JPH05186881A - 潤滑性の優れたアルミニウム系材料及びその製造方法 - Google Patents

潤滑性の優れたアルミニウム系材料及びその製造方法

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JPH05186881A
JPH05186881A JP1941792A JP1941792A JPH05186881A JP H05186881 A JPH05186881 A JP H05186881A JP 1941792 A JP1941792 A JP 1941792A JP 1941792 A JP1941792 A JP 1941792A JP H05186881 A JPH05186881 A JP H05186881A
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aluminum
particles
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rolling
hard particles
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JP1941792A
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Shinichi Arai
信一 新井
Noboru Yamamoto
昇 山本
Yasuo Tanizawa
康雄 谷澤
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Nihon Parkerizing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 粒子の径(d)が0.01〜20μmであ
り、かつビッカ−ス硬度がアルミニウム系素地材料の
1.50倍以上である硬質粒子の一種もしくは二種以上
が該材料の表面に食い込んだ状態で分散分布しており、
食い込み深さ(D)が(d)の0.5〜1.0倍であ
り、かつ該粒子間の距離(L)が(d)の2〜100倍
であることを特徴とするアルミニウム系材料。 【効果】 この材料の使用により、プレス成形性の向
上、潤滑システムの簡素化、製品外観の向上等の優れた
効果が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はアルミニウム系材料の表
面改質方法に係わり、特にその材料の成形加工の際に優
れた潤滑性を発揮するアルミニウム系材料並びに該材料
の製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】近年、アルミニウム系の材料は軽量の割に
強度が高く、また耐食性が良好である等の特性が見直さ
れ、各種車両、家電製品あるいは容器等の部材として需
要が拡大しつつある。アルミニウム系材料は大別して、
軟質なため構造用部材には適さないが線や箔にして導電
材あるいは梱包材として使われる純アルミニウム系、ジ
ュラルミンとして知られているAl−Cu−(Mn)
系、飲料缶の胴部等に使われるAl−Mn−(Mg)
系、鍛造及び鋳造用に適したAl−Si系、缶の蓋や構
造用部材としてAl−MgーMn系、建材や車両用等に
AI−Mg−Si系あるいは自動車のバンパー用等とし
て強度を高くしたAl−Zn−(Cu)系等に分類さ
れ、広い分野において利用が拡大しつつある。
【0003】こうしたアルミニウム系材料はその製造工
程において、あるいは用途に応じた成形加工品とするた
めに、熱間、温間あるいは冷間での成形加工を受ける
が、素地が軟質であるというアルミニウム本来の特性の
ため、成形加工時にロールもしくは金型等に凝着あるい
は焼き付きを生じ易いという欠点を有する。
【0004】このような凝着あるいは焼き付きを防止す
るためには被加工材料と加工治具との間の摩擦係数
(μ)を小さくすることが重要であり、加工材料として
は例えば前述のAl−Mn−(Mg)系(JIS H
4000に制定されている3000番台)の合金が知ら
れている。尚、このアルミニウム合金の潤滑性が純アル
ミニウム系あるいは他の合金系よりも優れているのは母
