量 重量
比 :0.5 以下、 Ni2+/Mg2+ 重量比 :0.05〜2である、pH値が1
〜5であって、30〜70℃の温度の処理液を使用し、0.5
〜40C/dm2 の電気量によって、前記亜鉛または亜鉛合金
メッキ鋼板に対し陰極電解処理を施すことに特徴を有す
るものである。
【0018】
【作用】次に、この発明において、クロメ−ト処理液の
成分組成を上述したように限定した理由について、説明
する。 (1) Cr6+およびCr3+:Cr6+としては、無水クロム酸、
および、クロム酸、重クロム酸のマグネシウム塩、アル
カリ金属塩およびアンモニウム塩の1種または2種以上
の混合物が使用される。Cr3+は、陰極電解処理時に、処
理液中のCr6+の還元反応によって生成される。なお、Cr
3+は、予め、アルコール類やタンニン酸等によりCr6+
Cr3+に還元することによって処理液中に含有させてもよ
く、または、Cr3+の化合物を処理液中に直接添加しても
よい。Cr6+とCr3+との合計量即ち全Cr量は、5から70g/
l の範囲内内に限定すべきである。全クロム量が5g/l
未満では、クロメ−ト被膜の形成効率が悪い。一方、全
クロム量が70g/l を超えても、より以上被膜特性を向上
させることができず、不経済であるばかりでなく、鋼ス
トリップに付着してクロメート処理槽から持ち出された
クロメート処理液により作業環境が汚染される問題が生
ずる。Cr3+は、クロメート被膜の品質に特別な影響を及
ぼすものではなく、むしろ、被膜の形成効率を高める利
点がある。しかしながら、Cr3+/全Cr量が重量比で0.5
を超えると、クロメート処理液の安定性が低下する。従
って、Cr3+/全Cr量は、重量比で0.5 以下とすべきであ
る。
【0019】(2) Mg2+:Mg2+としては、硫酸マグネシ
ウムが使用される。このような、Mg2+は、クロメート処
理液中のイオン濃度調整等に際し、酸化物、水酸化物、
炭酸塩、塩化物等の形態で処理液中に溶解させて添加す
ることができる。Mg2+には、クロメート被膜を均質に析
出させ、且つ、白色度の高い外観が形成される作用があ
る。Mg2+の量は、1から40g/l の範囲内に限定すべきで
ある。Mg2+の量が1g/l 未満では、上述した効果が得ら
れず、一方、Mg2+の量が40g/l を超えると、塗料密着性
が低下する。より好ましいMg2+の含有量は、5から20g/
l の範囲内である。
【0020】(3) Ni2+:Ni2+としては、硫酸ニッケル
が使用される。このようなNi2+は、炭酸塩、塩化物、硝
酸塩等の形態でクロメート処理液中に溶解させて添加す
ることができる。Ni2+には、耐食性および塗料密着性を
向上させる作用がある。Ni2+の量は、0.5から20g/l の
範囲内に限定すべきである。Ni2+の量が0.5g/l未満で
は、上述した効果が得られず、一方、Ni2+の量が20g/l
を超えると、クロメート被膜の外観が不均一に変色しや
すく、そして、クロメート被膜の耐食性が低下する問題
が生ずる。Ni2+/Mg2+は、重量比で0.05から2の範囲内
に限定すべきである。Ni2+/Mg2+が、重量比で0.05未満
では、塗装後の耐食性が低下する。一方、Ni2+/Mg
2+が、重量比で2を超えると、外観の白色度が低下す
る。
【0021】(4) SO4 2- :従来、クロメート処理液中
にSO4 2- が微量に含有されていると、陰極電解処理によ
って不均一な被膜が形成され、耐食性その他の性質の劣
化を招き、且つ、被膜が黒色化しやすいとされていた。
しかしながら、本発明者等の研究によれば、SO4 2- を10
〜100 g/l の範囲内で多く含有させることにより、耐食
性や塗料密着性等の品質特性を阻害することなく、クロ
メート処理液の安定性を飛躍的に向上させ、そして、均
一な外観色調を有するクロメート被膜を形成させ得るこ
とがわかった。従って、この発明においては、クロメー
ト処理液中に、SO4 2- を10〜100 g/l の範囲内で含有さ
せるものである。SO4 2- の量は、上述したように、10か
ら100 g/l の範囲内に限定すべきである。SO4 2- の量が
