JPH05193097A - グラビア用印刷ロール - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 金属製円筒体１に、接着層２を介して繊維強
化樹脂製円筒体３が内嵌されロール本体を構成する。そ
して、このロール本体の両末端の開口部には、それぞれ
フランジ４が取り付けられている。 【効果】 従来の金属製のグラビア用印刷ロールに比べ
て軽量となる。しかも、ロール最外周面は金属製である
ために、金属メッキ処理を問題なく行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、軽量化されたグラビ
ア用印刷ロールに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】一般に、グラビア用印刷ロールは、例え
ばつぎのようにして製造される。すなわち、所定の寸法
の鉄等の金属製パイプの両端に、印刷機に固定させるた
めの金属製フランジまたは端板を取り付けたロールを作
製する。つぎに、このロールの外表面に厚み２０μｍ程
度の銅メッキを施し、この銅メッキ部分をエッチング処
理することにより印刷用の所定の図柄を形成する。さら
に、エッチング処理した銅メッキ部分を外傷等から保護
するために、銅メッキ部分上にクロムメッキを施すこと
により図５に示すようなグラビア用印刷ロールが製造さ
れる。図において、８は金属製パイプ、９は金属製フラ
ンジである。

【０００３】しかし、上記グラビア用印刷ロールは、本
体部分が金属製のために重い。例えば、直径１７５ｍｍ
×厚み７ｍｍの金属製パイプの両端に厚み１２ｍｍの端
板が取り付けられたグラビア用印刷ロールの重量は１４
ｋｇとなる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記のように重量が重
いという点に対する改良案として、例えば、金属製パイ
プに代えて繊維強化樹脂（ＦＲＰ）製パイプを用いてグ
ラビア用印刷ロールを作製するということも検討されて
いる。しかしながら、上記ＦＲＰ製パイプを用いること
は下記の点で工業生産的に困難である。すなわち、パイ
プ表面に施すエッチング用の銅メッキは、厚み２０μｍ
程度であり、メッキ面に要求される寸法精度と面精度は
それぞれ２０μｍ以下であるが、樹脂を一成分とするＦ
ＲＰでは、パイプ形状の成形工程のみでは上記精度を付
与することは非常に困難である。したがって、成形工程
の後に切削，研磨等の後加工工程を経由しなければなら
ず製造工程が煩雑となる。また、ＦＲＰのもう一方の成
分である補強材、例えばガラス繊維の場合は、このガラ
ス繊維の直径が１０〜２０μｍであり、要求される面精
度を具現化するのは困難である。さらに、ＦＲＰ製パイ
プと銅メッキとの密着強度、または銅メッキとクロムメ
ッキとの密着強度は、金属，例えば鉄と銅メッキとの密
着強度より低く、印刷用ロールに要求される耐久性に劣
るという問題が生じる。

【０００５】この発明は、このような事情に鑑みなされ
たもので、軽量化の図られたグラビア用印刷ロールの提
供をその目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、この発明のグラビア用印刷ロールは、金属製円筒体
に繊維強化樹脂製円筒体が内嵌されたロール本体部分
と、上記ロール本体部分の両末端の開口部に取り付けら
れたフランジとを備えたグラビア用印刷ロールであっ
て、上記金属製円筒体と繊維強化樹脂製円筒体とが接着
層を介して一体化されているという構成をとる。

【０００７】

【作用】すなわち、この発明は、ロール本体部分が、金
属製円筒体と、接着層を介して内嵌され設けられる繊維
強化樹脂製円筒体との２層構造からなる。このため、従
来と同様の形状および厚みのグラビア用印刷ロールと比
べて軽量となる。しかも、ロールの最外周面は金属製円
筒体であるために、面精度を具現化することが可能であ
りエッチング用の金属メッキ処理を行うことができる。

【０００８】つぎに、この発明を実施例に基づいて説明
する。

【０００９】

【実施例】この発明のグラビア用印刷ロールの一実施例
を図１に示す。１は金属製円筒体であり、この金属製円
筒体１の内部には、接着層２を介してＦＲＰ製円筒体３
が内嵌されてロール本体を構成している。そして、この
ロール本体の両末端の開口部には、それぞれフランジ４
が取り付けられている。なお、上記フランジ４の中心部
には軸体を貫通させるための穴５が設けられている。

【００１０】上記金属製円筒体１形成材料としては、従
来グラビア用印刷ロールに用いられているもの、例えば
鉄，ステンレス等があげられ、寸法精度および平面精度
を具現化できるものであれば特に限定するものではな
い。そして、金属製円筒体１の肉厚は、一般に１〜３ｍ
ｍの範囲が好ましい。