材中に分散している硬いAl−Mn系の金属間化合物粒
子によるものであると言われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年に
おけるアルミニウム系材料の用途及び需要の拡大、更に
は作業環境等の環境対策等の諸々の背景によって材料組
成および成形加工性等に対する要求が一段と多様化ある
いは高度化しつつあり、焼付きあるいは凝着等による加
工割れ、加工製品の表面品質の劣化あるいは金型の損傷
等の問題が生じることが多くなりつつあるのが現状であ
る。
【0006】こうした問題を解決する方策として、特開
平1−11026号公報あるいは特開平2−10775
1号公報においては冷間圧延ロール等を用いて特定した
凹凸粗面をアルミニウム系材料の板材に転写することに
よって潤滑性を改善する方法、また特開昭63−188
428号公報にはエッチングによって微細な凹凸を有す
る板表面とする方法が提案されている。これらの方法は
アルミニウム系材料の表面を粗面化することによって潤
滑剤を保持し易くして、潤滑性の改善を図ろうとするも
のである。
【0007】しかしながらアルミニウム系材料の素地は
極めて軟質なため粗面化した表面は軽度の塑性加工で平
滑化して潤滑油を凹部に保持する機能が失われるので潤
滑性の改善効果の持続性は乏しい。更に、アルミニウム
系材料は焼付き現象を誘発し易いMgを含有することが
多いため加工荷重が集中する凸部での発熱と相挨って潤
滑状態によっては逆に凸部を起点とした焼付きあるいは
かじりを生じる場合がある。
【0008】上述の提案の一つの問題点は成形加工の際
に金型等との接触点となるアルミニウム材料の凸部がむ
しろ凹部よりも焼付き現象が一段と生じ易いMgの濃化
した表面層を有していることによるものと想定される。
したがって、素材成分面での制約を受けることがなく、
換言すると成分面での潤滑性あるいは成形加工性への配
慮が軽減できることから合金設計上の自由度が高く、更
に量産化が容易な潤滑性の優れたアルミニウム材料の更
なる開発がアルミニウムの成形加工に携わる関連産業分
野から強く期待されているのが実状である。
【0009】
【課題を解決するための手段】こうした問題にも配慮し
た潤滑性の改善策として、本発明者らは凸部をAl−M
n系の硬い金属間化合物によって形成する方法を特願平
3−255975号によって提案している。しかしなが
ら、この方法では未だ適用できるアルミニウム系材料に
成分面での制約があり、また母材中のAl−Mn系金属
間化合物を表面に浮き出させるためのエッチング処理に
手間が掛かるという問題を有しているのである。
【0010】前記の課題を解決するため、本発明者らは
更にアルミニウム系材料の表面層に硬質の粒子(例えば
前述のAl−Mn系の金属間化合物等)を分散した状態
で該材料表面に食い込ませる方法について種々の検討を
行った。その結果、硬質粒子をアルミニウムの母材中
(添加成分)からではなく、発想を転換して外部からア
ルミニウム系材料の表面層に食い込ませれば両者の成分
組成面等の制約の無い合理的な解決が図れるとの結論に
達し、移植の方法および好適分散状態等に関して更に詳
細に検討して本発明を成するに至ったものである。
【0011】すなわち、本発明の請求項1は、金属、金
属間化合物、金属の酸化物、金属の炭化物、金属の窒化
物もしくはほう化物から選ばれた一種または二種以上の
硬質粒子であって、粒子径(d)が0.01〜20μm
であり、かつビッカース硬度がアルミニウム系素地材料
の1.50倍以上である硬質粒子が、該材料の表面に食
い込んだ状態で分散分布しており、且つ、その食い込み
深さ(D)がdの0.5倍以上1.0倍以下であり、ま
た粒子間距離(L)がdの2〜100倍であることを特
徴とする潤滑性の優れたアルミニウム系材料に関するも
のである。
【0012】本発明の請求項2は、金属、金属間化合
物、金属の酸化物、金属の炭化物、金属の窒化物もしく
はほう化物から選ばれた一種または二種以上の硬質粒子
であって、粒子径(d)が0.01〜20μmであり、
かつビッカース硬度がアルミニウム系素地材料の1.5
0倍以上である硬質粒子を、該材料の表面に塗布し、次
いで該アルミニウム系材料を圧延して該表面に硬質粒子
を食い込ませ、且つその食い込み深さ(D)をdの0.
