JP3219311B2 - 耐ゴ−リング性および耐黒筋性に優れたアルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents

耐ゴ−リング性および耐黒筋性に優れたアルミニウム合金板の製造方法

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JP3219311B2
JP3219311B2 JP19790592A JP19790592A JP3219311B2 JP 3219311 B2 JP3219311 B2 JP 3219311B2 JP 19790592 A JP19790592 A JP 19790592A JP 19790592 A JP19790592 A JP 19790592A JP 3219311 B2 JP3219311 B2 JP 3219311B2
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田中富次夫
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウムまたはア
ルミニウム合金板のしごき加工性の改良に関し、特に、
DI缶胴材のしごき加工時に発生するゴーリング(しご
き成形時に発生する縦疵)・黒筋を改善する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】一般にアルミニウム合金製DI缶胴材の
ようにしごき加工が加わる場合、3000系の合金が多
用される。その中でも特に3004合金が缶胴材に用い
られる理由は、比較的強度が高く成形性にも優れている
こと、しごき加工時の加工硬化が比較的小さく、その際
のゴーリング・黒筋が発生しにくいからである。しか
し、アルミニウム合金板の性状や成形条件によってはゴ
ーリング・黒筋が発生することがあるので、DI成形前
の段階でリオイルのように原液を塗布して潤滑性を良く
したり、DI成形加工時の油を種々かえることによりそ
の防止を図っている。また、その他の方法として材料表
面の粗度を変更して保油性を向上させることも提案され
ている。耐ゴ−リング性および耐黒筋性の改善に寄与す
る素材特性としては、アルミニウム中に比較的粗大な晶
出化合物を存在させることがあげられ、これによる固体
潤滑性能、晶出化合物近傍の空隙での保油性の向上、さ
らにはシゴキダイスのセルフクリーニング等の効果が得
られる。従って、Al−Mn−Fe系の晶出化合物の多
い3000系合金が多用されるのであるが、この化合物
がAl−Fe,Si,Mg2Si等でも良く合金元素や
製法を選ぶことにより適当な分散量と大きさが得られれ
ば、しごき加工用途でもゴ−リングおよび黒筋の発生を
少なくすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は下記の課題を
解決することを目的とする。 1.適度な表面粗度を持たせて保油性を向上させ、しご
き加工時の潤滑を良くする方法としてアルミニウム表面
素地とリオイル油とのなじみを良くすること。 2.上記1の方法のリオイル油のなじみを良くするため
に、リオイル油と異種の冷延油をアルミニウム表面より
除去する時のアルミニウム素地の変質による耐ゴ−リン
グ性の悪化の改善。 3.耐ゴ−リング性の悪化の改善を素材特性の金属間化
合物の適正分散による補完。
【0004】
【課題を解決するための手段】これらの課題に対して本
発明者らが鋭意検討した結果本発明を得るに至った。
【0005】すなわち請求項1の、表面に5μm以上の
金属Siおよび/または金属間化合物が100個/0.
2mm2以上の密度で存在し、表面粗度Raが0.10
〜0.40μmであるアルミニウム合金板に、pHが5
〜8、20〜70℃の水で洗浄を施し乾燥した後、50
〜500mg/m2の油性皮膜を塗布することを特徴と
する耐ゴ−リング性および耐黒筋性に優れたアルミニウ
ム合金板の製造方法。
【0006】請求項2の表面に5μm以上の金属Siお
よび/または金属間化合物が100個/0.2mm2
上の密度で存在し、表面粗度Raが0.10〜0.40
μmであるアルミニウム合金板に、pHが1〜4、50
〜100℃の弱酸性液で洗浄を施し、さらにpHが5〜
8、20〜70℃の水で洗浄を施し乾燥した後、50〜
500mg/m2の油性皮膜を塗布することを特徴とす
る耐ゴ−リング性および耐黒筋性に優れたアルミニウム
合金板の製造方法。
【0007】請求項3の表面に5μm以上の金属Siお
よび/または金属間化合物が100個/0.2mm2
上の密度で存在し、表面粗度Raが0.10〜0.40
μmであるアルミニウム合金板に、pHが5〜8、10
〜70℃の洗剤の水溶液で洗浄を施し、さらにpHが5
〜8、20〜70℃の水で洗浄を施し乾燥した後、50
〜500mg/m2の油性皮膜を塗布することを特徴と
する耐ゴ−リング性および耐黒筋性に優れたアルミニウ
ム合金板の製造方法。である。
【0008】