10g/l 未満では、上述した効果が得られず、一方、SO4
2- の量が100 g/l を超えても、より以上の効果が得ら
れず不経済である。なお、SO4 2- のより好ましい含有量
は、20〜100 g/l である。
【0022】(5) Al2O3,Sb2O5,SiO2,SnO2, TiO2, およ
ZrO2のうちの少なくとも1つの酸化物ゾル :Al2O
3,Sb2O5,SiO2,SnO2, TiO2, およびZrO2の酸化物ゾルの
多くは、水酸化物または各酸化物の表面電荷および対イ
オン等の調整によってコロイド化され、処理液中に安定
して分散される。このような酸化物ゾルには、耐食性お
よび塗料密着性を向上させる作用がある。酸化物ゾルの
量は、固形分として1から60g/l の範囲内に限定すべき
である。酸化物ゾルの量が1g/l 未満では、上述した効
果が得られず、一方、酸化物ゾルの量が60g/l を超える
と、酸化物粒子がクロメート被膜から剥離しやすくな
り、塗料密着性が劣化する。酸化物ゾルには、その粒子
径が小さいものほど、クロメート被膜に優れた耐食性を
付与し、その粒子径が大きいものほど、クロメート被膜
に優れた塗料密着性を付与する傾向がある。従って、粒
子径の大きい酸化物ゾルと粒子径の小さい酸化物ゾルと
を混合して使用することが有効である。しかしながら、
粒子径が大きすぎる酸化物ゾルは、処理液中における分
散安定性を劣化させる。従って、50nm以下の粒子径の酸
化物ゾルを使用することが好ましい。
【0023】(6) Cl- ,F - ,BF4 - , SiF6 2-およびNO
3 - のうちの少なくとも1つ:Cl- ,F - ,BF4 - , Si
F6 2-およびNO3 - には、メッキ被膜の表面を均一に溶解
し、均質なクロメート被膜を形成する作用がある。特
に、溶融メッキ法等によって形成された厚い酸化被膜を
有するメッキ被膜や、合金元素を多量に含有し、活性点
が不均一なメッキ被膜に対して有効に作用する。従っ
て、この発明においては、必要に応じ、Cl- ,F - ,BF
4 - , SiF6 2-およびNO3 - のうちの少なくとも1つを、
クロメート処理液中に含有させる。Cl- ,F - ,B
F4 - , SiF6 2-およびNO3 - のうちの少なくとも1つの
量は、0.01から0.1 グラムイオン/lの範囲内に限定す
べきである。Cl- ,F - ,BF4 -, SiF6 2-およびNO3 -
のうちの少なくとも1つの量が、0.01グラムイオン/l
未満では、上述した効果が得られない。一方、0.1 グラ
ムイオン/lを超えると、メッキ表面が過剰に溶解され
る結果、耐食性が劣化する。
【0024】(7) 添加剤:操業の安定性を向上させる
ために、クロメート処理液中に、以下に述べるような添
加剤を添加してもよい。 電解処理時における被処理
界面でのpH変動を抑制し、安定したクロメート被膜を形
成するための、ホウ酸塩、リン酸塩およびフタル酸塩等
のpH緩衝剤、 アンモニウム、アルカリ金属の硫酸塩
およびハロゲン化物等の電気伝導補助剤、 クロメー
ト処理液中の金属イオンを固定し、スラッジの生成を防
止するための、アミン類、カルボン酸類のキレート化合
物。
【0025】(8) その他:クロメート処理液中には、
クロメート処理されるべき亜鉛系メッキ鋼板または電極
から溶出する、Zn,Fe,Al,Mn,Co,Mo, Pb, Sn, Cuお
よびAg等のイオンが不可避的に混入する場合があるが、
これらは、総量で0.1 グラムイオン/l以下であれば問
題はない。そのほか、カチオンとして、SO4 2- の供給塩
または電気電導補助剤やpH緩衝剤等の添加剤に含まれる
Na,K等のアルカリ金属イオン、または、アンモニウムイ
オンを含有する場合もあるが、これらは、本発明の効果
に悪影響を及ぼさず、特に限定するものではない。
【0026】(9) クロメート処理液のpH値:クロメー
ト処理液のpH値は、1から5の範囲内に限定すべきであ
る。クロメート処理液のpH値が1未満では、クロメート
被膜の析出効率が低下する。更に、pH値が1未満では、