5〜1.0倍となし、且つ該粒子の粒子間距離(L)を
dの2〜100倍とすることを特徴とする潤滑性の優れ
たアルミニウム系材料の製造方法に関するものである。
【0013】次に硬質粒子をアルミニウム材料表面に塗
布する方法については種々の方法が挙げられるが、順を
追って説明すると先ず該粒子を圧延潤滑液に対する体積
比で0.5〜80体積%含有する圧延潤滑液を媒体とし
てアルミニウム系材料の表面に塗布することであり、次
に該粒子を水もしくは有機溶剤を媒体として、もしくは
該粒子のままアルミニウム系材料の表面に均一に分散塗
布することが挙げられ、更に該粒子を有機高分子溶液に
対する体積比で0.5〜80体積%添加した有機高分子
溶液を媒体として、該アルミニウム材料の表面に乾燥後
の有機高分子皮膜の膜厚が0.05〜30μmとなるよ
うに塗布する方法等を挙げることができるが本発明にお
いてはそれらの塗布方法を限定するものではない。
【0014】
【作用】以下、本発明の作用についてさらに詳細に説明
する。本発明に供するアルミニウム系材料はその材料成
分および製造法上の何らの制約を受けるものではなく、
例えば純アルミニウム系もしくは各種アルミニウム合金
系、あるいは冷延材もしくは焼鈍材等に幅広く適用する
ことが可能であることが本発明の特筆すべき事項の一つ
として挙げられる。
【0015】図1は本発明の実施態様を説明するためア
ルミニウム系材料の断面を例示した図面であって、同図
において1はアルミニウム系材料、2は硬質粒子、dは
該粒子の粒子径、Dは食い込み深さ、Lは粒子間距離で
ある。本発明においてアルミニウム系材料の表面に食い
込ませる粒子は粒子径(d)が0.01〜20μm、ビ
ッカース硬度(Hv)がアルミニウム系素地材料の1.
50倍以上であることを要件とし、これらの粒子の一種
もしくは二種以上とするものであって、好ましい粒子と
しては金属、金属間化合物、金属の酸化物、金属の炭化
物、金属の窒化物もしくはほう化物等がある。
【0016】該粒子はアルミニウム系材料の成形加工の
際にアルミニウム素地が金型に直接接触するのを妨げ、
この間隙に潤滑油等の潤滑剤を保持し易くすることによ
って潤滑性を向上させる機能を有するものであって、い
わゆる加工荷重を支える接触点として作用する。ここで
dを上記のように特定したのはdが0.01μm未満で
は成形加工時に脱落し易いため潤滑効果の持続性が劣
り、一方、20μmを超えると潤滑性の改善効果が飽和
し、またアルミニウム系材料の表面層に容易に脱落しな
い程度にまで食い込ませるのが難しくなるという理由に
よるものである。
【0017】更に、該粒子のビッカース硬度がアルミニ
ウム系素地材料の1.50倍未満では成形加工の際にア
ルミニウム系素地材料と共に変形してしまい接触点とし
ての機能が発揮し難い上、該粒子自体が焼き付き等の原
因となり易いことも理由の1つである。上記の如き特性
を有し、且つ、耐食性等の面でアルミニウム系材料の素
地に悪影響を与えない硬質粒子としては金属、金属間化
合物、金属の酸化物、金属の炭化物、金属の窒化物もし
くはほう化物が好ましい。
【0018】金属としては特定するものでないがMn、
Si、Ti、Ni、Cr、Co、W、V、Mo、Nb、
Cu、Zn等が特に好ましいものとして挙げられ、次に
金属間化合物としてはMnAl6、NiAl3、TiA
l、TiAl3等が挙げられ、次に金属酸化物としては
MnO、SiO2、Si23、TiO、TiO2、Al2
3、Cr23、等が挙げられ、次に金属炭化物として
はSiC、TiC、WC等が挙げられ、次に金属窒化物
としてはSi34、TiN等が挙げられ、更にほう化
物としてはBN、B4C、TiB2、VB等が特に好まし
いものとして挙げることができる。なお、これらの金属
および化合物の純度は特に高純度である必要はなく硬度