【作用】ゴーリングや黒筋はアルミニウム生地とシゴキ
ダイスとが直接接触して、アルミニウム片のダイスへの
凝着により発生する。このゴーリング性に寄与する重要
な素材特性として、金属Siおよび/または金属間化合
物の存在状態が挙げられる。すなわち、アルミニウム中
に比較的粗大な晶出金属Siおよび/または金属間化合
物が適正な密度で存在することにより、固体潤滑性能、
晶出化合物近傍の空隙での保油性の向上さらにはシゴキ
ダイスのセルフクリーニング等の効果が得られる。特
に、これらの特性の内セルフクリーニング効果が大き
い。従って、Al−Mn−Fe系の晶出化合物の多い3
000系合金が多用されるのであるが、この金属Siお
よび/または金属間化合物はAl−Fe系,Mg2
i,金属Si等でも良く合金元素や製法をを選ぶことに
より適当な分散量と大きさが得られれば、しごき加工用
途でもゴーリングの発生を少なくすることができる。こ
の効果が最も大きい粒子サイズは5μm以上で、このサ
イズの粒子が100個/0.2mm2以上分布すること
が必要である。5μm未満の粒子サイズのものは、しご
き加工性に及ぼす影響が少なく、通常の分布であれば特
に規制する必要はない。缶胴材のように冷間圧延により
仕上げられる材料では、DI加工用の潤滑油をあらかじ
め塗油してなじませておくこと(リオイル)により、D
I加工時の潤滑性が向上する。通常は冷間圧延油とDI
加工用の潤滑油ではその組成が違うために、冷間圧延油
とリオイル油とのなじみ性が悪く均一に塗油するのは難
しく、DI加工時の潤滑不良となり黒筋のようなやきつ
き不良が生じやすくなる。これらが組成的に近いもので
あれば冷間圧延油を一旦除去する必要はないが、製缶メ
ーカーによって潤滑油が違うためにその度に冷延油を変
更するのは不経済である。そこで、冷間圧延油を一旦除
去して新生面にリオイルすることにより、DI成形時の
潤滑性をより向上させるようにする。
【0009】その方法として最も簡単なのは請求項1の
様に、高温で水洗してからリオイルすることである。こ
の水洗の条件として、まずpHは5〜8がよくpHがこ
れより高くても低くてもその後の乾燥により表面上に酸
またはアルカリ分が濃縮して腐食の原因になるので好ま
しくない。次に温度は70℃より高温であれば表面上に
アルミニウム水和物が生成して、DI加工時のしごき成
形時に剥がれてダイスへの凝着によりゴーリングが発生
する。従って、その温度は70℃以下がよく20℃より
低温であれば洗浄効果は殆どなくなる。40〜60℃の
範囲が好ましい。
【0010】さらに洗浄性を増すためには請求項2の様
に、pH1〜4の60〜100℃での弱酸洗を施してか
ら上述の水洗を行なう。この場合、pHが5より高くな
るとアルミニウム水和物が生成してゴーリングが発生し
やすくなる。1より低くなると表面エッチングが促進さ
れ油分の除去効果は促進されるものの、外観の色調が変
化する恐れが高い。ただし外観色調が問題にならない場
合ならpHの下限はさらに低くてもかまわない。次の水
洗の条件限定の理由は請求項1の場合と同じである。
【0011】またその他の洗浄方法として請求項3の様
に、pHが5〜8、10〜70℃の洗剤の水溶液で洗浄
を施してから上述の水洗を行なう方法がある。洗剤の水
溶液の温度が10℃以下では洗浄効果は少なく、70℃
以上ではアルミニウム水和物が生成してゴーリングが発
生しやすくなりまた過度の発泡が生じるので好ましくな
い。次の水洗の条件限定の理由は請求項1の説明と同じ
である。いずれの方法に於いても、上記洗浄の後、乾燥
しその後50〜500mg/m2の油性皮膜を塗布(リ
オイル)する。50mg/m2以下ではその効果が少な
く、500mg/m2以上では油がたれ流れ板表面に均
一に保油させておくのは難しい。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。な
お、表の中で下線を付した項目は本願発明の範囲をはず
れる項目である。表1に示す化学成分を有するアルミニ
ウム合金を表2に示す製造方法により圧延、熱処理しア
ルミニウム合金缶胴材を作成しこの段階の板表面におけ
る5μm以上のサイズの金属Siおよび/または金属間
化合物の分布密度と表面粗度を測定し表2に示す。金属
Siおよび/または金属間化合物の分布密度は成分と製
造方法との組合せによって、表面粗度は最終冷延のロー
ル粗度の変化によって調整した。上記製造方法による強
度の狙い値は200℃×20分のベーキング後の耐力で
280±10N/mm2である。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】さらに表3に示す方法で洗浄、油性皮膜塗
布を行ったアルミニウム合金板をDI成形した。この時
のゴ−リング性および黒筋性を測定し、表4に示す。
【0016】
【表3】
【0017】
【表4】
【0018】表4の結果から以下のことがわかる。板の
平均粗度が小さい試料番号8は保油性が不足し潤滑不良