電解処理後に、クロメート被膜の表面に付着しているク
ロメート処理液によって、クロメート被膜が部分的に再
溶解する結果、耐食性および塗料密着性が劣化し、且
つ、クロメート被膜の外観が不均一になりやすくなる。
一方、クロメート処理液のpH値が5を超えると、クロメ
ート処理液の安定性が低下して、処理液中に沈殿物が発
生しやすくなる。なお、pH値の調整は、クロメート処理
液中に、硫酸やアルカリ金属水酸化物等を添加すること
によって行うことができる。
【0027】(10) クロメート処理液の温度:クロメー
ト処理液の温度は、30から70℃の範囲内に限定すべきで
ある。クロメート処理液の温度が30℃未満では、処理液
中に未溶解物が生成しやすく、且つ、電気伝導度が低下
する。一方、クロメート処理液の温度が70℃を超える
と、電解処理後に、クロメート被膜の表面に付着した処
理液が直ちに乾燥する結果、ロールとの接触等によっ
て、クロメート被膜の外観が著しく劣化する問題が生ず
る。
【0028】(11) 陰極電解の電気量 クロメート処理のための陰極電解時における電流密度と
処理時間即ち電気量を変えることによって、クロメート
被膜の付着量を制御することができる。電気量は、0.5
から40C/dm2 の範囲内に限定すべきである。電気量が0.
5 C/dm2 未満では、クロメート被膜が均一に生成され
ず、所望の品質特性が得られない。一方、電気量が40C/
dm2 を超えると、クロメート被膜が過剰に厚く形成さ
れ、白色度の低下を招いて外観が劣化する。陰極電解の
電流密度は、0.2 から40A/dm2 の範囲内とすることが望
ましい。電流密度が0.2 A/dm2 未満または40A/dm2 超で
は、クロメート被膜の析出効率の低下を招く問題が生ず
る。
【0029】この発明のクロメ−ト処理が施される亜鉛
系メッキ鋼板としては、電気メッキ法、溶融メッキ法、
蒸着メッキ法、イオンプレーティング法等によってメッ
キ被膜が形成された各種亜鉛系メッキ鋼板、例えば、Zn
メッキ鋼板、Zn-Ni 系、Zn-Fe 系、Zn-Mn 系、Zn-Al
系、Zn-Cr 系等の亜鉛合金メッキ鋼板または亜鉛複合メ
ッキ鋼板、または、上記、Zn、Zn-Ni 、Zn-Fe 、Zn-Mn
、Zn-Al 、Zn-Cr 等の亜鉛系メッキ被膜中に、金属酸
化物、ポリマー、またはクロム酸バリウム等の不溶性塩
を分散させたいわゆる分散亜鉛メッキ鋼板等を使用する
ことができる。
【0030】この発明の方法により、クロメ−ト被膜が
形成されたクロメ−ト処理亜鉛系メッキ鋼板は、水洗し
そして乾燥したままの状態で、無塗装用鋼板または塗装
下地用鋼板として使用することができるが、必要に応じ
て、この鋼板に一般に行われているクロメ−トのシーリ
ング処理または有機複合処理液による後処理を施しても
よい。次に、この発明を、実施例により、比較例と対比
しながら更に詳述する。
【0031】
【実施例】
実施例1 電気メッキ法によって、その表面上に20g/m2の量の亜鉛
メッキ被膜が形成された亜鉛電気メッキ鋼板に対し、表
1および表2に示すこの発明の範囲内の成分組成、pH値
および温度を有するクロメート処理液を使用し、この発
明の範囲内の下記電解条件で陰極電解処理を施して、亜
鉛メッキ被膜の上にクロメ−ト被膜を形成した。次い
で、これを水洗したのち乾燥して、表1および表2に示
す本発明供試体No. 1〜23を調製した。 電流密度 : 10 A/dm2 処理時間 : 1.0 秒 電気量 : 10 C/dm2
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】比較のために、上記亜鉛電気メッキ鋼板に
対し、表1および表2に併せて示す成分組成、pH値およ
び温度の何れかが本発明の範囲外のクロメート処理液を
使用し、上記と同じ条件で、陰極電解処理を施して、亜
鉛メッキ被膜の上にクロメート被膜を形成し、表1およ
び表2に併せて示す比較用供試体No. 1〜14を調製し
た。
【0035】実施例2 電気メッキ法によって、その表面上に20g/m2の量の亜鉛
メッキ被膜が形成された亜鉛電気メッキ鋼板に対し、下
記に示す、この発明の範囲内の成分組成を有するクロメ