等の面で要件を満足するものであれば本発明に適用する
上で何等の差し支えもない。
【0019】次に、本発明においてはアルミニウム系材
料の表面に食い込んでいる粒子の分散状態を特定の食い
込み状態にある粒子の粒子間距離(L)で表示して下記
のように限定するものである。ここで特定の食い込み状
態にある粒子とは食い込み深さ(D)が粒子径(d)の
0.5〜1.0倍である場合であり、分散状態をこのよ
うな食い込み状態にある粒子の粒子間距離(L)によっ
て特定する理由は、Dが0.5倍未満ではアルミニウム
系材料の成形加工時に脱落し易く、また1.0倍を超え
るとアルミニウム系材料の表面下よりも深く埋没してし
まい成形荷重を支える接触点としての役割が小さく、い
ずれにしてもDが0.5以上1.0以下の範囲から外れ
る粒子は潤滑性の改善寄与が小さいことによる。
【0020】圧延によって粒子を食い込ませる本発明の
製造方法においては実際にこの範囲を外れる粒子は極め
て希であり、分散状態の計測に当たっては実質的に全て
の食い込み粒子が対象となる。かかる特定範囲内の食い
込み状態にある粒子のLがdの100倍を超えると接触
点の数が少なすぎて被加工物と加工治具との間隙に潤滑
剤を保持する機能が低下し、一方、2倍未満では潤滑性
の改善効果が飽和しコスト面で不利となる。
【0021】なお、該粒子の好ましい分散状態、換言す
ると好適な粒子間距離Lは粒子径dおよび粒子の硬さあ
るいは該粒子を食い込ませた後の成形加工条件等に依存
するため一概に決め難いが、dが小さく、且つ粒子の硬
度が比較的低い場合は密に分散、即ちLを小さく、一
方、dが大きく粒子の硬度が高い場合には疎に分散、つ
まりLをより大きく、また食い込み後の成形加工率が比
較的に大きい場合には圧延時にLがそれだけ大きくなり
焼き付きを誘発するおそれがあるため、そのような高加
工率の場合は予めアルミニウム材料の表面に硬質粒子を
その分だけ密に分散しておく必要がある。
【0022】粒子径および粒子間距離をこのような範囲
に特定すると、粒子の分散密度は確率的に1cm2当り
103〜1011個程度になる。次に本発明の製造方法に
ついて説明する。先ずアルミニウム系材料の表面に塗布
する硬質粒子は上述のとおりであって、その硬質微粒子
を前記材料表面に塗布した後、該材料を圧延し、圧延に
より該微粒子を特定した条件のもとに前記材料表面に食
い込ませる方法に関するものである。
【0023】このように硬質微粒子が食い込んだアルミ
ニウム材料は成形加工の際に、食い込んだ硬質微粒子に
よりアルミニウム素地が金型に直接接触するのが回避さ
れ、この間隙に潤滑油等の潤滑剤を保持し易くなること
によって潤滑性を向上させる機能を有するものであっ
て、硬質微粒子はいわゆる加工荷重を支える接触点とし
て作用する。
【0024】また、該粒子のビッカース硬度をアルミニ
ウム系素地材料の1.50倍以上に特定した理由は、
1.50倍未満では潤滑性の改善効果が不足する他に圧
延によって該粒子をアルミニウム系材料の表面層に食い
込ませる際にアルミニウム系材料と一緒に容易に変形し
てしまい素地中に食い込ませ難いことによる。上記の如
き特性を有し、且つ、耐食性等の面でアルミニウム系材
料の素地に悪影響を与えない硬質粒子としてはすでに述
べた金属、金属間化合物、金属の酸化物、金属の炭化
物、金属の窒化物もしくはほう化物が好ましい。
【0025】また、形状においても特に制約されるもの
でなく、球形、立方体、直方体、多面体あるいは棒状
等、箔のような埋め込み難い形状を除いていずれの形状
でも良い。
【0026】次に、本発明の製造方法においてはかかる
該粒子をアルミニウム系材料の表面に塗布した後、圧延
によって該粒子を特定の分散状態となるようにアルミニ
ウム系材料の表面に食い込ませることを特徴とする。
【0027】次に、硬質粒子をアルミニウム系材料表面