【００１１】上記ＦＲＰ製円筒体３の形成材料である繊
維強化樹脂は、通常、樹脂成分と繊維補強材を用いて得
られる。そして、上記樹脂成分としては、エポキシ樹
脂，ポリエステル，フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が
好ましくあげられるが、熱可塑性樹脂を用いても差し支
えない。なお、接着層２の形成材料として熱発泡性シー
トを用いる場合、その加熱工程時の温度に耐えうるもの
を用いるものが好ましい。また、上記繊維補強材として
は、一般にガラス繊維，炭素繊維，ポリアミド繊維等が
あげられるが、補強効果が得られるものであれば特に限
定するものではない。さらに、上記ＦＲＰ製円筒体３の
肉厚は、軽量化という観点から２〜８ｍｍの範囲が好ま
しい。

【００１２】上記金属製円筒体１とＦＲＰ製円筒体３の
両者間に設けられ、両者を接着する接着層２の形成材料
としては、接着剤，加熱発泡性接着シート等があげられ
るが、上記２つの円筒体の接着作業性という観点から特
に加熱発泡性接着シートを用いるのが好ましい。上記接
着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤等の従来公知のも
のがあげられ、金属製円筒体１とＦＲＰ製円筒体３の両
者を接着することが可能なものであれば特に限定するも
のではない。また、上記加熱発泡性接着シートは、樹脂
成分および補強材とを用いてこれを所定のシート状に成
形したものである。樹脂成分としては、接着性，強度，
耐熱性の観点から、エポキシ系，ポリエステル系，フェ
ノール系等の熱硬化性樹脂が好ましくあげられるが、熱
可塑性樹脂やゴム系のもの等を用いてもよい。上記補強
材としては、各種の有機繊維，無機繊維，金属繊維等が
あげられる。上記加熱発泡性接着シートにおける発泡倍
率は、１．５〜５倍が好適にあげられるが、軽量化とい
う観点から２〜３倍が特に好ましい。さらに、上記加熱
発泡性接着シートの厚み（ｔ）は、下記の数式により算
出される。

【００１３】

【数１】 〔上記数式において、ｄ₁ は金属製円筒体１の内径で、
ｄ₂ はＦＲＰ製円筒体３の外径であり、ｎはシート自体
の有する発泡倍率である。〕

【００１４】上記フランジ４の形成材料としては、上記
ＦＲＰ製円筒体３と同様のものを用いるのが好ましい。
また、特に加工精度を要求する場合には、金属材料を用
いても差し支えない。

【００１５】このようなグラビア用印刷ロールは、例え
ばつぎのようにして製造される。すなわち、まずＦＲＰ
製円筒体３外周面に接着剤を塗布するか、もしくは加熱
発泡性接着シートを巻き付ける。そして、上記ＦＲＰ製
円筒体３を金属製円筒体１内に挿入する。そして、これ
を所定の温度で加熱して金属製円筒体１とＦＲＰ製円筒
体３を接着し両者を一体化してロール本体を作製する。
ついで、上記ロール本体の両末端にフランジ４を取り付
け固定する。この後、従来の方法と同様に、金属製円筒
体１の外周面に銅メッキ等の金属メッキを施して、上記
金属メッキ部分をエッチング処理して所定の図柄を作製
する。そして、この金属メッキ部分上にクロムメッキ等
による保護層を形成することによりグラビア用印刷ロー
ルが製造される。

【００１６】このようにして得られるグラビア用印刷ロ
ールは、ロール本体が金属製円筒体１とＦＲＰ製円筒体
３の２層構造からなり、従来の金属製円筒体のみからな
るものと比較して軽量化が図られている。

【００１７】つぎに、具体例について従来例と併せて説
明する。

【００１８】〔具体例１〕図２はこの発明の具体例の断
面図である。１は外径１７５ｍｍ×内径１７１ｍｍ×長
さ３７０ｍｍの鉄製パイプであり、この鉄製パイプ１の
内周面には、ガラス繊維補強エポキシ系発泡接着性シー
トを加熱して形成される接着層２ａを介して外径１６７
ｍｍ×内径１６１ｍｍ×長さ３５８ｍｍのガラス繊維補
強エポキシ樹脂製パイプ３が設けられロール本体（複合
パイプ）を構成している。そして、このロール本体の両
末端の開口部には、それぞれ直径１６１ｍｍ×厚み１２
ｍｍのガラス繊維補強エポキシ樹脂製フランジ４が取り
付けられている。なお、上記ガラス繊維補強エポキシ樹
脂製フランジ４の中心部には軸体を貫通させるための穴
が設けられている。また、５は鉄製パイプ１とガラス繊
維補強エポキシ樹脂製パイプ３の位置決め用スペーサー
リングである。