ート処理液を使用し、表3に示すこの発明の範囲内の電
解処理条件で陰極電解処理を施して、亜鉛メッキ被膜の
上にクロメート被膜を形成した。次いで、これを水洗し
た後、乾燥して、表3に示す本発明供試体No. 24〜33を
調製した。 Cr6++Cr3+:10 g/l ( Cr3+ / 全Cr: <0.05 ) Mg2+ :10 g/l Ni2+ : 3 g/l SO4 2- :40 g/l SiO2 :固形分として10g/l
【0036】比較のために、上記亜鉛電気メッキ鋼板に
対し、上記と同じ成分組成のクロメート処理液を使用
し、表3に併せて示すこの発明の範囲外の電解条件で陰
極電解処理を施して、亜鉛メッキ被膜の上にクロメート
被膜を形成し、表3に併せて示す比較用供試体No. 15〜
20を調製した。
【0037】
【表3】
【0038】実施例3 溶融メッキ法によって、その表面上に、55wt.%のAlおよ
び1.6 wt.%のSiを含有する75g/m2の量のZn−Al合金メッ
キ被膜が形成された亜鉛−アルミニウム合金溶融メッキ
鋼板に対し、下記に示すこの発明の範囲内の成分組成、
pH値および温度を有するクロメート処理液を使用し、そ
して、この発明の範囲内の電解条件で陰極電解処理を施
して、Zn- Al合金メッキ被膜の上にクロメ−ト被膜を形
成した。次いで、これを水洗したのち乾燥して、本発明
供試体No. 34を調製した。比較のために、上記亜鉛−ア
ルミニウム合金溶融メッキ鋼板に対し、下記に示すこの
発明の範囲外の成分組成を有するクロメート処理液を使
用し、比較用供試体No. 21を調製した。
【0039】本発明供試体No. 34 クロメート処理液 全Cr : 20 g/l ( Cr3+ / 全Cr
<0.05) Mg2+ : 12 g/l Ni2+ : 5 g/l SO4 2- : 50 g/l SiO2 : 固形分として15g/l SiF6 2-: 0.03 ク゛ラムイオン/l pH値 : 2.2 温度 : 45℃ 陰極電解条件 電流密度 : 8 A/dm2 処理時間 : 1.5 秒 電気量 : 12 C/dm2
【0040】比較用供試体No. 21 クロメート処理液 全Cr : 20 g/l ( Cr3+ / 全Cr
<0.05) Mg2+ : 12 g/l Ni2+ : 5 g/l SO4 2- : 40 g/l SiO2 : 固形分として15g/l SiF6 2-: 0.12 ク゛ラムイオン/l pH値 : 2.2 温度 : 45℃ 陰極電解条件 電流密度 : 8 A/dm2 処理時間 : 1.5 秒 電気量 : 12 C/dm2
【0041】実施例4 溶融メッキ法によって、その表面上に、11wt.%のFeを含
有する45g/m2の量のZn- Fe合金メッキ被膜が形成された
亜鉛−鉄合金溶融メッキ鋼板に対し、下記に示すこの発
明の範囲内の成分組成、pH値および温度を有するクロメ
ート処理液を使用し、そして、この発明の範囲内の電解
条件で陰極電解処理を施して、Zn−Fe合金メッキ被膜の
上にクロメ−ト被膜を形成した。次いで、これを水洗し
たのち乾燥して、本発明供試体No. 35を調製した。比較
のために、上記亜鉛−鉄合金溶融メッキ鋼板に対し、下
記に示すこの発明の範囲外の成分組成を有するクロメー
ト処理液を使用し、比較用供試体No. 22を調製した。
【0042】本発明供試体No. 35 クロメート処理液 全Cr : 15 g/l ( Cr3+ / 全Cr
<0.05) Mg2+ : 4 g/l Ni2+ : 6 g/l SO4 2- : 30 g/l SiO2 : 固形分として15g/l pH値 : 3.0 温度 : 40℃ 陰極電解条件 電流密度 : 10 A/dm2 処理時間 : 0.8秒 電気量 : 8 C/dm2
【0043】比較用供試体No. 22 クロメート処理液 全Cr : 15 g/l ( Cr3+ / 全Cr
<0.05) Mg2+ : 4 g/l SO4 2- : 12 g/l SiO2 : 固形分として15g/l pH値 : 3.0 温度 : 40℃ 陰極電解条件 電流密度 : 10 A/dm2 処理時間 : 0.8秒 電気量 : 8 C/dm2