に塗布する方法については種々の方法が挙げられるが、
順を追って説明すると先ず該粒子を圧延潤滑液に対する
体積比で0.5〜80%含有する圧延潤滑液を媒体とし
てアルミニウム系材料の表面に塗布することであり、次
に該粒子を水もしくは有機溶剤を媒体として、もしくは
該粒子のままアルミニウム系材料の表面に均一に分散塗
布することが挙げられ、更に該粒子有機高分子溶液に対
する体積比で0.5〜80%添加した有機高分子溶液を
媒体として、該アルミニウム系材料の表面に乾燥後の有
機高分子皮膜の膜厚が0.05〜30μmとなるように
塗布する方法等を挙げることができるが、本発明におい
てはそれらの塗布方法を限定するものではない。
【0028】以下にこれらの塗布方法等について順次詳
細に説明する。先ず、圧延潤滑液を媒体とする場合につ
いて説明する。この場合においては該粒子をアルミニウ
ム系材料の表面に食い込ませるための圧延は冷間圧延の
みならず温間圧延あるいは熱間圧延のいずれにおいても
実施することができ、使用する圧延潤滑液としても一般
用に使用されている鉱油系あるいはエステル系等のスト
レート油もしくはエマルション等が使用できる。
【0029】こうした圧延潤滑液に添加する硬質粒子の
含有量は体積比で0.5〜80体積%とすることが好ま
しい。体積%が0.5%未満ではアルミニウム系材料の
表面に食い込む粒子の数が不足してLがdの100倍を
超えて長くなることがあり潤滑性の改善効果が発揮し難
いか、あるいは一回の圧延では必要とする分散量を確保
し難く圧延回数を多くしなければならないことによる。
一方、体積%が80%を超えると潤滑性の改善効果が飽
和するとともにLがdの2倍未満となり該粒子が重なり
合ってアルミニウム素地に食い込まれ機械的性質に悪影
響を与えるおそれがあることによる。他方、こうした硬
質粒子の重なりを防ぐ観点から該粒子を潤滑液中に良く
分散させることも肝要であるが、このためには液の粘度
を通常の圧延潤滑液よりも多少高く、10〜60cSt
程度とするかあるいは該粒子の表面を親油性とするよう
に界面活性剤の種類およびその濃度を選定すれば良い。
なお、粒子の分散性に対する界面活性剤の効果は圧延潤
滑液組成あるいは該粒子の表面特性等の影響を受けるた
め一様ではないが、例えば有機アミンセッケン、エステ
ルあるいはポリオキシエチレン系等が使用できる。
【0030】該粒子を圧延潤滑液に添加した調合液をア
ルミニウム系材料に塗布する方法としてはロール側もし
くは該材料側に塗布する方法あるいは材料と圧延ロール
の間に吹き付けて塗布する等、直接もしくは間接的な方
法があるが、いずれにしても調合液を充分に攪はんしな
がら塗布することが肝要である。なお、使用する圧延ロ
ールのロール径および表面粗さが大きいほど該粒子がア
ルミニウム材料の素地に食い込み易くなるので、該粒子
の粒子径が大きくて食い込み難い場合にはなるべく表面
粗さが大きい大径のロールを使用することが望ましい。
【0031】該粒子のDをdの0.5倍以上1.0倍以
下とするのに必要な圧延圧下率は該粒子の粒子径、アル
ミニウム系材料の表面粗さあるいは圧延ロールの直径等
によって多少異なるが約0.2%以上の圧下率とすれば
良い。一方、上限の圧下率は圧下率を上げても該粒子が
アルミニウム系材料表面よりも深く食い込まれて(つま
りDがdを超えて)アルミニウム系材料内に埋没するこ
とは希であるので特に制限されるものでない。したがっ
て、該粒子をアルミニウム系材料の表面に食い込ませる
ための圧延は、例えば通常のアルミニウム板製造工程の
場合においては圧延工程に組み込んで同時に実施でき
る。この際、多段圧延工程の初期の圧延、例えば一段
目、で該粒子を食い込ませる場合、Lは圧延工程終了後
の表面積の増加を考慮して予めアルミニウム材料表面に
それだけ硬質粒子を密に分散させるように設定すること