【００１９】上記図２に示すグラビア用印刷ロールは、
つぎのようにして作製した。すなわち、まずガラス繊維
補強エポキシ樹脂製パイプ３外周面に発泡倍率が３倍で
厚み０．７ｍｍのガラス繊維補強エポキシ系発泡接着性
シートを一層巻き付けた。そして、図３に示すように、
上記ガラス繊維補強エポキシ系発泡接着性シート６の巻
き付けられたガラス繊維補強エポキシ樹脂製パイプ３を
鉄製パイプ１内に挿入した。ついで、上記ロール本体
（複合パイプ）の両末端に、それぞれ鉄製パイプ１とガ
ラス繊維補強エポキシ樹脂製パイプ３の位置決め用スペ
ーサーリング５を取り付け、さらにガラス繊維補強エポ
キシ樹脂製フランジ４を取り付け固定した（図４参
照）。そして、これを１４０℃で１時間加熱してガラス
繊維補強エポキシ系発泡接着性シートを発泡させて鉄製
パイプ１とガラス繊維補強エポキシ樹脂製パイプ３を接
着し両者を一体化してロール本体（複合パイプ）を作製
した。このとき、上記加熱によりガラス繊維補強エポキ
シ系発泡接着性シートは厚み０．７ｍｍから２ｍｍに発
泡膨張した。この後、従来の方法と同様に、鉄製パイプ
１の外周面に銅メッキを施して銅メッキ部分をエッチン
グ処理して所定の図柄を作製した。そして、この銅メッ
キ部分上にクロムメッキからなる保護層を形成すること
によりグラビア用印刷ロールが得られた。このグラビア
用印刷ロールの総重量は、ロール本体（複合パイプ）部
分が４．４ｋｇで、フランジが０．９ｋｇの５．３ｋｇ
である。

【００２０】〔具体例２〕接着層２の形成材料としてガ
ラス繊維補強エポキシ系発泡接着性シートに代えてエポ
キシ系接着剤を用い、これをガラス繊維補強エポキシ樹
脂製パイプ３外周面に塗布した。また、鉄製パイプ１の
寸法は、外径１７５ｍｍ×内径１７１ｍｍ×長さ３７０
ｍｍで、ガラス繊維補強エポキシ樹脂製パイプ３の寸法
は、外径１７０ｍｍ×内径１６１ｍｍ×長さ３５８ｍｍ
である。それ以外は上記具体例１と同様にしてグラビア
用印刷ロールを製造した。このグラビア用印刷ロールの
総重量は、ロール本体（複合パイプ）部分が４．９ｋｇ
で、フランジが０．９ｋｇの５．８ｋｇである。

【００２１】〔従来例〕外径１７５ｍｍ×内径１６１ｍ
ｍ×長さ３７０ｍｍの鉄製パイプの両端開口部に、それ
ぞれ直径１６１ｍｍ×厚み１２ｍｍの鉄製フランジを取
り付けた。そして、鉄製パイプの外周面に銅メッキを施
して銅メッキ部分をエッチング処理して所定の図柄を作
製した。そして、この銅メッキ部分上にクロムメッキか
らなる保護層を形成することによりグラビア用印刷ロー
ルを製造した。このグラビア用印刷ロールの総重量は、
鉄製パイプが１０．８ｋｇで、鉄製フランジが３．９ｋ
ｇの１４．７ｋｇである。

【００２２】上記具体例１および２品と従来例品のグラ
ビア用印刷ロールを比較してみると、総重量において、
具体例１および２品は従来例品の半分以下である。

【００２３】

【発明の効果】以上のように、この発明のグラビア用印
刷ロールは、ロール本体部分が、金属製円筒体と、接着
層を介して内嵌され設けられる繊維強化樹脂製円筒体と
の２層構造からなり、かつ両末端開口部には繊維強化樹
脂製フランジが取り付けられている。このため、従来と
同様の形状および厚みのグラビア用印刷ロールと比べて
軽量化が可能となる。しかも、ロールの最外周面は金属
製円筒体であるために、必要な面精度を具現化すること
が可能でありエッチング用の金属メッキ処理を問題なく
行うことができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例を示す断面図である。

【図２】この発明の一具体例を示す断面図である。

【図３】ロール本体部の製造工程の説明図である。

【図４】加熱前のグラビア用印刷ロールの状態を示す断
面図である。

【図５】従来のグラビア用印刷ロールを示す断面図であ
る。

【符号の説明】

１ 金属製円筒体 ２ 接着層 ３ ＦＲＰ製円筒体 ４ フランジ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 先崎 寛 大阪府茨木市下穂積１丁目１番２号 日東 電工株式会社内

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属製円筒体に繊維強化樹脂製円筒体が
   内嵌されたロール本体部分と、上記ロール本体部分の両
   末端の開口部に取り付けられたフランジとを備えたグラ
   ビア用印刷ロールであって、上記金属製円筒体と繊維強
   化樹脂製円筒体とが接着層を介して一体化されているこ
   とを特徴とするグラビア用印刷ロール。
2. 【請求項２】 接着層が、加熱発泡性接着シートを加熱
   することによって形成されている請求項１記載のグラビ
   ア用印刷ロール。