【0044】実施例5 電気メッキ法によって、その表面上に、12wt.%のNiを含
有する30g/m2の量のZn- Ni合金メッキ被膜が形成された
亜鉛−ニッケル合金電気メッキ鋼板に対し、下記に示す
この発明の範囲内の成分組成、pH値および温度を有する
クロメート処理液を使用し、そして、この発明の範囲内
の電解条件で陰極電解処理を施して、Zn- Ni合金メッキ
被膜の上にクロメ−ト被膜を形成した。次いで、これを
水洗したのち乾燥して、本発明供試体No. 36および37を
調製した。比較のために、上記亜鉛−ニッケル合金電気
メッキ鋼板に対し、下記に示すこの発明の範囲外の成分
組成を有するクロメート処理液を使用し、比較用供試体
No. 23および24を調製した。
【0045】本発明供試体No. 36 クロメート処理液 全Cr : 10 g/l ( Cr3+ / 全Cr
<0.05) Mg2+ : 11 g/l Ni2+ : 3 g/l SO4 2- : 40 g/l SiO2 : 固形分として10g/l pH値 : 3.3 温度 : 40℃ 陰極電解条件 電流密度 : 8 A/dm2 処理時間 : 1.0 秒 電気量 : 8 C/dm2
【0046】本発明供試体No. 37 クロメート処理液 全Cr : 15 g/l ( Cr3+ / 全Cr
0.12) Mg2+ : 15 g/l Ni2+ : 4 g/l SO4 2- : 50 g/l SiO2 : 固形分として10g/l Cl- : 0.01ク゛ラムイオン/l pH 値 : 3.5 温度 : 45℃ 陰極電解条件 電流密度 : 8 A/dm2 処理時間 : 1.0 秒 電気量 : 8 C/dm2
【0047】比較用供試体No. 23 クロメート処理液 全Cr : 15 g/l ( Cr3+ / 全Cr
0.12) Mg2+ : 0.6 g/l Ni2+ : 4 g/l SO4 2- : 8 g/l SiO2 : 固形分として10g/l Cl- : 0.01ク゛ラムイオン/l pH 値 : 3.5 温度 : 45℃ 陰極電解条件 電流密度 : 8 A/dm2 処理時間 : 1.0 秒 電気量 : 8 C/dm2
【0048】比較用供試体No. 24クロメート処理液
全Cr : 20 g/l ( Cr3+ / 全Cr 0.12) Mg2+ : 15 g/l Ni2+ : 4 g/l SO4 2- : 3 g/l Cl- : 0.01ク゛ラムイオン/l pH 値 : 3.0 温度 : 45℃ 陰極電解条件 電流密度 : 8 A/dm2 処理時間 : 1.0 秒 電気量 : 8 C/dm2
【0049】実施例6 電気メッキ法によって、その表面上に、11wt.%のNiと2
wt.%のCrとを含有する30g/m2の量のZn−Ni−Cr複合メッ
キ被膜が形成された亜鉛−ニッケル−クロム複合電気メ
ッキ鋼板に対し、下記に示すこの発明の範囲内の成分組
成、pH値および温度を有するクロメート処理液を使用
し、そして、この発明の範囲内の電解条件で陰極電解処
理を施して、Zn−Ni−Cr複合メッキ被膜の上にクロメ−
ト被膜を形成した。次いで、これを水洗したのち乾燥し
て、本発明供試体No. 38および39を調製した。比較のた
めに、上記亜鉛−ニッケル−クロム複合電気メッキ鋼板
に対し、下記に示すこの発明の範囲外の成分組成を有す
るクロメート処理液を使用し、比較用供試体No. 25を調
製した。
【0050】本発明供試体No. 38 クロメート処理液 全Cr : 12 g/l ( Cr3+ / 全Cr
<0.18) Mg2+ : 12 g/l Ni2+ : 5 g/l SO4 2- : 40 g/l SiO2 : 固形分として10g/l pH値 : 3.3 温度 : 40℃ 陰極電解条件 電流密度 : 10 A/dm2 処理時間 : 1.5 秒 電気量 : 15 C/dm2
【0051】本発明供試体No. 39 クロメート処理液 全Cr : 12 g/l ( Cr3+ / 全Cr