が望ましい。しかし、食い込ませた後の二段目以降の圧
延工程での潤滑性の改善、例えば圧延焼き付き痕の発生
防止等、を主目的とする場合には分散状態は埋め込み時
点での表面積を基準にして設定すれば良い。
【0032】次に、該粒子を水もしくは有機溶剤を媒体
として、もしくは該粒子のままアルミニウム系材料の表
面に塗布する場合について詳述する。この場合には水も
しくは有機溶剤を媒体としてこれらの液中に該粒子をよ
く分散させてスプレーあるいはゴムロール等でアルミニ
ウム材料の表面に塗布した後、媒体を蒸発させて乾燥す
るか、あるいは圧延ロールの前面において該粒子を乾燥
した状態でアルミニウム系材料の表面に散布した後、乾
燥状態で圧延を施し該粒子をアルミニウム系材料の表面
に食い込ませる。
【0033】媒体とする有機溶剤としては例えば灯油、
キシレン、ミネラルスピリット、エタノールあるいはメ
チルエチルケトン等が使用できる。なお、水もしくは有
機溶剤を媒体とする場合、該粒子の添加量を体積比で
0.5〜80体積%とすればLをdの2〜100倍とす
ることができる。該粒子の液中での分散性を向上する方
法としては、水を媒体とする場合には該粒子の表面を親
水性とし、有機溶剤を媒体とする場合には主として親油
性とするように界面活性剤を添加すれば良い。なお、界
面活性剤の選定に際しては前述の圧延潤滑液の場合と同
様の配慮が必要であるが、例えば親水性とするためには
リノール酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエ
ーテル、高級アルコール硫酸エステル塩類等の界面活性
剤が使用できる。なお、水あるいは有機溶剤を媒体とす
る場合には液の粘性が低いため該粒子が沈降し易いの
で、塗布に際しては液を強制攪はんすることが望まし
い。水等の媒体を用いずにそのまま被塗布物に塗布する
場合には該粒子の凝集を防ぐために該粒子の表面に脂肪
酸有機アミンセッケン、ステアリン酸ナトリウム、リグ
ニンスルホン酸塩あるいは多塩基脂肪酸等の有機極性化
合物もしくは界面活性剤を吸着処理することが望まし
い。
【0034】分散塗布した該粒子をアルミニウム系材料
の表面に食い込ませるための圧延は乾燥状態で実施す
る。このように乾燥状態で圧延を行う理由は乾燥状態で
は該粒子が流動しないので目的とする部位に所望の粒子
を埋め込み易いことによる。このように該粒子を特定の
部位に食い込ませることができる点がこの方法の一つの
大きな特徴である。該粒子のアルミニウム系材料の表面
に食い込ませるために要する圧下率は0.2%程度以上
あれば良いが、無潤滑状態のため過大な圧下率とするこ
とは避け、上限は約20%程度とすることが望ましい。
したがって、該粒子を食い込ませた後に引き続き圧延を
行う場合には適宜圧延潤滑液を供給することが好まし
い。
【0035】次に、有機高分子溶液を媒体とする場合に
ついて説明する。この方法の特徴は有機高分子溶液を媒
体として、該粒子を分散させた有機高分子皮膜をアルミ
ニウム系材料の表面に形成して圧延し、該粒子だけを皮
膜から押しだしてアルミニウム系材料の表面に食い込ま
せることにある。
【0036】媒体とする有機高分子としてはカルボキシ
メチルセルロース、ポリビニルアルコール、各種デンプ
ン、あるいはタンパク質等の水溶性もしくは揮発性ワニ
ス、アセチルセルロース、マレイン酸化油、ポリエステ
ル樹脂、アルキド樹脂あるいはウレタン化油等の非水溶
性高分子、等が使用できる。特に好まし有機高分子とし
ては該粒子の分散、皮膜の乾燥・剥離が容易で安価であ
る等の特徴を有するカルボキシメチルセルロース等のパ
ルプを原料とする半天然繊維である水溶性のセルロース
を挙げることができる。一方、圧延後に残存している有
機高分子皮膜を他の目的、例えば完成品を運搬する際等