のため比較的明瞭な黒筋を生じ、逆に平均粗度が本願発
明の範囲より大きい試料番号9は潤滑過多でカッピング
・リドロー時に生じたしわがしごき時にダイスにあたり
全周に黒筋を生じる。板表面における5μm以上のサイ
ズの金属Siおよび/または金属間化合物の分布密度が
少ない試料番号10と12はともにゴーリングによる缶
切れを生じる。洗浄のいっさい無い試料番号1は油性皮
膜(リオイル)と冷延油のなじみ不良のため弱い黒筋が生
じる。一段の水洗浄の温度が高すぎる試料番号2とph
が高すぎる試料番号4はともにアルミニウム水和物が生
成しゴーリングによる缶切れを生じる。油性皮膜塗布の
無い試料番号7は潤滑不良のため比較的明瞭な黒筋が生
じる。一段の水洗浄のはアルミニウム水和物が生成しゴ
ーリングによる缶切れを生じる。これらに比べ、本願発
明の要件を全て満たす試料番号3,5,6,11,13
は製品として問題になるようなゴーリングも黒筋も生じ
なかった。
【0019】
【効果】以上詳しく説明したように、板表面の金属Si
および/または金属間化合物の分布、表面粗度、洗浄条
件、油性皮膜量を本発明の範囲にコントロールすること
によりアルミニウムまたはアルミニウム合金板のしごき
加工性を改良できる。特に、DI缶胴材のしごき加工時
に発生するゴーリング(しごき成形時に発生する縦疵)
・黒筋を確実に防止することができる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭59−157249(JP,A) 特開 平2−61021(JP,A) 特開 昭63−143290(JP,A) 特開 平3−223447(JP,A) 特開 昭63−190149(JP,A) 特開 平2−254142(JP,A) 特開 昭64−11026(JP,A) 特開 昭61−212427(JP,A) 特開 昭62−152627(JP,A) 特開 昭62−214831(JP,A) 特開 昭63−213647(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21D 22/00 - 26/14 C22F 1/04

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面に5μm以上の金属Siおよび/また
    は金属間化合物が100個/0.2mm2以上の密度で
    存在し、表面粗度Raが0.10〜0.40μmである
    アルミニウム合金板に、pHが5〜8、20〜70℃の
    水で洗浄を施し乾燥した後、50〜500mg/m2
    油性皮膜を塗布することを特徴とする耐ゴ−リング性お
    よび耐黒筋性に優れたアルミニウム合金板の製造方法。
  2. 【請求項2】表面に5μm以上の金属Siおよび/また
    は金属間化合物が100個/0.2mm2以上の密度で
    存在し、表面粗度Raが0.10〜0.40μmである
    アルミニウム合金板に、pHが1〜4、50〜100℃
    の弱酸性液で洗浄を施し、さらにpHが5〜8、20〜
    70℃の水で洗浄を施し乾燥した後、50〜500mg
    /m2の油性皮膜を塗布することを特徴とする耐ゴ−リ
    ング性および耐黒筋性に優れたアルミニウム合金板の製
    造方法。
  3. 【請求項3】表面に5μm以上の金属Siおよび/また
    は金属間化合物が100個/0.2mm2以上の密度で
    存在し、表面粗度Raが0.10〜0.40μmである
    アルミニウム合金板に、pHが5〜8、10〜70℃の
    洗剤の水溶液で洗浄を施し、さらにpHが5〜8、20
    〜70℃の水で洗浄を施し乾燥した後、50〜500m
    g/m2の油性皮膜を塗布することを特徴とする耐ゴ−
    リング性および耐黒筋性に優れたアルミニウム合金板の
    製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018526228A (ja) * 2015-07-27 2018-09-13 コンステリウム ヌフ−ブリザックConstellium Neuf−Brisach アルミニウム容器の最適化された絞りおよび壁しごき加工方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018526228A (ja) * 2015-07-27 2018-09-13 コンステリウム ヌフ−ブリザックConstellium Neuf−Brisach アルミニウム容器の最適化された絞りおよび壁しごき加工方法
US10807140B2 (en) 2015-07-27 2020-10-20 Constellium Neuf-Brisach Optimized drawing and wall ironing process of aluminum containers

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