0.15) Mg2+ : 10 g/l Ni2+ : 3 g/l SO4 2- : 30 g/l SiO2 : 固形分として15g/l NO3- : 0.02ク゛ラムイオン/l pH 値 : 3.0 温度 : 40℃ 陰極電解条件 電流密度 : 12 A/dm2 処理時間 : 1.5 秒 電気量 : 18 C/dm2
【0052】比較用供試体No. 25 クロメート処理液 全Cr : 12 g/l ( Cr3+ / 全Cr
0.18) Mg2+ : 12 g/l Ni2+ : 5 g/l SO4 2- : 40 g/l pH 値 : 3.3 温度 : 40℃ 陰極電解条件 電流密度 : 10 A/dm2 処理時間 : 1.5 秒 電気量 : 15 C/dm2
【0053】このようにして調製した各供試体に、以下
に述べる試験を行った。 (1) 耐食性試験 供試体に対し、JIS-Z-2371 に規定された塩水噴霧試験
を施し、72時間経過後における白錆の発生面積を測定し
て、その結果を%によって示した。 (2) 塗料密着性試験 供試体の表面上に、市販のアルキッドメラミン系の塗料
を約30μm塗装して塗膜を形成した。次いで、塗装直後
の塗膜に1mm間隔で100 個の碁盤目状の刻み目を入れた
後、エリクセン試験機で7mm押し出し、次いで、押し出
し部の表面上に接着テ−プを貼りそして剥がした。その
結果、100 個の碁盤目状の刻み目のうち、剥離面積が50
% 未満の塗膜の数を、塗膜残存率(%) として評価した。 (3) 外観 供試体の外観を目視によって評価した。
【0054】上述した各供試体の試験結果を、表4〜6
に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】表4〜6から明らかなように、クロメート
処理液中の全Cr量がこの発明の範囲を外れて少ない比較
用供試体No. 1は、クロメート被膜の形成効率が低下す
る結果、色調が不均一になり、且つ、耐食性および塗料
密着性が不安定になった。Cr3+/全Cr比がこの発明の範
囲を超えて多い比較用供試体No. 2は、クロメート処理
液中のスラッジが増加する結果、灰色に変色し、且つ、
耐食性および塗料密着性が不安定になった。クロメート
処理液中にNi2+が含有されていない比較用供試体No.
3、および、Mg2+が含有されていない比較用供試体No.
4は、何れも耐食性および塗料密着性が悪く、比較用供
試体No. 4は、黄色に変色した。
【0059】クロメート処理液中のNi2+量が本発明の範
囲を外れて少ない比較用供試体No.5、および、Mg2+
が本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No. 6は、
何れも耐食性および塗料密着性が悪く、そして、比較用
供試体No. 6は、黄色に変色した。Ni2+/Mg2+比が本発
明の範囲を超えて多い比較用供試体No. 7、8、およ
び、Ni2+/Mg2+比が本発明の範囲を外れて少ない比較用
供試体No. 9は、何れも耐食性および塗料密着性が悪
く、比較用供試体No. 7、8は、黄色または茶色に変色
した。クロメート処理液中のSO4 2- 量が本発明の範囲を
外れて少ない比較用供試体No. 10は、処理液が経時的に
劣化し、外観、耐食性および塗料密着性が不安定であっ
た。
【0060】クロメート処理液中の酸化物ゾルの量が本
発明の範囲を外れて少ない比較用供試体No. 11は、耐食
性および塗料密着性が悪かった。酸化物ゾルの量が本発
明の範囲を超えて多い比較用供試体No. 12および13は、
クロメート被膜からの酸化物の剥離によって、耐食性お
よび塗料密着性が不安定であり、外観色調も不均一であ
った。クロメート処理液中に酸化物ゾルが含有されてい
ない比較用供試体No.14は、耐食性および塗料密着性が
悪かった。
【0061】クロメート処理液のpH値が本発明の範囲を
外れて少ない比較用供試体No.15 は、メッキ被膜の溶解
が生じ、クロメート被膜の形成効率が低下する結果、灰
色に変色し、耐食性および塗料密着性が不安定であっ
た。pH値が本発明の範囲を超えて多い比較用供試体No.1
6 は、処理液中に経時的にスラッジが増加し、クロメー
ト被膜の形成効率が低下して、耐食性および塗料密着性
が不安定であった。