の取扱傷の発生防止あるいはプレス加工のための潤滑助
剤として利用したい場合には、圧延後に皮膜を除去する
必要はなく、むしろ目的によっては他の有機高分子を適
宜選定することもできる。
【0037】かかる有機高分子を水もしくは有機溶剤等
で溶解・希釈した溶液中に該粒子を体積比で0.5〜8
0体積%添加して溶液中に良く分散させる。該粒子の体
積%が0.5%未満では可能な限り塗布皮膜厚を厚くし
たとしても分散量が不足してLをdの100倍以下とす
ることが難しい場合がある。一方、体積%が80%以上
になると潤滑性の改善効果が飽和し、またLが短くなり
すぎて場合によっては粒子が重なり合ってアルミニウム
系材料の表面に食い込み機械的性質に悪影響を及ぼすお
それがある。好適な体積比は溶液の粘度あるいは塗布皮
膜厚によって異なり一概に決め難いが作業性等も考慮す
ると5〜50体積%程度とすることが望ましい。なお、
該粒子の溶液中での分散性を向上するため溶液の種類に
応じて該粒子の表面を親水性あるいは親油性とするよう
に界面活性剤を適量添加することが効果的である。
【0038】このようにして作成した調合液をアルミニ
ウム系材料に塗布する方法としてはロール塗布、カ−テ
ン・フロー塗布、スプレー塗布あるいは靜電塗布等の方
法があり、板材の場合には前者の3つの方法、異形部品
等の場合には後者の2つの方法が生産性あるいは取扱上
好ましい。塗布に際しては調合液を充分に攪はんしなが
ら乾燥後の膜厚が0.01〜30μmとなるように塗布
することが望ましい。乾燥条件は有機高分子、溶剤の種
類あるいは膜厚によって異なるが、水溶性セルロース系
の場合には80℃程度の温風を30秒程度吹き付けて水
分を蒸発させればよい。
【0039】有機高分子の乾燥後の膜厚が0.01μm
未満ではLをdの100倍以下にし難い場合があり潤滑
性の改善効果が発揮できないか、該粒子を材料のアルミ
ニウム材料の表面に物理的に保持する力が弱いため該粒
子が大きい場合に運搬等の取扱時に脱落するおそれがあ
る。一方、乾燥後の膜厚が30μmを超えると圧延時の
皮膜の変形抵抗力が大きくなり該粒子をアルミニウム系
材料の表面に圧延によって押し込み難くなり、該粒子が
皮膜中に残存してしまう場合がある。特に好ましい膜厚
は該粒子の粒子径、添加量、皮膜の変形抵抗(弾性率)
等諸々の条件にによって異なり一概に決め難いが、一つ
の目安は該粒子の直径dと同程度の膜厚とすることであ
る。
【0040】該粒子を食い込ませるための圧延は乾燥状
態あるいは潤滑液を供給した状態のいずれの条件で実施
してもよい。食い込みに要する下限の圧下率としては
0.5%程度必要とするが、上限はとくに問題となるも
のではなく所望の圧下率とすれば良い。しかし、食い込
ませた後の圧延においてそれ自身の潤滑性が余り期待で
きない有機高分子皮膜、例えばセルロース系を使用する
場合においては別途圧延潤滑液を使用することが望まし
い。
【0041】なお、食い込み後の圧延による圧下率が大
きい場合、Lはその後の圧延による表面積の増加分を考
慮して予め小さく(密に)設定することが望ましい。圧
延後は温水もしくは有機溶剤で材料の表面に残存してい
る該粒子が抜けた後の有機高分子皮膜を必要に応じて適
宜洗浄して除去する。以下に実施例によって本発明を更
に詳細に説明する。
【実施例】
【0042】表1に示した金属、金属の酸化物、金属の
炭化物、金属の窒化物、ほう化物および金属間化合物の
粒子およびこれらの混合物を用いて、表2に示すA処
理、B−1処理、B−2処理、B−3処理およびC処理
の5種類の方法で、表3に示した純アルミニウム系(記
号A1000)およびAl−Mg系(記号A5000)
の2種類の板厚2.0mmのアルミニウム系材料に塗布
した後、圧延を行い該粒子をアルミニウム系材料の表面
層に埋め込み、表4に示した如き上述の処理条件の組合