【0062】クロメート処理液の温度が本発明の範囲を
外れて低い比較用供試体No. 17は、クロメート被膜の形
成効率およびクロメート処理液の電気伝導度が低下し
た。クロメート処理液の温度が本発明の範囲を超えて高
い比較用供試体No.18 は、クロメート処理後に乾きが発
生した結果、茶色に変色し、且つ、耐食性および塗料密
着性が不安定であった。陰極電解処理時の電気量および
電流密度が、本発明の範囲を外れて少ない比較用供試体
No.19 は、クロメート被膜の形成効率が低下し、耐食性
および塗料密着性が悪く、且つ、淡黄色に変色した。陰
極電解処理時の電気量が、本発明の範囲を超えて多い比
較用供試体No.20 は、クロメート被膜量が過多になり、
耐食性および塗料密着性が悪く且つ黄色に変色した。
【0063】クロメート処理液中のSiF6 2-が本発明の範
囲を超えて多い比較用供試体No.21は、メッキ被膜の溶
解が生じた結果、灰色に変色し、且つ、耐食性および塗
料密着性が不安定であった。クロメート処理液中にNi2+
が含有されていない比較用供試体No.22 は、耐食性およ
び塗料密着性が悪かった。クロメート処理液中のMg2+
およびSO4 2- 量が本発明の範囲を外れて少ない比較用供
試体No.23 は、茶色に変色し且つ耐食性および塗料密着
性が悪かった。クロメート処理液中のSO4 2- 量が本発明
の範囲を外れて少ない比較用供試体No.24 は、処理液が
経時的に劣化し、色調が不均一に黄色に変色し、且つ、
耐食性および塗料密着性が不安定であった。クロメート
処理液中に酸化物ゾルが含有されていない比較用供試体
No. 25は、耐食性および塗料密着性が悪かった。
【0064】これに対し、本発明供試体No. 1〜39は、
外観、耐食性および塗料密着性のすべてにおいて優れて
いた。
【0065】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
亜鉛系メッキ鋼板に、優れた耐食性および塗料密着性、
ならびに、白色度の高い均一な色調の外観を付与するこ
とができる、工業上有用な効果がもたらされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 豊文 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式 内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 その少なくとも1つの表面上に亜鉛メッ
    キ被膜または亜鉛系合金メッキ被膜が形成された、亜鉛
    系メッキ鋼板に対し、クロメート処理液中において陰極
    電解処理を施すことにより、前記亜鉛メッキ被膜または
    亜鉛系合金メッキ被膜の上にクロメート被膜を形成する
    ことからなる、亜鉛系メッキ鋼板のクロメート処理方法
    において、 前記クロメート処理液として、 Cr6++Cr3+( 全クロム量) :5〜 70g/l、 Mg2+ :1〜 40g/l、 Ni2+ :0.5 〜 20g/l、 SO4 2- :10〜100g/l、および、 Al2O3,Sb2O5,SiO2,SnO2, TiO2, および ZrO2のうちの
    少なくとも1つの酸化物ゾル :固形分
    として1〜60g/l 、 を含有し、そして、 Cr3+/全Cr量 重量比 :0.5 以下、 Ni2+/Mg2+ 重量比 :0.05〜2 である、pH値が1〜5であって、30〜70℃の温度の処理
    液を使用し、0.5 〜40C/dm2 の電気量によって、前記亜
    鉛系メッキ鋼板に対し陰極電解処理を施すことを特徴と
    する、亜鉛系メッキ鋼板のクロメート処理方法。
  2. 【請求項2】 前記クロメート処理液は、Cl- ,F -
    BF4 - , SiF6 2-およびNO3 - のうちの少なくとも1つ
    を、更に、0.01〜0.1 グラムイオン/l含有している、
    請求項1記載の方法。
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