せによる29種類の試料を作成した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】こうして作成した試料の潤滑性を評価する
ため表面を清浄にした測定面に粘度が50cStの鉱油
系のプレス加工用潤滑剤を1.0grf/m2塗布した
後、バウデン式摩耗摩擦試験機を使用して1Kgfの荷
重での摩擦係数を測定した。これらの測定結果を第4表
に併記した。これらの結果から、本発明に基ずいて製造
したアルミニウム系材料は格段に優れた摩擦特性を有す
ることが明かである。
【0048】
【発明の効果】以上の説明によって明らかなように、本
発明によれば摩擦係数の小さい、即ち、潤滑性の優れ
た、アルミニウム系材料を提供することができ、板材の
プレス成形性の向上、潤滑システムの簡素化(潤滑剤の
洗浄性向上)あるいは加工痕の減少による製品外観の向
上等が図れることからアルミニウム系材料の製造および
加工等に携わる関連産業分野に及ぼす利点は極めて大き
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアルミニウム系材料の断面を拡大して
示した概念図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム系材料 2 硬質粒子

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属、金属間化合物、金属の酸化物、金
    属の炭化物、金属の窒化物もしくはほう化物から選ばれ
    た一種または二種以上の硬質粒子であって、粒子径
    (d)が0.01〜20μmであり、かつビッカース硬
    度がアルミニウム系素地材料の1.50倍以上である硬
    質粒子が、前記材料表面に食い込んだ状態で分散分布し
    ており、食い込み深さ(D)が(d)の0.5〜1.0
    倍であり、且つ該粒子間の粒子間距離(L)が(d)の
    2〜100倍であることを特徴とする潤滑性の優れたア
    ルミニウム系材料。
  2. 【請求項2】 金属、金属間化合物、金属の酸化物、金
    属の炭化物、金属の窒化物もしくはほう化物から選ばれ
    た一種または二種以上の硬質粒子であって、粒子径
    (d)が0.01〜20μmであり、かつビッカース硬
    度がアルミニウム系素地材料の1.50倍以上である硬
    質粒子を、該アルミニウム系材料の表面に塗布し、次い
    で該アルミニウム系材料を圧延して該表面に硬質粒子を
    食い込ませ、且つその食い込み深さ(D)を(d)の
    0.5〜1.0倍となし、且つ該粒子の粒子間距離
    (L)を(d)の2〜100倍とすることを特徴とする
    潤滑性の優れたアルミニウム系材料の製造方法。
  3. 【請求項3】 硬質粒子を体積比で0.5〜80体積%
    含有する有機高分子溶液を媒体として、アルミニウム系
    素地材料の表面に、乾燥後の有機高分子皮膜の膜厚が
    0.01〜30μmとなるように塗布して乾燥した後、
    圧延するものである請求項2記載の潤滑性の優れたアル
    ミニウム系材料の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004106024A (ja) * 2002-09-19 2004-04-08 Oota:Kk 金属板のプレス成形方法

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JP2004106024A (ja) * 2002-09-19 2004-04-08 Oota:Kk 金属板のプレス成形方法

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